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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155395
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】減衰バルブおよび緩衝器
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/50 20060101AFI20241024BHJP
   F16F 9/34 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
F16F9/50
F16F9/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023070071
(22)【出願日】2023-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】カヤバ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122323
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 憲
(72)【発明者】
【氏名】安井 剛
【テーマコード(参考)】
3J069
【Fターム(参考)】
3J069AA50
3J069CC13
3J069EE02
3J069EE62
3J069EE66
(57)【要約】
【課題】簡易な構造で周波数に感応する減衰力の発生が可能でコストを低減できる減衰バルブおよび緩衝器を提供する。
【解決手段】本発明における減衰バルブVは、第1通路P1と、第1通路P1の一端に、並列した第2通路P2および第3通路P3が直列に接続されて一方室R1と他方室R2とを接続する減衰通路DPと、第1通路P1に設けられて通過する液体の流れに抵抗を与える第1減衰弁要素VE1と、第2通路P2に設けられて通過する液体の流れに抵抗を与える第2減衰弁要素VE2と、第3通路P3に設けられて低周波であって所定振幅以上の振動が入力されると第3通路P3の流路面積を減少させる弁要素VE3とを備えている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1通路と、前記第1通路の一端に、並列した第2通路および第3通路が直列に接続されて一方室と他方室とを接続する減衰通路と、
前記第1通路に設けられて通過する液体の流れに抵抗を与える第1減衰弁要素と、
前記第2通路に設けられて通過する液体の流れに抵抗を与える第2減衰弁要素と、
前記第3通路に設けられて低周波であって所定振幅以上の振動が入力されると前記第3通路の流路面積を減少させる弁要素とを備えた
ことを特徴とする減衰バルブ。
【請求項2】
前記弁要素は、
弁座部材と、
前記弁座部材に対して前記第3通路の一部を形成する流路を介して対向する弁体と、
前記弁座部材と前記弁体との間に介装されるばねとを有し、
前記弁座部材と前記弁体の一方または両方は前記弁座部材と前記弁体との接近および離間する方向に移動可能であり、
前記弁座部材と前記弁体との相対的な接近によって前記流路における流路面積を減少させる
ことを特徴とする請求項1に記載の減衰バルブ。
【請求項3】
前記弁体は、前記第2通路を形成するポートを有し、
前記第2減衰弁要素は、前記弁体に積層されて前記ポートを開閉するリーフバルブを有する
ことを特徴とする請求項2に記載の減衰バルブ。
【請求項4】
前記弁座部材の反弁体側と前記弁体の反弁座部材側との一方または両方に設けられるストッパと、
前記ストッパと前記弁要素との間に配置されるクッションとを備えた
ことを特徴とする請求項2に記載の減衰バルブ。
【請求項5】
前記弁座部材、前記弁体および前記リーフバルブは、環状であって、
前記弁座部材、前記弁体および前記リーフバルブの内周に挿通される軸部材を備え、
前記弁要素は、前記軸部材の外周に摺動可能に装着されて外周に前記リーフバルブと、前記リーフバルブが積層される前記弁体とが装着される保持部材を有する
ことを特徴とする請求項3に記載の減衰バルブ。
【請求項6】
前記ばねは円錐ばねである
ことを特徴とする請求項2に記載の減衰バルブ。
【請求項7】
アウターシェルと、前記アウターシェル内に軸方向へ移動可能に挿入されるピストンロッドとを備えて内部に少なくとも前記一方室と前記他方室とを有する緩衝器本体と、
請求項1から6のいずれか一項に記載の減衰バルブとを備えた
ことを特徴とする緩衝器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、減衰バルブおよび緩衝器に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の車体と車輪との間に介装される緩衝器は、一定の減衰力特性の減衰力を発揮して車体振動を抑制するものが一般的であるが、近年、より車両における乗心地の向上を図るため、入力される振動の周波数に感応して減衰力を可変にするものが開発されている。
【0003】
この種の緩衝器としては、たとえば、シリンダと、シリンダ内に摺動自在に挿入されシリンダ内をピストンロッド側の伸側室とピストン側の圧側室に区画するピストンと、ピストンに設けられて伸側室と圧側室を連通する第1通路と、当該第1通路を開閉して減衰力を発生する減衰バルブの他に、前記第1通路を迂回して伸側室と圧側室を見掛け上連通する第2流路と、第2流路の途中に設けられた圧力室と、圧力室内に摺動自在に挿入され圧力室を伸側圧力室と圧側圧力室とに区画するフリーピストンと、フリーピストンを附勢するコイルばねとを備えて構成されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0004】
この緩衝器は、圧力室がフリーピストンによって伸側圧力室と圧側圧力室とに区画されているが、フリーピストンが移動すると伸側圧力室と圧側圧力室の容積比が変化するので、見掛け上、伸側室と圧側室とが第2流路を介して連通されているが如くに振舞う。
【0005】
したがって、この緩衝装置は、低周波数の振動の入力に対しては大きな減衰力を発生し、他方、高周波数の振動の入力に対しては減衰力低減効果を発揮して小さな減衰力を発生でき、車両における乗心地を向上させる。
【0006】
また、他の緩衝器は、ピストンの圧側室側に積層されて伸側通路を開閉するリーフバルブを備えた減衰バルブにおけるリーフバルブの背面に設けられた背圧室に伸側室の圧力を導くとともに、背圧室の圧力で伸側リーフバルブを閉じ方向に付勢している。この緩衝器では、伸側室と圧側室とに連通された部屋をゴムで付勢された環状板で仕切って形成された圧力室を用いて背圧室の圧力を調整して減衰力を周波数に感応させるようにしている(たとえば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2018-162805号公報
【特許文献2】特開2021-050802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このような従来の緩衝器では、減衰力を緩衝器に入力される振動の周波数に感応させるために、減衰バルブの他にピストンに設けた通路を迂回して伸側室と圧側室とを直接或いは見掛け上連通する通路を設ける必要があり、このような通路はピストンロッドに特殊な加工をすることによって設けられている。
【0009】
よって、周波数に感応する緩衝器では、減衰バルブにピストンロッドの加工を伴う付加部品を追加する必要となるため、減衰バルブの構造が複雑となるとともに製品コストが高価にならざるを得ない。
【0010】
そこで、本発明は、簡易な構造で入力される振動の周波数に感応する減衰力の発生が可能でコストを低減できる減衰バルブおよび緩衝器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記した目的を解決するために、本発明の減衰バルブは、第1通路と、第1通路の一端に、並列した第2通路および第3通路が直列に接続されて一方室と他方室とを接続する減衰通路と、第1通路に設けられて通過する液体の流れに抵抗を与える第1減衰弁要素と、第2通路に設けられて通過する液体の流れに抵抗を与える第2減衰弁要素と、第3通路に設けられて低周波であって所定振幅以上の振動が入力されると第3通路の流路面積を減少させる弁要素とを備えている。
【0012】
このように構成された減衰バルブによれば、並列されて第2減衰弁要素が設置される第2通路と入力される振動が低周波であって所定振幅以上であると流路面積を減少させる弁要素が設置される第3通路とが第1減衰弁要素が設置される第1通路に対して直列に接続されているで、高周波小振幅の振動の入力に対して減衰力を小さくして振動絶縁性を高める一方で、低周波であって大きな振幅の振動が入力されると減衰力を大きくして振動を抑制できる。そして、減衰バルブによれば、周波数に感応した減衰力の発生にあたり、第1通路を迂回して一方室と他方室とを連通させる必要がないので、ピストンロッドに特別な加工を施す必要もなく、構造が簡単になり、コストを低減できる。
【0013】
また、減衰バルブにおける弁要素は、弁座部材と、弁座部材に対して第3通路の一部を形成する流路を介して対向する弁体と、弁座部材と弁体との間に介装されるばねとを有し、弁座部材と弁体の一方または両方は弁座部材と弁体との接近および離間する方向に移動可能であり、弁座部材と弁体との相対的な接近によって流路における流路面積を減少させてもよい。
【0014】
このように構成された減衰バルブによれば、簡易な構成で周波数に感応する減衰力を発生可能であるとともに、弁座部材と弁体の一方または両方の質量、ばねのばね定数の設定で流路面積を減少させる振動の周波数を容易にチューニングできる。
【0015】
さらに、減衰バルブにおける弁体は、第2通路を形成するポートを有し、第2減衰弁要素は、弁体に積層されてポートを開閉するリーフバルブを有してもよい。このように構成された減衰バルブによれば、減衰力を大きくした場合の特性をリーフバルブの設定によって容易にチューニングできるとともに、ポートを一方通行の通路に設定できるため、緩衝器の伸側と圧側の減衰力を別個独立に設定できる。
【0016】
そして、減衰バルブは、弁座部材の反弁体側と弁体の反弁座部材側との一方または両方に設けられるストッパと、ストッパと弁要素との間に配置されるクッションとを備えてもよい。このように構成された減衰バルブによれば、弁座部材と弁体との一方または両方とストッパとの間で打音が生じることが無くなり、減衰バルブにおける静穏性を向上できる。
【0017】
さらに、減衰バルブは、弁座部材、弁体およびリーフバルブが環状であって、弁座部材、弁体およびリーフバルブの内周に挿通される軸部材を備え、弁要素は、軸部材の外周に摺動可能に装着されて外周にリーフバルブと、リーフバルブが積層される弁体とが装着される保持部材を有してもよい。このように構成された減衰バルブによれば、弁体とリーフバルブとを保持部材によって一体化できるので、軸部材への組立作業が容易となるとともに、軸部材に対する摺動性が向上するので弁体の円滑な軸方向への移動を保証し得る。
【0018】
また、減衰バルブにおけるばねを円錐ばねとする場合には、減衰バルブの全長の短縮化が可能となる。
【0019】
さらに、緩衝器は、アウターシェルと、アウターシェル内に軸方向へ移動可能に挿入されるピストンロッドとを備えて内部に少なくとも一方室と他方室とを有する緩衝器本体と、減衰バルブとを備えている。このように構成された緩衝器では、入力される振動の周波数が高周波数の場合には、減衰力を小さくして車体に車輪側の高周波振動の伝達を妨げることができ、入力される振動の周波数が低周波数である場合には、減衰力を大きくて車体のゆっくりとした大きな振幅の振動を効果的に抑制でき、車両における乗心地を向上できる。
【発明の効果】
【0020】
よって、本発明の減衰バルブおよび緩衝器によれば、簡易な構造で周波数に感応する減衰力の発生が可能でコストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施の形態における減衰バルブを備えた緩衝器の縦断面図である。
図2】本発明の一実施の形態における減衰バルブの拡大縦断面図である。
図3】本発明の減衰バルブの液圧回路を示した図である。
図4】本発明の一実施の形態の第1変形例における減衰バルブの拡大縦断面図である。
図5】本発明の一実施の形態の第2変形例における減衰バルブの拡大縦断面図である。
図6】本発明の一実施の形態の第3変形例における減衰バルブの拡大縦断面図である。
図7】本発明の一実施の形態の第4変形例における減衰バルブの拡大縦断面図である。
図8】本発明の一実施の形態の第5変形例における減衰バルブの拡大縦断面図である。
図9】本発明の一実施の形態の第6変形例における減衰バルブの拡大縦断面図である。
図10】本発明の一実施の形態の第7変形例における減衰バルブの拡大縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図に示した実施の形態に基づき、本発明を説明する。図1および図2に示すように、一実施の形態における緩衝器Dは、アウターシェルとしてのシリンダ1と、シリンダ1内に移動可能に挿入されるピストンロッド2とを有して伸縮可能な緩衝器本体Aと、緩衝器本体A内に設けられる一方室としての伸側室R1と他方室としての圧側室R2との間に設けられた減衰バルブVとを備えている。そして、この緩衝器Dの場合、図示しない車両における車体と車輪との間に介装されて使用され、車体および車輪の振動を抑制する。
【0023】
以下、緩衝器Dの各部について詳細に説明する。図1に示すように、緩衝器本体Aは、アウターシェルとしての有底筒状のシリンダ1と、シリンダ1内に移動可能に挿入されるピストンロッド2と、ピストンロッド2に連結されてシリンダ1内に移動可能に挿入されるとともにシリンダ1内を作動室としての伸側室R1と圧側室R2とに区画するピストン3とを備えている。
【0024】
そして、ピストンロッド2の図1中上端となる基端には、ブラケット(図示せず)が設けられており、ピストンロッド2が図外の前記ブラケットを介して車体と車輪の一方に連結される。また、シリンダ1の底部1aにもブラケット(図示せず)が設けられており、シリンダ1が図外の前記ブラケットを介して車体と車輪の他方に連結される。
【0025】
このようにして緩衝器Dは車体と車輪との間に介装される。そして、車両が凹凸のある路面を走行する等して車輪が車体に対して上下に振動すると、ピストンロッド2がシリンダ1に出入りして緩衝器Dが伸縮するとともに、ピストン3がシリンダ1内を上下(軸方向)に移動する。
【0026】
また、緩衝器本体Aは、シリンダ1の上端を塞ぐとともに、内周にピストンロッド2が摺動自在に挿通される環状のロッドガイド4を備えている。よって、シリンダ1内は、密閉空間とされている。そして、そのシリンダ1内のピストン3から見てピストンロッド2とは反対側に、フリーピストン5が摺動自在に挿入されている。
【0027】
シリンダ1内におけるフリーピストン5の上側には液室Lが形成され、下側にはガス室Gが形成されている。さらに、液室Lは、ピストン3でピストンロッド2側の伸側室R1とピストン3側の圧側室R2とに区画されており、伸側室R1および圧側室R2には、それぞれ液体が充填されている。なお、緩衝器本体A内に充填される液体は、作動油や水、水溶液、その他の液体等とされてもよい。その一方、ガス室Gには、エア、または窒素ガス等の気体が圧縮された状態で封入されている。
【0028】
そして、緩衝器Dの伸長作動時にピストンロッド2がシリンダ1から退出し、その退出したピストンロッド2の体積分シリンダ内容積が増加すると、フリーピストン5がシリンダ1内を上側へ移動してガス室Gを拡大させる。反対に、緩衝器Dの収縮作動時にピストンロッド2がシリンダ1内へ侵入し、その侵入したピストンロッド2の体積分シリンダ内容積が減少すると、フリーピストン5がシリンダ1内を下側へ移動してガス室Gを縮小させる。
【0029】
なお、フリーピストン5に替えて、ブラダ、またはベローズ等を利用して液室Lとガス室Gとを仕切っていてもよく、この仕切となる可動隔壁の構成は適宜変更できる。
【0030】
さらに、本実施の形態では、緩衝器Dが片ピストンロッド、単筒型の緩衝器であり、緩衝器Dの伸縮時にフリーピストン5でガス室Gを拡大または縮小させて、シリンダ1に出入りするピストンロッド2の体積補償をする。しかし、この体積補償のための構成も適宜変更できる。
【0031】
たとえば、フリーピストン5とガス室Gとを廃してシリンダ1の外周にアウターシェルを設け、シリンダ1とアウターシェルとの間に液体を貯留するリザーバを形成して、緩衝器を複筒型の緩衝器にする場合、リザーバによってシリンダ1に出入りするピストンロッド2の体積補償をしてもよい。なお、リザーバは、シリンダ1とは別置き型のタンク内に形成されていてもよい。また、緩衝器Dは、ピストンロッド2の中央にピストン3が装着されてシリンダ1の両端からピストンロッド2の端部がシリンダ1外に突出する両ピストンロッド型の緩衝器として構成されてもよい。
【0032】
ピストンロッド2は、筒状であって先端側の外径が縮径されており、先端側の最小径の小径部2aと、小径部2aより外径が大きく小径部2aの図2中上側に設けられた大径部2bと、小径部2aと大径部2bとの境に設けられた段部2c、小径部2aの先端外周に設けられた螺子部2dとを備えている。
【0033】
つづいて、減衰バルブVは、図2および図3に示すように、ピストン3に設けられた第1通路P1としての伸側ポート3aおよび圧側ポート3bと、伸側ポート3aおよび圧側ポート3bに対して並列に接続される第2通路P2および第3通路P3とを有して一方室としての伸側室R1と他方室としての圧側室R2とを接続する減衰通路DPと、第1通路P1に設けられて通過する液体の流れに抵抗を与える第1減衰弁要素VE1としての伸側リーフバルブ6および圧側リーフバルブ7と、第2通路P2に設けられて通過する液体の流れに抵抗を与える第2減衰弁要素VE2と、第3通路P3に設けられて低周波であって所定振幅以上の振動が入力されると第3通路P3の流路面積を減少させる弁要素VE3とを備えており、緩衝器Dにおけるピストン部に設けられている。
【0034】
減衰バルブVは、図2に示すように、ピストンロッド2の小径部2aに装着されており、以下に減衰バルブVを構成する各部材について詳細に説明する。ピストンロッド2の小径部2aには、全て環状に形成されているカラー8、クッション16、弁体9、リーフバルブ10、バルブストッパ11、保持部材12、ばね13、弁座部材14、圧側バルブストッパ15、圧側リーフバルブ7、ピストン3および伸側リーフバルブ6が組み付けられている。
【0035】
そして、カラー8、弁座部材14、圧側バルブストッパ15、圧側リーフバルブ7、ピストン3および伸側リーフバルブ6は、小径部2aの先端の螺子部2dに螺着されるピストンナット22とピストンロッド2の段部2cとにより挟持されてピストンロッド2に固定されている。
【0036】
ピストン3は、図2に示すように、環状であって上端から下端に通じて第1通路P1を形成する伸側ポート3aと圧側ポート3bと、下端から突出して伸側ポート3aを取り囲む伸側弁座3cと、上端から突出して圧側ポート3bを取り囲む圧側弁座3dとを備えて、外周をシリンダ1の内周に摺接させている。
【0037】
また、ピストン3の図2中下端には、環状であってピストンロッド2の小径部2aの外周に嵌合されて伸側ポート3aを開閉する弁体としての伸側リーフバルブ6が積層されている。伸側リーフバルブ6は、複数枚の環状板を積層して構成された積層リーフバルブとされており、内周側がピストンロッド2の小径部2aに嵌合されるとともにピストンナット22によって小径部2aに対して不動に固定されて、外周側の撓みが許容されている。そして、伸側リーフバルブ6は、ピストン3の下端に設けられた伸側弁座3cに着座する状態では伸側ポート3aの下端の出口端を閉塞し、外周側を撓ませて伸側弁座3cから離間させると伸側ポート3aを開放するとともに伸側ポート3aを伸側室R1から圧側室R2へ向かう液体の流れに抵抗を与える。なお、伸側リーフバルブ6は、圧側室R2から伸側室R1へ向かう液体の流れに対しては伸側弁座3cに着座して伸側ポート3aを閉塞する。
【0038】
ピストン3の図2中上端には、環状であってピストンロッド2の小径部2aの外周に嵌合されて圧側ポート3bを開閉する圧側リーフバルブ7が積層されている。圧側リーフバルブ7は、複数枚の環状板を積層して構成された積層リーフバルブとされており、内周側がピストンロッド2の小径部2aに固定されて外周側の撓みが許容されている。そして、圧側リーフバルブ7は、ピストン3の上端の圧側弁座3dに着座する状態では圧側ポート3bの上端の出口端を閉塞し、外周側を撓ませて圧側弁座3dから離間させると圧側ポート3bを開放するとともに圧側ポート3bを圧側室R2から伸側室R1へ向かう液体の流れに抵抗を与える。なお、圧側リーフバルブ7は、伸側室R1から圧側室R2へ向かう液体の流れに対しては圧側弁座3dに着座して圧側ポート3bを閉塞する。また、圧側リーフバルブ7の図2中上方には圧側バルブストッパ15が積層されている。圧側バルブストッパ15は、圧側リーフバルブ7が大きく撓むと圧側リーフバルブ7の反ピストン側に当接して圧側リーフバルブ7を支持して圧側リーフバルブ7に過大な応力が作用するのを阻止して圧側リーフバルブ7を保護する。
【0039】
弁座部材14は、底部14aと筒部14bとを備えて有底筒状に形成されており、底部14aにピストンロッド2の小径部2aの挿通を許容する孔14cと、底部14aの孔14cの外周側に周方向に間隔を空けて設けられた複数の透孔14dを備えている。なお、本実施の形態では、弁座部材14における筒部14bの外径は、シリンダ1の内径よりも僅かに小径とされており、弁座部材14とシリンダ1との間に環状隙間が設けられているが、筒部14bの外周面をシリンダ1の内周面に摺接させて上記環状隙間を設けないようにしてもよい。また、筒部14bの開口端である図2中上端の内周には、先端に向かうほど徐々に内径が拡径するようにテーパ部14eが設けられている。
【0040】
そして、ピストン3および弁座部材14は、ピストンロッド2の小径部2aの外周に装着され、協働してシリンダ1内における液室Lを一方室としての伸側室R1と他方室としての圧側室R2とに区画している。
【0041】
カラー8は、筒部8aと、筒部8aの図2中上端外周に設けられたフランジ状のストッパ8bとを備えており、弁座部材14の底部14aとピストンロッド2の段部2cとの間に介装されている。そして、カラー8の外周には、クッション16、弁体9、リーフバルブ10、バルブストッパ11、保持部材12およびばね13が組み付けられている。このようにカラー8は、減衰バルブVの弁要素VE3における弁体9、リーフバルブ10および弁座部材14の内周に挿通される軸部材として機能する。なお、軸部材は、ピストン3と一体となっていてもよく、したがって、本実施の形態の場合、ピストン3が軸部材を一体に備えていてもよいし、カラー8を省略してピストンロッド2の小径部2aを軸部材として利用してもよい。
【0042】
弁体9は、図2に示すように、環状であって、上端から下端に通じて第2通路P2の一部を形成するポート9aと、図2中下端から突出してポート9aの出口端を取り囲む弁座9bと、上端の内周側に設けられた環状凹部9cとを備えている。
【0043】
リーフバルブ10は、複数枚の環状板を積層して構成された積層リーフバルブとされて、弁体9の図2中下方に積層されている。また、リーフバルブ10の図2中下方には環状のバルブストッパ11が積層されている。そして、弁体9、リーフバルブ10およびバルブストッパ11は、保持部材12によって保持されて一体化されている。保持部材12は、筒状であって上下端の外周にそれぞれ鍔部12a,12bを備えている。保持部材12は、弁体9、リーフバルブ10およびバルブストッパ11の内周に嵌合されており、鍔部12aを弁体9の環状凹部9c内に侵入させるとともに、鍔部12bをバルブストッパ11の下端の内周部に当接させており、これらの鍔部12a,12bによって弁体9、リーフバルブ10およびバルブストッパ11を保持して一体化している。なお、保持部材12に弁体9、リーフバルブ10およびバルブストッパ11を一体化するには、保持部材12の鍔部12a,12bの一方のみを予め保持部材12に設けておき、保持部材12の外周に弁体9、リーフバルブ10およびバルブストッパ11を組付けた後に保持部材12の端部を拡径させる加工を行って鍔部12a,12bの他方を形成すればよい。
【0044】
このように弁体9、リーフバルブ10およびバルブストッパ11が一体化された保持部材12は、カラー8の筒部8aの外周に軸方向へ移動可能に装着される。なお、保持部材12は、内周を筒部8aの外周に摺接させて、筒部8aの外周で筒部8aに対して軸ぶれせずに図2中で上下方向へ移動できる。
【0045】
よって、弁体9、リーフバルブ10およびバルブストッパ11は、保持部材12とともにカラー8の筒部8aの外周で筒部8aに対して軸方向となる上下方向へ移動できる。また、弁体9の外径は、弁座部材14の筒部14bの内径よりも小径になっており、弁体9がカラー8に対して下方に移動すると弁座部材14の筒部14b内に侵入できる。なお、弁体9は、筒部14b内に侵入する際に、外周面を筒部8aの内周面に摺接させてもよい。
【0046】
リーフバルブ10は、このように内周側が保持部材12によって弁体9に固定されているので、外周側の撓みが許容されている。そして、リーフバルブ10は、弁体9の下端の弁座9bに着座する状態ではポート9aを閉塞し、外周側を撓ませて弁座9bから離間させるとポート9aを開放するとともにポート9aを伸側室R1から圧側室R2へ向かう液体の流れに抵抗を与える。なお、リーフバルブ10は、圧側室R2から伸側室R1へ向かう液体の流れに対しては弁座9bに着座してポート9aを閉塞する。バルブストッパ11は、リーフバルブ10が大きく撓むとリーフバルブ10の反ピストン側に当接してリーフバルブ10を支持してリーフバルブ10に過大な応力が作用するのを阻止してリーフバルブ10を保護する。
【0047】
ばね13は、本実施の形態では、円錐コイルばねとされており、弁座部材14の底部14aと保持部材12の下端との間に介装されて、常時、弁体9を軸方向で弁座部材14から離間する方向へ付勢している。弁体9は、ばね13の付勢力以外の力が作用しない状態では、ばね13の付勢力を受けて、ストッパ8bによって移動が規制される位置に配置される。そして、弁体9は、ばね13によって前記位置に配置されると、弁座部材14の筒部14bの上端よりも上方側であって弁座部材14との間に環状の隙間で形成される流路を空けて対向する。緩衝器Dに振動が入力されて減衰バルブVにも同様に振動が入力され、ピストンロッド2がシリンダ1に対して図1中上方側へ移動すると、弁体9には慣性力が作用して、ピストンロッド2に対して弁体9が相対的に下方に移動して弁座部材14に接近し、前記流路における流路面積を減少させ、弁座部材14内に弁体9が侵入すると前記流路を殆ど遮断するようになる。
【0048】
また、弁体9の反弁座部材側端とカラー8のストッパ8bとの間には、クッション16が介装されている。クッション16は、弁体9が弁座部材14に接近する方向へ変位した後、ばね13の付勢力で元の位置に戻る際に弾性変形して弾発力を発揮して弁体9とストッパ8bとの衝突を防止すると衝撃を緩和する。なお、弁体9に鍔部12aが収容される環状凹部9cを設けているので、鍔部12aが軸方向へ突出せず、クッション16と鍔部12aとの干渉を避けてクッション16の機能が損なわれることの無いようにしている。
【0049】
このように構成された減衰バルブVでは、ピストン3と弁座部材14とでシリンダ1内を一方室としての伸側室R1と他方室としての圧側室R2とに区画している。また、ピストン3と弁座部材14との間の空間Cは、第1通路P1としての伸側ポート3aおよび圧側ポート3bを介して他方室としての圧側室R2に連通されている。他方、ピストン3と弁座部材14との間の空間Cが、弁座部材14とシリンダ1との間の隙間と、弁座部材14の透孔14d、弁座部材14内および弁座部材14と弁体9との間の流路とを介して、伸側室R1に連通される他、弁座部材14の透孔14d、弁座部材14内およびポート9aを介して伸側室R1に連通される。
【0050】
そして、伸側ポート3aには、伸側リーフバルブ6が設けられており、伸側リーフバルブ6は伸側ポート3aを伸側室R1から圧側室R2へ通過する液体の流れに対して抵抗を与える。圧側ポート3bには、圧側リーフバルブ7が設けられており、圧側リーフバルブ7は圧側ポート3bを圧側室R2から伸側室R1へ通過する液体の流れに対して抵抗を与える。伸側ポート3aおよび圧側ポート3bは、協働して第1通路P1を形成しており、圧側室R2をピストン3と弁座部材14との間の空間Cに連通している。
【0051】
他方、空間Cは、前述したように、弁座部材14の透孔14d、弁座部材14内およびポート9aを介して伸側室R1に連通されている。このように、弁座部材14の透孔14d、弁座部材14内およびポート9aは、協働して第2通路P2を形成している。また、第2通路P2の一部を形成するポート9aには、リーフバルブ10が設けられており、リーフバルブ10はポート9aを伸側室R1から圧側室R2へ通過する液体の流れに対して抵抗を与える。
【0052】
また、空間Cは、前述したように、シリンダ1と弁座部材14との間の隙間を介して伸側室R1に連通される他、弁座部材14の透孔14d、弁座部材14内および弁座部材14と弁体9との間の流路を介して伸側室R1に連通されており、これらで第3通路P3が形成されている。なお、弁座部材14がシリンダ1の内周に摺接して弁座部材14とシリンダ1との間の隙間が形成されない場合、弁座部材14の透孔14d、弁座部材14内および弁座部材14と弁体9との間の流路によって第3通路P3が形成されてもよい。そして、弁座部材14と弁体9との間の流路における流路面積は、弁座部材14に対する弁体9の接近によって減少する。
【0053】
このように第2通路P2と第3通路P3は、空間Cを介して第1通路P1に並列に接続されていて、第1通路P1、第2通路P2および第3通路P3とによって伸側室R1と圧側室R2とを連通する減衰通路DPを形成している。よって、減衰バルブVは、本実施の形態では、図3に示す回路図のように、他方室としての圧側室R2に接続される第1通路P1の圧側室R2に接続されていない方の端部に対して、並列されて一端が一方室としての伸側室R1に接続される第2通路P2および第3通路P3の他端を接続している。つまり、第1通路P1の一端に対して、互いに並列される第2通路P2と第3通路P3が直列に接続されて減衰通路DPが形成されており、減衰通路DPは、一方室としての伸側室R1と他方室としての圧側室R2とを連通している。
【0054】
伸側リーフバルブ6および圧側リーフバルブ7は、図3に示すように、第1通路P1に設けられており、第1減衰弁要素VE1を構成している。また、リーフバルブ10は、第2減衰弁要素VE2を構成し、弁体9と弁座部材14とばね13とによって第3通路P3の流路面積を変更可能な弁要素VE3を構成している。
【0055】
つづいて、以上のように構成された減衰バルブVおよび緩衝器Dの作動について説明する。まず、ピストン3がシリンダ1に対して図1中上方側へ移動する緩衝器Dの伸長作動時における減衰バルブVおよび緩衝器Dの作動について説明する。ピストン3がシリンダ1に対して図1中上方へ移動すると、ピストン3の移動に伴って伸側室R1が縮小されるとともに圧側室R2が拡大される。緩衝器Dに入力される振動が高周波小振幅の振動である場合、減衰バルブVにも同様の振動が作用するが、ピストンロッド2のシリンダ1に対する上方への移動量も小さく、振動入力による慣性が作用しても弁体9は弁座部材14側へ大きく接近することはなく、弁体9と弁座部材14との間の流路を然程減じることがない。よって、ピストン3の上方側への移動によって縮小される伸側室R1内の液体は、第3通路P3を通過した後、伸側ポート3aを通過して伸側リーフバルブ6を撓ませて圧側室R2へ移動する。このように、緩衝器Dの伸長作動時であって入力される振動が高周波小振幅の振動である場合には、主として伸側リーフバルブ6が伸側ポート3aを通過する液体の流れに抵抗を与えることによって、伸側室R1内の圧力が圧側室R2内の圧力より高くなって、緩衝器Dは、伸長作動を抑制する伸側減衰力を発生する。また、緩衝器Dの伸長作動時には、ピストンロッド2がシリンダ1内から退出するため、ピストンロッド2がシリンダ1内で押し退ける体積が減少するが、フリーピストン5がシリンダ1内を図1中上昇してガス室Gの容積を拡大することによって、ピストンロッド2がシリンダ1内から退出する体積を補償する。
【0056】
次に、緩衝器Dに入力される振動が低周波であって所定振幅以上の振動である場合、減衰バルブVにも同様の振動が作用し、ピストンロッド2のシリンダ1に対する上方への移動量が大きくなるため、振動入力によって作用する慣性力によって弁体9は図2中で弁座部材14の筒部14b内に侵入して弁体9と弁座部材14との間の流路を遮断するか、弁体9が筒部14b内に侵入せずとも弁体9と弁座部材14との間の流路における流路面積を大きく減じる。すると、第3通路P3の流路面積は、シリンダ1と弁座部材14との間の環状隙間の面積或いは当該面積に近い面積にまで減少させられるため、液体が第3通路P3を通過し難くなり、弁体9のポート9aを通過してリーフバルブ10を押し開いた後、伸側ポート3aを通過して伸側リーフバルブ6を撓ませて圧側室R2へ移動する。このように、緩衝器Dの伸長作動時であって入力される振動が低周波であって所定振幅以上の振動である場合には、主としてリーフバルブ10および伸側リーフバルブ6が第2通路P2および伸側ポート3aを通過する液体の流れに抵抗を与えることによって、伸側室R1内の圧力が圧側室R2内の圧力より高くなって、緩衝器Dは、伸長作動を抑制する伸側減衰力を発生する。緩衝器Dの伸長作動時であって入力される振動が低周波であって所定振幅以上の振動である場合には、減衰通路DPに直列されるリーフバルブ10および伸側リーフバルブ6が液体の流れに抵抗を与えるため、緩衝器Dの伸長作動時であって入力される振動が高周波であって小振幅の振動である場合と比較すると大きな減衰力を発生できる。
【0057】
緩衝器Dが車両に適用される場合、車両における車体の共振周波数帯と車輪の共振周波数帯との間の任意の所定周波数を境にして所定周波数以下の振動を低周波数とし、所定周波数より高い周波数を高周波数として設定すればよい。また、緩衝器Dが車両に適用される場合、車両の走行中に車輪の共振周波数帯の振動が取り得る振幅よりも高く、車体の共振周波数帯の振動が採りえる振幅以下にすればよく、そうすることにより、減衰バルブVは、高周波の車体の振動が車体へ伝達するのを絶縁できるとともに、低周波であって大きな振幅の入力がある際には減衰力を高めて車体の振動を効果的に抑制できる。なお、弁要素VE3が流路面積を減少させるようになる振動の振幅の大きさと周波数は、弁体9と弁座部材14とが最も離間した状態における両者の距離とばね13のばね定数、弁体9の質量によって設定できる。
【0058】
よって、本実施の形態の減衰バルブVは、減衰バルブVに入力される振動が高周波小振幅の振動である場合には減衰力を自動的に小さくし、減衰バルブVに入力される振動が低周波であって所定振幅以上の振動である場合には減衰力を自動的に大きくする。減衰バルブVは、本実施の形態ではピストンロッド2を通じて車両の車体或いは車輪に連結されるので、緩衝器Dは、車体或いは車輪の振動の周波数の高低に応じて減衰力を大小させる、つまり、周波数感応して減衰力を大小させる。そして、緩衝器Dは、入力される振動の周波数が高周波数である場合には、減衰力を小さくして車体に車輪側の高周波振動の伝達を妨げることができ、入力される振動の周波数が低周波数である場合には、減衰力を大きくて車体のゆっくりとした大きな振幅の振動を効果的に抑制できるので、車両における乗心地を向上できる。なお、弁体9が弁座部材14の筒部14b内に侵入する際に、筒部14bの内周にテーパ部14eが設けられているので、減衰バルブVが減衰力を大きくするように切り替える際に、流路を急激に減少させずに済むので、減衰力が急変することが無く、減衰力の切り換えによって車両における乗心地が損なわれることもない。
【0059】
また、本実施の形態の緩衝器Dの場合、減衰バルブVがピストンロッド2に取り付けられているので、ピストンロッド2を車両における車体に連結して、シリンダ1を車輪に連結するようにすると、減衰バルブVが車体の振動を拾いやすくなって、効果的に車体の振動を抑制して車両における乗心地を向上できる。
【0060】
他方、ピストン3がシリンダ1に対して図1中下方側へ移動する緩衝器Dの収縮作動時では、ピストン3の移動に伴って圧側室R2が縮小されるとともに伸側室R1が拡大される。縮小される圧側室R2内の液体は、圧側リーフバルブ7を撓ませて圧側ポート3bを通過した後、第3通路P3を通過して伸側室R1へ移動する。緩衝器Dの収縮作動時には第2通路P2がリーフバルブ10によって遮断されるものの、弁体9は、ピストンロッド2のシリンダ1に対する図1中下方への移動によってピストンロッド2に対して図1中で上方へ移動させる慣性力を受けるが、ストッパ8bによってピストンロッド2に対する上方側への移動が規制されているため、弁座部材14との間の流路を減じることはない。よって、緩衝器Dの収縮作動時には、圧側室R2内の液体は、圧側リーフバルブ7を通過した後、流路面積が最大となった第3通路P3を通過して伸側室R1へ移動する。よって、緩衝器Dの収縮作動時には、圧側リーフバルブ7が圧側ポート3bを通過する液体の流れに抵抗を与えることによって、圧側室R2内の圧力が伸側室R1内の圧力より高くなって、緩衝器Dは、収縮作動を抑制する圧側減衰力を発生する。また、緩衝器Dの収縮作動時には、ピストンロッド2がシリンダ1内に侵入するため、ピストンロッド2がシリンダ1内で押し退ける体積が増大するが、フリーピストン5がシリンダ1内を図1中下降してガス室Gの容積を縮小させることによって、ピストンロッド2がシリンダ1内へ侵入する体積を補償する。このように、本実施の形態の減衰バルブVおよび緩衝器Dでは、緩衝器Dの収縮作動時では入力される振動の周波数には感応せずに圧側リーフバルブ7によって収縮を妨げる減衰力を発生する。
【0061】
以上、本実施の形態の減衰バルブVは、第1通路P1と、第1通路P1の一端に並列した第2通路P2および第3通路P3が直列に接続されて伸側室(一方室)R1と圧側室(他方室)R2とを接続する減衰通路DPと、第1通路P1に設けられて通過する液体の流れに抵抗を与える第1減衰弁要素VE1と、第2通路P2に設けられて通過する液体の流れに抵抗を与える第2減衰弁要素VE2と、第3通路P3に設けられて振動の入力よる慣性力の作用により第3通路P3の流路面積を変更可能な弁要素VE3とを備えている。
【0062】
このように構成された減衰バルブVによれば、並列されて第2減衰弁要素VE2が設置される第2通路P2と入力される振動が低周波であって所定振幅以上であると流路面積を減少させる弁要素VE3が設置される第3通路P3とが第1減衰弁要素VE1が設置される第1通路P1に対して直列に接続されているで、高周波小振幅の振動の入力に対して減衰力を小さくして振動絶縁性を高める一方で、低周波であって大きな振幅の振動が入力されると減衰力を大きくして振動を抑制できる。そして、本実施の形態の減衰バルブVによれば、周波数に感応した減衰力の発生にあたり、ピストン3に設けられる第1通路P1を迂回して伸側室(一方室)R1と圧側室(他方室)R2とを連通させる必要がないので、ピストンロッド2に特別な加工を施す必要もなく、構造が簡単になり、コストを低減できる。以上より、本実施の形態の減衰バルブVによれば、簡易な構造で入力される振動の周波数に感応する減衰力の発生が可能でコストを低減できる。
【0063】
また、本実施の形態の減衰バルブVでは、弁要素VE3は、弁座部材14と、弁座部材14に対して第3通路P3の一部を形成する流路を介して対向する弁体9と、弁座部材14と弁体9との間に介装されるばね13とを備え、弁体9は、弁座部材14との接近及び離間する方向に移動可能であって、弁座部材14との相対的な接近によって前記流路における流路面積を減少させる。このように構成された減衰バルブVによれば、簡易な構成で周波数に感応する減衰力を発生可能であるとともに、弁体9の質量、ばね13のばね定数の設定で流路面積を減少させる振動の周波数を容易にチューニングできる。また、本実施の形態の減衰バルブVでは、弁体9がピストンロッド2の上方への移動の際に慣性力でピストンロッド2に対して下方へ相対移動して弁座部材14に接近して流路における流路面積を減少させるので、緩衝器Dの伸長作動時の減衰力のみを入力される振動の周波数に感応させることができる。
【0064】
他方、図4に示した第1変形例の減衰バルブV1のように、弁体9、リーフバルブ10および弁座部材14をカラー8とともに、図2に示した減衰バルブVとは上下を逆向きにしてピストンロッド2の外周に装着してもよい。このように構成された減衰バルブV1では、緩衝器Dに低周波であって所定振幅以上の振動が入力され、ピストンロッド2がシリンダ1に対して下方に移動する収縮作動時では、弁体9が慣性力によって弁座部材14に接近して第3通路P3における流路面積を減少させ、圧側室R2から伸側室R1へ向けてポート9aを通過する液体の流れに対してリーフバルブ10が抵抗を与えるようになり、減衰バルブVは、圧側リーフバルブ7とリーフバルブ10とにより緩衝器Dの収縮作動を妨げる減衰力を発生する。
【0065】
ピストンロッド2がシリンダ1に対して下方に移動する収縮作動時でも、緩衝器Dに入力される振動が高周波小振幅である場合、弁体9が弁座部材14に然程接近せず流路面積を減少させないので、液体は主として圧側リーフバルブ7によって抵抗を受けるが、然程抵抗を受けずに第3通路P3を通過し得る。よって、緩衝器Dが収縮作動時でも緩衝器Dに入力される振動が高周波小振幅である場合、減衰バルブVは、主として圧側リーフバルブ7により緩衝器Dの収縮作動を妨げる減衰力を発生するため、低周波であって所定振幅以上の振動の入力時と比較して小さな減衰力を発生する。
【0066】
対して、緩衝器Dが伸長作動する場合、弁体9は、ピストンロッド2に対して相対的に下方へ移動する慣性力しか受けないので弁座部材14に接近して第3通路P3の流路面積を減少させることはない。よって、緩衝器Dの伸長作動時では、振動の周波数および振幅によらず、伸側リーフバルブ6により緩衝器Dの伸長作動を妨げる減衰力を発生する。
【0067】
よって、図4に示した減衰バルブV1では、弁体9がピストンロッド2の下方への移動の際に慣性力でピストンロッド2に対して上方へ相対移動して弁座部材14に接近して流路における流路面積を減少させるので、緩衝器Dの収縮作動時の減衰力のみを入力される振動の周波数に感応させることができる。このように、弁体9、リーフバルブ10および弁座部材14の緩衝器Dに対する設置向きによって、入力される振動の周波数に感応させる減衰力を発生させる方向を任意に設定できる。なお、この場合、クッション16は、弁要素VE3における弁体9とカラー8におけるストッパ8bとの間に配置すると、ストッパ8bと弁体9との衝突をクッション16で緩衝できる。
【0068】
また、図5に示す第2変形例の減衰バルブV2のように、減衰バルブVではピストンロッド2に対して固定していた弁座部材14を軸方向へ移動可能とするとともに、代わりに弁体9およびリーフバルブ10をカラー8によってピストンロッド2の外周に固定してもよい。なお、弁体9およびリーフバルブ10は、保持部材12によって一体化されずともよい。このように構成された減衰バルブV1では、緩衝器Dに低周波であって所定振幅以上の振動が入力され、ピストンロッド2がシリンダ1に対して下方に移動する収縮作動時では、弁座部材14が慣性力によって弁体9に接近して第3通路P3における流路面積を減少させ、圧側室R2から伸側室R1へ向けてポート9aを通過する液体の流れに対してリーフバルブ10が抵抗を与えるようになり、減衰バルブVは、圧側リーフバルブ7とリーフバルブ10とにより緩衝器Dの収縮作動を妨げる減衰力を発生する。
【0069】
ピストンロッド2がシリンダ1に対して下方に移動する収縮作動時でも、緩衝器Dに入力される振動が高周波小振幅である場合、弁座部材14が弁体9に然程接近せず流路面積を減少させないので、液体は主として圧側リーフバルブ7によって抵抗を受けるが、然程抵抗を受けずに第3通路P3を通過し得る。よって、緩衝器Dが収縮作動時でも緩衝器Dに入力される振動が高周波小振幅である場合、減衰バルブVは、主として圧側リーフバルブ7により緩衝器Dの収縮作動を妨げる減衰力を発生するため、低周波であって所定振幅以上の振動の入力時と比較して小さな減衰力を発生する。
【0070】
対して、緩衝器Dが伸長作動する場合、弁座部材14は、ピストンロッド2に対して相対的に下方へ移動する慣性力しか受けないので弁体9に接近して第3通路P3の流路面積を減少させることはない。よって、緩衝器Dの伸長作動時では、振動の周波数および振幅によらず、伸側リーフバルブ6により緩衝器Dの伸長作動を妨げる減衰力を発生する。
【0071】
よって、図5に示した減衰バルブV2では、弁座部材14がピストンロッド2の下方への移動の際に慣性力でピストンロッド2に対して上方へ相対移動して弁体9に接近して流路における流路面積を減少させるので、緩衝器Dの収縮作動時の減衰力のみを入力される振動の周波数に感応させることができる。この減衰バルブV2のように、弁要素VE3は、弁体9を固定し、弁座部材14を弁体9に対して接近および離間可能とすることによって、入力される振動の周波数に感応する減衰力を発生できる。
【0072】
つまり、弁要素VE3は、弁座部材14と、弁座部材14に対して第3通路P3の一部を形成する流路を介して対向する弁体9と、弁座部材14と弁体9との間に介装されるばね13とを備え、弁座部材14は、弁体9との接近及び離間する方向に移動可能であって、弁体9との相対的な接近によって前記流路における流路面積を減少させるように構成されてもよい。このように構成された減衰バルブV2は、簡易な構成で周波数に感応する減衰力を発生可能であるとともに、弁座部材14の質量、ばね13のばね定数の設定で流路面積を減少させる振動の周波数を容易にチューニングできる。また、本実施の形態の減衰バルブV2では、弁座部材14がピストンロッド2の下方への移動の際に慣性力でピストンロッド2に対して下方へ相対移動して弁体9に接近して流路における流路面積を減少させるので、緩衝器Dの収縮作動時の減衰力のみを入力される振動の周波数に感応させることができる。なお、この場合、クッション16は、弁要素VE3における弁座部材14とカラー8のストッパ8bとの間に配置すると、ストッパ8bと弁体9との衝突をクッション16で緩衝できる。
【0073】
さらに、図6に示した第3変形例の減衰バルブV3のように、弁体9、リーフバルブ10および弁座部材14を図5に示した減衰バルブV2とは上下を逆向きにしてピストンロッド2の外周に装着してもよい。このように構成された減衰バルブV2では、緩衝器Dに低周波であって所定振幅以上の振動が入力され、ピストンロッド2がシリンダ1に対して上方に移動する伸長作動時では、弁座部材14が慣性力によって弁体9に接近して第3通路P3における流路面積を減少させ、伸側室R1から圧側室R2へ向けてポート9aを通過する液体の流れに対してリーフバルブ10が抵抗を与えるようになり、減衰バルブVは、伸側リーフバルブ6とリーフバルブ10とにより緩衝器Dの伸長作動を妨げる減衰力を発生する。
【0074】
ピストンロッド2がシリンダ1に対して上方に移動する伸長作動時でも、緩衝器Dに入力される振動が高周波小振幅である場合、弁座部材14が弁体9に然程接近せず流路面積を減少させないので、液体は主として伸側リーフバルブ6によって抵抗を受けるが、然程抵抗を受けずに第3通路P3を通過し得る。よって、緩衝器Dが伸長作動時でも緩衝器Dに入力される振動が高周波小振幅である場合、減衰バルブV3は、主として伸側リーフバルブ6により緩衝器Dの伸長作動を妨げる減衰力を発生するため、低周波であって所定振幅以上の振動の入力時と比較して小さな減衰力を発生する。
【0075】
対して、緩衝器Dが収縮作動する場合、弁座部材14は、ピストンロッド2に対して相対的に上方へ移動する慣性力しか受けないので弁体9に接近せず、第3通路P3の流路面積を減少させることはない。よって、緩衝器Dの収縮作動時では、振動の周波数および振幅によらず、圧側リーフバルブ7により緩衝器Dの収縮作動を妨げる減衰力を発生する。
【0076】
よって、図6に示した減衰バルブV3では、弁座部材14がピストンロッド2の上方への移動の際に慣性力でピストンロッド2に対して下方へ相対移動して弁体9に接近して流路における流路面積を減少させるので、緩衝器Dの伸長作動時の減衰力のみを入力される振動の周波数に感応させることができる。このように、弁座部材14を移動可能として弁体9を固定しても、弁体9、リーフバルブ10および弁座部材14の緩衝器Dに対する設置向きによって、入力される振動の周波数に感応させる減衰力を発生させる方向を任意に設定できる。
【0077】
さらに、図7に示した第4変形例の減衰バルブV4のように、減衰バルブVでは弁体9をピストンロッド2に対して軸方向へ移動可能とし、弁座部材14をピストンロッド2に対して固定しているが、弁体17と弁座部材14とをそれぞれピストンロッド2に対して軸方向へ移動可能に装着してもよい。
【0078】
減衰バルブV4では、弁体17は、図7に示すように、環状であって、上端から下端に通じて第2通路P2の一部を形成する伸側のポート17aと圧側のポート17bと、下端から突出して伸側のポート17aを取り囲む伸側弁座17cと、上端から突出して圧側のポート17bを取り囲む圧側弁座17dとを備えている。
【0079】
また、弁体17の図7中下端には伸側のリーフバルブ18が積層されるとともに、弁体17の図7中上端には圧側のリーフバルブ19が積層されている。伸側のリーフバルブ18は、複数枚の環状板を積層して構成される積層リーフバルブとされており、保持部材12によって内周側が弁体17に固定されていて外周側の撓みが許容され、伸側弁座17cに離着座可能となっている。伸側のリーフバルブ18は、弁体17の下端の伸側弁座17cに着座する状態では伸側のポート17aを閉塞し、外周側を撓ませて伸側弁座17cから離間させると伸側のポート17aを開放するとともに伸側のポート17aを伸側室R1から圧側室R2へ向かう液体の流れに抵抗を与える。
【0080】
圧側のリーフバルブ19は、複数枚の環状板を積層して構成される積層リーフバルブとされており、保持部材12によって内周側が弁体17に固定されていて外周側の撓みが許容され、圧側弁座17dに離着座可能となっている。圧側のリーフバルブ19は、弁体17の上端の圧側弁座17dに着座する状態では圧側のポート17bを閉塞し、外周側を撓ませて圧側弁座17dから離間させると圧側のポート17bを開放するとともに圧側のポート17bを圧側室R2から伸側室R1へ向かう液体の流れに抵抗を与える。
【0081】
このように構成された減衰バルブV4では、緩衝器Dに低周波であって所定振幅以上の振動が入力され、ピストンロッド2がシリンダ1に対して上方に移動する伸長作動時では、弁体17は慣性力によってピストンロッド2に対して下方へ相対移動し、弁座部材14はピストンロッド2に固定されている圧側バルブストッパ15によってピストンロッド2に対して下方へは移動できないので圧側バルブストッパ15に当接した位置に留まる。よって、この場合、弁体9が弁座部材14に接近して第3通路P3における流路面積を減少させ、伸側室R1から圧側室R2へ向けて伸側のポート17aを通過する液体の流れに対して伸側のリーフバルブ18が抵抗を与えるようになり、減衰バルブV4は、伸側リーフバルブ6と伸側のリーフバルブ18とにより緩衝器Dの伸長作動を妨げる減衰力を発生する。
【0082】
ピストンロッド2がシリンダ1に対して上方に移動する伸長作動時でも、緩衝器Dに入力される振動が高周波小振幅である場合、弁体9が弁座部材14に然程接近せず流路面積を減少させないので、液体は主として伸側リーフバルブ6によって抵抗を受けるが、然程抵抗を受けずに第3通路P3を通過し得る。よって、緩衝器Dが伸長作動時でも緩衝器Dに入力される振動が高周波小振幅である場合、減衰バルブV4は、主として伸側リーフバルブ6により緩衝器Dの伸長作動を妨げる減衰力を発生するため、低周波であって所定振幅以上の振動の入力時と比較して小さな減衰力を発生する。
【0083】
対して、緩衝器Dに低周波であって所定振幅以上の振動が入力され、ピストンロッド2がシリンダ1に対して上方に移動する収縮作動時では、弁座部材14は慣性力によってピストンロッド2に対して上方へ相対移動し、弁体17はピストンロッド2に固定されているカラー8のストッパ8bによってピストンロッド2に対して上方へは移動できないのでストッパ8bによって規制された位置に留まる。よって、この場合、弁座部材14が弁体9に接近して第3通路P3における流路面積を減少させ、圧側室R2から伸側室R1へ向けて圧側のポート17bを通過する液体の流れに対して圧側のリーフバルブ19が抵抗を与えるようになり、減衰バルブV4は、圧側リーフバルブ7と圧側のリーフバルブ19とにより緩衝器Dの収縮作動を妨げる減衰力を発生する。
【0084】
ピストンロッド2がシリンダ1に対して上方に移動する収縮作動時でも、緩衝器Dに入力される振動が高周波小振幅である場合、弁座部材14が弁体9に然程接近せず流路面積を減少させないので、液体は主として圧側リーフバルブ7によって抵抗を受けるが、然程抵抗を受けずに第3通路P3を通過し得る。よって、緩衝器Dが収縮作動時でも緩衝器Dに入力される振動が高周波小振幅である場合、減衰バルブV4は、主として伸側リーフバルブ6により緩衝器Dの収縮作動を妨げる減衰力を発生するため、低周波であって所定振幅以上の振動の入力時と比較して小さな減衰力を発生する。
【0085】
この減衰バルブV4のように、弁要素VE3は、弁体17と弁座部材14とをともに互いに相手方に対して遠近可能とすることによって、入力される振動の周波数に感応する減衰力を発生できる。つまり、弁要素VE3は、弁座部材14と、弁座部材14に対して第3通路P3の一部を形成する流路を介して対向する弁体17と、弁座部材14と弁体17との間に介装されるばね13とを有し、弁座部材14と弁体17の両方は弁座部材14と弁体17との接近および離間する方向に移動可能であり、弁座部材14と弁体17との相対的な接近によって流路における流路面積を減少させるように構成されてもよい。このように構成された減衰バルブV4は、簡易な構成で周波数に感応する減衰力を発生可能であるとともに、弁座部材14と弁体17の質量、ばね13のばね定数の設定で流路面積を減少させる振動の周波数を容易にチューニングできる。また、本実施の形態の減衰バルブV4では、弁座部材14および弁体17がピストンロッド2の上下方向の移動の際に慣性力で互いに接近して流路における流路面積を減少させるので、緩衝器Dの伸長作動時と収縮作動時の両方の減衰力を入力される振動の周波数に感応させることができる。なお、弁座部材14および弁体17の双方が互いに接近および離間する方向へ移動できるように減衰バルブV4を構成する場合、弁要素VE3における弁座部材14の反弁体側と弁体17の反弁座部材側にそれぞれストッパを設けるととともに、圧側バルブストッパ15と弁座部材14との間にもクッションを設けておくと弁座部材14の圧側バルブストッパ15に対する衝突を緩衝できる。
【0086】
以上の各実施の形態の減衰バルブV,V1,V2,V3,V4では、弁体9,17は、第2通路P2を形成するポート9a,17a,17bを有し、第2減衰弁要素VE2は、弁体9,17に積層されてポート9a,17a,17bを開閉するリーフバルブ10,18,19を備えている。このように構成された減衰バルブV,V1,V2,V3,V4によれば、減衰力を大きくした場合の特性をリーフバルブ10,18,19の設定によって容易にチューニングできるとともに、ポート9a,17a,17bを一方通行の通路に設定できるため、緩衝器Dの伸側と圧側の減衰力を別個独立に設定できる。なお、緩衝器Dの伸側と圧側の減衰力を完全に別個独立に設定できなくなるが、減衰バルブV,V1,V2,V3の構成に対して弁体9におけるポート9aにオリフィス或いはチョークを設けて、リーフバルブ10を廃止してポート9aを介して液体が伸側室R1と圧側室R2とを行き交えるようにして、リーフバルブ10を廃止し、弁体9と弁座部材14とで流路の流路面積を減少させるとオリフィス或いはチョークを通過させて減衰力を大きくする構成も採用可能である。このように第2減衰弁要素VE2は、オリフィスやチョークといった双方向に流れを許容する絞り弁とされてもよい。
【0087】
また、前述したところでは、弁座部材14を有底筒状として弁体9,17を弁座部材14の筒部14bに接近させることによって流路を絞るようにしているが、弁座部材14の筒部14bを廃止して弁体9,17に弁座部材14に向かって突出する筒部を設けるようにしてもよい。
【0088】
さらに、前述したが、図8に示す第5変形例の減衰バルブV5のように、弁座部材14の外周をシリンダ1の内周に摺接させてもよい。減衰バルブV5では、弁座部材14は、筒部14bの外周にピストンリング14fを備えるとともに、底部14aの内径を大径化している。そして、ピストンロッド2の外周であってカラー8と圧側バルブストッパ15との間にスペーサ20が設けられており、弁座部材14は、スペーサ20の外周に遊嵌されている。スペーサ20は、環状であって、弁座部材14の底部14aの孔14c内に挿入される挿入部20aと、挿入部20aの上端に連なって底部14aの図8中上端に当接する鍔部20bとを備えている。挿入部20aの外径は、弁座部材14の底部14aの孔14cの直径よりも小径となっていて挿入部20aと孔14cとの間にガタがあり、スペーサ20の外周に嵌合される弁座部材14はガタ分だけ径方向へ移動可能となっている。なお、ばね13は、スペーサ20の鍔部20bとバルブストッパ11との間に介装されていて、スペーサ20を弁座部材14の底部14aの図8中上端面に押し付けている。よって、ピストンロッド2に弁座部材14が組み付けられると、弁座部材14がスペーサ20に対して移動できるものの制限なく自由に移動することはない。このように弁座部材14がスペーサ20の外周に装着されることによって、弁座部材14がピストンロッド2に対して前記ガタ分だけ径方向に移動できるので、ピストン3とともにピストンロッド2をシリンダ1内に挿入されると弁座部材14がシリンダ1に対して自動的に調心される。よって、弁座部材14をシリンダ1の内周に摺接させるようにしても、ピストンロッド2およびピストン3のシリンダ1に対する軸方向への移動を阻害することが無い。このように、シリンダ1の内周に弁座部材14の外周を摺接させることによって、第3通路P3は、弁体9と弁座部材14との間を通るルートのみとなるため、弁体9と弁座部材14とで第3通路P3を完全に遮断できるようになり、周波数に感応させる減衰力をより大きくすることが可能となる。
【0089】
これに対して、減衰バルブV5のように、弁座部材14の外周がシリンダ1の内周に当接せず、弁座部材14とシリンダ1との間の環状隙間を第3通路P3の一部として機能させる場合、弁座部材14がシリンダ1に干渉しないので、ピストンロッド2がシリンダ1に対して軸方向へ弁座部材14の摩擦抵抗受けずに移動できるので緩衝器Dは円滑に伸縮できるという利点がある。
【0090】
また、前述したが、図9に示す第6変形例の減衰バルブV6のように、弁体9の外径を弁座部材14の筒部14bの内径よりも大径にして、弁体9の外周に弁座部材14の筒部14bの上端に当接する環状の座9dを設けてもよい。このように構成された減衰バルブV6では、弁体9が座9dを弁座部材14の筒部14bの上端に当接させて弁体9と弁座部材14との間の流路を遮断するので、弁体9を弁座部材14の筒部14b内に挿入する必要が無くなる。弁体9を弁座部材14の筒部14b内へ挿入する構造の場合、高精度の寸法管理が必要となるが、弁体9を弁座部材14の筒部14bに当接させる場合には、弁体9を弁座部材14の筒部14b内へ挿入する場合と比較すると、高精度な寸法管理が不要となるため加工コストが低減されて、減衰バルブV6の製造コストを低減できる。なお、弁体9に筒部を設けて弁座部材14を弁体9の筒部に当接させる減衰バルブでも同様に製造コストを低減できる。これに対して、減衰バルブV,V1,V2,V3,V4,V5では、弁体9,17を弁座部材14の筒部14b内に挿入して流路の流路面積を減少させる構造を採用しているので、弁体9,17と弁座部材14とが衝突することがなく、打音の発生を防止して減衰バルブVにおける静穏性を向上できるという優れた利点を享受できる。なお、このように弁体9と弁座部材14とを接触させて流路を遮断する場合、図10に示した第7変形例の減衰バルブV7のように、弁座部材14の筒部14bの上端に弁体9に当接する環状のゴム21を焼き付けておくと、打音を解消できるとともに、弁体9と弁座部材14とで流路を遮断する際に密に流路を遮断できる。このようなゴム21は、弁体9側に設けてもよい。
【0091】
また、本実施の形態の減衰バルブVでは、弁体9の反弁座部材側に設けられるストッパ8bと、ストッパ8bと弁要素VE3との間に配置されるクッション16とを備えている。このように構成された減衰バルブVによれば、ばね13によって弁体9が元の位置に復帰する場合にクッション16が弁体9とストッパ8bとの衝突を緩衝するので、弁体9とストッパ8bとの間で打音が生じることが無くなり、減衰バルブVにおける静穏性が向上する。なお、クッション16は、前述したところでは、皿ばねとされているが、皿ばね以外のばねやゴム等その他の弾性体であってもよい。また、弁座部材14が弁体9に対して移動可能である場合、弁座部材14の反弁体側にストッパを設けて、当該ストッパと弁要素VE3における弁座部材14との間にクッションを設ければ、減衰バルブVの静穏性を向上できる。
【0092】
さらに、本実施の形態の減衰バルブVでは、弁座部材14、弁体9およびリーフバルブ10が環状であって、弁座部材14、弁体9およびリーフバルブ10の内周に挿通されるカラー(軸部材)8を備え、弁要素VE3は、カラー(軸部材)8の外周に摺動可能に装着されて外周にリーフバルブ10と、リーフバルブ10が積層される弁体9とが装着される保持部材12を備えている。このように構成された減衰バルブVによれば、弁体9とリーフバルブ10とを保持部材12によって一体化できるので、カラー(軸部材)8への組立作業が容易となるとともに、カラー(軸部材)8に対する摺動性が向上するので弁体9の円滑な軸方向への移動を保証し得る。なお、保持部材12を省略してカラー(軸部材)8の外周に弁体9とリーフバルブ10とを軸方向移動可能に装着することも可能である。また、前述した通り、軸部材をピストンロッド2の小径部2aとしてカラー8を省略することも可能である。
【0093】
また、本実施の形態の減衰バルブVでは、弁座部材14と弁体9との間に介装されたばね13が円錐ばねとされている。円錐ばねの最圧縮時の長さは、円筒状のコイルばねと比較すると短くなるので、ばね13を円錐ばねとすることによって、弁座部材14と弁体9とが最も離間する状態におけるばね13の長さを短くしつつも弁体9のストローク長を確保し易くなり、減衰バルブVの全長の短縮化が可能となる。なお、ばね13は、円錐ばね以外のばねやゴム等の弾性体とされてもよく、そのようにしても本発明の効果が失われない。
【0094】
さらに、本実施の形態の減衰バルブV,V1,V2,V3,V4,V5,V6,V7では、弁要素VE3がピストン3よりも伸側室側(一方室側)に設けられているが、ピストン3よりも図1中下方に圧側室側(他方室側)に設けられてもよい。
【0095】
なお、前述したところでは、弁体9の弁座部材側にリーフバルブ10が積層されているので、弁座部材14に筒部14bを設けて弁体9,17と筒部14bとで流路における流路面積を減少させ得るようにしているが、前述した具体的な構成は一例であって、弁座部材14と弁体9とで第3通路P3における流路面積を減少し得る限りにおいて、弁座部材14および弁体9,17の構造および形状を適宜設計変更できることは当然である。
【0096】
また、本実施の形態の緩衝器Dは、シリンダ(アウターシェル)1と、シリンダ(アウターシェル)1内に軸方向へ移動可能に挿入されるピストンロッド2と、シリンダ(アウターシェル)1に対するピストンロッド2の移動によって液体が行き来する少なくとも伸側室(一方室)R1と圧側室(他方室)R2とを有する緩衝器本体Aと、減衰バルブVを備えている。このように構成された緩衝器Dでは、減衰バルブVを備えることにより、緩衝器Dを取り付けた車両から入力される振動が高周波小振幅の振動であれば減衰力を小さくし、前記振動の周波数が低周波数であって所定振幅以上の振動であれば減衰力を大きくできる。よって、本実施の形態の緩衝器Dによれば、入力される振動の周波数が高周波数の場合には、減衰力を小さくして車体に車輪側の高周波振動の伝達を妨げることができ、入力される振動の周波数が低周波数である場合には、減衰力を大きくて車体のゆっくりとした大きな振幅の振動を効果的に抑制でき、車両における乗心地を向上できる。
【0097】
また、図1に示したところでは、一方室と他方室とを伸側室R1と圧側室R2としているが、緩衝器Dがシリンダの外周にアウターシェルとして外筒を備えてシリンダと外筒との間にリザーバを備える複筒型緩衝器とされる場合には、圧側室とリザーバとの間に減衰バルブVを設けてもよいことは前述したとおりである。よって、減衰バルブVにおける減衰通路DPは、伸側室R1と圧側室R2とを連通してもよいし、圧側室R2とリザーバとを連通してもよい。
【0098】
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱しない限り、改造、変形、および変更が可能である。
【符号の説明】
【0099】
1・・・シリンダ、2・・・ピストンロッド、3・・・ピストン、3a・・・伸側ポート、3b・・・圧側ポート、6・・・伸側リーフバルブ、7・・・圧側リーフバルブ、8・・・カラー(軸部材)、8b・・・ストッパ、9,17・・・弁体、9a,17a,17b・・・ポート、10,18,19・・・リーフバルブ、12・・・保持部材、14・・・弁座部材、16・・・クッション、D・・・緩衝器、DP・・・減衰通路、VE1・・・第1減衰弁要素、VE2・・・第2減衰弁要素、VE3・・・弁要素、P1・・・第1通路、P2・・・第2通路、P3・・・第3通路、DP・・・減衰通路、R1・・・伸側室(一方室)、R2・・・圧側室(他方室)、V,V1,V2,V3,V4,V5,V6,V7・・・減衰バルブ
図1
図2
図3
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図7
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図10