(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155333
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】車両用の管材の排水構造
(51)【国際特許分類】
F01N 13/00 20100101AFI20241024BHJP
B60K 13/04 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
F01N13/00 B
B60K13/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023069978
(22)【出願日】2023-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】390010227
【氏名又は名称】株式会社三五
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】栗本 拓弥
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 勝仁
(72)【発明者】
【氏名】熊崎 和文
(72)【発明者】
【氏名】植村 大佑
(72)【発明者】
【氏名】戸谷 忠正
【テーマコード(参考)】
3D038
3G004
【Fターム(参考)】
3D038BA03
3D038BB01
3G004AA01
3G004DA23
(57)【要約】
【課題】管材内の液体を、異音の発生を極力抑制しつつ、積極的に外部に排出することにある。
【解決手段】車両に備えられる管材4と、管材4内に滞留した液体を外部に排出する排水部10とを有する車両用の管材4の排水構造において、排水部10は、管材4に設けられた排水用の孔部20と、孔部20を外側から覆うように管材4に取付られた被覆部材30とを有し、管材4を上下に二分割することで上側領域4Aと下側領域4Bとを設定し且つ管材4の最下端4uを通る仮想鉛直線VL1を想定した場合に、排水部10は下側領域4Bに設けられていると共に、被覆部材30は、仮想鉛直線VL1とは異なる位置に設けられた孔部20を覆うように取付けられている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に備えられる管材と、管材内に滞留した液体を外部に排出する排水部とを有する車両用の管材の排水構造において、
前記排水部は、前記管材に設けられた排水用の孔部と、前記孔部を外側から覆うように前記管材に取付られた被覆部材とを有し、
前記管材を上下に二分割することで上側領域と下側領域とを設定し且つ前記管材の最下端を通る仮想鉛直線を想定した場合に、前記排水部は前記下側領域に設けられていると共に、前記被覆部材は、前記仮想鉛直線とは異なる位置に設けられた前記孔部を覆うように取付けられている車両用の管材の排水構造。
【請求項2】
前記被覆部材には、前記孔部を覆う被覆部位が前記管材の周方向及び軸線方向に広がるように形成されており、
前記被覆部位は、前記管材の外面との間に間隙が設けられた状態で配置されている請求項1に記載の車両用の管材の排水構造。
【請求項3】
前記被覆部材は、前記被覆部位と外部とを連通する開口部と、前記被覆部位から管材側に延びて前記管材に固定されている脚部とを有し、
前記開口部は、前記被覆部位の前記周方向における下側に位置する部分に設けられていると共に、前記脚部は、前記被覆部位の前記周方向における上側に位置する部分と、前記被覆部材の前記軸線方向における両側に位置する部分との少なくとも一箇所に設けられている請求項2に記載の車両用の管材の排水構造。
【請求項4】
前記被覆部材には、前記被覆部位と外部とを連通する開口部が、前記被覆部位の前記周方向における下側に位置する部分に設けられていると共に、
前記被覆部位の前記周方向における上側に位置する部分と、前記被覆部位の前記軸線方向における両側に位置する部分との少なくとも一箇所に別の開口部が形成されている請求項2又は3に記載の車両用の管材の排水構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に備えられる管材と、管材内に滞留した液体を外部に排出する排水部とを有する車両用の管材の排水構造に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の車両の管材が特許文献1に開示されている。この文献に開示された車両では、内燃機関から排出されたガスが、排気管(管材に相当)を通じて外部に排出されるように構成されている。ここで排気管は、断面円形に形成された管状部材であり、車両の下面側で車両前後方向に延びている。そして上記した車両では、内燃機関で生成された水(液体)が排気管に滞留することがあり、この滞留した水が凍結する等して、排気管が閉塞するおそれがあった。
【0003】
そこで上記した排気管には、その内側と外側とに通じる孔と、この孔を覆う被覆部材とが設けられている。そして孔は、排気管の上側の部分に設けられている。即ち、排気管の円形断面を上下二分割した場合、この排気管の上側の領域、好ましくは排気管の最上端位置に孔が形成されている。また被覆部材は、排気管の上側の領域に沿う円弧形状に形成されて、上記した孔を覆うように排気管に固定されている。即ち、被覆部材は、孔を覆うように断面略U字形に曲げられていると共に、その前後の縁が排気管に固定されている。そして被覆部材には、断面U字形の窪み部が延長方向(排気管の周方向)に連続して形成されていると共に、その延長方向における両端に、外部に開放された開口が、車両下側を向くように形成されている。上記した構成では、排気管が閉塞した場合にも、この排気管に設けられた孔からガスを排出できるようになる。そして孔から排出されたガスは、被覆部材の窪み部を伝って流れたのち、その開口から車両下側に向けて排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで上記した技術では、排気管(管材)の上側の領域に孔が設けられている。このため同技術では、排気管内のガスは孔から排出されるものの、排気管内の水を孔から外部に積極的に排出できず、水が過度に排気管内に滞留するおそれがあった。また上記した構成では、ガスと水とが混じって外部に排出される場合があり、その際に窪み部に張った水膜が断続的に破裂するなどして、意図しない異音が発生するおそれがあった。本発明は上述の点に鑑みて創案されたものであり、本発明が解決しようとする課題は、管材内の液体を、異音の発生を極力抑制しつつ、積極的に外部に排出することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための手段として、第1発明の車両用の管材の排水構造は、車両に備えられる管材と、管材内に滞留した液体を外部に排出する排水部とを有している。そして排水部は、管材に設けられた排水用の孔部と、孔部を外側から覆うように管材に取付られた被覆部材とを有している。この種の構成では、管材内の液体を、異音の発生を極力抑制しつつ、積極的に外部に排出させられることが望ましい。そこで本発明では、管材を上下に二分割することで上側領域と下側領域とを設定し且つ管材の最下端を通る仮想鉛直線を想定した場合に、排水部は下側領域に設けられていると共に、被覆部材は、仮想鉛直線とは異なる位置に設けられた孔部を覆うように取付けられている。本発明では、管材内の液体を、その下側領域に設けられた排水部(孔部)を通じて積極的に外部に排出できるようになる。また被覆部材にて孔部を覆うことで、この孔部の設けられた管材に異物等が侵入し難くなる。そして管材の最下端を通る仮想鉛直線とは異なる位置に孔部が設けられることで、外部に排出される液体に対して気体が過度に混じり難くなり、意図しない異音の発生を極力抑制できるようになる。
【0007】
第2発明の車両用の管材の排水構造は、第1発明の車両用の管材の排水構造において、被覆部材には、孔部を覆う被覆部位が管材の周方向及び軸線方向に広がるように形成されており、被覆部位は、管材の外面との間に間隙が設けられた状態で配置されている。本発明では、被覆部位と管材間に間隙を設けたことで、異音の発生をより確実に抑制できるようになる。即ち、被覆部位と管材間の間隙によって、外部に排出される液体に対して気体が更に混じり難くなり、異音の発生をより確実に抑制できるようになる。
【0008】
第3発明の車両用の管材の排水構造は、第2発明の車両用の管材の排水構造において、被覆部材は、被覆部位と外部とを連通する開口部と、被覆部位から管材側に延びて管材に固定されている脚部とを有している。そして開口部は、被覆部位の周方向における下側に位置する部分に設けられていると共に、脚部は、被覆部位の周方向における上側に位置する部分と、被覆部材の軸線方向における両側に位置する部分との少なくとも一箇所に設けられている。本発明では、被覆部位が脚部に支持されることで、この被覆部位と管材間の間隙をより確実に設けられるようになる。また脚部を開口部とは異なる箇所に設けることで、被覆部位を伝って流れる液体を、脚部に極力邪魔されずに開口部を通じて外部に排出させられるようになる。
【0009】
第4発明の車両用の管材の排水構造は、第2発明又は第3発明の車両用の管材の排水構造において、被覆部材には、被覆部位と外部とを連通する開口部が、被覆部位の周方向における下側に位置する部分に設けられていると共に、被覆部位の周方向における上側に位置する部分と、被覆部位の軸線方向における両側に位置する部分との少なくとも一箇所に別の開口部が形成されている。本発明では、液体を開口部から外部に排出する一方、孔部から気体が排出された場合にも、この排出された気体を、開口部とは異なる箇所に設けられた別の開口部を通じて外部に排出できるようになる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る第1発明によれば、管材内の液体を、異音の発生を極力抑制しつつ、積極的に外部に排出することができる。また第2発明によれば、異音の発生をより確実に抑制することができる。また第3発明によれば、管材内の液体を、より積極的に外部に排出することができる。そして第4発明によれば、管材内の液体等を、より適切に外部に排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図6】実施例2の排水部を示す管材の拡大下面図である。
【
図7】実施例2の排水部を示す管材の拡大側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態を、
図1~
図8を参照して説明する。各図には、車両に管材が配設された状態を基準として、管材の前後方向と左右方向(車幅方向)と上下方向(車両の高さ方向)を示す矢線を適宜図示する。ここで
図1では、便宜上、排水部の設けられた管材の一部を図示すると共に、その前後の両端を破断して図示している。そして各図では、車両用の管材の排水構造に関する構成を実線で図示し、その他の車両の構成を簡略化して図示又は省略する。
【0013】
先ず、
図1に示す車両2に備えられた管材4について簡単に説明する。この車両2では、その内燃機関3(図示省略)から排出されたガスが管材4を通じて外部に排出されるように構成されている。この管材4は、所定の径寸法を備えて断面円形に形成された管状部材であり、車両2の下面側で車両前後方向に延びるように配設されている。また管材4は、その車両前後方向(延長方向)における途中で、車両下側に向けて緩やかなV字形をなすように曲げられている。そして車両2では、管材4の後端側がサイレンサ5(図示省略)等を介して外部に連通することで、内燃機関3から排出されるガスを、管材4を通じて外部に排出できるようになっている。
【0014】
[実施例1の車両用の管材の排水構造]
そして
図1及び
図2に示す車両2では、その管材4の車両下側に曲げられた部分に、内燃機関3で生成された水等の液体が滞留することがある。このため車両用の管材の排水構造では、管材4の車両下側に曲げられた部分に、後述する排水部10を設けることで、管材4内の液体を外部に排出するようにしている。この種の構成では、液体の排出時において、液体と気体とが過度に混じる等して意図しない異音が生じないように配慮すべきである。そこで本実施例では、後述する排水部10(孔部20と被覆部材30)にて、管材4内の液体を、異音の発生を極力抑制しつつ、積極的に外部に排出することとした。以下、上記排水構造を、排水部10を構成する孔部20と被覆部材30の順に詳述する。
【0015】
[孔部]
先ず、
図2及び
図3に示す孔部20は、管材4の内側と外側とに連通する排水用の貫通孔であり、排水部10の一部を構成している。この孔部20は、管材4内の液体を積極的に排水できる位置に配置されている。即ち、
図3を参照して、断面円形の管材4を上下二分割することで上側領域4Aと下側領域4Bとを設定した場合、その下側領域4Bに孔部20が設けられている。これにより、管材4内に過度の液体が滞留する前に、この滞留した液体を、孔部20を通じて外部に積極的に排出できるようになる(詳細後述)。また孔部20の形成位置は、異音の発生を抑制する観点(詳細後述)から、後述する被覆部材30との位置関係を考慮して設定されている。即ち、管材4の中心Cと最下端4uを通る仮想鉛直線VL1を想定した場合に、孔部20は、仮想鉛直線VL1と重ならないように異なる位置、即ち、管材4の最下端4uよりも上側に設けられている。これにより、孔部20は、仮想鉛直線VL1に対して角度θ(0°<θ<90°)上側に傾いて且つ中心Cを通る仮想直線VL2上で開口するようになる。
【0016】
[被覆部材]
次に、
図2~
図4に示す被覆部材30は、上記した孔部20を外側(管材4の径方向外側)から覆う部材であり、排水部10の一部を構成している。この被覆部材30は、
図4に示すように、孔部20を覆う被覆部位31と、管材4に固定される一対の脚部32,33とを有している(
図4では、便宜上、被覆部位と脚部間に図示した破線で、両部位を区分けしている)。そして被覆部位31は、管材4の外面に沿うように曲げられた板状部材であり、管材4の周方向(上下左右方向)と軸線方向(前後方向)とに広がる曲面状に形成されている。また被覆部位31は、孔部20を被覆可能な面積を有して、管材4の周方向に長い矩形状に形成されている。このため被覆部位31は、その外形が、周方向上側に位置する上縁部310と、周方向下側に位置する下縁部311と、軸線方向一側(前側)に位置する前縁部312と、軸線方向他側(後側)に位置する後縁部313とから形成されている。そして被覆部位31には、その前縁部312と後縁部313(軸線方向両側)に、後述する脚部32,33が一体化されている。
【0017】
ここで
図2及び
図4に示す脚部32,33は、略同一の基本構成を有して前後対称となるように被覆部材30に設けられている(各図では、前側の脚部32の各構成に符号を付し、後側の脚部33の各構成に対応する符号を括弧付きで付す)。例えば前側の脚部32は、被覆部材30の前縁部312から前側(軸線方向一側)に延びる横板部位321と、この横板部位321の先端から管材4側に向けて延びる縦板部位322とを有している。そして縦板部位322の先端には、前側に向けて略直角に曲げられたフランジ部位323が形成されており、このフランジ部位323を、管材4の外面にあてがって固定できるようになっている。なお各脚部32,33の幅寸法(周方向の寸法)は、被覆部位31の対応する縁の寸法よりも短くなっている。
【0018】
そして被覆部材30は、
図3に示すように管材4の下側領域4Bに取付けられた状態で、孔部20を覆うように配置される。このとき被覆部材30では、
図4及び
図5を参照して、前後の脚部32,33のフランジ部位323が管材4の外面に固定されることで、被覆部位31が、孔部20を外側から覆うように配置される。なお被覆部位31は、孔部20の外側を被覆可能な適宜の位置に配置でき、例えば
図4では、被覆部位31の曲面の中心位置に孔部20が配置されている。そして被覆部位31は、
図5に示すように、一対の脚部32,33(縦板部位322)によって、管材4との間に間隙40を設けた状態で支持されるようになる(間隙40の寸法は後述)。こうして被覆部材30が下側領域4Bに取付けられることで、この被覆部材30と孔部20を有する排水部10が、下側領域4Bに設けられるようになる。
【0019】
[孔部の寸法と、間隙の寸法]
ここで
図3及び
図5を参照して、孔部20の径寸法(φ)と、被覆部位31と管材4間の間隙40の寸法とは、液体を外部に導くことができる限り特に限定しない。例えば管材4では、略円形に形成された孔部20の径寸法(φ)を、少なくとも液体一滴(一般的な水滴の直径は1mm~2mm)の通過を許容する径寸法以上に設定することができる。また被覆部位31と管材4間の間隙40の寸法は、管材4の径方向における両部材間の距離で規定され、異音の発生を抑制する観点(詳細後述)から設定することができる。例えば孔部20の径寸法をφ5mm程度に設定した場合、被覆部位31と管材4間の間隙40の寸法を孔部20の径寸法とは無関係に(試験的に)設定することができ、例えば7mm~10mm程度に設定することができる(なお各数値は、本発明を限定するものではない)。こうして間隙40の寸法を適切に設定することで、液体の排出性を確保しつつ、更に異音の発生を極力抑制できるようになる。
【0020】
[開口部、別の開口部]
さらに
図3及び
図4を参照して、被覆部位31と管材4間に間隙40が設けられることで、被覆部材30には、外部に連通する開口部41が形成される。即ち、
図3に示す被覆部位31の下縁部311と管材4間に間隙40が設けられることで、被覆部材30の周方向下側の位置に、外部に開放された開口部41が形成されるようになる。そして開口部41は、車両2の車幅方向内側(右側)を向いた状態とされて、管材4の最下端4uの位置付近に形成されている。更に被覆部材30では、
図4に示す被覆部位31の上縁部310と前縁部312と後縁部313とに、それぞれ外部に連通する別の開口部(42,43,44)が形成されている。即ち、
図3に示す被覆部位31の上縁部310の位置(周方向上側の位置)に上側開口部42が形成されている。また
図4及び
図5を参照して、被覆部材30の前縁部312の位置(軸線方向一側の位置)に前側開口部43が形成され、被覆部材30の後縁部313の位置(軸線方向他側の位置)に後側開口部44が形成されている。そして
図3及び
図4を参照して、別の開口部としての上側開口部42と前側開口部43と後側開口部44とは、いずれも上記した開口部41とは異なる箇所、即ち、開口部41よりも上側の箇所に形成されている。
【0021】
[排水部の働き]
図1及び
図2に示す車両2では、上記したように、管材4の車両下側に曲げられた部分に排水部10(孔部20,被覆部材30)を設けることで、管材4内の液体を外部に排出するようにしている。そしてこの種の構成では、管材4内の液体を、異音の発生を極力抑制しつつ、積極的に外部に排出することが望ましい。そこで車両用の管材の排水構造では、
図3を参照して、管材4を上下に二分割することで上側領域4Aと下側領域4Bとを設定し且つ管材4の最下端4uを通る仮想鉛直線VL1を想定した場合に、排水部10は下側領域4Bに設けられていると共に、被覆部材30は、仮想鉛直線VL1よりも上側に設けられた孔部20を覆うように取付けられている。上記した構成では、管材4内の液体を、異音の発生を極力抑制しつつ、下側領域4Bの適所に設けられた排水部10を通じて積極的に外部に排出できるようになる。そこで以下に、排水部10をなす孔部20と被覆部材30の働きをより具体的に説明する。
【0022】
[排水部の液体の排出性]
先ず、上記した構成によれば、
図3に示す管材4内に過度の液体が滞留する前に、この管材4の下側領域4Bの適所に設けられた孔部20から液体が流れ出るようになる(
図3では、液体の排水経路を白抜きの矢印で示す)。つづいて孔部20から流れ出た液体は、この孔部20の外側を覆う被覆部材30(被覆部位31の内面)上に流れ落ちる。そして流れ落ちた液体は、被覆部位31を伝って下側に流れたのち、その周方向下側の位置に設けた開口部41から外部に排出される。上記した構成によれば、排水部10(孔部20,被覆部材30)の働きで、管材4内の液体を積極的に外部に排出できるようになり、この管材4内に過度の液体が滞留しないようになる。また被覆部材30が孔部20の外側を覆うことから、この孔部20の設けられた管材4に異物等が侵入し難くなると共に、孔部20の意図しない閉塞を極力回避することができる。このため管材4内で滞留した液体の水位は、通常、下側領域4Bの孔部20の形成位置を超えることはなく、上側領域4A内まで上がることはない。これにより、管材4内の液体が凍結等した場合でも、上側領域4Aにおける気体の流通を可能にしたことで、管材4の閉塞を極力回避することができる。
【0023】
[排水部による異音発生の抑制]
ところで上記した構成では、液体の排出時に、液体と気体とが過度に混じるなどして、その際に意図しない異音が発生するおそれがある。例えば
図3に示す被覆部材30では、その開口部41が管材4の最下端4uの付近に形成されている。また管材4内の液体が流れ出た後、孔部20から管材内4の気体が排出されることがある。上記した構成では、開口部41付近に滞留した液体に、孔部20から排出された気体が強く当てられた場合、この液体が大きく波立つなどして、被覆部位31と管材4間の間隙40に水膜が形成され易くなる。そして液体と気体とが混ざって開口部41から排出されることで、間隙40内の水膜が断続的に破断することにより、意図しない異音が発生するおそれがある。
【0024】
そこで
図3に示す車両用の管材の排水構造では、排水部10をなす孔部20が、管材4の最下端4uを通る仮想鉛直線VL1とは異なる位置に設けられている。これにより、管材4の最下端4u(開口部41)よりも上側で、孔部20から気体が排出されるようになる。上記した構成では、開口部41付近の液体に気体が直に当たらないようになることで、外部に排出される液体に対して気体が過度に混じり難くなり、液体の過度の波立ちによる水膜の形成が極力回避される。更に被覆部位31と管材4間の間隙40の寸法は、上記したように、異音の発生を抑制する観点から設定されている。これにより、気体に当てられた液体が波立ったとしても、間隙40の寸法を適切に設定したことで、この間隙40内に水膜が形成されるほどの波立ちは生じ難くなる。こうして上記した構成では、液体と気体とを極力混じり難くして、水膜の形成をより確実に回避することにより、意図しない異音の発生をより確実に抑制することが可能となる。
【0025】
更に
図3及び
図4を参照して、被覆部材30では、周方向下側の位置に開口部41を設けると共に、この開口部41とは異なる箇所に脚部32,33を設けている。これにより、被覆部位31を伝って流れる液体を、脚部32,33に極力邪魔されずに開口部41から外部に排出できるようになる。そして上記した構成によれば、間隙40内に過度の液体が滞留することを抑制でき、この液体の凍結等で間隙40が閉塞するといった事態を極力回避することができる。なお上記した構成では、孔部20から気体が排出されることがあるが、この場合には、
図4に示す別の開口部(上側開口部42、前側開口部43、後側開口部44)から気体を拡散させながら外部に排出させることができる。
【0026】
以上説明した通り、本実施例では、管材4内の液体を、その下側領域4Bに設けられた排水部10(孔部20)を通じて積極的に外部に排出できるようになる。また被覆部材30にて孔部20を覆うことで、この孔部20の設けられた管材4に異物等が侵入し難くなる。そして管材4の最下端4uを通る仮想鉛直線VL1とは異なる位置に孔部20が設けられることで、外部に排出される液体に対して気体が過度に混じり難くなり、意図しない異音の発生を極力抑制できるようになる。更に本実施例では、被覆部位31と管材4間に間隙40を設けたことで、異音の発生をより確実に抑制できるようになる。即ち、被覆部位31と管材4間の間隙40にて、外部に排出される液体に対して気体が更に混じり難くなり、異音の発生をより確実に抑制できるようになる。このため本実施例によれば、管材4内の液体を、異音の発生を極力抑制しつつ、積極的に外部に排出することができる。
【0027】
また本実施例では、被覆部位31が脚部32,33に支持されることで、この被覆部位31と管材4間の間隙40をより確実に設けられるようになる。また脚部32,33を開口部41とは異なる箇所に設けることで、被覆部位31を伝って流れる液体を、脚部32,33に極力邪魔されずに開口部41を通じて外部に排出させられるようになる。そして本実施例では、液体を開口部41から外部に排出する一方、孔部20から気体が排出された場合にも、この排出された気体を、開口部41とは異なる箇所に設けられた別の開口部を通じて外部に排出できるようになる。
【0028】
[実施例2の車両用の管材の排水構造]
次に実施例2の車両用の管材の排水構造について説明する。
図6~
図8に示す実施例2の排水構造は、実施例1の排水構造と同一の基本構成を有しているため、実施例1と同一の構成について対応する符号を付す等して詳細な説明を省略する。ここで実施例2の排水構造では、実施例1と同様に、その排水部10Xが孔部20と被覆部材30Xとで構成され、更に孔部20の形成位置も実施例1と同一である。そして被覆部材30Xは、実施例1の被覆部材と略同一の基本構成を有するが、その被覆部位31Xが、第一部材31aと第二部材31bとからなる二重構造を有する点が実施例1と異なっている。
【0029】
先ず、
図6に示す第一部材31aは、実施例1の被覆部材と略同形の板材であり、管材4の周方向に長い矩形状に形成されている。この第一部材31aの外形は、周方向上側に位置する上縁部310aと、周方向下側に位置する下縁部311aと、軸線方向一側(前側)に位置する前縁部312aと、軸線方向他側(後側)に位置する後縁部313aとから形成されている。また第一部材31aでは、その前縁部312aに前側の脚部32が一体化され、その後縁部313aに後側の脚部33が一体化されている。そして第一部材31aには、孔部20を外側に露出させる略円形の窓部50が設けられている。
【0030】
次に、
図6に示す第二部材31bは、第一部材31aよりも周方向に短い略矩形の板材であり、上記した窓部50を塞ぐように第一部材31aの外側に重ねることができる。この第二部材31bの外形は、周方向上側に位置する上縁部310bと、周方向下側に位置する下縁部311bと、軸線方向一側(前側)に位置する前縁部312bと、軸線方向他側(後側)に位置する後縁部313bとから形成されている。そして第二部材31bの前縁部312bには、前側の張出部60が前側に張り出すように形成され、第二部材31bの後縁部313bには、後側の張出部61が後側に張り出すように形成されている。この前後の張出部60,61は、上方視で周方向に長い略矩形に形成されていると共に、対応する脚部32,33(横板部位321)の外側に重ねられるようになっている。
【0031】
ここで
図7及び
図8を参照して、被覆部位31Xは、第一部材31aの外側に第二部材31bを重ね、更に両部材31a,31bを係合することで形成することができる。即ち、
図6に示す第一部材31aの上縁部310aには上側の係合凹部70が設けられ、第一部材31aの下縁部311aには下側の係合凹部71が設けられている。この上下の係合凹部70(71)は、対応する縁部310a(311a)に設けられた略矩形の切欠き状の部位である。また第二部材31bの上縁部310bには上側の係合爪部80が設けられ、第二部材31bの下縁部311bには下側の係合爪部81が設けられている。この上下の係合爪部80(81)は、係合時において略L字形に曲げられており、対応する縁部310b(311b)から周方向に突出したのちに管材4側に曲げられている。そして上記した構成では、
図7及び
図8を参照して、第二部材31bを、窓部50を塞ぐように第一部材31aの外側に重ねつつ、上下の係合爪部80(81)を曲げながら対応する係合凹部70(71)にカシメ付けて係合する。こうして両部材31a,31bを係合することで被覆部位31Xが形成され、更に前側の張出部60が前側の脚部32の横板部位321に重ねられ、後側の張出部61が後側の脚部33の横板部位321に重ねられる。
【0032】
そして被覆部材30Xは、
図8に示すように管材4の下側領域4Bに取付けられて、孔部20を覆うように配置される。このとき上記した構成では、第一部材31aを管材4に取付けたのち、この第一部材31aに第二部材31bを係合させることができる。また被覆部位31Xは、第一部材31aの一対の脚部32,33によって、管材4との間に間隙40を設けた状態で支持される。なお被覆部位31Xと管材4間の間隙40の寸法は、第一部材31aと管材4間の径方向の距離で規定できる。そして上記した構成によっても、管材4内に過度の液体が滞留する前に、この管材4の下側領域4Bの適所に設けられた孔部20から液体が積極的に流れ出るようになる。そして液体は、被覆部位31Xを伝って下側に流れたのち、その周方向下側の位置に設けた開口部41から外部に排出される。更に本実施例においても、排水部10をなす孔部20が、管材4の最下端4uを通る仮想鉛直線VL1とは異なる位置に設けられると共に、被覆部位31Xと管材4間の間隙40の寸法が異音の発生を抑制する観点から設定されている。これにより、上記した構成によっても、液体と気体とが極力混じり難くなり、水膜の形成が極力回避されて、意図しない異音の発生をより確実に抑制することが可能となる。
【0033】
本実施形態の車両用の管材の排水構造は、上述した実施形態に限定されるものではなく、その他各種の実施形態を取り得る。本実施形態では、排水部としての孔部と被覆部材を例示したが、孔部と被覆部材の構成を限定する趣旨ではない。例えば孔部は、円形のほか、楕円形や多角形などの各種の形状を取ることができる。また管材では、仮想鉛直線とは異なる位置であれば、単数又は複数の孔部を下側領域の適宜の位置に形成できる。なお仮想鉛直線は、必ずしも管材の中心を通る必要はない。そして孔部の形成数に応じて、被覆部材を管材に取付けることができる。また被覆部位と管材間の間隙の寸法は、被覆部位の面方向において同一に設定されていてもよく、面方向において部分的に異なっていても(間隙の寸法が大きい部分と小さい部分とを設けても)よい。
【0034】
また被覆部位の曲面形状(面形状)も、孔部の外部を覆うことができる限り適宜変更可能であり、矩形等の多角形のほか、円形や楕円形等の各種形状を取りえる。また被覆部位は、孔部を正面から見た場合にこの孔部を被覆できる面積を有しておればよく、また、必ずしも被覆部位の中心に孔部を配置しておく必要はない。また脚部は、被覆部位の適宜の箇所に複数又は単数設けることができるが、開口部とは異なる箇所に設けることが好ましい。また別の開口部は、被覆部位の周方向上側と軸線方向両側の少なくとも一箇所に設けることができる。なお各開口部は、被覆部材の内外を連通する各種の構造(貫通孔等)で形成することができる。また管材の構成も適宜変更可能であり、その少なくとも一部がV字やL字やU字などの各種の形状に曲げられていてもよく、その少なくとも一部が直線的に(略水平に)配置されていてもよい。そして排水部の配置位置は、管材の構成に応じて適宜設定でき、液体の滞留が予想される管材の適宜の位置に設定できる。
【0035】
また実施例2の構成も適宜変更可能である。例えば
図6等に示す第二部材は、係合や係止や嵌合や締結や溶接等の各種手法で第一部材に固定でき、第一部材に対して着脱自在としてもよく着脱不能としてもよい。また第一部材は、各種形状の窓部を設けることができ、必要に応じて窓部を省略することもできる。そして第二部材は、第一部材の外側又は内側のいずれかに重ねておくことができ、各部材の形状や寸法も適宜設定可能である。第二部材を第一部材の内側に重ねた場合、被覆部位と管材間の間隙の寸法は、第二部材と管材間の径方向の距離で規定できる。なお被覆部位を、三つ以上の部材で形成することも許容される。
【符号の説明】
【0036】
2 車両
3 内燃機関
4 管材
4A (管材の)上側領域
4B (管材の)下側領域
4u (管材の)最下端
C (管材の)中心
5 サイレンサ
10 排水部
20 孔部
30 被覆部材
31 被覆部位
310 (被覆部位の)上縁部
311 (被覆部位の)下縁部
312 (被覆部位の)前縁部
313 (被覆部位の)後縁部
32,33 脚部
321 横板部位
322 縦板部位
323 フランジ部位
40 間隙
41 開口部
42 上側開口部(別の開口部)
43 前側開口部(別の開口部)
44 後側開口部(別の開口部)
VL1 仮想鉛直線
10X (実施例2の)排水部
30X (実施例2の)被覆部材
31X (実施例2の)被覆部位
31a 第一部材
310a (第一部材の)上縁部
311a (第一部材の)下縁部
312a (第一部材の)前縁部
313a (第一部材の)後縁部
31b 第二部材
310b (第二部材の)上縁部
311b (第二部材の)下縁部
312b (第二部材の)前縁部
313b (第二部材の)後縁部
50 窓部
60,61 張出部
70,71 係合凹部
80,81 係合爪部