(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155344
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】調理システム及び食品製造方法
(51)【国際特許分類】
A47J 27/14 20060101AFI20241024BHJP
A47J 37/06 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
A47J27/14 H
A47J27/14 Q
A47J37/06 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023069993
(22)【出願日】2023-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】505126610
【氏名又は名称】株式会社ニチレイフーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100130719
【弁理士】
【氏名又は名称】村越 卓
(72)【発明者】
【氏名】中鏡 裕一
(72)【発明者】
【氏名】澤井 駿
【テーマコード(参考)】
4B040
4B054
【Fターム(参考)】
4B040AA01
4B040AC08
4B040AD04
4B040AD08
4B040AE01
4B054AA17
4B054AB05
4B054AC02
4B054BA12
4B054CD03
4B054CG01
(57)【要約】
【課題】食材を適切に撹拌しつつ調理を行うのに有利な技術を提供する。
【解決手段】調理システムは、鍋を搬送し、複数のステーションの各々において鍋を間欠的に停止させる搬送装置と、割り当てられるステーションにおいて鍋内の食材を撹拌する複数の撹拌デバイスと、を備え、複数の撹拌デバイスは、第1撹拌デバイスと、第1撹拌デバイスの撹拌子とは異なる形状の撹拌子を有する第2撹拌デバイスと、を含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鍋を搬送し、複数のステーションの各々において前記鍋を間欠的に停止させる搬送装置と、
割り当てられるステーションにおいて前記鍋内の食材を撹拌する複数の撹拌デバイスと、を備え、
前記複数の撹拌デバイスは、第1撹拌デバイスと、前記第1撹拌デバイスの撹拌子とは異なる形状の撹拌子を有する第2撹拌デバイスと、を含む、
調理システム。
【請求項2】
前記複数のステーションは、
前記第1撹拌デバイスを使って前記鍋内の前記食材を混合するための食材混合ステーションと、
前記食材混合ステーションよりも下流に設けられ、且つ、前記第2撹拌デバイスを使って前記鍋内の前記食材の塊のサイズを小さくするための塊縮小化ステーションと、
を含む、
請求項1に記載の調理システム。
【請求項3】
前記複数の撹拌デバイスは、前記第1撹拌デバイス及び前記第2撹拌デバイスの各々の撹拌子とは異なる形状の撹拌子を有する第3撹拌デバイスを含み、
前記複数のステーションは、
前記食材混合ステーションよりも上流に設けられ、且つ、前記鍋内の前記食材を、前記第3撹拌デバイスを使って撹拌しつつ加熱するための食材加熱ステーションを含む、
請求項2に記載の調理システム。
【請求項4】
複数のステーションの各々において鍋を間欠的に停止させるように前記鍋を搬送する工程と、
前記複数のステーションのうちの2以上のステーションで、当該2以上のステーションのそれぞれに割り当てられる複数の撹拌デバイスを使って、前記鍋内の食材を撹拌する工程と、を含み、
前記複数の撹拌デバイスは、第1撹拌デバイスと、前記第1撹拌デバイスとは異なる形状を有する第2撹拌デバイスと、を含む、
食品製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、調理システム及び食品製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食材を調理するための処理が複数のステーションで順次行われる装置が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
鍋を使って調理を行う際、撹拌デバイスを使って鍋内の食材を撹拌することにより、鍋内の食材の全体を均一的に調理することができる。
【0005】
ただし鍋を使った食材の調理には、目的が異なる複数の処理が含まれることがあり、食材の撹拌の最適なやり方は、各処理の具体的な目的に応じて決められる。例えば鍋内の食材を炒めるための処理、鍋内の食材を混合するための処理、及び鍋内の食材の塊(いわゆる「ダマ」)をほぐして縮小化する処理が行われることがあるが、これらの処理間で食材の撹拌の最適なやり方は必ずしも同じではない。
【0006】
本開示は上述の事情に鑑みてなされたものであり、食材を適切に撹拌しつつ調理を行うのに有利な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、鍋を搬送し、複数のステーションの各々において鍋を間欠的に停止させる搬送装置と、割り当てられるステーションにおいて鍋内の食材を撹拌する複数の撹拌デバイスと、を備え、複数の撹拌デバイスは、第1撹拌デバイスと、第1撹拌デバイスの撹拌子とは異なる形状の撹拌子を有する第2撹拌デバイスと、を含む、調理システムに関する。
【0008】
本開示の他の態様は、複数のステーションの各々において鍋を間欠的に停止させるように鍋を搬送する工程と、複数のステーションのうちの2以上のステーションで、当該2以上のステーションのそれぞれに割り当てられる複数の撹拌デバイスを使って、鍋内の食材を撹拌する工程と、を含み、複数の撹拌デバイスは、第1撹拌デバイスと、第1撹拌デバイスとは異なる形状を有する第2撹拌デバイスと、を含む、食品製造方法に関する。
【発明の効果】
【0009】
本開示は、食材を適切に撹拌しつつ調理を行うのに有利である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、調理システムの一例の概略構成を示す平面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す調理システムの概略構成を示す側面図である。
【
図3】
図3は、具材撹拌デバイスの一例の概略構成を示す図である。
【
図4】
図4は、混合撹拌デバイスの一例の概略構成を示す図である。
【
図5A】
図5Aは、塊縮小化撹拌デバイスの一例の概略構成を示す図である。
【
図5B】
図5Bは、
図5Aに示す塊縮小化撹拌デバイスの上方撹拌部の一例の概略構成を示す図である。
【
図5C】
図5Cは、
図5Aに示す塊縮小化撹拌デバイスの下方撹拌部の一例の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の一実施形態について説明する。
【0012】
以下では、炒飯(食品)を製造する調理システム10及び食品製造方法について説明する。ただし、以下に説明する調理システム10及び食品製造方法の実施形態は例に過ぎない。すなわち調理システム10は、以下に説明する構成とは異なる構成を有していてもよいし、食品製造方法は、以下に説明する処理の流れとは異なる処理の流れで実施されてもよい。また調理システム10及び食品製造方法は、炒飯以外の食品の製造に関するものであってもよく、本開示技術は、任意の食品を調理又は製造するための装置及び方法に対して適用可能である。
【0013】
なお以下の説明において「上流」及び「下流」の用語は、鍋の搬送方向を基準とする。
【0014】
図1は、調理システム10の一例の概略構成を示す平面図である。
図2は、
図1に示す調理システム10の概略構成を示す側面図である。
【0015】
図1及び
図2に示す調理システム10では、制御装置20の制御下で駆動する搬送装置21によって、複数の鍋60が搬送方向Dcへ間欠的に搬送される。すなわち搬送装置21は、等間隔に並べられる複数の鍋60の同時的且つ間欠的な搬送及び停止を繰り返し行い、各鍋60を複数のステーション(
図1に示す第1ステーションS1~第9ステーションS9参照)の各々において間欠的に停止させる。
【0016】
鍋60は、投入される食材(本例では後述の油、卵及びご飯)を加熱調理可能な任意の構成を有するが、鍋60の具体的な形状、材料及びその他の構成は限定されない。典型的には丸底の鉄製の鍋60(すなわち鉄鍋)が使われ、ガスバーナー装置として構成される加熱装置22を使ったいわゆる直火炒めが鍋60内の食材に対して行われる。
【0017】
搬送装置21の具体的な構成は限定されない。例えば、搬送装置21は無端軌道に沿って各鍋60を搬送してもよい。この場合、各鍋60は、搬送軌道に沿って設けられる複数のステーション(第1ステーションS1~第9ステーションS9)を繰り返し巡回する。各鍋60の搬送軌道の形状は限定されず、搬送軌道の一部又は全部が、非直線的な軌道であってもよいし、直線的な軌道であってもよい。また搬送装置21は、各鍋60を水平方向にのみ搬送してもよいし、水平方向にだけではなく高さ方向にも搬送してもよい。
【0018】
本実施形態では、
図2に示すように、第2ステーションS2に油供給部31が設けられ、第3ステーションS3に液卵供給部32が設けられ、第4ステーションS4に具材撹拌装置33が設けられ、第5ステーションS5にご飯供給部34が設けられる。また第6ステーションS6に第1混合撹拌装置35が設けられ、第7ステーションS7に第2混合撹拌装置36が設けられ、第8ステーションS8に第3混合撹拌装置37が設けられ、第9ステーションS9に塊縮小化撹拌装置38が設けられる。
【0019】
油供給部31は、制御装置20の制御下で、第1ステーションS1に間欠的に停止している鍋60に油を供給する。このようにして鍋60に供給された油は、鍋60の内面(すなわち調理面)上で広がる。
【0020】
液卵供給部32は、制御装置20の制御下で、第2ステーションS2に間欠的に停止している鍋60に液体状の卵(すなわち「液卵」)を供給する。このようにして鍋60に供給された液卵は、鍋60の内面(調理面)上で広がる。
【0021】
具材撹拌装置33は、制御装置20の制御下で、第3ステーションS3に間欠的に停止している鍋60内の卵を撹拌する具材撹拌デバイス41を備える。
【0022】
具材撹拌デバイス41(特に後述の撹拌子)は、移動可能に設けられており、鍋60が間欠的に搬送される間は退避位置に配置され、鍋60が間欠的に停止される間に撹拌位置に配置される。退避位置は、搬送される鍋60と具材撹拌デバイス41がぶつからない位置である。撹拌位置は、第4ステーションS4に間欠停止している鍋60内の食材(本例では特に卵)を具材撹拌デバイス41が撹拌する位置である。
図2に示す例において、退避位置は鍋60よりも上方の位置であり、撹拌位置は具材撹拌デバイス41の一部(特に撹拌子の下方先端部)が鍋60の内面(すなわち調理面)に接触する位置である。ただし具材撹拌デバイス41は、撹拌位置に配置された状態で、鍋60の内面に接触しなくてもよい。
【0023】
ご飯供給部34は、制御装置20の制御下で、第5ステーションS5に間欠的に停止している鍋60にご飯を供給する。このようにして鍋60に供給されたご飯は、鍋60の内面(調理面)に載せられる。ご飯供給部34から鍋60に供給されるご飯は、典型的には全体が炊飯されたご飯であるが、一部又は全体が炊飯されていないご飯であってもよい。
【0024】
第1混合撹拌装置35~第3混合撹拌装置37は、制御装置20の制御下で、それぞれ第6ステーションS6~第8ステーションS8に間欠的に停止している鍋60内の食材を撹拌する混合撹拌デバイス42を備える。
【0025】
各混合撹拌デバイス42(特に後述の撹拌子)は、移動可能に設けられており、鍋60が間欠的に搬送される間は退避位置に配置され、鍋60が間欠的に停止される間に撹拌位置に配置される。退避位置は、搬送される鍋60と混合撹拌デバイス42がぶつからない位置である。撹拌位置は、第6ステーションS6~第8ステーションS8に間欠停止している鍋60内の食材(本例では特に卵及びご飯)を対応の混合撹拌デバイス42が撹拌する位置である。
図2に示す例において、退避位置は鍋60よりも上方の位置であり、撹拌位置は混合撹拌デバイス42の一部(特に撹拌子の下方先端部)が鍋60の内側に配置される位置である。なお、撹拌位置に配置される混合撹拌デバイス42は、鍋60の内面(すなわち調理面)に接触してもよいし、接触しなくてもよい。
【0026】
塊縮小化撹拌装置38は、制御装置20の制御下で、第9ステーションS9に間欠的に停止している鍋60内の食材を撹拌する塊縮小化撹拌デバイス43を備える。
【0027】
塊縮小化撹拌デバイス43(特に後述の撹拌子)は、移動可能に設けられており、鍋60が間欠的に搬送される間は退避位置に配置され、鍋60が間欠的に停止される間に撹拌位置に配置される。退避位置は、搬送される鍋60と塊縮小化撹拌デバイス43がぶつからない位置である。撹拌位置は、第9ステーションS9に間欠停止している鍋60内の食材(本例では特に卵及びご飯)を塊縮小化撹拌デバイス43が撹拌する位置である。
図2に示す例において、退避位置は鍋60よりも上方の位置であり、撹拌位置は塊縮小化撹拌デバイス43の一部(特に撹拌子の下方先端部)が鍋60の内側に配置される位置である。なお、撹拌位置に配置される塊縮小化撹拌デバイス43は、鍋60の内面(すなわち調理面)に接触してもよいし、接触しなくてもよい。
【0028】
また第2ステーションS2~第9ステーションS9の各々には加熱装置22が設けられる。各加熱装置22は、鍋60内の食材(本例では油、卵及びご飯)を加熱する装置である。本例の各加熱装置22は、ガスバーナー(すなわちガスコンロ)装置によって構成され、ガスを燃焼させて炎を作り出し、当該炎によって鍋60(ひいては鍋60内の食材)を加熱する。
【0029】
なお加熱装置22は、ガスバーナー装置以外の任意の装置により構成されてもよく、例えばガス以外の燃料を燃焼させる装置やIH(Induction Heating:誘導加熱)方式の装置によって構成されてもよい。
【0030】
上述の構成を有する調理システム10において各鍋60が間欠的に停止される複数のステーションは、食材供給ステーション、食材加熱ステーション、食材混合ステーション及び塊縮小化ステーションを含む。
【0031】
食材供給ステーションは、鍋60に食材が供給されるステーションである。
図2に示す例では、油が鍋60に供給される第2ステーションS2、液卵が鍋60に供給される第3ステーションS3、及びご飯が鍋60に供給される第5ステーションS5が、食材供給ステーションに分類される。
【0032】
食材混合ステーションは、鍋60内の食材を混合するためのステーションである。
図2に示す例では、例えば、混合撹拌デバイス42(第1撹拌デバイス)を使って鍋60内の卵及びご飯が混合される第6ステーションS6~第8ステーションS8が、食材混合ステーションに分類される。
【0033】
塊縮小化ステーションは、鍋60内の食材の塊のサイズを小さくするためのステーションである。
図2に示す例では、例えば、食材混合ステーションよりも下流に設けられ、且つ、塊縮小化撹拌デバイス43(第2撹拌デバイス)を使って鍋60内の卵及びご飯の塊のサイズが小さくされる第9ステーションS9が、塊縮小化ステーションに分類される。
【0034】
食材加熱ステーションは、鍋60内の食材を加熱するためのステーションである。
図2に示す例では、例えば、食材混合ステーションよりも上流に設けられ、且つ、鍋60内の卵が具材撹拌デバイス41(第3撹拌デバイス)を使って撹拌されつつ加熱される第4ステーションS4が、食材加熱ステーションに分類される。
【0035】
各種の処理ステーション(上述の食材供給ステーション、食材加熱ステーション、食材混合ステーション及び塊縮小化ステーション)はお互いに排他的ではなく、ある1つのステーションが2種類以上の処理ステーションに分類されてもよい。
【0036】
例えば、
図2に示す例の第2ステーションS2~第9ステーションS9は、鍋60内の食材が加熱装置22によって加熱される食材加熱ステーションに分類される。特に、第4ステーションS4及び第6ステーションS6~第9ステーションS9は、鍋60内の食材が撹拌デバイス41、42、43を使って撹拌されつつ加熱される食材加熱ステーションに分類される。一方、第2ステーションS2、第3ステーションS3及び第5ステーションS5は、鍋60内の食材が、撹拌デバイスを使った撹拌が行われることなく、加熱される食材加熱ステーションに分類される。ただし第2ステーションS2、第3ステーションS3及び第5ステーションS5は、撹拌デバイスが設けられてもよく、鍋60内の食材が撹拌デバイスを使って撹拌されつつ加熱される食材加熱ステーションとして設けられてもよい。
【0037】
したがって例えば、油供給部31、液卵供給部32及びご飯供給部34が設けられる第2ステーションS2、第3ステーションS3及び第5ステーションS5は、食材供給ステーションでもあり、食材加熱ステーションでもある。また混合撹拌デバイス42が設けられる第6ステーションS6~第8ステーションS8は、食材混合ステーションでもあり、食材加熱ステーションでもある。また塊縮小化撹拌デバイス43が設けられる第9ステーションS9は、塊縮小化ステーションでもあり、食材加熱ステーションでもある。
【0038】
[撹拌デバイス]
上述のように調理システム10は、割り当てられるステーションにおいて鍋60内の食材を撹拌する複数の撹拌デバイス41、42、43を備えるが、これらの複数の撹拌デバイス41、42、43は、それぞれ特有の目的の処理のために用いられる。
【0039】
本実施形態では、これらの複数の撹拌デバイス41、42、43は、割り当てられるステーションで行われる処理の目的に応じた特有の形状の撹拌子を有する。すなわち具材撹拌デバイス(第3撹拌デバイス)41、混合撹拌デバイス(第1撹拌デバイス)42及び塊縮小化撹拌デバイス(第2撹拌デバイス)43は、お互いに異なる形状の撹拌子を有する。
【0040】
より具体的には、具材撹拌デバイス41は、鍋60内の食材(本例では卵)の加熱処理に適した形状(例えば卵を所望の固体状に形作りつつ焼成するのに適した形状)の撹拌子を有する。また混合撹拌デバイス42は、鍋60内の食材(本例では卵及びご飯)を混合するのに適した形状の撹拌子を有する。また塊縮小化撹拌デバイス43は、鍋60内の食材(本例では卵及びご飯)の塊を縮小化するのに適した形状の撹拌子を有する。
【0041】
このような複数の撹拌デバイス41、42、43の撹拌子の具体的な形状は限定されず、各撹拌デバイス41、42、43の撹拌子は、割り当てられた処理の目的に応じた様々な形状をとることが可能である。したがって、以下に具材撹拌デバイス41、混合撹拌デバイス42及び塊縮小化撹拌デバイス43の撹拌子の具体例について説明するが、各撹拌デバイスの撹拌子は下記具体例には限定されない。
【0042】
図3は、具材撹拌デバイス41の一例の概略構成を示す図である。
【0043】
図3に示す具材撹拌デバイス41は、撹拌シャフト50に固定される円盤状の撹拌ベース部51と、撹拌ベース部51に固定された複数(3つ)の柱状(すなわち箸状)の撹拌子52と、を有する。
【0044】
撹拌シャフト50は、制御装置20(
図1参照)の制御下で駆動されるモータ等の回転駆動装置(図示省略)によって、軸回転される。撹拌ベース部51及び各撹拌子52は、撹拌シャフト50とともに、撹拌シャフト50を回転中心として回転する。
【0045】
各撹拌子52は、撹拌シャフト50(回転中心)を基準とした放射方向に揺動自在に設けられ、放射方向に加えられる力に応じて、撹拌ベース部51に対する取り付け位置を基準に揺動するものであってもよい。その場合、各撹拌子52は、重力以外の力が作用していない間は鉛直方向(重力方向:下向き高さ方向)に沿って延び、複数(3つ)の撹拌子52の下方先端部(自由端部)が互いに対して相対的に近接して配置される。一方、各撹拌子52は、放射方向に力が作用することで外向きに揺動して、鉛直方向に対して傾斜し、複数(3つ)の撹拌子52の下方先端部が互いから相対的に離間して配置される。各撹拌子52に対して放射方向に作用するこのような力は、典型的には、回転時の遠心力や各撹拌子52の下方先端部が鍋60の調理面61に押し当てられた際の調理面61からの反力であるが、これらの遠心力及び反力には限定されない。
【0046】
具材撹拌デバイス41の撹拌子52の具体的な形状は、限定されない。各撹拌子52は、例えば丸みを帯びた下方先端部を有していてもよいし、任意形状の横断面(例えば多角形横断面、円形横断面、楕円形横断面、オーバル形横断面、或いはランダム形状の横断面)を有していてもよい。
【0047】
図4は、混合撹拌デバイス42の一例の概略構成を示す図である。
【0048】
図4に示す混合撹拌デバイス42は、撹拌シャフト50に固定される撹拌ベース部51と、撹拌ベース部51に一方の端部が取り付けられる複数(2つ)の柱状の支持撹拌子52aと、当該支持撹拌子52aの他方の端部に取り付けられる横撹拌子52bとを有する。横撹拌子52bは、混合撹拌デバイス42が撹拌位置に配置される間、鍋60の調理面61に沿って延在して配置されることが可能なような、形状を有する。
【0049】
撹拌シャフト50は、制御装置20(
図1参照)の制御下で駆動される回転駆動装置(図示省略)によって軸回転され、撹拌ベース部51及び撹拌子(支持撹拌子52a及び横撹拌子52b)は、撹拌シャフト50とともに回転する。混合撹拌デバイス42が撹拌位置に配置されている状態で回転されることで、横撹拌子52bは、鍋60の調理面61に沿って回転し、その結果、鍋60内の食材を効率的に撹拌できる。
【0050】
図5Aは、塊縮小化撹拌デバイス43の一例の概略構成を示す図である。
図5Bは、
図5Aに示す塊縮小化撹拌デバイス43の上方撹拌部43aの一例の概略構成を示す図である。
図5Cは、
図5Aに示す塊縮小化撹拌デバイス43の下方撹拌部43bの一例の概略構成を示す図である。
【0051】
図5Aに示す塊縮小化撹拌デバイス43は、
図5Bに示す上方撹拌部43aと、
図5Cに示す下方撹拌部43bとが組み合わされて構成される。
【0052】
図5Bに示す上方撹拌部43aは、第1撹拌シャフト50aに固定される第1撹拌ベース部51aと、第1撹拌ベース部51aに一方の端部が取り付けられる複数(6つ)の柱状の上方撹拌子52cとを有する。複数(6つ)の上方撹拌子52cは、第1撹拌ベース部51aから下方に向かって延在し、第1撹拌ベース部51aに対して等間隔に取り付けられる。
【0053】
図5Cに示す下方撹拌部43bは、第2撹拌シャフト50bに固定される第2撹拌ベース部51bと、第2撹拌ベース部51bに一方の端部が取り付けられる複数(4つ)の柱状の下方撹拌子52dとを有する。複数(4つ)の下方撹拌子52dは、第2撹拌ベース部51bから上方に向かって延在する。半数(2つ)の下方撹拌子52dは、第2撹拌シャフト50bに対して一方側(例えば左側)に配置され、残りの下方撹拌子52dは、第2撹拌シャフト50bに対して他方側(例えば右側)に配置される。
【0054】
第1撹拌シャフト50aの内側を第2撹拌シャフト50bが貫通するように上方撹拌部43a及び下方撹拌部43bが配置されて、隣り合う下方撹拌子52d間及び隣り合う下方撹拌子52dと第2撹拌シャフト50bとの間に、上方撹拌子52cが配置される。すなわち上方撹拌子52c及び下方撹拌子52dが交互に位置するように(ただし第2撹拌シャフト50bの近傍位置では隣り合う上方撹拌子52c間に第2撹拌シャフト50bが位置するように)、塊縮小化撹拌デバイス43が構成される(
図5A参照)。
【0055】
このように
図5A~
図5Cに示す塊縮小化撹拌デバイス43では、下向きの櫛状に構成される上方撹拌子52cと、上向きの櫛状に構成される下方撹拌子52dとが互いに噛み合うように配置される。
【0056】
そして上方撹拌部43a及び下方撹拌部43bは相対的に回転される。例えば、第1撹拌シャフト50a及び第2撹拌シャフト50bのうちの一方(例えば第1撹拌シャフト50a)は回転させられず、他方(例えば第2撹拌シャフト50b)が、制御装置20の制御下で回転駆動装置(図示省略)によって軸回転させられてもよい。このようにして上方撹拌部43aと下方撹拌部43bとの間で相対回転が行われることによって、下方撹拌子52d及び第2撹拌シャフト50bは、上方撹拌子52cとぶつかることなく、上方撹拌子52cに対して相対的に回転する。
【0057】
その結果、鍋60内の食材の塊は、上方撹拌子52c、下方撹拌子52d及び第2撹拌シャフト50bによって、細かく砕かれて、縮小化される。なお食材の塊の縮小化の程度は、上方撹拌子52c、下方撹拌子52d及び第2撹拌シャフト50bの相互間の間隔によって変わりうる。したがって食材の塊の縮小化の所望の程度に応じて、上方撹拌子52c間の間隔、下方撹拌子52d間の間隔、及び下方撹拌子52dと第2撹拌シャフト50bとの間の間隔が決められる。
【0058】
以上のような調理システム10によれば、鍋60ごとに撹拌デバイス一式を用意する必要がない。各ステーションに設けられる撹拌デバイスは、割り当てられる撹拌調理のみに適した形状を備えていればよいから、シンプルな構造を有することができる。このように上述の調理システム10は、複数の鍋60を間欠搬送し、食材を適切に撹拌しつつ調理して連続的に食品を製造することができ、健康で豊かな食の実現を図るSDGs(Sustainable Development Goals)にもつながる。
【0059】
[食品製造方法]
次に、上述の調理システム10によって行われる食品製造方法(調理方法)の一例について説明する。
【0060】
図1及び
図2に示す調理システム10によれば、上述のように、各鍋60は、搬送装置21によって間欠的に搬送され、第1ステーションS1~第9ステーションS9において順次間欠的に停止される。
【0061】
なお第1ステーションS1よりも上流においても、各鍋60が間欠的に停止される他のステーションが設けられていてもよい。同様に、第9ステーションS9よりも下流においても、各鍋60が間欠的に停止される他のステーションが設けられていてもよい。
【0062】
図2に示す例では、第1ステーションS1は空きステーションであり、第1ステーションS1では基本的に処理は行われず、空の鍋60が第1ステーションS1に配置される。
【0063】
ただし第1ステーションS1において任意の処理が行われてもよい。例えば、第1ステーションS1にも加熱装置22が設けられ、当該加熱装置22によって、第1ステーションS1に間欠的に停止されている鍋60の加熱(予熱)が行われてもよい。また各鍋60は、任意の食材が入れられた状態で第1ステーションS1に配置されてもよいし、第1ステーションS1において任意の食材が投入されてもよい。
【0064】
その後、各鍋60は下流に搬送され、鍋60に油が供給される工程(第2ステーションS2)、鍋60に液卵(具材)が供給される工程(第3ステーションS3)、及び鍋60内の卵が撹拌されながら炒められる工程(第4ステーションS4)が順次行われる。各鍋60は更に下流に搬送され、鍋60にご飯が供給される工程(第5ステーションS5)、鍋60内の食材が混合される工程(第6~第8ステーションS6~S8)、及び鍋60内の食材の塊が縮小化される工程(第9ステーションS9)が順次行われる。
【0065】
これらの工程のうち、食材(油、液卵及びご飯)が鍋60に供給される工程は、対応のステーション(第2ステーションS2、第3ステーションS3及び第5ステーションS5)に鍋60が所定時間留まっている間に、食材が鍋60内に投入される。また撹拌デバイス41、42、43が設けられる各ステーションでは、鍋60が所定時間留まっている間に、撹拌デバイスが退避位置から撹拌位置に移動され、撹拌位置で食材撹拌を行い、その後、撹拌位置から退避位置に移動される。
【0066】
その一方で、上述の各種工程と並行して、第2ステーションS2~第9ステーションS9では、加熱装置22によって鍋60内の食材を加熱処理する工程が行われる。
【0067】
上述の一連の工程が行われた後、各鍋60は下流に送られ、図示しない排出ステーションにおいて食材(すなわち炒飯(食品))が各鍋60から排出される。
【0068】
以上説明したように本実施形態の調理システム10によれば、主として卵(食材)を炒めるための工程と、主として卵及びご飯を混合するための工程と、主として食材の塊を縮小化する工程とが、互いに異なるステーションで分離して行われる。そして各ステーションで、必要に応じて、対応の処理に適応した形状の撹拌子(具材撹拌デバイス41、混合撹拌デバイス42及び塊縮小化撹拌デバイス43)を使って対応の処理が行われる。
【0069】
このように調理システム10が備える具材撹拌デバイス41、混合撹拌デバイス42及び塊縮小化撹拌デバイス43は、お互いに異なる形状の撹拌子を有する。これにより、ステーション毎に、処理内容に応じて食材を適切に撹拌しつつ、調理を行うことができる。
【0070】
特に、具材撹拌デバイス41が、卵(具材)を炒めるのに適した形状の撹拌子を有することで、第4ステーションS4(食材加熱ステーション)における食材加熱が適切に行われる。また混合撹拌デバイス42が、鍋60内の食材を混合するのに適した形状の撹拌子を有することで、第6~第8ステーションS6~S8(食材混合ステーション)における食材混合が適切に行われる。また塊縮小化撹拌デバイス43が、鍋60内の食材の塊のサイズを小さくするのに適した形状の撹拌子を有することで、第9ステーションS9(塊縮小化ステーション)における塊縮小化が適切に行われる。
【0071】
[変形例]
上述の
図1及び
図2に示す実施形態では、各鍋60に液卵が供給される(第3ステーションS3)が、各鍋60に対する卵の供給は省略されてもよい。この場合、液卵供給部32は設置されなくてもよく、また卵を撹拌するための具材撹拌装置33(第4ステーションS4)も設置されなくてもよい。したがって混合撹拌デバイス42及び塊縮小化撹拌デバイス43という2種類の撹拌デバイスのみによって、鍋60内の食材が撹拌されてもよい。
【0072】
本明細書に開示されている実施形態及び変形例はすべての点で例示に過ぎず限定的には解釈されないことに留意されるべきである。上述の実施形態及び変形例は、添付の特許請求の範囲及びその趣旨を逸脱することなく、様々な形態での省略、置換及び変更が可能である。例えば上述の実施形態及び変形例が全体的に又は部分的に組み合わされてもよく、また上述以外の実施形態が上述の実施形態又は変形例と組み合わされてもよい。また、本明細書に記載された本開示の効果は例示に過ぎず、その他の効果がもたらされてもよい。
【0073】
上述の技術的思想を具現化する技術的カテゴリーは限定されない。例えば上述の装置を製造する方法或いは使用する方法に含まれる1又は複数の手順(ステップ)をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムによって、上述の技術的思想が具現化されてもよい。またそのようなコンピュータプログラムが記録されたコンピュータが読み取り可能な非一時的(non-transitory)な記録媒体によって、上述の技術的思想が具現化されてもよい。
【0074】
[付記]
上述からも明らかなように、本開示は以下の態様を含む。
【0075】
[態様1]
鍋を搬送し、複数のステーションの各々において前記鍋を間欠的に停止させる搬送装置と、
割り当てられるステーションにおいて前記鍋内の食材を撹拌する複数の撹拌デバイスと、を備え、
前記複数の撹拌デバイスは、第1撹拌デバイスと、前記第1撹拌デバイスの撹拌子とは異なる形状の撹拌子を有する第2撹拌デバイスと、を含む、
調理システム。
【0076】
[態様2]
前記複数のステーションは、
前記第1撹拌デバイスを使って前記鍋内の前記食材を混合するための食材混合ステーションと、
前記食材混合ステーションよりも下流に設けられ、且つ、前記第2撹拌デバイスを使って前記鍋内の前記食材の塊のサイズを小さくするための塊縮小化ステーションと、
を含む、
態様1に記載の調理システム。
【0077】
[態様3]
前記複数の撹拌デバイスは、前記第1撹拌デバイス及び前記第2撹拌デバイスの各々の撹拌子とは異なる形状の撹拌子を有する第3撹拌デバイスを含み、
前記複数のステーションは、
前記食材混合ステーションよりも上流に設けられ、且つ、前記鍋内の前記食材を、前記第3撹拌デバイスを使って撹拌しつつ加熱するための食材加熱ステーションを含む、
態様2に記載の調理システム。
【0078】
[態様4]
複数のステーションの各々において鍋を間欠的に停止させるように前記鍋を搬送する工程と、
前記複数のステーションのうちの2以上のステーションで、当該2以上のステーションのそれぞれに割り当てられる複数の撹拌デバイスを使って、前記鍋内の食材を撹拌する工程と、を含み、
前記複数の撹拌デバイスは、第1撹拌デバイスと、前記第1撹拌デバイスとは異なる形状を有する第2撹拌デバイスと、を含む、
食品製造方法。
【符号の説明】
【0079】
10 調理システム
20 制御装置
21 搬送装置
22 加熱装置
31 油供給部
32 液卵供給部
33 具材撹拌装置
34 ご飯供給部
35 第1混合撹拌装置
36 第2混合撹拌装置
37 第3混合撹拌装置
38 塊縮小化撹拌装置
41 具材撹拌デバイス
42 混合撹拌デバイス
43 塊縮小化撹拌デバイス
43a 上方撹拌部
43b 下方撹拌部
50 撹拌シャフト
50a 第1撹拌シャフト
50b 第2撹拌シャフト
51 撹拌ベース部
51a 第1撹拌ベース部
51b 第2撹拌ベース部
52 撹拌子
52a 支持撹拌子
52b 横撹拌子
52c 上方撹拌子
52d 下方撹拌子
60 鍋
61 調理面
Dc 搬送方向
S1 第1ステーション
S2 第2ステーション
S3 第3ステーション
S4 第4ステーション
S5 第5ステーション
S6 第6ステーション
S7 第7ステーション
S8 第8ステーション
S9 第9ステーション