(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155399
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
H02J 3/38 20060101AFI20241024BHJP
H02J 13/00 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
H02J3/38 130
H02J13/00 301A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023070079
(22)【出願日】2023-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003687
【氏名又は名称】東京電力ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 将平
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 匡彦
(72)【発明者】
【氏名】井上 華那
【テーマコード(参考)】
5G064
5G066
【Fターム(参考)】
5G064AC09
5G064CB08
5G064DA01
5G066AE09
5G066HA13
5G066HB06
(57)【要約】
【課題】配電系統における太陽光発電装置の発電状態を容易に推定できるようにする。
【解決手段】情報処理装置2は、センサ5,11,12,91,92によって測定された配電系統の電圧および電流の測定値に基づいて前記配電系統の有効電力および無効電力を算出する。有効電力を第1軸とし、無効電力を第2軸とし、第1軸と第2軸が直交する直交座標系において、所定の時刻または時間帯の判定対象の配電系統10の有効電力および無効電力によって定まる点を基準点P0とし、判定対象の時刻または時間帯における判定対象の配電系統10の有効電力および無効電力によって定まる点を判定対象点Pxとした場合に、情報処理装置2は、基準点P0から判定対象点Pxを結ぶベクトルBxの向きに基づいて、判定対象の時刻または時間帯における判定対象の配電系統10に連系された太陽光発電装置61による発電の有無を判定する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサによって測定された配電系統の電圧および電流の測定値を取得する測定結果取得部と、
前記測定結果取得部によって取得した前記測定値に基づいて前記配電系統の有効電力および無効電力を算出する電力算出部と、
前記有効電力を第1軸とし、前記無効電力を第2軸とし、前記第1軸と前記第2軸が直交する直交座標系において、所定の時刻または時間帯における判定対象の前記配電系統の前記有効電力および前記無効電力によって定まる点を基準点とし、判定対象の時刻または時間帯における前記判定対象の前記配電系統の前記有効電力および前記無効電力によって定まる点を判定対象点とし、前記基準点から前記判定対象点を結ぶベクトルを算出するベクトル算出部と、
前記ベクトルの向きに基づいて、前記判定対象の時刻または時間帯において前記判定対象の前記配電系統に連系された太陽光発電装置による発電の有無を判定する発電判定部と、を有する
情報処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の情報処理装置において、
前記ベクトル算出部は、前記ベクトルの向きとして、前記第1軸および前記第2軸のうちのいずれか一方と前記ベクトルとのなす角を算出し、
前記発電判定部は、前記なす角の大きさに基づいて前記太陽光発電装置による発電の有無を判定する
情報処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の情報処理装置において、
電流が電圧に対して遅れるときの前記無効電力を正とした場合に、前記ベクトル算出部は、前記第1軸の正方向に対する前記ベクトルの角度を算出し、
前記発電判定部は、前記角度が0°から90°までの範囲にある場合に、前記判定対象の時刻または時間帯において前記判定対象の前記配電系統に連系された前記太陽光発電装置による発電がないと判定し、前記角度が90°から180°までの範囲にある場合に、前記判定対象の時刻または時間帯において前記判定対象の前記配電系統に連系された前記太陽光発電装置による発電があると判定する
情報処理装置。
【請求項4】
請求項1に記載の情報処理装置において、
前記基準点は、一日のうち、前記判定対象の前記配電系統の前記有効電力が最小となる時刻または時間帯における前記有効電力および前記無効電力によって定まる点である
情報処理装置。
【請求項5】
請求項1に記載の情報処理装置において、
前記基準点における皮相電力に対する前記判定対象点における皮相電力の変化量に基づいて、前記判定対象の前記配電系統に連系された前記太陽光発電装置の発電量を算出する発電量算出部を更に有する
情報処理装置。
【請求項6】
請求項5に記載の情報処理装置において、
前記発電量算出部は、前記ベクトルの大きさに基づいて前記皮相電力の変化量を算出する
情報処理装置。
【請求項7】
請求項6に記載の情報処理装置において、
前記発電量算出部は、更に、前記判定対象の前記配電系統に連系されている前記太陽光発電装置それぞれの最大発電量の合計値であるPV連系量に対する前記発電量の割合である発電率を算出する
情報処理装置。
【請求項8】
センサによって測定された配電系統の電圧および電流の測定値を取得する第1ステップと、
前記第1ステップにおいて取得した前記測定値に基づいて前記配電系統の有効電力および無効電力を算出する第2ステップと、
前記有効電力を第1軸とし、前記無効電力を第2軸とし、前記第1軸と前記第2軸が直交する直交座標系において、所定の時刻または時間帯における判定対象の前記配電系統の前記有効電力および前記無効電力によって定まる点を基準点とし、判定対象の時刻または時間帯における前記判定対象の前記配電系統の前記有効電力および前記無効電力によって定まる点を判定対象点とし、前記基準点から前記判定対象点を結ぶベクトルを算出する第3ステップと、
前記ベクトルの向きに基づいて、前記判定対象の時刻または時間帯における前記判定対象の前記配電系統に連系された太陽光発電装置による発電の有無を判定する第4ステップと、を含む
情報処理方法。
【請求項9】
センサによって測定された配電系統の電圧および電流の測定値を取得する第1ステップと、
前記第1ステップにおいて取得した前記測定値に基づいて前記配電系統の有効電力および無効電力を算出する第2ステップと、
前記有効電力を第1軸とし、前記無効電力を第2軸とし、前記第1軸と前記第2軸が直交する直交座標系において、所定の時刻または時間帯における判定対象の前記配電系統の前記有効電力および前記無効電力によって定まる点を基準点とし、判定対象の時刻または時間帯における前記判定対象の前記配電系統の前記有効電力および前記無効電力によって定まる点を判定対象点とし、前記基準点から前記判定対象点を結ぶベクトルを算出する第3ステップと、
前記ベクトルの向きに基づいて、前記判定対象の時刻または時間帯における前記判定対象の前記配電系統に連系された太陽光発電装置による発電の有無を判定する第4ステップと、をコンピュータに実行させる
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、情報処理方法、およびプログラムに関し、例えば、配電系統に連系された太陽光発電装置の発電状態を推定するための情報処理装置、情報処理方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般需要家等に設置される太陽光発電装置の普及により、天候や時間帯等によって配電系統の電圧の変動が複雑化している。従来、配電系統の電圧の調整は、変電所に設けられているLRT(Load Ratio Control Tansfomer)や配電線に設けられているSVR(Step Voltage Regulator)等の電圧制御機器に設定されているタップ切替制御等に係る整定値を、作業者が現場に赴いて変更すること(自端制御方式)によって行われていた。しかしながら、近年、天候や時間帯等による配電系統の電圧変動に対応するため、従来の自端制御方式に代わる電圧集中制御方式の導入が進みつつある。
【0003】
電圧集中制御方式は、配電系統に設けられた開閉器や電圧調整器等に内蔵されたセンサを用いて配電系統における電圧および電流等を測定し、それらの測定値に基づいて適切な整定値を算出し、通信ネットワークを介してLRTやSVR等の電圧制御機器を制御する方式である(特許文献1参照)。
【0004】
電圧集中制御方式によれば、配電系統においてセンサが設置されている箇所の電圧を適正な値に調整することが可能となる。一方、配電系統における高圧分岐線や低圧系統等のセンサが設置されていない箇所の電圧の測定値が得られないため、それらの箇所の電圧を適切に調整するためには工夫が必要となる。例えば、配電系統においてセンサが設置された箇所とセンサが設置されていない箇所との電圧差を考慮して、配電系統においてセンサが設置された箇所の電圧の測定値に基づいて、センサが設置されていない箇所の電圧が許容範囲に収まるように電圧調整器の整定値を決定する必要がある。
【0005】
しかしながら、配電系統においてセンサが設置された箇所とセンサが設置されていない箇所との電圧差は、配電系統に連系されている太陽光発電装置の発電状態に大きく依存する。そのため、電圧調整器の整定値を適切な値に設定するためには、太陽光発電装置の発電状態を考慮する必要がある。
【0006】
配電系統に連系されている太陽光発電装置の発電状態を把握する方法として、例えば、特許文献2に、気象データを用いて太陽光発電装置の発電量を算出する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2012-217248号公報
【特許文献2】特開2022-121028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献2のように気象データを用いて太陽光発電装置の発電状態を把握するためには、電圧集中制御方式による演算処理に気象データを定期的に同期させる必要があり、システムの複雑化を招く。
【0009】
そこで、本願発明者は、配電系統に設けられたセンサの測定値から太陽光発電装置の発電量を推定することを検討した。配電系統に設けられたセンサの測定値から単純に算出した電力には、負荷において消費される電力と太陽光発電装置による発電電力とが混在している。そのため、各センサの測定値から算出した電力から太陽光発電装置による発電電力を分離する必要がある。しかしながら、センサの測定値から算出した電力から太陽光発電装置による発電電力を分離することは容易ではない。
【0010】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、配電系統における太陽光発電装置の発電状態を容易に推定できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の代表的な実施の形態に係る情報処理装置は、センサによって測定された配電系統の電圧および電流の測定値を取得する測定結果取得部と、前記測定結果取得部によって取得した前記測定値に基づいて前記配電系統の有効電力および無効電力を算出する電力算出部と、前記有効電力を第1軸とし、前記無効電力を第2軸とし、前記第1軸と前記第2軸が直交する直交座標系において、所定の時刻または時間帯における判定対象の前記配電系統の前記有効電力および前記無効電力によって定まる点を基準点とし、判定対象の時刻または時間帯における前記判定対象の前記配電系統の前記有効電力および前記無効電力によって定まる点を判定対象点とし、前記基準点から前記判定対象点を結ぶベクトルを算出するベクトル算出部と、前記ベクトルの向きに基づいて、前記判定対象の時刻または時間帯において前記判定対象の前記配電系統に連系された太陽光発電装置による発電の有無を判定する発電判定部とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る情報処理装置によれば、配電系統における太陽光発電装置の発電状態を容易に推定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施の形態に係る情報処理装置を含む電力供給システムの構成を示す図である。
【
図2】配電系統における電圧の一例を示す図である。
【
図3】配電系統の立ち上がり点における有効電力および無効電力の実測値の散布図である。
【
図4】配電系統の立ち上がり点における有効電力および無効電力の実測値の散布図である。
【
図5】配電系統の立ち上がり点における有効電力および無効電力の実測値の散布図である。
【
図6】実施の形態に係る集中制御システムによる太陽光発電装置の発電状態の推定方法を説明するための図である。
【
図7】太陽光発電装置による発電量の推定方法を説明するための図である。
【
図8】実施の形態に係る集中制御システムの構成を示すブロック図である。
【
図9】実施の形態に係る集中制御システムにおける太陽光発電装置の発電状態を推定する処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図10A】一つの配電系統における発電率の時間的な変化を示す図である。
【
図10B】一つの配電系統における発電率の時間的な変化を示す図である。
【
図10C】一つの配電系統における発電率の時間的な変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
1.実施の形態の概要
先ず、本願において開示される発明の代表的な実施の形態について概要を説明する。なお、以下の説明では、一例として、発明の構成要素に対応する図面上の参照符号を、括弧を付して記載している。
【0015】
〔1〕本発明の代表的な実施の形態に係る情報処理装置(2)は、センサ(5,11,12,91_1~91_4,92,92_1~92_4)によって測定された配電系統の電圧および電流の測定値を取得する測定結果取得部(21)と、前記測定結果取得部によって取得した前記測定値に基づいて前記配電系統の有効電力および無効電力を算出する電力算出部(22)と、前記有効電力を第1軸とし、前記無効電力を第2軸とし、前記第1軸と前記第2軸が直交する直交座標系において、所定の時刻または時間帯の判定対象の前記配電系統の前記有効電力および前記無効電力によって定まる点を基準点(P0)とし、判定対象の時刻または時間帯における前記判定対象の前記配電系統の前記有効電力および前記無効電力によって定まる点を判定対象点(Px)とし、前記基準点から前記判定対象点を結ぶベクトルを算出するベクトル算出部(23)と、前記ベクトルの向きに基づいて、前記判定対象の時刻または時間帯における前記判定対象の前記配電系統に連系された太陽光発電装置による発電の有無を判定する発電判定部(27)と、を有することを特徴とする。
【0016】
〔2〕上記〔1〕に記載の情報処理装置(2)において、前記ベクトル算出部は、前記ベクトルの向きとして、前記第1軸および前記第2軸のうちのいずれか一方と前記ベクトルとのなす角を算出し、前記発電判定部は、前記なす角の大きさに基づいて前記太陽光発電装置による発電の有無を判定してもよい。
【0017】
〔3〕上記〔2〕に記載の情報処理装置において、電流が電圧に対して遅れるときの前記無効電力を正とした場合に、前記ベクトル算出部は、前記第1軸の正方向に対する前記ベクトルの角度(θ)を算出し、前記発電判定部は、前記角度が0°から90°までの範囲にある場合に、前記判定対象の時刻または時間帯において前記判定対象の前記配電系統に連系された前記太陽光発電装置による発電がないと判定し、前記角度が90°から180°までの範囲にある場合に、前記判定対象の時刻または時間帯において前記配電系統に連系された前記太陽光発電装置による発電があると判定してもよい。
【0018】
〔4〕上記〔1〕に記載の情報処理装置において、前記基準点は、一日のうち、前記判定対象の前記配電系統の前記有効電力が最小となる時刻または時間帯における前記有効電力および前記無効電力によって定まる点であってもよい。
【0019】
〔5〕上記〔1〕に記載の情報処理装置において、前記基準点における皮相電力に対する前記判定対象点における皮相電力の変化量に基づいて、前記判定対象の前記配電系統に連系された前記太陽光発電装置の発電量を算出する発電量算出部(28)を更に有していてもよい。
【0020】
〔6〕上記〔5〕に記載の情報処理装置において、前記発電量算出部は、前記ベクトルの大きさに基づいて前記皮相電力の変化量(ΔS)を算出してもよい。
【0021】
〔7〕上記〔6〕に記載の情報処理装置において、前記発電量算出部は、更に、前記判定対象の前記配電系統に連系されている前記太陽光発電装置それぞれの最大発電量の合計値であるPV連系量(Pa)に対する前記発電量の割合である発電率(R)を算出してもよい。
【0022】
〔8〕本発明の代表的な実施の形態に係る情報処理方法は、センサによって測定された配電系統の電圧および電流の測定値を取得する第1ステップ(S1)と、前記第1ステップにおいて取得した前記測定値に基づいて前記配電系統の有効電力および無効電力を算出する第2ステップ(S2)と、前記有効電力を第1軸とし、前記無効電力を第2軸とし、前記第1軸と前記第2軸が直交する直交座標系において、所定の時刻または時間帯における判定対象の前記配電系統の前記有効電力および前記無効電力によって定まる点を基準点とし、判定対象の時刻または時間帯における前記判定対象の前記配電系統の前記有効電力および前記無効電力によって定まる点を判定対象点とし、前記基準点から前記判定対象点を結ぶベクトルを算出する第3ステップ(S3)と、前記ベクトルの向きに基づいて、前記判定対象の時刻または時間帯における前記判定対象の前記配電系統に連系された太陽光発電装置による発電の有無を判定する第4ステップ(S4,S5,S6,S7)と、を含むことを特徴とする。
【0023】
〔9〕本発明の代表的な実施の形態に係るプログラムは、センサによって測定された配電系統の電圧および電流の測定値を取得する第1ステップ(S1)と、前記第1ステップにおいて取得した前記測定値に基づいて前記配電系統の有効電力および無効電力を算出する第2ステップ(S2)と、前記有効電力を第1軸とし、前記無効電力を第2軸とし、前記第1軸と前記第2軸が直交する直交座標系において、所定の時刻または時間帯における判定対象の前記配電系統の前記有効電力および前記無効電力によって定まる点を基準点とし、判定対象の時刻または時間帯における前記判定対象の前記配電系統の前記有効電力および前記無効電力によって定まる点を判定対象点とし、前記基準点から前記判定対象点を結ぶベクトルを算出する第3ステップ(S3)と、前記ベクトルの向きに基づいて、前記判定対象の時刻または時間帯における前記判定対象の前記配電系統に連系された太陽光発電装置による発電の有無を判定する第4ステップ(S4,S5,S6,S7)と、をコンピュータ(2)に実行させることを特徴とする。
【0024】
2.実施の形態の具体例
以下、本発明の実施の形態の具体例について図を参照して説明する。なお、以下の説明において、各実施の形態において共通する構成要素には同一の参照符号を付し、繰り返しの説明を省略する。
【0025】
≪実施の形態≫
図1は、実施の形態に係る情報処理装置を含む電力供給システム100の構成を示す図である。
【0026】
図1に示す電力供給システム100は、配電用変電所4を含む上位系統から配電用遮断器7_1~7_n(nは2以上の整数)を介して複数の電力供給経路10_1~10_n(nは2以上の整数)に電力を供給するシステムである。
【0027】
本実施の形態では、
図1に示すように、配電用遮断器7_1~7_n毎に、配電用遮断器7_1~7_nの二次側に形成される電力供給経路10_1~10_nを「配電系統10_1~10_n」とも称する。配電系統10_1~10_nは、例えば、
図1に示すように、開閉器等介して相互に接続され、上位系統から供給された電力を各需要家に供給する電力供給網を形成している。
【0028】
なお、本明細書では、配電用遮断器7_1~7_n等の構成要素について説明する際に、各構成要素を区別しない場合には、接尾辞を付さずに「配電用遮断器7」のように記載することがある。
【0029】
電力供給システム100は、例えば、電圧集中制御方式によって各配電系統10_1~10_nへの電力供給を安定させる。具体的には、制御所1に設置されているサーバ等の情報処理装置が、配電用変電所4および各配電系統10_1~10_nに設けられた各種センサによって測定された電圧および電流等の電力供給に関する物理量を通信ネットワークを介して受信し、受信した物理量の測定値に基づいて、配電用変電所4および各配電系統10_1~10_nに設けられた電圧調整器5,11,12および開閉器91,92等を制御する。
【0030】
図1に示すように、電力供給システム100は、例えば、配電用変電所4、二次側母線6、配電用遮断器7_1~7_n、配電系統10_1~10_n、および制御所1を含む。
【0031】
配電用変電所4は、火力発電所等の大規模発電所から一次側母線(不図示)に供給された電力を変圧して、二次側母線6(例えば、6kV母線)に出力する。二次側母線6には、複数の配電用遮断器7_1~7_nが接続されている。配電用遮断器7_1~7_nが閉状態となることにより、配電用遮断器7_1~7_nの一次側に接続された二次側母線6から配電用遮断器7_1~7_nの二次側に接続された配電系統10_1~10_nへ電力が供給され、配電用遮断器7_1~7_nが開状態となることにより、二次側母線6から配電系統10_1~10_nへの電力供給が停止する。各配電用遮断器7_1~7_nは、個別に制御可能にされている。配電用遮断器7_1~7_nは、例えば、配電用変電所4内に設置された情報処理装置(例えば、光中央装置等)によって開閉が制御される。
【0032】
配電用変電所4には、電圧調整器5が設けられている。電圧調整器5は、一次側母線(不図示)から二次側母線6に供給する電圧を制御する装置である。電圧調整器5は、例えば、負荷時タップ切替装置(LRT)である。電圧調整器5は、例えば、変圧器、タップ切替器、センサ、および通信装置等(不図示)を備えている。変圧器は、一次側母線(不図示)の電圧を変圧して二次側母線6に出力する。タップ切替器は、後述する通信装置によって受信したタップの切替情報(整定値)に応じて変圧器の巻線のタップを切り替えることにより、変圧器から出力される電圧を調整する。センサは、変圧器の一次側および二次側の電圧および電流等の物理量を測定する。通信装置は、インターネット回線や光通信等の公知の通信ネットワークを介して外部の情報処理装置等と通信を行う。例えば、通信装置は、センサによる測定結果を配電制御システム3に送信するとともに、配電制御システム3からタップの切替情報を受信しタップ切替器に与える。
【0033】
配電系統10_1~10_nは、例えば、複数の配電線が複数の開閉器を介して接続された公知の電力供給ネットワークである。
図1には、一例として、複数の配電線81が複数の開閉器91_1~91_4および電圧調整器11を介して接続された配電系統10_1と、複数の配電線81が複数の開閉器92_1~92_4および電圧調整器12を介して接続された配電系統10_2とが代表的に図示されている。
【0034】
なお、
図1には、配電系統10_1,10_2の構成要素として本願発明の説明に必要な構成要素のみを代表的に図示し、その他の構成要素については図示を省略している。また、各配電系統10_1~10_nに設けられている配電線81、開閉器91,92、および電圧調整器11,12の数は
図1に示す例に限定されない。また、本実施の形態では、配電系統10_3~10_nも配電系統10_1,10_2と同様の構成を有しているものとし、配電系統10_1,10_2について代表的に説明する。
【0035】
開閉器91,92は、隣り合う配電線81間に接続され、一方の配電線81と他方の配電線81との間の電気的な接続と遮断(開閉)を切り替える装置である。例えば、開閉器91,92は、自動開閉器である。
【0036】
開閉器91,92は、配電制御システム3による遠隔操作によって開閉が可能となっている。例えば、配電制御システム3と開閉器91,92とは上述した公知の通信ネットワークを介して互いに通信可能となっている。配電制御システム3が閉状態である開閉器91_1に対して“開”の指示を送信した場合、開閉器91_1は閉状態から開状態となる。また、開閉器91,92は、自身の一次側に接続されている配電線81への電力供給が停止したことを検出した場合に、“閉状態”から“開状態”になる。なお、開閉器91,92は、例えば、時限式事故捜査方式に基づく開閉機能を有していてもよい。
【0037】
各配電系統10_1~10_nに設けられている開閉器91,92のうち少なくとも一つは、例えば、センサが内蔵された開閉器(センサ付き開閉器)である。センサ付き開閉器は、従来の開閉器の機能に加えて、当該開閉器の一次側および二次側の少なくとも一方の電圧および電流等の電力供給に関する各種物理量をセンサによって測定し、外部の機器に送信する機能を有している。
【0038】
本実施の形態において、例えば、各配電系統10_1~10_nに設けられた複数の開閉器91,92のうち、少なくとも配電系統10の最上流(例えば、配電系統10の立ち上がり点)に設けられた開閉器91_1,92_1は、センサ付き開閉器である。
【0039】
開閉器91_1,92_2は、測定した配電系統10_1,10_2の電流および電圧の測定結果を公知のネットワークを介して配電制御システム3に送信する。
【0040】
電圧調整器11,12は、隣り合う配電線間に接続され、一方の配電線から他方の配電線に供給する電圧を制御する装置である。電圧調整器11,12は、例えば、自動電圧調整器(SVR)である。電圧調整器11,12は、例えば、電圧調整器5と同様に、変圧器、タップ切替器、センサ、および通信装置等(不図示)を備えている。変圧器は、一次側の配電線81の電圧を変圧して二次側の配電線81に出力する。タップ切替器は、後述する通信装置によって受信したタップの切替情報(整定値)に応じて変圧器の巻線のタップを切り替えることにより、変圧器から出力される電圧を調整する。センサは、変圧器の一次側および二次側の電圧および電流等の物理量を測定する。通信装置は、インターネット回線や光通信等の公知の通信ネットワークを介して外部の情報処理装置等と通信を行う。例えば、通信装置は、センサによる測定結果を配電制御システム3に送信するとともに、配電制御システム3からタップの切替情報を受信してタップ切替器に与える。
【0041】
各配電系統10_1~10_nには、電力の供給を受ける複数の需要家(需要家設備)が接続されている。需要家設備の少なくとも一部には、分散型電源装置が含まれている。
【0042】
分散型電源装置は、発電または蓄電した電力を出力する装置である。分散型電源装置は、配電系統10_1~10_nの何れか一つに連係されており、分散型電源装置が発電または蓄電した電力は、配電系統に供給可能となっている。
【0043】
分散型電源装置としては、太陽光発電装置(PV:photovoltaics)やディーゼル発電機(非常用DG)等の機械的エネルギーに基づいて電力を生成する非常用発電機等を例示することができる。本実施の形態では、
図1に示すように、分散型電源装置としての太陽光発電装置(PV)61が、各配電系統10_1_10_nに連系されているものとして説明する。
【0044】
制御所1は、電力供給システム100内の配電系統(上位系統および下位系統)を監視し、配電系統における電力の供給および停止を制御する各種装置が設置されている施設である。制御所1は、例えば、配電制御システム3と集中制御システム2を有する。
【0045】
配電制御システム3は、上述した配電用変電所4の電圧調整器5等と、各配電系統に設けられた後述する電圧調整器11,12、各種センサ、および開閉器等の機器との間でインターネット回線や光通信等の公知の通信ネットワークを介して相互に通信を行う。配電制御システム3は、電圧調整器5や各配電系統10_1~10_nの電圧調整器11,12および開閉器91,92による測定結果を通信ネットワークを介して受信する。また、配電制御システム3は集中制御システム2と互いにデータの送受信が可能となっている。
【0046】
集中制御システム2は、配電制御システム3を介して電圧調整器5や各配電系統の各種機器から受信した測定結果等を取得し、取得した測定結果等に基づいて演算処理を行うことにより、電圧調整器5,11,12の整定値や開閉器91,92を操作するための操作情報等の制御情報を算出し、配電制御システム3に与える。配電制御システム3は、集中制御システム2から与えれた制御情報を、通信ネットワークを介して電圧調整器5,11,12および開閉器91,92に送信することにより、電圧調整器5,11,12および開閉器91,92を制御する。例えば、配電制御システム3は、集中制御システム2から受信した操作情報に基づいて開閉器91,92の開閉を制御し、集中制御システム2から受信した整定値を電圧調整器5,11,12に設定する。
【0047】
配電制御システム3および集中制御システム2は、サーバ等のプログラム処理を行う情報処理装置によって実現されている。配電制御システム3と集中制御システム2は、例えば、夫々別の情報処理装置によって実現されている。なお、配電制御システム3は、一つの情報処理装置によって実現されていてもよいし、複数の情報処理装置によって実現されていてもよい。同様に、集中制御システム2は、一つの情報処理装置によって実現されていてもよいし、複数の情報処理装置によって実現されていてもよい。
【0048】
集中制御システム2は、電圧調整器5や各配電系統10_1~10_nに設けられた開閉器91,92、および電圧調整器11,12によって測定された測定結果に基づいて、電圧調整器5,11,12の整定値としてのタップ切替情報を生成し、配電制御システム3を介してタップ切替情報に基づいて電圧調整器5,11,12のタップを切り替えることにより、各配電系統10_1~10_nの電圧が許容範囲に収まるように制御する。
【0049】
図2は、配電系統における電圧の一例を示す図である。
【0050】
図2において、横軸は時間を表し、縦軸は電圧を表している。参照符号201は、配電系統におけるセンサ付き開閉器が設置された箇所において当該センサ付き開閉器によって測定された電圧(測定電圧)の時間的な変化を表している。参照符号202は、配電系統においてセンサ付き開閉器が設置された箇所より下流に接続されている需要家設備(末端需要家)における電圧の時間的な変化を表している。
【0051】
集中制御システム2は、配電制御システム3を介して電圧調整器5,11,12のタップを切り替えることにより、各配電系統10における電圧が所定の範囲、例えば、95Vから107Vの範囲に収まるように制御する。
【0052】
一般的に、配電系統における電圧は、変電所からの距離、太陽光発電装置等の分散型電源装置による発電の有無、および需要家における電力の使用状況等によって変化する。例えば、
図2の参照符号201,202から理解されるように、配電系統におけるセンサ付き開閉器が設置された箇所の電圧と、当該センサ付き開閉器が設置された箇所より下流に接続されている需要家設備(末端需要家)における電圧とは相違する。特に、需要家設備(末端需要家)に太陽光発電装置が含まれ、当該太陽光発電装置が発電している場合には当該太陽光発電装置から配電系統10に電力が供給されるため、
図2に示すように、末端需要家における電圧は、センサ付き開閉器が設置された箇所の電圧よりも大きくなる。このような場合でも、末端需要家における電圧が95Vから107Vの範囲に収まるようにする必要がある。
【0053】
しかしながら、上述したように、配電系統10において、電圧調整器11,12や開閉器91,92(センサ付き開閉器)等のセンサが設置されている箇所の電圧を測定することはできるが、配電系統10におけるセンサが設置されていない箇所の電圧を測定することはできない。
【0054】
そこで、集中制御システム2は、配電系統においてセンサが設置された箇所とセンサが設置されていない箇所との電圧差を考慮して、電圧の許容範囲を定める電圧下限値Vlthと電圧上限値Vuthを設定する。例えば、
図2に示すように、電圧下限値Vlthを95Vより高い値に設定し、電圧上限値Vuthを107Vの範囲より低い値に設定する。そして、集中制御システム2は、センサが設置された箇所の測定電圧が電圧下限値Vlthおよび電圧上限値Vuthによって定められる範囲に収まるように、電圧調整器5,11,12の整定値としてのタップ切替情報を算出する。これにより、センサが設置されていない箇所でも電圧が95Vから107Vの範囲に収まるように制御することが可能となる。
【0055】
一方、上述したように、配電系統におけるセンサが設置された箇所とセンサが設置されていない箇所との電圧差は、配電系統に連系されている太陽光発電装置の発電状態に大きく依存する。そのため、センサが設置されていない箇所の電圧が95Vから107Vの範囲に収まるようにするためには、配電系統10に連系されている太陽光発電装置の発電状態を考慮して、適切な電圧下限値Vlthと電圧上限値Vuthを設定する必要がある。
【0056】
そこで、実施の形態に係る集中制御システム2は、タップ切替情報、電圧下限値Vlth、および電圧上限値Vuth等の整定値を含む制御情報を生成し、当該制御情報に基づいて電圧調整器5,11,12を制御する機器制御機能に加えて、配電系統10に連系されている太陽光発電装置の発電状態を推定する発電推定機能を有している。発電推定機能には、太陽光発電装置の発電の有無を判定する機能と太陽光発電装置による発電量を推定する機能とが含まれる。
【0057】
先ず、発電推定機能のうち、太陽光発電装置の発電の有無を判定する機能について説明する。
【0058】
図3および
図4は、配電系統の立ち上がり点における有効電力および無効電力の実測値の散布図である。
【0059】
図3および
図4において、横軸(X軸)は有効電力〔kW〕を表し、縦軸(Y軸)は無効電力〔kvar〕を表している。また、以下の説明において、電流の位相が電圧の位相に対して遅れる場合の無効電力を正とする。すなわち、
図3および
図4において、Y軸の正方向を電流が電圧に対して位相が遅れる方向、Y軸の負方向を電流が電圧に対して位相が進む方向とする。
【0060】
図3には、太陽光発電装置が連系された配電系統の立ち上がり点において、2021年5月4日(天候:晴れ)に一時間毎に測定された有効電力および無効電力の測定値がプロットされている。参照符号301は、当日の午前における有効電力および無効電力の測定値の時間変化の方向を表し、参照符号302は、当日の午後における有効電力および無効電力の測定値の時間変化の方向を表している。
【0061】
図3から理解されるように、午前において、時間の経過とともに有効電力が減少し、遅れ無効電力が増加する傾向がある。これは、太陽光発電装置の発電の増加に伴い、配電系統への逆潮流の増加および遅れ無効電力の供給の増加が原因と考えられる。一方、午後において、時間の経過とともに、有効電力の増加および遅れ無効電力が減少する傾向がある。これは、太陽光発電装置の発電量の減少に伴い、配電系統への逆潮流の減少および遅れ無効電力の供給の減少が原因と考えられる。
【0062】
図4には、太陽光発電装置が連系された配電系統の立ち上がり点において、晴れの日(2021年5月4日)、曇りの日(2021年5月15日)、および雨の日(2021年5月27日)の夫々において、一時間毎に測定された有効電力および無効電力の測定値がプロットされている。参照符号301は、当日の午前における有効電力および無効電力の測定値の時間変化の方向を表し、参照符号302は、当日の午後における有効電力および無効電力の測定値の時間変化の方向を表している。
【0063】
図4において、丸で示されたプロットが晴れの日の有効電力および無効電力の測定値を表し、四角で示されたプロットが曇りの日の有効電力および無効電力の測定値を表し、ひし形で示されたプロットが雨の日の有効電力および無効電力の測定値を表している。
【0064】
図4から理解されるように、有効電力および無効電力の測定値がプロットされる範囲が天候によって異なる。すなわち、晴れの日、曇りの日、雨の日の順に有効電力および無効電力の測定値のデータ対がプロットされる範囲が狭くなる。これは、太陽光発電装置の発電量が晴れの日、曇りの日、雨の日の順で少なくなることが原因であると考えられる。
【0065】
図3および
図4から理解されるように、配電系統における有効電力および無効電力の測定値のプロットの軌跡および範囲から太陽光発電装置の発電状態を把握することが可能である。
【0066】
次に、配電系統における有効電力および無効電力の測定値のプロットに基づく太陽光発電装置の発電状態の推定方法について説明する。
【0067】
図5は、配電系統の立ち上がり点における有効電力および無効電力の実測値の散布図である。
【0068】
図5において、
図3および
図4と同様に、横軸(X軸)は有効電力〔kW〕を表し、縦軸(Y軸)は無効電力〔kvar〕を表している。
図5において、Y軸の正方向を電流が電圧に対して位相が遅れる方向、Y軸の負方向を電流が電圧に対して位相が進む方向としている。
【0069】
図5には、
図3とは異なる地点である、太陽光発電装置が連系された配電系統(PV連系量が3844kW)の立ち上がり点において、2021年5月4日(天候:晴れ)に一時間毎に測定された有効電力および無効電力の測定値がプロットされている。参照符号501は、測定当日の太陽光発電装置による発電があった時刻(昼間)における有効電力および無効電力の測定値が含まれる範囲を表し、参照符号502は、測定当日の太陽光発電装置による発電がなかった時刻(夜間)における有効電力および無効電力の測定値が含まれる範囲を表している。
【0070】
ここで、所定の時刻または時間帯における判定対象の配電系統の有効電力および無効電力によって定まる点を基準点とする。例えば、太陽光発電装置による発電が行われていない(行われていないとみなせる)時刻または時間帯における有効電力および無効電力の測定値によって定まる点を基準点とする。例えば、
図5に示すように、有効電力を第1軸(X軸)とし、無効電力を第2軸(Y軸)とし、第1軸と第2軸が直交する直交座標系において、一日のうち判定対象の配電系統10の有効電力がもっと小さい時刻(例えば、午前2時)における有効電力および無効電力によって定まる点を基準点P0とした場合を考える。
【0071】
この場合において、太陽光発電装置による発電があるときの有効電力および無効電力の測定値のプロットは、
図5に示すように、基準点P0から見て、右斜め上方向(X軸負方向およびY軸正方向)に向かって分布する。一方、太陽光発電装置による発電がない場合の有効電力および無効電力の測定値のプロットは、
図5に示すように、基準点P0からみて左斜め上方向(X軸正方向およびY軸正方向)に向かって分布する。
【0072】
そこで、実施の形態に係る集中制御システム2は、有効電力を第1軸(X軸)とし、無効電力を第2軸(Y軸)とした直交座標系において、判定対象の時刻または時間帯における判定対象の配電系統の有効電力および無効電力によって定まる点を判定対象点Pxとし、判定対象点Pxと基準点P0との位置関係に基づいて、判定対象の時刻または時間帯における判定対象の配電系統に連系された太陽光発電装置の発電状態を推定する。
【0073】
図6は、実施の形態に係る集中制御システム2による太陽光発電装置の発電状態の推定方法を説明するための図である。
【0074】
図6において、
図3等と同様に、横軸(X軸)は有効電力〔kW〕を表し、縦軸(Y軸)は無効電力〔kvar〕を表している。
図6において、Y軸の正方向を電流が電圧に対して位相が遅れる方向、Y軸の負方向を電流が電圧に対して位相が進む方向としている。
【0075】
集中制御システム2は、基準点P0からみた判定対象点Pxの方向に基づいて、判定対象点Pxの時刻または時間帯における配電系統10に連系された太陽光発電装置による発電の有無を判定する。
【0076】
例えば、集中制御システム2は、有効電力を第1軸(X軸)とし、無効電力を第2軸(Y軸)とした直交座標系において、基準点P0から判定対象点Pxを結ぶベクトルBxの向きを特定し、特定したベクトルBxの向きに基づいて、判定対象点Pxの時刻または時間帯における配電系統10に連系された太陽光発電装置による発電の有無を判定する。
【0077】
ここで、基準点P0は、所定の時刻または時間帯における有効電力および無効電力によって定まる点である。例えば、上述したように、基準点P0は、太陽光発電装置による発電が行われていない(行われていないとみなせる)時刻または時間帯における有効電力および無効電力の測定値によって定まる点である。好ましくは、基準点P0は、夜間(例えば、日の入り後から日の出前までの時間帯)における有効電力および無効電力の測定値によって定まる点である。より好ましくは、上述したように、基準点P0は、一日のうち判定対象の配電系統10の有効電力がもっと小さい時刻における有効電力および無効電力によって定まる点である。
【0078】
図6に示すように、基準点P0から判定対象点P1を結ぶベクトルB1の向きを判定する場合、集中制御システム2は、直交座標系の第1軸(X軸)および第2軸(Y軸)のうちのいずれか一方とベクトルB1とのなす角(角度θ)を算出する。また、例えば、基準点P0から判定対象点P2を結ぶベクトルB2の向きを判定する場合、集中制御システム2は、直交座標系の第1軸(X軸)および第2軸(Y軸)のうちのいずれか一方とベクトルB2とのなす角(角度)θを算出する。
【0079】
例えば、集中制御システム2は、ベクトルB1について、有効電力を表す第1軸(X軸)に対するベクトルB1の角度θ1を算出し、ベクトルB2について、有効電力を表す第1軸(X軸)に対するベクトルB2の角度θ2を算出する。
【0080】
集中制御システム2は、角度θの大きさに基づいて太陽光発電装置による発電の有無を判定する。具体的には、角度θが0°から180°までの範囲のうち0°から90°の範囲(0°≦θ<90°)にある場合には、集中制御システム2は、判定対象の配電系統に連系されている太陽光発電装置による発電がないと判定する。一方、角度θが0°から180°までの範囲のうち0°から90°の範囲(0°≦θ<90°)にない場合、すなわち角度θが90°から180°の範囲(90°<θ≦180°)にある場合には、集中制御システム2は、判定対象の配電系統に連系されている太陽光発電装置による発電があると判定する。
【0081】
例えば、ベクトルB1の角度θ1は0°から90°の範囲(0°≦θ<90°)にあるので、集中制御システム2は、ベクトルB1の判定対象点P1の時刻または時間帯において、判定対象の配電系統10に連系されている太陽光発電装置による発電がないと判定する。一方、ベクトルB2の角度θ2は90°から180°の範囲(90°≦θ≦180°)にあるので、集中制御システム2は、ベクトルB2の判定対象点P2の時刻または時間帯において、判定対象の配電系統10に連系されている太陽光発電装置による発電があると判定する。
【0082】
次に、発電推定機能のうち太陽光発電装置による発電量を推定する機能について説明する。
【0083】
図7は、太陽光発電装置による発電量の推定方法を説明するための図である。
【0084】
図7において、
図3等と同様に、横軸(X軸)は有効電力〔kW〕を表し、縦軸(Y軸)は無効電力〔kvar〕を表している。
図7において、Y軸の正方向を電流が電圧に対して位相が遅れる方向、Y軸の負方向を電流が電圧に対して位相が進む方向としている。
【0085】
集中制御システム2は、基準点P0における皮相電力に対する判定対象点Pxにおける皮相電力の変化量に基づいて太陽光発電装置による発電量を算出する。具体的には、集中制御システム2は、第1軸(X軸)および第2軸(Y軸)からなる直交座標系における基準点P0から判定対象点Pxを結ぶベクトルBxの大きさ、すなわち直交座標系における基準点P0から判定対象点Pxまでの移動距離ΔSに基づいて、基準点P0から判定対象点Pxまでの皮相電力の変化量を算出する。
【0086】
例えば、基準点P0の有効電力をx0,無効電力をy0とし、判定対象点Pxの有効電力をx1,無効電力をy1としたとき、基準点P0から判定対象点Pxまでの移動距離(ベクトルの大きさ)ΔSは、下記式(1)で表すことができる。
【0087】
【0088】
集中制御システム2は、上記式(1)に基づいて、基準点P0から判定対象点Pxまでの移動距離ΔSを算出し、判定対象点Pxの時刻または時間帯における太陽光発電装置による発電量とする。すなわち、集中制御システム2は、移動距離ΔSを、判定対象の配電系統10に連系されている全ての太陽光発電装置61の発電量の合計値の推定値とする。
【0089】
集中制御システム2は、更に、太陽光発電装置による発電量ΔSに基づいて、配電系統における発電率Rを算出する。具体的には、集中制御システム2は、配電系統10のPV連系量Paに対する発電量ΔSの割合を発電率Rとして算出する。
【0090】
ここで、PV連系量Paとは、判定対象の配電系統に連系されているそれぞれの太陽光発電装置61の最大発電量(最大定格出力)の合計値である。
【0091】
集中制御システム2は、例えば、下記式(2)に基づいて発電率Rを算出する。
【0092】
【0093】
次に、上述した機器制御機能および発電推定機能を実現するための集中制御システム2の具体的な構成について説明する。
【0094】
図8は、実施の形態に係る集中制御システム2の構成を示すブロック図である。
【0095】
図示はしないが、集中制御システム2としての情報処理装置は、例えば、サーバ等のプログラム処理装置を構成するハードウェア資源を有している。すなわち、情報処理装置は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、LANインターフェース(LAN_I/F)、外部インターフェースI/F、バス、および各種周辺回路を備えている。
【0096】
図8に示すように、集中制御システム2は、上述した機器制御機能および発電推定機能を実現するための機能ブロックとして、測定結果取得部21、電力算出部22、ベクトル算出部23、発電判定部27、発電量算出部28、制御部29、および記憶部30を有している。
【0097】
これらの機能ブロックは、上述した集中制御システム2としての情報処理装置が備えるハードウェア資源とソフトウェア資源とが協働することにより実現される。すなわち、測定結果取得部21、電力算出部22、ベクトル算出部23、発電判定部27、発電量算出部28、制御部29、および記憶部30は、CPUが、RAMやROM等のメモリに格納されたプログラムに従って各種演算を行うとともに、演算結果に基づいてLANインターフェースや各種周辺回路等を制御することよって実現される。
【0098】
記憶部30は、機器制御機能および発電推定機能に必要なパラメータや演算結果等の各種データを記憶するための機能部である。例えば、記憶部30には、後述する、測定結果31、電力情報32、ベクトル情報33、発電情報34、PV連系情報35、および制御情報36等が記憶される。
【0099】
測定結果取得部21は、上位系統から電力が供給される少なくとも一つの配電系統10に設けられたセンサによって測定された電圧および電流の測定値を取得する。具体的には、測定結果取得部21は、電圧調整器5,11,12、および開閉器91,92(センサ付き開閉器)によって測定された電圧および電流の測定値を配電制御システム3から受信し、測定結果31として記憶部30に記憶する。ここで、上記センサには、例えば、上述した電圧調整器5,11,12、および開閉器91,92が内蔵するセンサのみならず、配電系統10内に設けられたその他のセンサが含まれていてもよい。
【0100】
電力算出部22は、測定結果取得部21によって取得した測定値に基づいて、配電系統10の有効電力および無効電力を算出する。例えば、電力算出部22は、記憶部30に記憶されている測定結果31としての単位時間毎の電圧および電流の測定値と電圧および電流の位相差とに基づいて、公知の演算手法により、配電系統10_1~10_n毎に、単位時間毎の皮相電力、有効電力、および無効電力を算出し、電力情報32として記憶部30に記憶する。
【0101】
具体的には、電力算出部22は、各配電系統10_1~10_nの立ち上がり点に設置されたセンサによって測定された電圧および電流に基づいて、電力を算出する。例えば、配電系統10_2の電力を算出する場合、電力算出部22は、配電系統10_2の立ち上がり点の開閉器92_1によって測定された単位時間毎の電圧および電流の測定値に基づいて、単位時間毎の皮相電力、有効電力、および無効電力の測定値を算出し、配電系統10_2の電力情報32として記憶部30に記憶する。配電系統10の立ち上がり点の電圧および電流の測定値を用いることにより、配電系統10の立ち上がり点より下流における全体の電力を推定することが可能となる。
【0102】
なお、電力算出部22は、時間帯(例えば、1時間)毎に皮相電力、有効電力、および無効電力のそれぞれの平均値を算出し、電力情報32として記憶してもよい。
【0103】
ベクトル算出部23は、基準点P0から判定対象点Pxを結ぶベクトルBxを算出する。例えば、ベクトル算出部23は、ベクトル特定部24、角度算出部25、および移動距離算出部26を含む。
【0104】
ベクトル特定部24は、記憶部30に記憶されている電力情報32としての有効電力および無効電力に基づいて、有効電力を第1軸とし無効電力を第2軸とする直交座標系における判定対象点PxのベクトルBxを特定する。
【0105】
例えば、午前11時の配電系統10_2内の太陽光発電装置61による発電の有無を判定する場合を考える。この場合、先ず、ベクトル特定部24は、基準点P0を特定する。例えば、ベクトル特定部24は、配電系統10_2の電力情報32に含まれる時刻毎の有効電力および無効電力の測定値のうち有効電力が最も小さい時刻における有効電力および無効電力の測定値によって定まる直交座標系上の点を基準点P0とする。例えば、上述したように、午前2時における有効電力が最も小さかった場合、午前2時における有効電力および無効電力の測定点によって定まる直交座標系上の点を基準点P0とする。
【0106】
次に、ベクトル特定部24は、午前11時の有効電力および無効電力の測定値を電力情報32から読み出し、読み出した測定値によって定まる直交座標系上の点を判定対象点Pxとする。そして、ベクトル特定部24は、基準点P0から判定対象点Pxを結んだベクトルを判定対象点PxのベクトルBxとして特定する。
【0107】
角度算出部25は、ベクトル特定部24によって特定されたベクトルBxの向きとして、直交座標系の第1軸(X軸,有効電力)および第2軸(Y軸,無効電力)のうちのいずれか一方とベクトルBxとのなす角(角度θ)を算出する。例えば、角度算出部25は、第1軸(X軸,有効電力)の正方向とベクトルBxとのなす角である角度θを算出する(
図6参照)。
【0108】
移動距離算出部26は、基準点P0から判定対象点Pxまでの移動距離ΔS、すなわちベクトルBxの大きさを算出する。例えば、上述の例の場合、移動距離算出部26は、上記式(1)に基づいて移動距離ΔSを算出する。
【0109】
ベクトル特定部24、角度算出部25、および移動距離算出部26によって算出された基準点P0、判定対象点Px、角度θ、および移動距離ΔSは、配電系統10_1~10_n毎にベクトル情報33として記憶部30に記憶される。
【0110】
発電判定部27は、ベクトルBxの向きに基づいて、判定対象の時刻または時間帯における判定対象の配電系統10に連系された太陽光発電装置による発電の有無を判定する。例えば、上述の例の場合、発電判定部27は、先ず、記憶部30に記憶されているベクトル情報33から、判定対象点Pxとしての配電系統10_2の午前11時におけるベクトルBxの角度θを読み出す。発電判定部27は、読み出した角度θの大きさに基づいて配電系統10_2内の太陽光発電装置による発電の有無を判定する。
【0111】
具体的には、角度θが0°から90°までの範囲(0°≦θ<90°)にある場合に、午前11時において配電系統10_2に連系された太陽光発電装置による発電がないと判定し、角度θが90°から180°までの範囲(90°≦θ≦180°)にある場合に、午前11時において配電系統10_2に連系された太陽光発電装置による発電があると判定する。
【0112】
発電量算出部28は、基準点P0における皮相電力に対する判定対象点Pxにおける皮相電力の変化量に基づいて、判定対象の配電系統10内の太陽光発電装置の発電量を算出する。上述したように、ベクトルBxの大きさ、すなわち基準点P0から判定対象点Pxまでの移動距離ΔSは、基準点P0から判定対象点Pxまでの皮相電力の変化量を表している。そこで、、発電量算出部28は、移動距離ΔSを判定対象点Pxの時刻または時間帯における判定対象の配電系統10に連系された太陽光発電装置の発電量の推定値とする。上述の例の場合、発電量算出部28は、午前11時における配電系統10_2のベクトルBxに基づく移動距離ΔSを、午前11時における配電系統10_2に連系された太陽光発電装置による発電量ΔSとする。
【0113】
また、発電量算出部28は、発電率Rを算出する。例えば、上述の例の場合、発電量算出部28は、判定対象の配電系統10_2のPV連系量Paと、午前11時における配電系統10_2内の太陽光発電装置による発電量ΔSとを上記式(2)に代入することにより、発電率Rを算出する。
【0114】
ここで、配電系統10_1~10_n毎のPV連系量Paは、PV連系情報35として記憶部30に予め記憶されている。また、発電判定部27による判定結果と、発電量算出部28によって算出された発電量ΔSおよび発電率Rは、配電系統10毎に発電情報34として記憶部30に記憶される。
【0115】
制御部29は、電圧調整器5と、各配電系統10_1~10_nにおける電圧調整器11,12および開閉器91,92を制御する。例えば、制御部29は、上述した各配電系統10_1~10_nにおける太陽光発電装置による発電の有無の判定結果と、各配電系統10_1~10_nにおける太陽光発電装置による発電量または発電率と、に基づいて、電圧調整器5,11,および12のタップ切替情報を算出するとともに、電圧上限値Vuthおよび電圧下限値Vlthを算出する。
【0116】
また、制御部29は、各配電系統10_1~10_nにおける電力、電圧、および電流等を監視することにより、各配電系統10_1~10_nにおける開閉器91,92の操作情報を算出する。算出されたタップ切替情報や開閉器91,92の操作情報等は、制御情報36として記憶部30に記憶される。
【0117】
制御部29は、算出したタップ切替情報や開閉器91,92の操作情報等を、配電制御システム3を介して電圧調整器5,11,および12や開閉器91,92に送信することにより、電圧調整器5,11,および12と開閉器91,92を制御する。
【0118】
次に、集中制御システム2における太陽光発電装置の発電状態を推定する処理の流れについて説明する。
【0119】
図9は、集中制御システム2における太陽光発電装置の発電状態を推定する処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0120】
先ず、集中制御システム2において、測定結果取得部21が、配電制御システム3を介して、電圧調整器5、電圧調整器11,12、および開閉器91,92による電圧および電流等の測定値を取得し、測定結果31として記憶部30に記憶する(ステップS1)。
【0121】
次に、電力算出部22が、ステップS1で記憶部30に記憶された電圧および電流等の測定結果に基づいて、上述した手法により、各配電系統10_1~10_nにおける皮相電力、無効電力、および有効電力等の電力に関する物理量(測定値)を算出し、電力情報32として記憶部30に記憶する(ステップS2)。
【0122】
次に、ベクトル算出部23が、ステップS2で記憶部30に記憶された電力情報32に基づいて、有効電力を第1軸とし無効電力を第2軸とする直交座標系における、判定対象の時刻または時間帯における判定対象の配電系統10の有効電力および無効電力の測定値によって特定される判定対象点PxのベクトルBxを特定する(ステップS3)。具体的には、ベクトル特定部24が、上述した手法により、有効電力を第1軸とし無効電力を第2軸とする直交座標系において、基準点P0および判定対象点Pxを特定し、基準点P0から判定対象点Pxを結んだベクトルを判定対象点PxのベクトルBxとして特定する。
【0123】
次に、ベクトル算出部23が、判定対象点PxのベクトルBxの向きを特定する(ステップS4)。具体的には、角度算出部25が、上述した手法により、ベクトル特定部24によって特定されたベクトルBxの向きとして、直交座標系の第1軸(X軸,有効電力)とベクトルBxとのなす角(角度θ)を算出する。
【0124】
次に、発電判定部27が、ステップS5において算出した角度θが0°から90°の範囲(0°≦θ<90°)にあるか否かを判定する(ステップS5)。
【0125】
ステップS5において算出した角度θが、0°から180°までの範囲のうち0°から90°の範囲(0°≦θ<90°)にある場合には(ステップS5:YES)、発電判定部27が、判定対象点Pxの時刻または時間帯において、指定された配電系統10内の太陽光発電装置による発電がないと判定する(ステップS6)。その後、集中制御システム2は、一連の処理を終了する。
【0126】
一方、角度θが0°から180°までの範囲のうち0°から90°の範囲(0°≦θ<90°)にない場合、すなわち角度θが90°から180°の範囲(90°<θ≦180°)にある場合には(ステップS5:NO)、発電判定部27が、判定対象点Pxの時刻または時間帯において、指定された配電系統10内の太陽光発電装置による発電があると判定する(ステップS7)。
【0127】
次に、発電量算出部28が、ステップS7において太陽光発電装置による発電があると判定された配電系統10に連系された太陽光発電装置による発電量を算出する(ステップS8)。具体的には、発電量算出部28が、上述した手法により、ステップS3で特定した判定対象点PxのベクトルBxの大きさ、すなわち上記直交座標系上の基準点P0から判定対象点Pxまでの移動距離ΔSを算出し、判定対象の時刻または時間帯における判定対象の配電系統10に連系された太陽光発電装置による発電量ΔSとする。発電量ΔSは、発電情報34として記憶部30に記憶される。
【0128】
更に、発電量算出部28が、ステップS7において太陽光発電装置による発電があると判定された配電系統10に連系された太陽光発電装置による発電率Rを算出する(ステップS9)。具体的には、発電量算出部28が、上述した手法により、ステップS8で算出した発電量ΔSと記憶部30に記憶されているPV連系量Paとに基づいて、判定対象の時刻または時間帯における判定対象の配電系統10に連系された太陽光発電装置による発電率Rを算出し、発電情報34として記憶部30に記憶する。
【0129】
以上の処理手順により、集中制御システム2は、判定対象の時刻または時間帯における配電系統10_1~10_n毎の太陽光発電装置による発電の有無の判定と、太陽光発電装置による発電量ΔSおよび発電率Rの算出を行う。
【0130】
なお、集中制御システム2は、上述した手法によって算出した発電率Rに基づいて、天候の判定を行ってもよい。
【0131】
図10A、
図10B、および
図10Cは、一つの配電系統10における太陽光発電装置による発電率Rの時間的な変化を示す図である。
【0132】
図10Aには、晴れの日(2021年5月4日)における午前6時から午後7時までの単位時間毎の一つの配電系統内の太陽光発電装置の発電率Rが示されている。
図10Bには、曇りの日(2021年5月15日)における午前6時から午後7時までの単位時間毎の一つの配電系統内の太陽光発電装置の単位時間毎の発電率が示されている。
図10Cには、雨の日(2021年5月27日)における午前6時から午後7時までの単位時間毎の一つの配電系統内の太陽光発電装置の発電率Rが単位時間毎の発電率が示されている。
【0133】
図10Aから理解されるように、晴れの日には発電率Rが50%を超える時間帯が多くなる傾向がある。そこで、集中制御システム2の発電判定部27は、例えば、発電率Rが第1の閾値(例えば、50%)を超える時刻または時間帯の天候を“晴れ”と判定してもよい。
【0134】
また、
図10Cから理解されるように、雨の日には発電率Rが25%未満となる時間帯が多くなる傾向がある。そこで、集中制御システム2の発電判定部27は、例えば、発電率Rが第2の閾値(例えば、25%)未満である時刻または時間帯の天候を“雨”と判定してもよい。
【0135】
また、
図10Bから理解されるように、曇りの日には発電率Rが25%以上50%未満となる時間帯が多くなる傾向がある。そこで、集中制御システム2の発電判定部27は、例えば、発電率Rが第2の閾値以上かつ第1の閾値未満(25%≦R<50%)である時刻または時間帯の天候を“曇り”と判定してもよい。
【0136】
このように、集中制御システム2は、発電率Rに基づいて天候を判別する処理を行ってもよい。
【0137】
以上、実施の形態に係る集中制御システム2としての情報処理装置は、上位系統から電力が供給される少なくとも一つの配電系統10に設けられた電圧調整器11,12および開閉器91,92等のセンサによって測定された電圧および電流の測定値に基づいて、有効電力および無効電力を算出する。情報処理装置は、有効電力を第1軸(例えばX軸)とし、無効電力を第2軸(例えばY軸)とし、第1軸と第2軸が直交する直交座標系において夜間における判定対象の配電系統10の有効電力および無効電力を含むデータ対によって定まる点を基準点P0とし、基準点P0から判定対象の時刻または時間帯における有効電力および無効電力を含むデータ対によって定まる直交座標系における点を判定対象点Pxとする。情報処理装置は、基準点P0から判定対象点Pxを結ぶベクトルBxを算出し、ベクトルBxの向きに基づいて、判定対象の時刻または時間帯における判定対象の配電系統10に連系された太陽光発電装置による発電の有無を判定する。
【0138】
これによれば、判定対象の配電系統内のセンサの測定値から算出した電力から太陽光発電装置による発電電力を分離することなく、判定対象の配電系統内の太陽光発電装置による発電の有無を判定することができる。また、気象データを用いる必要もない。
したがって、実施の形態に係る情報処理装置によれば、配電系統における太陽光発電装置の発電状態を容易に推定することが可能となる。
【0139】
また、実施の形態に係る情報処理装置は、判定対象点PxのベクトルBxの向きとして、第1軸および第2軸のうちのいずれか一方とベクトルBxとのなす角(角度θ)を算出し、角度θの大きさに基づいて太陽光発電装置による発電の有無を判定する。
これによれば、判定対象点PxのベクトルBxの向きを容易に算出することができる。
【0140】
また、実施の形態に係る情報処理装置は、電流が電圧に対して遅れる場合の無効電力を正とした場合に、第1軸の正方向に対するベクトルBxの角度θを算出する。情報処理装置は、角度θが0°から90°までの範囲にある場合に、判定対象の時刻または時間帯において判定対象の配電系統10に連系された太陽光発電装置による発電がないと判定し、角度θが90°から180°までの範囲にある場合に、判定対象の時刻または時間帯において判定対象の配電系統10に連系された太陽光発電装置による発電があると判定する。
これによれば、配電系統内の太陽光発電装置による発電の有無を容易に判定することが可能となる。
【0141】
また、実施の形態に係る情報処理装置において、夜間の有効電力および無効電力によって定まる点のうち、有効電力が最小となる時刻または時間帯における有効電力および無効電力によって定まる点を基準点P0とする。
これによれば、太陽光発電装置による発電が行われていないときの点を基準として判定対象点Pxの位置を特定することができるので、より高精度に太陽光発電装置の発電状態を判定することが可能となる。
【0142】
また、実施の形態に係る情報処理装置は、基準点P0における皮相電力に対する判定対象点Pxにおける皮相電力の変化量に基づいて、太陽光発電装置の発電量ΔSを算出する。換言すれば、情報処理装置は、ベクトルBxの大きさ(移動距離ΔS)に基づいて皮相電力の変化量を算出する。
これによれば、複雑な演算を行うことなく、判定対象の配電系統10内の太陽光発電装置による発電量の推定値を容易に得ることが可能となる。
【0143】
また、実施の形態に係る情報処理装置は、配電系統10に連系されている太陽光発電装置それぞれの最大発電量の合計値であるPV連系量Paに対する発電量ΔSの割合を算出し、発電率Rとする。
これによれば、判定対象の配電系統10において、太陽光発電装置がどの程度発電しているかを容易に推定することができる。また、上述したように、発電率に基づいて判定対象の時刻または時間帯における天候をも推定することが可能となる。
【0144】
≪実施の形態の拡張≫
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。
【0145】
例えば、配電制御システム3と集中制御システム2が夫々別個の情報処理装置によって実現されている場合を例示したが、これに限られず、配電制御システム3および集中制御システム2が一つの情報処理装置によって実現されていてもよいし、複数の情報処理装置からなる一つのシステムとして統合されていてもよい。また、配電制御システム3と集中制御システム2は、必ずしも同一の制御所1(敷地)内に設けられている必要はなく、それぞれが別の場所に設けられていてもよい。
【0146】
また、上記実施の形態では、配電系統10の立ち上がり点の電圧および電流の測定値を用いて配電系統10の立ち上がり点より下流に連系された太陽光発電装置の発電状態を判定する方法を例示したが、これに限られない。例えば、判定対象の配電系統10内の特定のセンサによって測定された電圧および電流に基づいて算出した電力を用いて上述の手法による演算を行うことにより、その特定のセンサより下流に連系された太陽光発電装置の発電状態を判定することが可能となる。例えば、配電系統10_2の電圧調整器12によって測定された電圧および電流を用いて有効電力および無効電力を算出し、それらを用いて上述の手法による演算を行うことにより、配電系統10_2における電圧調整器12以降に連系された太陽光発電装置の発電状態を判定することが可能となる。
【0147】
上述のフローチャートは、動作を説明するための一例を示すものであって、これに限定されない。すなわち、フローチャートの各図に示したステップは具体例であって、このフローに限定されるものではない。例えば、一部の処理の順番が変更されてもよいし、各処理間に他の処理が挿入されてもよいし、一部の処理が並列に行われてもよい。
【符号の説明】
【0148】
1…制御所、2…集中制御システム(情報処理装置)、3…配電制御システム(情報処理装置)、4…配電用変電所、5…電圧調整器(LRT)、6…二次側母線、7_1~7_n…配電用遮断器、10_1~10_n…配電系統(電力供給ネットワーク),11,12…電圧調整器(SVR)、21…測定結果取得部、22…電力算出部、23…ベクトル算出部、24…ベクトル特定部、25…角度算出部、26…移動距離算出部、27…発電判定部、28…発電量算出部、29…制御部、30…記憶部、31…測定結果、32…電力情報、33…ベクトル情報、34…発電情報、35…PV連系情報、36…制御情報、61…太陽光発電装置(PV)、81…配電線、91_1~91_4,92_1~92_4…開閉器。