(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155406
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】プラズマ生成電極、プラズマ生成装置、および液体処理装置
(51)【国際特許分類】
H05H 1/24 20060101AFI20241024BHJP
【FI】
H05H1/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023070095
(22)【出願日】2023-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】521146861
【氏名又は名称】日本未来科学研究所合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100120684
【弁理士】
【氏名又は名称】宮城 三次
(72)【発明者】
【氏名】宮▲崎▼ 英孝
(72)【発明者】
【氏名】金子 昌彦
【テーマコード(参考)】
2G084
【Fターム(参考)】
2G084AA07
2G084AA19
2G084AA24
2G084AA25
2G084BB03
2G084BB37
2G084CC03
2G084CC19
2G084CC20
2G084CC34
2G084DD18
2G084DD21
2G084DD22
2G084DD55
2G084DD67
2G084HH07
2G084HH08
2G084HH23
2G084HH30
(57)【要約】
【課題】大気圧低温プラズマをより効率よく生成するための簡易なインピーダンス整合機構を設けたプラズマ生成電極、プラズマ生成装置を提供すること。
【解決手段】本発明の一実施形態に係るプラズマ生成電極1は、導電性材料により中空筒状に形成されてなる第1電極10と、誘電体材料により中空筒状に形成されてなる誘電体バリア部30と、誘電体バリア部30の長手方向の一部に、誘電体バリア部30の外周に沿って周方向に設けられている、導電性材料からなる第2電極20とを備え、第1電極10が、誘電体バリア部30の内部に、誘電体バリア部30の長手方向に摺動可能に配置されており、第1電極10を摺動させることにより、第1電極10と第2電極20とが誘電体バリア部30を介して対向している長手方向の長さが調整可能である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性材料により中空筒状に形成されてなる第1電極と、
誘電体材料により中空筒状に形成されてなる誘電体バリア部と、
前記誘電体バリア部の長手方向の一部に、前記誘電体バリア部の外周に沿って周方向に設けられている、導電性材料からなる第2電極と、
を備え、
前記第1電極が、前記誘電体バリア部の内部に、前記誘電体バリア部の長手方向に摺動可能に配置されており、前記第1電極を摺動させることにより、前記第1電極と前記第2電極とが前記誘電体バリア部を介して対向している長手方向の長さが調整可能である、
プラズマ生成電極。
【請求項2】
前記第2電極を覆うように絶縁性材料からなる絶縁層が形成されている、請求項1に記載のプラズマ生成電極。
【請求項3】
前記第1電極の前記誘電体バリア部への挿入側端部から所定の距離離れた部位に、前記第1電極の周方向に互いに間隔を隔てて複数の貫通孔が形成されている、請求項1に記載のプラズマ生成電極。
【請求項4】
前記誘電体バリア部と、前記第1電極と、前記第2電極とからなる組を、前記誘電体バリア部の径方向に隣接させて複数備えている、請求項1に記載のプラズマ生成電極。
【請求項5】
前記誘電体バリア部と、前記第1電極と、前記第2電極とからなる組を、前記誘電体バリア部の長手方向に隣接させて複数備えている、請求項1に記載のプラズマ生成電極。
【請求項6】
前記誘電体バリア部と、前記第1電極と、前記第2電極とからなる組を複数備え、一の組の前記誘電体バリア部の内周側に、少なくとも一の他の組が同心状に配置されている、請求項1に記載のプラズマ生成電極。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか一項に記載のプラズマ生成電極と、
前記プラズマ生成電極の前記第1電極と前記第2電極との間に接続されている高周波電源部と、を備え、
前記高周波電源部の出力インピーダンスと、前記プラズマ生成電極の入力インピーダンスとが、前記第1電極を前記誘電体バリア部の長手方向に摺動させて、前記第1電極と前記第2電極との前記誘電体バリア部を介した対向長さを調整することで整合される、プラズマ生成装置。
【請求項8】
請求項7に記載のプラズマ生成装置と、
前記プラズマ生成装置が備える前記誘電体バリア部の一端部に流体連通可能に接続された気液混合器とを少なくとも備えている、
液体処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ生成電極、プラズマ生成装置、および液体処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な物質の表面処理、液体の処理等に、プラズマが広く利用されている。特に大気圧低温プラズマは、特別な減圧環境なども必要なく、簡便に生成することができるため、種々のガスをプラズマ化して種々の物質を処理するために利用されている。
【0003】
プラズマ生成には、1対の電極間に数10kHzオーダーの高周波電力を供給する。このとき、高周波電力を供給する電源側のインピーダンスと、負荷側電極のインピーダンスとを整合させる必要がある。周知のように、電源側と負荷側でインピーダンスが不整合であると、負荷側からの反射波によって負荷側に供給される電力が減少し、電極間でのプラズマ生成効率が低下するからである。一般に、負荷側電極のインピーダンスは電極の構成が決まれば一意に決定され、電源側のインピーダンスに合わせるにはインピーダンス整合のためのなんらかの付加構成が必要である。
【0004】
例えば特許文献1には、対向して配置された第1のプラズマ電極及び第2のプラズマ電極を含む電極対と、前記電極対にRF電力を供給するRF電源と、前記RF電源と前記電極対との間に設けられた整合器とを有しているプラズマ生成装置が記載されている。前記整合器は、前記電極対の間の負荷に対して並列に接続された第1の可変コンデンサ及び第2の可変コンデンサと、前記第1のプラズマ電極に対して直列に接続されたコイルと、前記第2のプラズマ電極に対して直列に接続されたコンデンサとを含んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記のように、大気圧低温プラズマは、簡便に生成することができ、物体の表面処理等の産業利用から、環境空気の殺菌、皮膚のしみ対策等の民生利用まで、幅広く応用される。特に民生利用の場合、小型で製造コストが低廉なプラズマ生成電極が求められる。この点、特許文献1のように、複数の部品からなる回路を含む整合器を設けることは、好ましいことではない。
【0007】
本発明は、上記の及び他の課題を解決するためになされたもので、大気圧低温プラズマをより効率よく生成するための簡易なインピーダンス整合機構を設けたプラズマ生成電極、プラズマ生成装置を提供することを一つの目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の及び他の目的を達成するための、本発明の一態様は、導電性材料により中空筒状に形成されてなる第1電極と、誘電体材料により中空筒状に形成されてなる誘電体バリア部と、前記誘電体バリア部の長手方向の一部に、前記誘電体バリア部の外周に沿って周方向に設けられている、導電性材料からなる第2電極と、を備え、前記第1電極が、前記誘電体バリア部の内部に、前記誘電体バリア部の長手方向に摺動可能に配置されており、前記第1電極を摺動させることにより、前記第1電極と前記第2電極とが前記誘電体バリア部を介して対向している長手方向の長さが調整可能である、プラズマ生成電極である。
【0009】
本発明の他の態様は、前記プラズマ生成電極と、前記プラズマ生成電極の前記第1電極と前記第2電極との間に接続されている高周波電源部と、を備え、前記高周波電源部の出力インピーダンスと、前記プラズマ生成電極の入力インピーダンスとが、前記第1電極を前記誘電体バリア部の長手方向に摺動させて、前記第1電極と前記第2電極との前記誘電体バリア部を介した対向長さを調整することで整合される、プラズマ生成装置である。
【0010】
本発明のさらに他の態様は、前記のプラズマ生成装置と、前記プラズマ生成装置が備える前記誘電体バリア部の一端部に流体連通可能に接続された気液混合器とを少なくとも備えている、液体処理装置である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、大気圧低温プラズマをより効率よく生成するための簡易なインピーダンス整合機構を設けたプラズマ生成電極、プラズマ生成装置、および液体処理装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係るプラズマ生成装置の構成例を示す模式図である。
【
図2】
図2は、
図1のプラズマ生成装置に使用されるプラズマ生成電極の側断面図である。
【
図3】
図3は、
図1のプラズマ生成装置に使用されるプラズマ生成電極の横断面図である。
【
図4】
図4は、本発明のインピーダンス可変機構を例示する模式図である。
【
図5】
図5は、本発明の一実施形態における一変形例に係るプラズマ生成電極の側断面図である。
【
図6】
図6は、
図5のプラズマ生成電極に使用される第2電極の模式的斜視図である。
【
図7】
図7は、本発明のプラズマ生成電極の一変形例を示す模式図である。
【
図8】
図8は、本発明のプラズマ生成電極の一変形例を示す模式図である。
【
図9】
図9は、本発明のプラズマ生成電極の一変形例を示す模式図である。
【
図10】
図10は、本発明のプラズマ生成電極の一変形例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明につき、その実施形態に即して図面を用いて説明する。なお、以下の実施の形態により本発明が限定されるものでない。また、以下の説明において参照する各図は、本開示の内容を理解でき得る程度に形状、大きさ、及び位置関係を概略的に示してあるに過ぎない。即ち、本発明は、各図で例示された形状、大きさ、及び位置関係のみに限定されるものでない。
【0014】
<プラズマ生成電極>
まず、本発明の一実施形態に係るプラズマ生成電極の構成例について説明する。
図1に、本実施形態に係るプラズマ生成電極1の模式的な斜視図を、
図2に、
図1のプラズマ生成電極1の側断面図を、
図3に、
図2のプラズマ生成電極1の横断面図を示している。
【0015】
本実施形態のプラズマ生成電極1は、全体として中空円筒状を呈しており、第1電極10、第2電極20、及び誘電体バリア部30を備えている。第1電極10は中空円筒状の導電体として形成されている。第1電極10は例えばSUS304等のステンレス鋼により形成されているステンレスチューブであり、一例として外径10mm程度、内径9mm程度の寸法とすることができる。材料としてステンレス鋼を用いているのは、生成されたプラズマによる腐食の影響を受けにくく、また周囲環境に対する耐久性も高いためである。また切断等の加工が容易であるという利点もある。そのような条件を備えている導電性材料であれば、ステンレス鋼以外の適宜の材料を用いてもよい。
【0016】
誘電体バリア部30は中空円筒状に形成された誘電体材料からなり、本実施形態ではガラスチューブとして形成されている。ただし、プラズマに対する耐久性、加工性等が確保できるのであればフッ素樹脂等の樹脂系誘電体材料等、他の誘電体材料を用いてもよい。誘電体バリア部30の内径は、円筒状の第1電極10が挿入されて円滑に摺動可能な寸法としておく。厳密な嵌め合い関係は必要でないが、第1電極10が誘電体バリア部30に挿入された状態でがたつきが出ない程度の精度を確保する。誘電体バリア部30の厚さは例えば1mm程度とすることができるが、具体的には嵌合される第1電極10の外径との関係等から決定すればよい。
【0017】
第2電極20は、誘電体バリア部30の外周に、長手方向に一定の幅をもって設けられている。第2電極20は、例えば、一定の幅の銅箔を誘電体バリア部30の外周に巻き回して貼り付けることにより形成される。第2電極20は、銅箔以外の導電性材料によって形成するようにしてもよい。また箔のような薄板、薄膜状材料に限らず、メッシュ材等を用いてもよい。
【0018】
本実施形態では、
図2に示すように、第2電極20は、絶縁性材料で形成されたカバーフィルム40で周囲空気と接触しないように覆われている。なお、
図1では、図を見やすくするために、カバーフィルム40の図示を省略している。カバーフィルム40は例えばポリイミド樹脂を、第2電極20を覆うように誘電体バリア部30の外周に貼り付けることにより設ける。このカバーフィルム40を設けることにより、誘電体バリア部30の外周にある第2電極20の端部においてプラズマが生成されるのを防ぐことができる。
【0019】
図1に例示するように、本実施形態によるプラズマ生成電極1が有する第1電極10と第2電極20との間に、高周波電源装置50が接続される。高周波電源装置50は、外部から受電する直流電力を高電圧の交流電力に変換してプラズマ生成電極1の第1電極10と第2電極20との間に印加して、電極間に誘電体バリア放電を発生させて大気圧低温プラズマを生成させる。高周波電源装置50の入力はDC12V、出力は1kVp-p、周波数20kHzの交流電力である。ただし、高周波電源装置50の入出力仕様は前記に限定されるものではない。
【0020】
<プラズマ生成電極の作用>
次に、上記した構成を有するプラズマ生成電極1の作用について説明する。
図4に、前記実施形態に係るプラズマ生成電極1に高周波電源装置50を接続してなるプラズマ生成装置100を示している。なお、
図1~
図3も適宜参照する。
【0021】
図1、
図2に示すように、プラズマ生成電極1では、第1電極10を誘電体バリア部30の内部に挿入して、第1電極10の外周と第2電極20の内周側とが、誘電体バリア部30を介して互いに対向するようになっている。この状態で第1電極10と第2電極20との間に高周波電源装置50から交流電力を入力すると、第1電極10の挿入側端部と第2電極20の内周側との間で誘電体バリア放電が発生し、
図2に示すように、第1電極10の挿入側端部において大気圧低温プラズマP(以下単に「プラズマP」と呼ぶことがある。)が生成される。
【0022】
誘電体バリア部30の内部には、外部から供給される空気等の気体が流通する。その気体がプラズマPに接触することにより、プラズマPの周辺では、酸素活性種(Reactive Oxygen Species、ROS)、窒素活性種(Reactive Nitrogen Species、RNS)が生成される。プラズマPが生成されている部位では、プラズマP生成により、わずかに気流が発生している。例えば
図2においては、第1電極10の挿入側端部から図の右方向へ向かう気流が発生する。これにより、生成された活性種Rは誘電体バリア部30の内部を右方向へ流れていき、第1電極10の反対側の端部からは外気が導入される。なお、このようなプラズマPの発生による気流は非常に弱いものなので、プラズマ生成電極1の上流側あるいは下流側に送風機を設けて強制的に誘電体バリア部30の内部に気流を起こすようにしてもよい。
【0023】
図4に示すように、本実施形態に係るプラズマ生成電極1は、それ自体としてインピーダンス可変機構ZVを構成している。高周波電源装置50は、外部からDC入力を受けてAC電力に変換するDA変換部52と、DA変換部52のAC出力をプラズマ生成に必要な高電圧まで昇圧させるための昇圧トランス54とを備える。本実施形態では昇圧トランス54の出力は1kVp-p、20kHzの高周波であり、主として昇圧トランス54の二次側巻線で決まる出力インピーダンスと、プラズマ生成電極1の負荷側インピーダンスとが不整合であると、反射波によってプラズマ生成電極1への伝達効率が低下する。本実施形態では、
図2に関して説明したように、第1電極10は誘電体バリア部30に挿入された状態で誘電体バリア部30の長手方向に摺動させることができる(
図1、
図2の符号Sで示す。)。この摺動により、誘電体バリア部30を介して第1電極10と第2電極20とが向き合う長さ(
図6に符号Lで示す。)を可変させることができる。第1電極10と第2電極20とが対向する部分は、負荷側における容量性リアクタンスを与えるので、第1電極10を摺動させて第2電極20との対向長さを変化させることにより、容量性リアクタンスの変化を通じて、プラズマ生成電極1の負荷側インピーダンスを変化させることができる。すなわち、プラズマ生成電極1の構成要素である第1電極10と第2電極20との相対位置関係を変更するというきわめて簡易な構成をもって、プラズマ生成電極1と組み合わせて使用される高周波電源装置50の出力インピーダンスとプラズマ生成電極1の負荷側インピーダンスとを整合させることができる。なお、具体的なインピーダンス整合の手法としては、第1電極10の第2電極20に対する位置と、プラズマ生成電極1にて得られる誘電体バリア放電電流との関係を測定し、放電電流が最大となる位置に第1電極10を配置することなどが考えられる。
【0024】
<変形例>
次に、上記で説明した本発明の実施形態における変形例を説明する。
図5に、その変形例に係るプラズマ生成電極1の側断面図を示している。
図5は先の実施形態の
図2に対応しており、プラズマ生成電極1として概ね同様の構成を備えている。異なっているのは、第1電極10の構造である。
図6に、本変形例による第1電極10の模式的な斜視図を示している。
図6に示すように、本変形例の第1電極10では、誘電体バリア部30への挿入側端部から長手方向に所定距離離れた位置に、複数の貫通孔12が設けられている。
図4に示すように、この第1電極10に設けた貫通孔12は、誘電体バリア部30を介して第2電極20と対向させた場合に、その貫通孔12の縁部にプラズマPを生成させる。このため、
図4の構成に対してプラズマPの生成領域が増大し、活性種Rの生成量を増大させることができる。第1電極10に設ける貫通孔12の位置、数、形状は任意に決めることができる。
【0025】
図5に示されているように、上記の変形例では、第2電極20を覆うカバーフィルム40が省略されている。そのため、第2電極20の第1電極10と対向する側の端部においてもプラズマPが生成されている。このように、先の実施形態において設けていたカバーフィルム40を省略しても、第2電極20の側、すなわち誘電体バリア部30の外部で生成される活性種Rの量は少量であるので特に問題とならない。
【0026】
以上の実施形態、変形例では、1組のプラズマ生成電極1を用いていた。これに限らず、複数組のプラズマ生成電極1を組み合わせて用いてもよい。例えば、
図7は、3組のプラズマ生成電極1を、断面が略三角形となるように互いに隣接させて配置した構成である。断面形状は、三角形に限らず、用いるプラズマ生成電極1の数に応じて変更してよく、また単純に併置するようにしてもよい。
図8は、3組のプラズマ生成電極1を直列に配置して接続させてなる構成である。
図8の直列構成では、各プラズマ生成電極1の間を、図示を省略する接続管によって連通するように接続している。このように複数のプラズマ生成電極1を組み合わせて用いることで、所望の量の気体をプラズマ処理できるように構成することができる。
【0027】
なお、複数のプラズマ生成電極1の組合せとしては、上記のほかにも、
図9に例示するように、径が異なる2組以上のプラズマ生成電極1を同心状に配置するようにしてもよい。例えば、
図2に例示したプラズマ生成電極1を第1の生成電極として設け、その内部に、その外径が第1の生成電極の内径よりも小さい、
図5に例示したプラズマ生成電極1を第2の生成電極として同心状に設けるようにしてもよい。これにより、前記と同様に、所望の量の気体をプラズマ処理できるように構成することができる。
【0028】
<液体処理装置>
ここまでで説明した本発明の実施形態に係るプラズマ生成電極1によれば、簡易にインピーダンスマッチングを実現して効率よく大気圧低温プラズマを生成し、それによりROS、RNS等の活性種を得ることができる。以下、このプラズマ生成電極1を用いて構成した液体処理装置について説明する。まず、
図10、
図11に、この液体処理装置に用いられるプラズマ生成電極1の斜視図、横断面図をそれぞれ示す。
【0029】
本実施形態によるプラズマ生成電極1は、実質的に
図1~
図3に例示したプラズマ生成電極1と同等の構成を備えている。プラズマ生成電極1は、メッシュ状の導電性材料を中空円筒状に形成してなる第1電極10と、第1電極10を嵌め合い関係で内部に挿入することができる、誘電体材料を中空円筒状に形成してなる誘電体バリア部30と、メッシュ状の導電性材料を誘電体バリア部30の外周に所定の幅で帯状に巻き回してなる第2電極20とを備えている。第1電極10、第2電極20は、例えば平編み銅線のメッシュ材を用いて形成することができる。誘電体バリア部30には、これに限定されるものではないが、内径5~10mm程度のガラスチューブを用いることができる。これらの材料、寸法については特に前記に限定されるものではない。また、第1電極10、第2電極20は、メッシュ材に限らず、薄い銅板、銅箔などを用いて形成してもよい。先の実施形態におけるプラズマ生成電極1と同様に、本実施形態のプラズマ生成電極1においても、第1電極10を誘電体バリア部30内部で摺動させ、第2電極20と誘電体バリア部30を介して対向する長さを調整することで、後述する高周波電源装置の出力インピーダンスとのインピーダンス整合を取ることができる。なお、インピーダンス整合のため、第1電極10の誘電体バリア部30内における位置を決定した後、第1電極10を適宜の接着剤等で誘電体バリア部30内に固定してもよい。
【0030】
図12に、本実施形態の液体処理装置200の構成例を、模式的な斜視図により示している。
図12の液体処理装置200は、鉛直方向に配置されているプラズマ生成電極1の内部を、上方から下方に向けて空気が流れるように構成し、下部に設けた気液混合器70によってプラズマ処理された空気を液体に混入させるようにしている。
【0031】
具体的には、前記した構成を有するプラズマ生成電極1の第1電極10と第2電極20との間に、例えば1kVp-p、20kHzの高周波電力を出力する高周波電源装置50が接続されて、プラズマ生成装置100が構成されている。プラズマ生成電極1の誘電体バリア部30の上端には、周囲空気を吸入してプラズマ生成電極1内に供給するためのブロワ80が設けられている。ブロワ80としては、一例として、基板上に実装された電子部品の冷却等に使用されるマイクロファンを好適に用いることができる。
【0032】
プラズマ生成電極1の下部は、誘電体バリア部30と接続チューブ60によって、気液混合器70に接続される。気液混合器70としては、公知のアスピレーター、エゼクタ等の吸気器具を採用することができる。
図12の例では、気液混合器70の内部には、図の左方から右方へ向けて水が流されており、水流による減圧作用によって、上方からプラズマ処理された空気が水に取り込まれるようになっている。
【0033】
図12に例示した液体処理装置200によれば、ブロワ80によって上方から取り込まれた周囲空気は、プラズマ生成電極1を通過する際にプラズマによって生成されたROS、RNS等の活性種に接触する。プラズマ生成電極1においてプラズマ処理された空気は、接続チューブ60を通じて気液混合器70に流入し、水流中に混入される。このようにして、液体処理装置200により、プラズマ処理された空気で水を処理することができる。なお、気液混合器70に流通させる液体は水以外の液体であってもよい。また、プラズマ生成電極1においてプラズマ処理される気体は空気以外の気体であってもよい。その場合、ブロワ80は該当する気体の供給源に接続される。
【0034】
以上説明した実施形態によれば、以下のような効果を奏する。
【0035】
本発明の一実施形態に係るプラズマ生成電極1は、導電性材料により中空筒状に形成されてなる第1電極10と、誘電体材料により中空筒状に形成されてなる誘電体バリア部30と、前記誘電体バリア部の長手方向の一部に、前記誘電体バリア部の外周に沿って周方向に設けられている、導電性材料からなる第2電極20と、を備え、前記第1電極10が、前記誘電体バリア部30の内部に、前記誘電体バリア部30の長手方向に摺動可能に配置されており、前記第1電極10を摺動させることにより、前記第1電極10と前記第2電極20とが前記誘電体バリア部30を介して対向している長手方向の長さが調整可能である。
【0036】
このようにすれば、プラズマ生成電極1のインピーダンスを第1電極10と第2電極20との相対位置によって変更し、電源出力側インピーダンスと整合させて、プラズマ生成効率を可及的に高めることができる。
【0037】
プラズマ生成電極1において、第2電極20を覆うように絶縁性材料からなるカバーフィルム40を形成してもよい。
【0038】
このようにすれば、誘電体バリア部30の外周側で第2電極20によりプラズマが生成するのを防ぐことができる。
【0039】
第1電極10の誘電体バリア部30への挿入側端部から所定の距離離れた部位に、第1電極10の周方向に互いに間隔を隔てて複数の貫通孔12を形成してもよい。
【0040】
このようにすれば、貫通孔12の内周縁付近にプラズマPを生成させ、プラズマ処理量を増大させることができる。
【0041】
誘電体バリア部30と、第1電極10と、第2電極20とからなる組を、誘電体バリア部30の径方向に隣接させて複数備えているプラズマ生成電極1としてもよい。あるいは、誘電体バリア部30と、第1電極10と、第2電極20とからなる組を、誘電体バリア部30の長手方向に隣接させて複数備えているプラズマ生成電極1としてもよい。あるいは、誘電体バリア部30と、第1電極10と、第2電極20とからなる組を複数備え、一の組の前記誘電体バリア部30の内周側に、少なくとも一の他の組が同心状に配置されているプラズマ生成電極1としてもよい。
【0042】
このようにすれば、必要に応じてプラズマ処理量を増大させることができる。
【0043】
本発明の実施形態に係るプラズマ生成装置100では、前記いずれかのプラズマ生成電極1と、プラズマ生成電極1の第1電極10と第2電極20との間に接続されている高周波電源装置50と、を備え、前記高周波電源装置50の出力インピーダンスと、前記プラズマ生成電極1の入力インピーダンスとが、前記第1電極10を前記誘電体バリア部30の長手方向に摺動させて、前記第1電極10と前記第2電極20との誘電体バリア部30を介した対向長さを調整することで整合される。
【0044】
このようなプラズマ生成装置100では、高周波電源装置50の出力インピーダンス特性に整合するように、プラズマ生成装置100のプラズマ生成電極1の負荷側インピーダンスを容易に整合させることができる。
【0045】
本発明の実施形態に係る液体処理装置は、前記のプラズマ生成装置100と、プラズマ生成装置100が備える誘電体バリア部30の一端部に流体連通可能に接続された気液混合器70とを少なくとも備えている。
【0046】
このような液体処理装置200によれば、高効率で生成されたプラズマによって処理された気体を気液混合器70において処理対象の水に混入させることができ、効率よくプラズマ処理水を生成することができる。
【0047】
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明したが、これらの実施形態は、例示に過ぎず、本発明の技術的範囲を限定するものではない。本発明はその他の様々な実施形態を取ることが可能であり、上記実施形態と変形例の各構成を組み合わせることも可能である。更に、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、省略や置換等種々の変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、本明細書等に記載された発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0048】
1 プラズマ生成電極
10 第1電極
12 貫通孔
20 第2電極
30 誘電体バリア部
40 カバーフィルム
50 高周波電源装置
60 接続チューブ
70 気液混合器
80 ブロワ
52 DA変換部
54 昇圧トランス
100 プラズマ生成装置
200 液体処理装置
P プラズマ
R 活性種
ZV インピーダンス可変機構