(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155336
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】装飾装置及びハンドル
(51)【国際特許分類】
B62D 1/10 20060101AFI20241024BHJP
【FI】
B62D1/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023069984
(22)【出願日】2023-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】000229955
【氏名又は名称】日本プラスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】杉山 昌司
(72)【発明者】
【氏名】長澤 康悟
【テーマコード(参考)】
3D030
【Fターム(参考)】
3D030DB63
3D030DB81
(57)【要約】
【課題】外観を損なうことなく簡素な構成で取付部に対するエンブレムの位置ずれを抑制できる装飾装置及びこれを備えたステアリングホイールを提供する。
【解決手段】装飾装置17は、側壁部36を備える凹状の取付部16を有するパッド部10と、取付部16に少なくとも一部が埋め込まれて配置されるエンブレム15と、を備える。エンブレム15の背後側に側縁リブ部33及び端縁リブ部34が形成され、取付部16に一及び他の位置決め部43a,43bが形成されて、側縁リブ部33及び端縁リブ部34と一及び他の位置決め部43a,43bとの当接により、側縁リブ部33及び端縁リブ部34と一及び他の位置決め部43a,43bとの一方と側壁部36との間に側縁リブ部33及び端縁リブ部34と一及び他の位置決め部43a,43bとの他方の位置が規制されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
側壁部を備える凹状の取付部を有する取付部材と、
前記取付部に少なくとも一部が埋め込まれて配置される装飾部材と、を備え、
前記装飾部材の背後側に第一当接部が形成され、前記取付部に第二当接部が形成されて、前記第一当接部と前記第二当接部との当接により、前記第一当接部と前記第二当接部との一方と前記側壁部との間に前記第一当接部と前記第二当接部との他方の位置が規制されている
ことを特徴とする装飾装置。
【請求項2】
第一当接部は、線状に形成され装飾部材を補強するリブである
ことを特徴とする請求項1記載の装飾装置。
【請求項3】
装飾部材は、直線状の直線状部を有し、
第一当接部は、少なくとも一部が前記直線状部に沿って形成されている
ことを特徴とする請求項2記載の装飾装置。
【請求項4】
第一当接部は、少なくとも一部が装飾部材の外縁に沿って形成され、
側壁部は、前記装飾部材の直線状部と対向する直線状壁部を有し、
第二当接部は、前記第一当接部と当接して前記直線状壁部との間に前記第一当接部の位置を規制する
ことを特徴とする請求項3記載の装飾装置。
【請求項5】
ハンドル本体部と、
このハンドル本体部に取り付けられる請求項1ないし4いずれか一記載の装飾装置と、を備え、
前記装飾装置の取付部材がパッド部であり、前記装飾装置の装飾部材がエンブレムである
ことを特徴とするハンドル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、取付部に少なくとも一部が埋め込まれて配置される装飾部材を有する装飾装置及びこれを備えたハンドルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車などの車両用のハンドルであるステアリングホイールのパッドに、装飾部材であるエンブレムを埋め込んで配置したものが知られている。パッドには、エンブレムの外形に沿う凹状の取付部が形成され、取付部の側壁部が、エンブレムの外縁部に対向して位置する(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平01-161153号公報 (第6頁、第1図及び第2図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特に、エンブレムに直線状の部分がある場合、装飾部材の取り付け位置が、設計上の想定位置に対して僅かでも傾いていると、装飾体の直線状の部分と、それに対向する取付部の直線状の側壁部と、の間に、一側から他側へと徐々に間隔が変化する不均一な隙間が形成される。このような直線状の部分に生じる位置ずれにより生じる隙間は、僅かなものであっても相対的に際立ち、外観を損ねることとなる。このような僅かなずれでも際立つ外観上の不具合を解消するためには、一般的な位置決めでは不十分であり、また、デザイン上の制限で、装飾部材の直線状の部分と側壁部の直線状の部分との間の隙間には位置決め部を形成することが困難である。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、外観を損なうことなく簡素な構成で取付部に対する装飾部材の位置ずれを抑制できる装飾装置及びこれを備えたハンドルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の装飾装置は、側壁部を備える凹状の取付部を有する取付部材と、前記取付部に少なくとも一部が埋め込まれて配置される装飾部材と、を備え、前記装飾部材の背後側に第一当接部が形成され、前記取付部に第二当接部が形成されて、前記第一当接部と前記第二当接部との当接により、前記第一当接部と前記第二当接部との一方と前記側壁部との間に前記第一当接部と前記第二当接部との他方の位置が規制されているものである。
【0007】
請求項2記載の装飾装置は、請求項1記載の装飾装置において、第一当接部は、線状に形成され装飾部材を補強するリブであるものである。
【0008】
請求項3記載の装飾装置は、請求項2記載の装飾装置において、装飾部材は、直線状の直線状部を有し、第一当接部は、少なくとも一部が前記直線状部に沿って形成されているものである。
【0009】
請求項4記載の装飾装置は、請求項3記載の装飾装置において、第一当接部は、少なくとも一部が装飾部材の外縁に沿って形成され、側壁部は、前記装飾部材の直線状部と対向する直線状壁部を有し、第二当接部は、前記第一当接部と当接して前記直線状壁部との間に前記第一当接部の位置を規制するものである。
【0010】
請求項5記載のハンドルは、ハンドル本体部と、このハンドル本体部に取り付けられる請求項1ないし4いずれか一記載の装飾装置と、を備え、前記装飾装置の取付部材がパッド部であり、前記装飾装置の装飾部材がエンブレムであるものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の装飾装置によれば、装飾部材の背後側に隠れた位置で装飾部材の位置を規制して、装飾部材を取付部の所定の位置に確実に配置することができるので、外観を損なうことなく、簡素な構成で取付部に対する装飾部材の位置ずれを抑制できる。
【0012】
請求項2記載の装飾装置によれば、請求項1記載の装飾装置の効果に加えて、別途第一当接部を形成する場合と比較して、構成をより簡素化できる。
【0013】
請求項3記載の装飾装置によれば、請求項2記載の装飾装置の効果に加えて、装飾部材の直線状部の位置を取付部において高精度に設定できる。
【0014】
請求項4記載の装飾装置によれば、請求項3記載の装飾装置の効果に加えて、取付部において装飾部材の直線状部と取付部の側壁部の直線状壁部との直線状の合わせ隙が均一または略均一となり、外観が向上する。
【0015】
請求項5記載のハンドルによれば、エンブレムがパッド部に見栄えよく位置する、デザイン性に優れたハンドルを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施の形態の装飾装置を示す説明図である。
【
図2】(a)は同上装飾装置の一部を意匠側から示す平面図、(b)は同上装飾装置の一部を背後側から示す平面図、(c)は(a)のI-I相当位置の断面図である。
【
図3】同上装飾装置の一部を拡大して示す断面図である。
【
図5】同上装飾装置を備えるハンドルの例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0018】
図5において、1は車両である自動車用の操舵用のハンドル(ステアリングハンドル)であるステアリングホイールを示す。ステアリングホイール1は、ハンドル本体部であるステアリングホイール本体部2と、ステアリングホイール本体部2の乗員側に装着されるモジュール3と、を備えている。なお、ステアリングホイール1は、通常傾斜した状態で車両に備えられるステアリングシャフトに装着されるものであるが、以下、車両の直進状態を基準とし、ステアリングシャフト側を背面側、乗員側を正面側とし、フロントガラスに向かう方向(矢印A方向)を上側として説明する。また、前後方向及び左右方向については、乗員から見た方向として説明する。
【0019】
そして、ステアリングホイール本体部2は、円環状をなす把持部であるグリップ部であるリム部4と、リム部4の内側に位置するボス部5と、これらリム部4とボス部5とを連結する複数のスポーク部6と、から構成されている。スポーク部6は、本実施の形態において、左右二本のものを図示するが、二本に限定されるものではない。スポーク部には、各種スイッチなどが配置されていてもよい。
【0020】
また、ボス部5の背面部には、ステアリングシャフトに嵌着される略円筒状のボスが設けられているとともに、このボスに芯体を構成するボスプレートが一体的に固着されている。そして、ボスプレートから、スポーク部6の芯金が一体に延設され、あるいは溶接などして固着されている。さらに、スポーク部6の芯金に、リム部4の芯金が溶接などして固着されている。
【0021】
さらに、ステアリングホイール本体部2の背後側には、合成樹脂製などのボディカバーが取り付けられている。ボディカバーは、ステアリングホイール本体部2のボス部5及び左右のスポーク部6の背面側すなわち裏面側を覆っている。
【0022】
また、リム部4の芯金の外周部とスポーク部6の芯金のリム部4側の部分の外周部とには表皮部が形成され、さらに、この表皮部の外周の全部あるいは一部が、天然あるいは人工の皮革などにより覆われている。
【0023】
モジュール3は、ステアリングホイール本体部2のボス部5の正面側を覆って配置される。モジュール3は、一例として、エアバッグ装置などの補助拘束装置(SRS)である。また、モジュール3は、自動車に備えられるホーン装置のスイッチとしての機能を有する。
【0024】
モジュール3は、パッド部10と、ケース部と、を有する。モジュール3がエアバッグ装置である場合、折り畳まれた状態のエアバッグがガス噴射装置(インフレータ)などとともにケース部に配置されてパッド部10により覆われている。
【0025】
図4及び
図5に示すパッド部10は、ステアリングホイール1において乗員側に対向して位置する意匠部分である。パッド部10は、カバー体、モジュールカバーなどとも呼ばれる。パッド部10は、例えば合成樹脂により形成されている。パッド部10は、本体部13を備えている。本体部13は、例えば板状に形成され、主としてパッド部10の意匠部分を構成する。本体部13の背面(裏面)には、正面視略角筒状などの筒状に突設された周壁である周板部14が形成されている。本体部13と周板部14とに囲まれた部分が、エアバッグなどの被収納部材を収納する収納部となっている。周板部14には、図示しないが、ケース部とパッド部10とを係合するためのパッド係合部などが形成されている。
【0026】
本体部13には、装飾部材であるエンブレム15が取り付けられる取付部16が形成されている。つまり、パッド部10は、エンブレム15が取り付けられる取付部材である。パッド部10とエンブレム15とにより、装飾装置17が構成されている。本実施の形態の装飾装置17は、自動車などの車両用のものである。
【0027】
図1に示すエンブレム15は、デザインオーナメント、アッパプレート、あるいはアッパエンブレムなどとも呼ばれ、意匠部分を構成している。エンブレム15は、例えば合成樹脂により成形されている。エンブレム15は、少なくとも一部が取付部16に埋め込まれて配置される。
【0028】
エンブレム15は、装飾部材本体部であるエンブレム本体部20を備える。エンブレム本体部20は、本体部13の意匠側である表面に沿って位置する。エンブレム本体部20は、長手方向を有する形状に形成されている。本実施の形態において、エンブレム本体部20は、長方形状に形成されている。すなわち、エンブレム本体部20には、直線状の部分が形成されている。本実施の形態では、エンブレム本体部20には、直線状部である長辺部20a,20aと直線状部である短辺部20b,20bとにより外縁部が囲まれている。図示される例では、エンブレム本体部20は、長手方向と短手方向との寸法比が2:1以上の長方形状となっている。また、エンブレム本体部20は、平板状に形成されている。
【0029】
エンブレム本体部20には、係合部21が突設されている。係合部21は、フックとも呼ばれ、エンブレム15をパッド部10の本体部13に取り付けるためのものである。
図2(c)に示すように、係合部21は、エンブレム本体部20の背後側に位置する。係合部21は、エンブレム本体部20の厚み方向に延びるピン状に形成されている。係合部21は、エンブレム本体部20と連なる軸部23を有する。軸部23の先端部には、抜止部である拡大部24が一体的に形成されている。拡大部24は、軸部23に対し、係合部21の突出方向と交差する方向に拡大されている。
【0030】
本実施の形態において、係合部21は、複数設けられている。図示される例では、係合部21は、エンブレム本体部20に三つ設定されている。これら係合部21は、エンブレム本体部20の長手方向に互いに離れて配置されている。図示される例では、係合部21は、エンブレム本体部20の長手方向の中央部と、両端部近傍と、にそれぞれ位置する。
【0031】
また、
図1に示すように、エンブレム本体部20には、補強用のリブ26が形成されている。リブ26は、エンブレム本体部20の背後側において、係合部21間を連結して形成されている。リブ26は、エンブレム本体部20の背後側に係合部21よりも小さい突出量で突出している。リブ26は、係合部21の基端部から、エンブレム本体部20の一の端縁部側である長手方向の一端部側及び他の端縁部側である長手方向の他端部側に延びて形成されている。本実施の形態では、リブ26は、エンブレム本体部20の一の端縁部である長手方向の一端部から、係合部21の基端部を介して、長手方向の他端部に亘り連なっている。すなわち、リブ26は、複数の係合部21間に連なり、エンブレム本体部20の長手方向全体に亘り配置されている。そのため、リブ26は、エンブレム本体部20の短手方向の任意の断面上に位置するようにエンブレム本体部20の全体に亘り形成されている。
【0032】
リブ26は、係合部21を成形する際に同時に成形される。本実施の形態において、リブ26は、エンブレム本体部20の短手方向に対して非平行に形成されている。
【0033】
好ましくは、リブ26は、第一部分である連結リブ部31と、第二部分である傾斜リブ部32と、第三部分である側縁リブ部33と、第四部分である端縁リブ部34と、を一体的に有する。連結リブ部31は、各係合部21の基端部と連なってエンブレム本体部20の長手方向に延びる。本実施の形態において、連結リブ部31は、各係合部21の両側部にそれぞれ設定されている。また、傾斜リブ部32は、連結リブ部31の係合部21とは反対側の端部から係合部21に対し離れる方向に向かい長手方向と交差する方向に傾斜状に延びる。図示される例では、傾斜リブ部32は、連結リブ部31の端部から短手方向の一方側と他方側とにそれぞれ拡大されるように傾斜されている。さらに、側縁リブ部33は、傾斜リブ部32の連結リブ部31側の端部とは反対側の端部に連なってエンブレム本体部20の長手方向に延びる。エンブレム本体部20の長手方向に隣接する傾斜リブ部32,32間が側縁リブ部33により連結される。側縁リブ部33は、エンブレム本体部20の長辺部20aに沿って直線状に形成され、エンブレム本体部20の外縁に位置する。傾斜リブ部32と側縁リブ部33とにより、リブ26の一部が係合部21,21間でハニカム状(六角形状)に形成されている。また、端縁リブ部34は、エンブレム本体部20の長手方向の両端部の位置において、側縁リブ部33に連なってエンブレム本体部20の短手方向に延びる。端縁リブ部34は、エンブレム本体部20の短辺部20bに沿って直線状に形成され、エンブレム本体部20の外縁に位置する。傾斜リブ部32と側縁リブ部33と端縁リブ部34とにより、リブ26の一部がエンブレム本体部20の長手方向の両端部にてループ状に形成されている。
【0034】
一方、取付部16は、エンブレム15が収容される凹状に窪んで本体部13に形成されている。取付部16は、エンブレム15の外形に沿った形状に形成されている。取付部16は、側壁部36及び底部37により囲まれる凹状の空間部である。
【0035】
側壁部36は、エンブレム15のエンブレム本体部20の外縁部に対向する。本実施の形態では、側壁部36は、角筒状の枠部として形成されている。側壁部36は、エンブレム本体部20の長辺部20aに対向する直線状壁部である長壁部36aと、エンブレム本体部20の短辺部20bに対向する直線状壁部である短壁部36bと、が形成されている。図示される例では、長壁部36aは、左右方向に長手状に延び、短壁部36bは、上下方向に延びている。
【0036】
底部37は、エンブレム15の取付座面である。底部37は、側壁部36に連なって形成されている。底部37は、長壁部36aと短壁部36bとにより囲まれる四角形状となっている。底部37は、平板状に形成されている。底部37には、
図2(c)に示すようにエンブレム15の係合部21がそれぞれ挿通される開口部38が形成されている。開口部38は、底部37を貫通して形成されている。開口部38は、係合部21と同数形成されている。開口部38は、丸穴状に形成されている。
【0037】
そして、開口部38に挿通された係合部21は、
図2(b)、
図2(c)及び
図4に示すように、底部37すなわち本体部13の背後側で保持部材40により係合保持されることで、本体部13(底部37)を板厚方向に挟み込んだ状態で保持される。
【0038】
保持部材40は、バックプレートなどとも呼ばれ、本体部13の背後に位置して通常露出しない部分である。保持部材40は、例えば合成樹脂により板状に成形されている。保持部材40は、エンブレム15を本体部13に保持できれば種々の形状とすることができるが、本実施の形態では、エンブレム15のエンブレム本体部20と同様に、長手方向を有する形状に形成されている。図示される例では、保持部材40は、長方形状に形成されている。
【0039】
また、保持部材40には、開口部38に挿通されたエンブレム15の係合部21を受ける受け部41が形成されている。受け部41は、保持部材40を貫通する穴部として形成されている。受け部41は、係合部21と同数形成されている。本実施の形態において、受け部41は、保持部材40に三つ設定されている。これら受け部41は、保持部材40の長手方向に互いに離れて配置されている。図示される例では、受け部41は、保持部材40の長手方向の中央部と、両端部近傍と、にそれぞれ位置する。
【0040】
受け部41の内縁部には、挿入された係合部21の拡大部24を係止する爪部である係止部41aが形成されている。係止部41aは、受け部41に対する係合部21の挿脱方向に厚み方向を有して、この厚み方向に弾性変形可能な板状となっている。
【0041】
また、
図1に示すように、取付部16の底部37には、エンブレム15を位置決めする位置決め部43が形成されている。位置決め部43は、エンブレム15のリブ26の一部との当接により取付部16に対するエンブレム15の位置を規制する。
【0042】
位置決め部43は、底部37から正面側に突出している。位置決め部43は、板状に形成されて細長く延びるリブである。位置決め部43には、エンブレム15の上下の位置と、エンブレム15の回転ずれと、を規制する一の位置決め部43aと、エンブレム15の左右の位置を規制する他の位置決め部43bと、が設定されている。
【0043】
一の位置決め部43aは、エンブレム15のエンブレム本体部20の中央部に対応する底部37の中央部を基準として、長手方向(左右方向)及び短手方向(上下方向)にそれぞれ対をなして設定されている。本実施の形態において、一の位置決め部43aは、底部37の中央部を基準として左側の上下と右側の上下とにそれぞれ設定されている。図示される例では、一の位置決め部43aは、側壁部36の長壁部36aに近接し、かつ、長壁部36aから離れて位置する。一の位置決め部43aと側壁部36の長壁部36aとの間に、エンブレム15のリブ26の側縁リブ部33の位置が規制されている。つまり、エンブレム15のリブ26の側縁リブ部33が第一当接部であり、一の位置決め部43aが第一当接部に当接して第一当接部の位置を側壁部36との間に規制する第二当接部(当てリブ)として機能する。一の位置決め部43aは、上下方向に延びて形成されている。
【0044】
他の位置決め部43bは、エンブレム15のエンブレム本体部20の長手方向の両端部に対応する底部37の長手方向(左右方向)の両端部にて底部37の短手方向(上下方向)の中央部にそれぞれ設定されている。図示される例では、他の位置決め部43bは、側壁部36の短壁部36bに近接し、かつ、短壁部36bから離れて位置する。他の位置決め部43bと側壁部36の短壁部36bとの間に、エンブレム15のリブ26の端縁リブ部34の位置が規制されている。つまり、エンブレム15のリブ26の端縁リブ部34が第一当接部であり、他の位置決め部43bが第一当接部に当接して第一当接部の位置を側壁部36との間に規制する第二当接部(当てリブ)として機能する。他の位置決め部43bは、左右方向に延びて形成されている。
【0045】
また、
図3に示すように、位置決め部43は、側壁部36に対向する縁部が、正面側から背後側に向かい側壁部36に対して徐々に接近するように傾斜した傾斜部45となっている。傾斜部45の傾斜角度は、底部37の法線方向または底部37からの位置決め部43の突出方向に対し例えば15°程度に設定されている。また、傾斜部45は、エンブレム15の側縁リブ部33、端縁リブ部34に対し、所定の干渉代OLで干渉するように設定されている。干渉代OLは、僅かなものであり、例えば0.05mm程度に設定されている。
【0046】
そこで、エンブレム15をパッド部10に取り付ける際には、
図4に示すように、エンブレム15をパッド部10の正面側から取付部16に近づけ、係合部21を開口部38に挿入するようにエンブレム15のエンブレム本体部20を取付部16に押し込む。
【0047】
このとき、
図3に示すエンブレム本体部20の背後に形成されているリブ26の側縁リブ部33及び端縁リブ部34が、取付部16の底部37の一及び他の位置決め部43a,43bのそれぞれの傾斜部45に当接し、傾斜部45の傾斜にしたがって側縁リブ部33及び端縁リブ部34が側壁部36の長壁部36a及び短壁部36b側へと接近するように案内され、一及び他の位置決め部43a,43bに当接している側縁リブ部33及び端縁リブ部34が一及び他の位置決め部43a,43bと長壁部36a及び短壁部36bとの間に位置するように規制される。
【0048】
そこで、
図2(a)に示すように、取付部16においてエンブレム15のエンブレム本体部20の長辺部20a及び短辺部20bが取付部16の側壁部36の長壁部36a及び短壁部36bに沿って直線長手状に延びる一定または略一定の僅かな合わせ隙を有する所定の位置にエンブレム15が位置決めされる。
【0049】
この後、
図2(b)及び
図2(c)に示すように、開口部38に挿通されて取付部16の底部37の背後側に突出する係合部21に対し、別途形成された保持部材40の受け部41を位置合わせして、保持部材40を押し込むことで、係合部21の先端部に形成された拡大部24が受け部41の係止部41aを弾性変形させつつ乗り越え、係止部41aが復帰変形して拡大部24に引っ掛かることで、エンブレム15がパッド部10に保持される。
【0050】
上述したように、エンブレム15の背後側に形成されたリブ26の側縁リブ部33及び端縁リブ部34と、取付部16に形成された一及び他の位置決め部43a,43bと、の当接により、一及び他の位置決め部43a,43bと側壁部36との間に側縁リブ部33及び端縁リブ部34の位置が規制されるので、エンブレム15の背後側に隠れた位置でエンブレム15の位置を規制して、エンブレム15を取付部16の所定の位置に確実に配置することができる。そこで、例えばエンブレム15と取付部16の側壁部36との間の隙間に位置決め部を形成するなどの必要がなく、エンブレム15と取付部16の側壁部36との間の隙間から位置決め部が見えることがないので、外観を損なうことなく、簡素な構成で取付部16に対するエンブレム15の位置ずれを抑制できる。
【0051】
エンブレム15の背後側に形成された補強用のリブ26の一部である側縁リブ部33及び端縁リブ部34を第一当接部として利用することで、別途第一当接部を形成する場合と比較して、構成をより簡素化できる。
【0052】
エンブレム15の直線状の長辺部20a及び短辺部20bに沿って、側縁リブ部33及び端縁リブ部34を形成しているので、エンブレム15の長辺部20a及び短辺部20bの位置を取付部16において高精度に設定できる。
【0053】
側縁リブ部33及び端縁リブ部34のそれぞれの少なくとも一部、本実施の形態では全部がエンブレム15の外縁に沿って形成され、側壁部36がエンブレム15の側縁リブ部33及び端縁リブ部34と対向する長壁部36a及び短壁部36bを有し、一及び他の位置決め部43a,43bが側縁リブ部33及び端縁リブ部34と当接して長壁部36a及び短壁部36bとの間に側縁リブ部33及び端縁リブ部34の位置を規制することで、取付部16においてエンブレム15の長辺部20a及び短辺部20bと取付部16の側壁部36の長壁部36a及び短壁部36bとの直線状の合わせ隙が均一または略均一となり、外観が向上する。
【0054】
しかも、一及び他の位置決め部43a,43bの側壁部36側の縁部に傾斜部45を形成したので、エンブレム15の側縁リブ部33及び端縁リブ部34を一及び他の位置決め部43a,43bに当接させて押し込むだけで傾斜部45により側縁リブ部33及び端縁リブ部34が案内されて、エンブレム15の位置が自動的に所定の位置に決まる。そのため、エンブレム15の取り付けの作業性が良好である。
【0055】
また、側縁リブ部33及び端縁リブ部34と一及び他の位置決め部43a,43bの傾斜部45,45との干渉によって側縁リブ部33及び端縁リブ部34をエンブレム15の外側方向へと押し込み、エンブレム15を特に回転方向に規制して、エンブレム15の長辺部20a及び短辺部20bと側壁部36の長壁部36a及び短壁部36bとの間に大きな合わせ隙が生じることを抑制できるとともに、エンブレム15の係合部21に保持部材40を取り付けるまでの間、エンブレム15を取付部16に仮保持でき、エンブレム15の取り付けの作業性が良好である。
【0056】
そして、ステアリングホイール1のパッド部10にエンブレム15を配置した装飾装置17を構成することで、エンブレム15がパッド部10に見栄えよく位置する、デザイン性に優れたステアリングホイール1を提供できる。
【0057】
なお、一実施の形態において、位置決め部43と側壁部36との間に側縁リブ部33、端縁リブ部34が位置する構成としたが、これに限らず、側縁リブ部33、端縁リブ部34と側壁部36との間に位置決め部43が位置する構成でもよい。
【0058】
また、エンブレム15において、第一当接部は、リブ26とは別個に形成されていてもよい。
【0059】
さらに、上記の例では、四つの一の位置決め部43aと二つの他の位置決め部43bとを設定したが、位置決め部43の個数は限定されない。
【0060】
また、装飾装置17の装飾部材は、エンブレム15に限定されず、その他の任意の装飾部材としてよい。
【0061】
さらに、装飾装置17は、自動車などの車両用に限らず、任意の用途に適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、例えば自動車のステアリングホイールのパッド構造として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0063】
1 ハンドルであるステアリングホイール
2 ハンドル本体部であるステアリングホイール本体部
10 取付部材であるパッド部
15 装飾部材であるエンブレム
16 取付部
17 装飾装置
20a 直線状部である長辺部
20b 直線状部である短辺部
33 第一当接部である側縁リブ部
34 第一当接部である端縁リブ部
36 側壁部
36a 直線状壁部である長壁部
36b 直線状壁部である短壁部
43a 第二当接部である一の位置決め部
43b 第二当接部である他の位置決め部