(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155372
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】導電性高分子分散液の製造方法、及び導電性積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08G 61/12 20060101AFI20241024BHJP
【FI】
C08G61/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023070035
(22)【出願日】2023-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】和泉 忍
【テーマコード(参考)】
4J032
【Fターム(参考)】
4J032BA03
4J032BA04
4J032BB01
4J032BC02
4J032BC03
4J032BC13
4J032BD07
4J032CG01
(57)【要約】
【課題】保存中の粘度上昇が低減され、乾燥硬化後の導電性も良好な導電性高分子分散液の製造方法、及び導電性積層体の製造方法を提供する。
【解決手段】水と、チオフェン系化合物と、ポリアニオンと、酸化剤とを含む混合液に、前記酸化剤の分解及びラジカルの発生を触媒する鉄化合物を含む触媒水溶液を徐々に滴下し、反応液を得て、前記チオフェン系化合物を重合させる重合工程を含み、前記チオフェン系化合物が重合してなるポリチオフェン系導電性高分子及び前記ポリアニオンを含む導電性複合体と、水とを含有する導電性高分子分散液を得る、導電性高分子分散液の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水と、チオフェン系化合物と、ポリアニオンと、酸化剤とを含む混合液に、
前記酸化剤の分解及びラジカルの発生を触媒する鉄化合物を含む触媒水溶液を徐々に滴下し、反応液を得て、前記チオフェン系化合物を重合させる重合工程を含み、
前記チオフェン系化合物が重合してなるポリチオフェン系導電性高分子及び前記ポリアニオンを含む導電性複合体と、水とを含有する導電性高分子分散液を得る、
導電性高分子分散液の製造方法。
【請求項2】
前記反応液に配合した前記チオフェン系化合物と前記ポリアニオンの合計濃度が、前記反応液の総質量に対して2.5~10.0質量%である、請求項1に記載の導電性高分子分散液の製造方法。
【請求項3】
前記混合液に配合した前記酸化剤の濃度が、前記混合液の総質量に対して0.5~10.0質量%である、請求項2に記載の導電性高分子分散液の製造方法。
【請求項4】
前記触媒水溶液に配合した前記鉄化合物の濃度が、前記触媒水溶液の総質量に対して0.1~5.0質量%である、請求項3に記載の導電性高分子分散液の製造方法。
【請求項5】
前記酸化剤がペルオキソ二硫酸又はその塩である、請求項3に記載の導電性高分子分散液の製造方法。
【請求項6】
前記鉄化合物が第二鉄化合物である、請求項4に記載の導電性高分子分散液の製造方法。
【請求項7】
前記ポリチオフェン系導電性高分子がポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)であるか、又は、前記ポリアニオンがポリスチレンスルホン酸である、請求項2に記載の導電性高分子分散液の製造方法。
【請求項8】
前記重合工程で得た前記導電性高分子分散液を、陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂の少なくとも一方に接触させるイオン交換工程を有する、請求項7に記載の導電性高分子分散液の製造方法。
【請求項9】
前記イオン交換工程で得た前記導電性高分子分散液に、水溶性有機溶剤を添加する、請求項8に記載の導電性高分子分散液の製造方法。
【請求項10】
請求項1~9の何れか一項に記載の製造方法により前記導電性高分子分散液を得る工程と、前記導電性高分子分散液を、基材の少なくとも一部の面に塗工し、導電層を形成する工程と、を有する、導電性積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、π共役系導電性高分子を含む導電性高分子分散液の製造方法、及び導電性積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
主鎖がπ共役系で構成されているπ共役系導電性高分子は、アニオン基を有するポリアニオンがドープすることによって導電性複合体を形成し、水に対する分散性が生じる。
導電性複合体を含有する導電性高分子分散液を材料とした塗料を弁金属からなる陽極表面に設けた誘電体層に塗布し、乾燥させて固体電解質層を形成し、これに陰極を対向配置させることにより、キャパシタを製造する方法が開示されている(例えば特許文献1)。この開示によれば、塗料に特定の不飽和脂肪族アルコール化合物を含有させることにより、キャパシタ性能が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
キャパシタの製造に使用する導電性高分子分散液には、誘電体層の多孔質構造に浸み込むために粘度が低いことが求められる。さらに、浸み込んだ導電性高分子分散液が乾燥して形成される固体電解質層には導電性が高いことも求められる。
ところが、従来の導電性高分子分散液の粘度は、保存中に上昇してしまう問題があった。
粘度の上昇は、キャパシタの製造に限らず、導電性高分子分散液を基材に塗布して導電層を形成してなる導電性積層体の製造においても、問題になることがあった。
【0005】
本発明は、保存中の粘度上昇が低減され、乾燥硬化後の導電性も良好な導電性高分子分散液の製造方法、及び導電性積層体の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1] 水と、チオフェン系化合物と、ポリアニオンと、酸化剤とを含む混合液に、前記酸化剤の分解及びラジカルの発生を触媒する鉄化合物を含む触媒水溶液を徐々に滴下し、反応液を得て、前記チオフェン系化合物を重合させる重合工程を含み、前記チオフェン系化合物が重合してなるポリチオフェン系導電性高分子及び前記ポリアニオンを含む導電性複合体と、水とを含有する導電性高分子分散液を得る、導電性高分子分散液の製造方法。
[2] 前記反応液に配合した前記チオフェン系化合物と前記ポリアニオンの合計濃度が、前記反応液の総質量に対して2.5~10.0質量%である、[1]に記載の導電性高分子分散液の製造方法。
[3] 前記混合液に配合した前記酸化剤の濃度が、前記混合液の総質量に対して0.5~10.0質量%である、[1]又は[2]に記載の導電性高分子分散液の製造方法。
[4] 前記触媒水溶液に配合した前記鉄化合物の濃度が、前記触媒水溶液の総質量に対して0.1~5.0質量%である、[1]~[3]の何れかに記載の導電性高分子分散液の製造方法。
[5] 前記酸化剤がペルオキソ二硫酸又はその塩である、[1]~[4]の何れかに記載の導電性高分子分散液の製造方法。
[6] 前記鉄化合物が第二鉄化合物である、[1]~[5]の何れかに記載の導電性高分子分散液の製造方法。
[7] 前記ポリチオフェン系導電性高分子がポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)であるか、又は、前記ポリアニオンがポリスチレンスルホン酸である、[1]~[6]の何れかに記載の導電性高分子分散液の製造方法。
[8] 前記重合工程で得た前記導電性高分子分散液を、陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂の少なくとも一方に接触させるイオン交換工程を有する、[1]~[7]の何れかに記載の導電性高分子分散液の製造方法。
[9] 前記イオン交換工程で得た前記導電性高分子分散液に、水溶性有機溶剤を添加する、[8]に記載の導電性高分子分散液の製造方法。
[10] [1]~[9]の何れかに記載の製造方法により前記導電性高分子分散液を得る工程と、前記導電性高分子分散液を、基材の少なくとも一部の面に塗工し、導電層を形成する工程と、を有する、導電性積層体の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の導電性高分子分散液の製造方法によれば、保存中の粘度上昇が抑制された導電性高分子分散液を得ることができる。また、当該導電性高分子分散液の硬化物の導電性も良好である。
本発明の導電性積層体の製造方法によれば、保存中の粘度上昇が抑制された導電性高分子分散液を用いるので、品質が安定した導電性積層体を容易に製造することができる。
【0008】
本発明はSDGs目標12「つくる責任 つかう責任」に資すると考えられる。
【0009】
本明細書及び特許請求の範囲において、「~」で示す数値範囲の下限値及び上限値はその数値範囲に含まれるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明のキャパシタの一実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
≪導電性高分子分散液の製造方法≫
本発明の第一態様は、水と、チオフェン系化合物と、ポリアニオンと、酸化剤とを含む混合液に、前記酸化剤の分解及びラジカルの発生を触媒する鉄化合物を含む触媒水溶液を徐々に滴下し、反応液を得て、前記チオフェン系化合物を重合させる重合工程を含む、導電性高分子分散液の製造方法である。本態様の製造方法により、前記チオフェン系化合物が重合してなるポリチオフェン系導電性高分子及び前記ポリアニオンを含む導電性複合体と、水とを含有する導電性高分子分散液が得られる。
【0012】
モノマーであるチオフェン系化合物と、ポリアニオンとを任意の含有比で含む混合液(モノマー水溶液)を調製し、ここに触媒水溶液を徐々に滴下する。反応液中の触媒濃度は滴下に伴って徐々に増加する。反応初期段階では触媒濃度は低いので、前記チオフェン系化合物が穏やかに化学重合し、ポリチオフェン系導電性高分子が形成される。前記反応液において、ポリチオフェン系導電性高分子にポリアニオンが自然にドープされ、ポリチオフェン系導電性高分子とポリアニオンからなる導電性複合体が形成される。本態様の製造方法によって形成された導電性複合体の水分散性及び保存安定性は、従来の酸化剤を滴下する方法に比べて向上している。このメカニズムの詳細は未解明であるが、反応初期において穏やかに重合反応が進むことが要因であると考えられる。
【0013】
反応液中で形成された導電性複合体に含まれる、ポリチオフェン系導電性高分子:ポリアニオンの含有比(質量基準)は、前記反応液中に重合開始直前に含まれていた前記チオフェン系化合物の含有量と、前記ポリアニオンの含有量の比率と概ね同じである。つまり、前記反応液中に配合したモノマーとポリアニオンの含有比が、形成した導電性複合体におけるポリチオフェン系導電性高分子とポリアニオンの含有比に反映される。
【0014】
前記反応液に配合する前記チオフェン系化合物:前記ポリアニオンの含有比は、質量基準で(1.0:2.0)~(1.0:5.0)が好ましく、(1.0:2.0)~(1.0:4.0)がより好ましく、(1.0:2.5)~(1.0:3.5)がさらに好ましい。上記範囲であると、水分散性に優れた導電性高分子分散液を形成することができる。
【0015】
前記反応液に配合する前記チオフェン系化合物と前記ポリアニオンの合計濃度は、前記反応液の総質量に対して2.5~10.0質量%が好ましく、2.5~8.0質量%がより好ましく、2.5~6.0質量%がさらに好ましい。上記下限値以上であると導電性複合体の製造効率(1回の反応における製造量)が高まる。上記上限値以下であると、保存安定性がより優れた導電性高分子分散液が得られる。
【0016】
前記混合液に触媒水溶液を滴下する前において、前記混合液に予め配合する前記酸化剤の濃度は、前記混合液の総質量に対して0.5~10.0質量%が好ましく、1.0~6.0質量%がより好ましく、1.5~4.0質量%がさらに好ましい。上記下限値以上であると重合反応を比較的短時間で完了できる。上記上限値以下であると、保存安定性がより優れた導電性高分子分散液が得られる。
なお、前記触媒水溶液を滴下する前の前記混合液には、触媒となる鉄化合物が予め含まれていないことが好ましい。これにより、触媒水溶液の滴下によって反応液中の触媒濃度を徐々に上昇させ、穏やかに重合反応を進行させることができる。
【0017】
前記混合液に滴下する前記触媒水溶液に含まれる前記鉄化合物の濃度は、前記触媒水溶液の総質量に対して0.1~5.0質量%が好ましく、0.2~2.5質量%がより好ましく、0.3~1.5質量%がさらに好ましい。上記下限値以上であると重合反応を比較的短時間で完了できる。上記上限値以下であると、保存安定性がより優れた導電性高分子分散液が得られる。
【0018】
前記酸化剤の種類は、前記チオフェン系化合物を化学重合させられるものであり、前記鉄化合物の触媒作用により分解してラジカルを発生しうるものであれば、特に制限されない。前記酸化剤は分子中に「-SO2-O-O-」で表される過酸構造を有するものが好ましい。具体的には、ペルオキソ二硫酸又はその塩、ペルオキソ一硫酸又はその塩が好ましい。ここで塩は、ナトリウムやカリウム等のカウンターカチオンを有するものである。
前記混合液に配合される前記酸化剤の種類は1種類であってもよいし、2種類以上であってもよい。
【0019】
前記鉄化合物の種類は、前記酸化剤を分解してラジカルの発生を触媒するものであれば、特に制限されない。この触媒作用を高める観点から、前記鉄化合物は第二鉄化合物であることが好ましい。一般に第二鉄化合物における鉄は3価(Fe3+)である。具体的には、硫酸鉄(III)、硝酸鉄(III)、クエン酸鉄(III)、クエン酸鉄アンモニウム等が好ましい鉄化合物として挙げられる。
前記触媒水溶液に配合される前記酸化剤の種類は1種類であってもよいし、2種類以上であってもよい。
なお、前記触媒水溶液に前記酸化剤を配合しても構わないが、保存安定性の向上及び初期粘度(保存前の粘度)を低減する観点から、前記触媒水溶液には酸化剤を含有させないことが好ましい。
【0020】
前記混合液に前記触媒水溶液を徐々に滴下する方法は特に制限されず、例えば定量ポンプを用いる方法が挙げられる。前記混合液に前記触媒水溶液を滴下する時間は、滴下開始から滴下完了まで、例えば、0.1~10時間程度が好ましく、0.5~7.5時間がより好ましく、1.0~5.0時間がさらに好ましい。上記下限値以上であると、反応液中の重合反応を穏やかに進行させることができ、得られる導電性高分子分散液の保存安定性をより高めることができる。上記上限値以下であると、製造効率が高まる。
【0021】
前記混合液の体積V1と、前記触媒水溶液の体積V2(滴下する総体積)とのV1/V2で表される体積比は、2.0~30.0が好ましく、2.5~20.0がより好ましく、3.0~15.0がさらに好ましく、4.0~10.0が最も好ましい。上記範囲であると、初期粘度が低く、保管後粘度の上昇も抑制され、形成する導電層の導電性が良好な導電性高分子分散液が得られ易い。なお、前記反応液の体積はV1とV2の和である。
【0022】
前記触媒水溶液の滴下完了後、前記反応液を攪拌しながら重合反応を完了させることが好ましい。前記反応液の攪拌時の温度は、10~40℃が好ましく10~30℃がより好ましく、10~20℃がさらに好ましい。前記反応液の攪拌の時間は、1~20時間が好ましく、3~12時がより好ましい。上記範囲であると、穏やかに重合反応を継続し、初期粘度が低く、保管後粘度の上昇も抑制され、形成する導電層の導電性が良好な導電性高分子分散液が得られ易い。
【0023】
(チオフェン系化合物)
前記混合液に配合するチオフェン系化合物は、重合してポリチオフェン系導電性高分子を形成するモノマーである。ポリチオフェン系導電性高分子の主鎖は、π共役系を構成している。
ポリチオフェン系導電性高分子としては、ポリチオフェン、ポリ(3-メチルチオフェン)、ポリ(3-エチルチオフェン)、ポリ(3-プロピルチオフェン)、ポリ(3-ブチルチオフェン)、ポリ(3-ヘキシルチオフェン)、ポリ(3-ヘプチルチオフェン)、ポリ(3-オクチルチオフェン)、ポリ(3-デシルチオフェン)、ポリ(3-ドデシルチオフェン)、ポリ(3-オクタデシルチオフェン)、ポリ(3-ブロモチオフェン)、ポリ(3-クロロチオフェン)、ポリ(3-ヨードチオフェン)、ポリ(3-シアノチオフェン)、ポリ(3-フェニルチオフェン)、ポリ(3,4-ジメチルチオフェン)、ポリ(3,4-ジブチルチオフェン)、ポリ(3-ヒドロキシチオフェン)、ポリ(3-メトキシチオフェン)、ポリ(3-エトキシチオフェン)、ポリ(3-ブトキシチオフェン)、ポリ(3-ヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3-ヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3-オクチルオキシチオフェン)、ポリ(3-デシルオキシチオフェン)、ポリ(3-ドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3-オクタデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジヒドロキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジメトキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジエトキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジプロポキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジブトキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジオクチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4-プロピレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ブチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-メトキシチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-エトキシチオフェン)、ポリ(3-カルボキシチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシエチルチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシブチルチオフェン)が挙げられる。
これらのポリチオフェン系導電性高分子のなかでも、導電性、透明性、耐熱性に優れることから、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)が特に好ましい。
前記混合液に配合するチオフェン系化合物は、1種類でもよいし、2種類以上でもよい。
【0024】
(ポリアニオン)
前記混合液に配合するポリアニオンは、アニオン基を有するモノマー単位を、分子内に2つ以上有する重合体である。このポリアニオンのアニオン基は、ポリチオフェン系導電性高分子に対するドーパントとして機能して、ポリチオフェン系導電性高分子の導電性を向上させる。
ポリアニオンのアニオン基としては、スルホ基、またはカルボキシ基であることが好ましい。
このようなポリアニオンの具体例としては、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、スルホ基を有するポリアクリル酸エステル、スルホ基を有するポリメタクリル酸エステル(例えば、ポリ(4-スルホブチルメタクリレート、ポリスルホエチルメタクリレート、ポリメタクリロイルオキシベンゼンスルホン酸)、ポリ(2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸)、ポリイソプレンスルホン酸等のスルホ基を有する高分子や、ポリビニルカルボン酸、ポリスチレンカルボン酸、ポリアリルカルボン酸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリ(2-アクリルアミド-2-メチルプロパンカルボン酸)、ポリイソプレンカルボン酸等のカルボキシ基を有する高分子が挙げられる。ポリアニオンは、単一のモノマーが重合した単独重合体であってもよいし、2種以上のモノマーが重合した共重合体であってもよい。
これらポリアニオンのなかでも、導電性をより高くできることから、スルホ基を有する高分子が好ましく、ポリスチレンスルホン酸がより好ましい。
前記混合液に配合するポリアニオンは、1種でもよいし、2種以上でもよい。
【0025】
ポリアニオンの重量平均分子量Mwは2万以上100万以下であることが好ましく、5万以上80万以下であることがより好ましい。
重量平均分子量Mwが上記の好適な範囲であると、本態様の導電性高分子分散液の保存安定性がより向上する。
重量平均分子量Mwは、ゲルろ過クロマトグラフィを用いて測定し、プルラン換算で求めた質量基準の平均分子量である。
【0026】
ポリチオフェン系導電性高分子にドープしたポリアニオンにおいては、一部のアニオン基がポリチオフェン系導電性高分子にドープせず、ドープに関与しない余剰のアニオン基を有する。この余剰のアニオン基は親水基であるため、導電性複合体は水分散性が高く、有機溶剤分散性が低い。
ポリアニオンが有する全てのアニオン基の個数を100モル%としたとき、余剰のアニオン基は、30モル%以上90モル%以下が好ましく、45モル%以上75モル%以下がより好ましい。
【0027】
[導電性複合体]
前記混合液にポリアニオンが予め配合されているので、重合反応で形成されたポリチオフェン系導電性高分子に対してポリアニオンが自然にドープして、導電性を有する導電性複合体を形成する。
【0028】
導電性複合体中の、ポリアニオンの含有割合は、ポリチオフェン系導電性高分子100質量部に対して1質量部以上1000質量部以下の範囲が好ましく、10質量部以上700質量部以下がより好ましく、100質量部以上500質量部以下がさらに好ましい。ポリアニオンの含有割合が前記下限値以上であれば、ポリチオフェン系導電性高分子へのドーピング効果が強くなる傾向にあり、導電性がより高くなる。一方、ポリアニオンの含有量が前記上限値以下であれば、ポリチオフェン系導電性高分子の相対的な割合を多くできるので、導電性を確保できる。
【0029】
以上の方法により、前記反応液における重合反応が終了すると、当該反応液が目的の導電性高分子分散液となる。前記尾反応液におけるモノマーの含有量をガスクロマトグラフィー等で測定し、モノマーの存在が実質的に確認されない程度であることが、重合反応の終了の目安として好ましい。
【0030】
重合反応終了後の導電性高分子分散液(反応液)には、添加した触媒及び酸化剤の分解物等が残留しているので、導電性高分子分散液の使用前にこれらを除去することが好ましい場合がある。除去する方法としては、例えば、イオン交換樹脂に導電性高分子分散液を接触させ、触媒及び酸化剤をイオン交換樹脂に吸着させる方法、導電性高分子分散液を限外ろ過することにより分散媒の置換とともに除去する方法等が挙げられる。このうち、イオン交換樹脂を使用する方法が簡便であるため好ましい。前記イオン交換樹脂は、陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂を併用することが好ましい。
【0031】
導電性高分子分散液を高圧ホモジナイザー等の常法により分散処理してもよい。
【0032】
導電性高分子分散液の総質量に対する導電性複合体の含有量としては、0.01質量%以上5.0質量%以下が好ましく、1.0質量%以上4.0質量%以下がより好ましく、1.5質量%以上3.0質量%以下がさらに好ましい。
上記範囲の下限値以上であると、導電性高分子分散液が硬化してなる導電層の導電性をより向上させることができる。
上記範囲の上限値以下であると、導電性高分子分散液における導電性複合体の分散性を高め、保存安定性をより一層高めることができる。
【0033】
導電性高分子分散液の23℃における粘度は、前記導電性高分子分散液の総質量に対する前記導電性複合体の濃度を1.8質量%に調整した時に、90mPa・s以下が好ましく、70mPa・s以下がより好ましく、50mPa・s以下がさらに好ましい。上記粘度の下限値は特に制限されず、目安として1mPa・s以上が挙げられる。このような好適な範囲の粘度であると、キャパシタの製造に用いれば、固体電解質の製造が容易となり、キャパシタ性能を高められる。
上記粘度の測定の際、前記導電性高分子分散液に含まれる分散媒はイオン交換水のみであることが好ましい。また、前記導電性複合体以外の添加剤を含まないことが好ましい。
上記粘度の測定は、音叉振動式粘度計を用い、JIS Z8803:2011(振動粘度計による粘度測定法)に準拠して、23℃で測定された値である。
【0034】
導電性高分子分散液の基材に対する濡れ性を高める観点から、導電性高分子分散液に水溶性有機溶剤を添加してもよい。水溶性有機溶剤を添加した導電性高分子分散液をコーティング組成物(塗料)と呼ぶことがある。
【0035】
≪コーティング組成物(塗料)≫
コーティング組成物は、水と、第一態様の製造方法で得た導電性複合体と、水溶性有機溶剤とを含む。水と水溶性有機溶剤の混合媒を水系分散媒ということがある。
【0036】
水溶性有機溶剤は、20℃の水100gに対する溶解量が1g以上の有機溶剤である。
水溶性有機溶剤としては、例えば、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤、ケトン系溶剤、窒素原子含有溶剤、エステル系溶剤等が挙げられる。
アルコール系溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール(イソプロパノール)、2-メチル-2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、2-メチル-1-プロパノール、アリルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。
エーテル系溶剤としては、例えば、ジエチルエーテル、ジメチルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル等が挙げられる。
ケトン系溶剤としては、例えば、ジエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、ジイソプロピルケトン、メチルエチルケトン、アセトン、ジアセトンアルコール等が挙げられる。
窒素原子含有溶剤としては、例えば、N-メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。
水溶性有機溶剤は1種のみが含まれていてもよいし、2種以上が含まれていてもよい。
コーティング組成物の基材に対する塗工性が良好になることから、水溶性有機溶剤としてはアルコール系溶剤又はケトン系溶剤が好ましく、アルコール系溶剤がより好ましい。
【0037】
水系分散媒の総質量に対する水溶性有機溶剤の含有量は、30~70質量%が好ましく、40~60質量%以上がより好ましい。また、水系分散媒の総質量に対する水の含有量は、70~30質量%が好ましく、60~40質量%以下がより好ましい。
上記の好適な範囲であると、コーティング組成物における導電性複合体の分散安定性の経時的な低下を抑制しつつ、基材に対する濡れ性を向上させることができる。
【0038】
コーティング組成物の総質量に対する、前記導電性複合体の含有量は、例えば、0.1~2.5質量%が好ましく、0.3~2.0質量%がより好ましく、0.5~1.5質量%がさらに好ましい。上記範囲であると、コーティング組成物における導電性複合体の分散安定性の経時的な低下を抑制することができ、良好な導電性の導電層等を形成することができる。
【0039】
(ポリオール化合物)
コーティング組成物は1種以上のポリオール化合物をさらに含んでもよい。ここで、ポリオール化合物は、2つ以上のヒドロキシ基を有する化合物をいう。ポリオール化合物を含有することにより、導電性高分子分散液が硬化してなる導電層の導電性を高めたり、キャパシタの固体電解質層において等価直列抵抗を低減したりすることができる。
【0040】
ポリオール化合物としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン及びトリメチロールエタンから選択される1種以上が挙げられる。
【0041】
コーティング組成物に含まれるポリオール化合物の含有量は、導電性複合体100質量部に対して、例えば、100質量部以上10000質量部以下が好ましく、200質量部以上2000質量部以下がより好ましく、300質量部以上1000質量部以下がさらに好ましい。上記範囲であると、上述の効果がより一層得られる。
【0042】
コーティング組成物の総質量に対するポリオール化合物の含有量は、例えば、1~20質量%が好ましく、2~10質量%がより好ましく、3~8質量%がさらに好ましい。
上記範囲であると、コーティング組成物の塗工性が向上し、上述の効果がより一層得られる。
【0043】
(その他の添加剤)
前記コーティング組成物及び前記導電性高分子分散液には、公知のその他の添加剤が含まれてもよい。
添加剤としては、例えば、界面活性剤、無機導電剤、消泡剤、カップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などを使用できる。
界面活性剤としては、ノニオン系、アニオン系、カチオン系の界面活性剤が挙げられるが、保存安定性の面からノニオン系が好ましい。また、ポリビニルピロリドンなどのポリマー系界面活性剤を添加してもよい。
無機導電剤としては、金属イオン類、導電性カーボン等が挙げられる。なお、金属イオンは、金属塩を水に溶解させることにより生成させることができる。
消泡剤としては、シリコーン樹脂、ポリジメチルシロキサン、シリコーンオイル等が挙げられる。
カップリング剤としては、ビニル基又はアミノ基を有するシランカップリング剤等が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリシレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、オキサニリド系紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系紫外線吸収剤、ベンゾエート系紫外線吸収剤等が挙げられる。
上記添加剤を含有する場合、その含有割合は、添加剤の種類に応じて適宜決められるが、例えば、導電性複合体の100質量部に対して、0.001質量部以上5質量部以下の範囲とすることができる。
【0044】
≪導電性積層体の製造方法≫
本発明の第二態様は、第一態様の製造方法により導電性高分子分散液を得る工程と、前記導電性高分子分散液を、基材の少なくとも一部の面に塗工し、導電層を形成する工程とを含む、導電性積層体の製造方法である。
【0045】
導電性高分子分散液を基材の任意の面に塗工(塗布)する方法としては、例えば、グラビアコーター、ロールコーター、カーテンフローコーター、スピンコーター、バーコーター、リバースコーター、キスコーター、ファウンテンコーター、ロッドコーター、エアドクターコーター、ナイフコーター、ブレードコーター、キャストコーター、スクリーンコーター等のコーターを用いた方法、エアスプレー、エアレススプレー、ローターダンプニング等の噴霧器を用いた方法、ディップ等の浸漬方法等を適用することができる。
【0046】
導電性高分子分散液の基材への塗布量は特に制限されないが、例えば、不揮発成分として、0.01~10.0g/m2の範囲が好ましい。
【0047】
基材上に塗工した導電性高分子分散液からなる塗膜を乾燥させて、分散媒の少なくとも一部を除去し、硬化させることにより、導電層を形成することができる。
塗膜を乾燥する方法としては、加熱乾燥、真空乾燥等が挙げられる。加熱乾燥としては、例えば、熱風加熱や、赤外線加熱などの方法を採用できる。
加熱乾燥を適用する場合、加熱温度は、使用する分散媒に応じて適宜設定されるが、通常は、50℃以上200℃以下の範囲内である。ここで、加熱温度は、乾燥装置の設定温度である。上記加熱温度の範囲における好適な乾燥時間としては、0.5分以上30分以下が好ましく、1分以上15分以下がより好ましい。
【0048】
<導電性積層体>
第二態様の製造方法で得た導電性積層体は、基材と、前記基材の少なくとも一部の面に形成された、第一態様の導電性高分子分散液の硬化物からなる導電層とを備える。
【0049】
[導電層]
前記導電層の形成範囲は、基材が有する任意の面の全体でもよいし、一部でもよい。導電性フィルムにおいては、フィルム基材の一方の面又は他方の面のほぼ全体にほぼ均一な厚さの導電層が形成されていることが好ましい。基材が有する面の一部のみに導電層が形成されている場合、例えば、当該導電層は回路や電極などの微細な導電パターンであってもよいし、導電層が設けられた領域と設けられていない領域とが同じ面に存在して大まかに区分けされただけであってもよい。
【0050】
前記導電層の平均厚みとしては、例えば、10nm以上100μm以下が好ましく、20nm以上50μm以下がより好ましく、30nm以上30μm以下がさらに好ましい。
導電層の平均厚さが前記下限値以上であれば、高い導電性を発揮でき、前記上限値以下であれば、導電層の基材に対する密着性がより向上する。
【0051】
[基材]
前記基材は、絶縁性材料からなる基材であってもよいし、導電性材料からなる基材であってもよい。基材の形状は特に制限されず、例えば、フィルム、基板等の平面を主体とする形状が挙げられる。
絶縁性材料としては、ガラス、合成樹脂、セラミックス等が挙げられる。
導電性材料としては、金属、導電性金属酸化物、カーボン等が挙げられる。
【0052】
(フィルム基材)
前記基材としてフィルム基材を用いると、導電性積層体は導電性フィルムとなる。
前記フィルム基材としては、例えば、合成樹脂からなるプラスチックフィルムが挙げられる。前記合成樹脂としては、例えば、エチレン-メチルメタクリレート共重合樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリフッ化ビニリデン、ポリアリレート、スチレン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリイミド、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネートなどが挙げられる。
フィルム基材と導電層との密着性を高める観点から、フィルム基材用の合成樹脂はポリエステル樹脂であることが好ましく、なかでも、ポリエチレンテレフタレートが好ましい。
【0053】
フィルム基材用の合成樹脂は、非晶性でもよいし、結晶性でもよい。
フィルム基材は、未延伸のものでもよいし、延伸されたものでもよい。
フィルム基材には、前記導電層の密着性をさらに向上させるために、コロナ放電処理、プラズマ処理、火炎処理等の表面処理が施されてもよい。
【0054】
フィルム基材の平均厚みは、5μm以上500μm以下が好ましく、20μm以上200μm以下がより好ましい。フィルム基材の平均厚みが前記下限値以上であれば、破断しにくくなり、前記上限値以下であれば、フィルムとして充分な可撓性を確保できる。
フィルム基材の平均厚みは、無作為に選択される10箇所について厚さを測定し、その測定値を平均した値である。
【0055】
(ガラス基材)
ガラス基材としては、例えば、無アルカリガラス基材、ソーダ石灰ガラス基材、ホウケイ酸ガラス基材、石英ガラス基材等が挙げられる。基材にアルカリ成分が含まれると、導電層の導電性が低下する傾向にあるため、前記ガラス基材のなかでも、無アルカリガラスが好ましい。ここで、無アルカリガラスとは、アルカリ成分の含有量がガラス組成物の総質量に対し、0.1質量%以下のガラス組成物のことである。
【0056】
ガラス基材の平均厚みとしては、100μm以上3000μm以下が好ましく、100μm以上1000μm以下がより好ましい。ガラス基材の平均厚みが前記下限値以上であれば、破損しにくくなり、前記上限値以下であれば、導電性積層体の薄型化に寄与できる。
ガラス基材の平均厚みは、無作為に選択される10箇所について厚さを測定し、その測定値を平均した値である。
【0057】
≪キャパシタの製造方法≫
本発明の第三態様は、第一態様の製造方法により導電性高分子分散液を得る工程と、弁金属の多孔質体からなる陽極の表面に形成された誘電体層の表面に、前記導電性高分子分散液を塗布し、乾燥させて固体電解質層を形成する工程を有する、キャパシタの製造方法である。
【0058】
本態様のキャパシタの製造方法は、弁金属の多孔質体からなる陽極の表面を酸化して誘電体層を形成する工程(誘電体形成工程)と、前記誘電体層に対向する位置に陰極を配置する工程(陰極形成工程)と、前記誘電体層の表面の少なくとも一部に固体電解質層を形成する工程(成膜工程)と、を含むことが好ましい。以下、
図1を参照して各工程を説明する。
【0059】
[誘電体形成工程]
本工程では、弁金属の多孔質体からなる陽極11の表面を酸化して誘電体層12を形成する。誘電体層12を形成する方法は、特に制限されず、例えば、アジピン酸アンモニウム水溶液、ホウ酸アンモニウム水溶液、リン酸アンモニウム水溶液などの化成処理用電解液中にて、陽極11の表面を陽極酸化する方法が挙げられる。
【0060】
[陰極形成工程]
本工程では、誘電体層12に対向する位置に陰極13を配置する。陰極13の配置方法は、特に制限されず、例えば、カーボンペースト、銀ペースト等の導電性ペーストを用いて陰極13を形成する方法、アルミニウム箔等の金属箔を誘電体層12に対向配置させる方法などが挙げられる。
【0061】
[成膜工程]
本工程は、誘電体層12の表面の少なくとも一部に前述の導電性高分子分散液を塗布し、乾燥させることにより、固体電解質層14を形成する。
【0062】
導電性高分子分散液の塗布方法としては、例えば、浸漬(ディップコーティング)、コンマコーティング、リバースコーティング、リップコーティング、マイクログラビアコーティング等を適用することができる。これらのうち、陽極11を減圧下で導電性高分子分散液中に浸漬する方法が好ましい。浸漬方法であると、誘電体層12の表面の多孔質構造の内部にまで導電性高分子分散液を充分に塗布することができる。浸漬後に取り出して次の乾燥処理に進む。
【0063】
乾燥方法としては、例えば室温乾燥、熱風乾燥、遠赤外線乾燥等が挙げられる。これらの中でも熱風乾燥が好ましい。
乾燥温度としては、例えば100~180℃が好ましく、120~150℃がより好ましい。乾燥時間としては、例えば0.2~1時間が好ましい。
乾燥処理の後、常法によりキャパシタを組み立てればよい。
【0064】
≪キャパシタ≫
本発明の第四態様は、弁金属の多孔質体からなる陽極と、前記弁金属の酸化物からなる誘電体層と、前記誘電体層の、前記陽極と反対側に設けられた導電物質製の陰極と、前記誘電体層及び前記陰極の間に形成された固体電解質層とを具備し、前記固体電解質層が第一態様の製造方法で得た導電性高分子分散液の硬化物を含む。
第四態様のキャパシタは、第三態様の製造方法によって製造することができる。
【0065】
第四態様の実施形態の一例について
図1を参照して説明する。
図1に示すキャパシタ10は、弁金属の多孔質体からなる陽極11と、弁金属の酸化物からなる誘電体層12と、誘電体層12の表面に形成された固体電解質層14と、最も表側に設けられた陰極13とを具備する。陰極13は誘電体層12及び固体電解質層14を間に挟んで、陽極11と反対側に設けられている。
【0066】
陽極11を構成する弁金属としては、例えば、アルミニウム、タンタル、ニオブ、チタン、ハフニウム、ジルコニウム、亜鉛、タングステン、ビスマス、アンチモンなどが挙げられる。これらのうち、アルミニウム、タンタル、ニオブが好適である。
陽極11の具体例としては、アルミニウム箔をエッチングして表面積を増加させた後、その表面を酸化処理したものや、タンタル粒子やニオブ粒子の焼結体表面を酸化処理してペレットにしたものが挙げられる。このように処理されたものは表面に凹凸が形成された多孔質体となる。
【0067】
本実施形態における誘電体層12は、陽極11の表面が酸化されて形成された層であり、例えば、アジピン酸アンモニウム水溶液などの電解液中にて、金属体の陽極11の表面を陽極酸化することで形成されたものである。陽極11と同様に誘電体層12にも凹凸が形成されている。
【0068】
本実施形態における陰極13としては、導電性ペーストから形成した導電層やアルミニウム箔など、導電物質製の金属層を使用することができる。
【0069】
本実施形態における固体電解質層14は、誘電体層12の表面に形成されている。固体電解質層14は、誘電体層12の表面の少なくとも一部を覆っており、誘電体層12の表面の全部を覆っていてもよい。
固体電解質層14の厚さは、一定でもよいし、一定でなくてもよく、例えば、1μm以上100μm以下の厚さが挙げられる。
【0070】
[電解液]
本態様のキャパシタは、固体電解質層を含浸する電解液を有していてもよい。
電解液を構成する溶媒としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、グリセリン等のアルコール系溶媒、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、δ-バレロラクトン等のラクトン系溶媒、スルホラン、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン等の硫黄系溶媒、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルアセトアミド、N-メチルピロリジノン等のアミド系溶媒、アセトニトリル、3-メトキシプロピオニトリル等のニトリル系溶媒、水等が挙げられる。
電解液を構成する電解質としては、例えば、アジピン酸、グルタル酸、コハク酸、安息香酸、イソフタル酸、フタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、トルイル酸、エナント酸、マロン酸、蟻酸、1,6-デカンジカルボン酸、5,6-デカンジカルボン酸等のデカンジカルボン酸、1,7-オクタンジカルボン酸等のオクタンジカルボン酸、アゼライン酸、セバシン酸等の有機酸;あるいは、硼酸、硼酸と多価アルコールより得られる硼酸の多価アルコール錯化合物;リン酸、炭酸、ケイ酸等の無機酸などをアニオン成分とし、1級アミン(メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、エチレンジアミン等)、2級アミン(ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、メチルエチルアミン、ジフェニルアミン等)、3級アミン(トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリフェニルアミン、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセン-7等)、テトラアルキルアンモニウム(テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、メチルトリエチルアンモニウム、ジメチルジエチルアンモニウム等)などをカチオン成分とした電解質;等が挙げられる。
【0071】
本態様のキャパシタは、上記の構成に限らず、誘電体層と陰極との間に、セパレータが設けられていてもよい。誘電体層と陰極との間にセパレータが設けられたキャパシタとしては、巻回型キャパシタが挙げられる。
セパレータとしては、例えば、セルロース、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリイミド、ポリアミド、ポリフッ化ビニリデンなどからなるシート(不織布を含む)、ガラス繊維の不織布などが挙げられる。
セパレータの密度は、例えば0.1g/cm3以上1.0g/cm3以下が挙げられる。
セパレータを設ける場合には、セパレータにカーボンペーストあるいは銀ペーストを含浸させて陰極を形成する方法を適用することもできる。
【実施例0072】
[ポリアニオンの準備]
原料としてシグマアルドリッチ社製の重量平均分子量200,000のポリ(4-スチレンスルホン酸ナトリウム)水溶液(濃度30%)を用いた。
まず、ポリ(4-スチレンスルホン酸ナトリウム)の水溶液にイオン交換水を加えて固形分濃度15wt%の均一な水溶液に調整し、pHが1未満になるまで陽イオン交換樹脂を加えた。その後、ステンレスメッシュフィルターで陽イオン交換樹脂を濾別し、イオン交換水で固形分濃度を10wt%に調整して、ポリスチレンスルホン酸水溶液(PSS水溶液)を得た。
【0073】
[チオフェン系化合物の準備]
市販の3,4-エチレンジオキシチオフェン(東京化成工業社製)を購入し、反応に使用する前に減圧蒸留により精製した。
【0074】
[実施例1]
1000mlの三ツ口フラスコに91gのPSS水溶液と100gのイオン交換水と7.09gのペルオキソ二硫酸ナトリウム(純正化学社製)を加え、流量1L/分の窒素で10分間バブリングし、窒素雰囲気下で撹拌して25℃に保った。この溶液に、蒸留精製した3.5gの3,4-エチレンジオキシチオフェンを加え、さらに1時間撹拌した。この溶液に、定量ポンプを用いて49.6gの硫酸鉄(III)七水和物(硫酸第二鉄、富士フイルム和光純薬社製)の1wt%水溶液を2時間かけて添加した。その後、25℃で3時間撹拌して反応させ、導電性高分子であるPEDOT-PSSを合成した。この反応において、チオフェン化合物とポリアニオンの固形分濃度の和は5.0wt%であった。また、前記混合液の体積V1と、前記触媒水溶液の体積V2との比(V1/V2)は、約4であった。
この反応溶液に100gのイオン交換水と、100gの陽イオン交換樹脂(住化ケムテックス社製デュオライトC255LFH、交換容量2.0eq/L)と、100gの陰イオン交換樹脂(住化ケムテックス社製デュオライトA368MS、交換容量1.7eq/L)を加え、30分間撹拌した。ステンレスメッシュフィルターでイオン交換樹脂を濾別し、高圧湿式微粒化装置を用いて分散処理を行い、固形分濃度3.2wt%の導電性高分子分散液を得た。この導電性高分子分散液にイオン交換水を加えて、固形分濃度1.8wt%に調整した。
【0075】
[実施例2]
1000mlの三ツ口フラスコに91gのPSS水溶液と200gのイオン交換水と7.09gのペルオキソ二硫酸ナトリウムを加え、流量1L/分の窒素で10分間バブリングし、窒素雰囲気下で撹拌して25℃に保った。この溶液に、蒸留精製した3.5gの3,4-エチレンジオキシチオフェンを加え、さらに1時間撹拌した。この溶液に、定量ポンプを用いて29.9gの硝酸鉄(III)九水和物(富士フイルム和光純薬社製)の1wt%水溶液を15分かけて添加した。その後、25℃で3時間撹拌して反応させ、導電性高分子であるPEDOT-PSSを合成した。この反応において、チオフェン化合物とポリアニオンの固形分濃度の和は3.8wt%であった。また、前記混合液の体積V1と、前記触媒水溶液の体積V2との比(V1/V2)は、約10であった。
この反応溶液に100gのイオン交換水と、100gの陽イオン交換樹脂と、100gの陰イオン交換樹脂を加え、30分間撹拌した。ステンレスメッシュフィルターでイオン交換樹脂を濾別し、高圧湿式微粒化装置を用いて分散処理を行い、固形分濃度2.5wt%の導電性高分子分散液を得た。この導電性高分子分散液にイオン交換水を加えて、固形分濃度1.8wt%に調整した。
【0076】
[実施例3]
1000mlの三ツ口フラスコに91gのPSS水溶液と300gのイオン交換水と7.09gのペルオキソ二硫酸ナトリウムを加え、空気雰囲気下で撹拌して15℃に保った。この溶液に、蒸留精製した3.5gの3,4-エチレンジオキシチオフェンを加え、さらに1時間撹拌した。この溶液に、定量ポンプを用いて60.8gのクエン酸鉄(III)(富士フイルム和光純薬社製)の0.5wt%水溶液を4時間かけて添加した。その後、15℃で10時間撹拌して反応させ、導電性高分子であるPEDOT-PSSを合成した。この反応において、チオフェン化合物とポリアニオンの固形分濃度の和は2.7wt%であった。また、前記混合液の体積V1と、前記触媒水溶液の体積V2との比(V1/V2)は、約7であった。
この反応溶液に100gのイオン交換水と、100gの陽イオン交換樹脂と、100gの陰イオン交換樹脂を加え、30分間撹拌した。ステンレスメッシュフィルターでイオン交換樹脂を濾別し、高圧湿式微粒化装置を用いて分散処理を行い、固形分濃度1.9wt%の導電性高分子分散液を得た。この導電性高分子分散液にイオン交換水を加えて、固形分濃度1.8wt%に調整した。
【0077】
[実施例4]
1000mlの三ツ口フラスコに91gのPSS水溶液と45gのイオン交換水と7.09gのペルオキソ二硫酸ナトリウムを加え、流量1L/分の窒素で10分間バブリングし、窒素雰囲気下で撹拌して25℃に保った。この溶液に、蒸留精製した3.5gの3,4-エチレンジオキシチオフェンを加え、さらに1時間撹拌した。この溶液に、定量ポンプを用いて32.9gのクエン酸鉄アンモニウム(富士フイルム和光純薬社製)の1wt%水溶液を2時間かけて添加した。その後、25℃で3時間撹拌して反応させ、導電性高分子であるPEDOT-PSSを合成した。この反応において、チオフェン化合物とポリアニオンの固形分濃度の和は7.0wt%であった。また、前記混合液の体積V1と、前記触媒水溶液の体積V2との比(V1/V2)は、約5であった。
この反応溶液に200gのイオン交換水と、100gの陽イオン交換樹脂と、100gの陰イオン交換樹脂を加え、30分間撹拌した。ステンレスメッシュフィルターでイオン交換樹脂を濾別し、高圧湿式微粒化装置を用いて分散処理を行い、固形分濃度2.9wt%の導電性高分子分散液を得た。この導電性高分子分散液にイオン交換水を加えて、固形分濃度1.8wt%に調整した。
【0078】
[実施例5]
1000mlの三ツ口フラスコに91gのPSS水溶液と550gのイオン交換水と3.55gのペルオキソ二硫酸ナトリウムを加え、流量1L/分の窒素で10分間バブリングし、窒素雰囲気下で撹拌して25℃に保った。この溶液に、蒸留精製した3.5gの3,4-エチレンジオキシチオフェンを加え、さらに1時間撹拌した。この溶液に、定量ポンプを用いて29.9gの硝酸鉄(III)九水和物の1wt%水溶液を2時間かけて添加した。その後、25℃で6時間撹拌して反応させ、導電性高分子であるPEDOT-PSSを合成した。この反応において、チオフェン化合物とポリアニオンの固形分濃度の和は1.9wt%であった。また、前記混合液の体積V1と、前記触媒水溶液の体積V2との比(V1/V2)は、約22であった。
この反応溶液に、100gの陽イオン交換樹脂と、100gの陰イオン交換樹脂を加え、30分間撹拌した。ステンレスメッシュフィルターでイオン交換樹脂を濾別し、高圧湿式微粒化装置を用いて分散処理を行い、固形分濃度1.6wt%の導電性高分子分散液を得た。この導電性高分子分散液を減圧濃縮して、固形分濃度1.8wt%に調整した。
【0079】
[実施例6]
1000mlの三ツ口フラスコに91gのPSS水溶液と100gのイオン交換水と3.55gのペルオキソ二硫酸ナトリウムを加え、流量1L/分の窒素で10分間バブリングし、窒素雰囲気下で撹拌して25℃に保った。この溶液に、蒸留精製した3.5gの3,4-エチレンジオキシチオフェンを加え、さらに1時間撹拌した。この溶液とは別に、85gのイオン交換水に0.50gの硫酸第二鉄硫酸鉄(III)七水和物と3.55gのペルオキソ二硫酸ナトリウムを撹拌溶解した水溶液を作成し、定量ポンプを用いて2時間かけて上記溶液に添加した。その後、25℃で3時間撹拌して反応させ、導電性高分子であるPEDOT-PSSを合成した。この反応において、チオフェン化合物とポリアニオンの固形分濃度の和は4.5wt%であった。また、前記混合液の体積V1と、前記触媒水溶液の体積V2との比(V1/V2)は、約2であった。
この反応溶液に、100gの陽イオン交換樹脂と、100gの陰イオン交換樹脂を加え、30分間撹拌した。ステンレスメッシュフィルターでイオン交換樹脂を濾別し、高圧湿式微粒化装置を用いて分散処理を行い、固形分濃度3.1wt%の導電性高分子分散液を得た。この導電性高分子分散液を減圧濃縮して、固形分濃度1.8wt%に調整した。
【0080】
[比較例1]
1000mlの三ツ口フラスコに91gのPSS水溶液と100gのイオン交換水と0.5g硫酸鉄(III)七水和物を加え、流量1L/分の窒素で10分間バブリングし、窒素雰囲気下で撹拌して25℃に保った。この溶液に、蒸留精製した3.5gの3,4-エチレンジオキシチオフェンを加え、さらに1時間撹拌した。この溶液に、定量ポンプを用いて35.5gのペルオキソ二硫酸ナトリウムの20wt%水溶液を2時間かけて添加した。その後、25℃で撹拌して反応させたところ、2時間で反応液はゲル化してしまい、導電性高分子であるPEDOT-PSSは取得できなかった。
【0081】
[比較例2]
1000mlの三ツ口フラスコに91gのPSS水溶液と450gのイオン交換水と0.30gの硝酸鉄(III)九水和物を加え、流量1L/分の窒素で10分間バブリングし、窒素雰囲気下で撹拌して25℃に保った。この溶液に、蒸留精製した3.5gの3,4-エチレンジオキシチオフェンを加え、さらに1時間撹拌した。この溶液に、定量ポンプを用いて70.9gのペルオキソ二硫酸ナトリウムの10wt%水溶液を2時間かけて添加した。その後、25℃で3時間撹拌して反応させ、導電性高分子であるPEDOT-PSSを合成した。この反応において、チオフェン化合物とポリアニオンの固形分濃度の和は2.0wt%であった。
この反応溶液に、100gの陽イオン交換樹脂と、100gの陰イオン交換樹脂を加え、30分間撹拌した。ステンレスメッシュフィルターでイオン交換樹脂を濾別し、高圧湿式微粒化装置を用いて分散処理を行い、固形分濃度1.7wt%の導電性高分子分散液を得た。この導電性高分子分散液を減圧濃縮して、固形分濃度1.8wt%に調整した。
【0082】
[比較例3]
2000mlの三ツ口フラスコに91gのPSS水溶液と1000gのイオン交換水と0.5g硫酸鉄(III)七水和物を加え、流量1L/分の窒素で20分間バブリングし、窒素雰囲気下で撹拌して25℃に保った。この溶液に、蒸留精製した3.5gの3,4-エチレンジオキシチオフェンを加え、さらに1時間撹拌した。この溶液に、定量ポンプを用いて70.9gのペルオキソ二硫酸ナトリウムの10wt%水溶液を2時間かけて添加した。その後、25℃で3時間撹拌して反応させ、導電性高分子であるPEDOT-PSSを合成した。この反応において、チオフェン化合物とポリアニオンの固形分濃度の和は1.1wt%であった。
この反応溶液に、100gの陽イオン交換樹脂と、100gの陰イオン交換樹脂を加え、30分間撹拌した。ステンレスメッシュフィルターでイオン交換樹脂を濾別し、高圧湿式微粒化装置を用いて分散処理を行い、固形分濃度0.9wt%の導電性高分子分散液を得た。この導電性高分子分散液を減圧濃縮して、固形分濃度1.8wt%に調整した。
【0083】
【0084】
実施例1~6および比較例2~3で得られた導電性高分子分散液について、以下の方法で評価した。
【0085】
<粘度の評価>
各例で得られた固形分濃度1.8wt%の導電性高分子分散液の23℃における粘度を、振動式粘度計を用いて測定した。初期粘度の測定結果を表2に示す。
上記の粘度は、音叉振動式粘度計を用い、JIS Z8803:2011(振動粘度計による粘度測定法)に準拠して23℃で測定した値である。
【0086】
<保存安定性の評価>
各例で得られた導電性高分子分散液を40℃の温度下で10日間保管した後の粘度を測定した。保管後粘度の測定結果、および初期粘度との比による増加率(%)として計算した値を表2に示す。なお、増加率が低いほど粘度変化が少なく、保存安定性が良好であることを示す。
【0087】
<導電性の評価>
各例で得られた導電性高分子分散液50gに、0.01gのアセチレン系界面活性剤(日信化学工業社製、ダイノール604)と45gのメタノールと5gのエチレングリコールを加え、充分に混合してコーティング組成物を調整した。この塗料を、wet膜厚8μmのバーコーターを用いてポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ社製、ルミラーT60)に塗布し、乾燥温度100℃で1分間加熱乾燥することで導電性フィルムを得た。得られた導電性フィルムの表面抵抗値を、抵抗率計(日東精工アナリテック社製ロレスタ)を用い、印加電圧10Vの条件で測定した。結果を表2に示す。
【0088】
【0089】
以上から、本発明に係る実施例1~6の製造方法では、保存安定性が高い導電性高分子分散液が得られることが明かである。