(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155398
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】弾性波装置
(51)【国際特許分類】
H03H 9/145 20060101AFI20241024BHJP
【FI】
H03H9/145 Z
H03H9/145 C
H03H9/145 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023070077
(22)【出願日】2023-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】弁理士法人大阪フロント特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】瀧川 和大
【テーマコード(参考)】
5J097
【Fターム(参考)】
5J097AA01
5J097AA14
5J097BB02
5J097BB11
5J097DD04
5J097DD15
5J097DD22
5J097DD29
5J097FF04
5J097FF05
5J097HA02
5J097HA03
5J097KK03
5J097KK09
(57)【要約】 (修正有)
【課題】リターンロスを小さくすることができる弾性波装置を提供する。
【解決手段】弾性波装置1は、圧電性基板2と該基板上に設けらた1対のバスバー4、5、IDT電極3、反射器13Aを含む1対の反射器と、IDT電極の電極指6、7が重なり合っている交叉領域Aと、を備える。交叉領域は、中央領域Cと1対のエッジ領域Ea、Ebと、を有する。IDT電極の1対のバスバー及び各反射器の1対のバスバーにそれぞれ、反射器間方向xに沿ってそれぞれ複数の開口部Oa~Odが設けられている。IDT電極の中央領域Cにおける音速をVa、開口部形成領域Oaにおける音速をVbとしたときVa≠Vbであり、各反射器の延長中央領域における音速をVc、開口部形成領域Oc、Odにおける音速をVdとしたときVc≠Vdであり、IDT電極と、少なくとも一方の反射器が設けられている部分とにおいて、(Vb/Va)≠(Vd/Vc)である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電性基板と、
前記圧電性基板上に設けられており、互いに対向している1対のバスバー、並びに互いに間挿し合っている複数の第1の電極指及び複数の第2の電極指を有するIDT電極と、
前記複数の第1の電極指及び前記複数の第2の電極指が延びる方向を第1の方向、前記第1の方向と直交する方向を第2の方向としたときに、前記第2の方向において、前記IDT電極を挟み互いに対向するように前記圧電性基板上に設けられている、1対の反射器と、
を備え、
各前記反射器が、互いに対向している1対の反射器バスバーと、前記1対の反射器バスバーに電気的に接続されている複数の反射器電極指と、を有し、
前記第2の方向から前記IDT電極を見たときに、隣り合う前記第1の電極指及び前記第2の電極指が重なり合っている領域が交叉領域であり、前記交叉領域が、中央領域と、前記第1の方向において前記中央領域を挟み互いに対向している1対のエッジ領域と、を有し、
前記中央領域を前記第2の方向において延長した領域が延長中央領域であり、
前記IDT電極の前記1対のバスバー、及び各前記反射器の前記1対の反射器バスバーにそれぞれ、前記第2の方向に沿って複数の開口部が設けられており、前記1対のバスバー、及び前記1対の反射器バスバーのそれぞれにおける、前記複数の開口部が設けられている領域が開口部形成領域であり、
前記IDT電極が設けられている部分において、前記中央領域における音速をVa、前記開口部形成領域における音速をVbとしたときに、Va≠Vbであり、各前記反射器が設けられている部分において、前記延長中央領域における音速をVc、前記開口部形成領域における音速をVdとしたときに、Vc≠Vdであり、
前記IDT電極が設けられている部分と、少なくとも一方の前記反射器が設けられている部分とにおいて、(Vb/Va)≠(Vd/Vc)である、弾性波装置。
【請求項2】
圧電性基板と、
前記圧電性基板上に設けられており、互いに対向している1対のバスバー、並びに互いに間挿し合っている複数の第1の電極指及び複数の第2の電極指を有するIDT電極と、
前記複数の第1の電極指及び前記複数の第2の電極指が延びる方向を第1の方向、前記第1の方向と直交する方向を第2の方向としたときに、前記第2の方向において、前記IDT電極を挟み互いに対向するように前記圧電性基板上に設けられている、1対の反射器と、
を備え、
前記反射器が、互いに対向している1対の反射器バスバーと、前記1対の反射器バスバーに電気的に接続されている複数の反射器電極指と、を有し、
前記第2の方向から前記IDT電極を見たときに、隣り合う前記第1の電極指及び前記第2の電極指が重なり合っている領域が交叉領域であり、前記交叉領域が、中央領域と、前記第1の方向において前記中央領域を挟み互いに対向している1対のエッジ領域と、を有し、
前記中央領域を前記第2の方向において延長した領域が延長中央領域であり、
前記IDT電極の前記1対のバスバー、及び前記反射器の前記1対の反射器バスバーにそれぞれ、前記第2の方向に沿って複数の開口部が設けられており、前記1対のバスバー、及び前記1対の反射器バスバーのそれぞれにおける、前記複数の開口部が設けられている領域が開口部形成領域であり、
前記第2の方向において、金属により前記圧電性基板が被覆されている部分の割合いを、メタライゼーション比とし、前記IDT電極が設けられている部分において、前記中央領域における前記メタライゼーション比をMa、前記開口部形成領域における前記メタライゼーション比をMbとしたときに、Ma≠Mbであり、各前記反射器が設けられている部分において、前記延長中央領域における前記メタライゼーション比をMc、前記開口部形成領域における前記メタライゼーション比をMdとしたときに、Mc≠Mdであり、
前記IDT電極が設けられている部分と、少なくとも一方の前記反射器が設けられている部分とにおいて、(Mb/Ma)≠(Md/Mc)である、弾性波装置。
【請求項3】
前記IDT電極が設けられている部分と、双方の前記反射器が設けられている部分との間において、(Mb/Ma)≠(Md/Mc)である、請求項2に記載の弾性波装置。
【請求項4】
各前記反射器の前記1対の反射器バスバーがそれぞれ、前記第1の方向に沿って並んでいる内側バスバー部及び外側バスバー部と、前記内側バスバー部及び前記外側バスバー部を接続しており、前記第2の方向に沿って並んでいる複数の接続電極と、を有し、
少なくとも一方の前記反射器において、隣り合う前記反射器電極指同士の中心間距離と、隣り合う前記接続電極同士の中心間距離とが互いに異なる、請求項1または2に記載の弾性波装置。
【請求項5】
前記IDT電極の前記1対のバスバー及び各前記反射器の前記1対の反射器バスバーがそれぞれ、前記第1の方向に沿って並んでいる内側バスバー部及び外側バスバー部と、前記内側バスバー部及び前記外側バスバー部を接続しており、前記第2の方向に沿って並んでいる複数の接続電極と、を有し、
前記IDT電極の前記1対のバスバー及び各前記反射器の前記1対の反射器バスバーのそれぞれにおいて、前記内側バスバー部及び前記外側バスバー部の間の領域が前記開口部形成領域であり、
前記IDT電極の前記バスバーにおける隣り合う前記接続電極のうち少なくとも一方に接続されており、前記第2の方向に延びている複数の第1の電極パターン部と、
各前記反射器の前記反射器バスバーにおける隣り合う前記接続電極のうち少なくとも一方に接続されており、前記第2の方向に延びている複数の第2の電極パターン部と、
をさらに備え、
前記IDT電極の前記開口部形成領域における、前記複数の第1の電極パターン部の面積占有率と、少なくとも一方の前記反射器の前記開口部形成領域における、前記複数の第2の電極パターン部の面積占有率とが互いに異なる、請求項1または2に記載の弾性波装置。
【請求項6】
前記第1の電極パターン部の前記第1の方向に沿う寸法と、前記第2の電極パターン部の前記第1の方向に沿う寸法とが互いに異なる、請求項5に記載の弾性波装置。
【請求項7】
前記第1の電極パターン部の前記第2の方向に沿う寸法と、前記第2の電極パターン部の前記第2の方向に沿う寸法とが互いに異なる、請求項5に記載の弾性波装置。
【請求項8】
前記IDT電極の前記バスバーにおける隣り合う前記接続電極の間にそれぞれ、1本の前記第1の電極パターン部、または前記第1の方向に沿って並んでいる2本以上の前記第1の電極パターン部が設けられており、
前記反射器の前記反射器バスバーにおける隣り合う前記接続電極の間にそれぞれ、1本の前記第2の電極パターン部、または前記第1の方向に沿って並んでいる2本以上の前記第2の電極パターン部が設けられており、
前記IDT電極の前記バスバーにおける隣り合う前記接続電極の間に設けられている前記第1の電極パターン部の本数と、少なくとも一方の前記反射器の前記反射器バスバーにおける隣り合う前記接続電極の間に設けられている前記第2の電極パターン部の本数とが互いに異なる、請求項5に記載の弾性波装置。
【請求項9】
前記圧電性基板上に、前記IDT電極及び各前記反射器を覆うように設けられている誘電体膜をさらに備え、
前記誘電体膜の、少なくとも一方の前記反射器を覆っている部分における、前記延長中央領域と平面視において重なっている部分の厚みと、前記開口部形成領域と平面視において重なっている部分の厚みとが互いに異なる、請求項1または2に記載の弾性波装置。
【請求項10】
前記圧電性基板と、前記IDT電極及び各前記反射器との間に設けられている誘電体層をさらに備え、
前記誘電体層の、少なくとも一方の前記反射器が設けられている部分における前記延長中央領域に位置している部分の厚みと、前記開口部形成領域に位置している部分の厚みとが互いに異なる、請求項1または2に記載の弾性波装置。
【請求項11】
前記IDT電極が設けられている部分において、前記中央領域における音速をVa、前記開口部形成領域における音速をVbとしたときに、Va≠Vbであり、各前記反射器が設けられている部分において、前記延長中央領域における音速をVc、前記開口部形成領域における音速をVdとしたときに、Vc≠Vdであり、
前記IDT電極が設けられている部分と、双方の前記反射器が設けられている部分との間において、(Vb/Va)≠(Vd/Vc)である、請求項1または2に記載の弾性波装置。
【請求項12】
前記1対のエッジ領域において、音速が前記中央領域における音速よりも低い、低音速領域が構成されている、請求項1または2に記載の弾性波装置。
【請求項13】
前記1対のエッジ領域において、前記複数の第1の電極指及び前記複数の第2の電極指のうち少なくとも1本の電極指が、前記中央領域における幅よりも幅が広い幅広部を有することにより、前記低音速領域が構成されている、請求項12に記載の弾性波装置。
【請求項14】
前記1対のエッジ領域において、平面視したときに、前記複数の第1の電極指及び前記複数の第2の電極指のうち少なくとも1本の電極指と重なるように質量付加膜が設けられていることにより、前記低音速領域が構成されている、請求項12に記載の弾性波装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性波装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、弾性波装置は、携帯電話機のフィルタなどとして広く用いられている。下記の特許文献1には、弾性波装置の一例が開示されている。この弾性波装置においては、圧電基板上にIDT(Interdigital Transducer)が設けられている。IDTにおいては、複数の電極指が延びる方向における内側から外側にかけて、中央領域、低音速領域及び高音速領域がこの順序で配置されている。複数の電極指が延びる方向において、音速が互いに異なる領域が配置されていることにより、横モードの抑制が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の弾性波装置においては、リターンロスが大きくなることを十分に抑制できないおそれがある。
【0005】
本発明の目的は、リターンロスを小さくすることができる、弾性波装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る弾性波装置のある広い局面では、圧電性基板と、前記圧電性基板上に設けられており、互いに対向している1対のバスバー、並びに互いに間挿し合っている複数の第1の電極指及び複数の第2の電極指を有するIDT電極と、前記複数の第1の電極指及び前記複数の第2の電極指が延びる方向を第1の方向、前記第1の方向と直交する方向を第2の方向としたときに、前記第2の方向において、前記IDT電極を挟み互いに対向するように前記圧電性基板上に設けられている、1対の反射器とを備え、各前記反射器が、互いに対向している1対の反射器バスバーと、前記1対の反射器バスバーに電気的に接続されている複数の反射器電極指とを有し、前記第2の方向から前記IDT電極を見たときに、隣り合う前記第1の電極指及び前記第2の電極指が重なり合っている領域が交叉領域であり、前記交叉領域が、中央領域と、前記第1の方向において前記中央領域を挟み互いに対向している1対のエッジ領域とを有し、前記中央領域を前記第2の方向において延長した領域が延長中央領域であり、前記IDT電極の前記1対のバスバー、及び各前記反射器の前記1対の反射器バスバーにそれぞれ、前記第2の方向に沿って複数の開口部が設けられており、前記1対のバスバー、及び前記1対の反射器バスバーのそれぞれにおける、前記複数の開口部が設けられている領域が開口部形成領域であり、前記IDT電極が設けられている部分において、前記中央領域における音速をVa、前記開口部形成領域における音速をVbとしたときに、Va≠Vbであり、各前記反射器が設けられている部分において、前記延長中央領域における音速をVc、前記開口部形成領域における音速をVdとしたときに、Vc≠Vdであり、前記IDT電極が設けられている部分と、少なくとも一方の前記反射器が設けられている部分とにおいて、(Vb/Va)≠(Vd/Vc)である。
【0007】
本発明に係る弾性波装置の他の広い局面では、圧電性基板と、前記圧電性基板上に設けられており、互いに対向している1対のバスバー、並びに互いに間挿し合っている複数の第1の電極指及び複数の第2の電極指を有するIDT電極と、前記複数の第1の電極指及び前記複数の第2の電極指が延びる方向を第1の方向、前記第1の方向と直交する方向を第2の方向としたときに、前記第2の方向において、前記IDT電極を挟み互いに対向するように前記圧電性基板上に設けられている、1対の反射器とを備え、前記反射器が、互いに対向している1対の反射器バスバーと、前記1対の反射器バスバーに電気的に接続されている複数の反射器電極指とを有し、前記第2の方向から前記IDT電極を見たときに、隣り合う前記第1の電極指及び前記第2の電極指が重なり合っている領域が交叉領域であり、前記交叉領域が、中央領域と、前記第1の方向において前記中央領域を挟み互いに対向している1対のエッジ領域とを有し、前記中央領域を前記第2の方向において延長した領域が延長中央領域であり、前記IDT電極の前記1対のバスバー、及び前記反射器の前記1対の反射器バスバーにそれぞれ、前記第2の方向に沿って複数の開口部が設けられており、前記1対のバスバー、及び前記1対の反射器バスバーのそれぞれにおける、前記複数の開口部が設けられている領域が開口部形成領域であり、前記第2の方向において、金属により前記圧電性基板が被覆されている部分の割合いを、メタライゼーション比とし、前記IDT電極が設けられている部分において、前記中央領域における前記メタライゼーション比をMa、前記開口部形成領域における前記メタライゼーション比をMbとしたときに、Ma≠Mbであり、各前記反射器が設けられている部分において、前記延長中央領域における前記メタライゼーション比をMc、前記開口部形成領域における前記メタライゼーション比をMdとしたときに、Mc≠Mdであり、前記IDT電極が設けられている部分と、少なくとも一方の前記反射器が設けられている部分とにおいて、(Mb/Ma)≠(Md/Mc)である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の弾性波装置によれば、リターンロスを小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る弾性波装置の模式的平面図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態のIDT電極における、第1のバスバー付近及び第2のバスバー付近の一部を拡大して示す模式的平面図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態に係る弾性波装置のインピーダンス周波数特性を示す図である。
【
図5】本発明の第1の実施形態、第1の実施形態の変形例及び比較例の弾性波装置の、共振周波数付近におけるリターンロスを示す図である。
【
図6】本発明の第1の実施形態、第1の実施形態の変形例及び比較例の弾性波装置の、反共振周波数付近におけるリターンロスを示す図である。
【
図7】本発明の第1の実施形態、第1の実施形態の変形例及び比較例の弾性波装置の、ストップバンドの上端付近におけるリターンロスを示す図である。
【
図8】本発明の第2の実施形態のIDT電極における、第1のバスバー付近及び第2のバスバー付近の一部を拡大して示す模式的平面図である。
【
図9】本発明の第3の実施形態に係る弾性波装置の模式的平面図である。
【
図10】本発明の第3の実施形態、第3の実施形態の変形例及び比較例の弾性波装置の、共振周波数付近におけるリターンロスを示す図である。
【
図11】本発明の第3の実施形態、第3の実施形態の変形例及び比較例の弾性波装置の、反共振周波数付近におけるリターンロスを示す図である。
【
図12】本発明の第3の実施形態、第3の実施形態の変形例及び比較例の弾性波装置の、ストップバンドの上端付近におけるリターンロスを示す図である。
【
図13】本発明の第4の実施形態に係る弾性波装置の模式的平面図である。
【
図14】本発明の第5の実施形態に係る弾性波装置の模式的平面図である。
【
図15】本発明の第6の実施形態に係る弾性波装置の模式的平面図である。
【
図16】本発明の第7の実施形態に係る弾性波装置の模式的平面図である。
【
図17】本発明の第8の実施形態に係る弾性波装置の模式的平面図である。
【
図18】本発明の第9の実施形態に係る弾性波装置の模式的平面図である。
【
図20】本発明の第10の実施形態に係る弾性波装置の模式的平面図である。
【
図22】本発明の第10の実施形態の変形例の弾性波装置における、
図21に示す断面に相当する部分を示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明することにより、本発明を明らかにする。
【0011】
なお、本明細書に記載の各実施形態は、例示的なものであり、異なる実施形態間において、構成の部分的な置換または組み合わせが可能であることを指摘しておく。
【0012】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る弾性波装置の模式的平面図である。
【0013】
弾性波装置1は圧電性基板2を有する。圧電性基板2は、圧電性を有する基板である。本実施形態においては、圧電性基板2は圧電材料のみからなる基板である。もっとも、圧電性基板2は、圧電体層を含む積層基板であってもよい。本実施形態においては、圧電性基板2の圧電材料として、ニオブ酸リチウムが用いられている。なお、圧電材料は上記に限定されず、例えば、タンタル酸リチウム、酸化亜鉛、窒化アルミニウム、水晶、またはPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)などを用いることもできる。
【0014】
圧電性基板2は第1の主面2a及び第2の主面2bを有する。第1の主面2a及び第2の主面2bは互いに対向している。圧電性基板2の第1の主面2aにはIDT電極3が設けられている。IDT電極3に交流電圧を印加することにより、弾性波が励振される。
【0015】
IDT電極3は、第1のバスバー4及び第2のバスバー5と、複数の第1の電極指6及び複数の第2の電極指7とを有する。第1のバスバー4及び第2のバスバー5は互いに対向している。第1のバスバー4に、複数の第1の電極指6の一端がそれぞれ接続されている。第2のバスバー5に、複数の第2の電極指7の一端がそれぞれ接続されている。複数の第1の電極指6及び複数の第2の電極指7は互いに間挿し合っている。以下においては、第1の電極指6及び第2の電極指7を、単に電極指と記載することがある。第1のバスバー4及び第2のバスバー5を、単にバスバーと記載することがある。
【0016】
さらに、以下においては、複数の第1の電極指6及び複数の第2の電極指7が延びる方向を第1の方向yとし、第1の方向yと直交する方向を第2の方向xとする。本実施形態においては、第2の方向xは、弾性波伝搬方向と平行である。
【0017】
図2は、第1の実施形態のIDT電極における、第1のバスバー付近及び第2のバスバー付近の一部を拡大して示す模式的平面図である。
【0018】
第2の方向xからIDT電極3を見たときに、隣り合う第1の電極指6及び第2の電極指7が重なり合っている領域が、交叉領域Aである。交叉領域Aは、中央領域Cと、1対のエッジ領域とを有する。1対のエッジ領域は、具体的には、第1のエッジ領域Ea及び第2のエッジ領域Ebである。第1のエッジ領域Ea及び第2のエッジ領域Ebは、第1の方向yにおいて、中央領域Cを挟み互いに対向するように配置されている。第1のエッジ領域Eaは第1のバスバー4側に位置している。第2のエッジ領域Ebは第2のバスバー5側に位置している。
【0019】
図1に戻り、第1のバスバー4には、第2の方向xに沿って複数の開口部4dが設けられている。具体的には、第1のバスバー4は、内側バスバー部4aと、外側バスバー部4bと、複数の接続電極4cとを有する。内側バスバー部4a及び外側バスバー部4bは、第1の方向yに沿って並んでいる。内側バスバー部4aは、開口部4d及び外側バスバー部4bよりも第1の方向yにおいて内側に位置している。より具体的には、内側バスバー部4aは、開口部4d及び外側バスバー部4bよりも上記交叉領域A側に位置している。
【0020】
複数の接続電極4cは第2の方向xに沿って並んでいる。本実施形態では、各接続電極4cは第1の方向yと平行に延びている。内側バスバー部4a及び外側バスバー部4bは、複数の接続電極4cにより接続されている。各開口部4dは、内側バスバー部4a、2本の接続電極4c及び外側バスバー部4bにより囲まれた開口部である。なお、各接続電極4cは、各第1の電極指6の延長線上に設けられており、かつ各第2の電極指7の延長線上には設けられていない。もっとも、各接続電極4cの配置は上記に限定されない。
【0021】
第2のバスバー5も、第1のバスバー4と同様に構成されている。第2のバスバー5には、第2の方向xに沿って複数の開口部5dが設けられている。第2のバスバー5は、内側バスバー部5aと、外側バスバー部5bと、複数の接続電極4cとを有する。
【0022】
圧電性基板2上には、1対の反射器13A及び反射器13Bが設けられている。反射器13A及び反射器13Bは、第2の方向xにおいて、IDT電極3を挟み互いに対向するように配置されている。
【0023】
弾性波装置1は延長中央領域Cxを有する。延長中央領域Cxは、中央領域Cを第2の方向xに延長した領域である。延長中央領域Cxは、IDT電極3が設けられている部分にだけではなく、1対の反射器が設けられている部分にも含まれる領域である。なお、
図1においては、反射器13Aが設けられている部分に位置する延長中央領域Cxのみを示している。
【0024】
反射器13Aは、1対の反射器バスバーと、複数の反射器電極指16とを有する。1対の反射器バスバーは、具体的には、第1の反射器バスバー14A及び第2の反射器バスバー15Aである。第1の反射器バスバー14A及び第2の反射器バスバー15Aは互いに対向している。第1の反射器バスバー14A及び第2の反射器バスバー15Aに、複数の反射器電極指16が接続されている。
【0025】
第1の反射器バスバー14Aには、IDT電極3の第1のバスバー4と同様に、第2の方向xに沿って複数の開口部14dが設けられている。具体的には、第1の反射器バスバー14Aは、内側バスバー部14aと、外側バスバー部14bと、複数の接続電極14cとを有する。内側バスバー部14a及び外側バスバー部14bは、第1の方向yに沿って並んでいる。より具体的には、内側バスバー部14aは、開口部14d及び外側バスバー部14bよりも、複数の反射器電極指16側に位置している。
【0026】
複数の接続電極14cは第2の方向xに沿って並んでいる。本実施形態では、各接続電極14cは第1の方向yと平行に延びている。内側バスバー部14a及び外側バスバー部14bは、複数の接続電極14cにより接続されている。各開口部14dは、内側バスバー部14a、2本の接続電極14c及び外側バスバー部14bにより囲まれた開口部である。2本以上おきの反射器電極指16の延長線上に、それぞれ接続電極14cが設けられている。もっとも、各接続電極14cの配置は上記に限定されない。
【0027】
同様に、第2の反射器バスバー15Aにも、第2の方向xに沿って複数の開口部15dが設けられている。第2の反射器バスバー15Aは、内側バスバー部15aと、外側バスバー部15bと、複数の接続電極15cとを有する。
【0028】
本実施形態では、反射器13Bは、反射器13Aと同様に構成されている。よって、反射器13Bは、1対の反射器バスバーとしての、第1の反射器バスバー14B及び第2の反射器バスバー15Bと、複数の反射器電極指16とを有する。第1の反射器バスバー14B及び第2の反射器バスバー15Bにはそれぞれ、第2の方向xに沿って複数の開口部が設けられている。第1の反射器バスバー14B及び第2の反射器バスバー15Bはそれぞれ、内側バスバー部と、外側バスバー部と、複数の接続電極とを有する。以下においては、反射器13A及び反射器13Bにおけるそれぞれの第1の反射器バスバー及び第2の反射器バスバーを、単に反射器バスバーと記載することがある。
【0029】
IDT電極3における各バスバー、並びに反射器13A及び反射器13Bの各反射器バスバーにおける、複数の開口部が設けられている領域は、開口部形成領域である。具体的には、IDT電極3における第1のバスバー4における、複数の開口部4dが設けられている領域が、開口部形成領域Oaである。開口部形成領域Oaは、内側バスバー部4a及び外側バスバー部4bの間の領域である。第2のバスバー5における、複数の開口部5dが設けられている領域が、開口部形成領域Obである。開口部形成領域Obは、内側バスバー部5a及び外側バスバー部5bの間の領域である。
【0030】
反射器13Aの第1の反射器バスバー14Aにおける、複数の開口部14dが設けられている領域は、開口部形成領域Ocである。開口部形成領域Ocは、内側バスバー部14a及び外側バスバー部14bの間の領域である。第2の反射器バスバー15Aにおける、複数の開口部15dが設けられている領域は、開口部形成領域Odである。開口部形成領域Odは、内側バスバー部15a及び外側バスバー部15bの間の領域である。同様に、反射器13Bの1対の反射器バスバーにおける、複数の開口部が設けられている領域もそれぞれ、開口部形成領域である。
【0031】
以下においては、IDT電極3が設けられている部分において、中央領域Cにおける音速をVa、各開口部形成領域における音速をVbとする。反射器13Aが設けられている部分において、延長中央領域Cxにおける音速をVc、各開口部形成領域における音速をVdとする。なお、反射器13Bが設けられている部分においても、延長中央領域Cxにおける音速をVc、各開口部形成領域における音速をVdとする。
【0032】
反射器13A及び反射器13Bにおいて、音速Vc同士または音速Vd同士が異なることもあることを指摘しておく。もっとも、弾性波装置1の反射器13A及び反射器13Bにおいては、音速Vc同士は同じであり、音速Vd同士は同じである。IDT電極3においては、Va≠Vbである。反射器13A及び反射器13Bのそれぞれにおいては、Vc≠Vdである。
【0033】
本実施形態の特徴は、IDT電極3が設けられている部分と、反射器13A及び反射器13Bが設けられている部分のそれぞれとにおいて、(Vb/Va)≠(Vd/Vc)であることにある。なお、IDT電極3が設けられている部分と、少なくとも一方の反射器が設けられている部分とにおいて、(Vb/Va)≠(Vd/Vc)であればよい。それによって、リターンロスを小さくすることができる。従って、弾性波装置1をフィルタ装置に用いた場合において、挿入損失が大きくなることを抑制できる。
【0034】
なお、本実施形態においては、IDT電極3における各開口部形成領域と、各反射器における各開口部形成領域とにおいて、メタライゼーション比が互いに異なる。これにより、(Vb/Va)≠(Vd/Vc)とされている。この詳細を示すと共に、本実施形態における上記の効果の詳細を示す。
【0035】
本明細書において、メタライゼーション比とは、第2の方向xにおいて、金属により圧電性基板2が被覆されている部分の割合いである。具体的には、例えば、IDT電極3が設けられている部分における中央領域Cにおいては、電極指が設けられている部分と、設けられていない部分とが含まれる。言い換えれば、中央領域Cにおいては、電極指を構成している金属により圧電性基板2が被覆されている部分と、被覆されていない部分とが含まれる。中央領域Cのメタライゼーション比は、中央領域Cにおいて占める、金属により圧電性基板2が被覆されている部分の割合いである。
【0036】
より具体的には、中央領域Cにおける金属の第2の方向xに沿う寸法の合計を、中央領域Cの第2の方向xに沿う寸法により割った値が、中央領域Cにおけるメタライゼーション比である。延長中央領域Cx及び各開口部形成領域においても同様である。
【0037】
なお、IDT電極3が設けられている部分の、中央領域Cの第2の方向xにおける一方端部は、複数の電極指のうち第2の方向xにおける最も一方端部側に位置する電極指の第2の方向xにおける中心である。中央領域Cの第2の方向xにおける他方端部は、複数の電極指のうち第2の方向xにおける最も他方端部側に位置する電極指の第2の方向xにおける中心である。開口部形成領域Oa及び開口部形成領域Obのそれぞれにおいては、第2の方向xにおける一方端部は、第1の方向yから見たときに、中央領域Cの第2の方向xにおける一方端部と重なっている部分である。開口部形成領域Oa及び開口部形成領域Obのそれぞれにおいて、第2の方向xにおける他方端部は、第1の方向yから見たときに、中央領域Cの第2の方向xにおける他方端部と重なっている部分である。
【0038】
反射器13Aが設けられている部分における延長中央領域Cxの第2の方向xにおける一方端部は、複数の反射器電極指16のうち第2の方向xにおける最も一方端部側に位置する反射器電極指16の第2の方向xにおける中心である。反射器13Aが設けられている部分における延長中央領域Cxの第2の方向xにおける他方端部は、複数の反射器電極指16のうち第2の方向xにおける最も他方端部側に位置する反射器電極指16の第2の方向xにおける中心である。
【0039】
反射器13Aが設けられている部分の、開口部形成領域Oc及び開口部形成領域Odのそれぞれにおいては、第2の方向xにおける一方端部は、第1の方向yから見たときに、延長中央領域Cxの第2の方向xにおける一方端部と重なっている部分である。開口部形成領域Oc及び開口部形成領域Odのそれぞれにおいて、第2の方向xにおける他方端部は、第1の方向yから見たときに、延長中央領域Cxの第2の方向xにおける他方端部と重なっている部分である。反射器13Bが設けられている部分における各領域の、第2の方向xにおける端部も同様である。
【0040】
以下においては、IDT電極3が設けられている部分において、中央領域Cにおけるメタライゼーション比をMa、各開口部形成領域におけるメタライゼーション比をMbとする。反射器13Aが設けられている部分において、延長中央領域Cxにおけるメタライゼーション比をMc、各開口部形成領域におけるメタライゼーション比をMdとする。なお、反射器13Bが設けられている部分においても、延長中央領域Cxにおけるメタライゼーション比をMc、各開口部形成領域におけるメタライゼーション比をMdとする。
【0041】
反射器13A及び反射器13Bにおいて、メタライゼーション比Mc同士またはメタライゼーション比Md同士が異なることもあることを指摘しておく。もっとも、弾性波装置1の反射器13A及び反射器13Bにおいては、メタライゼーション比Mc同士は同じであり、メタライゼーション比Md同士は同じである。IDT電極3においては、Ma≠Mbである。反射器13A及び反射器13Bのそれぞれにおいては、Mc≠Mdである。
【0042】
ここで、IDT電極3の各バスバー、及び各反射器の各反射器バスバーにおいてそれぞれ、隣り合う接続電極同士の第2の方向xにおける中心間距離を、接続電極ピッチとする。例えば、開口部形成領域における接続電極ピッチが狭い場合には、該開口部形成領域におけるメタライゼーション比は大きい。あるいは、開口部形成領域における各接続電極の幅が広い場合には、該開口部形成領域におけるメタライゼーション比は大きい。そして、開口部形成領域におけるメタライゼーション比が大きい場合には、該開口部形成領域における音速は低い。なお、接続電極の幅は、接続電極の第2の方向xに沿う寸法である。
【0043】
本実施形態では、IDT電極3が設けられている部分と、反射器13Aが設けられている部分とにおいて、(Mb/Ma)≠(Md/Mc)である。同様に、IDT電極3が設けられている部分と、反射器13Bが設けられている部分とにおいて、(Mb/Ma)≠(Md/Mc)である。
【0044】
具体的には、IDT電極3における接続電極ピッチと、各反射器における接続電極ピッチとが互いに異なる。より具体的には、IDT電極3における接続電極ピッチは、各反射器における接続電極ピッチよりも狭い。そして、IDT電極3の各接続電極の幅と、各反射器の各接続電極の幅とは同じである。よって、Mb>Mdである。なお、IDT電極3における接続電極ピッチは、各反射器における接続電極ピッチよりも広くてもよい。
【0045】
ここで、IDT電極3の電極指ピッチとは、隣り合う第1の電極指6及び第2の電極指7の第2の方向xにおける中心間距離である。これと同様に、各反射器において、隣り合う反射器電極指16同士の第2の方向xにおける中心間距離を、反射器電極指ピッチとする。IDT電極3の電極指ピッチと、各反射器の反射器電極指ピッチは同じである。そして、IDT電極3の各電極指の幅と、各反射器電極指16の幅とは同じである。よって、Ma=Mcである。なお、電極指の幅は、電極指の第2の方向xに沿う寸法である。反射器電極指16の幅は、反射器電極指16の第2の方向xに沿う寸法である。
【0046】
本実施形態では、IDT電極3が設けられている部分と、各反射器が設けられている部分との間において、(Mb/Ma)>(Md/Mc)である。もっとも、(Mb/Ma)<(Md/Mc)であってもよい。弾性波装置1においては、(Mb/Ma)≠(Md/Mc)が成立する構成とされていることにより、(Vb/Va)≠(Vd/Vc)とされている。なお、IDT電極3が設けられている部分と、少なくとも一方の反射器が設けられている部分との間において、(Mb/Ma)≠(Md/Mc)であればよく、(Vb/Va)≠(Vd/Vc)であればよい。
【0047】
上記のように、第1の実施形態では、リターンロスを小さくすることができる。なお、IDT電極3における接続電極ピッチが、各反射器における接続電極ピッチよりも広い場合においても同様である。この点のみにおいて第1の実施形態と異なる例を、第1の実施形態の変形例とする。上記の効果を、第1の実施形態、変形例及び比較例を比較することにより、以下において示す。
【0048】
比較例は、
図3に示すように、IDT電極3が設けられている部分と、反射器43A及び反射器43Bが設けられている部分とにおいて、(Mb/Ma)=(Md/Mc)である点で、第1の実施形態と異なる。言い換えれば、比較例では、IDT電極3が設けられている部分と、各反射器が設けられている部分のそれぞれとにおいて、(Vb/Va)=(Vd/Vc)である点で、第1の実施形態と異なる。
【0049】
第1の実施形態の弾性波装置1としては、各反射器における接続電極ピッチが、IDT電極3における接続電極ピッチの103%である弾性波装置を用意した。第1の実施形態の変形例の弾性波装置としては、各反射器における接続電極ピッチが、IDT電極3における接続電極ピッチの97%である弾性波装置を用意した。他方、比較例においては、各反射器における接続電極ピッチは、IDT電極3における接続電極ピッチの100%である。これらの第1の実施形態の弾性波装置1、及び比較例の弾性波装置において、リターンロスを比較した。この結果を、以下において示す。なお、第1の実施形態の弾性波装置1のインピーダンス周波数特性も併せて示す。
【0050】
図4は、第1の実施形態に係る弾性波装置のインピーダンス周波数特性を示す図である。
図5は、第1の実施形態、第1の実施形態の変形例及び比較例の弾性波装置の、共振周波数付近におけるリターンロスを示す図である。
図6は、第1の実施形態、第1の実施形態の変形例及び比較例の弾性波装置の、反共振周波数付近におけるリターンロスを示す図である。
図7は、第1の実施形態、第1の実施形態の変形例及び比較例の弾性波装置の、ストップバンドの上端付近におけるリターンロスを示す図である。
図5~
図7では、接続電極ピッチを、単にピッチと記載している。なお、ストップバンドとは、弾性波が周期構造の金属グレーティングに閉じ込められることにより、弾性波の波長が一定となる領域である。ストップバンドの上端とは、ストップバンドの高域側の端部である。
【0051】
図4に示すように、第1の実施形態の弾性波装置1の共振周波数は、約1990MHz付近である。弾性波装置1の反共振周波数は、約2060MHz付近である。弾性波装置1のストップバンドの上端の周波数は、約2190MHz付近である。第1の実施形態の変形例及び比較例における共振周波数、反共振周波数及びストップバンドの上端の周波数は、第1の実施形態とほぼ同じである。なお、
図5においては、矢印F1により共振周波数を示す。
図6においては、矢印F2により反共振周波数を示す。
図7においては、矢印F3によりストップバンドの上端の周波数を示す。
【0052】
図5~
図7に示すように、共振周波数付近、反共振周波数よりも低域側、及びストップバンドの上端付近において、第1の実施形態及び変形例のリターンロスの絶対値は、比較例のリターンロスの絶対値よりも小さい。従って、第1の実施形態の弾性波装置1をフィルタ装置に用いた場合、及び変形例の弾性波装置をフィルタ装置に用いた場合において、挿入損失を小さくすることができる。
【0053】
第1の実施形態においては、IDT電極3が設けられている部分と、各反射器が設けられている部分とにおいて、(Vb/Va)≠(Vd/Vc)である。これにより、IDT電極3においての開口部形成領域におけるモードと、該開口部形成領域と隣接する、各反射器においての開口部形成領域におけるモードとが結合し難い。具体的には、例えば、
図1に示すIDT電極3においての開口部形成領域Oaにおけるモードと、反射器13Aにおいての開口部形成領域Ocにおけるモードとが結合し難い。それによって、弾性波のエネルギーを、中央領域Cに効果的に閉じ込めることができる。従って、リターンロスの絶対値を小さくすることができる。
【0054】
以下において、第1の実施形態のさらなる詳細を説明する。
【0055】
図2に示すように、交叉領域Aと、IDT電極3の1対のバスバーとの間に、1対のギャップ領域が配置されている。1対のギャップ領域は、具体的には第1のギャップ領域Ga及び第2のギャップ領域Gbである。第1のギャップ領域Gaは第1のバスバー4側に位置している。第2のギャップ領域Gbは第2のバスバー5側に位置している。
【0056】
第1のエッジ領域Ea及び第2のエッジ領域Ebにおいて、各電極指は幅広部を有する。幅広部における電極指の幅は、中央領域Cにおける該電極指の幅よりも広い。より具体的には、第1の電極指6は、第1のエッジ領域Eaにおいて幅広部6aを有する。第1の電極指6は、第2のエッジ領域Ebにおいて幅広部6bを有する。同様に、第2の電極指7は、第1のエッジ領域Eaにおいて幅広部7aを有する。第2の電極指7は、第2のエッジ領域Ebにおいて幅広部7bを有する。これにより、第1のエッジ領域Ea及び第2のエッジ領域Ebにおける音速は、中央領域Cにおける音速よりも低い。
【0057】
そして、第1のエッジ領域Eaにおいて、複数の電極指がそれぞれ幅広部を有することにより、第1のエッジ領域Eaから第1のバスバー4の内側バスバー部4aにかけての平均の音速が低くなっている。これにより、第1のエッジ領域Eaから第1のバスバー4の内側バスバー部4aを含む領域において、低音速領域が構成されている。同様に、第2のエッジ領域Ebから第2のバスバー5の内側バスバー部5aを含む領域において、低音速領域が構成されている。なお、低音速領域とは、音速、あるいは平均の音速が、中央領域Cにおける音速Vaよりも低い領域である。
【0058】
さらに、開口部形成領域Oa及び開口部形成領域Obのそれぞれにおけるメタライゼーション比Mcは、中央領域Cにおけるメタライゼーション比Maよりも小さい。これにより、開口部形成領域Oa及び開口部形成領域Obのそれぞれにおいて、高音速領域が構成されている。なお、高音速領域とは、音速、あるいは平均の音速が、中央領域Cにおける音速Vaよりも高い領域である。
【0059】
第1の方向yにおいて内側から外側に、中央領域C、1対の低音速領域及び1対の高音速領域がこの順序で配置されている。それによって、ピストンモードが成立し、横モードを抑制することができる。
【0060】
なお、第1のエッジ領域Ea及び第2のエッジ領域Ebにおいて、少なくとも1本の電極指が幅広部を有していればよい。もっとも、第1のエッジ領域Ea及び第2のエッジ領域Ebにおいて、複数の電極指が幅広部を有していることが好ましい。全ての電極指が幅広部を有していることがさらに好ましい。それによって、ピストンモードがより確実に成立し、横モードをより確実に抑制することができる。
【0061】
本発明においては、各電極指は必ずしも幅広部を有していなくともよい。もっとも、弾性波装置において、ピストンモードを成立させることができる構成とすることが好ましい。第1の実施形態とは別の、ピストンモードを成立させることができる構成の例を、第2の実施形態により示す。
【0062】
図8は、第2の実施形態のIDT電極における、第1のバスバー付近及び第2のバスバー付近の一部を拡大して示す模式的平面図である。
【0063】
本実施形態は、IDT電極23の各電極指が幅広部を有しない点、及びIDT電極23の1対のエッジ領域に1対の質量付加膜29が設けられている点において、第1の実施形態と異なる。上記の点以外においては、本実施形態の弾性波装置は第1の実施形態の弾性波装置1と同様の構成を有する。
【0064】
1対の質量付加膜29のうち一方の質量付加膜29が、第1のエッジ領域Eaに設けられている。他方の質量付加膜29が、第2のエッジ領域Ebに設けられている。各質量付加膜29は帯状の形状を有する。より具体的には、各質量付加膜29は、平面視において、複数の電極指及び電極指間の領域と重なるように連続的に設けられている。本明細書において平面視とは、第1の方向y及び第2の方向xと垂直な方向における上方から、弾性波装置を見ることをいう。より詳細には、例えば、圧電性基板2の第1の主面2a側及び第2の主面2b側のうち第1の主面2a側が、第1の方向y及び第2の方向xと垂直な方向における上方である。
【0065】
図8に示すように、各エッジ領域に質量付加膜29が設けられていることによって、各エッジ領域の音速が中央領域Cの音速Vaよりも低くなっている。これにより、第1の実施形態と同様に、低音速領域が構成されている。それによって、ピストンモードが成立し、横モードを抑制することができる。質量付加膜29の材料としては、例えば、酸化タンタルなどの誘電体を用いることができる。
【0066】
本実施形態においては、質量付加膜29は、複数の電極指を覆うように、圧電性基板2上に設けられている。よって、平面視したときに、質量付加膜29及び電極指が重なっている部分においては、圧電性基板2、電極指及び質量付加膜29の順序で積層されている。もっとも、例えば、圧電性基板2、質量付加膜29及び電極指の順序において積層されていてもよい。すなわち、圧電性基板2及び電極指の間に、質量付加膜29が設けられていてもよい。
【0067】
なお、各エッジ領域に、複数の質量付加膜29が設けられていてもよい。この場合、例えば、各質量付加膜29が、平面視において1本の電極指と重なるように設けられていればよい。質量付加膜29は、第1の電極指26上及び第2の電極指27上に、接触して設けられてもよく、誘電体膜などを介して設けられていてもよい。1つの質量付加膜29が、第1の電極指26及び第2の電極指27の双方に接触していない場合には、質量付加膜29の材料として、金属が用いられていてもよい。
【0068】
質量付加膜29は、第1のエッジ領域Ea及び第2のエッジ領域Ebにおいて、平面視したときに、少なくとも1本の電極指と重なるように設けられている。もっとも、平面視したときに、第1のエッジ領域Ea及び第2のエッジ領域Ebにおいて、複数の電極指と重なるように質量付加膜29が設けられていることが好ましく、全ての電極指と重なるように質量付加膜29が設けられていることがより好ましい。それによって、ピストンモードがより確実に成立し、横モードをより確実に抑制することができる。
【0069】
なお、例えば、第1の実施形態と同様に、各電極指が幅広部を有していてもよい。この場合において、質量付加膜29が設けられていることによって、低音速領域が構成されていてもよい。
【0070】
本実施形態においても、IDT電極23の各エッジ領域以外の領域におけるメタライゼーション比は、第1の実施形態と同様とされている。そして、各反射器は、第1の実施形態と同様に構成されている。そのため、IDT電極23が設けられている部分と、各反射器が設けられている部分とにおいて、(Mb/Ma)≠(Md/Mc)が成立している。これにより、(Vb/Va)≠(Vd/Vc)が成立している。従って、リターンロスを小さくすることができる。
【0071】
図9は、第3の実施形態に係る弾性波装置の模式的平面図である。
【0072】
本実施形態は、IDT電極3の各バスバーにおける各接続電極4cの幅と、反射器33Aの各反射器バスバーにおける各接続電極の幅とが互いに異なる点において、第1の実施形態と異なる。本実施形態は、IDT電極3の各バスバーにおける接続電極4cの幅と、反射器33Bの各反射器バスバーにおける各接続電極の幅とが互いに異なる点においても、第1の実施形態と異なる。さらに、本実施形態は、IDT電極3の接続電極ピッチと、各反射器の接続電極ピッチとが同じである点においても、第1の実施形態と異なる。上記の点以外においては、本実施形態の弾性波装置は第1の実施形態の弾性波装置1と同様の構成を有する。
【0073】
IDT電極3における各接続電極4cの幅は、反射器33Aの第1の反射器バスバー34Aにおける各接続電極34cの幅よりも狭い。IDT電極3における各接続電極5cの幅は、第2の反射器バスバー35Aにおける各接続電極35cの幅よりも狭い。そして、IDT電極3の接続電極ピッチと反射器33Aの接続電極ピッチとは同じである。よって、IDT電極3が設けられている部分においての、各開口部形成領域におけるメタライゼーション比Mbは、反射器33Aが設けられている部分においての、各開口部形成領域におけるメタライゼーション比Mdよりも小さい。すなわち、Mb<Mdである。なお、IDT電極3における各接続電極の幅は、反射器33Aにおける各接続電極の幅よりも広くてもよい。
【0074】
他方、IDT電極3が設けられている部分においての、中央領域Cにおけるメタライゼーション比Maは、反射器33Aが設けられている部分においての、延長中央領域Cxにおけるメタライゼーション比Mcと同じである。すなわち、Ma=Mcである。よって、IDT電極3が設けられている部分と、反射器33Aが設けられている部分とにおいて、(Mb/Ma)<(Md/Mc)である。IDT電極3が設けられている部分と、反射器33Bが設けられている部分とにおいても同様である。
【0075】
第3の実施形態では、IDT電極3が設けられている部分と、各反射器が設けられている部分とにおいて、(Mb/Ma)≠(Md/Mc)が成立している。これにより、(Vb/Va)≠(Vd/Vc)が成立している。従って、第1の実施形態と同様に、リターンロスを小さくすることができる。なお、IDT電極3における各接続電極の幅が、各反射器における各接続電極の幅よりも広い場合においても同様である。この点のみにおいて第3の実施形態と異なる例を、第3の実施形態の変形例とする。上記の効果を、第3の実施形態、第3の実施形態の変形例及び比較例を比較することにより、以下において示す。
【0076】
比較例は、
図3に示した比較例である。比較例では、IDT電極3が設けられている部分と、反射器43A及び反射器43Bが設けられている部分とにおいて、(Mb/Ma)=(Md/Mc)であり、(Vb/Va)=(Vd/Vc)である。
【0077】
本明細書においては、デューティ比を、IDT電極及び反射器が設けられている部分の、各開口部形成領域におけるパラメータとして扱う。デューティ比は、第2の方向xにおいて、接続電極により圧電性基板2が被覆されている部分の割合いである。ここで、接続電極ピッチをpとする。そして、開口部形成領域において、第2の方向xに延びており、寸法が2pである仮想線Bを定義する。仮想線Bの一例を、
図9中の開口部形成領域Ocにおいて示す。デューティ比は、具体的には、仮想線B上においての、接続電極により圧電性基板2が被覆された部分の割合いである。
【0078】
第3の実施形態の弾性波装置としては、各反射器の各開口部形成領域におけるデューティ比が0.55であり、IDT電極3の各開口部形成領域におけるデューティ比が0.5である弾性波装置を用意した。第3の実施形態の変形例の弾性波装置としては、各反射器の各開口部形成領域におけるデューティ比が0.45であり、IDT電極3の各開口部形成領域におけるデューティ比が0.5である弾性波装置を用意した。他方、比較例においては、各反射器の各開口部形成領域におけるデューティ比、及びIDT電極3の各開口部形成領域におけるデューティ比は0.5である。これらの第3の実施形態の弾性波装置、及び比較例の弾性波装置において、リターンロスを比較した。この結果を以下において示す。なお、第3の実施形態及び変形例の弾性波装置のインピーダンス周波数特性は、
図4に示した第1の実施形態におけるインピーダンス周波数特性とほぼ同じである。
【0079】
図10は、第3の実施形態、第3の実施形態の変形例及び比較例の弾性波装置の、共振周波数付近におけるリターンロスを示す図である。
図11は、第3の実施形態、第3の実施形態の変形例及び比較例の弾性波装置の、反共振周波数付近におけるリターンロスを示す図である。
図12は、第3の実施形態、第3の実施形態の変形例及び比較例の弾性波装置の、ストップバンドの上端付近におけるリターンロスを示す図である。
【0080】
図10~
図12に示すように、共振周波数付近、反共振周波数付近、及びストップバンドの上端付近において、第3の実施形態及び変形例のリターンロスの絶対値は、比較例のリターンロスの絶対値よりも小さい。従って、第3の実施形態の弾性波装置をフィルタ装置に用いた場合、及び変形例の弾性波装置をフィルタ装置に用いた場合において、挿入損失を小さくすることができる。
【0081】
図9に戻り、第3の実施形態では、IDT電極3及び各反射器において、接続電極ピッチは同じである。なお、IDT電極3及び反射器33Aにおいて、接続電極の幅及び接続電極ピッチの双方が互いに異なっていてもよい。IDT電極3及び反射器33Bにおいて、接続電極の幅及び接続電極ピッチの双方が互いに異なっていてもよい。
【0082】
第1~第3の実施形態においては、IDT電極の各開口部形成領域の全ての部分と、各反射器の各開口部形成領域の全ての部分とにおいて、(Mb/Ma)≠(Md/Mc)が成立している。もっとも、これに限定されるものではない。
【0083】
以下において、第4~第8の実施形態を示す。第4~第8の実施形態は、IDT電極の各バスバー及び各反射器の各反射器バスバーにおける接続電極ピッチ及びデューティ比が同じである点において、第1の実施形態と異なる。なお、本明細書では、デューティ比は、接続電極に関するパラメータであることを指摘しておく。第4~第8の実施形態は、後述する第1の電極パターン部及び第2の電極パターン部を有する点においても、第1の実施形態と異なる。上記の点以外においては、第4~第8の実施形態の弾性波装置は第1の実施形態の弾性波装置1と同様に構成されている。
【0084】
第4~第8の実施形態においては、(Vb/Va)≠(Vd/Vc)が成立している。これにより、第1の実施形態と同様に、リターンロスを小さくすることができる。よって、各実施形態の弾性波装置がフィルタ装置に用いられた場合においても、挿入損失が大きくなることを抑制できる。
【0085】
図13は、第4の実施形態に係る弾性波装置の模式的平面図である。
【0086】
本実施形態においては、IDT電極3の第1のバスバー4が設けられている部分における開口部形成領域Oaに、複数の第1の電極パターン部46が設けられている。より具体的には、各第1の電極パターン部46は、第2の方向xに延びている。各第1の電極パターン部46は、第1のバスバー4における隣り合う接続電極4cの双方に接続されている。全ての第1の電極パターン部46のうち、一部の複数の第1の電極パターン部46は、第2の方向xから見たときに重なっている。該複数の第1の電極パターン部46を1列の第1の電極パターン部46としたときに、本実施形態では、2列の第1の電極パターン部46が設けられている。2列の第1の電極パターン部46は、第1の方向yに沿って並んでいる。
【0087】
上述したように、第1のバスバー4の開口部4dは、内側バスバー部4a、2本の接続電極4c及び外側バスバー部4bにより囲まれた開口部である。本実施形態においては、各開口部4d内には、2本の第1の電極パターン部46が設けられている。具体的には、各開口部4d内において、2本の第1の電極パターン部46が、第1の方向yに沿って並んでいる。これにより、各開口部4dが、第1の方向yにおいて分割されている。
【0088】
同様に、第2のバスバー5が設けられている部分における開口部形成領域Obにおいても、複数の第1の電極パターン部47が設けられている。具体的には、2列の第1の電極パターン部47が設けられている。
【0089】
反射器43Aの第1の反射器バスバー44Aが設けられている部分における開口部形成領域Ocには、複数の第2の電極パターン部48が設けられている。より具体的には、各第2の電極パターン部48は、第2の方向xに延びている。各第2の電極パターン部48は、第1の反射器バスバー44Aにおける隣り合う接続電極14cの双方に接続されている。全ての第2の電極パターン部48のうち、一部の複数の第2の電極パターン部48は、第2の方向xから見たときに重なっている。該複数の第2の電極パターン部48を1列の第2の電極パターン部48としたときに、本実施形態では、2列の第2の電極パターン部48が設けられている。2列の第2の電極パターン部48は、第1の方向yに沿って並んでいる。
【0090】
第1の反射器バスバー44Aの開口部14dは、内側バスバー部14a、2本の接続電極14c及び外側バスバー部14bにより囲まれた開口部である。本実施形態では、各開口部14d内には、2本の第2の電極パターン部48が設けられている。具体的には、各開口部14d内において、2本の第2の電極パターン部48が、第1の方向yに沿って並んでいる。これにより、各開口部14dが、第1の方向yにおいて分割されている。
【0091】
同様に、第2の反射器バスバー45Aが設けられている部分における開口部形成領域Odにおいても、複数の第2の電極パターン部49が設けられている。具体的には、2列の第2の電極パターン部49が設けられている。さらに、反射器43Bの各反射器バスバーが設けられている部分における各開口部形成領域においても同様に、複数の第2の電極パターン部が設けられている。
【0092】
IDT電極3や各反射器が設けられている領域における音速は、該領域において付加されている質量などに依存する。例えば、IDT電極3の第1のバスバー4が設けられている部分における開口部形成領域Oaにおいての音速Vbは、開口部形成領域Oaにおける、金属により圧電性基板2が被覆されている部分の面積占有率に依存する。よって、本実施形態では、音速Vbは、開口部形成領域Oaにおける、複数の第1の電極パターン部46の面積占有率に依存する。開口部形成領域Obにおいても同様である。
【0093】
反射器43Aの第1の反射器バスバー44Aが設けられている部分における開口部形成領域Ocにおいての音速Vdも、開口部形成領域Ocにおける、金属により圧電性基板2が被覆されている部分の面積占有率に依存する。よって、本実施形態では、音速Vdは、開口部形成領域Ocにおける、複数の第2の電極パターン部48の面積占有率に依存する。開口部形成領域Odにおいても同様である。さらに、反射器43Bの各反射器バスバーが設けられている部分における各開口部形成領域においても同様である。
【0094】
弾性波装置41では、第1の電極パターン部46の第1の方向yに沿う寸法と、第2の電極パターン部48の第1の方向yに沿う寸法とが互いに異なる。そのため、開口部形成領域Oaにおける、複数の第1の電極パターン部46の面積占有率と、開口部形成領域Ocにおける、複数の第2の電極パターン部48の面積占有率とが互いに異なる。そして、第1の電極パターン部47の第1の方向yに沿う寸法と、第2の電極パターン部49の第1の方向yに沿う寸法とが互いに異なる。そのため、開口部形成領域Obにおける、複数の第1の電極パターン部47の面積占有率と、開口部形成領域Odにおける、複数の第2の電極パターン部49の面積占有率とが互いに異なる。よって、Vb≠Vdである。
【0095】
一方で、IDT電極3が設けられている部分における中央領域C、及び各反射器が設けられている部分における延長中央領域Cxの構成は、第1の実施形態における構成と同様である。そのため、Ma=Mcであり、Va=Vcである。よって、本実施形態においては、Vb/Va≠Vd/Vcが成立している。
【0096】
本実施形態においては、第1の電極パターン部46の第1の方向yに沿う寸法は、第2の電極パターン部48の第1の方向yに沿う寸法よりも小さい。もっとも、第1の電極パターン部46の第1の方向yに沿う寸法は、第2の電極パターン部48の第1の方向yに沿う寸法よりも大きくてもよい。
【0097】
IDT電極3の第1のバスバー4及び複数の第1の電極パターン部46は、同じ金属により一体として構成されている。第2のバスバー5及び複数の第1の電極パターン部47は、同じ金属により一体として構成されている。もっとも、各バスバー及び各第1の電極パターン部は、互いに異なる金属により構成されていてもよい。
【0098】
同様に、各反射器の各反射器バスバー、及び複数の第2の電極パターン部は、同じ金属により一体として構成されている。もっとも、各反射器バスバー及び各第2の電極パターン部は、互いに異なる金属により構成されていてもよい。
【0099】
図13に示すように、各第1の電極パターン部46は、第1のバスバー4における隣り合う接続電極4cの双方に接続されている。隣り合う第1の電極パターン部46同士は、接続電極4cを介して接続されている。なお、第1の電極パターン部46は、隣り合う接続電極4cのうち少なくとも一方に接続されていればよい。第1の電極パターン部47も、第2のバスバー5における隣り合う接続電極5cのうち少なくとも一方に接続されていればよい。同様に、各第2の電極パターン部も、各反射器バスバーにおける隣り合う接続電極のうち少なくとも一方に接続されていればよい。
【0100】
本実施形態においては、IDT電極3及び各反射器において、接続電極ピッチは同じである。よって、第1の電極パターン部の第2の方向xに沿う寸法と、第2の電極パターン部の第2の方向xに沿う寸法は同じである。なお、第1の電極パターン部の第2の方向xに沿う寸法と、第2の電極パターン部の第2の方向xに沿う寸法とは互いに異なっていてもよい。
【0101】
第1の電極パターン部46、第1の電極パターン部47、第2の電極パターン部48及び第2の電極パターン部49の、第1の方向yにおける本数は2本に限定されない。IDT電極3の各バスバーにおける隣り合う接続電極の間にそれぞれ、1本の第1の電極パターン部、または第1の方向yに沿って並んでいる2本以上の第1の電極パターン部が設けられていればよい。各反射器の各反射器バスバーにおける隣り合う接続電極の間にそれぞれ、1本の第2の電極パターン部、または第1の方向yに沿って並んでいる2本以上の第2の電極パターン部が設けられていればよい。
【0102】
第5~第8の実施形態においても、開口部形成領域Oaに設けられた複数の第1の電極パターン部、及び開口部形成領域Obに設けられた複数の第1の電極パターン部は同様に構成されている。各反射器の各反射器バスバーが設けられている部分における各開口部形成領域に設けられた複数の第2の電極パターン部は同様に構成されている。よって、以下においては、第5~第8の実施形態における、開口部形成領域Oaに設けられた複数の第1の電極パターン部、及び開口部形成領域Ocに設けられた複数の第2の電極パターン部の構成を説明することとする。
【0103】
図14は、第5の実施形態に係る弾性波装置の模式的平面図である。
【0104】
本実施形態においては、開口部形成領域Oaに設けられた各第1の電極パターン部46Aは、第1のバスバー4における隣り合う接続電極4cのうち一方のみに接続されている。開口部形成領域Oaにおいては、1列の第1の電極パターン部46Aが設けられている。隣り合う第1の電極パターン部46A同士は、接続されていない。そして、第1のバスバー4の開口部4dは、第1の方向yにおいて分割されていない。
【0105】
開口部形成領域Ocに設けられた各第2の電極パターン部48Aは、第1の反射器バスバー44Aにおける隣り合う接続電極14cのうち一方のみに接続されている。開口部形成領域Ocにおいては、1列の第2の電極パターン部48Aが設けられている。
【0106】
弾性波装置41Aでは、第1の電極パターン部46Aの第1の方向yに沿う寸法と、第2の電極パターン部48Aの第1の方向yに沿う寸法とが互いに異なる。なお、第1の電極パターン部46Aの第2の方向xに沿う寸法と、第2の電極パターン部48Aの第2の方向xに沿う寸法とは同じである。そのため、開口部形成領域Oaにおいての、複数の第1の電極パターン部46Aの面積占有率と、開口部形成領域Ocにおいての、複数の第2の電極パターン部48Aの面積占有率とが互いに異なる。よって、Vb≠Vdである。
【0107】
一方で、IDT電極3が設けられている部分における中央領域C、及び反射器43Aが設けられている部分における延長中央領域Cxにおいては、Va=Vcである。従って、Vb/Va≠Vd/Vcが成立している。
【0108】
本実施形態においては、第1の電極パターン部46Aの第1の方向yに沿う寸法は、第2の電極パターン部48Aの第1の方向yに沿う寸法よりも小さい。もっとも、第1の電極パターン部46Aの第1の方向yに沿う寸法は、第2の電極パターン部48Aの第1の方向yに沿う寸法よりも大きくてもよい。
【0109】
図15は、第6の実施形態に係る弾性波装置の模式的平面図である。
【0110】
本実施形態では、開口部形成領域Oaにおいて、複数の第1の電極パターン部46Aは、第5の実施形態と同様に設けられている。具体的には、開口部形成領域Oaに設けられた各第1の電極パターン部46Aは、第1のバスバー4における隣り合う接続電極4cのうち一方のみに接続されている。開口部形成領域Oaにおいては、1列の第1の電極パターン部46Aが設けられている。
【0111】
開口部形成領域Ocに設けられた各第2の電極パターン部48Aは、第1の反射器バスバー44Aにおける隣り合う接続電極14cのうち一方のみに接続されている。開口部形成領域Ocにおいては、1列の第2の電極パターン部48Aが設けられている。
【0112】
弾性波装置41Bでは、第1の電極パターン部46Aの第2の方向xに沿う寸法と、第2の電極パターン部48Aの第2の方向xに沿う寸法とが互いに異なる。なお、第1の電極パターン部46Aの第1の方向yに沿う寸法と、第2の電極パターン部48Aの第1の方向yに沿う寸法とは同じである。そのため、開口部形成領域Oaにおいての、複数の第1の電極パターン部46Aの面積占有率と、開口部形成領域Ocにおいての、複数の第2の電極パターン部48Aの面積占有率とが互いに異なる。よって、Vb≠Vdである。
【0113】
一方で、IDT電極3が設けられている部分における中央領域C、及び反射器43Aが設けられている部分における延長中央領域Cxにおいては、Va=Vcである。従って、Vb/Va≠Vd/Vcが成立している。
【0114】
本実施形態においては、第1の電極パターン部46Aの第2の方向xに沿う寸法は、第2の電極パターン部48Aの第2の方向xに沿う寸法よりも大きい。もっとも、第1の電極パターン部46Aの第2の方向xに沿う寸法は、第2の電極パターン部48Aの第2の方向xに沿う寸法よりも小さくてもよい。
【0115】
図16は、第7の実施形態に係る弾性波装置の模式的平面図である。
【0116】
本実施形態では、開口部形成領域Oaにおいて、複数の第1の電極パターン部46は、
図13に示す第4の実施形態と同様に設けられている。具体的には、各第1の電極パターン部46は、第1のバスバー4における隣り合う接続電極4cの双方に接続されている。開口部形成領域Oaにおいては、2列の第1の電極パターン部46が設けられている。
【0117】
開口部形成領域Ocにおいては、各第2の電極パターン部48は、第1の反射器バスバー44Aにおける隣り合う接続電極14cの双方に接続されている。開口部形成領域Ocにおいては、3列の第2の電極パターン部48が設けられている。すなわち、各開口部14dにおいて、第1の方向yに沿って3本の第2の電極パターン部48が並んでいる。
【0118】
本実施形態においては、IDT電極3の第1のバスバー4における隣り合う接続電極4cの間に設けられている第1の電極パターン部46の本数は2本である。他方、反射器43Aの第1の反射器バスバー44Aにおける隣り合う接続電極14cの間に設けられている第2の電極パターン部48の本数は3本である。よって、第1の電極パターン部46が隣り合う接続電極4cの間に設けられている本数と、第2の電極パターン部48が隣り合う接続電極14cの間に設けられている本数とが互いに異なる。なお、第1の電極パターン部46の第1の方向yに沿う寸法と、第2の電極パターン部48の第1の方向yに沿う寸法とは同じである。そのため、開口部形成領域Oaにおいての、複数の第1の電極パターン部46の面積占有率と、開口部形成領域Ocにおいての、複数の第2の電極パターン部48の面積占有率とが互いに異なる。よって、Vb≠Vdである。
【0119】
一方で、IDT電極3が設けられている部分における中央領域C、及び反射器43Aが設けられている部分における延長中央領域Cxにおいては、Va=Vcである。従って、Vb/Va≠Vd/Vcが成立している。
【0120】
本実施形態では、第1の電極パターン部46が隣り合う接続電極4cの間に設けられている本数は、第2の電極パターン部48が隣り合う接続電極14cの間に設けられている本数よりも少ない。もっとも、第1の電極パターン部46が隣り合う接続電極4cの間に設けられている本数は、第2の電極パターン部48が隣り合う接続電極14cの間に設けられている本数よりも多くてもよい。
【0121】
図17は、第8の実施形態に係る弾性波装置の模式的平面図である。
【0122】
本実施形態では、開口部形成領域Oaにおいて、複数の第1の電極パターン部46Aは、
図14に示す第5の実施形態と同様に設けられている。具体的には、開口部形成領域Oaに設けられた各第1の電極パターン部46Aは、第1のバスバー4における隣り合う接続電極4cのうち一方のみに接続されている。開口部形成領域Oaにおいては、1列の第1の電極パターン部46Aが設けられている。
【0123】
開口部形成領域Ocにおいては、各第2の電極パターン部48Aは、第1の反射器バスバー44Aにおける隣り合う接続電極14cのうち一方のみに接続されている。開口部形成領域Ocにおいては、2列の第2の電極パターン部48Aが設けられている。
【0124】
本実施形態においては、IDT電極3の第1のバスバー4における隣り合う接続電極4cの間に設けられている第1の電極パターン部46Aの本数は1本である。他方、反射器43Aの第1の反射器バスバー44Aにおける隣り合う接続電極14cの間に設けられている第2の電極パターン部48Aの本数は2本である。よって、第1の電極パターン部46Aが隣り合う接続電極4cの間に設けられている本数と、第2の電極パターン部48Aが隣り合う接続電極14cの間に設けられている本数とが互いに異なる。なお、第1の電極パターン部46Aの第1の方向yに沿う寸法と、第2の電極パターン部48Aの第1の方向yに沿う寸法とは同じである。第1の電極パターン部46Aの第2の方向xに沿う寸法と、第2の電極パターン部48Aの第2の方向xに沿う寸法とは同じである。そのため、開口部形成領域Oaにおいての、複数の第1の電極パターン部46Aの面積占有率と、開口部形成領域Ocにおいての、複数の第2の電極パターン部48Aの面積占有率とが互いに異なる。よって、Vb≠Vdである。
【0125】
一方で、IDT電極3が設けられている部分における中央領域C、及び反射器43Aが設けられている部分における延長中央領域Cxにおいては、Va=Vcである。従って、Vb/Va≠Vd/Vcが成立している。
【0126】
第4~第8の実施形態においては、第1の電極パターン部及び第2の電極パターン部において、第1の方向yに沿う寸法、第2の方向xに沿う寸法、及び隣り合う接続電極の間に設けられた本数のうち、いずれか1つを異ならせた例を示した。もっとも、第1の電極パターン部及び第2の電極パターン部において、第1の方向yに沿う寸法、第2の方向xに沿う寸法、及び隣り合う接続電極の間に設けられた本数のうち、いずれか2つまたは全てを異ならせてもよい。それによって、Vb/Va≠Vd/Vcを成立させてもよい。
【0127】
なお、IDT電極3の開口部形成領域における、複数の第1の電極パターン部の面積占有率と、少なくとも一方の反射器の開口部形成領域における、複数の第2の電極パターン部の面積占有率とが互いに異なっていればよい。
【0128】
ところで、圧電性基板2上には、IDT電極3及び各反射器を覆うように、誘電体膜が設けられていてもよい。この例を、第9の実施形態により示す。
【0129】
図18は、第9の実施形態に係る弾性波装置の模式的平面図である。
図19は、
図18中のI-I線に沿う模式的断面図である。
【0130】
図18に示すように、本実施形態は、誘電体膜55が設けられている点において、第1の実施形態と異なる。具体的には、誘電体膜55は、圧電性基板2上に、IDT電極3、反射器13A及び反射器13Bを覆うように設けられいる。上記の点以外においては、本実施形態の弾性波装置は第1の実施形態の弾性波装置1と同様の構成を有する。
【0131】
誘電体膜55によって、IDT電極3、反射器13A及び反射器13Bが保護される。それによって、IDT電極3、反射器13A及び反射器13Bが破損し難い。誘電体膜55の材料としては、例えば、酸化ケイ素、窒化ケイ素または酸窒化ケイ素などを用いることができる。
【0132】
本実施形態においては、IDT電極3及び各反射器は、第1の実施形態と同様に構成されている。そのため、IDT電極3が設けられている部分と、各反射器が設けられている部分とにおいて、(Mb/Ma)≠(Md/Mc)が成立している。それによって、(Vb/Va)≠(Vd/Vc)が成立している。従って、リターンロスを小さくすることができる。
【0133】
図19に示すように、誘電体膜55の、反射器13Aを覆っている部分における、延長中央領域Cxと平面視において重なっている部分の厚みが、開口部形成領域Oc及び開口部形成領域Odと平面視において重なっている部分の厚みよりも厚い。なお、誘電体膜55の、反射器13Aを覆っている部分における、延長中央領域Cxと平面視において重なっている部分の厚みは、開口部形成領域Oc及び開口部形成領域Odと平面視において重なっている部分の厚みよりも薄くてもよい。
【0134】
図18に戻り、誘電体膜55の、反射器13Bを覆っている部分における、延長中央領域と平面視において重なっている部分の厚みは、各開口部形成領域と平面視において重なっている部分の厚みよりも厚くてもよく、薄くてもよい。あるいは、誘電体膜55の少なくとも一方の反射器を覆っている部分における、延長中央領域Cxと平面視において重なっている部分の厚みと、開口部形成領域と平面視において重なっている部分の厚みとが互いに異なっていればよい。
【0135】
誘電体膜55のIDT電極3を覆っている部分における、中央領域Cと平面視において重なっている部分の厚みが、開口部形成領域Oa及び開口部形成領域Obと平面視において重なっている部分の厚みよりも厚い。もっとも、誘電体膜55のIDT電極3を覆っている部分における、中央領域Cと平面視において重なっている部分の厚みは、開口部形成領域Oa及び開口部形成領域Obと平面視において重なっている部分の厚みよりも薄くてもよい。
【0136】
上述したように、IDT電極3や各反射器が設けられている領域における音速は、該領域において付加されている質量などに依存する。例えば、該領域における音速は、該領域と平面視において重なっている誘電体膜55の厚みに依存する。本実施形態では、反射器13Aが設けられている部分における、延長中央領域Cxと、開口部形成領域Oc及び開口部形成領域Odとにおいて、メタライゼーション比及び誘電体膜55の厚みが互いに異なることによって、音速Vcと音速Vdとが互いに異なる。反射器13Bが設けられている部分においても同様である。
【0137】
さらに、IDT電極3が設けられている部分における、中央領域Cと、開口部形成領域Oa及び開口部形成領域Obとにおいて、メタライゼーション比及び誘電体膜55の厚みが互いに異なることによって、音速Vaと音速Vbとが互いに異なる。
【0138】
本発明においては、反射器13Aが設けられている部分における、延長中央領域Cxと、開口部形成領域Oc及び開口部形成領域Odとにおいて、メタライゼーション比が同じであり、かつ誘電体膜55の厚みが互いに異なっていてもよい。この場合にも、Vc≠Vdとすることができる。反射器13Bが設けられている部分においても同様である。さらに、IDT電極3が設けられている部分における、中央領域Cと、開口部形成領域Oa及び開口部形成領域Obとにおいて、メタライゼーション比が同じであり、かつ誘電体膜55の厚みが互いに異なっていてもよい。この場合にも、Va≠Vbとすることができる。そして、(Vb/Va)≠(Vd/Vc)が成立していればよい。
【0139】
本実施形態における誘電体膜55が設けられている構成は、本実施形態以外の本発明の形態にも適用することができる。
【0140】
図20は、第10の実施形態に係る弾性波装置の模式的平面図である。
図21は、
図20中のI-I線に沿う模式的断面図である。
【0141】
図20に示すように、本実施形態は、圧電性基板2と、IDT電極3及び各反射器との間に、誘電体層65が設けられている点において、第1の実施形態と異なる。上記の点以外においては、本実施形態の弾性波装置は第1の実施形態の弾性波装置1と同様の構成を有する。
【0142】
誘電体層65の厚みを調整することによって、弾性波装置の比帯域を容易に調整することができる。具体的には、
図2を援用して示す交叉領域Aにおいて、誘電体層65の厚みを調整すればよい。誘電体層65の材料としては、例えば、酸化ケイ素または窒化ケイ素などを用いることができる。
【0143】
本実施形態においては、IDT電極3及び各反射器は、第1の実施形態と同様に構成されている。そのため、IDT電極3が設けられている部分と、各反射器が設けられている部分とにおいて、(Mb/Ma)≠(Md/Mc)が成立している。それによって、(Vb/Va)≠(Vd/Vc)が成立している。従って、リターンロスを小さくすることができる。
【0144】
図21に示すように、誘電体層65の、反射器13Aが設けられた部分における延長中央領域Cxに位置している部分の厚みが、開口部形成領域Oc及び開口部形成領域Odに位置している部分の厚みよりも厚い。なお、誘電体層65の、反射器13Aが設けられた部分における延長中央領域Cxに位置している部分の厚みは、開口部形成領域Oc及び開口部形成領域Odに位置している部分の厚みよりも薄くてもよい。
【0145】
図20に戻り、誘電体層65の、反射器13Bが設けられた部分における、延長中央領域Cxに位置している部分の厚みは、各開口部形成領域に位置している部分よりも厚くてもよく、薄くてもよい。あるいは、誘電体層65の、少なくとも一方の反射器が設けられた部分における延長中央領域Cxに位置している部分の厚みと、開口部形成領域に位置している部分の厚みとが互いに異なっていればよい。
【0146】
誘電体層65の、IDT電極3が設けられた部分における中央領域Cに位置している部分の厚みが、開口部形成領域Oa及び開口部形成領域Obに位置している部分の厚みよりも厚い。もっとも、誘電体層65の、IDT電極3が設けられた部分における中央領域Cに位置している部分の厚みは、開口部形成領域Oa及び開口部形成領域Obに位置している部分の厚みよりも薄くてもよい。
【0147】
本実施形態では、反射器13Aが設けられている部分における、延長中央領域Cxと、開口部形成領域Oc及び開口部形成領域Odとにおいて、メタライゼーション比及び誘電体層65の厚みが互いに異なることによって、音速Vcと音速Vdとが互いに異なる。反射器13Bが設けられている部分においても同様である。
【0148】
さらに、IDT電極3が設けられている部分における、中央領域Cと、開口部形成領域Oa及び開口部形成領域Obとにおいて、メタライゼーション比及び誘電体層65の厚みが互いに異なることによって、音速Vaと音速Vbとが互いに異なる。
【0149】
本発明においては、反射器13Aが設けられている部分における、延長中央領域Cxと、開口部形成領域Oc及び開口部形成領域Odとにおいて、メタライゼーション比が同じであり、かつ誘電体層65の厚みが互いに異なっていてもよい。この場合にも、Vc≠Vdとすることができる。反射器13Bが設けられている部分においても同様である。さらに、IDT電極3が設けられている部分における、中央領域Cと、開口部形成領域Oa及び開口部形成領域Obとにおいて、メタライゼーション比が同じであり、かつ誘電体層65の厚みが互いに異なっていてもよい。この場合にも、Va≠Vbとすることができる。そして、(Vb/Va)≠(Vd/Vc)が成立していればよい。
【0150】
本実施形態における誘電体層65が設けられている構成は、本実施形態以外の本発明の形態にも適用することができる。
【0151】
ところで、任意の領域に誘電体層65を設け、他の領域に誘電体層65を設けないことにより、領域間における誘電体層65の厚みを互いに異ならせてもよい。例えば、
図22に示す第10の実施形態の変形例においては、反射器13Aが設けられている部分における、開口部形成領域Oc及び開口部形成領域Odには、誘電体層65が設けられていない。すなわち、これらの領域においては、誘電体層65の厚みは0である。他方、延長中央領域Cxには誘電体層65が設けられている。よって、延長中央領域Cxにおいては、誘電体層65の厚みは0よりも厚い。これにより、延長中央領域Cxと、開口部形成領域Oc及び開口部形成領域Odとにおいて、誘電体層65の厚みが互いに異なる。図示しないが、他方の反射器が設けられている部分においても同様である。
【0152】
さらに、本変形例では、IDT電極が設けられている部分において、
図20を援用して示す開口部形成領域Oa及び開口部形成領域Obには、誘電体層65が設けられていない。他方、中央領域Cには、誘電体層65が設けられている。これにより、中央領域Cと、開口部形成領域Oa及び開口部形成領域Obとにおいて、誘電体層65の厚みが互いに異なる。本変形例においても、第10の実施形態と同様に、(Vb/Va)≠(Vd/Vc)が成立している。従って、リターンロスを小さくすることができる。
【0153】
第3~第10の実施形態では、IDT電極の各電極指が、第1の実施形態と同様に、幅広部を有する例を示した。もっとも、第3~第10の実施形態におけるIDT電極の構成として、第2の実施形態と同様の構成が採用されていてもよい。すなわち、IDT電極の各電極指は幅広部を有していなくともよい。この場合には、第2の実施形態と同様の質量付加膜が設けられていることが好ましい。あるいは、第2の実施形態の説明において例として挙げた質量付加膜が設けられていることが好ましい。IDT電極の各電極指が幅広部を有し、かつ質量付加膜が設けられていてもよい。それによって、横モードを抑制することができる。
【0154】
以下において、本発明に係る弾性波装置の形態の例をまとめて記載する。
【0155】
<1>圧電性基板と、前記圧電性基板上に設けられており、互いに対向している1対のバスバー、並びに互いに間挿し合っている複数の第1の電極指及び複数の第2の電極指を有するIDT電極と、前記複数の第1の電極指及び前記複数の第2の電極指が延びる方向を第1の方向、前記第1の方向と直交する方向を第2の方向としたときに、前記第2の方向において、前記IDT電極を挟み互いに対向するように前記圧電性基板上に設けられている、1対の反射器と、を備え、各前記反射器が、互いに対向している1対の反射器バスバーと、前記1対の反射器バスバーに電気的に接続されている複数の反射器電極指と、を有し、前記第2の方向から前記IDT電極を見たときに、隣り合う前記第1の電極指及び前記第2の電極指が重なり合っている領域が交叉領域であり、前記交叉領域が、中央領域と、前記第1の方向において前記中央領域を挟み互いに対向している1対のエッジ領域と、を有し、前記中央領域を前記第2の方向において延長した領域が延長中央領域であり、前記IDT電極の前記1対のバスバー、及び各前記反射器の前記1対の反射器バスバーにそれぞれ、前記第2の方向に沿って複数の開口部が設けられており、前記1対のバスバー、及び前記1対の反射器バスバーのそれぞれにおける、前記複数の開口部が設けられている領域が開口部形成領域であり、前記IDT電極が設けられている部分において、前記中央領域における音速をVa、前記開口部形成領域における音速をVbとしたときに、Va≠Vbであり、各前記反射器が設けられている部分において、前記延長中央領域における音速をVc、前記開口部形成領域における音速をVdとしたときに、Vc≠Vdであり、前記IDT電極が設けられている部分と、少なくとも一方の前記反射器が設けられている部分との間において、(Vb/Va)≠(Vd/Vc)である、弾性波装置。
【0156】
<2>圧電性基板と、前記圧電性基板上に設けられており、互いに対向している1対のバスバー、並びに互いに間挿し合っている複数の第1の電極指及び複数の第2の電極指を有するIDT電極と、前記複数の第1の電極指及び前記複数の第2の電極指が延びる方向を第1の方向、前記第1の方向と直交する方向を第2の方向としたときに、前記第2の方向において、前記IDT電極を挟み互いに対向するように前記圧電性基板上に設けられている、1対の反射器と、を備え、前記反射器が、互いに対向している1対の反射器バスバーと、前記1対の反射器バスバーに電気的に接続されている複数の反射器電極指と、を有し、前記第2の方向から前記IDT電極を見たときに、隣り合う前記第1の電極指及び前記第2の電極指が重なり合っている領域が交叉領域であり、前記交叉領域が、中央領域と、前記第1の方向において前記中央領域を挟み互いに対向している1対のエッジ領域と、を有し、前記中央領域を前記第2の方向において延長した領域が延長中央領域であり、前記IDT電極の前記1対のバスバー、及び前記反射器の前記1対の反射器バスバーにそれぞれ、前記第2の方向に沿って複数の開口部が設けられており、前記1対のバスバー、及び前記1対の反射器バスバーのそれぞれにおける、前記複数の開口部が設けられている領域が開口部形成領域であり、前記第2の方向において、金属により前記圧電性基板が被覆されている部分の割合いを、メタライゼーション比とし、前記IDT電極が設けられている部分において、前記中央領域における前記メタライゼーション比をMa、前記開口部形成領域における前記メタライゼーション比をMbとしたときに、Ma≠Mbであり、各前記反射器が設けられている部分において、前記延長中央領域における前記メタライゼーション比をMc、前記開口部形成領域における前記メタライゼーション比をMdとしたときに、Mc≠Mdであり、前記IDT電極が設けられている部分と、少なくとも一方の前記反射器が設けられている部分との間において、(Mb/Ma)≠(Md/Mc)である、弾性波装置。
【0157】
<3>前記IDT電極が設けられている部分と、双方の前記反射器が設けられている部分との間において、(Mb/Ma)≠(Md/Mc)である、<2>に記載の弾性波装置。
【0158】
<4>各前記反射器の前記1対の反射器バスバーがそれぞれ、前記第1の方向に沿って並んでいる内側バスバー部及び外側バスバー部と、前記内側バスバー部及び前記外側バスバー部を接続しており、前記第2の方向に沿って並んでいる複数の接続電極と、を有し、少なくとも一方の前記反射器において、隣り合う前記反射器電極指同士の中心間距離と、隣り合う前記接続電極同士の中心間距離とが互いに異なる、<1>~<3>のいずれか1つに記載の弾性波装置。
【0159】
<5>前記IDT電極の前記1対のバスバー及び各前記反射器の前記1対の反射器バスバーがそれぞれ、前記第1の方向に沿って並んでいる内側バスバー部及び外側バスバー部と、前記内側バスバー部及び前記外側バスバー部を接続しており、前記第2の方向に沿って並んでいる複数の接続電極と、を有し、前記IDT電極の前記1対のバスバー及び各前記反射器の前記1対の反射器バスバーのそれぞれにおいて、前記内側バスバー部及び前記外側バスバー部の間の領域が前記開口部形成領域であり、前記IDT電極の前記バスバーにおける隣り合う前記接続電極のうち少なくとも一方に接続されており、前記第2の方向に延びている複数の第1の電極パターン部と、各前記反射器の前記反射器バスバーにおける隣り合う前記接続電極のうち少なくとも一方に接続されており、前記第2の方向に延びている複数の第2の電極パターン部と、をさらに備え、前記IDT電極の前記開口部形成領域における、前記複数の第1の電極パターン部の面積占有率と、少なくとも一方の前記反射器の前記開口部形成領域における、前記複数の第2の電極パターン部の面積占有率とが互いに異なる、<1>~<4>のいずれか1つに記載の弾性波装置。
【0160】
<6>前記第1の電極パターン部の前記第1の方向に沿う寸法と、前記第2の電極パターン部の前記第1の方向に沿う寸法とが互いに異なる、<5>に記載の弾性波装置。
【0161】
<7>前記第1の電極パターン部の前記第2の方向に沿う寸法と、前記第2の電極パターン部の前記第2の方向に沿う寸法とが互いに異なる、<5>または<6>に記載の弾性波装置。
【0162】
<8>前記IDT電極の前記バスバーにおける隣り合う前記接続電極の間にそれぞれ、1本の前記第1の電極パターン部、または前記第1の方向に沿って並んでいる2本以上の前記第1の電極パターン部が設けられており、前記反射器の前記反射器バスバーにおける隣り合う前記接続電極の間にそれぞれ、1本の前記第2の電極パターン部、または前記第1の方向に沿って並んでいる2本以上の前記第2の電極パターン部が設けられており、前記IDT電極の前記バスバーにおける隣り合う前記接続電極の間に設けられている前記第1の電極パターン部の本数と、少なくとも一方の前記反射器の前記反射器バスバーにおける隣り合う前記接続電極の間に設けられている前記第2の電極パターン部の本数とが互いに異なる、<5>~<7>のいずれか1つに記載の弾性波装置。
【0163】
<9>前記圧電性基板上に、前記IDT電極及び各前記反射器を覆うように設けられている誘電体膜をさらに備え、前記誘電体膜の、少なくとも一方の前記反射器を覆っている部分における、前記延長中央領域と平面視において重なっている部分の厚みと、前記開口部形成領域と平面視において重なっている部分の厚みとが互いに異なる、<1>~<8>のいずれか1つに記載の弾性波装置。
【0164】
<10>前記圧電性基板と、前記IDT電極及び各前記反射器との間に設けられている誘電体層をさらに備え、前記誘電体層の、少なくとも一方の前記反射器が設けられている部分における前記延長中央領域に位置している部分の厚みと、前記開口部形成領域に位置している部分の厚みとが互いに異なる、<1>~<9>のいずれか1つに記載の弾性波装置。
【0165】
<11>前記IDT電極が設けられている部分において、前記中央領域における音速をVa、前記開口部形成領域における音速をVbとしたときに、Va≠Vbであり、各前記反射器が設けられている部分において、前記延長中央領域における音速をVc、前記開口部形成領域における音速をVdとしたときに、Vc≠Vdであり、前記IDT電極が設けられている部分と、双方の前記反射器が設けられている部分との間において、(Vb/Va)≠(Vd/Vc)である、<1>~<10>のいずれか1つに記載の弾性波装置。
【0166】
<12>前記1対のエッジ領域において、音速が前記中央領域における音速よりも低い、低音速領域が構成されている、<1>~<11>のいずれか1つに記載の弾性波装置。
【0167】
<13>前記1対のエッジ領域において、前記複数の第1の電極指及び前記複数の第2の電極指のうち少なくとも1本の電極指が、前記中央領域における幅よりも幅が広い幅広部を有することにより、前記低音速領域が構成されている、<12>に記載の弾性波装置。
【0168】
<14>前記1対のエッジ領域において、平面視したときに、前記複数の第1の電極指及び前記複数の第2の電極指のうち少なくとも1本の電極指と重なるように質量付加膜が設けられていることにより、前記低音速領域が構成されている、<12>または<13>に記載の弾性波装置。
【符号の説明】
【0169】
1…弾性波装置
2…圧電性基板
2a,2b…第1,第2の主面
3…IDT電極
4,5…第1,第2のバスバー
4a,5a…内側バスバー部
4b,5b…外側バスバー部
4c,5c…接続電極
4d,5d…開口部
6,7…第1,第2の電極指
6a,6b,7a,7b…幅広部
13A,13B…反射器
14A,15A…第1,第2の反射器バスバー
14B,15B…第1,第2の反射器バスバー
14a,15a…内側バスバー部
14b,15b…外側バスバー部
14c,15c…接続電極
14d,15d…開口部
16…反射器電極指
23…IDT電極
26,27…第1,第2の電極指
29…質量付加膜
33A,33B…反射器
34A,35A…第1,第2の反射器バスバー
34c,35c…接続電極
41,41A,41B…弾性波装置
43A,43B…反射器
44A,45A…第1,第2の反射器バスバー
46,46A,47…第1の電極パターン部
48,48A,49…第2の電極パターン部
55…誘電体膜
65…誘電体層
A…交叉領域
C…中央領域
Cx…延長中央領域
Ea,Eb…第1,第2のエッジ領域
Ga,Gb…第1,第2のギャップ領域
Oa~Od…開口部形成領域