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特開2024-155381新規の抽出方法で抽出したカンゾウ抽出物を含有する美白用組成物、皮膚外用剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155381
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】新規の抽出方法で抽出したカンゾウ抽出物を含有する美白用組成物、皮膚外用剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/9789 20170101AFI20241024BHJP
   A61Q 19/02 20060101ALI20241024BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20241024BHJP
   A61Q 1/12 20060101ALI20241024BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20241024BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20241024BHJP
   A61P 39/06 20060101ALI20241024BHJP
   A61K 36/484 20060101ALI20241024BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
A61K8/9789
A61Q19/02
A61Q19/00
A61Q1/12
A61Q19/10
A61P17/00
A61P39/06
A61K36/484
A61K9/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023070050
(22)【出願日】2023-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】592262543
【氏名又は名称】日本メナード化粧品株式会社
(72)【発明者】
【氏名】岡田 大輝
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 寿
(72)【発明者】
【氏名】坂井田 勉
【テーマコード(参考)】
4C076
4C083
4C088
【Fターム(参考)】
4C076AA06
4C076BB31
4C076CC18
4C076DD34
4C076DD37
4C076DD38
4C076DD45
4C076DD46
4C076EE23
4C083AA082
4C083AA111
4C083AA112
4C083AA122
4C083AB032
4C083AB232
4C083AB242
4C083AB312
4C083AB352
4C083AB432
4C083AB442
4C083AC022
4C083AC072
4C083AC102
4C083AC122
4C083AC182
4C083AC242
4C083AC302
4C083AC352
4C083AC422
4C083AC432
4C083AC442
4C083AC482
4C083AC542
4C083AC842
4C083AD092
4C083AD112
4C083AD272
4C083AD352
4C083AD512
4C083BB41
4C083CC04
4C083CC05
4C083CC07
4C083CC12
4C083CC25
4C083DD41
4C083EE16
4C083FF01
4C088AB60
4C088BA09
4C088BA10
4C088CA02
4C088CA05
4C088CA06
4C088CA08
4C088CA17
4C088MA28
4C088MA63
4C088NA14
4C088ZA89
(57)【要約】      (修正有)
【課題】メラニン生成抑制作用及び抗酸化作用に優れた新規な外用剤を提供する。
【解決手段】カンゾウを液体の水からなる前処理剤で抽出し、濾過して、ろ液と抽出残渣に分別し、抽出残渣を更に水、低級アルコール及び液状多価アルコールからなる群より選ばれる1種又は2種以上の抽出剤を用い、抽出温度が最初の工程の抽出温度よりも20℃以上高い温度で抽出したカンゾウ抽出物を含有する美白用組成物とする。本願発明のカンゾウの抽出物は、優れたメラニン生成抑制作用及び抗酸化作用を有し、安定性にも優れていた。本願発明のカンゾウの抽出物は、皮膚の老化予防といった美容分野だけでなく、老化による機能低下の抑制、治療等といった医療分野にも利用でき、化粧品、医薬部外品及び医薬品等への応用が期待される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1工程として、カンゾウを液体の水からなる前処理剤で抽出し、濾過して、ろ液と抽出残渣に分別し、第2工程として、第1工程の抽出残渣を更に水、低級アルコール及び液状多価アルコールからなる群より選ばれる1種又は2種以上の抽出剤を用い、抽出温度が第1工程の抽出温度よりも20℃以上高い温度で抽出したカンゾウ抽出物を含有することを特徴とする美白用組成物。
【請求項2】
第1工程の抽出温度が0~20℃であり、更に、第2工程の抽出剤が水であり、かつ、抽出温度が第1工程の抽出温度よりも70℃以上高いことを特徴とする請求項1に記載の美白用組成物。
【請求項3】
第1工程の抽出温度が0~20℃であり、更に、第2工程の抽出剤が25重量%以上のエタノール水溶液又はエタノールであることを特徴とする請求項1に記載の美白用組成物。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の美白用組成物の製造方法。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか1項に記載の美白用組成物を含有することを特徴とする、美白及び抗酸化用途の皮膚外用剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規の抽出方法で抽出したカンゾウ抽出物を含有する美白用組成物、皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、シミ、ソバカス、日焼け等に見られる皮膚の色素沈着は、ホルモンの異常や紫外線の刺激により、皮膚内に存在するメラニン色素生成細胞がメラニン色素を過剰に生成し、これが皮膚内に沈着することが原因と考えられている。このような色素沈着を防ぐ方法の一つに、メラニンの過剰な生成を抑制する方法が知られている。従来、色素沈着の治療には、内用や外用において、アスコルビン酸(ビタミンC)等が美白剤として用いられてきた(特許文献1)。
【0003】
また、紫外線や酸化ストレスにより細胞内で生じる活性酸素も、メラニン生成の要因の一つであると言われている。メラノサイトにおいては、活性酸素がメラニン産生を促進することが知られており、この活性酸素を抗酸化物質により捕捉することでメラニン産生を抑制することがこれまでに報告されている。そこで、これまでに活性酸素消去剤や抗酸化剤が検討され、Superoxide dismutase(SOD)やカタラーゼ等の活性酸素消去酵素、SOD様活性物質等の活性酸素消去剤や抗酸化剤を含有した化粧品、医薬部外品及び医薬品等が開発されている(非特許文献1、特許文献2、3)。
【0004】
カンゾウ(学名:Glycyrrhiza uralensis)は、マメ科カンゾウ属に属する多年草である。これまでカンゾウの地下部(根及びストロン)の抽出物が、抗炎症作用、抗アレルギー作用、抗ストレス作用があり、生薬として用いられていることが知られている(非特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5-229931号公報
【特許文献2】特開平9-118630号公報
【特許文献3】特開平9-208484号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】J.Soc.Cosmet.Chem.Jpn. Vol.44,No.2, pp139-142,2010
【非特許文献2】「世界有用植物事典」、平凡社、1193頁、1989年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
安全で安定性に優れ、メラニン生成抑制作用及び抗酸化作用に優れた素材が望まれているが、未だ十分満足し得るものが提供されていないのが現状である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような事情により、本発明者らは鋭意検討した結果、第1工程として、カンゾウを液体の水からなる前処理剤で抽出し、濾過して、ろ液と抽出残渣に分別し、第2工程として、第1工程の抽出残渣を更に水、低級アルコール及び液状多価アルコールからなる群より選ばれる1種又は2種以上の抽出剤を用い、抽出温度が第1工程の抽出温度よりも20℃以上高い温度で抽出して得られたカンゾウの抽出物が、優れたメラニン生成抑制作用及び抗酸化作用を持ち、安定性においても優れていることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は以下の発明を包含する。
(1)第1工程として、カンゾウを液体の水からなる前処理剤で抽出し、濾過して、ろ液と抽出残渣に分別し、第2工程として、第1工程の抽出残渣を更に水、低級アルコール及び液状多価アルコールからなる群より選ばれる1種又は2種以上の抽出剤を用い、抽出温度が第1工程の抽出温度よりも20℃以上高い温度で抽出したカンゾウ抽出物を含有することを特徴とする美白用組成物。
(2)第1工程の抽出温度が0~20℃であり、更に、第2工程の抽出剤が水であり、かつ、抽出温度が第1工程の抽出温度よりも70℃以上高いことを特徴とする(1)に記載の美白用組成物。
(3)第1工程の抽出温度が0~20℃であり、更に、第2工程の抽出剤が25重量%以上のエタノール水溶液又はエタノールであることを特徴とする(1)に記載の美白用組成物。
(4)(1)から(3)のいずれか1項に記載の美白用組成物の製造方法。
(5)(1)から(3)のいずれか1項に記載の美白用組成物を含有することを特徴とする、美白及び抗酸化用途の皮膚外用剤。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、特定の方法で抽出したカンゾウの抽出物を有効成分として含有する美白用皮膚外用剤が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に用いるカンゾウ(別名:ウラルカンゾウ)(学名:Glycyrrhiza uralensis)は、マメ科カンゾウ属に属する多年草で、中国東北部、中北部、西北部、あるいはモンゴルに自生している。また、スペインカンゾウ(学名:Glycyrrhiza glabra)は中国西北部、中東、ヨーロッパ諸国、旧ソ連の一部に自生している。本発明に用いるカンゾウは、好ましくはウラルカンゾウが良い。また本発明に用いるカンゾウは、その花、果実、種子、葉、茎、根等の植物体の一部又は植物体全体(全草)、あるいはそれらの混合物を用いることができるが、特に地下部(根及びストロン)が好ましい。また、植物体をそのまま使用しても良く、乾燥、粉砕、細切等の処理を行っても良い。なお、Glycyrrhiza uralensis又はGlycyrrhiza glabraを基原植物として市販された生薬「甘草(カンゾウ)」を用いることもできる。
【0012】
[第1工程:前処理剤での抽出]
前処理剤としては、液体の水を用いる。また、上記前処理剤に酸やアルカリを添加して、pH調整した前処理剤を使用することもできる。前処理剤の使用量については、特に限定はなく、例えばカンゾウ(乾燥重量)に対し、5倍以上であれば良い。好ましくは、10倍以上が良く、特に好ましくは20倍以上が良い。前処理剤での抽出温度や抽出時間は抽出時の圧力等によって適宜選択できるが、抽出温度は好ましくは0~20℃が良く、より好ましくは2~15℃が良く、最も好ましくは5~10℃が良い。前処理剤での抽出に用いるカンゾウはそのまま用いても良いが、前処理の効率の面で粉砕、細切等の処理を行うことが好ましい。粉砕や細切を行う場合には,11.2mmのメッシュサイズのふるい(2メッシュ)を通過するものが好ましく、7.47mmのメッシュサイズのふるい(3メッシュ)を通過するものがより好ましく、5.55mmのメッシュサイズのふるい(4メッシュ)を通過するものが最も好ましい。抽出後、ろ紙やメッシュ、ふるいなどを用いて濾過を行うことができる。ここで回収した抽出残渣を、次の第2工程に用いる。
【0013】
[第2工程:抽出剤での抽出]
抽出剤としては、水、低級アルコール類(メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール等)及び液状多価アルコール類(1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等)からなる群より選ばれる1種又は2種以上を用いる。好ましくは、水-エタノールの混合極性溶媒又はエタノールが良い。中でも、エタノールを25重量%以上含有するのが最も好ましい。また、上記抽出剤に酸やアルカリを添加して、pH調整した抽出剤を使用することもできる。抽出剤の使用量については、特に限定はなく、例えばカンゾウ(乾燥重量)に対し、5倍以上、好ましくは10倍以上であれば良いが、抽出後に濃縮を行ったり、単離したりする場合の操作の便宜上100倍以下であることが好ましい。また、抽出時間は、用いる抽出剤の種類や抽出時の圧力等によって適宜選択できるが、抽出温度は、前処理剤による抽出温度よりも20℃以上高い温度であることが必要である。中でも、水を用いる場合は、前処理剤による抽出温度よりも70℃以上高いことが好ましく、80℃以上高いことがより好ましく、90℃以上高いことが最も好ましい。濾過は第1工程と同様に行うことができる。
【0014】
なお、前処理剤での抽出残渣は、乾燥してから抽出剤で抽出しても良いし、乾燥せずにそのまま抽出剤で抽出しても良い。その際は前記抽出残渣に残存する水の影響を考慮して抽出溶媒を選択すると良い。抽出剤による抽出方法は特に限定されず、例えば、撹拌抽出又はカラム抽出する方法等により行うことができる。
【0015】
上記抽出剤による抽出物は、抽出した溶液のまま用いても良いが、必要に応じて、本発明の効果を奏する範囲で、濃縮(減圧濃縮、膜濃縮等による濃縮)、希釈、濾過、活性炭等による脱色、脱臭、エタノール沈殿等の処理を行ってから用いても良い。更には、抽出した溶液を濃縮乾固、噴霧乾燥、凍結乾燥等の処理を行い、乾燥物として用いても良い。
【0016】
本発明は、上記抽出剤による抽出物をそのまま使用しても良く、抽出物の効果を損なわない範囲で、化粧品、医薬部外品、医薬品等に用いられる成分である油脂類、ロウ類、炭化水素類、脂肪酸類、アルコール類、エステル類、界面活性剤、金属石鹸、pH調整剤、防腐剤、香料、保湿剤、粉体、紫外線吸収剤、増粘剤、色素、酸化防止剤、美白剤、キレート剤、賦形剤、皮膜剤等の成分が含有されていても良い。
【0017】
本発明は、化粧品、医薬部外品、医薬品のいずれにも用いることができ、その剤形としては、例えば、化粧水、クリーム、乳液、ゲル剤、エアゾール剤、エッセンス、パック、洗浄剤、浴用剤、ファンデーション、打粉、軟膏、パップ剤等が挙げられる。
【0018】
本発明に用いる上記抽出物の含有量は、固形物に換算して0.0001重量%以上が好ましく、0.001~10重量%がより好ましい。更に、0.01~5重量%が最も好ましい。0.0001重量%未満では十分な効果は望みにくい。10重量%を超えると、効果の増強は認められにくく不経済である。
【0019】
次に本発明を詳細に説明するため、実施例として本発明に用いる抽出物の製造例、実験例及び処方例を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。製造例に示す%とは重量%を、処方例に示す含有量の部とは重量部を示す。
【実施例0020】
カンゾウの抽出物の製造例
本発明のカンゾウの抽出物を製造例1~4の通り製造した。従来のカンゾウの抽出物を比較製造例1~4の通り製造した。抽出材料にはカンゾウ(学名:Glycyrrhiza uralensis)の地下部(根及びストロン)の粉砕品(11.2mmのメッシュサイズのふるいを通過したもの)を用いた。
【0021】
(製造例1)前処理を施したカンゾウの熱水抽出物の調製
カンゾウの地下部の乾燥物10gに対し20倍量の水を加え、5℃で24時間抽出した(22時間以内で抽出液の固形分濃度上昇が停止し、これ以上抽出されなくなった)。得られた抽出液をろ紙No.5Cで濾過した後、その残渣を乾燥し、得られた乾燥残渣に対し10倍量の水を加え、95℃で2時間抽出した。得られた抽出液をろ紙No.5Cで濾過し、その濾液を濃縮し、凍結乾燥してカンゾウの熱水抽出物を0.4g得た。
【0022】
(比較製造例1)従来のカンゾウの熱水抽出物の調製
カンゾウの地下部の乾燥物10gに対し10倍量の水を加え、95℃で2時間抽出した。得られた抽出液をろ紙No.5Cで濾過し、その濾液を濃縮し、凍結乾燥してカンゾウの熱水抽出物を2.1g得た。
【0023】
(製造例2)前処理を施したカンゾウの50%エタノール抽出物の調製
カンゾウの地下部の乾燥物10gに対し20倍量の水を加え、5℃で24時間抽出した(22時間以内で抽出液の固形分濃度上昇が停止し、これ以上抽出されなくなった)。得られた抽出液をろ紙No.5Cで濾過した後、その残渣を乾燥し、得られた乾燥残渣に対し10倍量の50%エタノール水溶液を加え、25℃で7日間浸漬し、抽出を行った。得られた抽出液をろ紙No.5Cで濾過し、その濾液を濃縮し、凍結乾燥してカンゾウの50%エタノール抽出物を0.7g得た。
【0024】
(比較製造例2)従来のカンゾウの50%エタノール抽出物の調製
カンゾウの地下部の乾燥物10gに対し10倍量の50%エタノール水溶液を加え、25℃で7日間浸漬し、抽出を行った。得られた抽出液をろ紙No.5Cで濾過し、その濾液を濃縮し、凍結乾燥してカンゾウの50%エタノール抽出物を2.6g得た。
【0025】
(製造例3)前処理を施したカンゾウのエタノール抽出物の調製
カンゾウの地下部の乾燥物10gに対し20倍量の水を加え、5℃で24時間抽出した(22時間以内で抽出液の固形分濃度上昇が停止し、これ以上抽出されなくなった)。得られた抽出液をろ紙No.5Cで濾過した後、その残渣を乾燥し、得られた乾燥残渣に対し10倍量のエタノールを加え、25℃で7日間浸漬し、抽出を行った。得られた抽出液をろ紙No.5Cで濾過し、その濾液を濃縮し、凍結乾燥してカンゾウのエタノール抽出物を0.4g得た。
【0026】
(比較製造例3)従来のカンゾウのエタノール抽出物の調製
カンゾウの地下部の乾燥物10gに対し10倍量のエタノールを加え、25℃で7日間浸漬し、抽出を行った。得られた抽出液をろ紙No.5Cで濾過し、その濾液を濃縮し、凍結乾燥してカンゾウのエタノール抽出物を0.6g得た。
【0027】
(製造例4)前処理を施したカンゾウの80%1,3-ブチレングリコール抽出物の調製
カンゾウの地下部の乾燥物10gに対し20倍量の水を加え、5℃で24時間抽出した(22時間以内で抽出液の固形分濃度上昇が停止し、これ以上抽出されなくなった)。得られた抽出液をろ紙No.5Cで濾過した後、その残渣を乾燥し、得られた乾燥残渣に対し10倍量の80%1,3-ブチレングリコール水溶液を加え、25℃で7日間浸漬し、抽出を行った。得られた抽出液をろ紙No.5Cで濾過して、カンゾウの80%1,3-ブチレングリコール抽出物を45.6g得た。
【0028】
(比較製造例4)従来のカンゾウの80%1,3-ブチレングリコール抽出物の調製
カンゾウの地下部の乾燥物10gに対し10倍量の80%1,3-ブチレングリコール水溶液を加え、25℃で7日間浸漬し、抽出を行った。得られた抽出液をろ紙No.5Cで濾過して、カンゾウの80%1,3-ブチレングリコール抽出物を89.6g得た。
【実施例0029】
(処方例1) 化粧水
処方 含有量(部)
1.前処理を施したカンゾウの熱水抽出物(製造例1) 0.1
2.1,3-ブチレングリコール 8.0
3.グリセリン 2.0
4.キサンタンガム 0.02
5.クエン酸 0.01
6.クエン酸ナトリウム 0.1
7.エタノール 5.0
8.パラオキシ安息香酸メチル 0.1
9.ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(40E.O.) 0.1
10.香料 適量
11.精製水にて全量を100とする
[製造方法]成分1~6及び11と、成分7~10をそれぞれ均一に溶解し、両者を混合し濾過して製品とする。
【0030】
(比較処方例1) 従来の化粧水
処方例1において、前処理を施したカンゾウの熱水抽出物を従来のカンゾウの熱水抽出物に置き換えたものを、従来の化粧水とした。
【0031】
(処方例2) クリーム
処方 含有量(部)
1.前処理を施したカンゾウの50%エタノール抽出物(製造例2) 1.0
2.スクワラン 5.5
3.オリーブ油 3.0
4.ステアリン酸 2.0
5.ミツロウ 2.0
6.ミリスチン酸オクチルドデシル 3.5
7.ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O.) 3.0
8.ベヘニルアルコール 1.5
9.モノステアリン酸グリセリン 2.5
10.香料 0.1
11.パラオキシ安息香酸メチル 0.2
12.1,3-ブチレングリコール 8.5
13.精製水にて全量を100とする
[製造方法]成分2~9を加熱溶解して混合し、70℃に保ち油相とする。成分1及び11~13を加熱溶解して混合し、75℃に保ち水相とする。油相に水相を加えて乳化して、かき混ぜながら冷却し、45℃で成分10を加え、更に30℃まで冷却して製品とする。
【0032】
(処方例3) 乳液
処方 含有量(部)
1.前処理を施したカンゾウのエタノール抽出物(製造例3) 0.01
2.スクワラン 5.0
3.オリーブ油 5.0
4.ホホバ油 5.0
5.セタノール 1.5
6.モノステアリン酸グリセリン 2.0
7.ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O.) 3.0
8.ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(20E.O.) 2.0
9.香料 0.1
10.プロピレングリコール 1.0
11.グリセリン 2.0
12.パラオキシ安息香酸メチル 0.2
13.精製水にて全量を100とする
[製造方法]成分1~8を加熱溶解して混合し、70℃に保ち油相とする。成分10~13を加熱溶解して混合し、75℃に保ち水相とする。油相に水相を加えて乳化して、かき混ぜながら冷却し、45℃で成分9を加え、更に30℃まで冷却して製品とする。
【0033】
(処方例4) ゲル剤
処方 含有量(部)
1.前処理を施したカンゾウの
80%1,3-ブチレングリコール抽出物(製造例4) 1.0
2.エタノール 5.0
3.パラオキシ安息香酸メチル 0.1
4.ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(60E.O.) 0.1
5.香料 適量
6.1,3-ブチレングリコール 5.0
7.グリセリン 5.0
8.キサンタンガム 0.1
9.カルボキシビニルポリマー 0.2
10.水酸化カリウム 0.2
11.精製水にて全量を100とする
[製造方法]成分2~5と、成分1及び6~11をそれぞれ均一に溶解し、両者を混合して製品とする。
【0034】
(処方例5) パック
処方 含有量(部)
1.前処理を施したカンゾウの熱水抽出物(製造例1) 1.0
2.前処理を施したカンゾウの
80%1,3-ブチレングリコール抽出物(製造例4) 5.0
3.ポリビニルアルコール 12.0
4.エタノール 5.0
5.1,3-ブチレングリコール 8.0
6.パラオキシ安息香酸メチル 0.2
7.ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(20E.O.) 0.5
8.クエン酸 0.1
9.クエン酸ナトリウム 0.3
10.香料 適量
11.精製水にて全量を100とする
[製造方法]成分1~11を均一に溶解し製品とする。
【0035】
(処方例6) ファンデーション
処方 含有量(部)
1.前処理を施したカンゾウの50%エタノール抽出物(製造例2) 1.0
2.ステアリン酸 2.4
3.ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート(20E.O.) 1.0
4.ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O.) 2.0
5.セタノール 1.0
6.液状ラノリン 2.0
7.流動パラフィン 3.0
8.ミリスチン酸イソプロピル 6.5
9.カルボキシメチルセルロースナトリウム 0.1
10.ベントナイト 0.5
11.プロピレングリコール 4.0
12.トリエタノールアミン 1.1
13.パラオキシ安息香酸メチル 0.2
14.二酸化チタン 8.0
15.タルク 4.0
16.ベンガラ 1.0
17.黄酸化鉄 2.0
18.香料 適量
19.精製水にて全量を100とする
[製造方法]成分2~8を加熱溶解し、80℃に保ち油相とする。成分19に成分9をよく膨潤させ、続いて、成分1及び10~13を加えて均一に混合する。これに粉砕機で粉砕混合した成分14~17を加え、ホモミキサーで撹拌し75℃に保ち水相とする。油相に水相をかき混ぜながら加え、乳化する。その後、冷却し、45℃で成分18を加え、かき混ぜながら30℃まで冷却して製品とする。
【0036】
(処方例7) 浴用剤
処方 含有量(部)
1.前処理を施したカンゾウのエタノール抽出物(製造例3) 1.0
2.炭酸水素ナトリウム 50.0
3.黄色202号(1) 適量
4.香料 適量
5.硫酸ナトリウムにて全量を100とする
[製造方法]成分1~5を均一に混合し製品とする。
【0037】
(処方例8) 軟膏
処方 含有量(部)
1.前処理を施したカンゾウの熱水抽出物(製造例1) 5.0
2.前処理を施したカンゾウの50%エタノール抽出物(製造例2) 1.0
3.ポリオキシエチレンセチルエーテル(30E.O.) 2.0
4.モノステアリン酸グリセリン 10.0
5.流動パラフィン 5.0
6.セタノール 6.0
7.パラオキシ安息香酸メチル 0.1
8.プロピレングリコール 10.0
9.精製水にて全量を100とする
[製造方法]成分3~6を加熱溶解して混合し、70℃に保ち油相とする。成分1、2及び7~9を加熱溶解して混合し、75℃に保ち水相とする。油相に水相を加えて乳化して、かき混ぜながら30℃まで冷却して製品とする。
【0038】
次に、本発明の効果を詳細に説明するため、実験例を挙げる。
【実施例0039】
実験例1 B16マウスメラノーマを用いたメラニン生成抑制試験
B16マウスメラノーマ細胞をφ60mm dishに3×10個播種し、各試料を表1の最終濃度となるように添加した10%FBSを含むMEM培養液にて、37℃、5%CO条件下にて5日間培養した。培養後、細胞の剥離を行い、遠心操作をして得られたペレットを超音波破砕操作によりPBS(-)に溶解させた。タンパク質定量は、Lowry法(J.Biol.Chem.,193,265-275,1951)を用いて行った。また、メラニン量を測定する場合、タンパク質定量用に取った残りの細胞破砕液に4N NaOHを加え、60℃にて2時間加温した後、分光光度計(島津製作所)を用いて475nmにおける吸光度を測定し、検量線からメラニン量を求め、タンパク質1mg当たりのメラニン量を算出した。メラニン生成抑制率は、コントロール(試料未添加)群に対する試料添加群のメラニン量の減少量の割合から算出した。
【0040】
これらの実験結果を表1に示した。その結果、本発明の前処理を施したカンゾウの抽出物には、優れたメラニン生成抑制作用を有していることが認められた。特に、従来のカンゾウの抽出物と比較して、前処理を施したカンゾウの抽出物の方が試料終濃度当たりの効果が顕著に高かった。
【0041】
【表1】
【0042】
実験例2 活性酸素消去作用
フリーラジカル捕捉除去作用の評価を行った。フリーラジカルのモデルとしては、安定なフリーラジカルであるα,α-ジフェニル-β-ピクリルヒドラジル(以下DPPHとする)を用い、試料と一定の割合で一定時間反応させ、減少するラジカルの量を517nmの吸光度の減少量から測定した。
【0043】
フリーラジカル捕捉除去作用の測定方法
各試料を、終濃度25~750μg/mLとなるように加えた1.0M酢酸緩衝液(pH5.5)2mLにエタノール(99.5)2mL及び0.5mMDPPHエタノール溶液1mLを加えて反応液とした。また、油溶性の試料の場合は、エタノール(99.5)2mLに試料を加えて反応液とした。その後、37℃で30分間反応させ、水を対照として517nmの吸光度(A)を測定した。また、ブランクとして試料の代わりに精製水を用いて吸光度(B)を測定した。フリーラジカルの捕捉除去率は、以下に示す式より算出した。
フリーラジカル捕捉除去率(%)=(1-A/B)×100
【0044】
これらの試験結果を、表2に示した。本発明の前処理を施したカンゾウの抽出物には、安定で優れたフリーラジカル捕捉除去作用(抗酸化作用)を有していることが認められた。その効果は、従来のカンゾウの抽出物と比較して顕著に高かった。
【0045】
【表2】
【0046】
実験例3 使用試験
本発明の処方例1及び比較処方例1について化粧水の使用感を評価した。
【0047】
パネラー5名を一群として処方例1及び比較処方例1の化粧水をブラインドにて使用させ、使用感を比較し、加えて皮膚トラブルの有無を評価した。
【0048】
その結果、処方例1で得られた化粧水は、比較処方例1よりも使用感が良好で、皮膚トラブル等なく安全に使用できた。また、処方成分の劣化についても問題なかった。
【産業上の利用可能性】
【0049】
以上のことから、本発明のカンゾウの抽出物は、優れたメラニン生成抑制作用及び抗酸化作用を有し、安定性にも優れていた。よって、本発明のカンゾウの抽出物は、皮膚の老化といった美容分野だけでなく、老化による機能低下の抑制、治療等といった医療分野にも利用でき、化粧品、医薬部外品及び医薬品等への応用が期待される。