(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155363
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】スピーカーおよび車両用ドア
(51)【国際特許分類】
H04R 1/02 20060101AFI20241024BHJP
【FI】
H04R1/02 105B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023070019
(22)【出願日】2023-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003177
【氏名又は名称】弁理士法人旺知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 明善
【テーマコード(参考)】
5D017
【Fターム(参考)】
5D017AG07
(57)【要約】
【課題】スピーカーの音質を向上させる。
【解決手段】スピーカーは、振動板とフレームとを有するスピーカーユニットと、取付対象物に取り付けられる取付部材と、取付部材に対してフレームを支持する少なくとも1つの弾性部材と、を備え、取付部材は、スピーカーユニットの軸方向にみてフレームの一部に重なるストッパーを有し、ストッパーおよびフレームのうちの一方には、ストッパーとフレームとの軸方向の間に配置されるクッション材が取り付けられ、ストッパーおよびフレームのうちの他方とクッション材との軸方向の間には、隙間が設けられる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動板とフレームとを有するスピーカーユニットと、
取付対象物に取り付けられる取付部材と、
前記取付部材に対して前記フレームを支持する少なくとも1つの弾性部材と、を備え、
前記取付部材は、前記スピーカーユニットの軸方向にみて前記フレームの一部に重なるストッパーを有し、
前記ストッパーおよび前記フレームのうちの一方には、前記ストッパーと前記フレームとの前記軸方向の間に配置されるクッション材が取り付けられ、
前記ストッパーおよび前記フレームのうちの他方と前記クッション材との前記軸方向の間には、隙間が設けられる、
スピーカー。
【請求項2】
前記軸方向に沿う前記隙間の大きさは、前記スピーカーユニットの駆動時における前記取付部材に対する前記フレームの最大変位量以上である、
請求項1に記載のスピーカー。
【請求項3】
前記軸方向に沿う前記隙間の大きさは、前記スピーカーユニットの駆動時における前記フレームに対する前記振動板の最大変位量の1/2以下である、
請求項1に記載のスピーカー。
【請求項4】
前記クッション材は、フェルトを含む、
請求項1に記載のスピーカー。
【請求項5】
前記弾性部材は、板バネである、
請求項1に記載のスピーカー。
【請求項6】
前記弾性部材は、
前記フレームに固定される第1部分と、
前記取付部材に固定される第2部分と、
前記第1部分と前記第2部分とを連結する連結部と、を有する、
請求項5に記載のスピーカー。
【請求項7】
前記ストッパーは、前記軸方向に並ぶ1対のストッパーを含み、
前記フレームは、前記第1部分を固定するフランジを有し、
前記1対のストッパーの間には、前記第1部分および前記フランジが介在する、
請求項6に記載のスピーカー。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載のスピーカーと、
前記取付対象物であるパネルと、を備える、
車両用ドア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、スピーカーおよび車両用ドアに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のスピーカーでは、振動板およびフレームを含むスピーカーユニットから取付対象物への振動の伝達を低減するように、取付対象物に取り付けられる取付部材に対して、スピーカーユニットが板バネを介して支持される。ここで、取付部材の一部は、スピーカーユニットの径方向において内側に延びるストッパーを含む。ストッパーは、スピーカーユニットの中心軸方向から見て、スピーカーユニットの一部と重なっており、当該一部との接触によりスピーカーユニットの変位を所定範囲内に規制する。これにより、板バネの破損が防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のスピーカーでは、ストッパーとスピーカーユニットとがともに硬質であるため、これらの接触時に異音が生じてしまう。
【0005】
以上の事情を考慮して、本開示のひとつの態様は、スピーカーの音質を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するために、本開示の好適な態様に係るスピーカーは、振動板とフレームとを有するスピーカーユニットと、取付対象物に取り付けられる取付部材と、前記取付部材に対して前記フレームを支持する少なくとも1つの弾性部材と、を備え、前記取付部材は、前記スピーカーユニットの軸方向にみて前記フレームの一部に重なるストッパーを有し、前記ストッパーおよび前記フレームのうちの一方には、前記ストッパーと前記フレームとの前記軸方向の間に配置されるクッション材が取り付けられ、前記ストッパーおよび前記フレームのうちの他方と前記クッション材との前記軸方向の間には、隙間が設けられる。
【0007】
本開示の好適な態様に係る車両用ドアは、前述の態様のスピーカーと、前記取付対象物であるパネルと、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態に係るスピーカーの断面図である。
【
図4】第1実施形態に係るスピーカーの部分拡大断面図である。
【
図6】第2実施形態に係るスピーカーの部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。なお、図面において各部の寸法および縮尺は実際のものと適宜に異ならせてある。また、以下に記載する実施形態は、本開示の好適な具体例である。このため、本実施形態には、技術的に好ましい種々の限定が付されている。しかし、本開示の範囲は、以下の説明において特に本開示を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
【0010】
1.スピーカー
1-1.第1実施形態
1-1-1.スピーカーの全体構成
図1は、第1実施形態に係るスピーカー1の断面図である。スピーカー1は、取付対象物200に取り付けられ、図示しないアンプ等の外部装置から入力される音声信号に基づく音声を放音する装置である。
【0011】
取付対象物200は、例えば、車両用ドアのインナーパネルである。
図1に示す例では、取付対象物200が開口210を有しており、スピーカー1が開口210を塞ぐように配置される。スピーカー1は、取付対象物200にねじ留め等により固定される。なお、取付対象物200は、車両用ドアのインナーパネルに限定されず、例えば、車両用ドアのインナーパネル以外のパネルでもよいし、車両用ドア以外に用いられるパネルであってもよい。
【0012】
図1に示すように、スピーカー1は、スピーカーユニット10と取付部材20と弾性部材30と封止部材40とクッション材51、52とを備える。
【0013】
以下、スピーカー1の各部を順に説明する。なお、以下では、スピーカーユニット10の中心軸が軸線AXであり、軸線AXに沿ってスピーカーユニット10の背面から正面に向かう一方向がX1方向であり、X1方向とは反対にスピーカーユニット10の正面から背面に向かう方向がX2方向である。また、以下では、X1方向およびX2方向を区別せずに軸方向という場合がある。また、軸線AXを中心とする仮想円に沿う一方向またはその反対方向を周方向という場合がある。さらに、軸線AXに直交して軸線AXから遠ざかる方向またはその反対方向を径方向という場合がある。また、以下では、軸線AXに沿う方向にみることを平面視という場合がある。
【0014】
スピーカーユニット10は、図示しないアンプ等の外部装置からの電気的な音声信号を音に変換するダイナミック型のドライバーである。スピーカーユニット10は、振動板11とボイスコイル12と磁気回路13とフレーム14とダンパー15とエッジ16とを有する。
【0015】
振動板11は、シート材で構成される振動体であり、振動により放音する。振動板11を構成するシート材は、例えば、樹脂材料を繊維基材に含浸させた状態で硬化または固化することにより得られる。当該樹脂材料としては、例えば、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、変性ゴム樹脂およびフェノール樹脂等が挙げられる。当該繊維基材としては、例えば、炭素繊維、アラミド繊維、ガラス繊維、セラミック繊維、シリカ繊維、金属繊維、チタン酸カリウム繊維、ジルコニア繊維、ポリアクリレート繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維、ビニロン繊維、レーヨン繊維、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、綿繊維、麻繊維およびセルロース繊維等が挙げられる。当該シート材の表面には、例えば、アルミニウム等の金属またはDLC(Diamond-like Carbon)等の無機材料で構成されるコーティング膜が設けられてもよい。
【0016】
振動板11は、X1方向を向く面と、X2方向を向く面と、を有し、軸線AXに沿う方向に振動することにより放音する。振動板11のX1方向を向く面は、放音面である。
図1に示す例では、振動板11は、コーン型である。なお、振動板11の形状は、
図1に示す例に限定されず、例えば、ドーム型でもよい。
【0017】
ボイスコイル12は、振動板11のX2方向を向く面に固定され、電気的な音声信号の入力により磁界を発生させる。ボイスコイル12は、ボビン12aとコイル12bとを有する。ボビン12aは、軸線AXを中心軸とする筒状をなす。ボビン12aのX1方向での一端は、振動板11のX2方向を向く面に接着剤等により接合される。コイル12bは、ボビン12aの外周に沿って周方向に巻かれた導線で構成される。コイル12bには、当該音声信号が入力される。このため、ボイスコイル12から当該音声信号に応じた磁界が発生する。
【0018】
磁気回路13は、ボイスコイル12からの磁界に作用する磁界を発生させる構造体である。磁気回路13は、永久磁石13aとヨーク13bとを有する。永久磁石13aは、軸線AXを中心軸とするフェライト磁石またはネオジム磁石等である。ヨーク13bは、軟磁性材料で構成されており、永久磁石13aからの磁束をボイスコイル12に導く。このため、磁気回路13からの磁界に対して音声信号によるボイスコイル12からの磁界が作用することにより、振動板11が当該音声信号に応じて振動する。
【0019】
フレーム14は、振動板11および磁気回路13を支持するための構造体である。フレーム14は、例えば、金属材料または樹脂材料で構成される。フレーム14には、磁気回路13が固定される。また、フレーム14には、ダンパー15を介してボイスコイル12が連結されるとともに、エッジ16を介して振動板11が連結される。
【0020】
図1に示す例では、フレーム14は、概略的に、軸線AXを中心としてX1方向に向けて広がる円錐台の側面に沿う形状をなす。そして、フレーム14のX1方向での端には、径方向での外方に向けて突出するフランジ14aが設けられる。フランジ14aのX1方向を向く面には、エッジ16が接着剤等により接合される。一方、フランジ14aのX2方向を向く面には、後述の弾性部材30の第1部分31がねじ留め等により接合される。また、フレーム14のX2方向での端には、軸線AXに沿う方向を板厚方向とする背板14bが設けられる。背板14bのX2方向を向く面には、磁気回路13が接着剤等により接合される。
【0021】
図示しないが、フレーム14には、径方向に貫通する複数の孔が周方向に間隔を隔てて設けられる。当該複数の孔を介して、振動板11とフレーム14と間の空間S1は、フレーム14よりもX2方向の空間S2に連通する。このため、振動板11に対する空間S1の空気バネの影響を低減することができる。
【0022】
なお、フレーム14の形状は、
図1に示す例に限定されず、任意である。また、
図1に示す例では、フレーム14が一部材で構成されるが、これに限定されず、互いに接着等により接合される複数部材によりフレーム14が構成されてもよい。
【0023】
ダンパー15は、振動板11の振動を許容しつつ、フレーム14に対してボイスコイル12を支持する可撓性のシート材である。当該シート材は、例えば、同心円状の波形に成形されており、前述の振動板11と同様の材料で構成される。ダンパー15は、軸線AXに沿う方向にみて環状をなす。ダンパー15の内周縁は、ボイスコイル12に接着剤等により接合される。ダンパー15の外周縁は、フレーム14に接着剤等により接合される。なお、ダンパー15は、必要に応じて設けられ、省略されてもよい。
【0024】
エッジ16は、振動板11の外周縁をフレーム14に連結する可撓性を有する膜状またはシート状の部材であり、サラウンドとも称される。ここで、エッジ16は、振動板11とフレーム14との間の隙間を封止する。エッジ16は、例えば、エラストマー等のゴム材料で構成される。
【0025】
図示しないが、エッジ16は、軸線AXに沿う方向にみて環状をなす。エッジ16は、振動板11に固定される内側部分と、フレーム14に固定される外側部分と、振動板11の振動を許容するように内側部分と外側部分とを連結する連結部分と、を有する。
【0026】
以上のスピーカーユニット10は、弾性部材30を介して取付部材20に支持される。
【0027】
取付部材20は、取付対象物200に取り付けられる部材である。取付部材20は、例えば、金属材料または樹脂材料で構成される。
【0028】
取付部材20は、ベース21、24とフランジ22とストッパー23、25とを有する。
図1に示す例では、取付部材20が正面側の第1ストッパー部材20aと背面側の第2ストッパー部材20bとの2部材で構成される。ここで、第1ストッパー部材20aは、ベース21とフランジ22とストッパー23とを有する。第2ストッパー部材20bは、ベース24とストッパー25とを有する。
【0029】
ベース21、24のそれぞれは、概略的に、軸線AXを中心とする筒状をなす。ベース21、24のそれぞれの内径は、前述のフレーム14の外径よりも大きい。ベース21は、ベース24に対してX1方向の位置に配置される。また、ベース24は、ベース21に対してねじ留め等により固定される。ここで、ベース21とベース24との間には、後述の弾性部材30の第2部分32が配置されており、第2部分32は、ベース21とベース24との間で共締めされることにより、取付部材20に対して固定される。ただし、取付部材20に対する第2部分32の固定方法は、前述の例に限定されず、例えば、第2ストッパー部材20bがインサート成形等により弾性部材30と一体成形されてもよく、この場合、第1ストッパー部材20aに対する弾性部材30のねじ留め等により、第1ストッパー部材20aに対して固定されてもよい。
【0030】
ベース21の外周面には、径方向での外方に向けて突出するフランジ22が設けられる。
図1に示す例では、フランジのX2方向を向く面には、取付対象物200がねじ留め等により固定される。一方、ベース21の内周面には、径方向での内方に向けて突出するストッパー23が設けられる。ストッパー23は、スピーカーユニット10の軸方向にみてフレーム14の一部であるフランジ14aに重なるように、フランジ14aに対して間隔をあけてX1方向の位置に配置される。このため、ストッパー23およびフランジ14aにより、取付部材20に対するフレーム14のX1方向への移動が規制される。このように、ストッパー23は、取付部材20に対するフレーム14のX1方向への移動を所定範囲内に規制する。ストッパー23は、ベース21の周方向での全域にわたり設けられる。ここで、ストッパー23の内径は、前述のフレーム14の外径よりも小さい。
【0031】
ベース24の内周面には、径方向での内方に向けて突出するストッパー25が設けられる。ストッパー25は、スピーカーユニット10の軸方向にみてフレーム14の一部であるフランジ14aに重なるように、フランジ14aに対して間隔をあけてX2方向の位置に配置される。このため、ストッパー25およびフランジ14aにより、取付部材20に対するフレーム14のX2方向への移動が規制される。このように、ストッパー25は、取付部材20に対するフレーム14のX2方向への移動を所定範囲内に規制する。ストッパー25は、ベース24の周方向での全域にわたり設けられる。ここで、ストッパー25の内径は、前述のフレーム14の外径よりも小さい。
【0032】
本実施形態では、1対のストッパー23、25が軸方向に並ぶ。ここで、前述のように、フレーム14は、弾性部材30の第1部分31を固定するフランジ14aを有しており、1対のストッパー23、25の間には、第1部分31およびフランジ14aが介在する。このように第1部分31およびフランジ14aが1対のストッパー23、25の間に介在する態様では、スピーカー1の小型化を図りつつ、取付部材20に対するスピーカーユニット10の軸方向での移動を正面方向と背面方向と双方向で所定範囲内に規制することができる。
【0033】
なお、取付部材20は、第1ストッパー部材20aおよび第2ストッパー部材20bからなる2部材で構成される態様に限定されず、ベース21、24を一体で構成することにより1部材で構成されてもよいし、3部材以上で構成されてもよい。また、取付部材20の形状は、
図1に示す例に限定されず、任意である。例えば、フランジ22およびストッパー23のそれぞれは、ベース21の周方向での少なくとも1か所に部分的に設けられてもよい。同様に、ストッパー25は、ベース24の周方向での少なくとも1か所に部分的に設けられてもよい。ここで、ストッパー23、25は、軸方向にみて互いに重なる部分を有しなくてもよい。また、ストッパー23の内径とストッパー25の内径とは、互いに異なってもよい。
【0034】
以上の取付部材20のストッパー23とフランジ14aとの軸方向の間には、クッション材51が配置される。本実施形態では、クッション材51がストッパー23に取り付けられる。同様に、ストッパー25とフランジ14aとの軸方向の間には、クッション材52が配置される。本実施形態では、クッション材52がストッパー25に取り付けられる。
【0035】
ここで、クッション材51とフランジ14aとの軸方向の間には、隙間g1が設けられる。これにより、クッション材51の弾性の影響を受けずに、取付部材20に対してスピーカーユニット10を軸方向に変位させることが可能である。同様に、クッション材52とフランジ14aとの軸方向の間には、隙間g2が設けられる。これにより、クッション材52の弾性の影響を受けずに、取付部材20に対してスピーカーユニット10を軸方向に変位させることが可能である。隙間g1、g2の詳細については、後に
図4および
図5に基づいて説明する。
【0036】
弾性部材30は、取付部材20に対してスピーカーユニット10を支持する弾性変形可能な部材である。
図1に示す例では、弾性部材30が軸線AXに沿う方向を厚さ方向とする板バネであり、例えば、バネ鋼等の金属材料で構成される。弾性部材30の構成材料は、金属材料に限定されず、例えば、樹脂材料または繊維強化複合材等であってもよい。
【0037】
弾性部材30は、第1部分31と第2部分32と連結部33とを有する。第1部分31は、フレーム14にねじ留め等により固定される弾性部材30の部分である。第2部分32は、取付部材20にねじ留め等により固定される弾性部材30の部分である。連結部33は、第1部分31と第2部分32とを連結する弾性部材30の部分である。このように、弾性部材30がフレーム14および取付部材20に固定されることにより、弾性部材30の厚さ方向でのたわみ変形を伴って、スピーカーユニット10が取付部材20に対して軸線AXに沿う方向に移動し得る。これにより、スピーカー1の小型化を図りつつ、弾性部材30の弾性によりスピーカーユニット10から取付対象物200への振動の伝達を低減することができる。なお、弾性部材30の構成例については、後に
図2に基づいて説明する。
【0038】
クッション材51、52は、衝撃吸収性を有する部材である。クッション材51、52のそれぞれは、例えば、樹脂材料、ゴム材料またはエラストマー材料で構成される発泡体であるか、または、フェルト等の繊維材である。クッション材51は、フレーム14のフランジ14aと取付部材20のストッパー23との間に配置される。一方、クッション材52は、フレーム14のフランジ14aと取付部材20のストッパー25との間に配置される。ただし、クッション材52とフランジ14aとの間には、前述の弾性部材30の第1部分31が介在する。
【0039】
図1に示す例では、クッション材51がストッパー23のX2方向を向く面に接着剤等により固定されるとともに、クッション材52がストッパー25のX1方向を向く面に接着剤等により固定される。なお、クッション材51は、後述の第2実施形態のように、ストッパー23に固定されずに、フランジ14aのX1方向を向く面に接着剤等により固定されてもよい。同様に、クッション材52は、ストッパー25に固定されずに、フランジ14aのX2方向を向く面に接着剤等により固定されてもよい。また、クッション材51は、取付部材20またはフレーム14と一体で構成されてもよい。同様に、クッション材52は、取付部材20またはフレーム14と一体で構成されてもよい。
【0040】
封止部材40は、フレーム14と取付部材20との間の隙間を封止する可撓性を有する膜状またはシート状の部材である。封止部材40は、例えば、ゴム材料で構成される。なお、封止部材40を構成する材料は、ゴム材料に限定されず、例えば、樹脂材料等であってもよい。また、封止部材40は、前述のエッジ16と一体で構成されてもよい。
【0041】
図示しないが、封止部材40は、軸線AXに沿う方向にみて環状をなす。封止部材40は、フレーム14に固定される内側部分と、取付部材20に固定される外側部分と、内側部分と外側部分とを連結する連結部分と、を有する。
【0042】
1-1-2.弾性部材の構成例
図2は、弾性部材30の一例を示す斜視図である。
図2に示すように、弾性部材30が第1部分31と第2部分32と複数の連結部33とを有し、これらが一体で構成される。このような弾性部材30は、例えば、金属板の打抜加工等により形成される。
【0043】
第1部分31および第2部分32のそれぞれは、軸線AXを中心とする環状をなす。ただし、第1部分31は、第2部分32の内側、すなわち径方向での内方に配置される。複数の連結部33のそれぞれは、径方向で第1部分31と第2部分32との間に配置されており、第1部分31と第2部分32とを連結する。また、複数の連結部33は、周方向で互いに間隔をあけて配置される。
【0044】
より具体的に説明すると、各連結部33は、端部33a、33bとバネ部33cとを有する。端部33aは、第1部分31に接続されており、第1部分31から径方向での外方に突出する。一方、端部33bは、第2部分32に接続されており、第2部分32から径方向での内方に突出する。バネ部33cは、端部33aと端部33bとを連結しており、周方向に延びる。
【0045】
ここで、周方向に隣り合う2つの連結部33の間には、弾性部材30をその厚さ方向に貫通する開口OPが設けられる。また、各連結部33と第1部分31との間には、周方向で端部33aを除く範囲にわたり、弾性部材30をその厚さ方向に貫通するスリットSL1が設けられる。各スリットSL1は、周方向に延びており、各スリットSL1の両端のうち端部33aから遠いほうの端は、開口OPに連通する。さらに、各連結部33と第2部分32との間には、周方向で端部33bを除く範囲にわたり、弾性部材30をその厚さ方向に貫通するスリットSL2が設けられる。各スリットSL2は、周方向に延びており、各スリットSL2の両端のうち端部33bから遠いほうの端は、開口OPに連通する。
【0046】
なお、弾性部材30は、
図2に示す構成に限定されない。例えば、第1部分31は、少なくとも1個の連結部33ごとに分割され、周方向に並ぶ複数の部分で構成されてもよい。同様に、第2部分32は、少なくとも1個の連結部33ごとに分割され、周方向に並ぶ複数の部分で構成されてもよい。連結部33の数は、
図2に示す例に限定されず、3個以下でもよいし、5個以上であってもよい。また、連結部33の延びる方向は、
図2に示す例に限定されず、例えば、周方向に対して傾斜する方向であってもよいし、径方向であってもよい。ただし、スピーカー1の小型化を図る観点から、連結部33の延びる方向が周方向であることが好ましい。
【0047】
以上のような構成の弾性部材30では、各連結部33の撓み変形を伴って、第1部分31が第2部分32に対してX1方向およびX2方向の双方向に変位し得る。ここで、前述のように、弾性部材30は、軸線AXに沿う方向を厚さ方向とする板バネである。このため、弾性部材30の軸線AXに沿う方向でのバネ定数k1は、弾性部材30の径方向でのバネ定数k2よりも小さい。すなわち、弾性部材30は、径方向よりも軸線AXに沿う方向に変形しやすい。このため、弾性部材30がコイルバネまたはゴムである態様に比べて、取付部材20に対してフレーム14を安定的に支持しつつ、弾性部材30の弾性によりスピーカーユニット10から取付対象物200への振動の伝達を低減することができる。また、弾性部材30がコイルバネまたはゴムである態様に比べて、弾性部材30の設置スペースが小さくて済むので、スピーカー1の小型化を図ることができる。さらに、所望のバネ定数の弾性部材30を容易に設計することができるので、スピーカー1の製造コストを低減しやすいという利点もある。
【0048】
弾性部材30のバネ定数k1およびスピーカーユニット10の質量mに基づく共振周波数fcは、下記式(1)で表される。なお、質量mは、スピーカーユニット10の質量と弾性部材30の質量との合計であってもよい。
【数1】
【0049】
ここで、共振周波数fcは、スピーカーユニット10の出力音声帯域より低い。このため、スピーカーユニット10から取付部材20へ伝達される振動が好適に低減される。また、共振周波数fcは、スピーカーユニット10の最低共振周波数f0未満である。最低共振周波数f0は、スピーカーユニット10の出力音声帯域の下限値に相当し、例えば、30Hz以上60Hz以下である。このように、共振周波数fcが最低共振周波数f0未満であることにより、スピーカーユニット10から取付部材20へ伝達される振動が好適に低減される。
【0050】
1-1-3.クッション材の構成例
図3は、クッション材51、52の一例を示す斜視図である。
図3に示すように、クッション材51、52のそれぞれは、軸線AXを中心とする環状をなす。
図3に示す例では、クッション材51、52の構成が互いに同一である。
【0051】
なお、クッション材51、52の構成が互いに異なってもよい。例えば、クッション材51の厚さとクッション材52の厚さとが互いに異なってもよい。また、クッション材51およびクッション材52の形状が互いに異なってもよい。さらに、クッション材51、52のそれぞれは、周方向に並ぶ複数の部材で構成されてもよい。この場合、クッション材51、52の周方向での位置は、互いに異なってもよい。
【0052】
1-1-4.クッション材とストッパーとの間の隙間
図4は、第1実施形態に係るスピーカー1の部分拡大断面図である。
図4に示すように、ストッパー23は、フランジ14aに対して間隔D1をあけてX1方向の位置に配置される。間隔D1は、スピーカーユニット10を駆動せず、かつ、スピーカー1に衝撃等の外力を加えない状態におけるストッパー23とフランジ14aとの間の距離である。以下、当該状態を「スピーカー1の自然状態」という場合がある。
【0053】
前述のように、ストッパー23には、ストッパー23とフランジ14aとの軸方向の間に配置されるクッション材51が取り付けられる。このため、ストッパー23とフレーム14との接触による異音の発生を防止することができる。しかも、クッション材51の厚さT1は、間隔D1よりも小さい。このため、スピーカー1の自然状態でクッション材51とフランジ14aとの間には、大きさD1の隙間g1が設けられる。このように、フランジ14aとクッション材51との軸方向の間に隙間g1が設けられることにより、クッション材51の弾性の影響を受けずに、弾性部材30の弾性によりスピーカーユニット10から取付対象物200への振動の伝達を低減することができる。
【0054】
一方、ストッパー25は、フランジ14aに対して間隔をあけるとともに弾性部材30の第1部分31に対して間隔D2をあけてX2方向の位置に配置される。間隔D2は、スピーカー1の自然状態におけるストッパー25と第1部分31との間の距離である。以下、当該状態を「自然状態」という場合がある。なお、前述のように、第1部分31は、フランジ14aに固定されるので、フレーム14またはフランジ14aの一部とみなされる。
【0055】
前述のように、ストッパー25には、ストッパー25と第1部分31またはフランジ14aとの軸方向の間に配置されるクッション材52が取り付けられる。このため、ストッパー25と第1部分31またはフレーム14との接触による異音の発生を防止することができる。しかも、クッション材52の厚さT2は、間隔D2よりも小さい。このため、自然状態でクッション材52と第1部分31との間には、大きさD2の隙間g2が設けられる。このように、フランジ14aとクッション材52との軸方向の間に隙間g2が設けられることにより、クッション材52の弾性の影響を受けずに、弾性部材30の弾性によりスピーカーユニット10から取付対象物200への振動の伝達を低減することができる。
【0056】
このようなスピーカー1では、スピーカーユニット10の振動系の質量をMd[g]とし、当該振動系の最大変位量をXd[mm]とし、フレーム14の質量をMmf[g]とし、スピーカーユニット10の駆動時における取付部材20に対するフレーム14の最大変位量をXmf[mm]としたとき、
Xmf=(Md/Mmf)×Xd
の関係が成り立つ。
【0057】
例えば、質量Mmfが1000gであり、質量Mdが100gであり、最大変位量Xdが10mmである場合、前述の関係から、最大変位量Xmfは、1mmである。
【0058】
なお、スピーカーユニット10の振動系とは、スピーカーユニット10の駆動によりフレーム14に対して振動板11を振動させる系である。ここで、質量Mdは、振動板11の質量とボイスコイル12の質量とダンパー15の一部の質量とエッジ16の一部の質量との合計である。また、スピーカーユニット10の振動系のバネ定数は、ダンパー15およびエッジ16からなるバネのバネ定数である。最大変位量Xdは、スピーカーユニット10の駆動時におけるフレーム14に対する振動板11の最大変位量である。例えば、最大変位量Xdは、スピーカーユニット10の非駆動時における振動板11の中心位置とボイスコイル12のX2方向での端を磁気回路13に接触させたときの振動板11の中心位置との差で表される。
【0059】
軸方向に沿う隙間g1の大きさL1は、スピーカーユニット10の駆動時における取付部材20に対するフレーム14の最大変位量Xmf以上であることが好ましい。この場合、スピーカーユニット10の駆動時にクッション材51の弾性の影響を受けずに、弾性部材30の弾性によりスピーカーユニット10から取付対象物200への振動の伝達を低減することができる。
【0060】
同様に、軸方向に沿う隙間g2の大きさL2は、スピーカーユニット10の駆動時における取付部材20に対するフレーム14の最大変位量Xmf以上であることが好ましい。この場合、スピーカーユニット10の駆動時にクッション材52の弾性の影響を受けずに、弾性部材30の弾性によりスピーカーユニット10から取付対象物200への振動の伝達を低減することができる。
【0061】
大きさL2は、大きさL1と等しくてもよいし、大きさL2と異なってもよい。ただし、クッション材51、52の双方を好適に機能させる観点から、大きさL1と大きさL2との差ができるだけ小さいことが好ましい。具体的には、大きさL1と大きさL2との比L2/L1は、0.8以上1.2以下であることが好ましく、0.9以上1.1以下であることがより好ましい。
【0062】
なお、間隔D1、D2は、互いに等しくてもよいし、互いに異なってもよい。間隔D1、D2が互いに異なる場合であっても、厚さT1、T2を適宜に異ならせることにより、前述の比L2/L1を好ましい範囲に設定することが可能である。
【0063】
また、軸方向に沿う隙間g1の大きさL1は、スピーカーユニット10の駆動時におけるフレーム14に対する振動板11の最大変位量Xdの1/2以下であることが好ましく、1/3以下であることがより好ましい。同様に、軸方向に沿う隙間g2の大きさL2は、スピーカーユニット10の駆動時におけるフレーム14に対する振動板11の最大変位量Xdの1/2以下であることが好ましく、1/3以下であることがより好ましい。大きさL1、L2がこのような範囲内にあることにより、弾性部材30の損傷を低減し得るように、ストッパー23によりスピーカーユニット10の軸方向での変位を所定範囲内に規制することができる。
【0064】
図5は、クッション材51、52の評価結果を示す図である。
図5では、クッション材51の材質とクッション材51、52の厚さT1、T2と隙間g1、g2の大きさL1、L2とのうちの少なくとも1つについて互いに異なるサンプルNO.1からサンプルNO.7についての評価結果が示される。なお、
図5の各サンプルでは、厚さT1と厚さT2とが互いに等しく、かつ、大きさL1と大きさL2とが互いに等しい。
【0065】
サンプルNO.1およびサンプルNO.2のそれぞれでは、クッション材51、52のそれぞれが厚さ2mmの連続気泡のウレタン発泡体である。ただし、サンプルNO.1では、間隔D1、D2のそれぞれが厚さT1、T2のそれぞれよりも僅かに小さく、クッション材51、52のそれぞれが圧縮変形した状態であり、隙間g1、g2が存在しない。サンプルNO.2では、隙間g1、g2の大きさL1、L2がそれぞれ1mmである。
【0066】
サンプルNO.3およびサンプルNO.4のそれぞれでは、クッション材51、52のそれぞれが厚さ2mmの独立気泡のウレタン発泡体である。ただし、サンプルNO.3では、サンプルNO.1と同様、間隔D1、D2のそれぞれが厚さT1、T2のそれぞれよりも僅かに小さく、クッション材51、52のそれぞれが圧縮変形した状態であり、隙間g1、g2が存在しない。サンプルNO.4では、隙間g1、g2の大きさL1、L2がそれぞれ1mmである。なお、サンプルNO.3およびサンプルNO.4に用いるウレタン発泡体の空孔率および構成樹脂等の態様は、独立気泡であること以外、サンプルNO.1およびサンプルNO.2に用いるウレタン発泡体と同様である。
【0067】
サンプルNO.5では、クッション材51、52のそれぞれが厚さ2mmの独立気泡のウレタン発泡体と厚さ2mmのフェルトとの積層体である。ここで、クッション材51のフェルトが隙間g1に面するように配置される。同様に、クッション材52のフェルトが隙間g2に面するように配置される。また、サンプルNO.5では、隙間g1、g2の大きさL1、L2がそれぞれ1mmである。なお、サンプルNO.5に用いるウレタン発泡体の空孔率および構成樹脂等の態様は、サンプルNO.3およびサンプルNO.4に用いるウレタン発泡体と同様である。
【0068】
サンプルNO.6では、クッション材51、52のそれぞれが厚さ4mmのフェルトである。また、サンプルNO.6では、隙間g1、g2の大きさL1、L2がそれぞれ1mmである。
【0069】
サンプルNO.7では、クッション材51、52のそれぞれが厚さ2mmのフェルトである。また、サンプルNO.7では、隙間g1、g2の大きさL1、L2がそれぞれ1mmである。
【0070】
図5中の「振動抑制」は、スピーカーユニット10を駆動したときにスピーカーユニット10から取付部材20に伝わる振動の大きさに関する評価である。
図5では、以下の基準に従い、「振動抑制」の評価結果が示される。
F:スピーカーユニット10から取付部材20に伝わる振動が基準値以上である。
P:スピーカーユニット10から取付部材20に伝わる振動が基準値未満である。
【0071】
図5中の「異音試験」は、スピーカーユニット10に外力により振動を与えた際にストッパー23、25とフランジ14aとの接触による異音の大きさに関する評価である。
図5では、以下の基準に従い、「異音試験」の評価結果が示される。
A:異音が十分に無視できるレベルである。
B:異音が僅かにあるが、周囲の騒音レベルに比べて十分に小さく、認知されないレベルである。
C:異音が周囲の騒音レベルに比べてやや大きく、認知され得るレベルである。
D:異音が周囲の騒音レベルに比べて大きく、はっきり認知されるレベルである。
【0072】
図5中の「衝撃試験」は、取付対象物200に車両用ドアの開閉時相当の衝撃を1万回加えたときの弾性部材30の損傷に関する評価である。
図5では、以下の基準に従い、「衝撃試験」の評価結果が示される。
F:弾性部材30に損傷が認められる。
P:弾性部材30にへたりが生じるものの、それ以外の損傷は認められない。
【0073】
図5中の「コスト」は、スピーカー1の製造コストに関する評価である。
図5では、コストが低いほうから高いほうへ、「A」、「B」、「C」、「D」の順に評価結果が示される。
【0074】
図5に示す評価結果において、サンプルNO.1とサンプルNO.2との比較、または、サンプルNO.3とサンプルNO.4との比較からわかるように、隙間g1、g2が存在することにより、振動抑制の改善効果が得られる。
【0075】
また、
図5中の「異音試験」の評価結果からわかるように、異音の改善効果を好適に得る観点から、クッション材51、52の材質として、フェルトが最も好ましく、次に連続気泡のウレタン発泡体が好ましい。ただし、クッション材51、52の材質として独立気泡のウレタン発泡体を用いるサンプルNO.4であっても、クッション材51、52を用いない態様に比べて異音の改善効果がある。ここで、サンプルNO.4がサンプルNO.2に比べて異音の改善効果が低いのは、独立気泡のウレタン発泡体の表面が平滑であることに起因する接触音が生じるからである。したがって、独立気泡のウレタン発泡体を用いても、サンプルNO.5のようにフェルトと組み合わせたり、表面を粗面化したりすることにより、異音の改善効果を高めることができる。なお、サンプルNO.1、NO.3では、前述のようにクッション材51、52が圧縮変形した状態であるため、「異音試験」において衝撃を加えても、隙間g1、g2が存在しない状態が維持されるので、異音が発生しない。
【0076】
このように、クッション材51、52は、フェルトを含むことが好ましい。この場合、クッション材51、52がフェルトを含まない態様に比べて、異音が好適に低減される。このようにクッション材51、52がフェルトを含む場合、クッション材51、52がフェルトのみで構成されてもよいし、クッション材51、52がフェルトと発泡体との積層で構成されてもよい。ここで、クッション材51、52をフェルトと発泡体との積層で構成する場合、フェルトが隙間g1、g2と発泡体との間に位置することが好ましい。この場合、当該発泡体が独立気泡の発泡体であっても、クッション材51、52とスピーカーユニット10との接触による異音を好適に低減することができる。なお、クッション材51、52の材質が互いに異なってもよい。
【0077】
さらに、
図5中の「衝撃試験」の評価結果からわかるように、サンプルNO.1からサンプルNO.7のいずれにおいても、衝撃試験による結果が良好である。ただし、サンプルNO.1、NO.2では、クッション材51、52のへたりが認められるので、長期にわたり異音の改善効果を得る観点から、この点でも、クッション材51、52は、フェルトを含むことが好ましい。
【0078】
また、
図5中の「コスト」の評価結果からわかるように、低コスト化を図る観点から、この点でも、クッション材51、52は、フェルトを含むことが好ましい。
【0079】
1-2.第2実施形態
以下、本開示の第2実施形態について説明する。以下に例示する形態において作用および機能が第1実施形態と同様である要素については、第1実施形態の説明で使用した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0080】
図6は、第2実施形態に係るスピーカー1Aの部分拡大断面図である。スピーカー1Aは、第1実施形態のクッション材51、52に代えてクッション材51A、52Aを備えること以外は、第1実施形態のスピーカー1と同様に構成される。
【0081】
クッション材51Aは、フランジ14aのX1方向を向く面に取り付けられること以外は、第1実施形態のクッション材51と同様に構成される。また、クッション材52Aは、弾性部材30の第1部分31のX2方向を向く面に取り付けられること以外は、第1実施形態のクッション材51と同様に構成される。
【0082】
ここで、クッション材51Aは、ストッパー23とフレーム14との軸方向の間に配置される。また、ストッパー23とクッション材51Aとの軸方向の間には、隙間g1が設けられる。同様に、クッション材52Aは、ストッパー25とフレーム14との軸方向の間に配置される。また、ストッパー25とクッション材52Aとの軸方向の間には、隙間g2が設けられる。
【0083】
以上のスピーカー1Aによっても、ストッパー23、25とフレーム14との接触による異音の発生を防止することができる。ここで、ストッパー23、25とクッション材51A、52Aとの軸方向の間に隙間g1、g2が設けられるので、クッション材51A、52Aの弾性の影響を受けずに、弾性部材30の弾性によりスピーカーユニット10から取付対象物200への振動の伝達を低減することができる。以上から、スピーカー1Aの音質を向上させることができる。
【0084】
2.車両用ドア
図7は、車両用ドア100の一例を示す分解斜視図である。
図7に示すように、車両用ドア100は、アウターパネル110とドアトリム120とインナーパネル130とスピーカー1とパッキン170とを備える。インナーパネル130は、「取付対象物」または「パネル」の一例であり、前述の取付対象物200に相当する。なお、車両用ドア100は、スピーカー1に代えてスピーカー1Aを備えてもよい。
【0085】
アウターパネル110、インナーパネル130、ドアトリム120は、この順でX1方向に並んで配置される。このように、アウターパネル110が車両の外部に面するとともにドアトリム120が車室側に配置されており、アウターパネル110とドアトリム120との間には、インナーパネル130が配置される。
図7に示す例では、上下動可能な窓ガラス140のための枠体150がアウターパネル110およびインナーパネル130と一体に設けられる。なお、枠体150は、省略されてもよい。
【0086】
アウターパネル110およびインナーパネル130のそれぞれは、例えば、鋼板で構成される。アウターパネル110およびインナーパネル130の外周縁は、溶接等により互いに接合される。なお、アウターパネル110およびインナーパネル130のそれぞれは、鋼板を用いた構成に限定されず、例えば、アルミニウム合金または炭素繊維複合材料で構成されてもよい。
【0087】
アウターパネル110とインナーパネル130との間には、空間が設けられる。当該空間は、スピーカー1のためのエンクロージャーとして用いられる。また、図示しないが、当該空間には、例えば、窓ガラス140の昇降のための窓昇降機構とドアロック機構とが配置される。
【0088】
インナーパネル130は、開口131と複数の開口132とを有する。開口131は、前述の開口210に相当する孔であり、スピーカー1により塞がれる。スピーカー1の取付部材20は、インナーパネル130にねじ留め等により固定される。複数の開口132のそれぞれは、例えば、前述の昇降機構およびドアロック機構等の組み付け作業に用いる孔である。なお、複数の開口132のうちの少なくとも1つは、樹脂材料等で構成されるシート部材により塞がれてもよい。
【0089】
ドアトリム120は、例えば、樹脂等で構成される内装材である。ドアトリム120は、複数の孔121を有する。この複数の孔121は、スピーカー1からの音を車室内の空間に放出するための経路として用いられる。なお、複数の孔121に代えて1つの孔がドアトリム120に設けられてもよい。また、複数の孔121は、サランネット等のメッシュ材で覆われてもよい。
【0090】
ドアトリム120は、インナーパネル130に対して複数の接続部材160により着脱可能に取り付けられる。各接続部材160は、例えば、樹脂で構成されるリベットまたはクリップである。各接続部材160は、ドアトリム120に固定される一端と、インナーパネル130の有する133に挿入される他端と、を有する。
【0091】
ドアトリム120とインナーパネル130との間には、パッキン170が配置される。パッキン170は、ドアトリム120またはインナーパネル130の外周縁に沿う環状の弾性部材であり、ドアトリム120とインナーパネル130との間で弾性変形した状態で、これらの間の隙間を封止する。パッキン170は、例えば、ゴム材料またはエラストマー材料で構成される。なお、パッキン170は、独立気泡の発泡体で構成されてもよい。
【0092】
以上の車両用ドア100は、スピーカー1と、取付対象物であるパネルの一例であるインナーパネル130と、を備える。以上の車両用ドア100では、インナーパネル130の振動による音質の低下を安価に低減することができる。
【0093】
3.変形例
本開示は前述の各実施形態に限定されるものではなく、以下に述べる各種の変形が可能である。また、各実施形態及び各変形例を適宜組み合わせてもよい。
【0094】
3-1.変形例1
前述の実施形態では、弾性部材30が板バネである態様が例示されるが、この態様に限定されない。例えば、弾性部材30に代えて、コイルバネまたはゴム等の弾性体で構成される弾性部材が用いられてもよい。この場合、弾性部材の形状または材質等に応じて、取付部材20の形状等の態様が適宜に変更され得る。
【0095】
3-2.変形例2
前述の実施形態では、1対のストッパー23、25を用いる態様が例示されるがこの態様に限定されず、例えば、ストッパー23、25のうちの一方が省略されてもよい。
【0096】
3-3.変形例3
前述の各形態では、スピーカーユニット10のそれぞれがダイナミック型である構成が例示されるが、これに限定されず、本開示のスピーカーユニットは、例えば、コンデンサ型(静電型)、リボン型、イオン型(放電型)、マグネティック型、圧電型等の変換方式でもよい。
【0097】
4.付記
以上に例示する形態または変形例から、例えば以下の態様が把握される。
【0098】
本開示の好適例である第1態様のスピーカーは、振動板とフレームとを有するスピーカーユニットと、取付対象物に取り付けられる取付部材と、前記取付部材に対して前記フレームを支持する少なくとも1つの弾性部材と、を備え、前記取付部材は、前記スピーカーユニットの軸方向にみて前記フレームの一部に重なるストッパーを有し、前記ストッパーおよび前記フレームのうちの一方には、前記ストッパーと前記フレームとの前記軸方向の間に配置されるクッション材が取り付けられ、前記ストッパーおよび前記フレームのうちの他方と前記クッション材との前記軸方向の間には、隙間が設けられる。
【0099】
以上の態様によれば、ストッパーおよびフレームのうちの一方にストッパーとフレームとの軸方向の間に配置されるクッション材が取り付けられるので、ストッパーとフレームとの接触による異音の発生を防止することができる。ここで、ストッパーおよびフレームのうちの他方とクッション材との軸方向の間に隙間が設けられるので、クッション材の弾性の影響を受けずに、弾性部材の弾性によりスピーカーユニットから取付対象物への振動の伝達を低減することができる。以上から、音質を向上させることができる。
【0100】
第1態様の好適例である第2態様において、前記軸方向に沿う前記隙間の大きさは、前記スピーカーユニットの駆動時における前記取付部材に対する前記フレームの最大変位量以上である。以上の態様では、スピーカーユニットの駆動時にクッション材の弾性の影響を受けずに、弾性部材の弾性によりスピーカーユニットから取付対象物への振動の伝達を低減することができる。
【0101】
第1態様または第2態様の好適例である第3態様において、前記軸方向に沿う前記隙間の大きさは、前記スピーカーユニットの駆動時における前記フレームに対する前記振動板の最大変位量の1/2以下である。以上の態様では、弾性部材の損傷を低減し得るように、ストッパーによりスピーカーユニットの軸方向での変位を所定範囲内に規制することができる。
【0102】
第1態様から第3態様のいずれかの好適例である第4態様において、前記クッション材は、フェルトを含む。以上の態様では、クッション材がフェルトを含まない態様に比べて、異音が好適に低減される。
【0103】
第1態様から第4態様のいずれかの好適例である第5態様において、前記弾性部材は、板バネである。以上の態様では、弾性部材がコイルバネまたはゴムである態様に比べて、取付部材に対してフレームを安定的に支持しつつ、弾性部材の弾性によりスピーカーユニットから取付対象物への振動の伝達を低減することができる。また、弾性部材がコイルバネまたはゴムである態様に比べて、弾性部材の設置スペースが小さくて済むので、スピーカーの小型化を図ることができる。さらに、所望のバネ定数の弾性部材30を容易に設計することができるので、スピーカー1の製造コストを低減しやすいという利点もある。
【0104】
第5態様の好適例である第6態様において、前記弾性部材は、前記フレームに固定される第1部分と、前記取付部材に固定される第2部分と、前記第1部分と前記第2部分とを連結する連結部と、を有する。以上の態様では、弾性部材が板バネである態様において、スピーカーの小型化を図りつつ、弾性部材の弾性によりスピーカーユニットから取付対象物への振動の伝達を低減することができる。
【0105】
第6態様の好適例である第7態様において、前記ストッパーは、前記軸方向に並ぶ1対のストッパーを含み、前記フレームは、前記第1部分を固定するフランジを有し、前記1対のストッパーの間には、前記第1部分および前記フランジが介在する。以上の態様では、スピーカーの小型化を図りつつ、取付部材に対するスピーカーユニットの軸方向での移動を正面方向と背面方向と双方向で所定範囲内に規制することができる。
【0106】
本開示の好適例である第8態様の車両用ドアは、前述の態様のいずれかのスピーカーと、前記取付対象物であるパネルと、を備える。以上の第8態様では、パネルの振動による音質の低下を低減した車両用ドアを安価に提供することができる。
【符号の説明】
【0107】
1…スピーカー、1A…スピーカー、10…スピーカーユニット、11…振動板、12…ボイスコイル、12a…ボビン、12b…コイル、13…磁気回路、13a…永久磁石、13b…ヨーク、14…フレーム、14a…フランジ、14b…背板、15…ダンパー、16…エッジ、20…取付部材、20a…第1ストッパー部材、20b…第2ストッパー部材、21…ベース、22…フランジ、23…ストッパー、24…ベース、25…ストッパー、30…弾性部材、31…第1部分、32…第2部分、33…連結部、33a…端部、33b…端部、33c…バネ部、40…封止部材、51…クッション材、51A…クッション材、52…クッション材、52A…クッション材、100…車両用ドア、110…アウターパネル、120…ドアトリム、121…孔、130…インナーパネル、131…開口、132…開口、140…窓ガラス、150…枠体、160…接続部材、170…パッキン、200…取付対象物、210…開口、AX…軸線、D1…間隔、D2…間隔、OP…開口、S1…空間、S2…空間、SL1…スリット、SL2…スリット、T1…厚さ、T2…厚さ、g1…隙間、g2…隙間。