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特開2024-155379電子部品パッケージ、その製造方法、および、気密封止方法
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  • 特開-電子部品パッケージ、その製造方法、および、気密封止方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155379
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】電子部品パッケージ、その製造方法、および、気密封止方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/02 20060101AFI20241024BHJP
   H01L 23/06 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
H01L23/02 Z
H01L23/06 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023070045
(22)【出願日】2023-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】301072650
【氏名又は名称】NECスペーステクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100181135
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 隆史
(72)【発明者】
【氏名】石井 康博
(57)【要約】
【課題】この発明は電子部品パッケージの内部壁部品を固定するねじの緩みを防止することを目的とする。
【解決手段】電子部品を筐体に気密状態で収容した電子部品パッケージ1であって、雌ねじ2を有する筐体3と、該筐体3の前記雌ねじ2に対応する位置に貫通穴4を有する内部壁部品5と、該内部壁部品5の前記貫通穴4を貫通して前記雌ねじ2にねじ込まれた雄ねじ6と、前記筐体3を覆う蓋7とを備え、前記雌ねじ2に雄ねじ6がねじ込まれた状態で減圧下に置かれることによって互いに密着している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品を筐体に気密状態で収容した電子部品パッケージであって、雌ねじを有する筐体と、該筐体の前記雌ねじに対応する位置に貫通穴を有する内部壁部品と、該内部壁部品の前記貫通穴を貫通して前記雌ねじにねじ込まれた雄ねじと、前記筐体を覆う蓋とを備え、
前記雌ねじに雄ねじがねじ込まれた状態で減圧下に置かれることによって密着している、
電子部品パッケージ。
【請求項2】
前記雄ねじを前記雌ねじにねじ込むことによって前記内部壁部品が取り付けられた前記筐体を真空雰囲気下に置くことによって前記雄ねじと前記雌ねじとの間の空間と筐体内との間の圧力が異なる、
請求項1に記載の電子部品パッケージ。
【請求項3】
前記雄ねじを前記雌ねじにねじ込むことによって前記内部壁部品が取り付けられた前記筐体に、さらに、加熱された状態で前記蓋が固定された、
請求項2に記載の電子部品パッケージ。
【請求項4】
前記蓋は乾燥窒素雰囲気下で前記筐体に接合された、
請求項1に記載の電子部品パッケージ。
【請求項5】
前記筐体は、金属材料または金属とセラミックスとの複合材料により構成された、請求項1~4のいずれか1項に記載の電子部品パッケージ。
【請求項6】
電子部品を筐体に気密状態で収容した電子部品パッケージの製造方法であって、雌ねじを有する筐体と、貫通穴を有する内部壁部品と、内部壁部品を筐体に取り付ける雄ねじと、前記筐体を気密封止する蓋とから構成された各部品を、前記雄ねじを前記貫通穴を通して前記雌ねじにねじ込むことにより、前記筐体に取り付ける工程と、
前記筐体の雌ねじの山と前記雄ねじの山との間に閉じた空間を形成する工程と、
前記筐体、内部壁部品、雄ねじで組み立てられた組立品を真空雰囲気下に晒すことにより前記閉じた空間から前記筐体の雌ねじの山と雄ねじの山との間へ応力を生じさせる工程と、
乾燥窒素で充填された雰囲気下で前記筐体と前記蓋とを接合する工程と、
を有することを特徴とする電子部品パッケージの製造方法。
【請求項7】
前記閉じた空間を真空雰囲気下に晒した後、真空雰囲気下で加熱することで前記閉じた空間から筐体のねじ山とねじとの間へ応力を生じさせる工程と、
加熱した組立品を冷却する工程と、
をさらに有する請求項6に記載の電子部品パッケージの製造方法。
【請求項8】
前記筐体は、金属材料または金属とセラミックスとの複合材料により構成された、請求項6または7のいずれか1項に記載の電子部品パッケージの製造方法。
【請求項9】
前記内部壁部品は、金属材料または金属とセラミックスとの複合材料により構成された、請求項6または7のいずれか1項に記載の電子部品パッケージの製造方法。
【請求項10】
雄ねじを内部壁部品の貫通穴を通し、筐体の雌ねじにねじ込むことによって前記内部壁部品を前記筐体に取り付ける工程と、
前記筐体の雌ねじの山と前記雄ねじの山との間に閉じた空間を形成する工程と、
前記筐体、内部壁部品、雄ねじで組み立てられた組立品を真空雰囲気下に晒すことにより前記閉じた空間から前記筐体の雌ねじの山と雄ねじの山との間へ応力を生じさせる工程と、
真空雰囲気下で加熱することで前記閉じた空間から前記筐体の雌ねじの山と雄ねじの山との間へ応力を生じさせる工程と、
当該組立品を冷却する工程と、
乾燥窒素で充填された雰囲気下で当該組立品と蓋を接合する工程と、
を有することを特徴とする電子部品パッケージの気密封止方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気密封止半導体パッケージ、気密封止マルチチップモジュール等の電子部品パッケージおよびこれらの製造方法、気密封止方法に関し、特に気密封止半導体パッケージ、気密封止マルチチップモジュールの内部にねじ締めにより固定された内部壁部品を有する、気密封止半導体パッケージ、気密封止マルチチップモジュール等の電子部品パッケージ、製造方法、および、気密封止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の情報社会におけるデータ通信量の増加に伴い、通信用の半導体パッケージやマルチチップモジュールの高速化、高周波化、高性能化そして高機能化が進められている。
このような高機能化を背景として、特に無線通信用の半導体パッケージやマルチチップモジュールにおいては、金属やセラミックスによる筐体と、筐体を覆う蓋とから構成され、その内部が気密封止された気密封止半導体パッケージ、気密封止マルチチップモジュールが使用される。これら気密封止半導体パッケージ、気密封止マルチチップモジュール内部では、その内部で伝播する信号の共振が発生しないようにするため、伝播する信号の周波数に応じて内部形状やサイズに配慮することが必要となる。
【0003】
例えば、金属筐体の場合、筐体内部の内部壁形状を、切削等の加工方法により所望の形状に加工することで一体型の金属筐体を作ることはできるが、その内部に化合物半導体などの半導体素子を含む電気回路を構成する場合、その金属筐体内部の壁の形状や配置、あるいは壁と素子実装部との距離等の配置条件によって、半導体素子を含む電気部品の搭載可能な領域が制約される。また、これらの電気部品間を電気的に接続するワイヤボンディング等の機器を使用した接続における前記機器の移動領域と前記壁との干渉により、筐体内の所望の領域に対するボンディング等の機器の動作が困難になり、装置組み立ての生産性や歩留まりは低下する。
【0004】
このため、気密封止半導体パッケージ、気密封止マルチチップモジュール内での共振を抑制するための内部形状を実現すべく設けられる内部壁の機能を別部品とし、筐体内に半導体素子を含む電気部品を搭載し、さらに、電気部品間の電気的接続を前記機器等によって行う組立て作業を済ませた後に、前記内部壁部品を取り付けることで、組立歩留まりを向上し、生産性を改善する途も提案されている。
【0005】
前記内部壁部品を筐体に固定する方法として、一般的には、ねじ締めによる取り付けがある。しかしながら、ねじ締めだけでは、機械的振動や衝撃のみならず、半導体の発熱、冷却の繰り返しに伴う冷熱温度サイクルによる構成部品の膨張収縮の繰り返しによって、ねじが緩み、その結果、内部壁部品と筐体との電気的接続が不安定になり、電気的性能が変化する現象が起こり得る。そのため、ねじが緩まない処置が必要である。
【0006】
ねじが緩まないための処置にかかる技術として、接着剤による固着がある。
この接着剤は、主に有機樹脂材料で構成されるため、有機樹脂材料を硬化する工程が追加になること、また気密封止を終えた気密封止半導体パッケージ、気密封止マルチチップモジュールの内部で、硬化した接着剤から水分や気体成分が発生または再付着により、気密封止半導体パッケージ、気密封止マルチチップモジュール内の半導体素子の劣化が生じること、更に気密封止半導体パッケージ、気密封止マルチチップモジュールの内部ガスに不要な成分が含まれることにより、パッケージの品質維持のために必要とされる内部のガス残留量の制限を逸脱し、ロット不良が発生することなどが起こりえる。
【0007】
このような気密封止半導体パッケージ、気密封止マルチチップモジュールの内部ガス残留量についての要求を満たす接着剤は存在するが、硬化後であっても水分や気体成分の発生を完全に抑制することができる接着剤は未だ開発されていない。
また接着剤には、筐体表面を覆う金属めっきおよびねじ表面と密着し、浮きや剥がれ等が発生しない必要があるが、気密封止半導体パッケージ、気密封止マルチチップモジュールの筐体表面が、金あるいは金を含む金属めっきで覆われている場合、金あるいは金を含む金属めっきと密着性の良好な接着剤は未だ開発されていない。更に硬化後の接着剤は大気中の水分を吸着あるいは吸収し、後の実使用環境で吸着あるいは吸収した水分を放出する場合があるため、気密封止半導体パッケージ、気密封止マルチチップモジュール内で有機樹脂材料からなる接着剤を使用して、ねじ緩み防止とするには前述のような種々な障害発生のリスクを伴うといった問題があった。
【0008】
また、従来の気密封止半導体パッケージ、気密封止マルチチップモジュールの製造工程の環境および温度、時間条件とは異なる接着剤硬化工程のみならず接着剤の機能および性能を有効化するための活性化処理工程が追加になることもあり、気密封止パッケージ、気密封止マルチチップモジュールとしての製造工程が複雑化する問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2012-148342号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
一方、特許文献1にあるように、接合部に無機材料を使い、温度をかけずに冷間圧接による気密封止する工法がある。この特許文献1に記載の金属めっきをねじ部に適用すると、気密封止には適用できるものの、取り付けたねじを緩ませるためのトルク値、すなわち戻りトルク値は、その表面に金属めっきを持たないねじを締めただけの場合と変わらないあるいは低下するため、実使用環境下でのねじ緩みを防止することができなかった。
その後、金属めっき材料の融点より高い温度で加熱することで筐体表面の金あるいは金を含む金属めっきとの金属間化合物を形成することによる接合が実現されたが、融点より高い温度で加熱する工程を伴うことから、半導体素子の劣化の原因となる懸念があった。
【0011】
また耐熱性のある半導体素子を前記加熱工程により製造する場合、筐体表面を覆う金属めっきとねじ表面を覆う金属めっきとの間で金属間化合物が形成されるが、冷却して常温に戻すと、接合界面の金属間化合物に割れが生じる場合があり、この割れにより、ねじの緩みを抑制することができない問題があった。
すなわち、気密封止半導体パッケージ、気密封止マルチチップモジュールの製造工程を複雑化せず、かつ気密封止半導体パッケージ、気密封止マルチチップモジュールの検査および試験温度以下の温度において、内部壁部品と筐体とを固定するねじが、筐体のねじ山と金属間化合物を形成して接合することにより、ねじが緩まず、ねじ締めにより取り付けた内部壁部品が筐体との電気的接続を長期的に保つことが、依然として解決すべき課題とされていた。
【0012】
すなわち、マルチチップモジュール等の電子部品パッケージの生産性を向上させるための要素である、気密封止半導体パッケージ、気密封止マルチチップモジュール筐体内部に配置する内部壁部品と、当該内部壁部品を筐体に取り付けるためのねじとそのねじ緩み防止において、気密封止半導体パッケージ、気密封止マルチチップモジュール内の半導体素子の劣化要因になる成分を放出する有機樹脂材料を使用することなしにねじ緩みを防止し、ねじ締めにより筐体に取り付けた内部壁部品が、筐体との電気的接続を長期的に保つことが課題である。
【0013】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、内部壁部品の取り付けに使用されるねじの緩みを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本願の第1の態様にかかる電子部品パッケージは、以下の手段を提案している。電子部品を筐体に気密状態で収容した電子部品パッケージであって、雌ねじを有する筐体と、該筐体の前記雌ねじに対応する位置に貫通穴を有する内部壁部品と、該内部壁部品の前記貫通穴を貫通して前記雌ねじにねじ込まれた雄ねじと、前記筐体を覆う蓋とを備え、前記雌ねじに雄ねじがねじ込まれた状態で減圧下に置かれることによって密着していることを特徴とする。
また本願の第2の態様にかかる電子部品パッケージの製造方法は、電子部品を筐体に気密状態で収容した電子部品パッケージの製造方法であって、雌ねじを有する筐体と、貫通穴を有する内部壁部品と、内部壁部品を筐体に取り付ける雄ねじと、前記筐体を気密封止する蓋とから構成された各部品を、前記雄ねじを前記貫通穴に通して前記雌ねじにねじ込むことにより、前記筐体に取り付ける工程と、前記筐体の雌ねじの山と前記雄ねじの山との間に閉じた空間を形成する工程と、前記筐体、内部壁部品、雄ねじで組み立てられた組立品を真空雰囲気下に晒すことにより前記閉じた空間から前記筐体の雌ねじの山と雄ねじの山との間へ応力を印加する工程と、乾燥窒素で充填された雰囲気下で前記筐体と前記蓋とを接合する工程とを有することを特徴とする。
また本願の第3の態様にかかる電子部品パッケージの封止方法は、雄ねじを内部壁部品の貫通穴を通し、筐体の雌ねじにねじ込むことによって前記内部壁部品を前記筐体に取り付ける工程と、前記筐体の雌ねじの山と前記雄ねじの山との間に閉じた空間を形成する工程と、前記筐体、内部壁部品、雄ねじで組み立てられた組立品を真空雰囲気下に晒すことにより前記閉じた空間から前記筐体の雌ねじの山と雄ねじの山との間へ応力を印加する工程と、真空雰囲気下で加熱することで前記閉じた空間から前記筐体の雌ねじの山と雄ねじの山との間へ応力を印加する工程と、当該組立品を冷却する工程と、乾燥窒素で充填された雰囲気下で当該組立品と前記蓋を接合する工程とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、雄ねじと雌ねじとの緩みを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の最小構成例にかかる電子部品パッケージの断面図である。
図2】本発明の第1実施形態にかかる電子部品パッケージの断面図である。
図3】本発明の第2実施形態にかかる電子部品パッケージの断面図である。
図4】本発明の第3実施形態にかかる電子部品パッケージの断面図である。
図5】本発明の第1実施形態にかかる電子部品パッケージの製造方法の工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1を参照して、本発明の最小構成例に係る電子部品パッケージの構成例について説明する。
この構成例は、電子部品を筐体に気密状態で収容した電子部品パッケージ1であって、雌ねじ2を有する筐体3と、該筐体3の前記雌ねじ2に対応する位置に貫通穴4を有する内部壁部品5と、該内部壁部品5の前記貫通穴4を貫通して前記雌ねじ2にねじ込まれた雄ねじ6と、前記筐体3を覆う蓋7とを備え、前記雌ねじ2に雄ねじ6がねじ込まれた状態で減圧下に置かれることによって互いに密着している。
【0018】
以上のように構成された電子部品パッケージは、例えば、前記内部壁部品5を筐体3に取り付ける前に該筐体3内への半導体等の電子部品の実装やボンディング装置等の自動装置による配線、固着等の工程を実行することができ、電子部品の配置や自動装置による配線、固着等の実行に必要な作業スペースを確保することができる。また、前記作業が終了した後、前記筐体3内の所定位置へ内部壁部品5を配置し、その貫通穴4へ雄ねじ6を挿入して筐体3の底部の雌ねじ2にねじ込むことにより固定することができる。また前記雄ねじ6は、雌ねじ2にねじ込まれた状態で減圧下に置かれることにより、雄ねじと雌ねじとの間の空間との圧力差によってこれらが密着し、両者を固着して緩みを防止することができる。
【0019】
また上記電子部品パッケージの製造方法は、電子部品を筐体に気密状態で収容した電子部品パッケージ1の製造方法であって、前記雌ねじ2を有する筐体3と、前記貫通穴4を有する内部壁部品5と、該内部壁部品5を前記筐体3に取り付ける雄ねじ6と、前記筐体3を気密封止する蓋7とから構成された各部品を、前記雄ねじ6を前記貫通穴4を通して前記雌ねじ2にねじ込むことにより、前記筐体3に取り付ける工程と、前記筐体3の雌ねじ2の山と前記雄ねじ6の山との間(異なる表現をすれば、雄ねじ6の山と雌ねじ2の谷との間、雄ねじ6の谷と雌ねじ2の山との間)に閉じた空間8を形成する工程と、前記筐体3、内部壁部品5、雄ねじ6で組み立てられた組立品を真空雰囲気下に晒すことにより前記閉じた空間から前記筐体の雌ねじの山と雄ねじの山との間へ応力を生じさせる工程と、乾燥窒素で充填された雰囲気下で前記筐体と前記蓋とを接合する工程とを有することを特徴とする。
【0020】
また上記電子部品パッケージの封止方法は、前記雄ねじ6を内部壁部品5の貫通穴に通し、筐体の雌ねじにねじ込むことによって前記内部壁部品を前記筐体に取り付ける工程と、前記筐体の雌ねじの山と前記雄ねじの山との間に閉じた空間を形成する工程と、前記筐体、内部壁部品、雄ねじで組み立てられた組立品を真空雰囲気下に晒すことにより前記閉じた空間から前記筐体の雌ねじの山と雄ねじの山との間へ応力を生じさせる工程と、真空雰囲気下で加熱することで前記閉じた空間から前記筐体の雌ねじの山と雄ねじの山との間へ応力を生じさせる工程と、当該組立品を冷却する工程と、乾燥窒素で充填された雰囲気下で当該組立品と前記蓋を接合する工程とを有することを特徴とする。
【0021】
上記最小構成例を具現化した本発明の第1実施形態について、図2を参照して説明する。
図2を参照すると、この第1実施形態にあっては、気密封止半導体パッケージ、気密封止マルチチップモジュール等の電子部品パッケージは、底板部に、雌ねじ状のねじ山102a、102bを有する筐体101と、それぞれ貫通穴103c、103dを有する内部壁部品103a、103bと、この内部壁部品103a、103bを前記筐体101に取り付けるための、六角ボルト等の雄ねじを有する、ねじ104a、104bと、筐体101を気密封止する蓋106とから構成されて、密閉された内部空間107を形成している。
【0022】
上記構成の電子部品パッケージの組み立て(製造)の各工程の概要は下記の通りである。なお製造方法の詳細を示す実施形態については、図5を参照して後述する。
(1)前記筐体101内への半導体等の電子部品の実装およびボンディング装置等による配線。
(2)前記筐体101内の所定位置への前記内部壁部品103a、103bの配置。
(3)前記ねじ104a、104bを内部壁部品103a、103bの貫通穴103c、103dを通し、前記筐体101に内部壁部品103a、103bを取り付ける。
(4)前記ねじ104a、104bをねじ込むことにより、前記筐体101のねじ山102a、102bとねじ104a、104bとの間に閉じた空間105a、105bを形成。
【0023】
(5)前記筐体101、内部壁部品103a、103b、ねじ104a、104bで組み立てられた組立品を真空雰囲気下(なお高真空度に限らず、所定以上の減圧下に置いても良い)に晒すことにより、前記閉じた空間105a、105bから筐体101のねじ山102a、102bとねじ104a、104bとの間へ応力を生じさせる。
(6)さらに、真空雰囲気下で加熱することで、前記閉じた空間105a、105bから筐体101のねじ山とねじ104a、104bとの間へ応力を生じさせる。
(7)当該組立品を冷却。
(8)乾燥窒素で充填された雰囲気下で当該組立品の筐体101と蓋106を接合し、内部空間107を気密封止。
なお、前記筐体101と蓋106とを接合する上記(8)の工程を減圧下で行っても良い。
【0024】
前記筐体101は、板状の支持板101aと、この支持板101a上にあって、該支持板101aの外径とほぼ一致する輪郭形状を有する形状を有していて、内側に電子部品等の格納スペースを形成する本体101bを構成要素としている。その構成材料は、例えば、前記支持板101a、本体101bの両者を金属製とした構成、金属製の支持板101aにセラミックス製の本体101bをろう付けした構成、金属製の支持板101aに内周または外周に金属リングを備えたセラミックス製の本体101bをろう付けした構成を採用することができる。
【0025】
前記筐体101が有するねじ山102a、102bは、本体101b、支持板101aを金属製とすることにより、機械加工により形成することができる。前記金属製の本体101bおよび金属製の支持板101aは、鉄ニッケルコバルト合金、銅モリブデン合金、銅タングステン合金、アルミニウム珪素合金、チタン合金、ステンレスのいずれかを母材として、金または金を含む金属めっき膜で覆われていることが望ましい。また、気密封止パッケージ、気密封止マルチチップモジュールの内部と外部とを電気的に接続する外部出力端子を有していることが望ましい。
【0026】
前記内部壁部品103a、103bは、前記筐体101のねじ山102a、102bへねじ104a、104bで取り付けるための貫通穴103c、103dを有する必要があり、前記内部壁部品103a、103bの外形は、気密封止半導体パッケージ、気密封止マルチチップモジュール内に搭載する半導体素子の機能および性能によって、信号が共振しない形状およびサイズとすればよい。
また前記内部壁部品103a、103bは、半導体パッケージに求められる性能、例えば電子部品の配置、使用周波数、強度等の条件に応じて、1つ以上を配置してもよい。
また前記内部壁部品103a、103bは、鉄ニッケルコバルト合金、アルミニウム合金、アルミニウム珪素合金のいずれかを有し、かつ金または金を含む金属めっき膜で覆われている、あるいはアルミニウム合金を有し、かつ当該表面が化成膜で覆われている、のいずれかであればよい。金または金を含む金属めっき膜のめっき膜厚は、1μm~5μmが好ましい。前記筐体101を構成する支持板101a、本体101bの構成材料として、重金属元素を有する鉄ニッケルコバルト合金や、銅モリブデン合金、銅タングステンを採用した場合には、軽金属元素を有するアルミニウム合金、アルミニウム珪素合金からなる内部壁部品103a、103bを採用することで、軽量化を実現することができるため、でパッケージ全体の軽量化の観点では特に好ましい。また、前記内部壁部品103a、103bには、前記ねじ104a、104bを取り付けるための段差があってもよい。
【0027】
また前記ねじ104a、104bは、ステンレス、アルミニウム合金、チタン合金のいずれかの材料により構成し、インジウムまたはインジウムを含む金属めっき膜で覆われていることが望ましく、そのめっき膜厚は1μm~10μmが好ましい。また、ねじ頭(ボルトの頭)の形状は、十字穴、一字穴、六角穴、あるいは、特殊な形状の工具による操作を考慮して当該工具の先端に対応した形状に形成した穴のいずれであってもよい。
【0028】
前記蓋106は、鉄ニッケルコバルト合金で構成され、金または金を含む金属めっき、ニッケルあるいはニッケルを含む金属めっき膜で覆われている構成、あるいは酸化アルミニウム、窒化アルミニウムのいずれかの材料により構成され、金または金を含む金属めっきで覆われていることが望ましく、前記筐体101を構成する材料によって、適切な組み合わせとなるように使い分けることが望ましい。
【0029】
本実施形態の電子部品パッケージの製造、具体的には、上記組み立て工程の(5)(6)に必要とされる真空雰囲気は、前記筐体101のねじ山102a、102bとねじ104a、104bとの間に形成された閉じた空間105a、105bとの間に圧力差を設けるための条件であり、1.3×10-1Pa以下の真空雰囲気下であればよい。また、これより高い真空度が得られない場合(換言すれば低圧環境にすることができない場合)であっても、真空度に応じた圧力差による応力を生じさせることができ、その場合は、例えば、真空度が低い場合には加熱時間を長くする等、加熱時間により調整してもよい。
また真空雰囲気下での加熱では、非接触式、接触式のいずれの加熱方法でもよい。非接触式の加熱として赤外線や輻射熱を利用してもよく、接触式の加熱として、カートリッジヒータで加熱する金属ステージ上、組立品を載せて熱伝導による加熱でもよい。
【0030】
気密封止する工程は、筐体101に応じて選択すればよく、例えば筐体101が金属製の筐体である場合、あるいは金属支持板と、金属リングを有するセラミックスとをろう付けした構成の筐体である場合には、金属製の筐体101と蓋106、筐体101を構成する金属製のリング状の部分と蓋106とを溶接して気密封止することが望ましい。
この気密封止に使用される溶接の方式は、レーザー溶接、シーム溶接、電子線溶接のいずれでもよく、乾燥窒素雰囲気内で溶接できる工法が望ましい。また、筐体101が金属支持板とセラミックスとをろう付けした筐体の場合には、セラミックス上の金あるいは金を含む金属めっきと蓋106との間に金属合金ろう材を溶融して気密封止をしてもよい。この場合、蓋106は酸化アルミニウム、窒化アルミニウムのいずれかを有し、金または金を含む金属めっきで覆われていることが望ましく、金属合金ろう材には、金属インジウムよりも低い融点を有する必要があるため、インジウムと錫の合金を採用することが望ましい。
【0031】
[実施例1]
図2は、第1実施形態による気密封止半導体パッケージ、気密封止マルチチップモジュール等の電子部品パッケージの断面を示している。また図5は、図2に示す電子部品パッケージの製造方法を示す図である。
前記筐体101として、鉄ニッケルコバルト合金からなり、その最表面が金めっきで覆われる金属製の筐体を採用し、前記内部壁部品103a、103bとして、アルミニウム合金を、そして、前記ねじ104a、104bとしてステンレスからなり、その最表面がインジウムめっきで覆われるねじ(M1.7)を用意した。
また、前記筐体101の表面を覆う金めっき膜の膜厚を3μmとし、またねじ104a、104bの表面を覆うインジウムめっき膜の膜厚を5μmとした。(図5(a)参照)
【0032】
図5(b)に示すように、前記筐体101に形成された雌ねじのねじ山102a、102bに対し、前記内部壁部品103a、103bの貫通穴103c、103dの位置が合うように(図2の上方から見て重なるように)取り付けたのちに、図5(c)に示すように、前記ねじ104a、104bを前記筐体101のねじ山102a、102bに取り付け、徐々に締め付け、トルクドライバー等を使用することによって、所定の規格のねじ締めトルク値となるようにねじ締めし、図5(d)に示すように、前記内部壁部品103a、103bと前記筐体101のねじ山102a、102bの間に閉じた空間105a、105bを形成した。
【0033】
その後、図5(e)に示すように、筐体101、内部壁部品103a、103b、ねじ104a、104bで組み立てられた組立品および蓋106を、真空雰囲気で加熱ができる真空ベーク炉に投入し、真空ベーク炉を閉じて、真空引きをした。
この真空ベーク炉内の真空度が、1.3×10-2Pa以下になったことを確認後、真空ベーク炉内に設けた金属ステージによる加熱を開始し、150℃を超えないように温度制御しながら、150℃を維持した。前記金属ステージが150℃になったことを確認した後、1.5時間加熱した。
上記真空引きおよび加熱により、ねじ104a、104bとねじ山102a、102bを構成する金属間の拡散接合が促進される。
この真空ベーク炉内での(筐体101、内部壁部品103a、103b、ねじ104a、104bからなる)組立品の真空雰囲気下の加熱条件は、気密封止半導体パッケージ、気密封止マルチチップモジュールの気密封止前の、水分除去を目的とした真空雰囲気下の加熱の条件と、真空度、温度、時間のいずれかが異なっていてもよいが、新たに工程を追加することによる工程の複雑化(生産性の低下)を回避すべく、同じ条件とした。
【0034】
前記真空雰囲気下での加熱の後、真空ベーク炉内の金属ステージの加熱を停止し、金属ステージおよび前記組立品、蓋106を自然冷却した。加熱ステージの温度が100℃を下回ったのちに、真空ベーク炉内に窒素ガスを導入し、真空ベーク炉内の加熱ステージおよび前記組立品を強制的に冷却した。その後、真空ベーク炉と連結し、内部が乾燥窒素で充填されているグローブボックス内に前記組立品を搬送した。図5(f)に示すように、前記組立品と蓋106とを固定し、これらの接触境界面付近に波長1064nmのYAGレーザーを照射することで、前記組立品と蓋106とを接合し、気密封止半導体パッケージ、マルチチップモジュールとした。
【0035】
前記ねじ104a、104bが緩むときの戻りトルク値を測定するため、前記組立品と蓋106との接合部のビードやばりを、エンドミル等の切削工具や賢察工具等を用いた機械加工により切削、研削して除去し、気密封止半導体パッケージ、気密封止マルチチップモジュールから蓋106を取り外した。
その後、ねじ104a、104bを緩める方向にトルクを印加し、ねじが緩むときの戻りトルク値を測定した。標準締め付けトルク値に対し、戻りトルク値(平均値)は、77%であった。後述する比較例2の結果に対し、+36%の戻りトルク値が向上した。
前記ねじ104a、104bは、気密封止半導体パッケージ、気密封止マルチチップモジュールおよびそれを組み込んだ装置における機械的衝撃試験や振動試験により緩みが生じることはなかった。前記ねじ104a、104bと筐体101のねじ山102a、102bの接合界面を観察するため、断面観察に適した形状に加工、研磨し、断面観察を実施したところ、前記ねじ104a、104bと前記筐体101のねじ山102a、102bの接合界面には、筐体101および筐体101のねじ山102a、102b覆う金めっき膜とねじ104a、104bの表面を覆うインジウムめっき膜のそれぞれが残っていること確認できるとともに、金とインジウムの金属間化合物が形成していることが観察された。
金の融点は1064℃、インジウムの融点は156℃であるため、真空雰囲気下において、金あるいはインジウムの融点より低い150℃であっても、これらの金属間化合物を形成し、ねじ104a、104bの緩みを防止する効果が得られた。
【0036】
[実施例2]
実施例2においても、図2に示す、第1実施形態による気密封止半導体パッケージ、気密封止マルチチップモジュール等の電子部品パッケージの断面を参照して説明する。
実施例2では、前記組立品と蓋106とを接合し、気密封止半導体パッケージ、気密封止マルチチップモジュールとするまでは、前記実施例1と同じ製造工程とした。気密封止半導体パッケージ、気密封止マルチチップモジュールを製造した後、気密封止半導体パッケージ、気密封止マルチチップモジュールの試験として、スタティックバーンイン試験を実施した。印加する電流、電圧条件は、気密封止半導体パッケージ、気密封止マルチチップモジュール内の半導体素子に適応する条件とし、また恒温槽内で気密封止半導体パッケージ、気密封止マルチチップモジュールの温度を125℃とした。金の融点である1064℃、インジウムの融点である156℃、更に組立品と蓋とを接合し、気密封止する前の真空雰囲気下の加熱である150℃よりも低い温度である。試験時間を320時間とした。
【0037】
試験後、ねじ104a、104bが緩むときの戻りトルク値を測定するため、組立品と蓋106の接合部を、エンドミルで切削して除去し、気密封止半導体パッケージ、気密封止マルチチップモジュールから蓋106を取り外した。その後、ねじ104a、104bを緩める方向にトルクを印加し、ねじが緩むときの戻りトルク値を測定した。
【0038】
標準締め付けトルク値に対し、戻りトルク値(平均値)は、少なくとも171%であり、ねじ104a、104bを取り付けるためのねじ頭が変形して、取り外すことができなかった。ねじ104a、104bと筐体101のねじ山102a、102bの接合界面を観察するため、断面観察に適した形状に加工、研磨し、断面観察を実施したところ、ねじ104a、104bと筐体101のねじ山102a、102bの接合界面には、金とインジウムの金属間化合物のみが形成し、筐体101のねじ山102a、102b覆う金めっき膜とねじ104a、104bの表面を覆うインジウムめっき膜のそれぞれが残っていないことが観察された。本発明による気密封止半導体パッケージ、気密封止マルチチップモジュールを製造工程の後、より低い温度に晒しても、金属間化合物を形成し、ねじ104a、104bの緩みを防止する効果が得られた。
【0039】
[実施例3]
図3は、実施例3が適用される、本発明の第2実施形態にかかる気密封止半導体パッケージ、気密封止マルチチップモジュールの断面を示している。この第2実施形態は、実施例1あるいは実施例2の対象となった第1実施形態の電子部品パッケージとは、筐体201の構造が異なる。
この筐体201は、金属製の支持板201aとセラミックス製の本体201bとからなり、金属製の前記支持板201aには銅モリブデン合金を用い、セラミックス製の前記本体201bには、酸化アルミニウムを用い、これらを銀ろう材でろう付けしたのちに、必要なところについて金めっき膜を形成したものを使用した。また、前記蓋206は、接合する対象が前記筐体201の本体201bがセラミックス製であるため、その材料として、酸化アルミニウムからなり、その表面に金めっき膜で覆われているものを使用した。
【0040】
前記筐体201と蓋206とが、金めっき膜で覆われた酸化アルミニウムであるため、前記筐体201と蓋206との間を接合する金属合金ろう材210として、インジウムと錫の合金からなるろう材を用いた。このろう材210を前記筐体201と蓋206の間に挿入し、乾燥窒素雰囲気下で加熱することで、金属合金ろう材210を溶融し、筐体201と蓋206を接合して内部空間207を形成した。前記実施例1と同じ確認方法で戻りトルク値を測定したところ、実施例1と同程度の結果が得られた。ねじ204a、204bと勘合する筐体201の金属製の支持板201aの素材が、実施例1とは異なっていても、前記ねじ204a、204bの緩みを防止する効果が得られた。
【0041】
図4は、実施例4が適用される、本発明の第3実施形態にかかる気密封止半導体パッケージ、気密封止マルチチップモジュールの断面を示している。この第2実施形態は、実施例1~実施例3の対象となった第1実施形態および第2実施形態の電子部品パッケージとは、筐体301の構造が異なる。
この筐体301として、金属製の支持板301aと、セラミックス製の本体301bと、金属製のリング303cとからなる構造を採用した。
前記金属製の支持板301aには、銅モリブデン合金を用い、前記セラミックス製の本体301bには、酸化アルミニウムを用い、前記金属製のリング303cには鉄ニッケルコバルト合金を用いた。これらは、銀ろう材でろう付けしたのちに、必要なところについて金めっき膜を形成した。
【0042】
また、前記リング303cに被せられる蓋306は、接合する対象が前記筐体301の金属製のリング301cであるため、その材料として、鉄ニッケルコバルト合金からなり、その表面にニッケルめっき膜で覆われているものを使用した。前記筐体301と蓋306とは、乾燥窒素雰囲気下でシーム溶接にて接合し、内部空間307を構成した。
このようにして組み立てられたパッケージを前記実施例1と同じ確認方法によって戻りトルク値を測定したところ、実施例1と同程度の結果が得られた。すなわち、前記ねじ304a、304bと勘合する前記筐体301の金属製の支持板301aの素材が、実施例1とは異なっても、前記ねじ204a、204bの緩みを防止する効果が得られた。
【0043】
[比較例1]
前記実施例1~4とは異なり、本発明の特徴を備えない比較例の構成について説明する。
比較例1は、鉄ニッケルコバルト合金からなり、その最表面が金めっきで覆われる金属筐体、アルミニウム合金からなる内部壁部品、ステンレスからなるねじ(M1.7)を用意し、標準ねじ締めトルク値となるようトルクドライバーでねじ締めし、内部壁部品を筐体に取り付けた。その後、ねじを緩める方向にトルクを印加し、ねじが緩むときの戻りトルク値を測定した。標準締め付けトルク値に対し、戻りトルク値(平均値)は、66%であった。同じ手順で締めたねじは、気密封止半導体パッケージ、気密封止マルチチップモジュールおよびそれを組み込んだ装置における機械的衝撃試験や振動試験により緩みが生じてしまった。
【0044】
[比較例2]
鉄ニッケルコバルト合金からなり、その最表面が金めっきで覆われる金属筐体、アルミニウム合金からなる内部壁部品、ステンレスからなりその表面にインジウムめっき膜を有するねじ(M1.7)を用意し、標準ねじ締めトルク値となるようトルクドライバーでねじ締めし、内部壁部品を筐体に取り付けた。その後、ねじを緩める方向にトルクを印加し、ねじが緩むときの戻りトルク値を測定した。標準締め付けトルク値に対し、戻りトルク値(平均値)は、56%、比較例1の結果に対し、86%であった。同じ手順で締めたねじは、比較例1と同様に気密封止半導体パッケージ、気密封止マルチチップモジュールおよびそれを組み込んだ装置における機械的衝撃試験や振動試験により緩みが生じてしまった。
【0045】
以上説明したように、本発明の各実施形態にあっては、以下の効果を得ることができる。
(1)ねじを取り付けたのちに真空中に晒すことで、ねじ締めによる軸力以外にも、ねじと筐体との間に形成した閉じた空間から外側方向へ、すなわち、ねじと筐体の接合界面に機械的応力を発生させることができ、筐体およびねじ表面に形成された金属めっき材料の融点より低い温度でも金属間化合物を生成する補助となり、融点より低い温度の加熱でも接合を実現することができる。
(2)内部壁部品を筐体と異なる材料を選択することができる。例えば、筐体が鉄ニッケルコバルト合金(密度=約8.3g/cm3)で構成され、切削により一体物で内部壁を作りこむ場合と、内部壁部品をアルミニウム合金(密度=約2.7g/cm3)で構成し、アルミニウム合金からなるねじで筐体に取り付ける場合とでは、内部壁の機能を有する部位においては、鉄ニッケルコバルト合金とアルミニウム合金の密度の差分について、軽量化をすることができる。特に気密封止半導体パッケージ、気密封止マルチチップモジュールやこれらを組み込む装置において、質量要求がある場合に、各実施形態の構造は有効である。
【0046】
なお、筐体の寸法、形状、内部壁部品の寸法、形状数、さらには、ねじの寸法、数、配置およびこれに対応する貫通穴の寸法、数、配置、さらには、各部材を構成する材料やめっきの材料は実施形態に限定されるものではない。
【0047】
以上、本発明を実施形態により説明したが、本発明は、実施形態に限られず、下記の付記に記載された内容をも包含するものである。
(付記1)
気密封止半導体パッケージ、気密封止マルチチップモジュールであって、ねじ山を有する筐体と、貫通穴を有する内部壁部品と、内部壁部品を筐体に取り付けるねじと、筐体を気密封止する蓋から構成され、ねじを内部壁部品の貫通穴を通し、筐体に内部壁部品を取り付ける工程と、筐体のねじ山とねじとの間に閉じた空間を形成する工程と、筐体、内部壁部品、ねじで組み立てられた組立品を真空雰囲気下に晒すことにより前記閉じた空間から筐体のねじ山とねじとの間へ応力を印加する工程と、真空雰囲気下で加熱することで前記閉じた空間から筐体のねじ山とねじとの間へ応力を印加する工程と、当該組立品を冷却する工程と、乾燥窒素で充填された雰囲気下で当該組立品と蓋を接合する工程を有することを特徴とする気密封止半導体パッケージ、気密封止マルチチップモジュール。
(付記2)
前記ねじ山を有する筐体が、金属筐体、金属支持板とセラミックスとをろう付けした筐体、金属支持板と、金属リングを有するセラミックス筐体とをろう付けした筐体のいずれか1つである付記1記載の気密封止半導体パッケージ、気密封止マルチチップモジュール。
(付記3)
前記金属筐体が鉄ニッケルコバルト合金、銅モリブデン合金、銅タングステン合金、アルミニウム珪素合金、チタン合金、ステンレスのいずれかを有し、金または金を含む金属めっき膜で覆われていることを特徴とする付記1まはた付記2のいずれかに記載の気密封止半導体パッケージ、気密封止マルチチップモジュール。
(付記4)
前記金属支持板とセラミックスとをろう付けした筐体の金属支持板が鉄ニッケルコバルト合金、銅モリブデン合金、銅タングステン合金、アルミニウム珪素合金、チタン合金、ステンレスのいずれかを有し、金または金を含む金属めっき膜で覆われていることを特徴とする付記1または付記2のいずれかに記載の気密封止半導体パッケージ、気密封止マルチチップモジュール。
(付記5)
前記金属支持板と、金属リングを有するセラミックス筐体とをろう付けした筐体の金属支持板が鉄ニッケルコバルト合金、銅モリブデン合金、銅タングステン合金、アルミニウム珪素合金、チタン合金、ステンレスのいずれかを有し、金または金を含む金属めっき膜で覆われていることを特徴とする付記1または付記2のいずれかに記載の気密封止半導体パッケージ、気密封止マルチチップモジュール。
(付記6)
前記金属支持板とセラミックスとをろう付けした筐体、前記金属支持板と、金属リングを有するセラミックス筐体とをろう付けした筐体のセラミックスが、酸化アルミニウム、窒化アルミニウムのいずれかを有し、金または金を含む金属めっき膜で覆われていることを特徴とする付記1、付記2、付記4、付記5のいずれか一に記載の気密封止半導体パッケージ、気密封止マルチチップモジュール。
(付記7)
前記内部壁部品が鉄ニッケルコバルト合金、アルミニウム合金、アルミニウム珪素合金のいずれかを有し、金または金を含む金属めっき膜で覆われていることを特徴とする付記1~付記6のいずれか一に記載の気密封止半導体パッケージ、気密封止マルチチップモジュール。
(付記8)
前記内部壁部品がアルミニウム合金を有し、当該表面が化成膜で覆われていることを特徴とする付記1~付記7のいずれか一に記載の気密封止半導体パッケージ、気密封止マルチチップモジュール。
(付記9)
前記ねじがステンレス、アルミニウム合金、チタン合金のいずれかを有し、インジウムまたはインジウムを含む金属めっき膜で覆われていることを特徴とする付記1~付記8のいずれか一に記載の気密封止半導体パッケージ、気密封止マルチチップモジュール。
(付記10)
前記蓋が鉄ニッケルコバルト合金で構成され、金または金を含む金属めっき、ニッケルあるいはニッケルを含む金属めっき膜で覆われていることを特徴とする付記1~付記9のいずれか一に記載の気密封止半導体パッケージ、気密封止マルチチップモジュール。
【0048】
(付記11)
前記蓋が酸化アルミニウム、窒化アルミニウムのいずれかを有し、金または金を含む金属めっきで覆われていることを特徴とする付記1~付記9のいずれか一に記載の気密封止半導体パッケージ、気密封止マルチチップモジュール。
(付記12)
筐体のねじ山とねじとの間に閉じた空間内の気体成分が、気密封止半導体パッケージ、気密封止マルチチップモジュールの内部空間の気体成分と異なることを特徴とする付記1~付記11のいずれかに記載の気密封止半導体パッケージ、気密封止マルチチップモジュール。
(付記13)
大気雰囲気下で内部壁部品の貫通穴にねじを通し、筐体に内部壁部品を取り付ける工程と、筐体、内部壁部品、ねじで構成される組立品を1.3×10-1Pa以下の真空雰囲気下に晒し、しかる後にねじに施された金属めっき膜の融点より低い温度で加熱することを特徴する請求項から付記1~付記12のいずれか一に記載の気密封止半導体パッケージ、気密封止マルチチップモジュールの製造方法。
(付記14)
大気雰囲気下で内部壁部品の貫通穴にねじを通し、筐体に内部壁部品を取り付ける工程と、筐体、内部壁部品、ねじで構成される組立品を1.3×10-1Pa以下の真空雰囲気下で晒し、しかる後にねじに施された金属めっき膜の融点より低い150℃以下、125℃以上で加熱することを特徴する請求項1から請求項12のいずれか一に記載の気密封止半導体パッケージ、気密封止マルチチップモジュールの製造方法。
(付記15)
真空あるいは窒素を含む雰囲気で筐体、内部壁部品、ねじで構成される組立品を冷却したのちに、当該組立品と蓋とをレーザー溶接、シーム溶接、電子線溶接のいずれかで気密封止することを特徴とする付記1~付記10、および付記12のいずれか一に記載の気密封止半導体パッケージ、気密封止マルチチップモジュールの製造方法。
(付記16)
真空あるいは窒素を含む雰囲気で筐体、内部壁部品、ねじで構成される組立品を冷却したのちに、当該組立品と蓋とを金属合金ろう材を溶融して気密封止することを特徴とする付記1~付記9、および付記11、付記12のいずれか一に記載の気密封止半導体パッケージ、気密封止マルチチップモジュールの製造方法。
(付記17)
前記金属合金ろう材がインジウムと錫の合金からなることを特徴とする付記1~付記9、および付記11、付記12のいずれか一に記載の気密封止半導体パッケージ、気密封止マルチチップモジュールの製造方法。
(付記18)
筐体と蓋とを溶接して気密封止、あるいは金属合金ろう材を溶融して気密封止した気密封止半導体パッケージ、気密封止マルチチップモジュールであって、気密封止したのちに当該気密封止半導体パッケージ、気密封止マルチチップモジュールを真空雰囲気下の加熱温度より低い温度でエージングする工程を有することを特徴とする付記1~付記12のいずれか一に記載の気密封止半導体パッケージ、気密封止マルチチップモジュールの製造方法。
(付記19)
筐体と蓋とを溶接して気密封止、あるいは金属合金ろう材を溶融して気密封止した気密封止半導体パッケージ、気密封止マルチチップモジュールであって、気密封止したのちに当該気密封止半導体パッケージ、気密封止マルチチップモジュールを真空雰囲気下の加熱温度より低い温度でエージングする工程を有し、当該エージングによってねじを覆う金属インジウムのすべてが金属間化合物として消費されることを特徴とする付記1~付記12のいずれか一に記載の気密封止半導体パッケージ、気密封止マルチチップモジュール。
【0049】
(付記20)
電子部品を筐体に気密状態で収容した電子部品パッケージであって、雌ねじを有する筐体と、該筐体の前記雌ねじに対応する位置に貫通穴を有する内部壁部品と、該内部壁部品の前記貫通穴を貫通して前記雌ねじにねじ込まれた雄ねじと、前記筐体を覆う蓋とを備え、
前記雌ねじに雄ねじがねじ込まれた状態で減圧下に置かれることによって密着している、
電子部品パッケージ。
(付記21)
前記雄ねじを前記雌ねじにねじ込むことによって前記内部壁部品が取り付けられた前記筐体を真空雰囲気下に置くことによって前記雄ねじと前記雌ねじとの間の空間と筐体内との間の圧力が異なる、
付記20に記載の電子部品パッケージ。
(付記22)
前記雄ねじを前記雌ねじにねじ込むことによって前記内部壁部品が取り付けられた前記筐体に、さらに、加熱された状態で前記蓋が固定された、
付記20または21のいずれかに記載の電子部品パッケージ。
(付記23)
前記蓋は乾燥窒素雰囲気下で前記筐体に接合された、
付記20~22のいずれか一に記載の電子部品パッケージ。
(付記24)
前記筐体は、金属材料または金属とセラミックスとの複合材料により構成された、請求項20~23のいずれか一に記載の電子部品パッケージ。
【0050】
(付記25)
電子部品を筐体に気密状態で収容した電子部品パッケージの製造方法であって、雌ねじを有する筐体と、貫通穴を有する内部壁部品と、内部壁部品を筐体に取り付ける雄ねじと、前記筐体を気密封止する蓋とから構成された各部品を、前記雄ねじを前記貫通穴を通して前記雌ねじにねじ込むことにより、前記筐体に取り付ける工程と、
前記筐体の雌ねじの山と前記雄ねじの山との間に閉じた空間を形成する工程と、
前記筐体、内部壁部品、雄ねじで組み立てられた組立品を真空雰囲気下に晒すことにより前記閉じた空間から前記筐体の雌ねじの山と雄ねじの山との間へ応力を生じさせる工程と、
乾燥窒素で充填された雰囲気下で前記筐体と前記蓋とを接合する工程と、
を有することを特徴とする電子部品パッケージの製造方法。
(付記26)
前記閉じた空間を真空雰囲気下に晒した後、真空雰囲気下で加熱することで前記閉じた空間から筐体のねじ山とねじとの間へ応力を生じさせる工程と、
加熱した組立品を冷却する工程と、
をさらに有する付記25に記載の電子部品パッケージの製造方法。
(付記27)
前記筐体は、金属材料または金属とセラミックスとの複合材料により構成された、付記25または付記26のいずれか一に記載の電子部品パッケージの製造方法。
(付記28)
前記内部壁部品は、金属材料または金属とセラミックスとの複合材料により構成された、付記25~27のいずれか一の記載の電子部品パッケージの製造方法。
(付記29)
雄ねじを内部壁部品の貫通穴を通し、筐体の雌ねじにねじ込むことによって前記内部壁部品を前記筐体に取り付ける工程と、
前記筐体の雌ねじの山と前記雄ねじの山との間に閉じた空間を形成する工程と、前記筐体、内部壁部品、雄ねじで組み立てられた組立品を真空雰囲気下に晒すことにより前記閉じた空間から前記筐体の雌ねじの山と雄ねじの山との間へ応力を生じさせる工程と、
真空雰囲気下で加熱することで前記閉じた空間から前記筐体の雌ねじの山と雄ねじの山との間へ応力を生じさせる工程と、
当該組立品を冷却する工程と、
乾燥窒素で充填された雰囲気下で当該組立品と前記蓋を接合する工程と、
を有することを特徴とする電子部品パッケージの気密封止方法。
【0051】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、電子部品パッケージ、電子部品パッケージの製造方法、および、電子部品パッケージの封止方法に利用することができる。
【符号の説明】
【0053】
1 電子部品パッケージ
2 雌ねじ
3 筐体
4 貫通穴
5 内部壁部品
6 雄ねじ
7 蓋
8 空間
101 筐体
101a 支持板
101b 筐体本体
102a、102b (筐体の)ねじ山
103a、103b 内部壁部品
103c、103d 貫通穴
104a、104b ねじ
105a、105b (ねじと筐体のねじ山で形成する)閉じた空間
106 蓋
107 (気密封止半導体パッケージ、気密封止マルチチップモジュールの)内部空間
201 筐体
201a (金属製の)支持板
201b (セラミックス製の)本体
202a、202b 筐体のねじ山
203a、203b 内部壁部品
204a、204b ねじ
205a、205b (ねじと筐体のねじ山で形成する)閉じた空間
206 蓋
207 (気密封止半導体パッケージ、気密封止マルチチップモジュールの)内部空間
210 (金属合金)ろう材
301 筐体
301a 支持板
301b 本体
301c 金属製のリング
302a、302b ねじ山
図1
図2
図3
図4
図5