(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155341
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】サッシ
(51)【国際特許分類】
E06B 1/32 20060101AFI20241024BHJP
E06B 3/20 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
E06B1/32
E06B3/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023069990
(22)【出願日】2023-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】植木 希
(72)【発明者】
【氏名】八尾 尚志
(72)【発明者】
【氏名】門木 健
(72)【発明者】
【氏名】熊野 崇史
【テーマコード(参考)】
2E011
2E014
【Fターム(参考)】
2E011CA00
2E011CB01
2E011CC03
2E014AA03
2E014BA02
2E014BA08
2E014BB00
(57)【要約】
【課題】意匠性と人体への安全性に配慮した、再生塩化ビニル系樹脂を含む層と、未使用の塩化ビニル系樹脂を含む層と、で形成されているサッシを提供すること。
【解決手段】再生塩化ビニル系樹脂を含む層71、81と、未使用の塩化ビニル系樹脂を含む層70、80と、で形成されているサッシ1であって、不可視部に用いられる再生塩化ビニル系樹脂を含む層71、81は、サッシ1の中空部H1、H2,H3,H4,H5、H6、及び、前記サッシの躯体で隠れる面74を有しているサッシ1である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
再生塩化ビニル系樹脂を含む層と、未使用の塩化ビニル系樹脂を含む層と、で形成されているサッシであって、
前記再生塩化ビニル系樹脂を含む層は、不可視部に用いられているサッシ。
【請求項2】
前記不可視部に用いられる前記再生塩化ビニル系樹脂を含む層は、前記サッシの中空部、及び、前記サッシの躯体で隠れる面を有している、請求項1に記載のサッシ。
【請求項3】
前記不可視部に用いられる前記再生塩化ビニル系樹脂を含む層は、雨水に接触しない面を有している、請求項1に記載のサッシ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、サッシに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、使用済みの塩化ビニル系樹脂を再生した再生塩化ビニル系樹脂を利用することが検討されている。
【0003】
特許文献1には、ポリ塩化ビニルを主成分とする使用済み樹脂サッシを回収し、使用済み樹脂サッシを粉砕してリサイクル粉末を作製し、リサイクル粉末の特性評価を行い、特性評価の結果に基づいてリサイクル粉末に添加する添加剤を決定し、リサイクル粉末と添加剤とを混合して混練物を作製し、混練物を押出成形する樹脂サッシの製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
昨今では、世界共通の目標としてSDGsが課題となっており、具体的な取り組みとしてリサイクルが推奨されている。サッシ等の建材製品においても、原料ごとに分解し、資源として再生利用することが企業の課題となっている。しかしながら、特許文献1に記載の使用済み樹脂サッシを粉砕して得られるリサイクル粉末は、高融点樹脂、木粉、無機物等の不純物が混入しているため、押出成形して得られる樹脂サッシの表面平滑性が低下し、表層部の美観が損なわれてしまっている。
【0006】
また従来、塩化ビニル系樹脂サッシの製造工程では鉛系の安定剤が用いられており、金属としての鉛は有害物質であるため、人体への影響が懸念されていた。そうした経緯から、現在は脱鉛化に取り組んでいる企業も増えている。過去の建材から製造されたリサイクル材には鉛系安定剤が用いられている可能性が高く、そうした企業にとって、これらのリサイクル材を製品製造に使用することに懸念が生じるという課題も顕在していた。
【0007】
本開示は、このような課題に鑑みて、意匠性と人体への安全性に配慮した、再生塩化ビニル系樹脂を含む層と、未使用の塩化ビニル系樹脂を含む層と、で形成されているサッシを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示におけるサッシは、再生塩化ビニル系樹脂を含む層と、未使用の塩化ビニル系樹脂を含む層と、で形成され、前記再生塩化ビニル系樹脂を含む層は、不可視部に用いられている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1、及び、第2実施形態の引き違い窓の要部水平断面図である。
【
図3】本実施形態の樹脂縦枠を製造する際に使用する押出成形機の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の第1実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1及び
図2に示す実施形態によるサッシとしての引き違い窓1は、躯体2の開口部2aに固定した枠体3として上枠と下枠と左右の縦枠4とが四角形枠状に形成されている。枠体3内には外障子6と内障子(図示せず)が開閉可能に納められている。枠体3の金属枠の屋内側には、樹脂縦枠がそれぞれ連結されている。樹脂縦枠の樹脂は、塩化ビニル系樹脂である。
【0011】
本明細書において、「見付方向」とは、枠体3内に納められた外障子6の面材の面方向を意味し、「見込方向」とは、上記面材の厚さ方向(即ち、奥行き方向)を意味する。「見込方向」は室内外方向でもある。
【0012】
躯体2の開口部2aの屋外側に縦枠4が収納されている。
図1及び
図2に示す縦枠4は、見込方向においては、金属枠としての金属縦枠5とその屋内側に固定された樹脂縦枠8とで係合されている。見付方向においては、外障子6の縦框と室内側に固定された塩化ビニル系樹脂縦框7とで係合されている。これらの構成は、枠体3の左右両側に対向して設置されている。
【0013】
金属縦枠5において、板状の本体部51が屋内外方向に延びると共に、その途中で分岐した分岐部52が、躯体2側に延びて固定ネジ10によって躯体2に固定されている。金属縦枠5の本体部51の屋内側端部には略コの字状に屈曲し、爪状の取り付け部54を有する第1係合部50が形成され、第一係合部50から分岐して更に屋内側に延びる先端片53は固定ネジ10によって躯体2に固定されている。第一係合部50は金属縦枠5の上端から下端に亘って通しで設けられている。
【0014】
一方、樹脂縦枠8は中空部が形成されたホロー構造H1と、H2と、H3と、を有している。樹脂縦枠8の屋外側端部には金属縦枠5の第1係止部55に係止された、例えば略L字状の第2係止部83が形成されている。また、樹脂縦枠8の屋内側端部には屋内片部82が形成され、その一端は略L字状に屈曲されて額縁16と係止されている。屋内片部82の他端側には、弾性変形可能な爪状の取り付け部84を有する、第2係合部80が形成されている。第2係合部80は樹脂縦枠8の上端から下端に亘って通しで設けられている。
【0015】
第一係合部50の取り付け部54と第2係合部80の取り付け部84が互いに係合し合うことにより、樹脂縦枠8は金属縦枠5に対して水平方向に外れないように保持されている。本実施形態において、係合部は嵌合部を構成する。
【0016】
外障子6は縦框60を有しており、屋外側に板状の本体部61が見付方向に延びている。本体部61には、ペア構造のガラスGを納めるように、ホロー構造を有する正方形状の縦部材62が室内方向へと連続して設けられている。縦部材62は室内側の一辺に、被係止片63と、64と、を有している。
【0017】
対となる樹脂縦框7は、中空部が形成されたホロー構造H4と、H5と、H6と、を有している。樹脂縦框7の屋外側には、縦框60を係止するための、略L字状をした係止片72と、73と、が形成されている。
【0018】
縦框60の被係止片63、被係止片64が、樹脂縦框7の係止片72、係止片73にそれぞれ係止されることで、外障子6は樹脂縦框7に対して水平方向に外れないように保持されている。
【0019】
次に、樹脂縦枠8と樹脂縦框7の構造について詳細に説明する。樹脂縦枠8は
図2で示すように、再生塩化ビニル系樹脂を含む層81と、鉛が使用されておらず含まれていない未使用の塩化ビニル系樹脂を含む層80と、の二層が用いられて形成されている。再生塩化ビニル系樹脂を含む層81は室内側において、不可視部に用いられている。具体的には、ホロー構造H1と、H2と、H3と、で構成される、樹脂縦枠8の中空部は再生塩化ビニル系樹脂を含む層81のみで形成されている。また、金属縦枠5と係合することでサッシの躯体2に隠れる面についても、再生塩化ビニル系樹脂を含む層81のみで形成されている。躯体2に隠れる面の具体例として、金属縦枠5の第1係合部50と、樹脂縦枠8の第2係合部80と、が係合することで生じた隙間S1と、S2と、S3と、を構成する樹脂縦枠8のコの字状をした面や、屋内片部82と額縁16と、が当接及び近接する面を示す。これらの面には、再生塩化ビニル系樹脂を含む層81のみが用いられている。
【0020】
すなわち、室内外を問わず肉眼で確認できる面にのみ、未使用の塩化ビニル系樹脂を含む層80が用いられて、再生塩化ビニル系樹脂を含む層81を被覆する二層構造になっている。
【0021】
樹脂縦框7は
図2で示すように、再生塩化ビニル系樹脂を含む層71と、鉛が使用されておらず含まれていない未使用の塩化ビニル系樹脂を含む層70と、二層を用いて形成されている。再生塩化ビニル系樹脂を含む層71は室内側において、不可視部に用いられている。具体的には、ホロー構造H4と、H5と、H6と、で構成される、樹脂縦框7の中空部は再生塩化ビニル系樹脂を含む層71のみで形成されている。また、外障子6と係合することでサッシの躯体2に隠れる面についても、再生塩化ビニル系樹脂を含む層71のみで形成されている。躯体2に隠れる面の具体例として、外障子6の縦框60と樹脂縦框7の係止片72、及び73が係合することで生じた隙間S4と、S5と、S6と、を構成する樹脂縦框7のコの字状をした面や、外障子6によって室内側から隠れている、樹脂縦框7の左端に形成された、略L字状をした面74等を示す。これらの面には、再生塩化ビニル系樹脂を含む層71のみが用いられている。
【0022】
すなわち、室内側から肉眼で確認できる面にのみ、未使用の塩化ビニル系樹脂を含む層70が用いられて、再生塩化ビニル系樹脂を含む層71を被覆する二層構造になっている。
【0023】
これらの構造により、室内においては再生塩化ビニル系樹脂を含む層81を視認することも、直接触れることも出来ない。そのため、不純物が混入して表面の美観が損なわれたリサイクル材の表層部を目視する機会がなくなり、また、鉛の有害性について不快感やおそれを抱く懸念もなくなる。これにより、製品の美観を保ったまま資材の再生利用が可能になり、暮らしの安心や安全も守られることで、リサイクルを促進する効果がある。
【0024】
次に本開示の第2実施形態について説明する。第2実施形態における引き違い窓は、樹脂縦枠において再生塩化ビニル系樹脂を含む層を、未使用の塩化ビニル系樹脂を含む層が被覆する箇所以外は、第1実施形態における引き違い窓1と同一であるため、説明についても省略する。
【0025】
引き違い窓の枠体3(
図1参照)の下枠には、図示しない通常水抜き口が設けられている。引き違い戸が円滑に開閉するために、下枠と障子の間にはわずかな隙間があり、暴風雨等の際に、前述の隙間から雨水が枠の内側まで浸入する場合がある。その水が室内側まで漏水しないように、速やかに外部へ排出するための開口が、水抜き口である。水抜き口はサッシによって、様々な形態で設けられている。
【0026】
第2実施形態において、再生塩化ビニル系樹脂で形成されたサッシは、前述の水抜き口を通過して雨水が排出される経路とその周辺の面、および、直接雨水が触れる屋外側の面が、鉛が使用されておらず含まれていない未使用の塩化ビニル系樹脂を含む層で被覆されている。
【0027】
この構造によって、繰り返し雨水に触れることにより、再生塩化ビニル系樹脂から有毒性を持った鉛成分が溶出する不安や懸念を取り除くことが可能であり、暮らしの安心、安全が守られることで、リサイクルを促進する効果がある。
【0028】
前記実施形態においては、本開示は、上述した実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
【0029】
例えば、前記実施形態において、雨水と接触する面について、水抜き口や直接雨水に触れる屋外側の面を例として説明したが、サッシの構造によって、雨水が接触する可能性のある面が他にもあれば、それらの面についても、鉛が使用されておらず含まれていない未使用の塩化ビニル系樹脂を含む層で被覆することができる。
【0030】
次に、本実施形態のサッシにおいて用いられる樹脂縦框7、樹脂縦枠8の製造方法の一例について説明する。未使用の塩化ビニル系樹脂を含む層80を用いて、再生塩化ビニル系樹脂を含む層81を被覆する、二層構造の樹脂縦枠である。本実施形態のサッシの製造方法は、再生塩化ビニル系樹脂を含む組成物と、未使用の塩化ビニル系樹脂を含む被覆層用組成物と、を共押出成形する工程を含む。再生塩化ビニル系樹脂を含む組成物および被覆層用組成物は、それぞれ、添加剤をさらに含んでいてもよい。
【0031】
図3に示す押出成形機100を使用する。押出成形機100は、再生塩化ビニル系樹脂を含む組成物を押出す第1押出機110と、被覆層用組成物を押出す第2押出機120と、ダイス130と、冷却機140と、を備える。第1押出機110は、再生塩化ビニル系樹脂を含む組成物が投入される第1ホッパー111を備え、第2押出機120は、被覆層用組成物が投入される第2ホッパー121を備える。ここで、第1ホッパー111に投入された再生塩化ビニル系樹脂を含む組成物は、第1押出機110によって、所定の温度に加熱され、第1の溶融物として押出される。一方、第2ホッパー121に投入された被覆層用組成物は、第2押出機120によって、所定の温度に加熱され、第2の溶融物として押出される。第1の溶融物および第2の溶融物は、ダイス130を通過して、所定の形状となった後、冷却機140を通過して、共押出成形物Cが得られる。共押出成形物Cは、任意の長さに切断され、サッシ1の樹脂縦框7、樹脂縦枠8が得られる。
【0032】
[再生塩化ビニル系樹脂の製造方法]
再生塩化ビニル系樹脂の製造方法としては、特に限定されず、公知の方法を使用することができる。例えば、まず、サッシから金属等の異物を除去した後、残った樹脂を破砕する。次に、破砕によって得られた粉末を洗浄した後、乾燥させ、再生塩化ビニル系樹脂を得る方法がある。
【0033】
以上、本開示の実施形態の製造方法について説明したが、本開示は、上記の製造方法に限定されず、本開示の趣旨の範囲内で、上記の製造方法を適宜変更してもよい。
【符号の説明】
【0034】
1 引き違い窓(サッシ)、 70 未使用の塩化ビニル系樹脂を含む層、 71 再生塩化ビニル系樹脂を含む層、 74 略L字状をした面(不可視部)、 80 未使用の塩化ビニル系樹脂を含む層、 81再生塩化ビニル系樹脂を含む層、 H1 ホロー構造(不可視部)、 H2 ホロー構造(不可視部)、 H3 ホロー構造(不可視部)、 H4 ホロー構造(不可視部)、 H5 ホロー構造(不可視部)、 H6 ホロー構造(不可視部)