(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155376
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】汚泥コンポスト化システム
(51)【国際特許分類】
C02F 11/02 20060101AFI20241024BHJP
C05F 7/00 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
C02F11/02 ZAB
C05F7/00 301C
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023070040
(22)【出願日】2023-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】000197746
【氏名又は名称】株式会社石垣
(72)【発明者】
【氏名】西原 康昭
【テーマコード(参考)】
4D059
4H061
【Fターム(参考)】
4D059AA03
4D059BA03
4D059BA22
4D059BE10
4D059BE15
4D059BE16
4D059BE26
4D059BE37
4D059BE55
4D059BE56
4D059CB06
4D059CC01
4D059DB32
4H061AA03
4H061EE51
4H061EE66
4H061GG12
4H061GG41
4H061GG43
4H061GG49
4H061GG54
(57)【要約】
【課題】菌体バイオマス生成槽内でバイオマスを菌体に浸漬して菌体バイオマスを生成し、生成された菌体バイオマスを汚泥及び凝集剤とともに混合撹拌して凝集した後、固液分離装置で脱水し、脱水汚泥を堆肥化することで、効率的に発酵汚泥を生成できる汚泥コンポスト化システムを提供する。
【解決手段】
凝集汚泥を固液分離して得られる脱水汚泥を発酵し、発酵汚泥を生成する汚泥コンポスト化システムにおいて、バイオマスを菌体に浸漬して菌体バイオマスを生成する菌体バイオマス生成槽9と、菌体バイオマスを汚泥及び凝集剤とともに混合撹拌して凝集汚泥を生成する凝集混和槽3と、凝集汚泥を固液分離して脱水汚泥を生成する固液分離装置16と、脱水汚泥を発酵して発酵汚泥を生成する堆肥化設備21と、を備えることで、菌体及びバイオマスが均一に取り込まれた脱水汚泥を生成でき、堆肥化設備21内での発酵効率を高めることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
凝集汚泥を固液分離して得られる脱水汚泥を発酵し、発酵汚泥を生成する汚泥コンポスト化システムにおいて、
バイオマスを菌体に浸漬して菌体バイオマスを生成する菌体バイオマス生成槽(9)と、
菌体バイオマスを汚泥及び凝集剤とともに混合撹拌して凝集汚泥を生成する凝集混和槽(3)と、
凝集汚泥を固液分離して脱水汚泥を生成する固液分離装置(16)と、
脱水汚泥を発酵して発酵汚泥を生成する堆肥化設備(21)と、
を備える
ことを特徴とする汚泥コンポスト化システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、菌体及びバイオマスを用いた汚泥コンポスト化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下水、し尿、あるいは食品生産加工排水等の有機性汚泥と高分子凝集剤を凝集混和槽内で混合撹拌した後、スクリュープレスや遠心脱水機、ベルトプレス等の固液分離装置で固液分離し、生成された脱水汚泥を発酵して堆肥を生成するコンポスト化技術は知られている。従来の方法で生成した脱水汚泥は含水量が多く、空隙を保つことが困難であり、そのままコンポスト化することが難しかった。そこで、発酵効率を高めるために、発酵工程の前段でおが屑やわら、もみ殻等の脱水助材(バイオマス)を添加して汚泥の水分量を調整するとともに空隙率を高めていた。
【0003】
特許文献1には、下水汚泥及び上水汚泥を剪定枝、バーク、大鋸屑等の木材廃棄物(バイオマス)と微生物(種菌)とともに混合した後、発酵して堆肥化するコンポスト化技術が開示してあり、脱水汚泥にバイオマス及び菌体を供給して発酵効率を高める技術は知られている。
【0004】
特許文献2には、家畜排泄物、し尿、生ゴミ、食品加工残渣等の繊維質を含む有機性残留物(バイオマス)と乳酸菌、酢酸菌、クエン酸菌等の微生物(菌体)をメタン発酵消化液と混合した後、凝集、脱水する技術が開示してあり、凝集前の汚泥にバイオマス及び菌体を供給する技術も公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4947673号公報
【特許文献2】特許第5112793号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、汚泥の発酵を促進させるために木質バイオマス等の副資材を脱水汚泥に供給して汚泥の水分量や空隙率を調整しているが、発酵工程直前で供給された副資材が汚泥に均一に混合されないまま発酵が行われるため、発酵効率が悪かった。
【0007】
特許文献1は、発効促進用の助材として、木材廃棄物(バイオマス)のみならず、微生物(種菌)も添加しているため、種菌用ホッパやコンベアに加え、汚泥と混合するための大型の混合機を設置する必要があった。また、バイオマス及び種菌は発酵槽前段の混合機内で汚泥と混合されるのみであり、汚泥との混練性を十分に高めることができなかった。加えて、汚泥及びバイオマスを混合することで固形物量が多い状態となるため、汚泥中に微生物(菌体)を拡散させることが難しかった。そして、汚泥はバイオマス及び種菌が均一に混合されていない状態で発酵槽に移送されるため発酵速度にばらつきが生じるとともに、発酵槽内での切り返し頻度が増加し、悪臭の発生や発酵時間が長期化するといった課題があった。
【0008】
特許文献2は、凝集工程前段でメタン発酵消化液に対して、有機性残留物(バイオマス)及び微生物(菌体)を添加する技術であるが、微生物(菌体)は凝集槽前段に設けた酸発酵槽内での発酵効率を高めるための種汚泥として添加されるものであり、脱水後に生成される脱水汚泥の発酵効率を高めるために添加するものではない。
【0009】
本発明は、凝集工程の前段で菌体とバイオマスを菌体バイオマス生成槽に供給して菌体が付着した菌体バイオマスを生成し、菌体バイオマスを汚泥及び凝集剤とともに混合撹拌して凝集した後、固液分離装置で脱水し、脱水汚泥を堆肥化する汚泥コンポスト化システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、凝集汚泥を固液分離して得られる脱水汚泥を発酵し、発酵汚泥を生成する汚泥コンポスト化システムにおいて、バイオマスを菌体に浸漬して菌体バイオマスを生成する菌体バイオマス生成槽と、菌体バイオマスを汚泥及び凝集剤とともに混合撹拌して凝集汚泥を生成する凝集混和槽と、凝集汚泥を固液分離して脱水汚泥を生成する固液分離装置と、脱水汚泥を発酵して発酵汚泥を生成する堆肥化設備と、を備えることで、菌体及びバイオマスが均一に取り込まれた脱水汚泥を生成できるため、堆肥化設備での発酵効率を高めることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、凝集工程の前段で液状の菌体にバイオマスを浸漬させて菌体バイオマスを生成し、生成された菌体バイオマスを凝集混和槽に供給することで、凝集混和槽内でバイオマスの浮上による汚泥の凝集不良を防止できる。そして、供給されたバイオマスが核となり、汚泥の凝集性が向上するため、強固な凝集汚泥を生成できるとともに凝集剤使用量を削減できる。また、凝集混和槽内で菌体バイオマスを汚泥とともに混合撹拌することで、汚泥との混練性が高まるため、堆肥化設備前段に大型の混合機の設置が不要となる。加えて、汚泥中に菌体及びバイオマスを均一に取り込むことができるため固液分離工程での脱水効率を高め、低含水率で通気性を改善した脱水汚泥を生成できる。この脱水汚泥を堆肥化設備に供給することで、短時間で均一な発酵汚泥を生成できるため発酵汚泥の切り返し作業頻度の低減及び悪臭発生の抑制も可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係る汚泥コンポスト化システムのフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は本発明に係る汚泥コンポスト化システムのフロー図であって、汚泥供給管1と凝集剤供給管2を凝集混和槽3に連結している。凝集混和槽3には汚泥供給管1から供給される汚泥と、凝集剤供給管2から供給される凝集剤(高分子凝集剤、無機凝集剤)を混合撹拌するための凝集撹拌装置4を設けている。
【0014】
本実施例では、凝集混和槽3に菌体及びバイオマスも添加している。菌体は、空気の存在する高温下で活発に活動する好気性高温菌であり、種類を問わず使用できる。好気性高温菌の一例として、光合成細菌や乳酸菌酵母を中心とした微生物の複合体であるYM菌(登録商標)が挙げられる。菌体は液状で保存されたものであり、菌体貯留槽5に接続した菌体供給管6を介して菌体バイオマス生成槽9に供給される。YM菌は、汚泥発酵促進効果を有するとともに有機廃棄物の消臭効果を有するため、後段で述べる固液分離装置16の悪臭抑制効果も奏する。
【0015】
一方、バイオマスは、多孔質で吸水性に富む木質バイオマスであり、バイオマス貯留槽7からバイオマス供給管8を介して菌体バイオマス生成槽9に供給される。木質バイオマスは、具体的には、流木、間伐材、木質廃材(製材の際に発生する樹皮、のこ屑、木屑や、建築物の解体材、剪定枝、バーク(樹皮))等が挙げられる。バイオマスは、そのままの状態では利用価値が低く、通常は廃棄物として処分されるものであるため、資源の再利用の観点から優れている。なお、バイオマスは竹などのセルロース系の繊維状物、食品系の茶粕、食物残渣等の植物性廃棄物を用いてもよい。また、必要に応じて、汚泥になじみやすい形状・性状となるように破砕処理等の前処理を施してもよい。
【0016】
菌体バイオマス生成槽9に供給された菌体及びバイオマスは、菌体バイオマス生成槽9に設けた菌体バイオマス撹拌装置10によって混合撹拌される。このとき、バイオマスは菌体に浸漬された状態であり、菌体がバイオマスに付着して菌体バイオマスが生成される。バイオマスは多数の微細孔を有しており、表面積が大きいため菌体の付着効率が高い。
【0017】
菌体バイオマス生成槽9で生成された菌体バイオマスは、菌体バイオマス生成槽9に接続したベルト式、スクリュー式等の菌体バイオマス供給装置11から菌体バイオマス供給管12を介して凝集混和槽3に供給される。なお、本実施形態では、菌体バイオマス生成槽9、菌体バイオマス供給装置11、菌体バイオマス供給管12からなる菌体バイオマス供給機13を用いて菌体バイオマスを供給するが、菌体バイオマス生成槽9に別途図示しないポンプを接続して菌体バイオマスを供給してもよい。また、液状の菌体とバイオマスを菌体バイオマス生成槽9に供給して菌体バイオマスを生成しているが、粉状の菌体を液体、バイオマスとともにバイオマス生成槽9に供給する形態とする等、適宜変形可能である。
【0018】
本実施形態では、菌体に浸漬させた木質バイオマスを凝集混和槽3に供給しており、バイオマスは菌体の水分によって重量が増加し、親水性が向上しているため、凝集混和槽3内で馴染みやすい。加えて、菌体バイオマス供給管12から供給される際に生じる搬送流の勢いによって凝集混和槽3内に均一に拡散される。
【0019】
木質バイオマスは多孔質で撥水性が高く、単体で供給した場合には凝集混和槽3内で浮上するため汚泥との混練性を高めることが困難であるが、本実施形態では木質バイオマスを菌体に浸漬させた状態で使用することで、槽内で汚泥及び凝集剤と均等に混合することができる。これにより、バイオマスが均一に取り込まれた凝集フロックを生成することができる。また、バイオマスに未付着の菌体は、凝集混和槽3及び後段設備へ搬送中に汚泥に付着する。
【0020】
菌体バイオマスは、菌体バイオマス供給管12を経て凝集混和槽3に供給された後、凝集撹拌装置4で汚泥及び凝集剤とともに混合撹拌される。凝集撹拌装置4及び菌体バイオマス撹拌装置10は、混合撹拌できるものであれば何でもよく、本実施例では撹拌翼を用いている。
【0021】
なお、多孔質のバイオマスが菌体バイオマス生成槽9内で浮上することを防止するために、液状の菌体を越流させながら供給し、越流部にバイオマスを添加する方法や、菌体供給管6の流路の途中にバイオマス供給管8を接続し、菌体の搬送流を用いてバイオマスを添加する方法、菌体バイオマス生成槽9に図示しない吸引部材を配置し、菌体バイオマスを槽の下方から抜き出して上方に返送する循環ラインを設ける方法等、適宜工夫を施してもよい。同様に、凝集混和槽3内での浮上を防ぐために、菌体バイオマス供給管12を凝集混和槽3の下部や下方側面に接続してもよい。
【0022】
凝集混和槽3で混合撹拌された汚泥は強固なフロック(凝集汚泥)となり、供給ポンプ14により凝集汚泥供給管15を介して固液分離装置16に供給される。凝集汚泥供給管15には固液分離装置16に供給される凝集汚泥の圧力を計測するための圧力計23を配設している。
【0023】
固液分離装置16は凝集汚泥を脱水処理できるもので、回分式ではフィルタープレス、連続式ではベルトプレス、スクリュープレス、遠心脱水機等の従来の装置を用いることができる。
【0024】
固液分離装置16に供給された凝集汚泥はろ液を分離した後、脱水汚泥(脱水ケーキ)として排出される。分離されたろ液はろ液貯留槽18に接続したろ液排出管19から外部へ排出される。
【0025】
固液分離装置16から排出される脱水汚泥は、脱水汚泥供給管22を介して堆肥化設備21に移送される。堆肥化設備21は、設備内に空気を供給するブロアで構成した送気手段20を有する公知の好気性発酵槽である。堆肥化設備21内に好気性発酵に必要な酸素源としての空気を吹き込むことにより、好気性微生物である菌体の働きによって脱水汚泥中の有機物が分解され、有機物が減少して安定化した発酵汚泥となる。このとき、水分の蒸発により含水率が低下するが発酵汚泥はコンポスト(肥料)として利用できる程度まで完熟させる。
【0026】
なお、必要に応じて、堆肥化設備21の前段に送気手段を有するホッパを設置し、脱水汚泥の通気性を改善した後、堆肥化設備21へ移送する形態であってもよい。
【0027】
一般的に、汚泥中には発酵に有用な土壌菌が含まれているが、それだけでは発酵効率を高めることが困難であるため、本実施形態では凝集工程前段で菌体を供給している。凝集工程前段で菌体を添加することで、菌体が凝集フロック内に取り込まれた状態で後段設備へ移送されるため、菌体の汚泥との混練性を高めることができる。これに伴い、菌体が均一に取り込まれた状態の脱水汚泥が生成され、この脱水汚泥を堆肥化設備21で発酵できるため、発酵効率が向上し、短時間で安定的に発酵汚泥を生成できる。
【0028】
同時に、脱水汚泥にはバイオマスも均一に取り込まれて脱水汚泥の通気性が改善されるため、堆肥化設備21で送気を行う際に必要な通気量を削減できる。これに伴い、設備全体の稼働時間を減らすことができ、省エネルギー化を図ることができる。
【0029】
なお、本実施形態では、固液分離時に液状の菌体がろ液とともに漏洩することを防ぐために、バイオマスに浸漬させたが、液状の菌体をバイオマスに噴霧して使用する等、適宜変形実施可能である。
【0030】
本発明は、以上に詳述した実施形態に限られるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形実施可能である。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明の汚泥コンポスト化システムは、菌体に浸漬させた木質バイオマスを凝集混和槽に供給して汚泥及び凝集剤と混合撹拌して凝集汚泥を生成するものであり、木質バイオマスとして地域未利用バイオマスを利用することで地域資源を有効活用できる。そして、生成された堆肥をその地域で使用することで地域農業の振興にも役立てられる。また、下水由来の堆肥は、植物の成長に対して必要な窒素やリン等を中心とした栄養分、ミネラル分を豊富に含むため、堆肥としてかなり有益である。
【符号の説明】
【0032】
3 凝集混和槽
9 菌体バイオマス生成槽
16 固液分離装置
21 堆肥化設備