(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155366
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】フック
(51)【国際特許分類】
F16B 45/02 20060101AFI20241024BHJP
A62B 35/00 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
F16B45/02 Z
A62B35/00 C
A62B35/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023070022
(22)【出願日】2023-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】000223687
【氏名又は名称】藤井電工株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中村 政彦
(72)【発明者】
【氏名】西岡 洸貴
【テーマコード(参考)】
2E184
3J038
【Fターム(参考)】
2E184JA03
2E184KA01
2E184KA11
2E184LA15
3J038AA01
3J038BA02
3J038BC04
3J038BC07
(57)【要約】
【課題】比較的安価に製作可能で、小型で高強度のフックを提供する。
【解決手段】開口を有する鉤状のフック本体4と、回動により前記フック本体4の鉤口4cを開閉する開閉装置6と、前記開閉装置6の回動を規制する安全装置8と、を備え、前記開閉装置6はその胴部6aが棒状の中実構造に形成され、前記安全装置8はその断面形状が略コ字状に形成され、回動規制状態では前記安全装置8が前記開閉装置6に当接することで前記開閉装置6の回動が阻止され、前記安全装置8による回動規制を解除して前記開閉装置6を回動させたときに、前記開閉装置6が前記安全装置8の両側板8b,8b間に形成された空間内を通過するように構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口を有する鉤状のフック本体と、回動により前記フック本体の鉤口を開閉する開閉装置と、前記開閉装置の回動を規制する安全装置と、を備え、
前記開閉装置はその胴部が棒状の中実構造に形成され、
前記安全装置はその断面形状が略コ字状に形成され、
回動規制状態では前記安全装置が前記開閉装置に当接することで前記開閉装置の回動が阻止され、
前記安全装置による回動規制を解除して前記開閉装置を回動させたときに、前記開閉装置が前記安全装置の両側板間に形成された空間内を通過するように構成されている
ことを特徴とするフック。
【請求項2】
前記安全装置の両側板には突出部が形成され、
前記開閉装置の鉤口側の面には受け部が、両側面には前記突出部に対応する突出部通過溝がそれぞれ形成され、
回動規制状態では前記突出部が前記受け部にそれぞれ当接することで前記開閉装置の回動が阻止され、
前記安全装置による回動規制を解除して前記開閉装置を回動させたときに、前記開閉装置が両突出部間に形成された空間内を通過するように構成されている
請求項1に記載のフック。
【請求項3】
前記開閉装置の受け部から外方に膨らむガイド部が形成され、
前記ガイド部は、回動規制状態における前記開閉装置の配置及び前記安全装置の配置で前記突出部の一部または全部を覆うように構成されている
請求項2に記載のフック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高所作業において安全性を確保するのに使用されるフックに関する。特に、ハーネス用ランヤードの人体側連結フックに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のフックとしては、例えば、フック本体と開閉キャップと安全装置とを備えた構造が知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
特許文献1に示されるフックでは、鉤部を有するフック本体の腹部側に断面コ字型の開閉キャップが、背部側に断面コ字型の安全装置が軸を介してそれぞれ回動自在に設けられている。このような断面コ字型の開閉キャップ及び安全装置は、板材を曲げるなどして製作される。開閉キャップ及び安全装置は、ばねをそれぞれ配してフック本体を挟み込むように軸止されている。開閉キャップと安全装置とはその両側片にて重合されている。
【0003】
安全装置の両側片にはスライド溝がそれぞれ形成され、開閉キャップの両側片にはスライドピンが挿通される孔がそれぞれ形成されている。そして、開閉キャップと安全装置との重合部分のスライド溝内でスライドピンが橋絡される。このスライドピンによって開閉キャップと安全装置とが接続されている。
上記構成では、スライドピンが開閉キャップの回動を阻害する位置を取ることで開閉キャップの不意の開閉を防いでいる。一方、安全装置を握って回動させるとスライド溝の位置が移動し、スライドピンが開閉キャップの回動を阻害しない位置を取る。これにより、開閉キャップの回動が可能になり、フックの鉤口を開閉することができる。
【0004】
スライドピンを用いたその他の構造として、安全装置だけでなくフック本体にもスライド溝が形成され、フック本体、開閉キャップ及び安全装置をスライドピンで接続している構造や、フック本体の内側に切削加工にて孔をあけ、その中に安全装置を組み込んだ構造も知られている。
【0005】
また、スライドピンを使用しない構造として、特許文献2に示されるフックでは、開閉キャップに相当するゲートアーム及び安全装置に相当するロックアームがその先端で相互に当接するように構成されている。具体的には、溝型断面を有するゲートアームの側板の後端部に舌片が設けられており、この舌片はフック本体の基部に向かう先端を有している。また、溝型断面を有するロックアームの枢軸の近傍域にフック本体の基部に沿わせて一体的に舌片が設けられている。
【0006】
上記構成では、ゲートアームにロックアームが当接している配置でゲートアームにフック本体の基部へ向かう力を付与しても、当接しているロックアームに阻まれゲートアームは回動できない。このようにこの配置では、フック本体の先端部とゲートアームの先端部との係合が維持される。
ロックアームを握って回動させるとロックアームの舌片の位置が移動し、ゲートアームの舌片とは当接しない位置を取る。これにより、ゲートアームの回動が可能になり、フックの鉤口を開閉することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開平5-62270号公報
【特許文献2】特開2010-284279号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記フックの小型化が望まれている。小型フックは、例えば、作業者が装着するハーネスにランヤードを繋ぐ接続用のフックなどの用途が想定される。
しかし、上記特許文献1に示す構造では、小型化によりフックを構成する各部材と比較してスライド溝の占める割合が相対的に大きくなる。スライド溝の割合が大きくなるとスライド溝が形成されている部材の強度が低下して、小型フックの安全性に問題が生じる場合がある。
また、スライドピンを用いる構造や、フック本体の内部に安全装置を組み込む構造では、かしめや切削など加工の手間やコストが多くかかっていた。
【0009】
上記特許文献2に示す構造でも、小型化によってフック自身の外形が小さくなるため、回動させる安全装置の一部が他の部分に干渉しないよう逃がすためのスペースが確保できない場合がある。
更に、板材を曲げるなどして製作された開閉キャップは、小型フックとして使用する場合に、その強度が不十分となるおそれがある。
【0010】
本発明の目的は、比較的安価に製作可能で、小型で高強度のフックを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のフックは、開口を有する鉤状のフック本体と、回動により前記フック本体の鉤口を開閉する開閉装置と、前記開閉装置の回動を規制する安全装置と、を備え、前記開閉装置はその胴部が棒状の中実構造に形成され、前記安全装置はその断面形状が略コ字状に形成され、回動規制状態では前記安全装置が前記開閉装置に当接することで前記開閉装置の回動が阻止され、前記安全装置による回動規制を解除して前記開閉装置を回動させたときに、前記開閉装置が前記安全装置の両側板間に形成された空間内を通過するように構成されていることを特徴とする。
本発明のフックでは、前記安全装置の両側板には突出部が形成され、前記開閉装置の鉤口側の面には受け部が、両側面には前記突出部に対応する突出部通過溝がそれぞれ形成され、回動規制状態では前記突出部が前記受け部にそれぞれ当接することで前記開閉装置の回動が阻止され、前記安全装置による回動規制を解除して前記開閉装置を回動させたときに、前記開閉装置が両突出部間に形成された空間内を通過するように構成されていることが好ましい。
本発明のフックでは、前記開閉装置の受け部から外方に膨らむガイド部が形成され、前記ガイド部は、回動規制状態における前記開閉装置の配置及び前記安全装置の配置で前記突出部の一部または全部を覆うように構成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るフックでは、開閉装置はその胴部が棒状の中実構造に形成され、安全装置はその断面形状が略コ字状に形成されている。そして、回動規制状態では安全装置が開閉装置に当接することで開閉装置の回動が阻止され、安全装置による回動規制を解除して開閉装置を回動させたときに、開閉装置が安全装置の両側板間に形成された空間内を通過するように構成されている。上記構造により、比較的安価に製作可能で、小型で高強度のフックを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図11】
図2に示すフックにおいて、安全装置を回動規制解除の方向に回動させた状態を示す図。
【
図12】
図11に示すフックにおいて、開閉装置を回動させ、鉤口を開いた状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る実施の形態について説明する。
図1は、本実施形態のフックを示す説明図であり、
図2はその正面図である。
図1及び
図2に示すように、本実施形態のフック2は、フック本体4と開閉装置6と安全装置8とを備えている。開閉装置6及び安全装置8は、フック本体4を腹部側及び背部側からそれぞれ挟み込むように軸止されている。
【0015】
<フック本体4の構成>
図3は、フック本体4の正面図である。
図3に示すように、フック本体4は、その一端に鉤部10が形成されている。フック本体4の他端には環部12が形成されている。フック本体4は、鉄鋼、アルミニウム合金等の金属材料を用いてもよい。このうち、軽量化が図られ、かつ小型化したフックの強度が保たれることからアルミ鍛造により製作するのが好ましい。
【0016】
腹部4a側の環部12近辺には開閉装置軸止用の軸孔14が設けられている。また、背部4b側の鉤部10と環部12との間には、安全装置8が配置される程度の窪みが形成された段差15が設けられている。この段差15は後述する安全装置8の長尺体よりも若干長い程度の長さに設定されている。また段差15は、鉤部10側から環部12側に向かうにつれてその窪みが深くなるように設定されている。窪みが一番浅い箇所15aは安全装置8の長尺体の厚みと同程度に設定され、窪みが一番深い箇所15bは安全装置8の回動で開閉装置6の回動規制が解除される程度に設定されている。背部4b側の鉤部10近辺には安全装置軸止用の軸孔16が設けられている。鉤部10先端には爪部18が設けられている。
背部4b側の環部12近辺には側面が外方へと突出する突起部20がそれぞれ設けられている。安全装置8が定常姿勢へと戻る方向に回動したときに、この突起部20と後述する安全装置8の受止部とが接触することで安全装置8の定常姿勢位置を超える回動が制止される。突起部20は、定常姿勢位置で安全装置8の長尺体とフック本体4の背部側とが面一となる配置に形成されている。以下、本明細書において「定常姿勢」とは、外部から力が付与されていない状態での各部材がとる配置をいう。
【0017】
<開閉装置6の構成>
図4は開閉装置6の説明図であり、
図5はその正面図、
図6は左側面図、
図7は右側面図である。
図4~
図7に示すように、開閉装置6は、フック本体4の鉤口4cを開閉するための部材である。開閉装置6はその胴部6aが棒状の中実構造であり略矩形状断面に形成されている。開閉装置6は、アルミ鍛造により製作するのが好ましい。
【0018】
開閉装置6の先端部6bには凹部22が設けられている。凹部22は、鉤部10先端の爪部18と嵌合可能な形状を有している。開閉装置6の基端部6cには二股部24が設けられている。二股部24には軸止用孔26が設けられている。
開閉装置6の胴部6aと基端部6cとの境目付近における鉤口4c側の面には受け部28が設けられている。受け部28は、定常姿勢において後述する安全装置8の突出部と当接可能な位置に形成されている。
【0019】
胴部6aの両側面には突出部通過溝30が設けられている。突出部通過溝30は、後述する安全装置8の突出部が通過する深さ及び形状に形成されている。突出部通過溝30を突出部に対応する深さ及び形状とすることで、回動規制を解除した配置における安全装置8の両突出部と干渉することなく、開閉装置6を両突出部間で形成された空間内に通過させることができる。回動規制を解除した配置とは安全装置8をフックの内側方向に回動させた状態の配置である。
また、開閉装置6の二股部24には、受け部28から外方に膨らむようにガイド部32が設けられている。ガイド部32は、開閉装置6の両側面に形成されている。ガイド部32は、回動規制状態の配置では後述する安全装置8の突出部の一部を覆うように構成されている。回動規制状態の配置とは安全装置8をフックの外側方向に回動させた状態の配置である。
【0020】
図2に示すように、開閉装置6は、フック本体4の腹部4a側に二股部24がフック本体4と重なるように配置されている。開閉装置6は、フック本体4に図示しない第一付勢手段を介して取り付けられている。第一付勢手段としてはばねが用いられる。
フック本体4と開閉装置6は、軸孔14と軸止用孔26とが連通する配置に位置調整される。そして、この連通した配置で軸止用孔26にリベットを差し込んで他方の軸止用孔26から突出させ、その端部をかしめる。これにより、フック本体4と開閉装置6とが軸40によって回動自在に接続され、取り付けられた開閉装置6の回動により鉤口4cが開閉可能になる。開閉装置6をフックの内側方向に回動させると鉤口4cが開き、フックの外側方向に回動させると鉤口4cが閉じる。
【0021】
第一付勢手段は、開閉装置6をフックの外側に向かう方向へと付勢している。開閉装置6は、第一付勢手段の付勢力でフックの外側に向かう方向に回動する。この回動により、爪部18と凹部22とが嵌合することでフック本体4と開閉装置6とが係合する。
【0022】
<安全装置8の構成>
図8は安全装置8の説明図であり、
図9はその正面図、
図10は右側面図である。
図8~
図10に示すように、安全装置8は、開閉装置6の回動を規制又はその解除をするための部材である。安全装置8は板状部材を折り曲げるなどして、その断面形状が略コ字状に形成されている。安全装置8は、フック本体4の背部4bに沿うように延伸する長尺体8aと、この長尺体8aの幅方向の両縁部から立ち上がる一対の側板8bから構成されている。長尺体8aはフック本体4の段差15よりも若干短い程度の長さに設定されている。両側板8b,8bの間隔は、フック本体4の厚みより大きく設定されている。また、両側板8b,8bの間隔は、突出部通過溝30が形成された開閉装置6の胴部6aの厚みよりも大きく設定されている。
【0023】
一対の側板8bには、その一端に軸止用孔34がそれぞれ設けられている。また、一対の側板8bの他端には受止部36がそれぞれ設けられている。安全装置8が定常姿勢へと戻る方向に回動したときに、この受止部36とフック本体4の突起部20とが接触することで安全装置8の定常姿勢位置を超える回動が制止される。
【0024】
一対の側板8bには、長尺体8aから離れる方向に延びる突出部38が設けられている。突出部38は、
図1に示す回動規制状態における開閉装置6の配置及び安全装置8の配置において、開閉装置6の受け部28と当接する長さ及び位置に形成されている。また、両突出部38,38の間隔は、突出部通過溝30が形成された開閉装置6の胴部6aの厚みよりも大きく設定されている。
【0025】
図2に示すように、安全装置8は、フック本体4の背部4b側の段差15の窪みに長尺体8aが入るように配置されている。安全装置8は、フック本体4に図示しない第二付勢手段を介して取り付けられている。第二付勢手段としてはばねが用いられる。
フック本体4と安全装置8は、軸孔16と軸止用孔34とが連通する配置に位置調整される。そして、この連通した配置で軸止用孔34にリベットを差し込んで他方の軸止用孔34から突出させ、その端部をかしめる。これにより、フック本体4と安全装置8とが軸42によって回動自在に接続され、取り付けられた安全装置8の回動により開閉装置6の回動規制又はその解除の切り替えが可能になる。安全装置8をフックの内側方向に回動させると開閉装置6の回動規制が解除され、フックの外側方向に回動させると開閉装置6の回動が規制される。
【0026】
第二付勢手段は、安全装置8をフックの外側に向かう方向へと付勢している。安全装置8は、第二付勢手段の付勢力でフックの外側に向かう方向に回動する。この回動では、受止部36がフック本体4の突起部20と接触する。この接触により、安全装置8は定常姿勢位置にて回動を停止する。この定常姿勢位置では、安全装置8の長尺体8aとフック本体4の背部4bとがほぼ面一の配置となるように設定されている。詳しくは、フック本体4の背部4b側の鉤部10表面、安全装置8の長尺体8aの表面、及びフック本体4の背部4b側の環部12表面がほぼ面一の配置となるように設定されている。
図1に示すように、定常姿勢では、安全装置8の突出部38と開閉装置6の受け部28とが互いに当接する位置に配置される。また突出部38は、ガイド部32によりその一部が覆われる。
【0027】
<フック2の動作説明>
図1及び
図2に示すように、本実施形態のフック2は、定常姿勢では、図示しない第一付勢手段の付勢力で開閉装置6がフックの外側方向に回動しており、フック本体4の鉤口4cが閉じられている。この定常姿勢では、爪部18と凹部22とが嵌合している。このようにフック本体4と開閉装置6とが強固に係合するので、フック2に過大な荷重が付加されてもフック本体4と開閉装置6が離れて鉤口4cが開放されることがなく、高い安全性が得られる。
【0028】
また、図示しない第二付勢手段の付勢力で安全装置8がフックの外側方向に回動しており、安全装置8は回動規制状態に配置されている。この回動規制状態では、安全装置8の突出部38と開閉装置6の受け部28とが互いに当接する位置に配置される。
上記定常姿勢では、開閉装置6に対してフックの内側方向に向かう力が付与されても受け部28と当接する突出部38が開閉装置6の回動を阻止するので、開閉装置6を回動させることはできない。このようにして開閉装置6の不意の開閉を防いでいる。
この定常姿勢位置では、安全装置8の長尺体8aとフック本体4の背部4bとがほぼ面一に配置されている。このようにフック本体4の背部4bと、安全装置8の長尺体8aとで段差が生じないので、フック2の背部側は構造物等に引っ掛かりがなく、安全性が高くなる。
【0029】
フック本体4の鉤口4cを開くには、先ず、
図11に示すように、安全装置8を握って第二付勢手段の付勢力に抗して安全装置8をフックの内側方向に向かって回動させる。安全装置8の回動で突出部38の位置がずれて受け部28との当接が外れる。これにより安全装置8による回動規制が解除され、開閉装置6は回動自在になる。
次に、
図12に示すように、第一付勢手段の付勢力に抗して開閉装置6をフックの内側方向に向かって回動させる。この開閉装置6の回動では、開閉装置6は両側面の突出部通過溝30により位置がずれた突出部38を躱して両突出部38間に形成された空間内を通過する。これにより爪部18と凹部22との嵌合は外れ、鉤口4cが開かれる。
【0030】
<本実施形態の作用効果>
このような本実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
本実施形態のフック2は、スライドピンを使用せず、開閉装置6に安全装置8を当接させる構造を採用した。この当接構造では、安全装置による回動規制を解除して開閉装置を回動させた場合、安全装置の突出部が開閉装置の進路を妨害してしまう位置関係となる。
そのため従来は、開閉装置と安全装置に断面略コ字状構造を採用し、かつ回動時の開閉装置が突出部との衝突を避けるような形状とすることで干渉を回避していた。しかし、フックを小型化した場合に、干渉回避のためのスペースを確保し難く、また開閉装置が強度不足となってフックの安定性が低下するおそれがあった。
【0031】
そこで、本実施形態のフック2では、開閉装置6の胴部6aを棒状の中実構造に形成した。胴部6aを棒状の中実構造にすることで、フック2を小型化した場合でも開閉装置6の強度を十分に確保でき、フック2に大きな荷重がかかった場合でも開閉装置6が変形し難い。そして、干渉回避として、開閉装置6両側面に突出部38との衝突を躱すための突出部通過溝30を設けた。この突出部通過溝30により開閉装置6は安全装置8の干渉を受けることなく回動が可能となる。
【0032】
本実施形態のフック2では、開閉装置と安全装置をスライドピンで接続する従来構造を採用していない。スライドピンを取り付ける孔やスライド溝を形成する必要がないので、その分、各部材の強度が高まる。また、スライドピンの取り付けを行わないため製造全体としてのリベットでかしめる回数が削減され、製造工程が簡略化する。
本実施形態のフック2では、フック本体の内部に安全装置を組み込むような従来構造を採用していない。フック本体内部に切削などの加工を行う必要がないので、製造工程の簡略化が図れ、比較的安価に製造が可能である。
【0033】
また、本実施形態のフック2は、開閉装置6にガイド部32が形成され、このガイド部32が回動規制状態の配置で突出部38の一部を覆うように構成されている。従来の、開閉キャップと安全装置とを当接させた構造では、組立て時のがたつきの大きさなどによっては開閉キャップと安全装置とがうまく噛み合わなかったり、位置がずれたりして動作不良を起こすことが考えられる。一方、本実施形態のフック2では、ガイド部32で安全装置8を側面からガイドしているので安全装置8のがたつきが抑えられ、開閉装置6の受け部28と安全装置8の突出部38とを位置ずれすることなく当接させることができる。このようにガイド部32を設けることで、安全装置8のがたつきに伴う位置ずれによる動作不良が抑制される。
【0034】
<変形例>
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良は本発明に含まれるものとする。
上記実施形態では、フック本体4に軸止した安全装置8を回動させることで、開閉装置6の回動規制状態とその解除を切り替える構成としたが、これに限定されない。例えば、フック本体4に対して安全装置8をスライド可能な接続とし、安全装置8をスライドさせることで開閉装置6の回動規制状態とその解除を切り替える構成としてもよい。
また、ガイド部32が回動規制状態の配置で突出部38の一部を覆う構成としたが、これに限定されない。ガイド部32が突出部38の全部を覆う構成としてもよい。
また、フック本体4の鉤部10や環部12は、その強度を高めるために側面に溝を設ける構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0035】
以上説明されたフックは、小型化したフックに好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0036】
2 フック
4 フック本体
4a 腹部
4b 背部
4c 鉤口
6 開閉装置
6a 胴部
6b 先端部
6c 基端部
8 安全装置
8a 長尺体
8b 側板
10 鉤部
12 環部
14 開閉装置軸止用の軸孔
15 段差
16 安全装置軸止用の軸孔
18 爪部
20 突起部
22 凹部
24 二股部
26 軸止用孔
28 受け部
30 突出部通過溝
32 ガイド部
34 軸止用孔
36 受止部
38 突出部
40 軸
42 軸