(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155351
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】車両用駆動装置
(51)【国際特許分類】
B60K 1/00 20060101AFI20241024BHJP
B60K 11/02 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
B60K1/00
B60K11/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023070005
(22)【出願日】2023-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】岩田 崇司
(72)【発明者】
【氏名】前田 拓洋
(72)【発明者】
【氏名】須山 大樹
【テーマコード(参考)】
3D038
3D235
【Fターム(参考)】
3D038AA10
3D038AB01
3D038AC01
3D038AC12
3D038AC20
3D038AC23
3D235AA01
3D235BB17
3D235BB18
3D235BB19
3D235CC12
3D235CC13
3D235CC14
3D235DD12
3D235DD17
3D235DD35
3D235FF38
3D235HH16
3D235HH52
(57)【要約】
【課題】車載エアコンディショナ及び車載バッテリを含む、車両用駆動装置を中核とした車載部材群全体を小型に構成する。
【解決手段】車両搭載状態で、駆動ユニットTAは、キャビン空調ユニット45及び車載バッテリBTに対して前後方向第1側H1に配置され、冷媒回路モジュール2は、駆動ユニットTAに対して上側Z1又は前後方向第2側H2に配置され、インバータモジュール4は、駆動ユニットTAに対して、上側Z1、下側Z2、前後方向第2側H2、幅方向第1側、及び、幅方向第2側の内の少なくとも何れか1つの側に配置され、電源モジュール4は、駆動ユニットTAに対して、上側Z1、下側Z2、前後方向第2側H2、幅方向第1側、及び、幅方向第2側の内の少なくとも何れか1つの側であって、インバータモジュール4が配置された側と同じ側、又は、インバータモジュール4が配置された側に連続する側に配置されている。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータを備えた回転電機と、
車輪に駆動連結される出力部材と、
前記回転電機と前記出力部材との間で駆動力を伝達する動力伝達機構と、
前記回転電機を駆動制御するためのインバータモジュールと、
車載バッテリに電気的に接続され、前記車載バッテリの電圧変換を行う電圧変換回路、外部電源から前記車載バッテリへの充電を行うための充電回路、及び、前記車載バッテリから外部への給電を行うための給電回路の少なくとも1つを備えた電源モジュールと、
車載エアコンディショナ用の冷媒を循環させる冷媒回路の少なくとも一部を構成する冷媒回路モジュールと、
前記回転電機及び前記動力伝達機構を含む駆動ユニットを収容すると共に、前記インバータモジュールと、前記電源モジュールと、前記冷媒回路モジュールとを支持するケースと、
を備え、
車両に搭載された状態で、前記駆動ユニットは、前記車載エアコンディショナのキャビン空調ユニット、及び、前記車両のキャビンの床下に配置された前記車載バッテリに対して車両前後方向における一方側である前後方向第1側に配置され、
前記車両前後方向における、前記前後方向第1側とは反対側を前後方向第2側とし、上下方向視で前記車両前後方向に直交する方向を幅方向とし、前記幅方向の一方側を幅方向第1側とし、前記幅方向の他方側を幅方向第2側として、
前記冷媒回路モジュールは、前記駆動ユニットに対して上側又は前記前後方向第2側に配置され、
前記インバータモジュールは、前記駆動ユニットに対して、上側、下側、前記前後方向第2側、前記幅方向第1側、及び、前記幅方向第2側の内の少なくとも何れか1つの側に配置され、
前記電源モジュールは、前記駆動ユニットに対して、上側、下側、前記前後方向第2側、前記幅方向第1側、及び、前記幅方向第2側の内の少なくとも何れか1つの側であって、前記インバータモジュールが配置された側と同じ側、又は、前記インバータモジュールが配置された側に連続する側に配置されている、車両用駆動装置。
【請求項2】
前記車両に搭載された状態で、前記駆動ユニットは、前記車両と外部との電気的接続のために前記車両に設けられた外部接続ポートに対して下側に配置され、
前記電源モジュールは、前記駆動ユニットに対して、上側、前記前後方向第2側、前記幅方向第1側、及び、前記幅方向第2側の内の少なくとも何れか1つの側に配置されている、請求項1に記載の車両用駆動装置。
【請求項3】
前記回転電機及び前記インバータモジュールの少なくとも一方を冷却するための冷却水を循環させるウォーターポンプをさらに備え、
前記車両に搭載された状態で、前記駆動ユニットは、前記冷却水と外気との熱交換を行うラジエータに対して前記前後方向第2側に配置され、
前記ウォーターポンプは、前記駆動ユニットに対して前記前後方向第1側に配置されていると共に、前記ケースに支持されている、請求項1又は2に記載の車両用駆動装置。
【請求項4】
少なくとも前記インバータモジュールを冷却するための冷却水と前記冷媒との熱交換を行う熱交換器をさらに備え、
前記インバータモジュールは、前記駆動ユニットに対して、前記冷媒回路モジュールが配置された側と同じ側、又は、前記冷媒回路モジュールが配置された側に連続する側に配置され、
前記熱交換器は、前記冷媒回路モジュールが配置された領域と前記インバータモジュールが配置された領域との間の領域に配置されている、請求項1又は2に記載の車両用駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2019-170077号公報には、車輪(803,804)の駆動力源となる回転電機(ロータ(20)、ステータ(30))と、この回転電機を駆動制御する駆動制御装置(131)と、駆動制御装置(131)を介して回転電機に接続される車載バッテリ(805)を外部電源(900)から供給される電力によって充電する充電器(136)と、回転電機、駆動制御装置(131)、充電器(136)を収容するケース(10)とを備えた車両用駆動装置(1)が開示されている(背景技術において括弧内の符号は参照する文献のもの。)。ケース(10)には、車両用駆動装置(1)が車両に搭載された車載姿勢での上下方向(Z)における下側に回転電機が収容される第1の収容室が形成され、上側に駆動制御装置(131)及び充電器(136)が収容される第2の収容室が形成されている。第1の収容室は、ケース(10)における円筒状の周壁部(10b)の内側に形成されている。第2の収容室は、周壁部(10b)の径方向外側において、周壁部(10b)の上下方向(Z)の上側に隣接した角筒状の角筒部(10e)の内側に、矩形箱状の空間として形成されている。周壁部(10b)には、さらに、周壁部(10b)に沿って冷媒が流れる冷却流路が形成された冷却部(60)が形成されている。
【0003】
周壁部(10b)に沿って形成された冷却流路は、角筒部(10e)の側に、冷媒が流入する流入口(16)と、冷媒が流出する流出口(17)とを有している。冷媒の流路において流入口(16)に近い側、即ち冷媒の流路の上流側には、駆動制御装置(131)が配置され、冷媒の流路において流出口(17)に近い側、即ち冷媒の流路の下流側には、充電器(136)が配置されている。これにより、回転電機を駆動する際に発熱する駆動制御装置(131)を冷たい冷媒によって効率的に冷やすことができる。外部電源(900)による車載バッテリ(805)の充電は車両が停車中に行われるため、駆動制御装置(131)との熱交換によって冷媒の温度が上がりにくく、充電器(136)は冷媒の流路の下流側に配置されていても適切に冷却される。その他、電力系の力率の改善や電圧の安定化のために用いられるリアクトル(140)や平滑コンデンサ(141)も、冷媒の流路に沿って配置され、冷媒によって適切に冷却される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の通り、上記の文献に開示された車両用駆動装置は、複数の冷却対象を効率的に冷却することができる冷却構造を備えている。しかし、車両には、車載エアコンディショナなど、熱管理の対象となる装置が他にも存在する。従って、駆動制御装置や充電器との関係だけではなく、車載エアコンディショナも考慮して冷却構造が構築されることが好ましい。また、回転電機に接続される車載バッテリは電圧が高く電力容量も大きいため、充電器と車載バッテリとを接続する配線も単位長さ当たりの重量が大きくなり易い。車両のエネルギー効率は、車両が軽いほど高くし易い。従って、車載エアコンディショナや車載バッテリと、車両用駆動装置とを接続する接続部材も考慮して、車両用駆動装置を中核とした車載部材群全体の小型化が図られることが好ましい。
【0006】
上記背景に鑑みて、車載エアコンディショナ及び車載バッテリを含む、車両用駆動装置を中核とした車載部材群全体を小型に構成する技術の提供が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記に鑑みた車両用駆動装置は、ロータを備えた回転電機と、車輪に駆動連結される出力部材と、前記回転電機と前記出力部材との間で駆動力を伝達する動力伝達機構と、前記回転電機を駆動制御するためのインバータモジュールと、車載バッテリに電気的に接続され、前記車載バッテリの電圧変換を行う電圧変換回路、外部電源から前記車載バッテリへの充電を行うための充電回路、及び、前記車載バッテリから外部への給電を行うための給電回路の少なくとも1つを備えた電源モジュールと、車載エアコンディショナ用の冷媒を循環させる冷媒回路の少なくとも一部を構成する冷媒回路モジュールと、前記回転電機及び前記動力伝達機構を含む駆動ユニットを収容すると共に、前記インバータモジュールと、前記電源モジュールと、前記冷媒回路モジュールとを支持するケースと、を備え、車両に搭載された状態で、前記駆動ユニットは、前記車載エアコンディショナのキャビン空調ユニット、及び、前記車両のキャビンの床下に配置された前記車載バッテリに対して車両前後方向における一方側である前後方向第1側に配置され、前記車両前後方向における、前記前後方向第1側とは反対側を前後方向第2側とし、上下方向視で前記車両前後方向に直交する方向を幅方向とし、前記幅方向の一方側を幅方向第1側とし、前記幅方向の他方側を幅方向第2側として、前記冷媒回路モジュールは、前記駆動ユニットに対して上側又は前記前後方向第2側に配置され、前記インバータモジュールは、前記駆動ユニットに対して、上側、下側、前記前後方向第2側、前記幅方向第1側、及び、前記幅方向第2側の内の少なくとも何れか1つの側に配置され、前記電源モジュールは、前記駆動ユニットに対して、上側、下側、前記前後方向第2側、前記幅方向第1側、及び、前記幅方向第2側の内の少なくとも何れか1つの側であって、前記インバータモジュールが配置された側と同じ側、又は、前記インバータモジュールが配置された側に連続する側に配置されている。
【0008】
本構成によれば、回転電機及び動力伝達機構を含む駆動ユニットに、回転電機を駆動制御するためのインバータモジュールを一体的に備えるだけでなく、さらに電源モジュールと、車載エアコンディショナ用の冷媒が循環する冷媒回路モジュールとが、駆動ユニットに一体的に備えられた車両用駆動装置となる。従って、駆動ユニット及びインバータモジュールによるユニットと、電源モジュール及び冷媒回路モジュールとをそれぞれ接続する配線や配管等を少なく抑えることができる。また、駆動ユニット及びインバータモジュールだけでなく、電源モジュール及び冷媒回路モジュールもケースに一体的に支持されることで、多くの機能を備えて一体化された車両用駆動装置を実現でき、車両用駆動装置を中核とした車載部材群全体の小型化も図り易い。また、キャビン空調ユニットは、外気導入や車室内への空気の供給の関係で、一般的に駆動ユニットよりも上側に配置されることが多い。本構成によれば、冷媒回路モジュールが、駆動ユニットに対して上側、又は駆動ユニットに対してキャビン空調ユニットが配置された前後方向第2側に配置されるため、冷媒回路モジュールとキャビン空調ユニットとの距離を短く抑え易く、これらの間をつなぐ配管を短く抑え易い。また、本構成によれば、インバータモジュール及び電源モジュールが、駆動ユニットに対して車載バッテリが配置された側とは逆側の前後方向第1側以外の側に配置される。従って、インバータモジュール及び電源モジュールと車載バッテリとの距離を短く抑え易く、インバータモジュール及び電源モジュールと車載バッテリとの間をつなぐ配線も短く抑え易い。さらに、本構成によれば、電源モジュールが、インバータモジュールが配置された側と同じ側、或いは、インバータモジュールが配置された側に連続する側に配置されているため、電源モジュールとインバータモジュールとをつなぐ配線も短く抑え易い。即ち、本構成によれば、車両用駆動装置とキャビン空調ユニット及び車載バッテリとを接続する配管や配線を短く抑え易い。従って、本構成によれば、車載エアコンディショナ及び車載バッテリを含む、車両用駆動装置を中核とした車載部材群全体を小型に構成し易い。
【0009】
車両用駆動装置のさらなる特徴と利点は、図面を参照して説明する例示的且つ非限定的な実施形態についての以下の記載から明確となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図6】車載部材群の相対配置の第1の例を模式的に示す側面図
【
図7】車載部材群の相対配置の第1の例を模式的に示す斜視図
【
図8】車載部材群の相対配置の第2の例を模式的に示す側面図
【
図9】車載部材群の相対配置の第3の例を模式的に示す側面図
【
図10】車載部材群の相対配置の第4の例を模式的に示す側面図
【
図11】車載部材群の相対配置の第5の例を模式的に示す側面図
【
図12】車載部材群の相対配置の第6の例を模式的に示す側面図
【
図13】車載部材群の相対配置の第7の例を模式的に示す側面図
【
図14】車載部材群の相対配置の第8の例を模式的に示す側面図
【
図15】車載部材群の相対配置の第9の例を模式的に示す側面図
【
図16】車載部材群の相対配置の第10の例を模式的に示す側面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、車両用駆動装置の実施形態について図面を参照して説明する。本実施形態の車両用駆動装置100は、体格が大型化することを抑制しつつ、車両用駆動装置100を中核として車両における熱マネジメントシステムを適切に構成している。さらに、車両用駆動装置100は、車載エアコンディショナ及び車載バッテリを含む、車両用駆動装置100を中核とした車載部材群の全体を小型に構成している。例えば、欧州等におけるAセグメント車両、日本における軽自動車等の小型車両では、車両用駆動装置100をはじめとして、車載部品をできるだけ小型・軽量化して搭載効率を向上させることが求められる。例えば、車載部品同士を近接して配置するなどにより、配線や配管などの接続部品の長さを短くすることや、異なる装置を一体化して配線や配管を減らすことも好適である。
【0012】
また、車輪の駆動力源など、車両において発熱する装置を冷却する冷却水は、ラジエータによって廃熱されるが、一般的にラジエータは走行風によって廃熱を行うために車両の最も前方に配置されている。また、Aセグメント車などの小型車では、乗員が搭乗する車内空間を確保するために、多くの場合、前輪駆動され、車輪の駆動力源も車両の前方に配置される。また、冷房や暖房などを行う車載エアコンディショナが搭載される車両では、車載エアコンディショナ、並びに車載エアコンディショナにおいて用いる冷媒が流れる流路の多くの部分や、熱交換を行う機能部品も車両の前方に配置される。特に暖房に関しては、車輪の駆動力源として内燃機関が用いられた従来の車両では、内燃機関を熱源として利用することが容易であったが、電気自動車など内燃機関を持たないような車両では、そのような熱源がなく、暖房には専らヒートポンプ方式が採用され、内燃機関の廃熱を用いる方式に比べて、搭載部品も増加する傾向がある。これらの車載部品を車両の前方の限られた空間で適切に配管、配線することによって、車室などに利用できる空間を広くすることができる。本実施形態の車両用駆動装置100は、このように冷却水や冷媒を用いて熱マネジメントを行う機能部品を車両用駆動装置100と一体的に構成している。
【0013】
また、電気自動車などでは車輪の駆動力源に回転電機が用いられ、回転電機には車載バッテリから電力が供給される。回転電機に接続される車載バッテリは電圧が高く電力容量も大きいため、充電器と車載バッテリとを接続する配線も単位長さ当たりの重量が大きくなり易い。車両のエネルギー効率は、車両が軽いほど高くし易い。従って、車載エアコンディショナだけではなく、車載バッテリと車両用駆動装置とを接続する接続部材の長さ等も考慮されることが好ましい。本実施形態では、車載エアコンディショナ及び車載バッテリを含む、車両用駆動装置100を中核とした車載部材群の全体を小型に構成し、総合的に車両搭載部品の小型化、軽量化、低コスト化を実現している。
【0014】
以下、そのような車両用駆動装置100の好適な実施形態について説明するが、はじめに車輪Wを駆動するための駆動ユニットTAとしての機能について説明する。
【0015】
尚、本明細書において「駆動連結」とは、2つの回転要素が駆動力を伝達可能に連結された状態を指し、当該2つの回転要素が一体的に回転するように連結された状態、或いは当該2つの回転要素が1つ又は2つ以上の伝動部材を介して駆動力を伝達可能に連結された状態を含む。このような伝動部材としては、回転を同速で又は変速して伝達する各種の部材、例えば、軸、歯車機構、ベルト、チェーン等が含まれる。尚、伝動部材として、回転及び駆動力を選択的に伝達する係合装置、例えば、摩擦係合装置、噛み合い式係合装置等が含まれていても良い。ただし、遊星歯車機構の各回転要素について「駆動連結」という場合には、遊星歯車機構における複数の回転要素が、互いに他の回転要素を介することなく連結されている状態を指すものとする。また、本明細書において「一体的に回転」とは、分離可能か分離不可能かは問わず一体的に回転することをいう。即ち、一体的に回転する複数の部材は同一部材から一体的に形成されていてもよいし、別部材によって構成されて溶接やスプライン結合等によって一体化されていてもよい。また、本明細書において、2つの要素の配置に関して、「特定方向視で重複する」とは、その視線方向に平行な仮想直線を当該仮想直線と直交する各方向に移動させた場合に、当該仮想直線が2つの要素の両方に交わる領域が少なくとも一部に存在することを意味する。
【0016】
図1の分解斜視図、
図2のスケルトン図に示すように、車両用駆動装置100は、ロータ12を備えた回転電機MGと、車輪Wに駆動連結される出力部材と、回転電機MGと出力部材との間で駆動力を伝達する動力伝達機構GTとを備えている。後述するように、ロータ12の回転軸心Aに沿う方向を軸方向Lとし、動力伝達機構GTは、ロータ12に対して軸方向Lの一方側である軸方向第1側L1に配置されている。詳細は後述するが、回転電機MGは、車両の駆動力源であり、動力伝達機構GTは、減速機6と差動歯車機構5とを含む。具体的には、本実施形態の車両用駆動装置100は、ロータ12を備えた回転電機MGと、それぞれが車輪Wに駆動連結される一対の出力部材と、ロータ軸13の回転を減速する減速機6と、減速機6を介して差動入力要素(差動ケース50)に伝達される回転電機MGからの駆動力を一対の出力部材に分配する差動歯車機構5と、回転電機MG、減速機6、及び差動歯車機構5を収容する収容室(後述する第2収容室E2)を形成するケース9とを備えている。
【0017】
回転電機MG及び動力伝達機構GTは、車両用駆動装置100における「駆動ユニットTA」に相当する。また、出力部材の少なくとも一部が駆動ユニットTAに含まれていてもよい。ケース9は、回転電機MG及び動力伝達機構GTを含む駆動ユニットTAを少なくとも収容すると共に、後述するインバータモジュールINVと、電源モジュールPWRと、冷媒回路モジュール2とを支持する。尚、「支持」はケース9の外部を用いる場合に限らず、ケース9の内面に支持される形態も含む。つまり、インバータモジュールINVと、電源モジュールPWRと、冷媒回路モジュール2との内の少なくとも1つ以上がケース9に収容されていてもよい。
【0018】
一対の車輪Wは第1車輪W1及び第2車輪W2を含み、第1車輪W1は第1ドライブシャフトDS1に駆動連結され、第2車輪W2は第2ドライブシャフトDS2に駆動連結されている。本実施形態では、差動歯車機構5の出力ギヤである一対のサイドギヤ52は、第1サイドギヤ53と第2サイドギヤ54とを含む。第1サイドギヤ53は、連結軸Jを介して第1ドライブシャフトDS1に駆動連結され、第2サイドギヤ54は、第2ドライブシャフトDS2に駆動連結されている。例えば、第1サイドギヤ53と連結軸Jとはスプライン結合によって連結されており、第2サイドギヤ54と第2ドライブシャフトDS2ともスプライン結合によって連結されている。これらの連結部はスプライン係合部59である。出力部材は、例えばこれらのスプライン係合部59である。また、出力部材は、第1サイドギヤ53、第2サイドギヤ54、第1ドライブシャフトDS1、第2ドライブシャフトDS2、連結軸Jであってもよい。
【0019】
以下の説明では、上述したようにロータ12の回転軸心Aに沿う方向を「軸方向L」とする。そして、軸方向Lの一方側を「軸方向第1側L1」とし、軸方向Lの他方側を「軸方向第2側L2」とする。本実施形態では、回転電機MGと減速機6と差動歯車機構5とは、互いに同軸上に、軸方向第2側L2から軸方向第1側L1に向けて記載の順に配置されている。本実施形態の車両用駆動装置100は、1軸構成であり、回転電機MGと減速機6と差動歯車機構5とが配置された軸(回転軸心A)は、車両用駆動装置100の回転軸心Aであると共に、回転電機MG、減速機6、差動歯車機構5の回転軸心でもある。また、ロータ12の回転軸心Aに直交する方向を「径方向」とする。そして、径方向において、ロータ12の回転軸心A側を「径方向内側」とし、その反対側を「径方向外側」とする。また、車両用駆動装置100が車両に搭載された車両搭載状態において鉛直方向に沿う方向を「上下方向Z」とし、上方を「上下方向Zの上側Z1」、下方を「上下方向Zの下側Z2」とする。車両用駆動装置100が車両に水平に搭載されている場合、径方向の内の一方向と上下方向Zとは一致する。また、軸方向L及び上下方向Zに直交する方向を「車両前後方向H」とし、車両前後方向Hの一方側を「前後方向第1側H1」、他方側を「前後方向第2側H2」とする。
図6から
図16に示すように、本実施形態では、前後方向第1側H1が車両10のフロント側であり、前後方向第2側H2がリヤ側である。また、軸方向Lは、車両10の「幅方向」に相当する。
【0020】
また、「駆動ユニットTA」に対する他の車載装置の配置位置に関して、「駆動ユニットTAに対して『少なくとも何れかの側』」と記載した場合には、「複数の側」に亘って当該車載装置が配置されている構成も含む。例えば、駆動ユニットTAが直方体状の場合、当該直方体状の駆動ユニットTAの2面に対向して配置される車載装置がL字状に構成されている形態などである。
【0021】
また、「特定の装置の特定の側に連続する側」とは、例えば「特定の装置」が直方体状の場合、当該直方体の1面である特定の面に対向する側が「特定の側」であり、当該「特定の面」と「辺」が共通な「他の面」に対向する側が「特定の側に連続する側」である。即ち、「特定の装置」が直方体状の場合、「特定の装置の特定の側」を向く「特定の面」は、特定の辺を介して、「特定の装置の特定の側に連続する側」を向く「面」に連続している。
【0022】
図1に示すように、車両用駆動装置100は、さらに、インバータモジュールINVと、電源モジュールPWRと、冷媒回路モジュール2とを備えている。インバータモジュールINVは、回転電機MGを駆動制御する回路モジュールである。
図3に示すように、電源モジュールPWRは、車載バッテリBTに電気的に接続されて車載バッテリBTの電圧変換を行うコンバータ61(電圧変換回路)、車載バッテリBTに電気的に接続されて外部電源60から車載バッテリBTへの充電を行うための充電回路、及び、車載バッテリBTに電気的に接続されて車載バッテリBTから外部への給電を行うための給電回路の少なくとも1つを備えている。尚、本実施形態では、車載バッテリBTへの充電と車載バッテリBTからの給電の双方向の機能を有する充電給電回路62を備える形態を例示している。即ち、充電給電回路62は、充電回路及び給電回路の機能を有する。また、本実施形態では、
図5に示すように、インバータモジュールINVと電源モジュールPWRとを含む高圧回路ユニット4が形成されている。冷媒回路モジュール2は、エアコンディショナ用の冷媒を循環させる冷媒回路20(
図4参照)の少なくとも一部を構成している。
【0023】
また、本実施形態では、ケース9は、インバータモジュールINV及び電源モジュールPWR(即ち高圧回路ユニット4)を収容する第1収容室E1と、回転電機MG及び動力伝達機構GT(即ち駆動ユニットTA)を収容する第2収容室E2とを備えている。
【0024】
図1に示すように、ケース9は、第1収容室E1及び第2収容室E2の中核となる収容部材であるケース本体90と、3つのカバー部材(第1カバー93、第2カバー94、第3カバー95)とを備えている。ケース本体90は、第1ケース部91と、第2ケース部92とを有する。第1ケース部91は、インバータモジュールINV及び電源モジュールPWRを収容する第1収容室E1が形成される部分である。第2ケース部92は、回転電機MG及び動力伝達機構GTを収容する第2収容室E2が形成される部分である。車輪Wを駆動する「駆動ユニットTA」という機能からは、必ずしも電源モジュールPWRが車両用駆動装置100に搭載されていなくてもよく、この場合、第1ケース部91は、インバータモジュールINVを収容するケースということもできる。
【0025】
尚、本実施形態では、第1ケース部91と第2ケース部92とが同一部材によって一体的に形成されている形態を例示しているが、ケース9の構造はこれに限定されるものではない。ケース9は、第1ケース部91と第2ケース部92とが別部材によって構成され、ボルト等の締結部材や溶接等によって一体化される形態であってもよい。
【0026】
第1ケース部91は、車両搭載状態で上下方向Zの上側Z1が開口した矩形箱状に形成されている。第1ケース部91は、第1開口部9aを囲むと共に、車両搭載状態で上下方向Zに沿って延在するように配置された周壁部96を備えている。第1開口部9aは、第1カバー93により閉塞される。第1開口部9aは、インバータモジュールINVを収容するケース9の開口部であり、第1カバー93は、この開口部を閉塞するカバーである。また、本実施形態では第1収容室E1と第2収容室E2とが、上下方向Zに並ぶように配置されている。
【0027】
第2ケース部92は、軸方向Lの両側が開口した筒状に形成されており、円筒状の筒状周壁部97を備えている。筒状周壁部97は、動力伝達機構GTを径方向外側から囲んでおり、ケース9の第2収容室E2を囲む部分に相当する。軸方向第2側L2に形成された開口部は、第2開口部9bであり、軸方向第1側L1に形成された開口部は、第3開口部9cである。第2開口部9bは、第2カバー94により閉塞され、第3開口部9cは、第3カバー95により閉塞されている。第2カバー94及び第3カバー95には、上述したドライブシャフト(第1ドライブシャフトDS1、第2ドライブシャフトDS2)が貫通する貫通孔が形成されている。
【0028】
回転電機MGは、一対の車輪Wの駆動力源として機能する。
図3に示すように、回転電機MGは、インバータ回路PMを介して、二次電池やキャパシタ等の蓄電装置により構成された直流電源である車載バッテリBTと電気的に接続されている。回転電機MGは、車載バッテリBTから電力の供給を受けて動力を発生するモータ(電動機)としての機能と、車輪Wの側から動力の供給を受けて電力を発生するジェネレータ(発電機)としての機能とを有している。回転電機MGは、車載バッテリBTに蓄えられた電力により力行して駆動力を発生すると共に、一対の車輪Wの側から伝達される駆動力により発電して車載バッテリBTを充電する。車載バッテリBTは、定格電圧が48ボルトから400ボルト程度の高圧直流電源である。
【0029】
車載バッテリBTは、車輪Wの駆動力源となる回転電機MGに電力を供給するため、電力容量が大きく、体格も大きい。従って、車室(キャビン)等の空間を確保するために、車両10のキャビン床下に配置されている。尚、車載バッテリBTは、上下方向視で車室と重複しない領域、例えば上下方向視でボンネットと重複する領域に亘って配置されてもよい。この場合においても、車載バッテリBTは後述するキャビン空調ユニット45に対して下側Z2に配置されている。
【0030】
尚、本実施形態では、車載バッテリBTは、回転電機MGが発電した電力によって充電されるだけではなく、定格電圧が100ボルトから240ボルト程度の交流商用電源などの外部電源60から供給される電力によっても充電可能に構成されている。このため、車載バッテリBTは、充電給電回路62を介して外部電源60に接続可能に構成されている。
図3では、外部電源60と充電給電回路62とが、例えばコネクタ等を備えた外部接続ポートPTにより有線で接続されるような形態を例示している。しかし、そのような形態には限らず、例えば、外部接続ポートPTが電磁誘導等によって非接触で外部電源60から受電し、充電給電回路62を経て車載バッテリBTに電力が供給される形態であってもよい。尚、充電給電回路62を制御するために、充電給電制御部64が備えられている。
【0031】
近年、災害時等において電動車両やハイブリッド車両の車載バッテリBTを非常用電源として用いることが提唱されている。充電給電回路62は、車載バッテリBTをそのような非常用電源として利用することができるように充電回路の機能に加えて、給電回路の機能も有して構成されている。当然ながら、このような車載バッテリBTの利用を考慮しないような場合には、充電給電回路62は、充電回路の機能のみを有して構成されていてもよい。
【0032】
また、本実施形態では、車載バッテリBTは、定格電圧が12ボルトから24ボルト程度の低圧直流電源Bにも電力を供給する。低圧直流電源Bは、車両10のヘッドライト、パワーウィンドウ、パワーステアリング、エアコンディショナ、電動オイルポンプなどの補機の電力源、車両10内の種々の制御装置の電力源となる。従来、一般的な車両では、車両の駆動力源(例えば内燃機関)に連動するオルタネータにより発電される電力によって低圧直流電源Bが充電されていた。しかし、本実施形態では、低圧直流電源Bよりも高電圧で、蓄電量も多い車載バッテリBT(高圧直流電源)からの電力により低圧直流電源Bが充電されるように構成されている。これによりオルタネータを搭載しなくてもよく、また、オルタネータの駆動に伴う車両の駆動力源(本実施形態の場合は回転電機MG)の動力損失も抑制することができる。
【0033】
このように車載バッテリBTの電力により低圧直流電源Bを充電するために、車載バッテリBTの電圧変換を行うコンバータ61(電圧変換回路)が備えられている。上述したように、車載バッテリBTの定格電圧の方が、低圧直流電源の定格電圧よりも高いため、コンバータ61は、例えば降圧型のDC/DCコンバータによって構成されている。DC/DCコンバータは、チョッパ型、チャージポンプ型などの非絶縁型と、トランスを用いた絶縁型とがある。車載バッテリBTから電力を供給される回路と、低圧直流電源Bから電力を供給される回路とが、電気的に絶縁されている方が好ましい場合には、コンバータ61は、絶縁型であるとよい。絶縁型のDC/DCコンバータは、スイッチング素子を備えて構成されており、コンバータ61は、コンバータ制御部63により制御される。
【0034】
尚、車両には、一般的な家電製品等に電力を供給するためのAC電源ソケット(交流電源ソケット)を備えるものもある。そのようなAC電源ソケットは、定格電圧が100ボルトから200ボルトの交流を出力可能に構成されている。AC電源ソケットから供給される交流電力は、車載バッテリBTから不図示のインバータを用いて生成される。このようなインバータも電圧変換回路に相当し、当該インバータを有する場合には、当該インバータ及びこれを制御するインバータ制御部も、電源モジュールPWRに含むことができる。
【0035】
このように、電源モジュールPWRは、車載バッテリBTに電気的に接続され、車載バッテリBTの電圧変換を行うコンバータ61(電圧変換回路)及び外部電源60から車載バッテリBTへの充電を行うための充電回路、車載バッテリBTから外部への給電を行うための給電回路の少なくとも1つを備えている。本実施形態では、上述した充電給電制御部64、コンバータ制御部63も電源モジュールPWRに含む。
【0036】
図2に示すように、回転電機MGは、ケース9に固定されたステータ11と、ロータ軸13と一体的に回転するようにロータ軸13に連結されたロータ12とを備えている。回転電機MGは、インナーロータ型の回転電機であり、ステータ11の径方向内側にロータ12が配置されている。回転電機MGは回転界磁型の回転電機であり、ステータ11は、ステータコア11aと、ステータコア11aに巻き回されたステータコイル11bとを含む。また、ロータ12は、ロータコア12aと、ロータコア12aに固定された不図示の永久磁石とを含む。ロータ軸13は、ロータコア12aと同軸の筒状に形成されており、ロータ軸13の軸方向第1側L1における外周側には、減速機6を構成する遊星歯車機構のサンギヤSGがロータ軸13と一体的に回転するように配置されている。後述するように、サンギヤSGは、減速機6の入力要素である。
【0037】
図3に示すように、回転電機MGは、上位の制御装置である車両制御装置300からの指令に従って設定される回転電機MGの目標トルクに基づいて、回転電機制御部17により駆動制御される。回転電機制御部17は、複数のスイッチング素子により構成されたインバータ回路PMをスイッチング制御して、インバータ回路PMに直流と複数相(本実施形態では3相)の交流との間で電力を変換させる。回転電機制御部17の動作電圧は、3.3ボルト~5ボルト程度であり、インバータ回路PMの入出力電圧は、48ボルト~400ボルト程度であり、インバータ回路PMを構成するスイッチング素子のスイッチング制御信号の電圧は15ボルトから24ボルト程度である。このため、回転電機制御部17とインバータ回路PMとの間には、回転電機制御部17から出力されるスイッチング制御信号の電圧を増幅し、駆動力を高めてインバータ回路PMに供給するドライバ18が備えられている。
【0038】
インバータ回路PMは、複数のスイッチング素子を有して構成される。インバータ回路PMは、直流の正極側の上段側スイッチング素子と負極側の下段側スイッチング素子との直列回路により構成された交流1相分のアームを複数組(ここでは3組)備えている。それぞれのスイッチング素子には、負極から正極へ向かう方向(下段側から上段側へ向かう方向)を順方向としてフリーホイールダイオードが備えられている。スイッチング素子には、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)やパワーMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)やSiC-MOSFET(Silicon Carbide - Metal Oxide Semiconductor FET)やSiC-SIT(SiC - Static Induction Transistor)、GaN-MOSFET(Gallium Nitride - MOSFET)などのパワー半導体素子を適用すると好適である。本実施形態では、インバータ回路PMは、フリーホイールダイオードと共にスイッチング素子が集積されたパワーモジュールとして構成されている。
【0039】
回転電機MGが駆動される際には、インバータ回路PMを構成するスイッチング素子に大電流が流れてスイッチング素子が発熱する。従って、複数のスイッチング素子を備えたインバータ回路PMの発熱量は大きなものとなる。このため、本実施形態では、
図5に示すように、スイッチング素子を冷却する冷却ユニット38が備えられている。冷却ユニット38には、冷却水が流通する冷却水路39が形成されている。尚、冷却は冷却対象部位と冷却水との間での直接の熱交換による形態に限らず、油やヒートシンク等の伝熱媒体を介して冷却水との間で熱交換される形態も含む。
【0040】
インバータモジュールINVは、インバータ回路PMを構成するスイッチング素子と、スイッチング素子を冷却する冷却ユニットと38とを少なくとも備えて構成されている。本実施形態では、
図3に示すように、インバータモジュールINVは、回転電機制御部17と、ドライバ18とをさらに備えている。即ち、本実施形態では、回転電機制御部17と、ドライバ18と、インバータ回路PMと、冷却ユニット38とを備えてインバータモジュールINVが構成されている。当然ながら、回転電機制御部17及びドライバ18を含まず、インバータ回路PMを構成するスイッチング素子と、冷却ユニットと38とによりインバータモジュールINVが構成されていてもよい。
【0041】
尚、
図3に示すように、インバータ回路PMの直流側、つまり、インバータ回路PMと車載バッテリBTとの間には、インバータ回路PMの直流側の電圧を平滑する直流リンクコンデンサ16(平滑コンデンサ)が備えられている。インバータモジュールINVは、直流リンクコンデンサ16を含んでいてもよい。
【0042】
回転電機制御部17は、ロータ12の回転位置(永久磁石の磁極位置)、ロータ12の回転速度、及び3相各相のステータコイル11bを流れる電流に基づいて、電流フィードバック制御を行ってインバータ回路PMを介して回転電機MGを駆動制御する。ステータコイル11bを流れる電流は、電流センサ15によって検出される。電流センサ15は、
図5に示すように、例えばインバータ回路PMと回転電機MGのステータコイル11bとを接続するバスバーなどの動力線の近傍に設置された非接触型電流センサであると好適である。
【0043】
また、電源モジュールPWRは、コンバータ61(電圧変換回路)及び充電給電回路62を少なくとも備えて構成されている。本実施形態では、
図5に示すように、コンバータ61及び充電給電回路62が共通の基板を用いて構成されている。また、本実施形態では、電源モジュールPWRは、
図3に示すように、コンバータ61と、コンバータ制御部63と、充電給電回路62と、充電給電制御部64とを備えている。
【0044】
尚、本実施形態では、インバータモジュールINVに含まれる回転電機制御部17と、電源モジュールPWRに含まれるコンバータ制御部63及び充電給電制御部64とが、1つの同一の基板上に形成されて制御基板ECUが構成されている。制御基板ECUは、複数の制御部の機能が統合されている統合制御基板と称することもできる。
【0045】
本実施形態では、
図5に示すように、冷却ユニット38の上面である冷却ユニット第1面38aに、インバータ回路PM(スイッチング素子)と、直流リンクコンデンサ16と、コンバータ61と、充電給電回路62とが取り付けられている。脈動を生じる直流電圧を平滑する直流リンクコンデンサ16は、電流の出入りにより発熱する。また、コンバータ61はスイッチング素子を備えており、スイッチング動作の際に流れる電流によって当該スイッチング素子も発熱する。また、充電給電回路62にも外部電源60から供給されて車載バッテリBTを充電するための電流が流れるため、発熱する。冷却ユニット38は、冷却水が流通する冷却水路39を備えており、これらの発熱部材が冷却ユニット第1面38aに取り付けられることによって適切に冷却される。尚、最も発熱量が多く、高い温度となるのはインバータ回路PMである。
【0046】
例えば、冷却水路39は、インバータ回路PMを冷却する部分が下流側となるように、即ち電源モジュールPWRの側からインバータモジュールINVの側に冷却水が流れるように、冷却ユニット38内に形成されている。発熱量が低い領域から発熱量の高い領域へ冷却水を流通させることで、発熱する冷却対象を冷却水の温度上昇を抑えた状態で適切に冷却することができる。また、回転電機MGが駆動されているとき、即ち車両10が走行中には、外部電源60から車載バッテリBTを充電することはほぼない。道路を走行中に道路に設置された給電装置から非接触で給電されるような形態はあり得るが、一般的には実用化されていない。従って、回転電機MGが駆動されているとき、充電給電回路62は停止していることが多い。また、低圧直流電源Bを充電する際に流れる電流は、車載バッテリBTを充電する際に充電給電回路62を流れる電流に比べて小さく、発熱量も小さい。このため、回転電機MGが駆動中に低圧直流電源Bを充電しても、充電給電回路62に比べてコンバータ61の発熱量は小さい。従って、このような順路で冷却水を流通させても、インバータ回路PMを適切に冷却することができる。
【0047】
インバータ回路PMの上下方向Zの上側Z1には、ドライバ18が配置されている。そして、回転電機制御部17と、コンバータ制御部63と、充電給電制御部64とに跨がって、制御基板ECUが配置されている。概ね、上下方向視において、インバータ回路PMとドライバ18と回転電機制御部17とが重複し、コンバータ61とコンバータ制御部63とが重複し、充電給電回路62と充電給電制御部64とが重複するように、制御基板ECUが配置される。本実施形態では、
図1及び
図5に示すように、電源モジュールPWRは、インバータモジュールINVに対して軸方向第1側L1に隣接して配置されている。制御基板ECUは、軸方向Lに沿って、回転電機制御部17と、コンバータ制御部63と、充電給電制御部64とに跨がって配置されている。そして、制御基板ECUは、
図1に示すように、インバータ回路PM(スイッチング素子)と冷媒回路モジュール2との上下方向Zの間に配置されている。
【0048】
図2に示すように、減速機6は、ロータ軸13と一体的に回転する入力要素と、ケース9に固定された固定要素と、差動入力要素(差動ケース50)と一体的に回転する出力要素と、遊星ギヤを備えた遊星歯車機構として構成されている。この遊星歯車機構は、1つのサンギヤSG、2つのリングギヤ(第1リングギヤRG1、第2リングギヤRG2)と、一体的に回転する2つの遊星ギヤ(第1遊星ギヤPG1、第2遊星ギヤPG2)と、2つの遊星ギヤを回転自在に支持するキャリヤCRとを備えた複合型の遊星歯車機構である。本実施形態では、第1遊星ギヤPG1は、第2遊星ギヤPG2よりも小径に形成されている。
【0049】
サンギヤSGは、ロータ12及びロータ軸13と一体的に回転する。第2リングギヤRG2は、ケース9に固定されている。第1リングギヤRG1は、第2リングギヤRG2に対して軸方向第1側L1に配置され、差動ケース50と一体的に回転するように差動ケース50に連結されている。第2遊星ギヤPG2は、サンギヤSG及び第2リングギヤRG2に噛み合い、第1遊星ギヤPG1は、第2遊星ギヤPG2と一体的に回転すると共に第1リングギヤRG1に噛み合っている。本実施形態では、サンギヤSGが入力要素であり、第2リングギヤRG2が固定要素であり、第1リングギヤRG1が出力要素である。キャリヤCRは、何れの回転要素及び固定要素にも連結されていない。
【0050】
差動歯車機構5は、傘歯車式の差動歯車機構であり、何れも傘歯車のピニオンギヤ51と、サイドギヤ52とを含む。ピニオンギヤ51は、差動ケース50に支持されると共に径方向に沿って延在するように配置されたピニオンシャフト55により回転自在に支持されている。ピニオンシャフト55は、差動ケース50と一体的に回転し、ピニオンギヤ51は、ピニオンシャフト55を中心として回転(自転)自在、かつ、差動ケース50の回転軸心Aを中心として回転(公転)自在に構成されている。複数のピニオンシャフト55は、差動ケース50の回転軸心Aを中心として放射状(例えば十字状)に配置され、複数のピニオンシャフト55のそれぞれに、ピニオンギヤ51が取り付けられている。差動ケース50は、ピニオンギヤ51、サイドギヤ52、ピニオンシャフト55を内部に収容している。
【0051】
サイドギヤ52は、第1サイドギヤ53と第2サイドギヤ54とを備えて軸方向Lに離間して一対配置されている。第1サイドギヤ53及び第2サイドギヤ54は、複数のピニオンギヤ51のそれぞれに噛み合うと共に、差動ケース50の回転軸心Aを中心として回転するように配置されている。
図2に示すように、第1サイドギヤ53は、減速機6及び中空筒状のロータ軸13の径方向内側を通って軸方向Lに沿って延在する連結軸Jに連結されている。連結軸Jは、軸方向第2側L2の車輪Wである第1車輪W1に駆動連結された第1ドライブシャフトDS1と一体的に回転するように連結されている。従って、第1サイドギヤ53は、連結軸Jを介して第1車輪W1に駆動連結されている。また、第2サイドギヤ54は、軸方向第1側L1の車輪Wである第2車輪W2に駆動連結された第2ドライブシャフトDS2と一体的に回転するように連結されている。
【0052】
車輪Wに駆動連結されて、車輪Wと一体的に回転する第1ドライブシャフトDS1、第2ドライブシャフトDS2、連結軸J、第1サイドギヤ53、第2サイドギヤ54は、何れも出力部材に相当する回転部材ということができる。第1サイドギヤ53及び第2サイドギヤ54は、差動歯車機構5であると共に出力部材ということもできる。尚、第1サイドギヤ53及び第2サイドギヤ54は、それぞれ、ピニオンギヤ51に噛み合うギヤ部と、連結軸Jや第2ドライブシャフトDS2に連結されるスプライン係合部59とを備えている。機能的に分けて考える場合、ギヤ部が差動歯車機構5に含まれる回転部材に相当し、スプライン係合部59が出力部材に相当する。
【0053】
このような車両用駆動装置100においては、回転電機MGや動力伝達機構GTが油によって潤滑(冷却を含む)されることが多く、本実施形態の車両用駆動装置100も油によって潤滑される。例えば、ケース9の下側Z2に形成された油溜まりに溜まった油がオイルポンプOP(
図4参照)や、動力伝達機構GTのギヤによる掻き上げにより、軸受等の潤滑対象箇所や、回転電機MGのステータコイル11b等の冷却対象箇所に供給される。
図4に示すオイル流路40は、オイルポンプOPから吐出される油が、回転電機MG(ステータコイル11bやロータ軸13の軸受等)及び動力伝達機構GT(各ギヤの軸受等)に供給される形態を例示している。当然ながら、冷却に用いられた油の温度は上昇するため、オイル流路40には油を冷却するためのオイルクーラOCも接続されている。オイルクーラOCは、冷却水と熱交換することによって油を冷却する。
【0054】
上述したように、インバータモジュールINVは、インバータ回路PMを構成するスイッチング素子を冷却する冷却ユニット38を備えている。このため、車両用駆動装置100は、冷却ユニット38とラジエータ37(車載ラジエータ)とを通る経路で冷却水を循環させる冷却水回路30を構成する冷却水回路モジュール3を有している。
図4に示すように、冷却水回路30には、ラジエータ37と、第1ウォーターポンプ36と、冷却ユニット38と、三方向弁35とが接続されている。冷却水回路モジュール3は、ケース9に形成される水路、及び冷却ユニット38を少なくとも含む。また、冷却水回路モジュール3は、さらに三方向弁35や第1ウォーターポンプ36を含んでいてもよい。ラジエータ37によって冷却(放熱)された冷却水は、第1ウォーターポンプ36によって冷却水回路30に送り出され、冷却ユニット38においてインバータモジュールINV及び電源モジュールPWRから熱を奪い、三方向弁35を経てラジエータ37に戻って廃熱される。
【0055】
図4に示すように、冷却水回路30には、上述したオイルクーラOCも接続されている。オイルクーラOCは、冷却水回路30を流れる冷却水と熱交換することによってオイル流路40を流れる油を冷却する。また、冷却水回路30には、水冷コンデンサ31(冷媒用の熱交換器)も接続されている。水冷コンデンサ31では、車載エアコンディショナの冷媒と冷却水との間で熱交換を行い、温度が高くなった冷媒を冷却する。
【0056】
冷却ユニット38、オイルクーラOC、水冷コンデンサ31を経て温度が上昇した冷却水は、三方向弁35を経てラジエータ37に戻って廃熱される。しかし、寒冷時などで廃熱の必要が無い場合や、逆に冷却水によって油の温度を上げたい場合、車載エアコンディショナによって急速暖房を行う場合、などでは、ラジエータ37による放熱は必要ない。三方向弁35は、このような場合にラジエータ37を経由することなく、冷却水を循環させるように、冷却水の流路を切り替える。
【0057】
上述したように、水冷コンデンサ31は、車載エアコンディショナの冷媒が流れる冷媒回路20に接続されている。冷媒回路20には、水冷コンデンサ31から第1バルブV1を経由してエバポレータ44を通りアキュムレータ41に至る経路(第1流路20a)と、水冷コンデンサ31から第2バルブV2を経由してアキュムレータ41に至る経路を経て、さらに、コンプレッサ42、キャビンコンデンサ43を経て第3バルブV3を経由して水冷コンデンサ31に戻る経路(第2流路20b)とが形成されている。
【0058】
エバポレータ44は、冷房の中核となる機能部品であり、冷媒を気化させることによって周囲から熱を奪い、冷気を車室内に放出させる。アキュムレータ41は、気体と液体とが混在した冷媒から液体を分離し、気体(冷媒ガス)のみをコンプレッサ42に供給する。コンプレッサ42は、比較的低温・低圧の冷媒ガスを圧縮して、高温・高圧にする。キャビンコンデンサ43は、ヒートポンプ方式による暖房の熱源であり、コンプレッサ42によって凝縮された熱を車室内に放出する。キャビンコンデンサ43を出た冷媒は、膨張弁である第3バルブV3を経由して水冷コンデンサ31に流れる。
【0059】
上述したコンプレッサ42、キャビンコンデンサ43、エバポレータ44は、車載エアコンディショナにおいて冷暖房時の温度や風量の調整、吹き出し口の選択を行うキャビン空調ユニット45に含まれる。
【0060】
また、本実施形態では、バッテリヒートシンク34も冷却水との熱交換によって車載バッテリBTを冷却し、温度が上昇した冷却水は、チラー32において冷媒と熱交換することによって冷却される。このため、冷媒が、水冷コンデンサ31から第4バルブV4及びチラー32を経由してアキュムレータ41に至る経路として第3流路20cが形成されている。
【0061】
チラー32には、チラー32から出た冷却水が、バッテリヒートシンク34、第2ウォーターポンプ33を経てチラー32に戻る第2冷却水回路30Bが接続されている。チラー32は、水冷コンデンサ31と同様に、冷却水と冷媒との間で熱交換を行い、冷却水から熱を奪って冷却水を冷却する。バッテリヒートシンク34との熱交換によって温度が上昇した冷却水はチラー32において冷却される。車載バッテリBTを冷却するための第2冷却水回路30B、及び第2冷却水回路30Bを流れる冷却水を冷却する第3流路20cを備えることにより、急速充電や高速走行時など、車載バッテリBTに流れる電流が増加して車載バッテリBTの温度が上昇するような場合にも、車載バッテリBTに対する入出力電流の制限を緩和し易くなる。
【0062】
上述したように、冷媒回路20には、水冷コンデンサ31(冷媒用の熱交換器)からエバポレータ44までの冷媒の流路を含む第1流路20aと、コンプレッサ42から水冷コンデンサ31までの冷媒の流路を含む第2流路20bと、チラー32を含む冷媒の流路を含む第3流路20cとが含まれる。第2流路20b及び第3流路20cに比べて第1流路20aを流れる冷媒は低温である。また、第2流路20bに比べて第3流路20cを流れる冷媒は低温である。
【0063】
冷媒回路20を構成する流路の一部は、ケース9の第1カバー93を利用して形成することもできる。例えば、
図1に示すように、冷媒回路20における冷媒の流量又は流路を制御する制御弁V(第1バルブV1、第2バルブV2、第3バルブV3、第4バルブV4)が、第1カバー93の第1カバー第1面93aに取り付けられている。本実施形態では、冷媒回路モジュール2は、第1カバー93に形成された冷媒回路20及び制御弁Vにより構成されている。尚、ここでは、第1カバー93において冷媒回路20が形成されている部分を冷媒マニホールド21と称する。
【0064】
冷媒回路モジュール2には、冷媒回路20における冷媒の流路を構成する機能部品としての水冷コンデンサ31、チラー32、アキュムレータ41が取り付けられている。冷媒回路モジュール2と、これらの機能部品とを合わせて、冷媒モジュール1が構成されている。尚、車載バッテリBTが冷却水を用いて冷却されない構成の場合、即ち、第3流路20cが形成されていない場合には、チラー32は備えられていなくてもよい。従って、冷媒回路モジュール2、水冷コンデンサ31、アキュムレータ41により、冷媒モジュール1が構成されていてもよい。尚、冷媒回路モジュール2は、車載エアコンディショナ用の冷媒を循環させる冷媒回路の少なくとも一部を構成していればよく、冷媒マニホールド21に加えて、制御弁Vの他、水冷コンデンサ31、チラー32、アキュムレータ41も冷媒回路モジュール2に含めてもよい。
【0065】
尚、冷媒路構成部材には、制御弁V及び機能部品を含み、機能部品には、水冷コンデンサ31、チラー32、アキュムレータ41を含む。また、本実施形態では、冷媒モジュール1には含まれないが、コンプレッサ42、キャビンコンデンサ43、エバポレータ44、バッテリヒートシンク34も、機能部品である。また、第2ウォーターポンプ33も機能部品であり、例えば
図4に示すように、第2ウォーターポンプ33も車両用駆動装置100に一体的に備えられる場合には、冷媒モジュール1に含むことができる。アキュムレータ41は、
図1に示すように、第1カバー93に取り付けられた場合には冷媒モジュール1に含まれるが、車両用駆動装置100とは別に配置されて、冷媒モジュール1には含まれない構成であってもよい。
【0066】
このような構成により、冷媒回路20を流れる車載エアコンディショナ用の冷媒を冷却水により冷却することができる。冷却水は、ラジエータ37を通る経路で循環するので、車載エアコンディショナ用の冷媒の熱をラジエータ37により車外に排出することができる。また、水冷コンデンサ31(熱交換器)が冷媒路構成部材を介してケース9に一体的に固定される。従って、冷媒回路20を構成する機能部品を接続する配管等を少なく抑えることができる。
【0067】
車両用駆動装置100の冷却構造は、車両用駆動装置100と車載エアコンディショナとの関係も考慮して構築されることが好ましい。また、回転電機MGに接続される車載バッテリBTは電圧が高く電力容量も大きいため、充電給電回路62を含む車載充電器と車載バッテリBTとを接続する配線も単位長さ当たりの重量が大きくなり易い。車両10のエネルギー効率は、車両10が軽いほど高くし易い。従って、車載エアコンディショナや車載バッテリBTと、車両用駆動装置100とを接続する接続部材も考慮して、車両用駆動装置100を中核とした車載部材群全体の小型化が図られることが好ましい。
【0068】
以下、
図6から
図16も参照して、車載エアコンディショナ及び車載バッテリBTを含む、車両用駆動装置100を中核とした車載部材群の具体的な配置例(第1の例から第10の例)について説明する。はじめに、複数の具体例の内の代表例(第1の例)を、
図6及び
図7を参照して説明する。
【0069】
車両用駆動装置100は、車両搭載状態で、駆動ユニットTAが、車載エアコンディショナのキャビン空調ユニット45、及び、車両10のキャビンの床下に配置された車載バッテリBTに対して前後方向第1側H1に配置されている。そして、冷媒回路モジュール2は、駆動ユニットTAに対して上側Z1に配置されている。尚、他の例については後述するが、冷媒回路モジュール2は、駆動ユニットTAに対して上側Z1又は前後方向第2側H2に配置される。また、インバータモジュールINVを含む高圧回路ユニット4も、駆動ユニットTAに対して、上側Z1に配置されている。冷媒回路モジュール2と同様に他の例については後述するが、インバータモジュールINVは、駆動ユニットTAに対して、上側Z1、下側Z2、前後方向第2側H2、幅方向第1側(軸方向第1側L1)、及び、幅方向第2側(軸方向第2側L2)の内の少なくとも何れか1つの側に配置される。即ち、インバータモジュールINVは、3次元直交座標系で示される上下方向Z、車両前後方向H、幅方向(軸方向L)において、駆動ユニットTAに対して前後方向第1側H1以外の位置に配置される。そして、電源モジュールPWRを含む高圧回路ユニット4は、駆動ユニットTAに対して、インバータモジュールINVが配置された側と同じ側である上側Z1に配置されている。インバータモジュールINV等と同様に、他の例については後述するが、電源モジュールPWRは、駆動ユニットTAに対して、上側Z1、下側Z2、前後方向第2側H2、幅方向第1側(軸方向第1側L1)、及び、幅方向第2側(軸方向第2側L2)の内の少なくとも何れか1つの側であって、インバータモジュールINVが配置された側と同じ側、又は、インバータモジュールINVが配置された側に連続する側に配置されている。
【0070】
車両用駆動装置100は、駆動ユニットTAにインバータモジュールINVを一体的に備えるだけでなく、さらに電源モジュールPWRと冷媒回路モジュール2とが駆動ユニットTAに一体的に備えられた形態となる。従って、駆動ユニットTA及びインバータモジュールINVによるユニットと、電源モジュールPWR及び冷媒回路モジュール2とをそれぞれ接続する配線や配管等を少なく抑えることができる。また、駆動ユニットTA及びインバータモジュールINVだけでなく、電源モジュールPWR及び冷媒回路モジュール2もケース9に一体的に支持されることで、多くの機能を備えて一体化された車両用駆動装置100を実現でき、車両用駆動装置100を中核とした車載部材群全体の小型化も図り易い。
【0071】
車載エアコンディショナのキャビン空調ユニット45は、外気導入や車室内への空気の供給の関係で、一般的に駆動ユニットTAよりも上側Z1に配置されることが多い。特に、本実施形態のように、1軸構成の駆動ユニットTAでは、車輪Wと同軸上に駆動ユニットTAが配置されるため、キャビン空調ユニット45は、駆動ユニットTAよりも上側Z1に配置される。冷媒回路モジュール2が、駆動ユニットTAに対して上側Z1に配置されるため、冷媒回路モジュール2とキャビン空調ユニット45との距離を短く抑え易く、これらの間をつなぐ配管を短く抑え易い。
【0072】
また、インバータモジュールINV及び電源モジュールPWRは、駆動ユニットTAに対して車載バッテリBTが配置された側とは逆側の前後方向第1側H1以外の側に配置される。従って、インバータモジュールINV及び電源モジュールPWRと車載バッテリBTとの距離を短く抑え易く、インバータモジュールINV及び電源モジュールPWRと車載バッテリBTとの間をつなぐ配線も短く抑え易い。
【0073】
さらに、電源モジュールPWRが、インバータモジュールINVが配置された側と同じ側に配置されているため、電源モジュールPWRとインバータモジュールINVとをつなぐ配線も短く抑え易い。尚、本実施形態では、
図1及び
図5に示すように、電源モジュールPWRとインバータモジュールINVとは、一体的に高圧回路ユニット4として構成されており、電源モジュールPWRとインバータモジュールINVとをつなぐ配線をさらに短く抑え易い。
【0074】
また、
図6に示すように、本実施形態では、車両搭載状態で、駆動ユニットTAは、車両10と外部との電気的接続のために車両10に設けられた外部接続ポートPTに対して下側Z2に配置されている。
図7に示すように、外部接続ポートPTは、車両10の側面において外部電源60と接続できるように幅方向(軸方向L)の何れかの端部に設けられている。そして、電源モジュールPWRは、駆動ユニットTAに対して上側Z1に配置されている。
図6及び
図7に示す形態では、電源モジュールPWR及び外部接続ポートPTは、共に駆動ユニットTAに対して、上側Z1に配置されている。つまり、電源モジュールPWRと外部接続ポートPTとは、近くに配置されている。従って、電源モジュールPWRと外部接続ポートPTとの距離を短く抑え易く、電源モジュールPWRと外部接続ポートPTとの間をつなぐ配線を短く抑え易い。
【0075】
また、
図6及び
図7に示すように、低圧直流電源Bも、駆動ユニットTAに対して、上側Z1に配置されている。電源モジュールPWRが、駆動ユニットTAに対して上側Z1に配置されている場合、
図3に示すコンバータ61と低圧直流電源Bとの距離を短く抑え易く、コンバータ61と低圧直流電源Bとをつなぐ配線も短く抑え易い。
【0076】
図4を参照して上述したように、車両用駆動装置100は、回転電機MG及びインバータモジュールINVの少なくとも一方を冷却するための冷却水を循環させるウォーターポンプ(第1ウォーターポンプ36)を備えている。
図4には、第1ウォーターポンプ36により循環させられる冷却水が、冷却ユニット38を介してインバータモジュールINVを冷却する形態を例示している。
図6に示すように、車両搭載状態で、駆動ユニットTAは、冷却水と外気との熱交換を行うラジエータ37に対して前後方向第2側H2に配置されている。そして、
図1及び
図6に示すように、第1ウォーターポンプ36は、駆動ユニットTAに対して前後方向第1側H1に配置されていると共に、ケース9に支持されている。
【0077】
ウォーターポンプ(第1ウォーターポンプ36)が冷却水を循環させることで、回転電機MG及びインバータモジュールINVの少なくとも一方を適切に冷却することができる。また、ウォーターポンプが駆動ユニットTAに対してラジエータ37の側に配置されていることで、ラジエータ37とウォーターポンプとの距離を短く抑え易く、ラジエータ37とウォーターポンプの間をつなぐ配管を短く抑え易い。
【0078】
また、
図4に示すように、車両用駆動装置100は、少なくともインバータモジュールINVを冷却するための冷却水と冷媒との熱交換を行う熱交換器(水冷コンデンサ31)を備えている。
図1、
図6、
図7に示すように、インバータモジュールINVは、駆動ユニットTAに対して、冷媒回路モジュール2が配置された側と同じ側に配置されている。
図1に示すように、水冷コンデンサ31は、冷媒回路モジュール2が配置された領域とインバータモジュールINVが配置された領域との間の領域に配置されている。尚、他の例については後述するが、インバータモジュールINVは、駆動ユニットTAに対して、冷媒回路モジュール2が配置された側と同じ側、又は、冷媒回路モジュール2が配置された側に連続する側に配置されていればよい。
【0079】
インバータモジュールINVが、冷媒回路モジュール2に対してこのように配置されていることで、インバータモジュールINVと冷媒回路モジュール2との距離を短く抑え易く、冷媒回路モジュール2を循環する冷媒とインバータモジュールINVを冷却する冷却水とのそれぞれの流路を構成する配管を短く抑え易い。また、熱交換器(水冷コンデンサ31)が、冷媒回路モジュール2が配置された領域とインバータモジュールINVが配置された領域との間の領域に配置されているため、冷媒回路モジュール2と熱交換器とをつなぐ流路と、インバータモジュールINVと熱交換器とをつなぐ流路との双方を短く抑え易く、流路を構成する配管も短く抑え易い。
【0080】
以上、
図1、
図6及び
図7に例示する形態を車載部材群の相対配置の第1の例と称する。第1の例では、駆動ユニットTAと冷媒回路モジュール2とが一体的に形成された車両用駆動装置100における冷媒回路モジュール2と、キャビン空調ユニット45との間の配管を短くできるように、車両用駆動装置100の上下方向Zにおける最上部に冷媒回路モジュール2が配置されている。つまり、駆動ユニットTAに対して最も上側Z1に冷媒回路モジュール2が配置されている。冷媒の配管が短くなることによって、寒冷時における大気への放熱量や、夏期における大気からの受熱量を抑制することができ、車載エアコンディショナの効率を向上させることができる。
【0081】
尚、
図8から
図12に示す第2の例から第6の例でも、車両用駆動装置100の上下方向Zにおける最上部に冷媒回路モジュール2が配置されている。従って、第2の例から第6の例においても、冷媒回路モジュール2とキャビン空調ユニット45との間の配管を短くすることができる。第1の例から第6の例では、冷媒回路モジュール2の配置位置は共通しているが、電源モジュールPWRを含む高圧回路ユニット4の配置位置についてはそれぞれ異なっている。それぞれ、外部接続ポートPT、車載バッテリBT、低圧直流電源Bとの関係により、電源モジュールPWRの配置位置が設定されている。
【0082】
図8は、車載部材群の相対配置の第2の例を示している。第2の例においても、車両搭載状態で、駆動ユニットTAは、キャビン空調ユニット45及び車載バッテリBTに対して前後方向第1側H1に配置されている。そして、冷媒回路モジュール2も、駆動ユニットTAに対して上側Z1に配置されている。但し、第2の例では、インバータモジュールINVを含む高圧回路ユニット4は、駆動ユニットTAに対して、前後方向第1側H1に配置されている。そして、電源モジュールPWRを含む高圧回路ユニット4は、駆動ユニットTAに対して、インバータモジュールINVが配置された側と同じ側である前後方向第1側H1に配置されている。
【0083】
第2の例においても、
図8に示すように、車両搭載状態で、駆動ユニットTAは、外部接続ポートPTに対して下側Z2に配置されている。第2の例では、電源モジュールPWRを含む高圧回路ユニット4は、駆動ユニットTAに対して、前後方向第1側H1に配置されている。駆動ユニットTAを基準として、電源モジュールPWRは、外部接続ポートPTから遠い側に配置されることになる。しかし、例えば、駆動ユニットTAに対して前後方向第1側H1における上側Z1に電源モジュールPWRのコンバータ61が配置されている場合には、電源モジュールPWRと低圧直流電源Bとの距離は短く抑えることができる。
【0084】
第2の例においても、
図8に示すように、車両搭載状態で、駆動ユニットTAは、ラジエータ37に対して前後方向第2側H2に配置されている。ラジエータ37は車両10において最も前方に配置されるため、以下、
図9から
図16を参照して説明する第3の例から第10の例においても同様に、駆動ユニットTAは、ラジエータ37に対して前後方向第2側H2に配置されている。第1ウォーターポンプ36は、駆動ユニットTAに対して前後方向第1側H1に配置されていることが好ましい。しかし、第2の例のように、駆動ユニットTAの前後方向第1側H1に高圧回路ユニット4が配置されるような場合には、駆動ユニットTAの幅方向第1側(軸方向第1側L1)や幅方向第2側(軸方向第2側L2)に配置されてケース9に支持されていてもよい。例えば、ケース9の幅方向(軸方向L)の何れかの外壁における前後方向第1側H1に配置されることで、ラジエータ37との距離を短くすることができる。
【0085】
尚、第2の例から第10の例について示す
図8から
図16には、第1ウォーターポンプ36の配置位置の例示は省略する。第2の例の説明において上述したように、第1ウォーターポンプ36は、駆動ユニットTAの前後方向第1側H1、幅方向第1側(軸方向第1側L1)、幅方向第2側(軸方向第2側L2)等に配置されてケース9に支持されていると好適である。以下、第3の例から第10の例の説明では、第1ウォーターポンプ36の配置位置についての説明は省略する。尚、第1の例も含めて、第1ウォーターポンプ36は、ケース9に支持されることなく、つまり、駆動ユニットTA(車両用駆動装置100)とは一体化されることなく、車両10に搭載されていてもよい。また、ラジエータ37と駆動ユニットTAとの配置関係についても、第1の例から第10の例で全て共通であるから、第3の例から第10の例についての説明は省略する。
【0086】
図8に示すように、第2の例において、インバータモジュールINVを含む高圧回路ユニット4は、駆動ユニットTAに対して、冷媒回路モジュール2が配置された側に連続する側に配置されている。そして、第2の例においても、水冷コンデンサ31(熱交換器)が、冷媒回路モジュール2が配置された領域とインバータモジュールINVが配置された領域との間の領域に配置されていると好適である。尚、第1の例については、
図1に水冷コンデンサ31の配置位置を例示しているが、第2の例から第10の例については、水冷コンデンサ31の配置位置の図示は省略している。また、当然ながら、第1の例も含めて、水冷コンデンサ31が、冷媒回路モジュール2が配置された領域とインバータモジュールINVが配置された領域との間の領域に配置されていない形態を妨げるものでもない。
【0087】
図9は、車載部材群の相対配置の第3の例を示している。第3の例においても、車両搭載状態で、駆動ユニットTAは、キャビン空調ユニット45及び車載バッテリBTに対して前後方向第1側H1に配置されている。そして、冷媒回路モジュール2も、駆動ユニットTAに対して上側Z1に配置されている。インバータモジュールINVを含む高圧回路ユニット4は、駆動ユニットTAに対して、幅方向第2側(軸方向第2側L2)に配置されている。そして、電源モジュールPWRを含む高圧回路ユニット4も、駆動ユニットTAに対して、インバータモジュールINVが配置された側と同じ側である幅方向第2側(軸方向第2側L2)に配置されている。
【0088】
また、第3の例においても、
図9に示すように、車両搭載状態で、駆動ユニットTAは、外部接続ポートPTに対して下側Z2に配置されている。第3の例では、電源モジュールPWRを含む高圧回路ユニット4は、駆動ユニットTAに対して、幅方向第2側(軸方向第2側L2)に配置されている。この場合であっても、電源モジュールPWRが駆動ユニットTAに対して幅方向第2側(軸方向第2側L2)における上側Z1に配置されると、電源モジュールPWRを外部接続ポートPTに近づけて配置することができる。従って、電源モジュールPWRと外部接続ポートPTとの距離を短く抑え易く、電源モジュールPWRと外部接続ポートPTとの間をつなぐ配線を短く抑え易い。
【0089】
また、電源モジュールPWRを含む高圧回路ユニット4が、駆動ユニットTAに対して、幅方向第2側(軸方向第2側L2)における上側Z1に配置されていると、
図4に示すコンバータ61と低圧直流電源Bとの距離を短く抑え易い。従って、コンバータ61と低圧直流電源Bとをつなぐ配線も短く抑え易い。
【0090】
図9に示すように、第3の例においては、インバータモジュールINVを含む高圧回路ユニット4は、駆動ユニットTAに対して、冷媒回路モジュール2が配置された側に連続する側に配置されている。水冷コンデンサ31(熱交換器)の配置位置については省略しているが、第3の例においても、水冷コンデンサ31が、冷媒回路モジュール2が配置された領域とインバータモジュールINVが配置された領域との間の領域に配置されていると好適である。
【0091】
図10は、車載部材群の相対配置の第4の例を示している。第4の例においても、車両搭載状態で、駆動ユニットTAは、キャビン空調ユニット45及び車載バッテリBTに対して前後方向第1側H1に配置されている。そして、冷媒回路モジュール2も、駆動ユニットTAに対して上側Z1に配置されている。インバータモジュールINV及び電源モジュールPWRを含む高圧回路ユニット4は、駆動ユニットTAに対して、前後方向第2側H2及び幅方向第1側(軸方向第1側L1)に配置されている。そして、インバータモジュールINV及び電源モジュールPWRは、それぞれ駆動ユニットTAに対して異なる側に分かれて配置されていてもよいし、インバータモジュールINVを構成する回路群、電源モジュールPWRを構成する回路群のそれぞれが、駆動ユニットTAに対して異なる側に分かれて配置されていてもよい。高圧回路ユニット4に含まれる電源モジュールPWRは、駆動ユニットTAに対して、インバータモジュールINVが配置された側と同じ側及びインバータモジュールINVが配置された側に連続する側の少なくとも一方に配置されている。
【0092】
また、第4の例においても、
図10に示すように、車両搭載状態で、駆動ユニットTAは、外部接続ポートPTに対して下側Z2に配置されている。第4の例では、電源モジュールPWRを含む高圧回路ユニット4は、駆動ユニットTAに対して、前後方向第2側H2及び幅方向第1側(軸方向第1側L1)に配置されている。このため、電源モジュールPWRを外部接続ポートPTに近づけて配置することができる。従って、電源モジュールPWRと外部接続ポートPTとの距離を短く抑え易く、電源モジュールPWRと外部接続ポートPTとの間をつなぐ配線を短く抑え易い。また、電源モジュールPWRに含まれるコンバータ61と低圧直流電源Bとの距離を短く抑え易い。従って、コンバータ61と低圧直流電源Bとをつなぐ配線も短く抑え易い。
【0093】
図10に示すように、第4の例において、インバータモジュールINVを含む高圧回路ユニット4は、駆動ユニットTAに対して、冷媒回路モジュール2が配置された側に連続する側に配置されている。ここでは、高圧回路ユニット4は、駆動ユニットTAに対して、それぞれ冷媒回路モジュール2が配置された側に連続する2つの異なる側に配置されている。水冷コンデンサ31(熱交換器)の配置位置については省略しているが、第4の例においても、水冷コンデンサ31が、冷媒回路モジュール2が配置された領域とインバータモジュールINVが配置された領域との間の領域に配置されていると好適である。
【0094】
図11は、車載部材群の相対配置の第5の例を示している。第5の例においても、車両搭載状態で、駆動ユニットTAは、キャビン空調ユニット45及び車載バッテリBTに対して前後方向第1側H1に配置されている。そして、冷媒回路モジュール2も、駆動ユニットTAに対して上側Z1に配置されている。インバータモジュールINVを含む高圧回路ユニット4は、駆動ユニットTAに対して、前後方向第2側H2に配置されている。高圧回路ユニット4に含まれる電源モジュールPWRは、駆動ユニットTAに対して、インバータモジュールINVが配置された側と同じ側に配置されている。
【0095】
図11に示す第5の例、及び、
図12に示す第6の例では、第1の例から第4の例と同様に冷媒回路モジュール2が、共に駆動ユニットTAに対して上側Z1に配置されている。一方、第5の例と第6の例とでは、高圧回路ユニット4が、駆動ユニットTAに対して配置されている位置が異なっているが、第5の例及び第6の例に共通して高圧回路ユニット4と車載バッテリBTとの距離が近くなり、配線長が短くなるように高圧回路ユニット4が配置されている。
【0096】
また、第5の例においても、
図11に示すように、車両搭載状態で、駆動ユニットTAは、外部接続ポートPTに対して下側Z2に配置されている。第5の例では、電源モジュールPWRを含む高圧回路ユニット4が、駆動ユニットTAに対して、前後方向第2側H2に配置されている。つまり、電源モジュールPWRを車載バッテリBTに近づけて配置することができる。従って、電源モジュールPWRと車載バッテリBTとの距離を短く抑えることができ、電源モジュールPWRと車載バッテリBTとを繋ぐ配線も短くし易い。尚、外部接続ポートPTは、駆動ユニットTAに対して前後方向第2側H2に配置されているので、電源モジュールPWRと外部接続ポートPTとを繋ぐ配線も短くし易い。
【0097】
図11に示すように、第5の例において、インバータモジュールINVを含む高圧回路ユニット4は、駆動ユニットTAに対して、冷媒回路モジュール2が配置された側に連続する側に配置されている。水冷コンデンサ31(熱交換器)の配置位置については省略しているが、第5の例においても、水冷コンデンサ31が、冷媒回路モジュール2が配置された領域とインバータモジュールINVが配置された領域との間の領域に配置されていると好適である。
【0098】
図12は、車載部材群の相対配置の第6の例を示している。第6の例においても、車両搭載状態で、駆動ユニットTAは、キャビン空調ユニット45及び車載バッテリBTに対して前後方向第1側H1に配置されている。そして、冷媒回路モジュール2も、駆動ユニットTAに対して上側Z1に配置されている。インバータモジュールINV及び電源モジュールPWRを含む高圧回路ユニット4は、駆動ユニットTAに対して、下側Z2に配置されている。電源モジュールPWRは、駆動ユニットTAに対して、インバータモジュールINVが配置された側と同じ側に配置されている。
【0099】
また、第6の例においても、
図12に示すように、車両搭載状態で、駆動ユニットTAは、外部接続ポートPTに対して下側Z2に配置されている。第6の例では、電源モジュールPWRを含む高圧回路ユニット4が、駆動ユニットTAに対して下側Z2に配置されている。つまり、電源モジュールPWRを車載バッテリBTに近づけて配置することができる。従って、電源モジュールPWRと車載バッテリBTとの距離を短く抑えることができ、電源モジュールPWRと車載バッテリBTとを繋ぐ配線も短くし易い。
【0100】
図12の第6の例に示すように、インバータモジュールINVを含む高圧回路ユニット4は、駆動ユニットTAに対して、冷媒回路モジュール2が配置された側と同じ側でもなく、冷媒回路モジュール2が配置された側に連続する側でもない側に配置されていてもよい。
【0101】
以上、
図6から
図12を参照した第1の例から第6の例では、車両用駆動装置100の上下方向Zにおける最上部に冷媒回路モジュール2が配置されている形態を例示した。以下、
図13から
図16を参照して第7の例から第10の例について説明する。第7の例から第10の例においては、車両用駆動装置100における前後方向第2側H2に、即ち駆動ユニットTAに対して前後方向第2側H2に冷媒回路モジュール2が配置されている形態を例示する。キャビン空調ユニット45は、駆動ユニットTAに対して、前後方向第2側H2に配置されているから、第7の例から第10の例においても、冷媒回路モジュール2とキャビン空調ユニット45との間の配管を短くすることができる。尚、第7の例から第10の例では、冷媒回路モジュール2の配置位置は共通しているが、電源モジュールPWRを含む高圧回路ユニット4の配置位置についてはそれぞれ異なっている。それぞれ、外部接続ポートPT、車載バッテリBT、低圧直流電源Bとの関係により、電源モジュールPWRの配置位置が設定されている。
【0102】
図13は、車載部材群の相対配置の第7の例を示している。第7の例においても、車両搭載状態で、駆動ユニットTAは、キャビン空調ユニット45及び車載バッテリBTに対して前後方向第1側H1に配置されている。第7の例では、冷媒回路モジュール2は、駆動ユニットTAに対して前後方向第2側H2に配置されている。インバータモジュールINV及び電源モジュールPWRを含む高圧回路ユニット4は、駆動ユニットTAに対して、下側Z2に配置されている。電源モジュールPWRは、駆動ユニットTAに対して、インバータモジュールINVが配置された側と同じ側に配置されている。
【0103】
また、第7の例においても、
図13に示すように、車両搭載状態で、駆動ユニットTAは、外部接続ポートPTに対して下側Z2に配置されている。第7の例では、電源モジュールPWRを含む高圧回路ユニット4が、駆動ユニットTAに対して下側Z2に配置されている。つまり、電源モジュールPWRを車載バッテリBTに近づけて配置することができる。従って、電源モジュールPWRと車載バッテリBTとの距離を短く抑えることができ、電源モジュールPWRと車載バッテリBTとを繋ぐ配線も短くし易い。
【0104】
図13に示すように、インバータモジュールINVを含む高圧回路ユニット4は、駆動ユニットTAに対して、冷媒回路モジュール2が配置された側に連続する側に配置されている。水冷コンデンサ31(熱交換器)の配置位置については省略しているが、第5の例においても、水冷コンデンサ31が、冷媒回路モジュール2が配置された領域とインバータモジュールINVが配置された領域との間の領域に配置されていると好適である。
【0105】
図14は、車載部材群の相対配置の第8の例を示している。第8の例においても、車両搭載状態で、駆動ユニットTAは、キャビン空調ユニット45及び車載バッテリBTに対して前後方向第1側H1に配置されている。第7の例と同様に第8の例でも、冷媒回路モジュール2は、駆動ユニットTAに対して前後方向第2側H2に配置されている。インバータモジュールINV及び電源モジュールPWRを含む高圧回路ユニット4は、駆動ユニットTAに対して、上側Z1に配置されている。電源モジュールPWRは、駆動ユニットTAに対して、インバータモジュールINVが配置された側と同じ側に配置されている。
【0106】
また、第8の例においても、
図14に示すように、車両搭載状態で、駆動ユニットTAは、外部接続ポートPTに対して下側Z2に配置されている。第8の例では、電源モジュールPWRを含む高圧回路ユニット4が、駆動ユニットTAに対して上側Z1に配置されている。従って、電源モジュールPWRと外部接続ポートPTとの距離を短く抑えることができ、電源モジュールPWRと外部接続ポートPTとを繋ぐ配線を短く抑え易い。また、電源モジュールPWRと低圧直流電源Bとを繋ぐ配線も短く抑え易い。
【0107】
図14に示すように、インバータモジュールINVを含む高圧回路ユニット4は、駆動ユニットTAに対して、冷媒回路モジュール2が配置された側に連続する側に配置されている。水冷コンデンサ31(熱交換器)の配置位置については省略しているが、第8の例においても、水冷コンデンサ31が、冷媒回路モジュール2が配置された領域とインバータモジュールINVが配置された領域との間の領域に配置されていると好適である。
【0108】
図15は、車載部材群の相対配置の第9の例を示している。第9の例においても、車両搭載状態で、駆動ユニットTAは、キャビン空調ユニット45及び車載バッテリBTに対して前後方向第1側H1に配置されている。第7の例及び第8の例と同様に第9の例でも、冷媒回路モジュール2は、駆動ユニットTAに対して前後方向第2側H2に配置されている。インバータモジュールINV及び電源モジュールPWRを含む高圧回路ユニット4は、駆動ユニットTAに対して、幅方向第1側(軸方向第1側L1)に配置されている。電源モジュールPWRは、駆動ユニットTAに対して、インバータモジュールINVが配置された側と同じ側に配置されている。
【0109】
また、第9の例においても、
図15に示すように、車両搭載状態で、駆動ユニットTAは、外部接続ポートPTに対して下側Z2に配置されている。第9の例では、電源モジュールPWRを含む高圧回路ユニット4は、駆動ユニットTAに対して幅方向第1側(軸方向第1側L1)に配置されている。電源モジュールPWRが駆動ユニットTAに対して軸方向第1側L1における前後方向第2側H2に配置されると、電源モジュールPWRを外部接続ポートPTに近づけて配置することができる。従って、電源モジュールPWRと外部接続ポートPTとの距離を短く抑えることができる。また、電源モジュールPWRを車載バッテリBTにも近づけて配置することができるので、電源モジュールPWRと車載バッテリBTとの距離を短く抑えることができ、電源モジュールPWRと車載バッテリBTとを繋ぐ配線を短く抑え易い。
【0110】
図15に示すように、インバータモジュールINVを含む高圧回路ユニット4は、駆動ユニットTAに対して、冷媒回路モジュール2が配置された側に連続する側に配置されている。水冷コンデンサ31(熱交換器)の配置位置については省略しているが、第9の例においても、水冷コンデンサ31が、冷媒回路モジュール2が配置された領域とインバータモジュールINVが配置された領域との間の領域に配置されていると好適である。
【0111】
図16は、車載部材群の相対配置の第10の例を示している。第10の例においても、車両搭載状態で、駆動ユニットTAは、キャビン空調ユニット45及び車載バッテリBTに対して前後方向第1側H1に配置されている。第7の例から第9の例と同様に、冷媒回路モジュール2は、駆動ユニットTAに対して前後方向第2側H2に配置されている。但し、インバータモジュールINV及び電源モジュールPWRを含む高圧回路ユニット4は、駆動ユニットTAに対して、前後方向第1側H1に配置されている。電源モジュールPWRは、駆動ユニットTAに対して、インバータモジュールINVが配置された側と同じ側に配置されている。
【0112】
第10の例においても、
図16に示すように、車両搭載状態で、駆動ユニットTAは、外部接続ポートPTに対して下側Z2に配置されている。第10の例では、電源モジュールPWRを含む高圧回路ユニット4が、駆動ユニットTAに対して前後方向第1側H1に配置されている。電源モジュールPWRが駆動ユニットTAに対して前後方向第1側H1における上側Z1に配置されると、駆動ユニットTAを基準として、電源モジュールPWRを低圧直流電源Bに近づけて配置することができる。従って、電源モジュールPWRと低圧直流電源Bとの距離を短く抑えることができる。
【0113】
図16の第10の例に示すように、インバータモジュールINVを含む高圧回路ユニット4は、駆動ユニットTAに対して、冷媒回路モジュール2が配置された側と同じ側でもなく、冷媒回路モジュール2が配置された側に連続する側でもない側に配置されていてもよい。
【0114】
〔その他の実施形態〕
以下、その他の実施形態について説明する。尚、以下に説明する各実施形態の構成は、それぞれ単独で適用されるものに限られず、矛盾が生じない限り、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0115】
(1)上記においては、動力伝達機構GTとして、減速機6と差動歯車機構5とを備える形態を例示した。しかし、動力伝達機構GTは、このような構成に限らない。動力伝達機構GTは、例えば、減速機6を備えることなく、差動歯車機構5のみを備える形態であってもよい。また、動力伝達機構GTは、差動歯車機構5を備えることなく、減速機6のみを備え、1つの車輪Wに1つの回転電機MGからの動力を伝達する構成であってもよい。また、本実施形態では、減速機6として固定変速比の遊星歯車機構を例示したが、減速機6は複数段の変速比を有していてもよい。
【0116】
(2)
図5に示すように、直流リンクコンデンサ16が、冷却ユニット第1面38aに、インバータ回路PMと並んで配置されるような形態では、インバータモジュールINVに直流リンクコンデンサ16が含まれていてもよい。しかし、例えば、冷却ユニット第1面38aの裏面の側に直流リンクコンデンサ16が配置されるような場合には、インバータモジュールINVに直流リンクコンデンサ16が含まれていなくてもよい。
【符号の説明】
【0117】
2:冷媒回路モジュール、4:高圧回路ユニット(インバータモジュール、電源モジュール)、9:ケース、10:車両、12:ロータ、20:冷媒回路、31:水冷コンデンサ(熱交換器)、36:第1ウォーターポンプ(ウォーターポンプ)、37:ラジエータ、45:キャビン空調ユニット、52:サイドギヤ(出力部材)、53:第1サイドギヤ(出力部材)、54:第2サイドギヤ(出力部材)、60:外部電源、100:車両用駆動装置、BT:車載バッテリ、DS1:第1ドライブシャフト(出力部材)、DS2:第2ドライブシャフト(出力部材)、GT:動力伝達機構、H:車両前後方向、H1:前後方向第1側、H2:前後方向第2側、INV:インバータモジュール、L:軸方向(幅方向)、L1:軸方向第1側(幅方向第1側)、L2:軸方向第2側(幅方向第2側)、MG:回転電機、PT:外部接続ポート、PWR:電源モジュール、TA:駆動ユニット、W:車輪、Z:上下方向、Z1:上側、Z2:下側