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特開2024-155390クリーニングシートおよびクリーニング機能付搬送部材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155390
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】クリーニングシートおよびクリーニング機能付搬送部材
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20241024BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20241024BHJP
   H01L 21/677 20060101ALI20241024BHJP
   B08B 1/00 20240101ALI20241024BHJP
【FI】
H01L21/304 644G
C08G73/10
H01L21/68 A
B08B1/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023070065
(22)【出願日】2023-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003845
【氏名又は名称】弁理士法人籾井特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】深道 佑一
【テーマコード(参考)】
3B116
4J043
5F131
5F157
【Fターム(参考)】
3B116AA01
3B116AA46
3B116AB54
3B116BA01
3B116BA23
4J043QB15
4J043QB26
4J043QB31
4J043RA35
4J043SA06
4J043SA43
4J043SA46
4J043SA85
4J043UA041
4J043UA122
4J043UA131
4J043UA132
4J043UA141
4J043UA151
4J043UA761
4J043UA771
4J043UB012
4J043UB021
4J043UB062
4J043UB121
4J043UB122
4J043UB151
4J043UB152
4J043UB162
4J043UB281
4J043UB301
4J043UB302
4J043UB402
4J043VA011
4J043VA021
4J043VA022
4J043VA041
4J043VA051
4J043VA052
4J043VA061
4J043VA062
4J043VA071
4J043VA081
4J043VA091
4J043VA092
4J043WA05
4J043WA16
4J043ZA60
4J043ZB11
4J043ZB60
5F131AA02
5F131AA03
5F131AA32
5F131CA12
5F131CA13
5F131DA02
5F131DA07
5F131DA08
5F131JA16
5F131JA22
5F157AA73
5F157BA10
5F157DA11
5F157DB11
(57)【要約】
【課題】異物除去性能および搬送性能に優れ、かつ、環境負荷が低減されたクリーニングシートを提供すること。
【解決手段】本発明の実施形態によるクリーニングシートは、クリーニング層を備え、該クリーニング層が、ダイマージアミン由来の構成単位を含む樹脂Aを含み、該クリーニング層の25℃における貯蔵弾性率が、100MPa~2500MPaである。上記クリーニングシートにおいて、上記樹脂Aが、ポリイミド系樹脂であってもよい。
【選択図】図3

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クリーニング層を備え、
該クリーニング層が、ダイマージアミン由来の構成単位を含む樹脂Aを含み、
該クリーニング層の25℃における貯蔵弾性率が、100MPa~2500MPaである、
クリーニングシート。
【請求項2】
前記樹脂Aが、ポリイミド系樹脂である、請求項1に記載のクリーニングシート。
【請求項3】
前記ポリイミド系樹脂が、モノマー成分としてテトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分とを用い、該モノマー成分の反応物であるポリアミック酸をイミド化して得られる樹脂であり、
該ジアミン成分が、ダイマージアミンと、ダイマージアミン以外のジアミンとを含む、
請求項2に記載のクリーニングシート。
【請求項4】
前記ジアミン成分が、ダイマージアミン以外のジアミンとして、アミン構造を有する末端を少なくとも二つ有し、ポリエーテル構造を有するジアミン化合物を含む、請求項3に記載のクリーニングシート。
【請求項5】
前記モノマー成分中、前記アミン構造を有する末端を少なくとも二つ有し、ポリエーテル構造を有するジアミン化合物の含有割合が、該モノマー成分100重量部に対して、10重量部~35重量部である、請求項4に記載のクリーニングシート。
【請求項6】
前記モノマー成分中、前記アミン構造を有する末端を少なくとも二つ有し、ポリエーテル構造を有するジアミン化合物と前記ダイマージアミンとの合計含有割合が、該モノマー成分100重量部に対して、10重量部~60重量部である、請求項4に記載のクリーニングシート。
【請求項7】
前記クリーニング層を構成する樹脂のバイオマス度が、10%以上である、請求項1に記載のクリーニングシート。
【請求項8】
前記クリーニング層の25℃における貯蔵弾性率が、100MPa~1000MPaである、請求項1に記載のクリーニングシート。
【請求項9】
請求項1に記載のクリーニングシートと搬送部材を有する、クリーニング機能付搬送部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリーニングシートおよびクリーニング機能付搬送部材に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体、フラットパネルディスプレイ、プリント基板などの製造装置や検査装置など、異物を嫌う各種の基板処理装置では、搬送装置(代表的には、チャックテーブルなど)と基板とを物理的に接触させながら搬送する。その際、搬送装置に異物が付着していると、後続の基板をつぎつぎと汚染するため、定期的に装置を停止し、洗浄処理する必要があった。その結果、処理装置の稼動率が低下するという問題や装置の洗浄処理のために多大な労力が必要となるという問題があった。
【0003】
このような問題を克服するため、板状部材を基板処理装置内に搬送することにより搬送装置に付着している異物を除去する方法(特許文献1参照)が提案されている。この方法によれば、基板処理装置を停止させて洗浄処理を行う必要がないので、処理装置の稼動率が低下するという問題は解消される。しかし、この方法によっては、搬送装置に付着している異物を十分に除去することができていない。
【0004】
また、粘着性物質を固着した基板をクリーニング部材として基板処理装置内に搬送することにより、搬送装置に付着した異物を除去する方法(特許文献2参照)が提案されている。この方法は、特許文献1に記載の方法に比べて、異物の除去性に優れる。しかし、特許文献2に記載の方法においては、粘着性物質と搬送装置との接触部分が強く接着しすぎて離れなくなる問題が生じ得る。その結果、粘着性物質を固着した基板を確実に搬送できないという問題や、搬送装置を破損させるという問題、また、搬送装置を汚染してしまうという問題が生じ得る。一方、粘着性物質と搬送装置との密着力が小さくなりすぎると、クリーニング部材の異物の除去性が低下してしまい、十分なクリーニング効果が得られないという問題が生じ得る。
【0005】
一方、種々の分野において、環境負荷低減の要求が、年々高くなっており、上記のようなクリーニング部材においても、製造時、使用時等における環境負荷低減が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11-87458号公報
【特許文献2】特開平10-154686号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、異物除去性能および搬送性能に優れ、かつ、環境負荷が低減されたクリーニングシートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[1]本発明の実施形態によるクリーニングシートは、クリーニング層を備え、該クリーニング層が、ダイマージアミン由来の構成単位を含む樹脂Aを含み、該クリーニング層の25℃における貯蔵弾性率が、100MPa~2500MPaである。
[2]上記[1]に記載のクリーニングシートにおいて、上記樹脂Aが、ポリイミド系樹脂であってもよい。
[3]上記[2]に記載のクリーニングシートにおいて、上記ポリイミド系樹脂が、モノマー成分としてテトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分とを用い、該モノマー成分の反応物であるポリアミック酸をイミド化して得られる樹脂であり、該ジアミン成分が、ダイマージアミンと、ダイマージアミン以外のジアミンとを含んでいてもよい。
[4]上記[3]に記載のクリーニングシートにおいて、上記ジアミン成分が、ダイマージアミン以外のジアミンとして、アミン構造を有する末端を少なくとも二つ有し、ポリエーテル構造を有するジアミン化合物を含んでいてもよい。
[5]上記[4]に記載のクリーニングシートにおいて、上記モノマー成分中、上記アミン構造を有する末端を少なくとも二つ有し、ポリエーテル構造を有するジアミン化合物の含有割合が、該モノマー成分100重量部に対して、10重量部~35重量部であってもよい。
[6]上記[3]または[4]に記載のクリーニングシートにおいて、上記モノマー成分中、上記アミン構造を有する末端を少なくとも二つ有し、ポリエーテル構造を有するジアミン化合物と前記ダイマージアミンとの合計含有割合が、該モノマー成分100重量部に対して、10重量部~60重量部であってもよい。
[7]上記[1]から[6]のいずれかに記載のクリーニングシートにおいて、上記クリーニング層を構成する樹脂のバイオマス度が、10%以上であってもよい。
[8]上記[1]から[7]のいずれかに記載のクリーニングシートにおいて、上記クリーニング層の25℃における貯蔵弾性率が、100MPa~1000MPaであってもよい。
[9]本発明の実施形態によるクリーニング機能付搬送部材は、上記[1]から[8]のいずれかに記載のクリーニングシートと搬送部材を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、異物除去性能および搬送性能に優れ、かつ、環境負荷が低減されたクリーニングシートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態によるクリーニングシートの概略断面図である。
図2】本発明の実施形態によるクリーニングシートの概略断面図である。
図3】本発明の実施形態によるクリーニングシートの概略断面図である。
図4】本発明の実施形態によるクリーニング機能付搬送部材概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
A.クリーニングシート
A-1.概要
本発明の実施形態によるクリーニングシートは、クリーニング層を備える。本発明の実施形態によるクリーニングシートは、クリーニング層のみから構成されていてもよいし、他の層を有していてもよい。
【0012】
図1は、本発明の実施形態によるクリーニングシートの一つの実施形態を示す概略断面図である。図1において、クリーニングシート100は、クリーニング層10と、クリーニング層10の少なくとも片面に配置された保護フィルム20とを有する。保護フィルム20は、クリーニング層10の保護等を目的として備えられ得るものであり、目的に応じて省略されてもよい。すなわち、本発明のクリーニングシートは、クリーニング層10のみから構成されていてもよい。
【0013】
図2は、本発明の実施形態によるクリーニングシートの別の実施形態を示す概略断面図である。図2において、クリーニングシート100は、保護フィルム20と、クリーニング層10と、粘着剤層30とをこの順に有する。保護フィルム20は、クリーニング層10の保護等を目的として備えられ得るものであり、目的に応じて省略されてもよい。
【0014】
図3は、本発明の実施形態によるクリーニングシートの別の実施形態を示す概略断面図である。図3において、クリーニングシート100は、保護フィルム20と、クリーニング層10と、支持体40と、粘着剤層30とをこの順に有する。保護フィルム20は、クリーニング層10の保護等を目的として備えられ得るものであり、目的に応じて省略されてもよい。また、粘着剤層30を省略してもよい。
【0015】
上記クリーニング層は、ダイマージアミン由来の構成単位を含む樹脂Aを含む。
【0016】
上記樹脂Aとしては、例えば、ポリイミド系樹脂、ポリベンゾオキサゾール系樹脂等が挙げられる。上記樹脂Aは、ソフトセグメントを有することが好ましい。ソフトセグメントとは、ポリマーに柔軟性を付与し得るセグメントであり、例えば、主鎖に長鎖直線状基又は長鎖分岐基を有するセグメントであり得、柔らかく、伸縮性を有する。ソフトセグメント構成材料の1つとして、ダイマージアミンが用いられ得る。ダイマージアミンとしては、植物由来のダイマージアミン、具体的には、材料として植物由来の不飽和脂肪酸が用いられたダイマージアミンが好ましく用いられる。
【0017】
本発明の実施形態においては、ソフトセグメント構成材料の1つとして、ダイマージアミンを用いることにより、バイオマス化されたクリーニングシートを提供することができる。本発明においては、ダイマージアミンを用いながらも、ゲル化を防止して、好ましくワニス化されたクリーニング層形成用組成物を調製し、それによりシート状のクリーニング層(結果として、クリーニングシート)を形成し得たことが、大きな成果のひとつである。
【0018】
上記クリーニング層の25℃における貯蔵弾性率は、100MPa~2500MPaである。このような範囲であれば、異物除去性能および搬送性能に優れたクリーニングシートを成型性よく得ることができる。
【0019】
A-2.クリーニング層
クリーニングシート層がポリイミド系樹脂を含む場合、クリーニング層中のポリイミド系樹脂の含有割合は、クリーニング層100重量部に対して、好ましくは50重量部~100重量部であり、より好ましくは70重量部~100重量部であり、さらに好ましくは90重量部~100重量部であり、特に好ましくは95重量部~100重量部であり、最も好ましくは98重量部~100重量部である。
【0020】
ポリイミド系樹脂としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切なポリイミド系樹脂を採用し得る。ポリイミド系樹脂は、好ましくは、ポリアミック酸をイミド化して得られる。ポリアミック酸は、代表的には、モノマー成分としてテトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分とを用い、これらを実質的に等モル比で任意の適切な有機溶媒中で反応させて得ることができる。
【0021】
ジアミン成分は、ダイマージアミンを含み得る。ダイマージアミンを含むジアミン成分を用いることにより、ダイマージアミン由来の構成単位を含む樹脂Aから形成されたクリーニング層を得ることができる。ポリイミド系樹脂において、ダイマージアミン由来の構成単位は、上記ソフトセグメントであり得る。上記のとおり、ダイマージアミンとしては、植物由来のダイマージアミン、具体的には、材料として植物由来の不飽和脂肪酸が用いられたダイマージアミンが好ましく用いられる。
【0022】
上記ポリアミック酸を形成するためのジアミン成分中、ダイマージアミンの含有割合は、ジアミン成分100重量部に対して、好ましくは10重量部~90重量部であり、より好ましくは15重量部~85重量部であり、さらに好ましくは30重量部~70重量部である。
【0023】
ダイマージアミンとしては、例えば、一般式(1)で表されるジアミン(脂肪族ジアミン)が用いられる。ダイマージアミンは、1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
【化1】
【0025】
一般式(1)中、Xはy員環構造の炭化水素基であり、yは4~8であり、-C2m-NH基および-C2n-NH基はXに結合した長鎖アルキルアミノ基であり、mは6~12であり、nは6~12であり、-C2p+1基および-C2q+1基はXに結合した長鎖アルキル基であり、pは6~12であり、qは6~12であり、YはXに結合した炭素数6~12の長鎖アルキル基であり、aはXに結合したYの数であって、aは0~4であり、a個のYは互いに同じ長鎖アルキル基であってもよいし異なる長鎖アルキル基であってもよく、Yは-C2r+1基で表され、rは6~12である。また、上記長鎖アルキル基は分岐鎖を含んでいてもよい。
【0026】
一般式(1)におけるyは、好ましくは5~7であり、より好ましくは6である。すなわち、一般式(1)におけるXの好ましい実施形態は、6員環構造の炭化水素基(シクロヘキシル基)である。
【0027】
一般式(1)におけるmは、好ましくは6~10であり、より好ましくは6~8であり、さらに好ましくは8である。
【0028】
一般式(1)におけるnは、好ましくは6~10であり、より好ましくは6~8であり、さらに好ましくは6である。
【0029】
一般式(1)におけるpは、好ましくは6~10であり、より好ましくは6~8であり、さらに好ましくは8である。
【0030】
一般式(1)におけるqは、好ましくは6~10であり、より好ましくは6~8であり、さらに好ましくは8である。
【0031】
一般式(1)におけるrは、好ましくは6~10であり、より好ましくは6~8であり、さらに好ましくは8である。
【0032】
一般式(1)におけるaは、好ましくは0~2であり、より好ましくは0である。
【0033】
一般式(1)で表される脂肪族ジアミンの好ましい実施形態は、Xが6員環構造の炭化水素基(シクロヘキシル基)であり、mが6~8であり、nが6~8であり、pが6~8であり、qが6~8であり、aが0であり、より好ましい実施形態は、Xが6員環構造の炭化水素基(シクロヘキシル基)であり、mが8であり、nが6であり、pが8であり、qが8である。
【0034】
一般式(1)で表されるダイマージアミンとして市販品を用いてもよい。市販品としては、例えば、CRODA社製の商品名「Priamine1075」が挙げられる。
【0035】
ジアミン成分として、上記ダイマージアミンと、当該ダイマージアミン以外のジアミンとを併用してもよい。すなわち、1つの実施形態において、上記ポリイミド系樹脂が、モノマー成分としてテトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分とを用い、該モノマー成分の反応物であるポリアミック酸をイミド化して得られる樹脂であり;該ジアミン成分が、ダイマージアミンと、ダイマージアミン以外のジアミンとを含む。ダイマージアミン以外のジアミンを用いることにより、ゲル化を防止して、クリーニング層形成用組成物としてのワニスを好ましく調整でき、シート化するにあたり加工性に優れるワニスを得ることができる。
【0036】
上記ポリアミック酸を形成するためのジアミン成分中、ダイマージアミン以外のジアミンの含有割合は、ジアミン成分100重量部に対して、好ましくは10重量部~90重量部であり、より好ましくは15重量部~85重量部であり、さらに好ましくは30重量部~70重量部である。
【0037】
ダイマージアミン以外のジアミンとしては、例えば、ダイマージアミン以外のジアミンであって、アミン構造を有する末端を少なくとも二つ有し、ポリエーテル構造を有するジアミン化合物(以下、PEジアミン化合物と称することがある);脂肪族ジアミン;芳香族ジアミンが挙げられる。
【0038】
1つの実施形態においては、PEジアミン化合物が用いられる。PEジアミン化合物由来の構成単位は、上記ソフトセグメントであり得る。PEジアミン化合物を用いれば、クリーニング層形成用組成物としてのワニスを好ましく調整でき、シート化するにあたり加工性に優れるワニスを得ることができる。本発明の実施形態によれば、PEジアミン化合物を併用することにより、ダイマージアミン由来の構成単位を含む樹脂Aを用いながらも、異物除去性能に優れるクリーニングシートにシート化できる点で、有利である。
【0039】
上記ポリアミック酸を形成するためのモノマー成分中、PEジアミンの含有割合は、ジモノマー成分100重量部に対して、好ましくは10重量部~40重量部であり、より好ましくは10重量部~35重量部であり、さらに好ましくは13重量部~35重量部であり、特に好ましくは15重量部~30重量部である。このような範囲であれば、異物除去性能に特に優れるクリーニングシートを得ることができる。また、ワニス化しやすいクリーニング層形成用組成物を得ることができる。
【0040】
上記ポリアミック酸を形成するためのモノマー成分中、PEジアミンとダイマージアミンとの合計含有割合は、モノマー成分100重量部に対して、好ましくは10重量部~70重量部であり、より好ましくは10重量部~65重量部であり、さらに好ましくは10重量部~60重量部であり、さらに好ましくは20重量部~60重量部であり、さらに好ましくは30重量部~60重量部であり、特に好ましくは35重量部~60重量部である。このような範囲であれば、ワニス化しやすいクリーニング層形成用組成物を得ることができる。また、異物除去性能に特に優れるクリーニングシートを得ることができる。本発明の実施形態によれば、PEジアミン化合物を併用してソフトセグメントの割合を調整することにより、ダイマージアミン由来の構成単位を含む樹脂Aを用いながらも、異物除去性能に優れるクリーニングシートにシート化できる点で、有利である。
【0041】
PEジアミン化合物としては、任意の適切な化合物を採用し得る。PEジアミン化合物としては、例えば、ポリプロピレングリコール構造を有する末端ジアミン、ポリエチレングリコール構造を有する末端ジアミン、ポリテトラメチレングリコール構造を有する末端ジアミン、さらにこれら複数の構造を有する末端ジアミンが挙げられる。PEジアミン化合物としては、より具体的には、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ポリテトラメチレングリコール、ポリアミン、またはこれらの混合体から調製されるアミン構造を有する末端を少なくとも二つ有するPEジアミン化合物が挙げられる。
【0042】
脂肪族ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、1,8-、1,10-ジアミノデカン、1,12-ジアミノドデカン、4,9-ジオキサ-1,12-ジアミノドデカン、1,3-ビス(3-アミノプロピル)-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン(α,ω-ビスアミノプロピルテトラメチルジシロキサン)が挙げられる。脂肪族ジアミンの分子量としては、好ましくは50~1000000であり、より好ましくは100~30000である。
【0043】
芳香族ジアミンとしては、例えば、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルプロパン、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)-2,2-ジメチルプロパン、4,4’-ジアミノベンゾフェノン等が挙げられる。
【0044】
ダイマージアミン以外のジアミンとポリアミック酸調製時の反応溶媒とのHSP距離は、好ましくは7.5以下であり、より好ましくは7.3以下である(下限値は、0であり得る)。HSP距離がこのような範囲のジアミンを用いれば、ポリイミド系樹脂を合成する際の反応系の全体のHSP距離を低くすることができ、その結果、クリーニング層形成用組成物のゲル化を防止して、ワニスを好ましく調整でき、シート化するにあたり加工性に優れるワニスを得ることができる。反応溶媒の最適化のみならず、ジアミンをHSPに基づいて好ましく選択することにより、上記のように、ゲル化を防いで、ワニスを好ましく調整できることは、本発明の大きな成果のひとつである。
【0045】
HSP距離は、2つの物質のHSPの距離であり、例えば、上記実施形態においては、ダイマージアミン以外のジアミンHSPと、ポリアミック酸調製時の反応溶媒とのHSPとの距離である。
HSPはハンセン溶解度パラメータ(δ)であり、(δD,δP,δH)の3次元のパラメータで定義され、式(X):
δ=(δD)+(δP)+(δH) ・・・(X)
[式(X)中、δDはLоndоn分散力項を示し、δPは分子分極項(双極子間力項)を示し、δHは水素結合項を表す]により表される。HSPに係る詳細は、「PROPERTIES OF POLYMERS」(著者:D.W.VANKREVELEN、発行所:ELSEVIER SCIENTFIC PUBLISHING COMPANY、1989年発行、第5版)に記載されている。ハンセン溶解度パラメータのδD,δP、及びδHは、それぞれ成分のSmiles記法を作成し、ハンセン溶解度パラメータを提案したハンセン博士のグループによって開発されたプログラムであるHSPiP(Hansen Sоlubility Parameters in Practice)を用いて計算することができ、例えばVer.5等を用いることができる。
HSP値間距離は、二つの物質A及びBのそれぞれのハンセン溶解度パラメータδA及びδBを、
δA=(δDA,δPA,δHA)
δB=(δDB,δPB,δHB)
とすれば、HSP間距離は、[4×(δDA‐δDB)+(δPA‐δPB)+(δHA‐δHB)0.5の式により計算することができる。
【0046】
ダイマージアミン以外のジアミンとNMPとのHSP距離は、好ましくは7.5以下であり、より好ましくは7.3以下である。HSP距離がこのような範囲のジアミンを用いれば、ポリイミド系樹脂を合成する際の反応系の全体のHSP距離を低くすることができ、その結果、ゲル化を防いで、クリーニング層形成用組成物としてのワニスを好ましく調整でき、シート化するにあたり加工性に優れるワニスを得ることができる。反応溶媒の最適化のみならず、ジアミンをHSPに基づいて好ましく選択することにより、上記のようにワニスを好ましく調整できることは、本発明の大きな成果のひとつである。NMPとのHSP距離が7.5以下であるジアミンとしては、例えば、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、ヘキサメチレンジアミン、4,9-ジオキサ-1,12-ジアミノドデカン等が挙げられる。
【0047】
テトラカルボン酸二無水物成分としては、例えば、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4,4’-オキシジフタル酸二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA)、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ピロメリット酸二無水物、エチレングリコールビストリメリット酸二無水物が挙げられる。これらは、1種であってもよいし、2種以上であってもよい。
【0048】
テトラカルボン酸二無水物とポリアミック酸調製時の反応溶媒とのHSP距離は、好ましくは7.5以下であり、より好ましくは7.3以下である。HSP距離がこのような範囲のテトラカルボン酸二無水物を用いれば、ポリイミド系樹脂を合成する際の反応系の全体のHSP距離を低くすることができ、その結果、クリーニング層形成用組成物としてのワニスを好ましく調整でき、シート化するにあたり加工性に優れるワニスを得ることができる。
【0049】
テトラカルボン酸二無水物とNMPとのHSP距離は、好ましくは7.5以下であり、より好ましくは7.3以下である。HSP距離がこのような範囲のテトラカルボン酸二無水物を用いれば、ポリイミド系樹脂を合成する際の反応系の全体のHSP距離を低くすることができ、その結果、クリーニング層形成用組成物としてのワニスを好ましく調整でき、シート化するにあたり加工性に優れるワニスを得ることができる。NMPとのHSP距離が7.5以下であるテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、ピロメリット酸二無水物等が挙げられる。
【0050】
テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの反応に用いられる有機溶媒(反応溶媒)としては、例えば、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミドが挙げられる。原材料等の溶解性を調整するために、非極性溶媒(例えば、トルエンや、キシレン)を併用してもよい。このような範囲であれば、クリーニング層形成用組成物としてのワニスを好ましく調整でき、シート化するにあたり加工性に優れるワニスを得ることができる。このような有機溶媒としては、例えば、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)が好ましく挙げられる。
【0051】
テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの反応温度は、好ましくは20℃以上であり、より好ましくは20℃~100℃である。
【0052】
ポリアミック酸のイミド化は、代表的には、不活性雰囲気(代表的には、真空または窒素雰囲気)下で加熱処理することにより行われる。加熱処理温度は、好ましくは150℃以上であり、さらに好ましくは180℃~450℃である。
【0053】
クリーニングシート層がポリベンゾオキサゾール系樹脂を含む場合、クリーニング層中のポリベンゾオキサゾール系樹脂の含有割合は、クリーニング層100重量部に対して、好ましくは50重量部~100重量部であり、より好ましくは70重量部~100重量部であり、さらに好ましくは90重量部~100重量部であり、特に好ましくは95重量部~100重量部であり、最も好ましくは98重量部~100重量部である。
【0054】
1つの実施形態においては、上記ポリベンゾオキサゾール系樹脂として、ベンゾオキサゾール環構造と2個以上のアミド結合とを有する変性ポリベンゾオキサゾールが用いられる。
【0055】
変性ポリベンゾオキサゾールが有するアミド結合の数は、好ましくは2個~4個であり、より好ましくは2個~3個であり、さらに好ましくは2個である。
【0056】
上記アミド結合は、好ましくは、ポリアミン由来のアミド結合である。ここでいうポリアミンとは、2個以上のアミノ基を有するアミンを意味する。アミノ基としては、1級アミノ基、2級アミノ基、および、3級アミノ基からなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられ、本発明の効果をより発現し得る点で、好ましくは、1級アミノ基、および、2級アミノ基からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、より好ましくは1級アミノ基である。ポリアミンは、1種のみであってもよいし、2種以上の混合物であってもよい。
【0057】
ポリアミンとしては、2個以上のアミノ基を有するアミンであれば、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切なポリアミンを採用し得る。ポリアミンとしては、例えば、ポリエーテル構造を有するジアミン化合物(PEジアミン化合物)、脂肪族ジアミン、芳香族ジアミンが挙げられる。
【0058】
1つの実施形態においては、ポリアミンとして、上記一般式(1)で表されるジアミンが用いられる。上記一般式(1)で表されるジアミンは、単独でも用いられてもよく、その他のポリアミンと併用されてもよい。
【0059】
1つの実施形態においては、上記変性ポリベンゾオキサゾールは、一般式(2)で表される構造単位と一般式(3)で表される構造単位を含む。
【0060】
【化2】
【0061】
一般式(2)中、R、Rは、それぞれ独立して、CH、C(CH、C(CF、O、または単結合である。
【0062】
【化3】
【0063】
一般式(3)中、Rは、CH、C(CH、C(CF、O、または単結合であり、Xはy員環構造の炭化水素基であり、yは4~8であり、C2mは長鎖アルキレン鎖であり、mは6~12であり、C2nは長鎖アルキレン鎖であり、nは6~12であり、-C2p+1基および-C2q+1基はXに結合した長鎖アルキル基であり、pは6~12であり、qは6~12である。また、上記長鎖アルキレン鎖および長鎖アルキル基はそれぞれ分岐鎖を含んでいてもよい。
【0064】
上記変性ポリベンゾオキサゾールに含まれ得る一般式(2)で表される構造単位と一般式(3)で表される構造単位は、それぞれ、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0065】
一般式(3)におけるyは、好ましくは5~7であり、より好ましくは6である。すなわち、一般式(3)におけるXの好ましい実施形態は、6員環構造の炭化水素基(シクロヘキシル基)である。一般式(3)におけるmは、好ましくは6~10であり、より好ましくは6~8であり、さらに好ましくは8である。一般式(3)におけるnは、好ましくは6~10であり、より好ましくは6~8であり、さらに好ましくは6である。一般式(3)におけるpは、好ましくは6~10であり、より好ましくは6~8であり、さらに好ましくは8である。一般式(3)におけるqは、好ましくは6~10であり、より好ましくは6~8であり、さらに好ましくは8である。一般式(3)におけるrは、好ましくは6~10であり、より好ましくは6~8であり、さらに好ましくは8である。一般式(3)におけるaは、好ましくは0~2であり、より好ましくは0である。一般式(3)で表される構造単位の好ましい実施形態は、Xが6員環構造の炭化水素基(シクロヘキシル基)であり、mが6~8であり、nが6~8であり、pが6~8であり、qが6~8であり、aが0であり、より好ましい実施形態は、Xが6員環構造の炭化水素基(シクロヘキシル基)であり、mが8であり、nが6であり、pが8であり、qが8である。
【0066】
上記変性ポリベンゾオキサゾールは、任意の適切な方法によって製造し得る。本発明の実施形態による変性ポリベンゾオキサゾールは、代表的には、一般式(4)で表されるビス(2-アミノフェノール)化合物と、一般式(5)で表されるビス(クロロカルボニル)ジフェニル化合物と、一般式(1)で表される脂肪族ジアミンとを反応させて製造する。
【0067】
【化4】
【0068】
一般式(4)中、Rは、CH、C(CH、C(CF、O、または単結合である。
【0069】
【化5】
【0070】
一般式(5)中、Rは、CH、C(CH、C(CF、O、または単結合である。
【0071】
上記変性ポリベンゾオキサゾールを、一般式(4)で表されるビス(2-アミノフェノール)化合物と、一般式(5)で表されるビス(クロロカルボニル)ジフェニル化合物と、一般式(1)で表される脂肪族ジアミンとを反応させて製造する場合、一般式(1)で表される脂肪族ジアミンの配合割合は、アミンの合計量、すなわち、一般式(4)で表されるビス(2-アミノフェノール)化合物と一般式(1)で表される脂肪族ジアミンとの合計量100モル%に対して、モル割合で、好ましくは6モル%~49モル%であり、より好ましくは7モル%~47モル%であり、さらに好ましくは8モル%~45モル%であり、特に好ましくは9モル%~42モル%であり、最も好ましくは10モル%~40モル%である。
【0072】
上記変性ポリベンゾオキサゾールを、一般式(4)で表されるビス(2-アミノフェノール)化合物と、一般式(5)で表されるビス(クロロカルボニル)ジフェニル化合物と、一般式(1)で表される脂肪族ジアミンとを反応させて製造する場合、一般式(1)で表される脂肪族ジアミンと一般式(4)で表されるビス(2-アミノフェノール)化合物との合計量、すなわち、アミンの合計量に対する、一般式(5)で表されるビス(クロロカルボニル)ジフェニル化合物の配合割合は、一般式(1)で表される脂肪族ジアミンと一般式(4)で表されるビス(2-アミノフェノール)化合物との合計量100モル%に対して、モル割合で、一般式(5)で表されるビス(クロロカルボニル)ジフェニル化合物が、好ましくは70モル%~130モル%であり、より好ましくは80モル%~120モル%であり、さらに好ましくは90モル%~110モル%である。
【0073】
クリーニング層中には、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切なその他の成分が含まれていてもよい。このようなその他の成分としては、例えば、耐熱性樹脂、界面活性剤、可塑剤、酸化防止剤、導電性付与剤、紫外線吸収剤、光安定化剤などが挙げられる。
【0074】
クリーニング層の厚みは、好ましくは1μm~100μmであり、より好ましくは1μm~50μmであり、さらに好ましくは1μm~30μmであり、特に好ましくは1μm~20μmである。
【0075】
1つの実施形態においては、クリーニング層は、実質的に粘着力を有さない。具体的には、シリコンウェハのミラー面に対する、JIS-Z-0237で規定される180°引き剥がし粘着力Aが、好ましくは0.20N/10mm未満であり、より好ましくは0.01~0.10N/10mmである。クリーニング層のシリコンウェハのミラー面に対するJIS-Z-0237で規定される180°引き剥がし粘着力Aがこのような範囲内にあれば、クリーニング層は実質的に粘着力を有さず、該クリーニング層と、例えば、基板処理装置内の搬送装置との接触部分との粘着性が低減でき、その結果、基板を確実に搬送し得るとともに、搬送装置が破損し難くなり得る。
【0076】
クリーニング層は、ダミーウェハのミラー面に対するJIS-Z-0237で規定される180度引き剥がし粘着力Bが、好ましくは10N/10mm以上であり、より好ましくは15N/10mm以上であり、さらに好ましくは20N/10mm以上であり、特に好ましくは25N/10mm以上であり、最も好ましくは30N/10mm以上である。クリーニング層のダミーウェハのミラー面に対するJIS-Z-0237で規定される180度引き剥がし粘着力Bが上記範囲内にあれば、例えば、クリーニング層とダミーウェハ等の搬送部材との密着性が高くなり、クリーニング中にクリーニング層がダミーウェハ等の搬送部材から剥離し難くなる。
【0077】
クリーニング層のダミーウェハのミラー面に対するJIS-Z-0237で規定される180度引き剥がし粘着力Bは、例えば、ダミーウェハとしてのシリコンウェハのミラー面にクリーニング層を形成し、JIS-Z-0237に準じて測定できる。
【0078】
上記のとおり、クリーニング層の25℃における貯蔵弾性率は、100MPa~2500MPaである。クリーニング層の25℃における貯蔵弾性率は、100MPa~2000MPaであってもよく、100MPa~1500MPaであってもよい。クリーニング層の25℃における貯蔵弾性率は、好ましくは100MPa~1000MPaであり、より好ましくは200MPa~900MPaであり、さらに好ましくは300MPa~750MPaである。このような範囲であれば、異物除去性能に顕著に優れるクリーニングシートを得ることができる。本発明の実施形態によれば、貯蔵弾性率を調整することにより、ダイマージアミン由来の構成単位を含む樹脂Aを用いながらも異物除去性能に優れるクリーニングシートを提供できる点で、有利である。貯蔵弾性率の測定方法は、後述する。
【0079】
クリーニング層の100℃における貯蔵弾性率は、例えば、100MPa~2000MPaであり、好ましくは100MPa~1000MPaであり、より好ましくは200MPa~900MPaであり、さらに好ましくは300MPa~750MPaである。このような範囲であれば、異物除去性能に優れるクリーニングシートを得ることができる。本発明においては、高温環境下(例えば、100℃、後述の150℃)においても、異物除去性能を好ましく発揮し得る貯蔵弾性率を維持できる点で好ましい。
【0080】
クリーニング層の150℃における貯蔵弾性率は、例えば、100MPa~1500MPaであり、好ましくは100MPa~1000MPaであり、より好ましくは200MPa~900MPaであり、さらに好ましくは300MPa~750MPaである。このような範囲であれば、異物除去性能に優れるクリーニングシートを得ることができる。
【0081】
クリーニング層は、クロスカット法によるダミーウェハのミラー面に対するクリーニング層の残存数が、好ましくは15/25以上であり、より好ましくは18/25以上であり、さらに好ましくは20/25以上であり、特に好ましくは23/25以上であり、最も好ましくは25/25以上である。クリーニング層のクロスカット法によるダミーウェハのミラー面に対するクリーニング層の残存数が上記範囲内にあれば、例えば、クリーニング層とダミーウェハ等の搬送部材との密着性がより高くなり、クリーニング中にクリーニング層がダミーウェハ等の搬送部材からより剥離し難くなる。
【0082】
クリーニング層のクロスカット法によるダミーウェハのミラー面に対するクリーニング層の残存数は、例えば、試験面にカッターナイフを用いて素地に対する6本の平行な切り傷を2mm間隔で作り、さらに該切り傷に直交するように同様に6本の平行な切り傷を2mm間隔で作ることによって、25個の碁盤目を作り、碁盤目部分に16N/20mmの粘着力を有するテープ(例えば、日東電工株式会社製の「BT-315ST」)を強く圧着させ、テープの端を45°の角度で一気に引き剥がし、碁盤目の状態を標準図と比較して評価することによって測定できる。
【0083】
上記のとおり、クリーニング層は、植物由来の樹脂を含む。なお、石油由来の樹脂と植物由来の樹脂とは、バイオマス度(標準現代炭素に対する試料炭素の14C濃度の割合)で区別できる。石油由来の樹脂は、14C(放射性炭素14、半減期5730年)を含まない。一方、植物由来の樹脂は、14C(放射性炭素14、半減期5730年)を含む。上記クリーニング層を構成する樹脂のバイオマス度は、好ましくは10%以上であり、より好ましくは20%以上であり、さらに好ましくは25%以上であり、特に好ましくは30%以上である。クリーニング層を構成する樹脂のバイオマス度は、高いほど好ましいが、その上限は例えば、50%(好ましくは60%、より好ましくは70%、さらに好ましくは80%)である。樹脂中の14Cの濃度は、加速器質量分析により測定することができる。
【0084】
A-3.支持体
上記クリーニングシートは、支持体を備えていてもよい。支持体は単層であっても多層体であってもよい。
【0085】
支持体の厚みは、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な厚みを採用し得る。このような厚みとしては、好ましくは500μm以下であり、より好ましくは1μm~400μmであり、さらに好ましくは1μm~300μmであり、特に好ましくは1μm~200μmであり、最も好ましくは1μm~100μmである。
【0086】
支持体を構成する材料としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な材料が採用され得る。支持体としては、例えば、プラスチックやエンジニアリングプラスチックやスーパーエンジニアリングプラスチックのフィルムが挙げられる。プラスチックやエンジニアリングプラスチックやスーパーエンジニアリングプラスチックの具体例としては、ポリイミド、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、アセチルセルロース、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリアミドなどが挙げられる。
【0087】
支持体の材料の分子量などの諸物性は、目的に応じて適宜選択され得る。
【0088】
支持体の成形方法は、目的に応じて適宜選択され得る。
【0089】
支持体の表面は、隣接する層との密着性、保持性などを高めるために、慣用の表面処理、例えば、クロム酸処理、オゾン暴露、火炎暴露、高圧電撃暴露、イオン化放射線処理などの化学的または物理的処理、下塗剤によるコーティング処理などが施されていてもよい。
【0090】
A-4.粘着剤層
上記クリーニングシートは、粘着剤層を備えていてもよい。このような粘着剤層を構成する材料としては、本発明の効果を損なわない範囲で任意の適切な材料を採用し得る。粘着剤層の材料としては、例えば、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ゴム系粘着剤、ウレタン系粘着剤等が挙げられる。
【0091】
粘着剤層は、例えば、ダミーウェハのミラー面に貼り付けるために設けられる。これにより、搬送部材としてのダミーウェハに上記クリーニングシートが貼り付けられ、本発明の実施形態によるクリーニング機能付搬送部材となり得る。
【0092】
粘着剤層は、ダミーウェハのミラー面に対するJIS-Z-0237で規定される180度引き剥がし粘着力Cが、好ましくは10N/10mm以上であり、より好ましくは15N/10mm以上であり、さらに好ましくは20N/10mm以上であり、特に好ましくは25N/10mm以上であり、最も好ましくは30N/10mm以上である。粘着剤層のダミーウェハのミラー面に対するJIS-Z-0237で規定される180度引き剥がし粘着力Cが上記範囲内にあれば、例えば、粘着剤層とダミーウェハとの密着力が高くなり、クリーニング中にクリーニングシートがダミーウェハから剥離し難くなる。
【0093】
粘着剤層の厚みは、好ましくは1μm~200μmであり、より好ましくは2μm~100μmであり、さらに好ましくは3μm~80μmであり、特に好ましくは4μm~60μmであり、最も好ましくは5μm~50μmである。
【0094】
A-5.保護フィルム
本発明のクリーニングシートは、クリーニング層や支持体や粘着剤層などを保護するため、保護フィルムを有してもよい。保護フィルムは、適切な段階で剥離され得る。
【0095】
保護フィルムを構成する材料としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な材料を採用し得る。保護フィルムの材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリメチルペンテンなどのポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリウレタン、エチレン酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリイミド、フッ素樹脂などが挙げられる。
【0096】
保護フィルムは、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な剥離処理が施されてもよい。剥離処理は、代表的には、剥離剤によってなされる。剥離剤としては、例えば、シリコーン系剥離剤、長鎖アルキル系剥離剤、フッ素系剥離剤、脂肪酸アミド系剥離剤、シリカ系剥離剤などを挙げることができる。
【0097】
保護フィルムの厚みは、好ましくは1μm~100μmである。
【0098】
保護フィルムの形成方法は、目的に応じて適宜選択され、例えば、射出成形法、押出成形法、ブロー成形法などにより形成することができる。
【0099】
B.クリーニングシートの製造方法
本発明の実施形態によるクリーニングシートを製造する方法としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な製造方法を採用し得る。このような製造方法としては、例えば、(1)クリーニング層形成用組成物(ワニス)を支持体や搬送部材上にキャストし、スピンコーター等で均一に成膜した後に、加熱することで、支持体や搬送部材上に直接クリーニング層を形成する方法、(2)ラベルおよび補強部の構成材料となる粘着フィルム(ラベル支持体の片面にクリーニング層、他面に通常の粘着剤層を設けたもの)をはく離ライナー上に貼付する方法などによって、はく離ライナーと粘着フィルムからなる積層体を形成し、次いで、この積層体の粘着フィルムのみをラベルおよび/または補強部の各形状に同時にまたは別々に打ち抜き、不要な粘着フィルムをはく離ライナーから剥離除去する方法、などが挙げられる。
【0100】
本発明の効果をより発現させ得る点で、本発明の実施形態によるクリーニングシートを製造する方法としては、好ましくは、クリーニング層形成用組成物(ワニス)を支持体や搬送部材上にスピンコーターにより塗工して成膜し、必要に応じて静置し、また、必要に応じて加熱および/または乾燥することで、支持体や搬送部材上にクリーニング層を形成することにより、本発明の実施形態によるクリーニングシートを製造する方法が挙げられる。
【0101】
クリーニング層形成用組成物(ワニス)の粘度は、好ましくは100mPa・s~4000mPa・sであり、より好ましくは300mPa・s~3000mPa・sであり、さらに好ましくは500mPa・s~2000mPa・sである。
【0102】
クリーニング層形成用組成物(ワニス)を支持体や搬送部材上にスピンコーターにより塗工して成膜する際の回転数は、好ましくは400rpm以上であり、より好ましくは600rpm以上であり、さらに好ましくは800rpm以上である。上記回転数の上限は、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは3000rpm以下である。
【0103】
クリーニング層形成用組成物(ワニス)を支持体や搬送部材上にスピンコーターにより塗工して成膜する際の回転時間は、好ましくは5秒~200秒であり、より好ましくは10秒~150秒であり、さらに好ましくは20秒~60秒である。
【0104】
本発明の実施形態によるクリーニングシートを製造する方法においては、クリーニング層形成用組成物(ワニス)を支持体や搬送部材上にスピンコーターにより塗工して成膜した後、静置することにより、支持体や搬送部材上でワニスをより平滑化し得る。この静置する時間としては、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは5秒~1000秒であり、より好ましくは30秒~600秒であり、さらに好ましくは100秒~400秒である。
【0105】
本発明の実施形態によるクリーニングシートを製造する方法においては、クリーニング層形成用組成物(ワニス)を支持体や搬送部材上にスピンコーターにより塗工して成膜した後、加熱および/または乾燥してもよい。この加熱または乾燥の温度としては、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは50℃~200℃であり、より好ましくは80℃~150℃である。この加熱または乾燥の時間としては、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは100秒~900秒であり、より好ましくは300秒~900秒であり、さらに好ましくは600秒~900秒である。
【0106】
C.クリーニング機能付搬送部材
本発明の実施形態によるクリーニング機能付搬送部材は、上記クリーニングシートと搬送部材を有する。
【0107】
図4は、本発明のクリーニング機能付搬送部材の一つの実施形態を示す概略断面図である。図4において、クリーニング機能付搬送部材300は、クリーニングシート100と搬送部材200を有する。クリーニングシート100が粘着剤層を有する場合は、好ましくは、クリーニングシート100の搬送部材200側の最外層が粘着剤層となる。
【0108】
搬送部材としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な搬送部材を採用し得る。このような搬送部材としては、例えば、半導体ウェハ(例えば、シリコンウェハ)、LCD、PDPなどのフラットパネルディスプレイ用基板、コンパクトディスク、MRヘッドなどが挙げられる。これらの搬送部材の中でも、基板処理装置内におけるウェハの搬送装置のクリーニングを目的とする場合は、代表的には、半導体ウェハ(例えば、シリコンウェハ)が挙げられる。
【実施例0109】
以下に、実施例および比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は、それらに何ら制限されるものではない。なお、以下の説明において、「部」および「%」は、特に明記のない限り、重量基準である。
【0110】
<評価方法>
(1)バイオマス度
クリーニング層のバイオマス度を、ASTM D6866規格のバイオベース炭素試験にて分析した。
試料(クリーニング層)を酸化させ、試料中に含まれる炭素を二酸化炭素にした。その後、この二酸化炭素を精製し、還元してグラファイトにした。このグラファイトを加速器質量分析を行い14C比率よりバイオマス度を算出した。

(2)ワニス化
ワニス合成中に不溶分の有無を目視にて観察。不溶分が存在しない場合を合格(〇)、不溶分が存在しない場合を不合格(×)判定とした。
不溶分の有無は、100メッシュのステンレス金網に合成後のワニスを通し、金網上に不溶分が存在するかにより確認した。

(3)貯蔵弾性率
クリーニング層の貯蔵弾性率を、固体粘弾性測定装置(型式RSAG-2、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製)を用いて測定した。詳しくは、長さ30mm(測定長さ)、幅10mmの試験片を切り出し、固体粘弾性測定装置(型式RSAG-2、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製)を用いて、周波数1Hz、昇温速度10℃/min、チャック間距離10mmの条件において、0℃~200℃の温度範囲で、上記試験片の貯蔵弾性率を測定した。25℃、100℃、150℃における貯蔵弾性率を表1に示す。

(4)クリーニング性
6インチのシリコンウェハのミラー面を大気中に6時間放置し、汚染された6インチのシリコンウェハとし、そのミラー面上の異物数を測定した(Count1)。次に、その汚染された6インチのシリコンウェハのミラー面をクリーニングシートに貼り合わせ、その後、剥離し、剥離後のシリコンウェハのミラー面上の異物数を測定した(Count2)。下記の式によって除塵性を算出した。
除塵性(%)=[(Count1-Count2)/Count1]×100
上記除塵性に基づき、下記の基準で、クリーニング性を評価した。
◎(優):除塵性が70%以上
〇(良):除塵性が50%以上70%未満
△(可):除塵性が20%以上50%未満
×(不可):クリーニング層がミラー面に付着する/除塵性が20%未満
【0111】
〔実施例1〕
アミン成分としての、ジアミンモノマー(表中「BAPP」、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン)8.6重量部と、ポリエーテルアミン(表中「D-2000」、HN-CH(CH)-(O-CH-CH(CH))-NH、商品名「ジェファーミンD-2000」、HUNTSMAN製、分子量2000、n=約33)7.5重量部と、ダイマージアミン(CRODA社製、商品名「Priamine1075」、分子量534.38g/mol)2.5重量部とを、NMP(N-メチルピロリドン)100重量部に溶解した。次に、ピロメリット酸二無水物6.5重量部を加え、反応させ、ワニスAを得た。
このワニスAを、12インチシリコンウェハのミラー面全面に、スピンコート法(1000prm×30sec)にて、塗布した。
次いで、ホットプレートにて110℃で10分乾燥後、真空乾燥炉にて280℃×180分でキュアし、搬送部材の一方の面の全面を覆うようにクリーニング層が形成された、12インチウェハ状のクリーニング機能付搬送部材Aを得た。
得られたクリーニング機能付搬送部材を上記評価に供した。結果を表1に示す。
【0112】
〔実施例2~10、比較例1~4、参考例1~2〕
各成分の配合量を図1に示す通りとしたこと以外は、実施例1と同様にして、クリーニング機能付搬送部材を得た。
なお、「ジアミンモノマー(4,4’-DPE)」は4,4’-ジアミノジフェニルエーテルである。
また、各モノマー成分の反応溶媒(NMP)とのHSP距離[HSP(NMP)]は以下のとおりである。
BAPP:7.0
4,4’-DPE:8.0
ピロメリット酸無水物:4.6
D-2000:7.3
【0113】
【表1】
【0114】
表1から明らかなように、本発明によれば、ダイマージアミン由来の構成単位を含む樹脂を用いてバイオマス度が高く、かつ、好ましいクリーニング性を有するクリーニングシートを提供することができる。このようなクリーニングシートのクリーニング性は、石油由来の樹脂から構成されたクリーニング層を備えるクリーニングシート(参考例1、2)と同等かそれ以上である。
【0115】
また、実施例と比較例との比較から明らかなように、本発明によれば、HSPに基づいて好ましく選択されたジアミンを用いることにより、好ましくワニス化されたクリーニング層形成用組成物を調製し、それによりシート状のクリーニング層(結果として、クリーニングシート)を形成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明のクリーニングシートおよびクリーニング機能付搬送部材は、各種の製造装置や検査装置のような基板処理装置のクリーニングに好適に用いられる。
【符号の説明】
【0117】
クリーニングシート 100
クリーニング層 10
保護フィルム 20
粘着剤層 30
支持体 40
クリーニング機能付搬送部材 300
搬送部材 200
図1
図2
図3
図4