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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155403
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】アンテナ装置
(51)【国際特許分類】
   H01Q 21/24 20060101AFI20241024BHJP
   H01Q 5/35 20150101ALI20241024BHJP
   H01Q 13/08 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
H01Q21/24
H01Q5/35
H01Q13/08
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023070091
(22)【出願日】2023-04-21
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-07-16
(71)【出願人】
【識別番号】501243317
【氏名又は名称】耀登科技股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】江 啓名
【テーマコード(参考)】
5J021
5J045
【Fターム(参考)】
5J021AA02
5J021AA07
5J021AA11
5J021AB06
5J021CA03
5J021HA10
5J021JA06
5J045AA03
5J045AA13
5J045CA04
5J045DA10
5J045HA06
5J045MA07
(57)【要約】
【課題】この発明は、キャリアとアンテナアレイを含むアンテナ装置を開示する。
【解決手段】アンテナアレイには、第1のおよび第2の二周波アンテナ構造体が含まれる。第1のアンテナ構造体には、第1の導電シート、第1の送信アンテナ、および第1の受信アンテナが含まれる。第1の送信アンテナと第1の受信アンテナそれぞれの正投影が第1の導電シート上に規定される領域の中心点は、共に第1の延長線上に位置するように重なっている。第2のアンテナ構造体には、第2の導電シート、第2の送信アンテナ、および第2の受信アンテナが含まれる。第2の送信アンテナと第2の受信アンテナそれぞれの正投影が第2の導電シート上に規定される領域の中心点は、共に第2の延長線上に位置するように重なっている。第1の導電シートと第2の導電シートは、直角に交差する第1のおよび第2の延長線の交点を中心に90度回転対称性を有する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリアと、
前記キャリア上に配置され、第1の二周波アンテナ構造体及び第2の二周波アンテナ構造体を含む少なくとも1つのアンテナアレイと、
を含むアンテナ装置であって、
前記第1の二周波アンテナ構造体は、第1の導電シートと、前記第1の導電シートに電気的に結合される第1の送信アンテナ及び第1の受信アンテナとを含み、
前記第1の送信アンテナの正投影が前記第1の導電シート上に規定される領域の中心点と、前記第1の受信アンテナの正投影が前記第1の導電シート上に規定される領域の中心点は、共に第1の延長線上に位置するように重なっており、
前記第2の二周波アンテナ構造体は、第2の導電シートと、前記第2の導電シートに電気的に結合される第2の送信アンテナおよび第2の受信アンテナとを含み、
前記第2の送信アンテナの正投影が前記第2の導電シート上に規定される領域の中心点と、前記第2の受信アンテナの正投影が前記第2の導電シート上に規定される領域の中心点は、共に第2の延長線上に位置するように重なっており、
前記第1の延長線と前記第2の延長線は90度の角度を持ち、かつ交点を有し、前記第1の延長線と前記第2の延長線は前記交点を回転中心として90度対称の関係を持って配置される、
ことを特徴とする、アンテナ装置。
【請求項2】
前記少なくとも1つのアンテナアレイの数量は、さらに複数に限定され、前記アンテナアレイは、複数の行と複数の列の千鳥配置を形成する、請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記アンテナ装置は、送信周波数帯域で動作するように構成され、前記アンテナアレイの各々は中心点を有し、前記列のうちの任意の2つの隣接するものにおいて、同じ列にない前記アンテナアレイの任意の2つの隣接するもの中心点の間に最短距離が定義され、該最短距離は、送信周波数帯の中心周波数に相当する波長の0.45から0.55倍までの範囲にある、請求項2に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記列のうち隣接する任意の2つのものにおいて、前記アンテナアレイのうち同じ列にない隣接する任意の2つのもの第1の送信アンテナ間の位相差は50度または0度であり、前記アンテナアレイのうち同じ列にない隣接する任意の2つのもの第2の送信アンテナ間の位相差は50度または0度である、請求項2に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記列のうち隣接する任意の2つのものにおいて、前記アンテナアレイのうち同じ列にない任意の2つのもの第1の受信アンテナ間の位相差は50度または0度であり、前記アンテナアレイのうち同じ列にない任意の2つのもの第2の受信アンテナ間の位相差は50度または0度である、請求項2に記載のアンテナ装置。
【請求項6】
前記第1の送信アンテナと前記第2の送信アンテナとの位相差は90度であり、前記第1の受信アンテナと前記第2の受信アンテナとの位相差は90度である、請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項7】
前記少なくとも1つのアンテナアレイの数量は、さらに1つに限定される、請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項8】
前記第1の送信アンテナおよび前記第2の送信アンテナは、それぞれ左旋円偏波を発生するように構成され、前記第1の受信アンテナおよび前記第2の受信アンテナは、それぞれ右旋円偏波を発生するように構成される、請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項9】
前記第1の送信アンテナ及び前記第1の受信アンテナの各々は円形状であり、前記第2の送信アンテナ及び前記第2の受信アンテナの各々は円形状である、請求項1に記載のアンテナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装置に関し、特にアンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のアンテナ装置は、特定の機能(例えば、多入力多出力;MIMO)を有するために、基板と、基板上に搭載されアレイ状に配置された複数の二周波アンテナを備えている。しかし、従来のアンテナ装置は、理想的な円偏波パターンを持つように設計すると、複数の二周波アンテナの配置空間が拡大し、その結果、基板の大きさを小さくすることができない。つまり、従来のアンテナ装置では、「小型化」と「理想的な円偏波パターン」を同時に実現することができなかった。
【0003】
そこで、発明者は、上記欠点を改善することができると考え、意図的に研究し、科学的原理を適用し、最終的に、合理的に設計され、上記欠点を改善するのに有効な発明を完成させるに至った。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記技術的不備に対して、本発明は、アンテナ装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明が採用する技術的側面の1つは、アンテナ装置を提供することである。アンテナ装置は、キャリアと、少なくとも1つのアンテナアレイとを含む。少なくとも1つのアンテナアレイは、キャリア上に配置され、少なくとも1つのアンテナアレイは、第1の二周波アンテナ構造体及び第2の二周波アンテナ構造体を含む。第1の二周波アンテナ構造体は、第1の導電シートと、第1の導電シートに電気的に結合される第1の送信アンテナ及び第1の受信アンテナとを含む。第1の送信アンテナの正投影が第1の導電シート上に規定される領域の中心点と、第1の受信アンテナの正投影が第1の導電シート上に規定される領域の中心点は、共に第1の延長線上に位置するように重なっている。第2の二周波アンテナ構造体は、第2の導電シートと、第2の導電シートに電気的に結合される第2の送信アンテナおよび第2の受信アンテナとを含む。第2の送信アンテナの正投影が第2の導電シート上に規定される領域の中心点と、第2の受信アンテナの正投影が第2の導電シート上に規定される領域の中心点は、共に第2の延長線上に位置するように重なっている。第1の延長線と第2の延長線は90度の角度を持ち、かつ交点を有し、その交点を回転中心として90度対称の関係を持って配置される。
【発明の効果】
【0006】
上記のように、本発明が提供するアンテナ装置では、「第1の送信アンテナの正投影が第1の導電シート上に規定される領域の中心点と、第1の受信アンテナの正投影が第1の導電シート上に規定される領域の中心点は、共に第1の延長線上に位置するように重なっている」「第2の送信アンテナの正投影が第2の導電シート上に規定される領域の中心点と、第2の受信アンテナの正投影が第2の導電シート上に規定される領域の中心点は、共に第2の延長線上に位置するように重なっている」、及び「第1の延長線と第2の延長線は90度の角度を持ち、かつ交点を有し、その交点を回転中心として90度対称の関係を持って配置される」ことにより、アンテナ装置に理想的な円偏波パターンの効果が得られるだけでなく、小型化も同時に達成することができる。
【0007】
本発明の特徴及び技術内容がより一層分かるように、以下本発明に関する詳細な説明と添付図面を参照する。しかし、提供される添付図面は参考と説明のために提供するものに過ぎず、本発明の特許請求の範囲を制限するためのものではない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の第1の実施形態に係る二周波アンテナ構造体を示す斜視模式図である。
図2図1の線II-IIに沿って取った断面模式図である。
図3】本発明の第1の実施形態に係る二周波アンテナ構造体を示す上面模式図である。
図4】本発明の第1の実施形態に係る二周波アンテナ構造体を示す下面模式図である。
図5】本発明の第1の実施形態に係る二周波アンテナ構造体によって測定されたリターンロスデータを示す模式図である。
図6】本発明の第2の実施形態に係る二周波アンテナ構造体を示す平面模式図である。
図7】本発明の第2の実施形態に係る二周波アンテナ構造体の第1の送信アンテナから発生する放射パターンを示す模式図である。
図8図7の放射パターンをH面またはE面で示した模式図である。
図9】本発明の第2の実施形態に係る二周波アンテナ構造体の第2の送信アンテナから発生する放射パターンを示す模式図である。
図10図9の放射パターンをH面またはE面で示した模式図である。
図11】本発明の第2の実施形態に係る二周波アンテナ構造体の第1の送信アンテナ及び第2の送信アンテナから共同で発生する放射パターンを示す模式図である。
図12図11の放射パターンをH面またはE面で示した模式図である。
図13】本発明の第2の実施形態に係る二周波アンテナ構造体の第1の受信アンテナから発生する放射パターンを示す模式図である。
図14図13の放射パターンをH面またはE面で示した模式図である。
図15】本発明の第2の実施形態に係る二周波アンテナ構造体の第2の受信アンテナから発生する放射パターンを示す模式図である。
図16図15の放射パターンをH面またはE面で示した模式図である。
図17】本発明の第2の実施形態に係る二周波アンテナ構造体の第1の受信アンテナ及び第2の受信アンテナから共同で発生する放射パターンを示す模式図である。
図18図17の放射パターンをH面またはE面で示した模式図である。
図19】本発明の第3の実施形態による二周波アンテナ構造体を示す平面模式図である。
図20】本発明の第3の実施形態に係る二周波アンテナ構造体の第1の送信アンテナ及び第2の送信アンテナから共同で発生する放射パターンを示す模式図である。
図21図20の放射パターンをH面またはE面で示した模式図である。
図22】本発明の第3の実施形態に係る二周波アンテナ構造体の第1の受信アンテナ及び第2の受信アンテナから共同で発生する放射パターンを示す模式図である。
図23図22の放射パターンをH面またはE面で示した模式図である。
図24】本発明の第3の実施形態によるビームの切り替え時に第1の送信アンテナ及び第2の送信アンテナから共同で発生する左回りの円偏波放射パターンの模式図である。及び。
図25】本発明の第3の実施形態によるビーム切り替え時に第1の送信アンテナ及び第2の送信アンテナから共同して発生する右旋円偏波放射パターンの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
下記より、具体的な実施例で本発明が開示する「アンテナ装置」に係る実施形態を説明する。当業者は本明細書の公開内容により本発明のメリット及び効果を理解し得る。本発明は他の異なる実施形態により実行又は応用できる。本明細書における各細節も様々な観点又は応用に基づいて、本発明の精神逸脱しない限りに、均等の変形と変更を行うことができる。また、本発明の図面は簡単で模式的に説明するためのものであり、実際的な寸法を示すものではない。以下の実施形態において、さらに本発明に係る技術事項を説明するが、公開された内容は本発明を限定するものではない。
【0010】
なお、本明細書において「第1の」、「第2の」、「第3の」等の用語で各種の部品又は信号を説明する可能性があるが、これらの部品又は信号はこれらの用語によって制限されるものではない。これらの用語は、主として一つの部品と別の部品、又は一つの信号と別の信号を区分するためのものであることが理解されたい。また、本明細書に用いられる「又は」という用語は、実際の状況に応じて、関連する項目中の何れか一つ又は複数の組合せを含み得る。
【0011】
さらに、以下の説明において、特定の図面または特定の図面に示されるように参照されることが示されている場合、これは、後続の説明において、説明される関連内容の大部分がその特定の図面に現れることを強調するためだけであり、後続の説明をその特定の図面への参照のみに制限するものではない。
[第1の実施形態]
【0012】
図1図5を参照すると、本発明の第1の実施形態は、二周波アンテナ構造体100を提供する。図1及び図2に示すように、二周波アンテナ構造体100は、送信周波数と受信周波数とを有する送信周波数帯域に適している。二周波アンテナ構造体100は、基板1と、基板1上に配置される接地素子2、導電シート3、送信アンテナ4、および受信アンテナ5とを含む。以下の説明では、二周波アンテナ構造体100を構成する各構成要素の構造および接続関係について説明する。
【0013】
図2を参照して、本実施形態における基板1は、多層構造であり、2枚のプリント回路基板を有する。2つのプリント回路基板は積層されており、それぞれ第1の層11および第2の層12として定義される。
【0014】
図2及び図4を参照すると、本実施形態における接地素子2は、導電性銅箔であってもよいが、本発明はこれに限定されるものではない。接地素子2は、第1の層11から離れた第2の層12の側面に配置され、接地素子2は、第2の層12に、円形状で互いに間隔をあけた第1の貫通孔H21及び第2の貫通孔H22を有する。つまり、第2の層12の第1の層11から離れた側の面は、接地素子2によって覆われていない2つの構成領域を有している。
【0015】
図2および図3を参照して、導電シート3は、第2の層12から離れた第1の層11の表面側に配置されている。本実施形態における導電シート3は、六角形構造を有する導電性銅箔であり、6つの辺を有している。6つの辺のうち、任意の2つの対向する辺は互いに平行であり、その間に第1の最短距離D1が規定される。第1の最短距離D1は、伝送周波数帯の中心周波数に対応する波長の0.45倍から0.55倍の範囲内にある。
【0016】
例えば、導電シート3は、時計回りに、第1の辺S31、第2の辺S32、第3の辺S33、第4の辺S34、第5の辺S35、及び第6の辺S36を有する。第1の辺S31は、第4の辺S34と対向しかつ平行であり、第2の辺S32は、第5の辺S35と対向しかつ平行であり、第3の辺S33は、第6の辺S36と対向しかつ平行である。伝送周波数帯の中心周波数に対応する波長が12ミリメートル(mm)である場合、第1の辺S31と第4の辺S34との間の最短距離、第2の辺S32と第5の辺S35との間の最短距離、および第3の辺S33と第6の辺S36との間の最短距離を5.4ミリメートル(mm)から6.6ミリメートル(mm)の範囲にすることができる。
【0017】
図2及び図4を参照すると、送信アンテナ4は送信周波数を有し、送信アンテナ4は、第1のカップリング導電パッド41、第1の導電柱42、及び第1の給電用導電パッド43を含む。本実施形態における第1のカップリング導電パッド41は、円形状である導電性銅箔であってもよいが、本発明はこれに限定されるものではない。第1のカップリング導電パッド41は、2枚のプリント回路基板によって挟まれるように、第1の層11と第2の層12との間に配置され、第1のカップリング導電パッド41は、第1の貫通孔H21に位置的に対応する。すなわち、第1のカップリング導電パッド41を第2の層12に直交投影することによって規定される領域が、第1の貫通孔H21内に位置される。
【0018】
本実施形態における第1の導電柱42は、例えば、例えば電気めっきを施した盲孔型の導電孔(Plating Through Hole)または盲目孔型の導電孔(Blind Via Hole)であってもよいが、本発明は、これに限定されるものではない。第1の導電柱42は、第1のカップリング導電パッド41と導電シート3とに電気的に結合されている。
【0019】
図2及び図4を参照すると、第1の給電用導電パッド43は、第1の層11から離れた第2の層12の側面に配置され、第1の貫通孔H21に位置し、第1の給電用導電パッド43及び第1のカップリング導電パッド41は、左回り円偏波を生成するように直列容量効果を生成することができる。さらに、第1の給電用導電パッド43は、接地素子2との間で並列容量効果を生じさせることも可能である。
【0020】
本実施形態では、第1の給電用導電パッド43は、円環状をなす導電性銅箔であり、第1の給電用導電パッド43を導電シート3に向けて直交投影して規定される位置が6辺のうちの1辺(すなわち、第1の辺S31)に隣接する。第1の給電用導電パッド43と第1の貫通孔H21とは、中心が共通である。さらに、第1の給電用導電パッド43の中心は、第1のカップリング導電パッド41を第2の層12に向けて直交投影して規定される中心と重なっていることが好ましく、第1の給電用導電パッド43の面積は、第1のカップリング導電パッド41の面積と実質的に同じである。すなわち、第1の給電用導電パッド43、第1の貫通孔H21、および第1のカップリング導電パッド41は、大きさにおいて連関関係を有している。
【0021】
当然ながら、連結関係は、わずかな変動(すなわち、許容される公差)を許容する。例えば、本発明の別の実施形態(図示せず)において、第1の給電用導電パッド43の面積は、第1のカップリング導電パッド41の面積よりもわずかに大きいかまたは小さいこともある。
【0022】
図2及び図4を参照すると、受信アンテナ5は、受信周波数を有し、受信アンテナ5は、第2のカップリング導電パッド51、第2の導電柱52、及び第2の給電用導電パッド53を含む。本実施形態における第2のカップリング導電パッド51は、円形状である導電性銅箔であってもよいが、本発明はこれに限定されるものではない。第2のカップリング導電パッド51は、2枚のプリント回路基板によって挟まれるように、第1の層11と第2の層12との間に配置され、第2のカップリング導電パッド51は、第2の貫通孔H22に位置的に対応する。すなわち、第2のカップリング導電パッド51を第2の層12に向けて直交投影することで規定される領域が、第2の貫通孔H22に位置する。
【0023】
本実施形態における第2の導電柱52は、例えば電気めっきを施した盲孔型の導電孔(Plating Through Hole)または盲目孔型の導電孔(Blind Via Hole)であってもよいが、本発明は、これに限定されるものではない。第2の導電柱52は、第2のカップリング導電パッド51と導電シート3とに電気的に結合されている。
【0024】
図2及び図4を参照すると、第2の給電用導電パッド53は、第1の層11から離れた第2の層12の側面に配置され、第2の貫通孔H22に位置し、第2の給電用導電パッド53及び第2のカップリング導電パッド51は、右回り円偏波を発生するように直列容量効果を発生することができる。さらに、第2の給電用導電パッド53は、接地素子2との間で並列容量効果を生じさせることも可能である。
【0025】
本実施形態では、第2の給電用導電パッド53は、円環状をなす導電性銅箔であり、第2の給電用導電パッド53を導電シート3に向けて直交投影して規定される位置が6辺のうちの1辺(すなわち、第2の辺S32)に隣接する。第2の給電用導電パッド53と第2の貫通孔H22とは、中心が共通である。さらに、第2の給電用導電パッド53の中心は、第2のカップリング導電パッド51を第2の層12に向けて直交投影して規定される中心と重なっていることが好ましく、第2の給電用導電パッド53の面積は、第2のカップリング導電パッド51の面積と実質的に同じである。すなわち、第2の給電用導電パッド53、第2の貫通孔H22、および第2のカップリング導電パッド51は、大きさにおいて連関関係を有している。
【0026】
当然のことながら、連結関係は、わずかな変動(すなわち、許容される公差)を許容する。例えば、本発明の別の実施形態(図示せず)では、第2の給電用導電パッド53の面積も、第2の連結導電パッド51の面積よりわずかに大きいか小さいことがある。
【0027】
なお、第1の給電用導電パッド43の直列容量効果と第2の給電用導電パッド53の直列容量効果とが乱れないように、第1のカップリング導電パッド41を第2の層12側に直交して突出させた領域の面積は第1の貫通孔H21の面積以下となり、第2のカップリング導電パッド51を第2の層12側に直交して突出させた領域の面積は第2の貫通孔H22の面積以下とされていることは特筆される。
【0028】
したがって、第1のカップリング導電パッド41(または第1の給電用導電パッド43)を導電シート3に向けて直交するように突出させて規定した位置と第1の面S31との間の第2の最短距離D2は、第2のカップリング導電パッド51(または第2の給電用導電パッド53)を導電シート3に向けて直交するように突出させて規定した位置と第2の面S32との第3の最短距離D3と等しくないことがある、であり、第2の最短距離D2が第3の最短距離D3よりも小さいので、送信周波数と受信周波数とが異なる範囲を有することができる。
【0029】
特に、図5は、本発明による二周波アンテナ構造体100によって測定されたリターンロスデータを示す模式図であり、この図は、送信データラインG1及び受信データラインG2を有する。図から、送信データラインG1は、14GHzから15GHzの範囲内で電力が低く、受信データラインG2は、10GHzから12.7GHzの範囲内で電力が低いことが明確に分かる。すなわち、本発明の二周波アンテナ構造体100の送信周波数は、好ましくは14GHzから15GHzの範囲内に限定され、受信周波数は、好ましくは10.7GHzから12.7GHzの範囲内に限定される。
[第2の実施形態]
【0030】
図6から図18を参照すると、本発明の第2の実施形態は、アンテナ装置1000を提供する。アンテナ装置1000は、キャリアBRと、キャリアBR上に配置されるアンテナアレイARと、を含む。アンテナアレイARは、第1の実施形態の2つの二周波アンテナ構造体を含み、2つの二周波アンテナ構造体は、第1の二周波アンテナ構造体100A及び第2の二周波アンテナ構造体100Bとして定義される。また、キャリアBRは、第1の実施形態の2つの二重周波数アンテナ構造体の共通の基板であり、キャリアBRは、二重周波数アンテナ構造体の各々の基板と同じ構造を有する。
【0031】
すなわち、キャリアBR、第1の二周波アンテナ構造体100A、及び第2の二周波アンテナ構造体100Bの詳細な構成に関しては、第1の実施形態の二周波アンテナ構造体100を参照すればよく、ここではその詳細な説明は繰り返さない。以下の説明では、第1の二周波アンテナ構造体100Aと第2の二周波アンテナ構造体100Bとの構成関係を説明する。
【0032】
図6を参照すると、第1の二周波アンテナ構造体100Aは、第1の導電シート3Aと、第1の導電シート3Aに電気的に結合される第1の送信アンテナ4A及び第1の受信アンテナ5Aを含む。本実施形態では、第1の導電シート3Aは六角形状であり、第1の送信アンテナ4Aおよび第1の受信アンテナ5Aのそれぞれは円形状である。第1の送信アンテナ4Aを第1の導電シート3Aに向けて直交投影することによって規定される領域(すなわち、円の中心)の中心と、第1の受信アンテナ5Aを第1の導電シート3Aに向けて直交投影することによって規定される領域(すなわち、円の中心)の中心とは、共に第1の延長線上L1に位置するように重なっている。
【0033】
図6を参照すると、第2の二周波アンテナ構造体100Bは、第2の導電シート3Bと、第2の導電シート3Bと電気的に結合される第2の送信アンテナ4B及び第2の受信アンテナ5Bとを含む。本実施形態では、第2の導電シート3Bは六角形状であり、第2の送信アンテナ4Bおよび第2の受信アンテナ5Bのそれぞれは円形状である。第2の送信アンテナ4Bを第2の導電シート3Bに向けて直交投影することにより規定される領域(すなわち、円の中心)の中心と、第2の受信アンテナ5Bを第2の導電シート3Bに向けて直交投影することにより規定される領域(すなわち、円の中心)の中心とは、共に第2の延長線上L2に位置するように重なっている。
【0034】
また、第1の延伸線L1及び第2の延伸線L2は、その間の角度θが90度の交点C1を有し、第1の導電シート3A及び第2の導電シート3Bは、交点C1に対して90度の回転対称性を有している。従って、第1の二周波アンテナ構造体100A及び第2の二周波アンテナ構造体100Bは、円偏波の放射パターンを生成し、キャリアBR上の占有面積を最小にできる(すなわち、第1の二周波アンテナ構造体100A及び第2の二周波アンテナ構造体100Bの間の距離を最短にできる)。
【0035】
なお、第1の送信アンテナ4Aと第2の送信アンテナ4Bとの間の位相差は、好ましくは90度である。このようにして、第1の送信アンテナ4Aの電磁界と第2の送信アンテナ4Bの電磁界は、仰角面(すなわち、θ;theta)および方位角面(すなわち、φ;phi)上で互いに直交し、左手円偏波(LHCP)を生成することができる。
【0036】
例えば、図7に示すように、本実施形態の第1の送信アンテナ4Aは、周波数において独立して放射パターンP4Aを生成することができ、図8は、図7の放射パターンP4AのH面またはE面における模式図である。図9に示すように、本実施形態の第2の送信アンテナ4Bは、独立して周波数における放射パターンP4Bを生成することができ、図10は、図9の放射パターンP4BをH平面またはE平面で示した模式図である。また、図11に示すように、本実施形態の第1の送信アンテナ4A及び第2の送信アンテナ4Bは、共同で左回りの円偏波の放射パターンPLを周波数で発生させることができ、図12は、図11の放射パターンPLをH平面又はE平面で示した模式図である。
【0037】
図7図9図11のドット密度が低いほど、ゲイン値は高くなる。図8図10図12の模式図において、5本のラインT1~T5がある。ラインT1はトータルゲイン値(gain total)、ラインT2はθ方向のゲイン値(gain theta)、ラインT3はφ方向のゲイン値(gain phi)、ラインT4は左方向のゲイン値(gain left)、ラインT5は右方向のゲイン値(gain right)である。図11及び図12から、第1の送信アンテナ4A及び第2の送信アンテナ4Bから共同して発生する放射パターンPLは、左旋円偏波であり、実質的に円であることが確認され得る。
【0038】
さらに、第1の受信アンテナ5Aと第2の受信アンテナ5Bとの間の位相差は、好ましくは90度である。このようにすれば、第1の受信アンテナ5Aの電磁界と第2の受信アンテナ5Bの電磁界とが仰角面(すなわちθ)および方位角面(すなわちφ)において互いに直交し、軸比がより小さい右旋円偏波(RHCP)を発生することができる。
【0039】
例えば、図13に示すように、本実施形態の第1の受信アンテナ5Aは、周波数において独立して放射パターンP5Aを生成することができ、図14は、図13の放射パターンP5AのH面またはE面における模式図である。図15に示すように、本実施形態の第2の受信アンテナ5Bは、周波数における放射パターンP5Bを独立して生成することができ、図16は、図15の放射パターンP5BをH平面またはE平面で示した模式図である。また、図17に示すように、本実施形態の第1の受信アンテナ5A及び第2の受信アンテナ5Bは、共同で右回りの円偏波の放射パターンPRを周波数で生成することができ、図18は、図17の放射パターンPRをH平面又はE平面で示した模式図である。
【0040】
図13図15図17のドット密度が低いほど、ゲイン値は高くなる。図14図16図18の模式図において、5本のラインT1~T5がある。ラインT1は総ゲイン値、ラインT2はθ方向のゲイン値、ラインT3はφ方向のゲイン値、ラインT4は左方向のゲイン値、ラインT5は右方向のゲイン値である。図17及び図18から、第1の受信アンテナ5A及び第2の受信アンテナ5Bから共同して発生する放射パターンPRは、右旋円偏波であり、実質的に円であることが確認できる。
[第3の実施形態]
【0041】
図19から図25を参照すると、本発明の第3の実施形態は、アンテナ装置1000’を提供する。図19に示すように、本実施形態に係るアンテナ装置1000’は、第2の実施形態に係るアンテナ装置1000と同様であり、その類似点については、本明細書において繰り返さないものとする。本実施形態と第2の実施形態との違いは、主に、アンテナ装置1000’が複数のアンテナアレイARを含むことにある。
【0042】
具体的には、図19に示すように、本実施形態におけるアンテナアレイARは、複数の行と複数の列に千鳥配置されており、アンテナアレイARの各々は、中心点C2を有する。また、行のうちの任意の2つの隣接するものにおいて、同じ行にないアンテナアレイARの任意の2つの隣接するもの中心点C2は、第4の最短距離D4を有し、第4の最短距離D4は、送信周波数帯の中心周波数に対応する波長の0.45倍から0.55倍の範囲にあることが望ましい。したがって、アンテナアレイARは互いに影響し合うことができるので、アンテナ装置’1000によって最終的に生成される右旋円偏波と左旋円偏波とは、より小さい軸比を有することができる。
【0043】
例えば、第1の二周波アンテナ構造体100Aの各々の第1の送信アンテナ4Aに「1W,90°」の信号を入力し、第2の二周波アンテナ構造体100Bの各々の第2の送信アンテナ4Bに「1W,0°」の信号を入力すると、10.7GHzから12.7GHzまでの範囲のアンテナ装置は、図20の左旋円偏波放射パターンPL’を得ることができる。図21は、H面またはE面における放射パターンPL’の模式図である。
【0044】
また、第1の二周波アンテナ構造体100Aの各々の第1の受信アンテナ5Aに「1W,0°」の信号を入力し、第2の二周波アンテナ構造体100Bの各々の第2の受信アンテナ5Bに「1W,90°」の信号を入力すると、10.7GHzから12.7GHzまでの範囲のアンテナ装置は、図22の右旋円偏波状の放射パターンPR’を取得できる。図23は、H面またはE面における放射パターンPR’の模式図である。
【0045】
図20及び図22のドット密度が低いほど、ゲイン値は高くなる。図21および図23の模式図において、5本のラインT1~T5がある。ラインT1は全ゲイン値、ラインT2はθ方向のゲイン値、ラインT3はφ方向のゲイン値、ラインT4は左方向のゲイン値、ラインT5は右方向のゲイン値である。図21および図23から、2つの放射パターンPL’,PR’の軸比が、第2の実施形態のものよりも大幅に小さくなっていることが確認できる。
【0046】
なお、本実施形態に係るアンテナ装置1000’は、ビームスイッチングの利点も有することができる。具体的には、列のうちの任意の2つの隣接するものにおいて、同じ列にないアンテナアレイARの任意の2つの隣接するもの2つの第1の送信アンテナ4Aは、位相差が50度または0度であり、同じ列にないアンテナアレイARの任意の2つの隣接するもの2つの第2の送信アンテナ4Bは、位相差が50度または0度であり得ると考えられる。
【0047】
例えば、第1の列R1にある第1の送信アンテナ4Aの各々及び第2の送信アンテナ4Bの各々が、「1W,0°」の信号及び「1W,90°」の信号をそれぞれ入力する場合、第2の列R2にある第1の送信アンテナ4A及び第2の送信アンテナ4Bの各々は、「1W」の信号でそれぞれ入力してもよい、50°」の信号と「1W・140°」の信号とがそれぞれ入力され、第3の列R3に位置する第1の送信アンテナ4A及び第2の送信アンテナ4Bの各々は、「1W・100°」の信号と「1W・190°」(以下同様)の信号とがそれぞれ入力され得る。したがって、アンテナ装置1000’は、左旋円偏波に対応したビーム切替を実施することができるので、図24に示すような放射パターンPL’’を生成することができる。なお、図24におけるドット密度が低いほど、ゲイン値は高くなる。
【0048】
さらに、列のうちの任意の2つの隣接するものにおいて、同じ列にないアンテナアレイARの任意の2つの隣接するもの2つの第1の受信アンテナ5Aは、位相差が50度または0度であり、同じ列にないアンテナアレイARの任意の2つの隣接するもの2つの第2の受信アンテナ5Bは、位相差が50度または0度であることができる。
【0049】
例えば、第1の列R1に位置する第1の受信アンテナ5A及び第2の受信アンテナ5Bの各々が、「1W,90°」の信号及び「1W,0°」の信号でそれぞれ入力される場合、第2の列R2に位置する第1の受信アンテナ5A及び第2の受信アンテナ5Bの各々が、「1W,0°」の信号でそれぞれ入力されてよい、140°」の信号と「1W・50°」の信号とがそれぞれ入力され、第3の列R3に位置する第1の受信アンテナ5A及び第2の受信アンテナ5Bの各々は、「1W・190°」の信号と「1W・100°」(等々)の信号とがそれぞれ入力されればよい。したがって、アンテナ装置1000’は、右回りの円偏波に対応したビーム切替を実施することができるので、図25に示すような放射パターンPR’’を生成することができる。なお、図25のドット密度が低いほど、ゲイン値は高くなる。
[実施形態の有益な効果]
【0050】
以上より、本発明が提供するアンテナ装置では、「第1の送信アンテナの正投影が第1の導電シート上に規定される領域の中心点と、第1の受信アンテナの正投影が第1の導電シート上に規定される領域の中心点は、共に第1の延長線上に位置するように重なっている。」こと、「第2の送信アンテナの正投影が第2の導電シート上に規定される領域の中心点と、第2の受信アンテナの正投影が第2の導電シート上に規定される領域の中心点は、共に第2の延長線上に位置するように重なっている。」こと、及び「第1の延長線と第2の延長線は90度の角度を持ち、かつ交点を有し、その交点を回転中心として90度対称の関係を持って配置される」ことにより、アンテナ装置は、理想円偏波フィールドの効果を持つだけでなく、同時に小型化することができる。
【0051】
以上に開示される内容は本発明の好ましい実施可能な実施例に過ぎず、これにより本発明の特許請求の範囲を制限するものではないので、本発明の明細書及び添付図面の内容に基づき為された等価の技術変形は、全て本発明の特許請求の範囲に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0052】
1000、1000’:アンテナ設置
100A:第1の二周波アンテナ構造体
3A:第1の導電シート
4A:第1の送信アンテナ
5A:第1の受信アンテナ
100B:第2の二周波アンテナ構造体
3B:第2導電シート
4B:第2送信アンテナ
5B:第2受信アンテナ
100:二周波アンテナ構造体
1:基板
11:第1の層
12:第2の層
2:接地素子
H21:第1の貫通孔
H22:第2の貫通孔
3:導電性シート
S31:第1の辺
S32:第2の辺
S33:第3の辺
S34:第4の辺
S35:第5の辺
S36:第6の辺
4:送信アンテナ
41:第1のカップリング導体パッド
42:第1の導電柱
43:第1の給電用導電パッド
5:受信アンテナ
51:第2のカップリング導体パッド
52:第2の導電柱
53:第2の給電用導電パッド
D1:第1の最短距離
D2:第2の最短距離
D3:第3の最短距離
D4:第4の最短距離
G1:送信データライン
G2:受信データライン
AR:アンテナアレイ
BR:キャリア
L1:第1の延長線
L2:第2の延長線
C1:交点
C2:中心点
θ:交差点角度
P4A、P4B、P5A、P5B、PR、PL、PR’、PL’、PR’’、PL’’:放射パターン
R1:第1の1列
R2:第2の列
R3:第3の列
T1~T5:ライン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
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図19
図20
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図25