(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024015536
(43)【公開日】2024-02-06
(54)【発明の名称】ハンドガイドローラ
(51)【国際特許分類】
E01C 19/28 20060101AFI20240130BHJP
【FI】
E01C19/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022117629
(22)【出願日】2022-07-25
(71)【出願人】
【識別番号】000175386
【氏名又は名称】三笠産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107375
【弁理士】
【氏名又は名称】武田 明広
(72)【発明者】
【氏名】永澤 賢一
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 秀郎
(72)【発明者】
【氏名】池田 雅弘
【テーマコード(参考)】
2D052
【Fターム(参考)】
2D052AD05
2D052AD13
2D052BB01
(57)【要約】
【課題】簡素な構成でありながら、極めて信頼性の高い安全手段を備えたハンドガイドローラを提供する。
【解決手段】走行レバー6を前方側へ傾けることによって機体を前進させることができ、後方側へ傾けることによって機体を後進させることができ、かつ、走行レバー6が中立位置にあるとき、機体が停止するように構成されたハンドガイドローラにおいて、走行レバー6を常に中立位置に向かって付勢するスプリング9(フロント側スプリング9a及びリア側スプリング9b)と、作動時において、スプリング9の付勢力よりも大きな摩擦力によって走行レバー6を拘束するホールド機構10と、ホールド機構10を作動させるための安全レバーとを有し、安全レバーを操作している間だけ、ホールド機構10が作動して走行レバー6が拘束されるように構成した。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行レバーを前方側へ傾けることによって機体を前進させることができ、後方側へ傾けることによって機体を後進させることができ、かつ、走行レバーが中立位置にあるとき、機体が停止するように構成されたハンドガイドローラにおいて、
走行レバーを常に中立位置に向かって付勢する付勢手段と、作動時において、付勢手段の付勢力よりも大きな摩擦力によって走行レバーを拘束するホールド機構と、ホールド機構を作動させるための安全レバーとを有し、
安全レバーを操作している間だけ、ホールド機構が作動して走行レバーを拘束するように構成されていることを特徴とするハンドガイドローラ。
【請求項2】
ホールド機構が、走行レバーの軸に対して固定されドラムと、ドラムの外側に回し掛けられたベルトとを有し、
ホールド機構の非作動時において、ドラムの外周面とベルトの内周面との間に作用する摩擦力が、付勢手段の付勢力よりも小さくなるように、かつ、作動時において、ベルトの張力が増加することにより、ドラムの外周面とベルトの内周面との間に作用する摩擦力が、付勢手段の付勢力よりも大きくなるように構成されていることを特徴とする、請求項1に記載のハンドガイドローラ。
【請求項3】
ホールド機構が、第一ドラム、第二ドラム、ベルト、及び、スライドベースによって構成され、
第一ドラムは、走行レバーの軸に対して固定され、
第二ドラムは、スライドベースに対して回動不能な状態で固定され、
ベルトは、第一ドラムと第二ドラムの外側に回し掛けられ、
スライドベースは、走行レバーの軸に近い非作動位置から、走行レバーの軸から離れた作動位置まで移動可能なように構成され、
ホールド機構の非作動時において、スライドベースが非作動位置にあり、第一ドラム及び第二ドラムの外周面とベルトの内周面との間に作用する摩擦力が、付勢手段の付勢力よりも小さくなるように、かつ、作動時において、スライドベースが作動位置に移動してベルトの張力が増加し、第一ドラム及び第二ドラムの外周面とベルトの内周面との間に作用する摩擦力が、付勢手段の付勢力よりも大きくなるように構成されていることを特徴とする、請求項1に記載のハンドガイドローラ。
【請求項4】
第一ドラムと第二ドラムの間の位置であって、ベルトの張力が増加した際に、ベルトを第一ドラム及び第二ドラムの外周面に対して押し付けることができる位置に、外側からベルトに干渉するタイトナーが配置されていることを特徴とする、請求項3に記載のハンドガイドローラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、舗装面や地盤表面の締め固めに用いられる振動ローラに関し、特にハンドガイド式の振動ローラ(ハンドガイドローラ)に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なハンドガイドローラは、操作ハンドルに配置された走行レバーによって機体の前後進を操作するように構成されている。具体的には、走行レバーを前方側へ傾けると機体が前進し、後方側へ傾けると機体が後進するように構成され、走行レバーを中立位置にセットすると機体が停止するように構成されている。
【0003】
尚、操縦者の安全を確保するために、操縦者が手を放すと、走行レバーが自動的に中立位置に戻り、機体を停止させることができる安全装置(JIS規格A8508:ホールド・ツー・ラン制御装置)を備えたハンドガイドローラも知られている(特許文献1等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-240256号公報
【特許文献2】特開2020-026767号公報
【特許文献3】特開2014-163087号公報
【特許文献4】特開2014-136890号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ハンドガイドローラに適用されている従来の安全装置は、装置構成が複雑なものが多く、また、操縦者が安全レバーから手を放した際に、安全装置側の付勢手段によって、走行レバーに付勢力が加えられて、走行レバーが中立位置に復帰するように構成されているものが多い。このため、安全装置に不具合が生じたような場合、例えば、走行レバーに対して十分な付勢力を与えることができないような場合、走行レバーを中立位置に適切に復帰させることができない恐れがある。
【0006】
本発明は、このような従来技術における問題を解決しようとするものであって、簡素な構成でありながら、極めて信頼性の高い安全手段を備えたハンドガイドローラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、走行レバーを前方側へ傾けることによって機体を前進させることができ、後方側へ傾けることによって機体を後進させることができ、かつ、走行レバーが中立位置にあるとき、機体が停止するように構成されたハンドガイドローラにおいて、走行レバーを常に中立位置に向かって付勢する付勢手段と、作動時において、付勢手段の付勢力よりも大きな摩擦力によって走行レバーを拘束するホールド機構と、ホールド機構を作動させるための安全レバーとを有し、安全レバーを操作している間だけ、ホールド機構が作動して走行レバーを拘束するように構成されていることを特徴としている。
【0008】
尚、ホールド機構が、走行レバーの軸に対して固定されドラムと、ドラムの外側に回し掛けられたベルトとを有し、ホールド機構の非作動時において、ドラムの外周面とベルトの内周面との間に作用する摩擦力が、付勢手段の付勢力よりも小さくなるように、かつ、作動時において、ベルトの張力が増加することにより、ドラムの外周面とベルトの内周面との間に作用する摩擦力が、付勢手段の付勢力よりも大きくなるように構成されていることが好ましい。
【0009】
また、ホールド機構が、第一ドラム、第二ドラム、ベルト、及び、スライドベースによって構成され、第一ドラムは、走行レバーの軸に対して固定され、第二ドラムは、スライドベースに対して回動不能な状態で固定され、ベルトは、第一ドラムと第二ドラムの外側に回し掛けられ、スライドベースは、走行レバーの軸に近い非作動位置から、走行レバーの軸から離れた作動位置まで移動可能なように構成され、ホールド機構の非作動時において、スライドベースが非作動位置にあり、第一ドラム及び第二ドラムの外周面とベルトの内周面との間に作用する摩擦力が、付勢手段の付勢力よりも小さくなるように、かつ、作動時において、スライドベースが作動位置に移動してベルトの張力が増加し、第一ドラム及び第二ドラムの外周面とベルトの内周面との間に作用する摩擦力が、付勢手段の付勢力よりも大きくなるように構成されていることが好ましい。
【0010】
更に、第一ドラムと第二ドラムの間の位置であって、ベルトの張力が増加した際に、ベルトを第一ドラム及び第二ドラムの外周面に対して押し付けることができる位置に、外側からベルトに干渉するタイトナーが配置されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るハンドガイドローラは、簡素な構成でありながら、極めて高い信頼性と安全性を期待することができる。より詳細には、安全レバーの操作とは無関係に、走行レバーが常に中立位置に向かって付勢される構成となっているため、ホールド機構或いは安全レバー等において不具合が生じたような場合でも、走行レバーを確実に中立位置に復帰させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明に係るハンドガイドローラ1の側面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す操作ハンドル5の筐体内部に配置されたホールド機構10の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面に沿って、本発明「ハンドガイドローラ」の実施形態について説明する。
図1は、本発明に係るハンドガイドローラ1の側面図、
図2は、操作ハンドル5の筐体内部に配置されたホールド機構10の側面図、
図3は、操作ハンドル5の拡大図である。
【0014】
このハンドガイドローラ1は、道路の舗装面や地盤表面の締め固め作業に用いられるものであり、原動機(エンジン又は電動モータ)、油圧ポンプ、及び、油圧走行モータ等を搭載した機体2と、前後一対のローラ3と、機体2の後方側(
図1において左側)に取り付けられたハンドルステー4と、ハンドルステー4の先端(後端)に配置された操作ハンドル5等によって構成されている。
【0015】
操作ハンドル5には、走行レバー6及び安全レバー7が配置されるとともに、筐体内部にホールド機構10(
図2参照)が配置されている。これらのうち、走行レバー6は、機体2の前後進を操作するためのものであり、プッシュプルケーブル16(
図2参照)によって機体2の制御手段と接続されている。本実施形態のハンドガイドローラ1は、走行レバー6を前方側(
図1において右側)へ傾けると、前方側への推進力がローラ3に供給されて機体2が前進し、後方側(
図1において左側)へ傾けると、後方側への推進力がローラ3に供給されて機体2が後進するように構成されている。尚、走行レバー6が、
図1において実線で示す位置(中立位置)にあるとき、ローラ3に対して推進力は供給されず、機体2は停止し、或いは、停止状態に維持される。
【0016】
操作ハンドル5の筐体内には、走行レバー6を常に中立位置に向かって付勢する手段が配置されている。具体的には、
図2に示すように、走行レバー6の前方側及び後方側には、付勢手段として、スプリング9(フロント側スプリング9a、及び、リア側スプリング9b)がそれぞれ配置されている。そして、走行レバー6は、フロント側スプリング9aによって前方側へ付勢されるとともに、リア側スプリング9bによって後方側へ付勢されており、中立位置において、フロント側スプリング9aの付勢力とリア側スプリング9bの付勢力が拮抗するように構成されている。
【0017】
このため、外力が作用していないとき、走行レバー6は中立位置(
図1において実線で示す位置)に維持され、中立位置以外の位置において外力から解放されると、中立位置に復帰する。例えば、操縦者が走行レバー6を前方側(前進側)へ傾けた状態で手を放すと、走行レバー6は、リア側スプリング9bに引っ張られて、中立位置に復帰する。また同様に、後方側(後進側)へ傾けた状態で手を放すと、フロント側スプリング9aに引っ張られて、中立位置に復帰する。
【0018】
尚、本実施形態においては、走行レバー6を常に中立位置に向かって付勢する手段として、引張コイルスプリングが採用されているが、他の付勢手段、例えば、圧縮コイルスプリング、渦巻バネ、板バネ、ガススプリング、その他の弾性部材等を採用することもできる。また、付勢手段の取付位置も特に限定されず、本実施形態のように、走行レバー6の基端部付近に取り付けることができるほか、軸6aの反対側へ延長させた部分に取り付けることもできる。
【0019】
ホールド機構10は、作動時において、スプリング9(付勢手段)の付勢力よりも大きな摩擦力によって走行レバーを拘束して、任意の位置に保持できるように構成されている。より詳細には、ホールド機構10は、
図2に示すように、第一ドラム11、第二ドラム12、ベルト13、タイトナー14、及び、スライドベース15によって構成されている。
【0020】
これらのうち、第一ドラム11は、走行レバー6の軸6aに対して固定されている。つまり、走行レバー6が回動するとき、第一ドラム11は、走行レバー6とともに回動し、走行レバー6が静止しているとき、第一ドラム11も静止状態に維持される。第二ドラム12、及び、タイトナー14は、スライドベース15に対して回動不能な状態で固定されている。
【0021】
ベルト13は、第一ドラム11と第二ドラム12の外側に回し掛けられている。タイトナー14は、第一ドラム11と第二ドラム12の間の位置において、外側からベルト13に干渉し、ベルト13の張力が増加した際に、ベルト13を第一ドラム11及び第二ドラム12の外周面に対して押し付けることができる位置に配置されている。
【0022】
スライドベース15は、
図2(1)において実線で示す位置(走行レバー6の軸6aに近い位置)から、破線で示す位置(走行レバー6の軸6aから離れた位置)まで、水平方向へ移動可能なように構成されるとともに、図示しないスプリングによって、軸6a側へ付勢されている。
【0023】
このホールド機構10は、非作動時において、第一ドラム11の外周面と、ベルト13の内周面との間に作用する摩擦力、及び、第二ドラム12の外周面とベルト13の内周面との間に作用する摩擦力が、スプリング9の付勢力(走行レバー6を中立位置へ向かって付勢する力)よりも小さくなるように、また、作動時において、それらの摩擦力がスプリング9の付勢力よりも大きくなるように調整されている。
【0024】
具体的には、ホールド機構10が非作動状態にあるとき、スライドベース15は、
図2(1)において実線で示す位置(非作動位置)にあり、図示されているように、第一ドラム11と第二ドラム12の外側に回し掛けられているベルト13が緩んだ状態(張力が極めて小さい状態)となるように調整されている。このため、第一ドラム11及び第二ドラム12の外周面と、ベルト13の内周面との間に作用する摩擦力は、スプリング9の付勢力よりも小さくなる。
【0025】
一方、ホールド機構10が作動状態にあるとき、スライドベース15は、
図2(1)において破線で示す位置(作動位置)へ移動し、ベルト13は、
図2(2)に示すように、第一ドラム11と第二ドラム12によって強く引っ張られた状態(非作動時よりも張力が増加した状態)となる。その結果、第一ドラム11及び第二ドラム12の外周面と、ベルト13の内周面との間に作用する摩擦力が、スプリング9の付勢力よりも大きくなる。
【0026】
尚、本実施形態においては、第一ドラム11と第二ドラム12の間の位置に、外側からベルト13に干渉するタイトナー14が配置され、ベルト13の張力が増加した際に、ベルト13を第一ドラム11及び第二ドラム12の外周面に対して押し付けることができるように構成されているため、タイトナー14を配置しない場合と比べて、第一ドラム11及び第二ドラム12の外周面と、ベルト13の内周面との接触面積が増加しており、従って、ホールド機構10の作動時において、摩擦力を効果的に増加させることができる。
【0027】
安全レバー7は、ホールド機構10を作動させるためのものであり、図示しないワイヤーケーブル(或いは、リンク機構、油圧機構、それらを組み合わせた接続手段、又は、その他の接続手段)によって、スライドベース15と接続されている。この安全レバー7を操作すると、より詳細には、操縦者が安全レバー7を、
図3において実線で示すように、ハンドルグリップ8の後部8aと一緒に握り込んで、後方側(
図3において左側)へ引っ張る(傾ける)と、スライドベース15が、
図2(1)において実線で示す非作動位置から、破線で示す作動位置へ移動する。また、操縦者が安全レバー7から手を放すと、安全レバー7が元の位置(操作前の位置、
図3において一点鎖線で示す位置)に戻り、スライドベース15が、作動位置から非作動位置へ移動する。
【0028】
安全レバー7とホールド機構10は、上述したような構成に係るものであるところ、安全レバー7を操作することにより、ホールド機構10を作動させ、走行レバー6を拘束して任意の位置に保持することができ、かつ、安全レバー7から手を放すことにより、走行レバー6を開放して、中立位置に復帰させることができる。
【0029】
例えば、操縦者が一方の手で走行レバー6を掴み、
図3において実線で示すように、走行レバー6を前方側(前進側)へ傾けた状態とした場合において、反対側の手で、安全レバー7を操作すると(ハンドルグリップ8の後部8aと一緒に握り込んで後方側へ引っ張る)と、ホールド機構10が作動して、走行レバー6が拘束される。より具体的には、スライドベース15が、非作動位置から作動位置へ移動し、ベルト13の張力が増加して、第一ドラム11及び第二ドラム12の外周面と、ベルト13の内周面との間に作用する摩擦力が、スプリング9の付勢力よりも大きくなる。その結果、走行レバー6から手を放しても、手を放す前の位置(走行レバー6が前方側へ傾いた状態)に維持される。
【0030】
そして、操縦者が安全レバー7から手を放すと、安全レバー7が元の位置(操作前の位置、
図3において一点鎖線で示す位置)に戻り、走行レバー6は、ホールド機構10から開放されて(ホールド機構10による拘束が解除されて)、スプリング9の付勢力によって中立位置(
図3において破線で示す位置)に復帰する。尚、走行レバー6を後方側(後進側)へ傾けた状態で、安全レバー7を操作し、また、その状態から手を放した場合も、同様に動作する。
【0031】
このように本実施形態のハンドガイドローラ1は、安全レバー7を操作している間だけ、ホールド機構10が作動して走行レバー6を拘束できるように構成され、安全レバー7から手を放すことにより、走行レバー6を速やかに開放して、中立位置に復帰させることができる。尚、走行レバー6は、最も前方側へ傾けた全速前進位置や、最も後方側へ傾けた全速後進位置だけでなく、任意の位置で拘束することができ、従って、速度調整も可能である。
【符号の説明】
【0032】
1:ハンドガイドローラ、
2:機体、
3:ローラ、
4:ハンドルステー、
5:操作ハンドル、
6:走行レバー、
6a:軸、
7:安全レバー、
8:ハンドルグリップ、
8a:後部、
9:スプリング、
9a:フロント側スプリング、
9b:リア側スプリング、
10:ホールド機構、
11:第一ドラム、
12:第二ドラム、
13:ベルト、
14:タイトナー、
15:スライドベース、
16:プッシュプルケーブル、