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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155411
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】固体電解コンデンサ
(51)【国際特許分類】
   H01G 9/012 20060101AFI20241024BHJP
   H01G 9/048 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
H01G9/012 305
H01G9/012 301
H01G9/012 303
H01G9/048 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023070104
(22)【出願日】2023-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】森田 高章
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 祐介
(72)【発明者】
【氏名】井上 鉄司
(72)【発明者】
【氏名】小林 英之
(72)【発明者】
【氏名】及川 勝貴
(57)【要約】
【課題】 温度等の環境変化下においても、高い信頼性で動作することが可能な固体電解コンデンサが期待されている。
【解決手段】 固体電解コンデンサは、積層された複数の固体電解コンデンサ要素を含む積層体100と、積層体100の第1側面S1に設けられた第1側面電極E1と、積層体100の第2側面S2に設けられた第2側面電極E2と、積層体100上に設けられた保護絶縁体16とを備えている。個々の固体電解コンデンサ要素は、第1側面電極E1に電気的に接続された陽極電極層8と、陽極電極層8上に設けられた第1誘電体層と、第2側面電極E2に電気的に接続された第1陰極電極層14と、第1誘電体層と第1陰極電極層14との間に介在する固体電解質層12とを備えている。第1側面電極E1の保護絶縁体16側の部分は、第1側面S1から外側に離れるように屈曲した第1屈曲部E1Bを備え、第1屈曲部E1Bの下面は、露出している。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層された複数の固体電解コンデンサ要素を含む積層体と、
前記積層体の第1側面に設けられた第1側面電極と、
前記積層体の第2側面に設けられた第2側面電極と、
前記積層体上に設けられた保護絶縁体と、
を備え、
個々の前記固体電解コンデンサ要素は、
前記第1側面電極に電気的に接続された陽極電極層と、
前記陽極電極層上に設けられた誘電体層と、
前記第2側面電極に電気的に接続された陰極電極層と、
前記誘電体層と前記陰極電極層との間に介在する固体電解質層と、
を備え、
前記第1側面電極の前記保護絶縁体側の部分は、前記第1側面から外側に離れるように屈曲した第1屈曲部を備え、前記第1屈曲部の下面は、露出している、
固体電解コンデンサ。
【請求項2】
前記積層体が、その上に設けられた支持基板と、
前記支持基板の下面に設けられ、前記第1側面電極に電気的に接続された陽極端子と、
前記支持基板の下面に設けられ、前記第2側面電極に電気的に接続された陰極端子と、
を備える、
請求項1に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項3】
前記第1側面に垂直な方向の前記第1屈曲部の寸法L1は、0.01mm以上1mm以下である、
請求項1又は請求項2に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項4】
隣接する前記固体電解コンデンサ要素の間に介在する絶縁シートを更に備え、
前記絶縁シートは樹脂を含み、
前記第1側面電極は、前記陽極電極層の側面及び前記絶縁シートの側面に接着している、
請求項1又は請求項2に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項5】
前記第2側面電極の前記保護絶縁体側の部分は、前記第2側面から外側に離れるように屈曲した第2屈曲部を備え、前記第2屈曲部の下面は、露出している、
請求項1又は請求項2に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項6】
積層された複数の固体電解コンデンサ要素を含む積層体と、
前記積層体の第1側面に設けられた第1側面電極と、
前記積層体の第2側面に設けられた第2側面電極と、
前記積層体上に設けられた保護絶縁体と、
を備え、
個々の前記固体電解コンデンサ要素は、前記第1側面電極に電気的に接続された陽極電極層と、前記陽極電極層上に設けられた誘電体層と、前記第2側面電極に電気的に接続された陰極電極層と、前記誘電体層と前記陰極電極層との間に介在する固体電解質層と、を備え、
前記第2側面電極の前記保護絶縁体側の部分は、前記第2側面から外側に離れるように屈曲した第2屈曲部を備え、前記第2屈曲部の下面は、露出している、
固体電解コンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、固体電解コンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1~特許文献8は、固体電解コンデンサ及びその製造方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6724881号公報
【特許文献2】特許第7020504号公報
【特許文献3】特許第6686975号公報
【特許文献4】特許第6776731号公報
【特許文献5】特開2022-68665号公報
【特許文献6】特開2020-194825号公報
【特許文献7】特許第7001891号公報
【特許文献8】特開2012-193420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
基板上に固体電解コンデンサを搭載する場合には、半田等のフィレット(SolderFillet)が用いられる。温度等の環境が変化し、固体電解コンデンサが熱膨張すると、その側面電極に接触するフィレットに応力がかかる。応力がかかると、フィレット内にクラックが発生する可能性がある。この場合、固体電解コンデンサの動作の信頼性が低下する。温度等の環境変化下においても、高い信頼性で動作することが可能な固体電解コンデンサが期待されている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示に係る第1の固体電解コンデンサは、積層された複数の固体電解コンデンサ要素を含む積層体と、積層体の第1側面に設けられた第1側面電極と、積層体の第2側面に設けられた第2側面電極と、積層体上に設けられた保護絶縁体とを備えている。個々の固体電解コンデンサ要素は、第1側面電極に電気的に接続された陽極電極層と、陽極電極層上に設けられた誘電体層と、第2側面電極に電気的に接続された陰極電極層と、誘電体層と陰極電極層との間に介在する固体電解質層とを備えている。第1側面電極の保護絶縁体側の部分は、第1側面から外側に離れるように屈曲した第1屈曲部を備え、第1屈曲部の下面は、露出している。
【0006】
この構造では、第1屈曲部の下面に接触する位置に、フィレットが形成されやすくなる。この場合、第1屈曲部の下面に接触する位置の部分のフィレットの寸法が大きくなり、体積が増加する。したがって、温度等の環境変化下において、フィレット自身の体積増加に伴い、応力に対する耐性も高くなる。したがって、フィレット内にクラックが発生しにくく、固体電解コンデンサは高い信頼性で動作可能となる。また、フィレットと側面電極との接続界面が複雑化することで、発生したクラックの進行も妨げる効果もある。
【0007】
本開示に係る第2の固体電解コンデンサにおいて、積層体が、その上に設けられた支持基板と、支持基板の下面に設けられ、第1側面電極に電気的に接続された陽極端子と、支持基板の下面に設けられ、第2側面電極に電気的に接続された陰極端子とを備える。
【0008】
支持基板の下面に設けられた陽極端子の直下に、第1ランド電極を配置し、陰極端子の直下に、第2ランド電極を配置すれば、第1側面電極及び第2側面電極を、第1ランド電極及び第2ランド電極に、電気的に接続することができる。
【0009】
本開示に係る第3の固体電解コンデンサにおいて、前記第1側面に垂直な方向の前記第1屈曲部の寸法L1は、0.01mm以上1mm以下である。第1屈曲部の寸法L1が上記の下限値以上の寸法を有する場合、フィレットは、第1屈曲部の下面に接触しやすくなる。また、第1屈曲部の寸法L1が上記の上限値を超えても、フィレットの第1屈曲部の下面への接触領域は拡大しないので、材料コスト低減の観点から、寸法L1は、上限値以下であることが好ましい。
【0010】
本開示に係る第4の固体電解コンデンサは、隣接する固体電解コンデンサ要素の間に介在する絶縁シートを更に備え、絶縁シートは樹脂を含み、第1側面電極は、陽極電極層の側面及び絶縁シートの側面に接着している。
【0011】
絶縁シートは、塗布された絶縁樹脂よりも、厚みの均一性が高く、均質性の高い積層体に適している。
【0012】
本開示に係る第5の固体電解コンデンサにおいて、第2側面電極の保護絶縁体側の部分は、前記第2側面から外側に離れるように屈曲した第2屈曲部を備え、第2屈曲部の下面は、露出している。
【0013】
本開示に係る第6の固体電解コンデンサは、積層された複数の固体電解コンデンサ要素を含む積層体と、積層体の第1側面に設けられた第1側面電極と、積層体の第2側面に設けられた第2側面電極と、積層体上に設けられた保護絶縁体と、を備え、個々の固体電解コンデンサ要素は、第1側面電極に電気的に接続された陽極電極層と、陽極電極層上に設けられた誘電体層と、第2側面電極に電気的に接続された陰極電極層と、誘電体層と陰極電極層との間に介在する固体電解質層と、を備え、第2側面電極の保護絶縁体側の部分は、第2側面から外側に離れるように屈曲した第2屈曲部を備え、第2屈曲部の下面は、露出している。
【0014】
第2屈曲部の作用は、第1屈曲部の作用と同様であり、フィレット自身の体積増加に伴い、温度等の環境変化下において、応力に対する耐性が高くなる。したがって、フィレット内にクラックが発生しにくく、固体電解コンデンサは高い信頼性で動作可能である。
【発明の効果】
【0015】
本開示の固体電解コンデンサは、温度等の環境変化下においても、高い信頼性で動作することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、固体電解コンデンサの基本構造を示す図である。
図2図2は、固体電解コンデンサの縦断面図である。
図3図3は、固体電解質層の近傍の構造を示す図である。
図4図4は、固体電解コンデンサの製造方法を説明するための図である。
図5図5は、固体電解コンデンサの製造方法を説明するための図である。
図6図6は、製造中の固体電解コンデンサシートの平面図である。
図7図7は、固体電解コンデンサの製造方法を説明するための図である。
図8図8は、固体電解コンデンサの製造方法を説明するための図である。
図9図9は、固体電解コンデンサの製造方法を説明するための図である。
図10図10は、固体電解コンデンサの製造方法を説明するための図である。
図11図11は、固体電解コンデンサの製造方法を説明するための図である。
図12図12は、固体電解コンデンサの製造方法を説明するための図である。
図13図13は、固体電解コンデンサの製造方法を説明するための図である。
図14図14は、固体電解コンデンサの製造方法を説明するための図である。
図15図15は、固体電解コンデンサの製造方法を説明するための図である。
図16図16は、固体電解コンデンサの製造方法を説明するための図である。
図17図17は、固体電解コンデンサの製造方法を説明するための図である。
図18図18は、固体電解コンデンサの製造方法を説明するための図である。
図19図19図19(A)及び図19(B))は、固体電解コンデンサの縦断面図である。
図20図20は、固体電解コンデンサの斜視図である。
図21図21は、基板上に搭載された固体電解コンデンサを示す図である。
図22図22は、固体電解コンデンサの製造装置の一例を示す図である。
図23図23は、陽極電極層の側方先端部の周辺構造を示す図である。
図24図24は、電子顕微鏡により観察される陽極電極層の側方先端部の周辺構造を示す図である。
図25図25は、エッチング時における陽極電極層の側方先端部の周辺構造を示す図である。
図26図26は、陽極電極層の側方先端部の周辺構造を示す図である。
図27図27は、固体電解コンデンサの縦断面図である。
図28図28は、陽極端子及び陰極端子を含む領域近傍の縦断面図である。
図29図29は、陽極端子及び陰極端子を含む領域近傍の縦断面図である。
図30図30は、図29に示した構造の製造工程を説明する図である。
図31図31図31(A)及び図31(B))は、固体電解コンデンサの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して種々の例示的実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を附することとし、重複する説明は省略する。
【0018】
図1は、固体電解コンデンサの基本構造を示す図である。
【0019】
固体電解コンデンサは、支持基板7と、支持基板7上に設けられた積層体100と、積層体100上に設けられた保護絶縁体16とを備えている。支持基板7の下面には、陽極端子1と、陰極端子2とが設けられている。積層体100の第1側面S1には、第1側面電極E1が設けられている。積層体100の第2側面S2には、第2側面電極E2が設けられている。
【0020】
積層体100は、積層された複数の固体電解コンデンサ要素を備えている。積層体100に含まれる固体電解コンデンサ要素の数は、2個以上であればよい。説明の簡略化のため、同図では、2個の固体電解コンデンサ要素が示される。すなわち、積層体100は、第1固体電解コンデンサ要素CE1と、第2固体電解コンデンサ要素CE2とを備えている。
【0021】
三次元直交座標系を設定する。積層体100における固体電解コンデンサ要素の積層方向をZ軸方向とする。X軸はZ軸に対して垂直である。Y軸はZ軸に対して垂直であり、且つ、X軸に対して垂直である。第1側面S1は、積層体100の一方のYZ面であり、第2側面S2は、積層体100の他方のYZ面である。
【0022】
1つの固体電解コンデンサ要素は、陽極端子1と陰極端子2との間において、並列接続された第1コンデンサC1と、第2コンデンサC2とを備えている。
【0023】
第1コンデンサC1は、陽極電極層8と、陽極電極層8の上面側に設けられた第1陰極電極層14を備えており、これらの電極層間に第1誘電体層及び第1固体電解質層12が介在する。この第1誘電体層は、陽極電極層8の上側の界面近傍領域91の周辺から粗化層内部の凹凸形状に沿って形成される誘電体層9(図3参照)である。第2コンデンサC2は、陽極電極層8と、陽極電極層8の下面側に設けられた第2陰極電極層14Bを備えており、これらの電極層間に第2誘電体層及び第2固体電解質層12Bが介在する。この第2誘電体層は、陽極電極層8下側の界面近傍領域91Bの周辺から粗化層内部の凹凸形状に沿って形成される誘電体層である。第2誘電体層は、上部の誘電体層9と同等の構造を有する。なお、第1コンデンサC1及び第2コンデンサC2における陽極電極層8は、共通電極層である。1つの固体電解コンデンサ要素は、第1コンデンサC1のみを備えてもよい。1つの固体電解コンデンサ要素は、第2コンデンサC2のみを備えてもよい。
【0024】
各固体電解コンデンサ要素の陽極電極層8は、第1側面電極E1に電気的に接続されている。第1側面電極E1は、陽極端子1に電気的に接続されている。各固体電解コンデンサ要素における一対の第1陰極電極層14及び第2陰極電極層14Bは、第2側面電極E2に電気的に接続されている。第2側面電極E2は、陰極端子2に電気的に接続されている。陽極端子1と陰極端子2との間に電圧を印加すると、第1側面電極E1と第2側面電極E2との間に電圧が印加される。第1側面電極E1と第2側面電極E2との間に電圧が印加されると、各固体電解コンデンサ要素の第1コンデンサC1及び第2コンデンサC2が充電される。
【0025】
図2は、実施形態に係る固体電解コンデンサの縦断面図である。
【0026】
固体電解コンデンサは、陽極端子1及び陰極端子2が設けられた支持基板7と、支持基板7上に積層された複数の固体電解コンデンサ要素を含む積層体100と、積層体100上に設けられた保護絶縁体16とを備えている。保護絶縁体16は、積層体100の上部表面のみならず、積層体100のY軸の両端に位置する両側面(XZ面)を被覆している。保護絶縁体16は、X軸の一方端に位置するYZ面の一部分おいて、絶縁部162として積層体100を被覆している。
【0027】
換言すれば、固体電解コンデンサは、積層体100が、その上に設けられた支持基板7と、支持基板7の下面に設けられ、第1側面電極E1に電気的に接続された陽極端子1と、支持基板7の下面に設けられ、第2側面電極E2に電気的に接続された陰極端子2とを備えている。第1ランド電極と第2ランド電極を備えた配線基板上に、固体電解コンデンサを配置する場合、陽極端子1及び陰極端子2が、これらのランド電極への接続端子となる。すなわち、支持基板7の下面に設けられた陽極端子1の直下に、第1ランド電極を配置し、陰極端子2の直下に、第2ランド電極を配置する。この場合、第1側面電極E1及び第2側面電極E2を、第1ランド電極及び第2ランド電極に、電気的に接続することができる。なお、陽極端子1及び陰極端子2を省略しても、第1及び第2側面電極を、配線基板上のランド電極に接続することは可能である。
【0028】
支持基板7は、絶縁材料からなる。絶縁材料として、無機絶縁材料及び有機絶縁材料が知られている。無機絶縁材料としては、シリコン酸化物(例:SiO)、シリコン窒化物(例:SiN)、アルミニウム酸化物(例:Al)、マグネシウム酸化物(例:MgO)などが知られ、これらの材料を含む絶縁材料基板として、ガラス基板や、アルミナ及びガラス材料を含むLTCC(低温同時焼成セラミックス)基板が知られている。有機絶縁材料として、ポリイミド、エポキシ樹脂などの熱硬化樹脂が知られている。ガラス繊維にエポキシ樹脂を浸みこませて硬化させたFR4(Flame Retardant type 4)などのガラスエポキシ基板を用いることもできる。支持基板7に好適な絶縁材料として、本例ではガラスエポキシ基板を用いる。支持基板7の下面には、陽極端子1及び陰極端子2が設けられているが、支持基板7の上面上にダミーの電極層を設けてよい。ダミーの電極層は、支持基板7の反りを緩和するものであり、陽極端子1及び陰極端子2の形状と同一であってもよいし、支持基板7の上面の全体に設けられていてもよい。
【0029】
保護絶縁体16は、絶縁材料からなる。絶縁材料としては、無機絶縁材料及び有機絶縁材料が知られている。無機絶縁材料としては、上記のものが知られているが、本例では、有機絶縁材料を用いる。有機絶縁材料として、ポリイミド、エポキシ樹脂などの熱硬化樹脂が知られている。保護絶縁体16に好適な絶縁材料として、本例ではフィラーを含有したエポキシ樹脂を用いる。製造時における熱硬化前の保護絶縁体16の形態は、粒状、液状、顆粒状、又は、フィルム状とすることができる。
【0030】
積層体100は、複数の固体電解コンデンサ要素を積層してなる。個々の固体電解コンデンサ要素(第1固体電解コンデンサ要素CE1,第2固体電解コンデンサ要素CE2)は、図1に示した第1コンデンサC1及び第2コンデンサC2を備えている。第1固体電解コンデンサ要素CE1の構造は、第2固体電解コンデンサ要素CE2の構造と同一である。第1コンデンサC1の構造は、上下が反転している点を除いて、第2コンデンサC2の構造と同一である。
【0031】
第1コンデンサC1は、陽極電極層8の上側の表面に設けられた粗化層を備え、粗化層の上側の表面上に第1誘電体層が設けられ、第1誘電体層の上側の表面上に第1固体電解質層12が設けられ、第1固体電解質層12の上側の表面上に第1陰極電極層14が設けられている。第1誘電体層及び固体電解質層12は、陽極電極層8と、第1陰極電極層14によって、挟まれている。詳細には、第1コンデンサC1は、陽極電極層8と、陽極電極層8の表面に設けられた第1誘電体層と、第1誘電体層を被覆する第1固体電解質層12と、第1誘電体層と共に第1固体電解質層12を挟む第1陰極電極層14と、第1陰極電極層14を被覆する第1保護層15とを備えている。第1保護層15は、省略することができる。なお、第1固体電解質層12は、導電性高分子を含んだ粗化層からなる。また、第1固体電解質層12の粗化層上には、導電性高分子層12rが形成されている。導電性高分子層12rは、固体電解質層としても機能している。
【0032】
粗化層は、粗面化処理されたアルミニウムからなり、多数の空孔を有している。粗面化処理は、化成処理及び陽極酸化により行うことができる。粗面化処理は、化成処理のみにより行うこともできる。粗面化処理は、陽極酸化のみにより行うこともできる。化成処理は、化成溶液(例:アジピン酸アンモニウム水溶液)にアルミニウム箔を浸漬させることにより行うことができる。陽極酸化は、電解液中に浸漬したアルミニウム箔に電圧を印加することにより行うことができる。陽極酸化を用いる場合、アルミニウム箔の表面側に多孔質が形成され、酸化アルミニウムからなる誘電体層が形成される。また、粗面化処理は、エッチングにより行うこともできる。導電性高分子層12r上には、第1導電層13を介して、第1陰極電極層14が形成されている。第1導電層13は、単層であってもよく、2層以上であってもよい。
【0033】
陽極電極層8は、弁金属(Valve metal)からなるが、電解コンデンサに一般に用いられるものであれば、その材料は特に制限されない。弁金属或いは弁作用金属として、アルミニウム(Al)、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)、チタン(Ti)、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)、亜鉛(Zn)、タングステン(W)、ビスマス(Bi)、及び、アンチモン(Sb)等が知られている。これらの中ではアルミニウム又はタンタルが比較的好ましく用いられる。本例の陽極電極層8は、アルミニウムであるとする。陽極電極層8の厚さは、例えば、1μm~500μmである。陽極電極層8は、これらの金属群から選択される少なくとも1種の金属を含む合金であってもよい。陽極電極層8を構成する金属は、陰極電極層を構成する金属とは、酸やアルカリに対する溶解性が異なる金属であることが好ましく、特定の液で選択エッチング可能な金属が好ましい。
【0034】
第1陰極電極層14は、本例では、銅(Cu)からなる。第1陰極電極層14は、銅(Cu)の他、ニッケル(Ni)、銀(Ag)、錫(Sn)など、その他の金属であってもよい。導電率やコストなどの観点からは、銅単独層、及び/又は、銅とその他の金属(NiやCr,Ni-Crなど)を含む複合層であることが望ましい。第1陰極電極層14は、これらの金属群から選択される少なくとも1種の金属を含む合金であってもよい。第1陰極電極層14の下地層が、NiやCr等を含む場合は、接着性を向上させることができる。
【0035】
第1固体電解質層12及び導電性高分子層12rに含まれる導電性高分子(化合物)は、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリフラン及びこれらの誘導体からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)、ポリピロール(ppy)が好ましく用いられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。これらの材料には、適当なドーパントを添加し、優れた導電性を有することができる。
【0036】
第1導電層13は、例えば、接着性導電層(例:カーボンペースト)からなる。接着性導電層は、導電体及び接着剤を含む。接着性導電層の導電体は、炭素を含む材料(例:グラファイト)、又は、金属である。接着性導電層の接着剤は、フェノール樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、若しくは、ポリイミド樹脂などの樹脂、又は、パラフィンオイル等の炭化水素化合物である。カーボンペーストは、グラファイトの粉末と接着剤の混合物であり、第1導電層13に用いることができる。また、第1導電層13は、印刷法で形成することができる。
【0037】
なお、上述の第1陰極電極層14を構成するこの金属導電層として、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、銀(Ag)又は、錫(Sn)などを用いることができるが、これらの金属導電層は、めっき法を用いて形成しためっき層とすることができる。これらの金属導電層は、スパッタなど任意の方法で形成することも可能である。無電解めっき法により、めっき層を形成する場合には、その下の接着性導電層は、触媒金属を含むことができる。触媒金属は、無電解めっきに対する触媒活性を有する貴金属であり、パラジウム(パラジウム系材料)、金、白金、ロジウムなどを用いることができ、パラジウムが特に好ましく用いられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。無電解めっきやスパッタで形成した金属膜上に、電解めっき法にて、追加の金属膜形成(厚膜化)をしてもよい。
【0038】
一般的に、銅めっき処理には、硫酸銅浴、ピロリン酸銅浴、シアン化銅浴、ホウフッ化銅浴等を用いることができる。ニッケルめっき処理には、ワット浴(硫酸ニッケル)、スルファミン酸浴(スルファミン酸ニッケル)、全塩化物浴(塩化ニッケル)等を用いることができる。錫めっき処理には、硫酸浴、スルホン酸浴等を用いることができる。各種のめっき方法が知られており、各めっき層の形成に適用することができる。
【0039】
第1導電層13は、直下の固体電解質層12と、上部の第1陰極電極層14とを電気的に接続する機能を有する。第1導電層13は、直下の固体電解質層12を保護する機能を有する。この導電層は、保護機能の観点からは、保護層でもある。なお、第1導電層13は、耐熱性が高く、耐湿性が高く(吸水性及び透水性が低く)、機械的強度が高い樹脂に、導電体を配合した樹脂層を含むことが好ましい。第1導電層13の好適な厚みは、1μm~50μmであるが、3μm~10μmとすることもできる。なお、第1導電層13を省略しても、固体電解質層12と第1陰極電極層14とを電気的に接続することは可能であるが、第1導電層13がある方が好ましい。
【0040】
第1保護層15は、樹脂を含むレジスト材料からなり、好適には、樹脂及び無機材料を含む材料からなる。無機材料として、シリカ(珪素酸化物)などのフィラーを用いることができる。樹脂材料としては、ポリイミド、又は、エポキシ樹脂などの熱硬化樹脂を用いることができる。本例では、エポキシ樹脂にシリカを添加した第1保護層15を用いる。レジスト材料は、製造時には、適当な溶剤内に溶けた液状材料とすることができる。なお、第1保護層15は、省略することができる。
【0041】
第2コンデンサC2は、陽極電極層8の下側の表面に設けられた粗化層を備え、粗化層の下側の表面上に第2誘電体層が設けられ、第2誘電体層の下側の表面上に第2固体電解質層12Bが設けられ、第2固体電解質層12Bの下側の表面上に第2陰極電極層14Bが設けられている。第2誘電体層及び第2固体電解質層12Bは、陽極電極層8と、第2陰極電極層14Bによって、挟まれている。詳細には、第2コンデンサC2は、陽極電極層8と、陽極電極層8の表面に設けられた第2誘電体層と、第2誘電体層を被覆する第2固体電解質層12Bと、第2誘電体層と共に第2固体電解質層12Bを挟む第2陰極電極層14Bと、第2陰極電極層14Bを被覆する第2保護層15Bとを備えている。なお、第2固体電解質層12Bは、導電性高分子を含んだ粗化層からなる。また、第2固体電解質層12Bの粗化層下には、導電性高分子層12Brが形成されている。導電性高分子層12r下には、第2導電層13Bを介して、第2陰極電極層14Bが形成されている。
【0042】
第2固体電解質層12Bの材料は、第1固体電解質層12の材料と同一である。導電性高分子層12Brの材料は、導電性高分子層12rの材料と同一である。第2導電層13Bの材料は、導電層13の材料と同一である。第2陰極電極層14Bの材料は、第1陰極電極層14の材料と同一である。第2保護層15Bの材料は、第1保護層15の材料と同一である。
【0043】
陽極電極層8は、積層体100の第1側面S1に設けられた第1側面電極E1に物理的及び電気的に接続されている。陽極電極層8は、第1側面電極E1を介して、陽極端子1に電気的に接続されている。第1陰極電極層14及び第2陰極電極層14Bは、積層体100の第2側面S2に設けられた第2側面電極E2に物理的及び電気的に接続されている。第1陰極電極層14及び第2陰極電極層14Bは、第2側面電極E2を介して、陰極端子2に電気的に接続されている。
【0044】
第1側面電極E1の形状と、第2側面電極E2の形状は、同一であり、積層体100のX軸方向の中心位置を通るXZ面に対して、面対称である。
【0045】
第1側面電極E1の保護絶縁体16側の部分は、第1側面S1から外側に離れるように屈曲した第1屈曲部E1Bを備え、第1屈曲部E1Bの下面は、露出している。第1屈曲部E1Bは、Y軸を中心に折れ曲がっているので、Z軸を中心とした回転変形量が少なくなる。更に、第1屈曲部E1Bの下面に接触する位置に、フィレットが形成されやすくなる。この場合、第1屈曲部E1Bの下面に接触する位置の部分のフィレットのX軸方向の寸法が大きくなり、体積が増加する。したがって、温度等の環境変化下において、第1屈曲部E1Bの変形量が少なく、また、フィレット自身の体積増加に伴い、応力に対する耐性も高くなる。したがって、フィレット内にクラックが発生しにくく、固体電解コンデンサは高い信頼性で動作可能である。また、フィレットと側面電極との接続界面が複雑化することで、発生したクラックの進行も妨げる効果もある。
【0046】
第2側面電極E2の保護絶縁体16側の部分は、第2側面S2から外側に離れるように屈曲した第2屈曲部E2Bを備え、第2屈曲部E2Bの下面は、露出している。第2屈曲部E2Bは、Y軸を中心に折れ曲がっているので、Z軸を中心とした回転変形量が少なくなる。更に、第2屈曲部E2Bの下面に接触する位置に、フィレットが形成されやすくなる。この場合、第2屈曲部E2Bの下面に接触する位置の部分のフィレットのX軸方向の寸法が大きくなり、体積が増加する。したがって、温度等の環境変化下において、第2屈曲部E2Bの変形量が少なく、また、フィレット自身の体積増加に伴い、応力に対する耐性も高くなる。したがって、フィレット内にクラックが発生しにくく、固体電解コンデンサは高い信頼性で動作可能である。また、フィレットと側面電極との接続界面が複雑化することで、発生したクラックの進行も妨げる効果もある。
【0047】
第1側面S1に垂直な方向の第1屈曲部E1Bの寸法L1は、保護絶縁体16の下面に沿って0.01mm以上1mm以下であることが好ましい。寸法L1は、0.03mm以上0.3mm以下であることが更に好ましい。第1屈曲部E1Bの寸法L1が上記の下限値以上の寸法を有する場合、フィレットは、第1屈曲部E1Bの下面に接触しやすくなる。また、発生した微小クラックのZ方向への進行を抑制し、部品接続の完全な破断を防ぎやすい。また、第1屈曲部E1Bの寸法L1が上記の上限値を超えても、フィレットの第1屈曲部E1Bの下面への接触領域の拡大効果の増加率は小さくなる上、部品サイズの過度な増加の抑制と材料コスト低減の観点から、寸法L1は上限値以下であることが好ましい。
【0048】
同様に、第2側面S2に垂直な方向の第2屈曲部E2Bの寸法L2は、保護絶縁体16の下面に沿って0.01mm以上1mm以下であることが好ましい。寸法L2は、0.03mm以上0.3mm以下であることが更に好ましい。第。第2屈曲部E2Bの寸法L2が上記の下限値以上の寸法を有する場合、フィレットは、第2屈曲部E2Bの下面に接触しやすくなる。また、発生した微小クラックのZ方向への進行を抑制し、部品接続の完全な破断を防ぎやすい。また、第2屈曲部E2Bの寸法L2が上記の上限値を超えても、フィレットの第2屈曲部E2Bの下面への接触領域の拡大効果の増加率は小さくなる上、部品サイズの過度な増加の抑制と材料コスト低減の観点から、寸法L2は上限値以下であることが好ましい。なお、寸法L1=寸法L2として、試作品を製造した。試作品の寸法は、L1=0.1mm、L1=0.25mm、L1=0.45mmである。いずれもフィレットと良好な接触を示した。この観点から、例示的には、L1=L2=試作品の寸法±ΔL(ΔL=L1×50%)に設定することも可能である。
【0049】
同図において、X軸の正方向を右側とし、負方向を左側とする。第1側面電極E1と第1固体電解質層12との間には、左側の第1絶縁領域10が介在している。左側の第1絶縁領域10と陽極電極層8との界面近傍の周辺には誘電体層が形成されており、誘電体層よりも陽極電極層8に近い領域は、導電領域となっている。第1側面電極E1と第2固体電解質層12Bとの間には、左側の第2絶縁領域10Bが介在している。左側の第2絶縁領域10Bと陽極電極層8との界面近傍の周辺には、誘電体層が形成されており、誘電体層よりも陽極電極層8に近い領域は、導電領域となっている。第1絶縁領域10は、陽極電極層8上部の粗化層の空隙内に絶縁性の樹脂が充填され形成されている。同様に、第2絶縁領域10Bは、陽極電極層8下部の粗化層の空隙内に絶縁性の樹脂が充填され形成されている。
【0050】
第2側面電極E2と第1固体電解質層12との間には、右側の第1絶縁領域10及び絶縁部162が介在している。右側の第1絶縁領域10と陽極電極層8との界面近傍の周辺には、誘電体層が形成されており、誘電体層よりも陽極電極層8に近い領域は、導電領域となっている。第2側面電極E2と第2固体電解質層12Bとの間には、右側の第2絶縁領域10Bが介在している。右側の第2絶縁領域10Bと陽極電極層8との界面近傍の周辺には、誘電体層が形成されており、誘電体層よりも陽極電極層8に近い領域は、導電領域となっている。
【0051】
絶縁部162は、右側の第1絶縁領域10と第2側面電極E2との間に介在している。絶縁部162は、右側の第2絶縁領域10Bと第2側面電極E2との間に介在している。絶縁部162は、陽極電極層8の右端部と第2側面電極E2との間に介在している。絶縁部162の材料は、第1絶縁領域10及び第2絶縁領域10Bの材料とは異なる。第1絶縁領域10と第2絶縁領域10Bの材料は同一である。絶縁部162の材料は、保護絶縁体16の材料と同一材料を含み、好適には、樹脂(例:エポキシ樹脂)内にフィラーを含む。なお、絶縁部162は、上層、中層、下層の三層構造を有している。絶縁部162は、少なくとも上層及び下層において、第1絶縁領域10、第2絶縁領域10Bにおいて含まれる構成材料(材料Aとする)を含んでいる。絶縁部162の中層は、主に保護絶縁体16の構成材料(材料Bとする)を含んでいる。材料Aに含まれる樹脂と、材料Bに含まれる樹脂は、同一であってもよく、異なる材料であってもよい。
【0052】
材料Aは、樹脂を含むレジスト材料からなり、必要に応じて、シリカなどの無機材料のフィラーを含むことができる。この樹脂材料としては、ポリイミド、又は、エポキシ樹脂などの熱硬化樹脂を用いることができる。材料Aの一例として、エポキシ樹脂を用いることができる。
【0053】
材料Bは、シリカなどの無機材料のフィラーを含む樹脂からなる。この樹脂材料としては、エポキシ樹脂などの熱硬化樹脂を用いることができる。材料Bの一例として、シリカのフィラーを含有したエポキシ樹脂を用いることができる。絶縁部162の上層及び下層は、材料A及び材料Bに含まれるエポキシ樹脂を含み、一例としては、フィラーの含有率が小さい。絶縁部162の中層は、主に材料Bを含んでおり、エポキシ樹脂とフィラーを含み、一例としては、フィラーの含有率が、上層及び下層よりも高い。材料A及び材料Bに含まれることが可能な樹脂として、フェノール樹脂、メタクリル樹脂、エポキシ樹脂、珪素樹脂、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリイミド、ポリブタジエン、ポリエチレン、ポリスチレン等を例示することができる。また、フィラーを構成する無機材料として、シリカ(SiO)、酸化アルミニウム(Al)、窒化アルミニウム(AlN)等を例示することができる。
【0054】
なお、第1絶縁領域10及び絶縁部162と、第1陰極電極層14との間には、第1絶縁層11が介在している。第1絶縁層11は、第1絶縁領域10と同じ樹脂材料を含んでおり、フィラーを含んでいる。なお、第1絶縁領域10内には、基本的にはフィラーが浸透しないので、フィラーの含有率は小さい。第2絶縁領域10B及び絶縁部162と、第2陰極電極層14Bとの間には、第2絶縁層11Bが介在している。第2絶縁層11Bは、第1絶縁層11と同じ材料からなる。第2絶縁領域10Bは、第1絶縁領域10と同じ材料からなる。
【0055】
支持基板7と、第1固体電解コンデンサ要素CE1との間には、第1絶縁シートIF1が介在している。第1固体電解コンデンサ要素CE1と、第2固体電解コンデンサ要素CE2との間には、第2絶縁シートIF2が介在している。絶縁シートは、樹脂を含む材料であり、好適には、樹脂及び無機材料を含む材料からなる。無機材料として、シリカなどのフィラー、又は、ガラス繊維を用いることができる。樹脂材料としては、エポキシ樹脂などの熱硬化樹脂を用いることができる。本例では、エポキシ樹脂にシリカを添加した樹脂シートを用いるが、ガラス繊維にエポキシ樹脂を浸みこませたプリプレグ材を用いることもできる。
【0056】
図3は、固体電解質層の近傍構造を示す図である。
【0057】
陽極電極層8の表面には、第1誘電体層9が形成されている。第1誘電体層9は、通常、電気絶縁性を有する金属酸化皮膜(陽極電極層8がアルミニウムである場合は酸化アルミニウム(Al))である。第1誘電体層9は、陽極電極層8の表層部を、所定の方法で酸化することで形成される。第1誘電体層9の厚さは、例えば、1nm~1μmである。第1固体電解質層12は、拡面化により形成された陽極電極層8の微細凹凸面上の第1誘電体層9に沿って、その凹部8cを埋めるように形成されている。第1固体電解質層12の厚さは、上記凹凸面を覆うことができるような厚さが好ましい。第1固体電解質層12の厚さは、たとえば、1μm~100μm程度である。
【0058】
なお、陽極電極層8、第1固体電解質層12、及び、第2固体電解質層12Bを含めた厚み(アルミニウムを含む領域(金属シート)の厚さ)は、好適には、50μm~300μmに設定することができる。さらに好適には、この厚みは、100μm~150μmに設定することができる。
【0059】
次に、上記の固体電解コンデンサの製造方法について、説明する。
【0060】
固体電解コンデンサの製造方法は、(i)固体電解コンデンサシートの製造工程(図3図11)と、(ii)複数の固体電解コンデンサシートの加工処理工程(図12図19)を備えている。
【0061】
(i)固体電解コンデンサシートの製造工程においては、以下の工程(a)~工程(g)を順次実行する。
【0062】
(a)金属シートの準備工程
図4に示す金属シートの準備工程においては、弁金属からなる金属シート80を用意する。金属シート80は、弁金属(本例では、アルミニウム)からなる陽極電極層8と、第1粗化層121と、第2粗化層121Bとを備えている。第1粗化層121は、陽極電極層8の上面上に形成されている。第2粗化層121Bは、陽極電極層8の下面上に形成されている。粗化層は、最初に金属シートの両面をエッチング等によって粗化して形成し、次に、金属シートの両面を化成処理(酸化膜形成処理及び/又は陽極酸化)することにより、これらの表面に酸化物層を形成する。陽極電極層8の上面上には、第1誘電体層(酸化物層:本例ではAl層)が形成されている。第1誘電体層は、界面近傍領域91の周辺において図3に示したように形成される。陽極電極層8の下面上には、第2誘電体層(酸化物層:本例ではAl層)が形成されている。第2誘電体層は、界面近傍領域91Bの周辺において図3に示したように形成される。
【0063】
(b)絶縁領域の形成工程
図5に示す絶縁領域の形成工程においては、金属シート80の上面及び下面に、レジストを塗布する。レジストの塗布方法としては、様々な方法が知られている。例えば、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、及び、スプレー塗布法等が知られている。本例では、スクリーン印刷法を用いる。
【0064】
上面のレジスト印刷工程では、格子パターン(長方形格子)を有するレジスト層を、金属シート80の上面上に形成する。レジストの塗布領域が開口したマスク(スクリーン版)を用い、開口内にレジストを塗布し、スキージを用いて、レジストに圧力をかける。
【0065】
下面のレジスト印刷工程では、格子パターン(長方形格子)を有するレジスト層を、金属シート80の下面上に形成する。レジストの塗布領域が開口したマスク(スクリーン版)を用い、開口内にレジストを塗布し、スキージを用いて、レジストに圧力をかける。
【0066】
上面のレジスト印刷工程及び下面のレジスト印刷工程は、同時に行うこともできる。同時に行うと、製造時間を短縮することができる。上面のレジスト印刷工程及び下面のレジスト印刷工程は、異なる期間に行うこともできる。金属シート80の上下を反転させて処理を行うこともできる。なお、レジストの材料は、上述の材料A(例:エポキシ樹脂とシリカフィラーの混合物)である。
【0067】
レジスト塗布により、第1粗化層121の中にレジスト(絶縁性樹脂:エポキシ樹脂等)が浸みこみ、平面視において格子パターンを有する第1絶縁領域10が形成される。第1絶縁領域10の上には、一部のレジストが残留し、平面視において格子パターンを有する第1絶縁層11が形成される。レジスト塗布により、第2粗化層121Bの中にレジスト(絶縁性樹脂:エポキシ樹脂等)が浸みこみ、平面視において格子パターンを有する第2絶縁領域10Bが形成される。第2絶縁領域10Bの下には、一部のレジストが残留し、平面視において格子パターンを有する第2絶縁層11Bが形成される。
【0068】
X軸方向に沿った隣接する第1絶縁領域10の間の距離Δxは、距離Δx=位置xb-位置xaで与えられる。距離Δxで規定される第1粗化層121及び第2粗化層121Bの開口内に、導電性高分子が導入される。
【0069】
図6は、製造中の固体電解コンデンサシートの平面図である。
【0070】
金属シート80の表面上に、格子パターン(長方形格子)を有する第1絶縁層11が形成されている。金属シート80のX軸方向の寸法は、Y軸方向の寸法よりも大きい。金属シート80は、Y軸を回転軸とするロールに巻くことができ、この場合、同図は、ロールから延びた金属シートの一部領域を示している。
【0071】
第1絶縁層11の外側の輪郭は、長方形である。第1絶縁層11の左下の頂点を原点Oとすると、第1絶縁層11の図面下側の長辺は原点OからX軸の正方向に沿って延びており、図面左側の短辺は原点OからY軸の正方向に沿って延びている。金属シート80の輪郭は、長方形であり、その内側に形成された第1絶縁層11との間には、マージン領域Mがある。すなわち、第1絶縁層11の外側の輪郭を規定する各辺は、金属シート80の輪郭を規定する各辺から離れている。第1絶縁層11の格子パターンの1つの開口は、頂点P1,P2,P3,P4で囲まれた長方形の形状を有している。この開口のX軸方向の両端位置を位置xa及び位置xbとすると、これらの位置で規定される距離Δxは、X軸方向の開口幅を規定している。X軸方向に沿って隣接する開口の間のX軸方向の距離は、Δx1で与えられる。Y軸方向に沿って隣接する開口の間のY軸方向の距離は、Δy1で与えられる。本例では、Δx1<Δxとする。第1絶縁層11は、二次元状に配置された複数の開口を備えており、各開口の形状は長方形であり、大きさは同一である。
【0072】
頂点P1,P2,P3,P4で囲まれた特定の開口に対して、その左側に位置する開口のX軸方向の両端位置は、位置xa0及び位置xb0とする。この特定の開口の右側に位置する開口のX軸方向の両端位置は、位置xa2及び位置xb2とする。
【0073】
(c)固体電解質層の形成工程
図7に示す固体電解質層の形成工程においては、絶縁領域の形成後、金属シート80の上面及び下面における上記の開口内に、導電性高分子を導入し、固体電解質層を形成する。導電性高分子の導入方法としては、様々な方法が知られている。例えば、塗布法、化学酸化重合法、電解重合法などが知られている。
【0074】
塗布法においては、導電性高分子を含む溶液を、上記の上面側の第1絶縁領域10間の開口(及び下面側の第2絶縁領域10B間の開口)内に供給する。導電性高分子を含む溶液は、可溶性の導電性高分子を溶媒(水又は溶剤)に融解した溶液、又は、導電性高分子の粒子(粒子径が数nm~20nm)を水、有機溶媒等の溶媒に分散した溶液である。導電性高分子を含む溶液を開口内に供給する方法としては、ディスペンサから液滴を供給する方法と、物理的に連続した液体を塗布する方法がある。供給法として、インクジェット法、印刷法、転写法などがある。本例では、ディスペンサから、導電性高分子を含む溶液(例:水溶液)を開口内に滴下し、その後、乾燥(水分除去)する方法を用いる。導電性高分子の一例は、ドーピングされたポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)である。上述のその他の導電性高分子を用いることもできる。なお、電解重合法においては、下地となる導電性樹脂シード層を形成した後、モノマー溶液に浸漬し、電解重合によりシード層上に導電性樹脂層を成長させる。
【0075】
上面側に導入された導電性高分子は、第1絶縁領域10間の開口内の第1粗化層121(図5参照)の中に浸み込み、第1固体電解質層12が形成され、一部分は、第1固体電解質層12の上部に残留し、第1導電性高分子層12rが形成される。また、導電性高分子の一部は、当該開口内から少し食み出し、第1導電性高分子層12rは、第1絶縁領域10の主表面(XY面)に接触するように位置してもよい。これにより、製造上の位置ずれや未塗布未充填部が発生するリスクを抑制することができる。XY平面内において、個々の第1固体電解質層12の形状は、長方形であり、これらの第1固体電解質層12は、二次元状に配置されている。
【0076】
下面側に導入された導電性高分子は、第2絶縁領域10B間の開口内の第2粗化層121B(図5参照)の中に浸み込み、第2固体電解質層12Bが形成され、一部分は、第2固体電解質層12Bの下部(図面上の下部)に残留し、第2導電性高分子層12Brが形成される。また、導電性高分子の一部は、当該開口内から少し食み出し、第2導電性高分子層12Brは、第2絶縁領域10Bの主表面(XY面)に接触するように位置してもよい。これにより、製造上の位置ずれや未塗布未充填部が発生するリスクを抑制することができる。XY平面内において、個々の第2固体電解質層12Bの形状は、長方形であり、これらの第2固体電解質層12Bは、二次元状に配置されている。
【0077】
上面側の導電性高分子の導入工程と、下面側の導電性高分子の導入工程とは、同時に行うこともできるし、異なる期間に行うこともできる。同時に行うと、製造時間を短縮することができる。また、このシートを反転させて処理を行ってもよい。
【0078】
(d)導電層の形成工程
図8に示す導電層の形成工程においては、導電性高分子の導入工程の後、第1固体電解質層12の表面上に第1導電層13を形成し、第2固体電解質層12Bの裏面上に第2導電層13Bを形成する。各導電層は、単層であってもよいが、2層以上であってもよい。形成方法としては、導電層の材料(例:カーボンペースト)を塗布する方法を用いることができる。スクリーン印刷法、グラビア印刷法(転写)、ディスペンサを用いた供給法などを用いることができる。圧縮空気を液体材料に加えて、ノズルから押し出すエアーディスペンス方式、ノズルの先端から液体材料を飛ばして供給するジェットディスペンス方式、インクジェットによる供給方式等のディスペンサを用いた供給法も数多く知られている。
【0079】
上面側の第1導電層形成工程と、下面側の第2導電層形成工程とは、同時に行うこともできるし、異なる期間に行うこともできる。同時に行うと、製造時間を短縮することができる。また、このシートを反転させて処理を行ってもよい。
【0080】
(e)陰極電極層の形成工程
図9に示す陰極電極層の形成工程においては、導電層の形成工程の後、第1導電層13の表面を含む表面上に第1陰極電極層14を形成し、第2導電層13Bの表面を含む裏面上に第2陰極電極層14Bを形成する。形成方法としては、種々の方法が考えられるが、本例では、めっき法を用いる。
【0081】
上面側の第1陰極電極層14を形成する場合、第1導電層13の表面を含む表面上に下地層を形成する。下面側の第2陰極電極層14Bを形成する場合、第2導電層13Bの表面を含む表面上に下地層を形成する。これらの下地層は、例えば、スパッタ法を用いて形成する。下地層の材料として、銅(Cu)又はニッケルクロム合金(NiCr)などを用いることができる。下地層の材料は、その直下の層との密着性が高く、その上にめっき層が成長可能な材料であればよい。下地層の上に、めっき層を形成する。本例のめっき層の材料は、銅(Cu)である。下地層の形成された全面上に電解めっきにより、めっき層を形成する。これらのめっき工程により、第1陰極電極層14及び第2陰極電極層14Bが形成される。
【0082】
(f)保護層の形成工程
図10に示す保護層の形成工程においては、陰極電極層の形成工程の後、第1陰極電極層14上に第1保護層15を形成し、第2陰極電極層14B上に第2保護層15Bを形成する。第1保護層15及び第2保護層15Bの形成方法としては、様々な方法がある。例えば、スクリーン印刷法、グラビア印刷法(転写)を用いることができる。本例では、スクリーン印刷法を用いる。第1保護層15及び第2保護層15Bを形成するレジスト材料は、上述のように、樹脂を含む材料である。上面側の第1保護層形成工程と、下面側の第2保護層形成工程とは、同時に行うこともできるし、異なる期間に行うこともできる。同時に行うと、製造時間を短縮することができる。また、このシートを反転させて処理を行ってもよい。
【0083】
第1保護層15は、二次元状に配置された複数の領域を備えており、それぞれの領域の形状(XY平面内の形状)は、長方形であり、これらの領域間の隙間は格子形状(長方形格子)を構成している。この隙間のX軸方向幅(第1開口H1の幅)は、図面右側においては、位置xd―位置xcで与えられる。位置xdは、図6に示した位置xa2からX軸の負方向へ距離Δxdだけ離れた位置である。位置xcは、図6に示した位置xbからX軸の正方向へ距離Δxcだけ離れた位置である(本例では、Δxc>Δxd)。この隙間のX軸方向幅(第1開口H1の幅)は、図面中央においては、位置xd0―位置xc0で与えられる。位置xd0は、図6に示した位置xaからX軸の負方向へ距離Δxdだけ離れた位置である。位置xc0は、図6に示した位置xb0からX軸の正方向へ距離Δxcだけ離れた位置である。X軸方向の開口幅(xd―xc)及び(xd0-xc0)は、第1絶縁領域10の1つの領域のX軸方向の幅(Δx)(図6)よりも小さい。
【0084】
第1保護層15は、平面視における第1絶縁層11の輪郭線と、金属シート80の輪郭線との間のマージン領域M(図6)を覆う枠状の領域(図示せず)も備えている。第2保護層15Bは、二次元状に配置された複数の領域を備えており、それぞれの領域の形状(XY平面内の形状)は、長方形であり、これらの領域間の隙間は格子形状(長方形格子)を構成している。第2保護層15Bも、第1保護層15と同様の枠状の領域(図示せず)を備えている。第2保護層15Bの各領域の寸法は、第1保護層15の各領域の寸法と同一である。これらの保護層は、陰極電極層をエッチングする際のマスクとして機能することができる。
【0085】
第1保護層15に含まれる隣接する長方形領域間に位置する第1開口H1の直下には、第1陰極電極層14を介して、第1絶縁領域10が位置している。第2保護層15Bに含まれる隣接する長方形領域間に位置する第1開口H1Bの直下(陽極電極層8側)には、第2陰極電極層14Bを介して、第2絶縁領域10Bが位置している。
【0086】
(g)陰極電極層のエッチング分割工程
図11に示す陰極電極層のエッチング分割工程においては、第1及び第2保護層の形成工程の後、これらの保護層をマスクとして、第1陰極電極層14及び第2陰極電極層14Bをエッチングして、複数の領域に分割する。エッチング液としては、塩化第二鉄水溶液、塩化銅水溶液、硫酸と過酸化水素水の混合液などを用いることができる。エッチング液を陰極電極層にスプレーで吹きかけてエッチングする方法や、陰極電極層をエッチング液内に浸漬してエッチングする方法がある。めっき法で形成された陰極電極層は、2層構造を有しているので、これらの層をエッチングする。
【0087】
エッチング液により、第1陰極電極層14における第1開口の直下の領域を除去し、第1陰極電極層14が複数の長方形領域に分割される。これらの第1陰極電極層14からなる各長方形領域の間の隙間のX軸方向幅(第2開口H2の幅)は、図10に示した第1開口H1のX軸方向幅よりも少し広くなってもよい。この隙間のXY平面形状は、格子状(長方形格子)となる。
【0088】
エッチング液により、第2陰極電極層14Bにおける第1開口の直下の領域を除去し、第2陰極電極層14Bが複数の長方形領域に分割される。これらの第2陰極電極層14Bからなる各長方形領域の間の隙間のX軸方向幅(第2開口H2Bの幅)は、図10に示した第1開口H1BのX軸方向幅よりも少し広くなる。この隙間のXY平面形状は、格子状(長方形格子)となる。
【0089】
以上、説明したように、固体電解コンデンサシートの製造方法は、(a)金属シートの準備工程と、(b)絶縁領域の形成工程と、(c)固体電解質層の形成工程と、(d)導電層の形成工程と、(e)陰極電極層の形成工程と、(f)保護層の形成工程と、(g)陰極電極層のエッチング分割工程とを備えている。これらの工程により、固体電解コンデンサシートCESが製造される。
【0090】
(ii)複数の固体電解コンデンサシートを加工処理して、個々の固体電解コンデンサを製造する方法は、以下の工程(A)~工程(G)を順次実行する。
【0091】
(A)積層シート形成工程
図12に示す積層シート形成工程においては、まず、図11に示した固体電解コンデンサシートをN枚用意する(2≦N)。本例では、N=4とし、第1固体電解コンデンサシートCES1、第2固体電解コンデンサシートCES2、第3固体電解コンデンサシートCES3、第4固体電解コンデンサシートCES4を用意する。
【0092】
次に、支持基板7上に、第1絶縁シートIF1、第1固体電解コンデンサシートCES1、第2絶縁シートIF2、第2固体電解コンデンサシートCES2、第3絶縁シートIF3、第3固体電解コンデンサシートCES3、第4絶縁シートIF4、第4固体電解コンデンサシートCES4を順次積層する。積層したシート群に対して、加熱しながら、Z軸方向に圧力をかけ、積層シート300を形成する。なお、支持基板7の下面側には、予め、複数の陽極端子1及び陰極端子2がパターニングして形成されている。
【0093】
本例における各絶縁シート(第1絶縁シートIF1、第2絶縁シートIF2、第3絶縁シートIF3、第4絶縁シートIF4)の材料は、上述のような熱硬化樹脂等の材料からなり、熱と同時に圧力をかけることで、各絶縁シートは、上下の要素を接着して、硬化する。
【0094】
(B)溝形成工程
図13に示す溝形成工程においては、まず、図12の工程において形成した積層シート300を用意する。次に、積層シート300の支持基板7を下側に配置し、上から下に向かう方向(図13では-Z軸方向)に溝を形成する。XY平面内の溝全体の平面形状は格子状(長方形格子)であり、X軸方向に延びた複数の溝群と、Y軸方向に延びた複数の溝群とを備えている。各溝は、各電解コンデンサシートの第1絶縁領域10及び第2絶縁領域10Bを厚み方向(Z軸)に切断するように形成され、支持基板7の内部に到達している。各溝は、支持基板7を完全には切断していない。これらの溝は、回転刃を積層シート300に押し当てることにより、形成される。溝形成に使用される回転刃の数は、複数であってもよく、単数であってもよい。1つの溝(回転刃)の幅は0.1mm~0.7mmであり、好ましくは0.3mm~0.5mmである。
【0095】
X軸方向に沿って隣接し、Y軸方向に沿って延びた2つの溝を、第1溝GR1及び第2溝GR2とする。また、後の工程において、積層シート300は、第1溝GR1の幅よりも、広い幅を有する回転刃で切断され、第3溝GR3(図16参照)が形成され、第2溝GR2の幅よりも、広い幅を有する回転刃で切断され、第4溝GR4(図16参照)が形成される。
【0096】
同図において、X軸の正方向を右側とし、負方向を左側とする。
【0097】
第1溝GR1を含む領域において、左側から順番に、各切断位置は、以下のように設定されている。左側から順番に、第3溝GR3(第3回転刃)の左側切断位置x2”、第1溝GR1(第1回転刃)の左側切断位置xc0’、第1溝GR1(第1回転刃)の右側切断位置xe0、第3溝GR3(第3回転刃)の右側切断位置(第1位置x1)、第1溝GR1の右側に位置するマスク(保護層15)の左エッジの位置xd0が配置されている。
【0098】
第2溝GR2を含む領域において、左側から順番に、各切断位置は、以下のように設定されている。左側から順番に、第4溝GR4(第4回転刃)の左側切断位置(第2位置x2)、第2溝GR2(第2回転刃)の左側切断位置xc’、第2溝GR2(第2回転刃)の右側切断位置xe、第4溝GR4(第4回転刃)の右側切断位置x1’、第2溝GR2の右側に位置するマスク(保護層15)の左エッジの位置xdが配置されている。
【0099】
なお、アルミニウムからなる陽極電極層8のエッチング工程(図14)の前に形成する溝群のXY平面形状は、上述のような長方形格子でなくてもよい。例えば、これらの溝群が、Y軸方向に沿って延びた複数の溝のみからなることとしてもよい。この場合、エッチング工程(図14)の終了後に、X軸方向に沿って延びた複数の群を形成する。この場合、X軸方向に沿った溝の内部の側面(XZ面)は、平坦となるため、当該溝群内に、絶縁性樹脂を埋め込みやすくなる。この工程を用いた場合、X軸方向に延びた溝の内部の側面(XZ面)をエッチングした場合と比較して、設計の自由度が高くなる。
【0100】
(C)エッチング工程
図14に示すエッチング工程においては、図13に示した複数の溝内に、エッチング液を導入し、溝内おいて露出した陽極電極層8の側面をエッチングする。エッチング液の導入方法として、スプレー塗布してもよいが、エッチング液に溝内露出面を浸漬させてもよい。陽極電極層8の材料(本例ではアルミニウム(Al))のエッチング液の種類としては、当該材料をエッチングして、陰極電極層14の材料(本例では銅(Cu))をエッチングしない選択エッチングが可能なエッチング液を用いる。このようなエッチング液として、水酸化ナトリウム水溶液などのアルカリ溶液、又は、硫酸などの酸性溶液を用いることができる。エッチング液には、必要に応じて、適当な添加剤を加えてもよい。
【0101】
アルミニウムからなる陽極電極層8の露出した両側面がエッチングされ、エッチングにより、各溝に連続する新しい第1空間SPA及び第2空間SPCが形成され、陽極電極層8の両側面が突出部を形成する。1つの固体電解コンデンサに着目すると、第1溝GR1に連続する第1空間SPAが左側に形成され、第2溝GR2に連続する第2空間SPCが右側に形成される。
【0102】
エッチング液は、陽極電極層8のみでなく、第1絶縁領域10及び第2絶縁領域10Bに含まれるアルミニウムも溶かす。第1絶縁領域10及び第2絶縁領域10Bは、粗化層を構成するアルミニウムと、粗化層内に浸み込んだエポキシ樹脂等の絶縁性樹脂を含んでいる。エッチング液は、粗化層に含まれるアルミニウムを溶かすので、第1絶縁領域10及び第2絶縁領域10Bの溝側の領域は、エッチング液により除去されるか、或いは、絶縁性樹脂のみが残留することになる。同図では、エッチング液により形成された空間(第1空間SPA及び第2空間SPCは、絶縁領域が完全に除去された領域と、絶縁性樹脂のみが残留した領域を含んで示されている。
【0103】
なお、突出部は、陽極電極層8のX軸方向の両端のみでなく、Y軸方向の両端にも形成されるが、Y軸方向の突出部は形成しなくてもよい。例えば、X軸方向に延びた溝の形成工程を、このエッチング工程の後に設定する場合、Y軸方向の両端部の突出部は形成されないこととなる。このような製造工程の変更も可能である。
【0104】
(D)充填工程
図15に示す充填工程においては、積層シート300に形成された前述の溝群、及び、各溝に連続する空間内に絶縁性樹脂(保護絶縁体16、右側の絶縁部162、左側の絶縁部162A)を充填する。この絶縁性樹脂は、好適にはフィラーを含んでいる。充填工程においては、積層シート300の上面に絶縁性樹脂を供給し、Z軸方向に圧力をかけて、絶縁性樹脂を溝内及び空間内に充填する。供給される絶縁性樹脂の形態は、液状であってもよいし、固形のシート状であってもよい。充填方法として、液状の絶縁性樹脂を用いたコンプレッションモールド法を用いることができる。充填方法として、シート状の樹脂封止材を積層シート300の表面に貼り付け、樹脂封止材を平坦化プレスする方法を用いることもできる。
【0105】
絶縁性樹脂は、モールド樹脂であり、固体電解コンデンサの完成後には、素子の大部分を被覆する樹脂である。絶縁性樹脂(保護絶縁体16)を構成する絶縁材料は、上述の通りであり、好適な一例としては、フィラーを含有したエポキシ樹脂を用いることができる。充填工程においては、1つの固体電解コンデンサに着目すると、図14において形成した第1空間SPA内に、左側の絶縁部162Aが充填され、第2空間SPC内に、右側の絶縁部162が充填される。
【0106】
(E)切断工程
図16に示す切断工程においては、深さ方向が、Z軸の正方向となる複数の溝を、積層シート300内に形成する。なお、これらの溝を容易に形成するため、積層シート300を反転させることができる。
【0107】
XY平面内の溝の全体形状はストライプ形状であり、Y軸方向に延びた複数の溝群を備えている。各溝は、各電解コンデンサシートの第1絶縁領域10及び第2絶縁領域10Bを厚み方向(Z軸)に切断するように形成され、蓋として機能する保護絶縁体16の内部に到達している。各溝は、保護絶縁体16を完全には切断していない。これらの溝は、回転刃を積層シート300に押し当てることにより、形成される。溝形成に使用される回転刃の数は、複数であってもよく、単数であってもよい。
【0108】
X軸方向に沿って隣接し、Y軸方向に沿って延びた2つの溝を、第3溝GR3及び第4溝GR4とする。これらの溝の位置関係は上述の通りである。第3溝GR3の形成により、陽極端子1の左側の一部分が除去される。第4溝GR4の形成により、陰極端子2の右側の一部分が除去される。
【0109】
1つの固体電解コンデンサに着目すると、第3溝GR3の右側の第1位置x1と、第4溝GR4の左側の第2位置x2との間に、個別の素子として機能する積層体が構成されている。第3溝GR3の形成により、陽極電極層8の左側の側面が、第1位置x1において露出する。第4溝GR4の形成により、第1陰極電極層14及び第2陰極電極層14Bの右側の側面が、第2位置x2において露出する。すなわち、切断工程では、陽極電極層8を露出させる第1位置x1で積層シート300を切断し、絶縁部162及び陰極電極層(第1陰極電極層14、第2陰極電極層14B)を露出させる第2位置x2で積層シート300を切断している。
【0110】
(F)側面電極形成工程
図17に示す側面電極形成工程においては、図16の工程において形成した溝の内面上に側面電極Eを形成する。なお、次のダイシング工程により、1つの溝内の側面電極Eの右側部分が第1側面電極E1となり、左側部分が第2側面電極E2となる。詳説すれば、側面電極形成工程では、第1位置x1における切断により露出した第1側面S1に第1側面電極E1を形成し、第2位置x2における切断により露出した第2側面S2に第2側面電極E2を形成している。側面電極Eは、下地層の形成後、下地層上にめっき層を形成することにより、形成する。
【0111】
下地層の材料は、樹脂及び金属との接着性が高い金属材料を用いる。下地層(シード層)の材料として、Cu、Cr、Ni、Ti又はZnなどの金属、導電性カーボンのようにCを含む導電材料、又は、これらの材料の少なくとも1種を含む合金等から構成することができる。シード層は、スパッタ法、無電解めっき法、又は、塗布法などの一般的な方法で形成することができる。下地層の材料は、その直下の層との密着性が高く、その上にめっき層が成長可能な材料であればよい。下地層の上に、めっき層を形成する。めっき層は、単層であってもよいが、積層された複数の金属層から構成されてもよい。本例のめっき層の材料は、銅(Cu)である。下地層の形成された全面上に電解めっきにより、めっき層を形成する。めっき層は、2層以上の構成とすることもできる。例えば、第1めっき層をCu層とし、第2めっき層をNi層とすることができる。例えば、第1めっき層をCu層とし、第2めっき層をNi層とし、第3めっき層をSn層とすることができる。例えば、第1めっき層をCu層とし、第2めっき層をSn層とすることができる。Sn層に代えて、Au層を採用することもできる。
【0112】
(G)ダイシング工程(個品化工程)
図18に示すダイシング工程では、側面電極が形成された積層シートをダイシングする。ダイシングには、回転刃等を用いることができ、素子分離用の第3開口H3が形成される。ダイシングラインは、格子状(長方形格子)に設定され、X軸方向に延びた複数の切断線群と、Y軸方向に延びた複数の切断線群から構成される。X軸方向に延びた複数の切断線群は、図15の工程において、X軸方向に延びた溝内に埋め込まれた絶縁性樹脂の直上を通っている。Y軸方向に延びた切断線群は、側面電極Eの最深部を通っている。以上のように、この製造方法は、積層シートをダイシング等により分割することで、個々の固体電解コンデンサを形成する個品化工程を備えている。
【0113】
図19(A)は、上述の製造方法により製造された固体電解コンデンサの縦断面図である。図18における点線Cにより囲まれた領域が、1つの固体電解コンデンサとなる。図18に示した第1固体電解コンデンサシートCES1、第2固体電解コンデンサシートCES2、第3固体電解コンデンサシートCES3、第4固体電解コンデンサシートCES4は、それぞれ、第1固体電解コンデンサ要素CE1、第2固体電解コンデンサ要素CE2、第3固体電解コンデンサ要素CE3、第4固体電解コンデンサ要素CE4となる。この固体電解コンデンサは、固体電解コンデンサ要素の数が、4個である点を除いて、図2に示した固体電解コンデンサと同一である。
【0114】
図19(B)は、ダイシングの回転刃の幅を広くした製造方法により製造された固体電解コンデンサの縦断面図である。図18における点線Jにより囲まれた領域が、1つの固体電解コンデンサとなる。この固体電解コンデンサは、側面電極が屈曲部を備えていないものである。屈曲部を備えている場合は、上記のようなフィレット強度の増加効果がある。
【0115】
以上、説明したように、固体電解コンデンサの製造方法は、(A)積層シート形成工程と、(B)溝形成工程と、(C)エッチング工程と、(D)充填工程と、(E)切断工程と、(F)側面電極形成工程と、(G)ダイシング工程とを備えている。
【0116】
(A)積層シート形成工程では、それぞれが陽極電極層8及び陰極電極層14を含む固体電解コンデンサシートCESを複数用意し、複数の固体電解コンデンサシートを積層して積層シート300を形成した。
(B)溝形成工程では、積層シート300に第1溝GR1及び第2溝GR2を形成した。
(C)エッチング工程では、第1溝GR1及び第2溝GR2内において露出した陽極電極層8の側面をエッチングした。
(D)充填工程では、陽極電極層8のエッチングより形成された空間内に絶縁性樹脂を充填して絶縁部162を形成した。
(E)切断工程では、陽極電極層8を露出させる第1位置x1で積層シート300を切断し、絶縁部162及び陰極電極層(第1陰極電極層14、第2陰極電極層14B)を露出させる第2位置x2で積層シート300を切断した。
(F)側面電極形成工程では、第1位置x1における切断により露出した第1側面S1に第1側面電極E1を形成し、第2位置x2における切断により露出した第2側面S2に第2側面電極E2を形成した。
(G)ダンシング工程では、積層シート300をダイシングして、複数の固体電解コンデンサに分離した。なお、ダイシング工程は、二次元状に配置された複数の固体電解コンデンサを有する積層シートを用いる場合、一般に行われる。また、ダイシング工程前においても、複数の固体電解コンデンサ群は、製造されている。
【0117】
上述の固体電解コンデンサの製造方法は、それぞれが陽極電極層及び陰極電極層を含む固体電解コンデンサシートを複数用意し、複数の固体電解コンデンサシートを積層して積層シートを形成する積層シート形成工程と、積層シートをダイシングするダイシング工程とを備えている。
【0118】
この製造方法においては、予め、陽極電極層及び陰極電極層を含む固体電解コンデンサシートを複数用意し、これらを積層してからら個品化(ダイシング)し、個別の固体電解コンデンサを製造する。この製造方法によれば、一括して積層した後に多数個の固体電解コンデンサを切り出すことが可能であるため、生産性を向上させることができる。
【0119】
上述の固体電解コンデンサの製造方法は、積層シート300に溝を形成する溝形成工程と、溝内において露出した陽極電極層8の側面をエッチングする陽極サイドエッチング工程と、陽極電極層8のエッチングより形成された空間内に絶縁性樹脂を充填して絶縁部162を形成する充填工程とを備えている。充填された絶縁性樹脂により、陽極電極層の側面を絶縁することができる。上述の固体電解コンデンサの製造方法は、陽極電極層8を露出させる第1位置x1で積層シートを切断し、絶縁部及び陰極電極層14を露出させる第2位置x2で積層シートを切断する切断工程と、第1位置x1における切断により露出した第1側面に第1側面電極E1を形成し、第2位置x2における切断により露出した第2側面に第2側面電極E2を形成する側面電極形成工程と、を更に備えている。
【0120】
この製造方法においては、陽極電極層8に接続された第1側面電極E1と、陰極電極層E14に接続された第2側面電極E2を容易に形成することができるので、生産性を向上させることができる。
【0121】
上述の固体電解コンデンサの製造方法において、上記の溝形成工程は、この溝として、積層シート300に第1溝GR1及び第2溝GR2を形成し、陽極サイドエッチング工程は、第1溝GR1及び第2溝GR2内において露出した陽極電極層8の側面をエッチングしている。
【0122】
第1溝GR1及び第2溝GR2を形成することにより、これらの溝間に独立した固体電解質コンデンサ要素を形成することができる。なお、溝の数が1つの場合においても、別の工程において、溝形成側とは逆側の位置で積層シートを切断する方法も考えられるが、第1溝GR1及び第2溝GR2を形成した方が、効率的に生産を行うことができる。
【0123】
上述の固体電解コンデンサの製造方法において、積層シート形成工程において用いられる固体電解コンデンサシートの製造方法は、陽極電極層8上に、平面視において格子パターンを有する絶縁領域10を形成する工程と、格子パターンの開口内に固体電解質層12を形成する工程と、固体電解質層12に電気的に接続され、平面視において複数の領域に分割された陰極電極層14を形成する工程とを備えている。分割された陰極電極層の形成工程は、固体電解質層12に電気的に接続された陰極電極層14を形成する工程と、陰極電極層14を平面視において複数の領域に分割する工程とを備えることができる。導電性樹脂等を用いる印刷法などにより、予め、分割された陰極電極層を形成することもできる。
【0124】
陰極電極層14を予め複数の領域に分割しておくことにより、積層後の陽極と陰極の電気的な分離(絶縁)が容易となり、積層シートの分割が容易となる。その後のダイシング工程において、積層シート300のダイシングが容易となる。また、上述の切断工程において、陰極電極層14の複数の領域間を切断する場合、当該領域と切断面との間が離隔するので、第1側面電極E1を陰極電極層14に接続しない構造を容易に形成することができる。なお、上述のように、側面電極はY軸方向に沿って形成されるため、平面視においてY軸方向に沿った複数の溝(例:第1溝GR1,第2溝GR2(図13))は、エッチング工程(図14)の前に形成する。一方、平面視においてX軸方向に沿った複数の溝(絶縁性樹脂充填用の溝)は、エッチング工程の終了後に形成することもできる。
【0125】
上述の固体電解コンデンサの製造方法において、積層シート形成工程において用いられる固体電解コンデンサシートの製造方法は、陽極電極層8上に粗化層を備えた金属シート80を用意する工程を備え、絶縁領域10は、粗化層内に絶縁性樹脂を供給することより形成される。
【0126】
粗化層に絶縁性樹脂を供給することで、容易に絶縁領域を形成することができる。なお、絶縁領域の一部は、上記エッチング工程により、粗化層に含まれる金属成分が溶け出すことができるので、上述の充填工程において、絶縁性樹脂を充填することもでき、樹脂充填した絶縁部は陽極部と完全に分離されることで、絶縁性能が向上する。
【0127】
上述の固体電解コンデンサの製造方法においては、ダイシング工程において、積層シート300は、陰極電極層14の複数の領域間の隙間に沿って、ダイシングされる。ダイシングにより、個別の固体電解コンデンサを容易に生産することができる。
【0128】
図20は、固体電解コンデンサの斜視図である。
【0129】
固体電解コンデンサは、複数の固体電解コンデンサ要素を積層してなる積層体100と、積層体100のX軸方向の両端位置に設けられた第1側面電極E1及び第2側面電極E2と、支持基板7の下面に設けられた陽極端子1及び陰極端子2を備えている、固体電解コンデンサの少なくとも上部に位置する保護絶縁体16は、絶縁性樹脂からなるモールド樹脂である。このモールド樹脂は、積層体100のY軸方向の両端位置を被覆している。
【0130】
図21は、基板上に搭載された固体電解コンデンサを示す図である。
【0131】
絶縁体からなる配線基板105上には、第1ランド電極103及び第2ランド電極104が形成されている。第1ランド電極103は、半田材料からなる第1フィレット101を介して、陽極端子1及び第1側面電極E1に電気的に接続されている。第2ランド電極104は、半田材料からなる第2フィレット102を介して、陰極端子2及び第2側面電極E2に電気的に接続されている。
【0132】
陽極端子1及び陰極端子2は、銅(Cu)から構成されるが、その表面上に、半田に含まれる材料(Sn)を含んでいてもよい。第1側面電極E1及び第2側面電極E2は、銅(Cu)から構成されるが、その表面上に、半田に含まれる材料(Sn)を含んでいてもよい。
【0133】
第1側面電極E1の側面(YZ面)及び第1屈曲部E1Bの下面(XY面)には、第1フィレット101が接触している。第2側面電極E2の側面(YZ面)及び第2屈曲部E2Bの下面(XY面)には、第2フィレット102が接触している。第1屈曲部E1B及び第2屈曲部E2Bが存在しているので、フィレットのX軸方向の寸法が大きくなり、機械的強度が増加している。
【0134】
図22は、固体電解コンデンサの製造装置の一例を示す図である。
【0135】
上述の固体電解コンデンサシートCESを製造する工程(a)~工程(g)は、初期の金属シート80を巻いたロール体201を利用することができる。ロール体201から延びた金属シート80を、搬送装置202により、加工処理装置200内に搬送する。加工処理装置200は、上述の工程(a)~工程(g)を連続的に実行する。工程(g)が終了した金属シート80は、切断装置203により、一定間隔毎に切断され、個別の固体電解コンデンサシートCESに分離される。固体電解コンデンサシートCESは、その後、工程(A)で説明されたように、支持基板7上に順次積層され、その後の処理が行われる。この製造方法においては、ロール体201を用いて、連続加工処理を行うことにより、生産効率を増加させることができる。なお、加工処理装置200により、全ての処理工程を実施する必要はなく、一部の工程を加工処理装置200により実行した後、金属シートを別のロールに巻き取り、続いて、そのロールを用いて、別の工程を実行することもできる。また、ロール体を用いないで、便宜のサイズに切断加工したシート体で上述の製造方法を実行することも可能である。
【0136】
図23は、陽極電極層8の側方先端部の周辺構造を示す図である。
【0137】
上述のように、固体電解コンデンサは、積層された複数の固体電解コンデンサ要素を含む積層体100と、積層体100の第1側面S1に設けられた第1側面電極E1と、積層体100の第2側面S2に設けられた第2側面電極E2とを備えている。
【0138】
なお、固体電解コンデンサ要素は、陽極電極層8の上側に、第1誘電体層と、第1固体電解質層12と、第1陰極電極層14と備え、側方に第1絶縁領域10と、絶縁部162の上層162Uとを備えている。陽極電極層8の側方には、絶縁部162の中層162Mが位置している。陽極電極層8は、第1側面電極E1に電気的に接続されている。第1誘電体層は、陽極電極層8上に設けられている。第1陰極電極層14は、第2側面電極E2に電気的に接続されている。第1固体電解質層12は、第1誘電体層と第1陰極電極層14との間に介在する。絶縁部162は、陽極電極層8の側面と第2側面電極E2との間に介在し、絶縁性樹脂を含んでいる。第1絶縁領域10は、絶縁部162と第1固体電解質層12との間に介在し、絶縁部162とは異なる材料を含んでいる。なお、第1絶縁領域10と陽極電極層8との間には、アルミニウム酸化物等からなる誘電体層が介在しており、この誘電体層は、界面近傍領域91’の周辺に形成される。
【0139】
陽極電極層8の下側には、第2誘電体層と、第2固体電解質層12Bと、第2陰極電極層と備え、側方に第2絶縁領域10Bと、絶縁部162の下層162Lとを備えている。なお、第2絶縁領域10Bと陽極電極層8との間には、アルミニウム酸化物等からなる誘電体層が介在しており、この誘電体層は、界面近傍領域91B’の周辺に形成される。
【0140】
同図においても、XYZ三次元直交座標系が設定されており、複数の固体電解コンデンサ要素は、Z軸方向に沿って積層され、第1側面電極E1から第2側面電極E2に向かう方向をX軸の正方向としている。陽極電極層8は、X軸の正方向の端部位置において、X軸の正方向に突出した突出部8pを有している。突出部8pの先端のX位置を先端位置xpとする。第1距離D1は、陽極電極層8と第2側面電極E2との間の距離であり、詳細には、突出部8pの先端位置xpと第2側面S2の位置(第2位置x2)との間の距離である。第1絶縁領域10の最も第2側面電極E2に近いX位置を端部位置xsとする。第2距離D2は、第1絶縁領域10と第2側面電極E2との間の距離であり、詳細には、第1絶縁領域10の第2側面電極側の端部位置xsと第2側面S2の位置(第2位置x2)との間の距離である。ここで、第1距離D1は、第2距離D2よりも小さい。なお、第2距離D2は、第2絶縁領域10Bと第2側面電極E2との間の距離でもある。
【0141】
絶縁性樹脂を充填して形成された絶縁部162は、3層構造を有している。すなわち、上側のコンデンサに着目すると、絶縁部162は、陽極電極層8の側方に隣接する第1領域(中層162M)と、第1絶縁領域10の側方に隣接する第2領域(上層162U)とを備えている。また、絶縁部162は、第2絶縁領域10Bの側方に隣接する第3領域(下層162L)を備えている。第2領域(上層162U)は、第1領域(中層162M)よりも、軟らかい。第3領域(下層162L)は、第1領域(中層162M)よりも、軟らかい。これは、上層162U及び下層162Lのフィラー含有率が低いからである。
【0142】
第1領域(中層162M)は、樹脂及びフィラーを含み、第2領域(162U)は、樹脂及びフィラーを含んでいる。第2領域(上層162U)のフィラー含有率は、第1領域(中層162M)のフィラー含有率よりも小さい。第3領域(下層162L)のフィラー含有率は、第1領域(中層162M)のフィラー含有率よりも小さい。第2領域及び第3領域は、フィラー含有率が低いので、軟らかくなる。
【0143】
上層162U及び下層162Lは、上述の材料Aからフィラーを除いた樹脂と、材料Bの混合物からなるが、フィラー含有率は、材料A及び材料Bのフィラー含有率のいずれよりも低い。中層162Mは、主として材料Bからなる。一例として、材料Aは樹脂A1(エポキシ樹脂)とフィラーA2(シリカ)の混合物であるとする。材料Bは樹脂B1(エポキシ樹脂)とフィラーB2(シリカ)の混合物であるとする。樹脂A1と樹脂B1の種類は、同一であってもよく、異なっていてもよい。フィラーA2とフィラーB2の種類は、同一であってもよく、異なっていてもよい。一例として、上層162U及び下層162Lは、樹脂A1及び樹脂B1を含んでおり、フィラーの含有率は、中層162Mよりも小さい。中層162Mは、フィラーB2を含む材料Bを含んでおり、材料Aの含有率は小さい。
【0144】
また、第1領域(中層162M)は、材料Bに含まれる樹脂B1及びフィラーB2を含み、第2領域(上層162U)及び第3領域(下層162L)は、材料A及び材料Bに含まれる樹脂A1及び樹脂B1の混合樹脂を含む。第2領域及び第3領域は、混合樹脂から構成することもでき、第1領域とは、異なる特性となるように設計することができる。例えば、これらの領域の硬度を異ならせる設計をすることができる。上層162U及び下層162LにおけるフィラーB2の好適な含有率は0質量%以上20質量%未満、中層162MにおけるフィラーB2の好適な含有率は20質量%以上85質量%以下とすることができる。このような好適な設定例の場合、低弾性部(フィラー含有率が高い領域)において、膨張係数の差から発生する応力を、高弾性部(フィラー含有率が低い領域)において緩和することができる。更に、上下の領域(上層162U、下層162L)において、材料Aと材料Bの2種類の樹脂が複雑に混ざることにより、単独の材料のみ形成される場合よりも、強固な密着を得ることもできる。例えば、材料Aの樹脂として耐熱性が高く高弾性のエポキシ樹脂を用い、材料Bの樹脂として低弾性のエポキシ樹脂を用いることができる。例えば、材料Aの樹脂としてポリイミド樹脂を用い、材料Bの樹脂としてエポキシ樹脂を用いることもできる。例えば、材料Aの樹脂としてアクリル・エポキシ混合樹脂を用い、材料Bの樹脂として別のエポキシ樹脂を用いることもできる。
【0145】
絶縁部162の基本機能は、陽極電極層8と第2側面電極E2との電気的絶縁である。絶縁部162の上層162U及び下層162Lは軟らかいので、素子変形に対して、その近傍の構造を弾性的に保護する作用がある。
【0146】
突出部8pと絶縁部162との界面に応力がかかることがある。第1絶縁領域10(又は第2絶縁領域10B)と絶縁部162との界面に応力がかかることがある。一方、第1距離D1を与える突出部8pの先端位置xpは、第2距離D2を与える第1絶縁領域10の第2側面電極側の端部位置xsとは異なるので、これらの位置が一致している場合よりも、絶縁部162との界面にかかる応力の伝達を抑制することができる。すなわち、素子内におけるクラックの発生及び進行を抑制することができる。陽極電極層8の第2側面電極側は、突出部8pを備えている。陽極電極層8上に、適当な材料の界面が位置した場合、突出部8pの先端位置(X方向位置)は、この界面位置(X方向位置)とは異ならせることができるので、これらの位置が一致している場合よりも、当該界面にかかる応力の伝達を抑制することができる。
【0147】
さらに、陽極電極層8の第2側面電極E2側は、突出部8pを備えており、突出部8pは、XZ平面内において、三角形状を有している。三角形の上側の斜辺を規定する第1角度θは、第1絶縁領域10の第2距離D2を与えるX軸方向位置(xs)を通るZ軸と、このZ軸とXZ平面内における突出部8pとの交差点の位置における突出部8pの輪郭線8sとの成す角度である。第1角度θは、90°よりも大きい(鈍角である:(90°<θ))。この鈍角の形状の場合、突出部8pの斜辺(輪郭線8s)を、Y軸を中心にして折り曲げる変形応力がかかる場合、第1絶縁領域10へ作用する力が、第1角度θが90°である場合よりも小さくなる。すなわち、素子内におけるクラックの発生が抑制される。
【0148】
同様に、三角形の下側の斜辺を規定する第2角度θ’は、第2絶縁領域10Bの第2距離D2を与えるX軸方向位置(xs)を通るZ軸と、このZ軸とXZ平面内における突出部8pとの交差点の位置における突出部8pの輪郭線8Bsとの成す角度である。第2角度θ’は、90°よりも大きい(鈍角である:(90°<θ’))。この鈍角の形状の場合、突出部8pの斜辺(輪郭線8Bs)を、Y軸を中心にして折り曲げる変形応力がかかる場合、第2絶縁領域10Bへ作用する力が、第2角度θ’が90°である場合よりも小さくなる。すなわち、素子内におけるクラックの発生が抑制される。
【0149】
上述の構造により、クラック発生の抑制のほか、各層間の剥離も抑制され、固体電解コンデンサの寿命が増加する。
【0150】
図24は、電子顕微鏡により観察される陽極電極層の側方先端部の周辺構造を示す図である。陽極電極層8の先端部が、突出している状態が示されている。
【0151】
図25は、エッチング時における陽極電極層の側方先端部の周辺構造を示す図である。上述の(C)エッチング工程(図14)において形成される空間(第1空間SPA、第2空間SPC)は、空気等の気体のみで満たされた空間というよりも、陽極電極層を構成する材料(アルミニウム)が除去された空間である。この空間(例示的に第2空間SPCのみを示す)における上層空間SPCU及び下層空間SPCL内には、上述の(b)絶縁領域の形成工程(図5)において供給したレジスト材料(絶縁性樹脂:エポキシ樹脂等)が残留している。この空間における中層空間SPCMは、陽極電極層が除去された空間であり、エッチング後には、気体で満たされている。
【0152】
上層空間SPCU内のレジスト材料(材料Aに含まれる樹脂)は、その後のモールド用の絶縁性樹脂(材料B)の(D)充填工程(図15)において、これと混合する。同様に、下層空間SPCL内のレジスト材料(材料Aに含まれる樹脂)は、その後のモールド用の絶縁性樹脂(材料B)の(D)充填工程(図15)において、これと混合する。なお、材料Bに含まれるフィラー(例:シリカ)は、レジスト材料(材料Aに含まれる樹脂)の中には、混入しにくい。中層空間SPCM内には、レジスト材料は存在しないので、フィラーを含む材料Bが、容易に充填される。このような工程を経て、絶縁部162(図23)の上層及び下層のフィラー含有率は低下し、軟らかいクッション作用を有することとなる。
【0153】
図26は、陽極電極層の側方先端部の周辺構造を示す図である。同図では、図23に示した突出部8pの形状を変形しており、先端部分が丸くなっている。
【0154】
この形状の場合においても、図23の形状の場合と同様に、突出部8pの先端位置xpは、第1絶縁領域10の第2側面電極側の端部位置xsとは異なるので、これらの位置が一致している場合よりも、絶縁部162との界面にかかる応力の伝達を抑制することができる。すなわち、素子内におけるクラックの発生を抑制することができる。なお、図23に示した第1角度θは、本例では、90°となっており、かかる観点からは、図23の形状の方が、応力緩和作用がある。
【0155】
図27は、固体電解コンデンサの縦断面図である。図2に示した固体電解コンデンサとの相違点は、第1側面電極E1及び第2側面電極E2が、それぞれ複数の層を備えている点である。
【0156】
第1側面電極E1は、導電性材料からなる。本例の第1側面電極E1は、第1電極層E11と、第2電極層E12と、第3電極層E13とを備えている。第2側面電極E2は、導電性材料からなる。本例の第2側面電極E2は、第1電極層E21と、第2電極層E22と、第3電極層E23とを備えている。一方の第1電極層E11と、他方の第1電極層E21の材料は同一である。一方の第2電極層E12と、他方の第2電極層E22の材料は同一である。一方の第3電極層E13と、他方の第3電極層E23の材料は同一である。したがって、一方の電極層の材料のみを説明する。なお、第1側面電極E1の材料と、第2側面電極E2の材料は、異ならせることもできる。
【0157】
積層体100の第1側面S1上には、薄いシード層が接触して形成されており、シード層に接触して第1電極層E11が形成されている。第1電極層E11と第1側面S1との界面が、シード層に該当する。金属からなるシード層の好適な一例の厚みは、0.2μm以下である。シード層は、金属及び絶縁体の双方に接着可能な導電性材料からなる。例示的には、シード層は、銅(Cu)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)及び亜鉛(Zn)からなる金属群から選択される少なくとも一種の金属を含む。シード層として、当該金属群から選択された金属を含む合金(例:ニッケルクロム合金(NiCr))を用いることもできる。シード層として、金属粉を樹脂に配合した導電性ペーストを含む材料を用いることもできる。導電性ペーストは、下地の樹脂に対する接着性を向上させることができ、スパッタや無電解めっき法よりも簡易な、塗布や印刷といった手法でシード層を形成できる。導電性ペーストとして、カーボンペースト、銀ペースト又は銅ペーストなどが使われる。例えば、導電性ペーストを使用した場合のシード層の厚みは、0.2μm以上10μm以下の場合に、最も密着力を期待でき、抵抗値も大きくなりすぎずに好適である。
【0158】
第1電極層E11は、電気導電性に優れた材料からなる。第1電極層E11の好適な一例の厚みは5μm以上15μm以下であり、更に好適な一例の厚みは8μm以上12μm以下であり、厚みが下限値以上の場合には、下地の影響を抑制することができ、上限値以下の場合には、材料コストを低減することができる。例示的には、この厚みは10μmである。第1電極層E11として、好適には、導電性の優れた材料、すなわち、銅(Cu)又は銀(Ag)を含むめっき層を用いることができる。
【0159】
第2電極層E12は、第1電極層E11と第3電極層E13との間に介在する中間層である。第2電極層E12は、半田や第3電極層などに含まれるSnなどの拡散防止と、第1電極層に含まれるCuなどの酸化防止の役割を有する。したがって、第2電極層E12の材料として、Cuよりも酸化に強く、金属拡散を阻害するNiなどが使用される。第2電極層E12が薄すぎる場合、その酸化及び拡散防止効果が弱くなり、厚すぎると抵抗値が増加する。第2電極層E12の好適な一例の厚みは1μm以上5μm以下であり、更に好適な一例の厚みは2μm以上4μm以下であり、厚みが下限値以上の場合には、上記拡散防止効果が得られ、上限値以下の場合には、抵抗値の増大を抑制することができる。例示的には、この厚みは3μmである。好適には、第2電極層E12として、銅(Cu)よりも安定な材料であるニッケル(Ni)を用いることができる。
【0160】
第3電極層E13は、外部に設けられるSn合金(半田)と良好に接触する導電材料からなる。Sn合金として、Sn-Ag-Cu、Sn-Cu、Sn-Sb、又は、Sb-Bi等が知られている。第3電極層E13は、半田材料に対する濡れ性が良好な金属(例えば、SnやSnAgなどの合金など)から構成することができる。第3電極層E13の好適な一例の厚みは3μm以上7μm以下であり、更に好適な一例の厚みは4μm以上6μm以下であり、厚みが下限値以上の場合には、下地の影響を抑制することができ、上限値以下の場合には、材料コストを低減することができる。例示的には、この厚みは5μmである。第3電極層E13は、導電性に優れ且つ半田との濡れ性も良好な金(Au)を含む材料(例:Au)から構成してもよい。なお、金を用いる場合、その電極層の厚さは、0μmよりも大きく且つ1μm以下でも効果が得られ、0μmより大きく且つ0.1μm以下の場合は、効果を得つつコストを低減させることができる。
【0161】
以上、説明したように、本例の固体電解コンデンサは、隣接する固体電解コンデンサ要素の間に介在する絶縁シート(例:第2絶縁シートIF2)を備えており、絶縁シートは、樹脂を含んでいる。積層体100の第1側面S1は、陽極電極層8の側面と、絶縁シートの側面と、を含んでいる。
【0162】
絶縁シートは、塗布された絶縁樹脂よりも、厚みの均一性が高く、均質性の高い積層体に適している。絶縁シートは側面を有している。したがって、第1側面電極E1の下地となるシード層は、陽極電極層8の側面のみならず、樹脂を含んだ絶縁シートの側面にも接触し、これらに接着している。電界めっきのシード層は、これらの電極層及び樹脂層に接触可能な材料から構成される。シード層は、スパッタ法、無電解めっき法、又は、塗布法などの一般的な方法で形成することができる。各電極層を複数層から構成すると、端子部分の信頼性や半田濡れ性等を向上させる構造とすることができる。
【0163】
図28は、陽極端子及び陰極端子を含む領域近傍の縦断面図である。
【0164】
陽極端子1及び陰極端子2は、それぞれ複数の電極層を積層した構造を有することができる。第1側面電極E1は、陽極端子1の側面(YZ面)に接触している。第2側面電極E2は、陰極端子2の側面(YZ面)に接触している。これらの電極積層構造を構成する材料の組み合わせとして、様々な組み合わせがある。
【0165】
陽極端子1は、第1陽極電極層1Aと、第2陽極電極層1Bと、第3陽極電極層1Cとを備えている。陽極端子1を構成するシード層の材料は、第1側面電極E1を構成するシード層の材料と同一とすることができる。陽極端子1を構成する第1陽極電極層1Aの材料は、第1側面電極E1を構成する第1電極層E11の材料と同一とすることができる。陽極端子1を構成する第2陽極電極層1Bの材料は、第1側面電極E1を構成する第2電極層E12の材料と同一とすることができる。陽極端子1を構成する第3陽極電極層1Cの材料は、第1側面電極E1を構成する第3電極層E13の材料と同一とすることができる。なお、これらの各電極材料を異ならせることもできる。
【0166】
陰極端子2は、第1陰極電極層2Aと、第2陰極電極層2Bと、第3陰極電極層3Cとを備えている。陰極端子2を構成するシード層の材料は、第2側面電極E2を構成するシード層の材料と同一とすることができる。陰極端子2を構成する第1陰極電極層2Aの材料は、第2側面電極E2を構成する第1電極層E21の材料と同一とすることができる。陰極端子2を構成する第2陰極電極層2Bの材料は、第2側面電極E2を構成する第2電極層E22の材料と同一とすることができる。陰極端子2を構成する第3陰極電極層2Cの材料は、第2側面電極E2を構成する第3電極層E23の材料と同一とすることができる。なお、これらの各電極材料を異ならせることもできる。
【0167】
上記の例において、陽極端子1及び陰極端子2は、第1側面電極E1及び第2側面電極E2とは、異なる期間において、製造されている。陽極端子1及び陰極端子2の形成後に、第1側面電極E1及び第2側面電極E2を製造する場合、第1側面電極E1における第1電極層E11の下のシード層が、陽極端子1の側面(YZ面)に接触する。同様に、第2側面電極E2における第1電極層E21のシード層が、陰極端子2の側面(YZ面)に接触する。これらの最下層の電極層は、接着性が高い材料を用いているので、これらの端子と電極層が、良好に接着する。
【0168】
図29は、陽極端子及び陰極端子を含む領域近傍の縦断面図である。
【0169】
本例では、陽極端子1及び陰極端子2を、第1側面電極E1及び第2側面電極E2と同時に形成して製造された電極積層構造を開示している。この場合、固体電解コンデンサのX軸方向の両端位置において、材料構成が同じ層が、連続する構成となる。
【0170】
すなわち、陽極端子1の第1陽極電極層1Aと、第1側面電極E1の第1電極層E11とは、連続している。同様に、第2陽極電極層1Bと、第2電極層E12とは、連続している。第3陽極電極層1Cと、第3電極層E13とは、連続している。陽極端子1のシード層と、第1側面電極E1のシード層も連続している。
【0171】
同様に、陰極端子2の第1陰極電極層2Aと、第2側面電極E2の第1電極層E21とは、連続している。第2陰極電極層2Bと、第2電極層E22とは、連続している。第3陰極電極層2Cと、第3電極層E23とは、連続している。陰極端子2のシード層と、第2側面電極E2のシード層も連続している。
【0172】
これらの電極層の材料は、上述の通りである。
【0173】
図30は、図29に示した構造の製造工程を説明する図である。同図では、陽極端子及び陰極端子を含む領域近傍の縦断面図が示されている。
【0174】
この製造方法においては、上述の溝形成工程(図16)以前に工程において、陽極端子1及び陰極端子2は形成されない。その後の側面電極の形成工程(図17)において、側面電極を形成する前に、マスクMKを形成する(図30)。マスクMKは、支持基板7の表面に形成される。マスクMKの材料は、絶縁材料であり、レジスト樹脂材料、又は、無機絶縁材料などを用いることができる。マスクMKは、陽極端子1及び陰極端子2の形成予定領域の間の領域に形成される。マスクMKの平面パターン(XY平面上のパターン)は、Y軸に沿ったストライプ形状とすることができる。マスクMKの形成後、第1側面電極E1、第2側面電極E2、陽極端子1、陰極端子2を、同時に形成する。すなわち、これらを構成する各電極層を、順番に積層する。これらの電極積層構造を形成した後、マスクMKは、除去することができるが、除去しないで、残しておいてもよい。
【0175】
なお、上述のエッチング工程(図14参照)の前後に形成される溝パターンの形状と、固体電解コンデンサの構造との関係について、補足的に説明する。
【0176】
図31(A)は、第1タイプの固体電解コンデンサの縦断面図(YZ断面図)である。この固体電解コンデンサの製造時においては、図13に示した溝形成工程において、第1の溝パターンを形成する。第1の溝パターンの平面形状(XY平面形状)は、長方形格子である。第1の溝パターンは、X軸方向に延びた複数のX溝と、Y軸方向の延びた複数のY溝(図13参照)とを備えている。次に、第1の溝パターンに対してエッチング工程(図14参照)を実行し、しかる後、樹脂充填を行う(図15参照)。この場合、最終工程の終了後に、同図に示した第1タイプの固体電解コンデンサが完成する。
【0177】
第1タイプの固体電解コンデンサにおいては、陽極電極層8のY軸方向の両端部は、突出部を備えている。すなわち、図13に示した溝パターンの形成工程において、X軸方向に延びた複数のX溝が形成されているので、X溝の内壁面を構成するXZ平面がエッチング時に露出している。したがって、エッチング工程(図14)において、露出したX溝の内壁面がエッチングされ、陽極電極層8のY軸方向の両端部もサイドエッチングされ、尖ることとなる。エッチング後の樹脂充填工程(図15)においては、陽極電極層8におけるY軸方向の一方端に位置する空間内に樹脂が充填されることで絶縁部162Bが形成され、他方端に位置する空間内に樹脂が充填されることで絶縁部162Cが形成される。
【0178】
図31(B)は、第2タイプの固体電解コンデンサの縦断面図(YZ断面図)である。この固体電解コンデンサの製造時においては、図13に示した溝形成工程において、第2の溝パターンを形成する。第2の溝パターンの平面形状(XY平面形状)は、Y軸方向の延びた複数のY溝のみからなるストライプである(図13参照)。次に、第2の溝パターンに対してエッチング工程(図14参照)を実行し、しかる後、第3の溝パターンを形成する。第3の溝パターンの平面形状(XY平面形状)は、X軸方向の延びた複数のX溝のみからなるストライプである。しかる後、樹脂充填を行う(図15参照)。この場合、最終工程の終了後に、同図に示した第2タイプの固体電解コンデンサが完成する。
【0179】
第2タイプの固体電解コンデンサにおいては、陽極電極層8のY軸方向の両端部は、突出部を備えておらず、この両端部の先端面を含むXZ面は平坦である。すなわち、エッチング前の溝形成工程(図13)において、X溝は形成されておらず、エッチング工程(図14)後の第3の溝パターンの形成時において、X溝(溝の内壁面は平坦なXZ面)が形成される。この工程後の樹脂充填工程(図15)においては、X溝内に絶縁性の樹脂が充填され、XZ面は樹脂膜で被覆されることとなる。第2タイプの固体電解コンデンサの製造方法においては、平坦な側面を有するX溝内へ樹脂を充填するため、樹脂充填が容易となり、設計の自由度が高くなる。
【0180】
以上、種々の例示的実施形態について説明してきたが、上述した例示的実施形態に限定されることなく、様々な省略、置換、及び変更がなされてもよい。また、異なる実施形態における要素を組み合わせて他の実施形態を形成することが可能である。また、以上の説明から、本開示の種々の実施形態は、説明の目的本明細書において説明されており、本開示の範囲及び主旨から逸脱することなく種々の変更をなし得ることが、理解されるであろう。したがって、本明細書に開示した種々の実施形態は限定することを意図しておらず、真の範囲と主旨は、添付の特許請求の範囲によって示される。
【符号の説明】
【0181】
1…陽極端子、2…陰極端子、7…支持基板、8…陽極電極層、9…誘電体層、100…積層体、10…絶縁領域、12…固体電解質層、14…陰極電極層、16…保護絶縁体、162…絶縁部、CE1…第1固体電解コンデンサ要素、CE2…第2固体電解コンデンサ要素、E1…第1側面電極、E1B…第1屈曲部、E2…第2側面電極、E2B…第2屈曲部、IF1,IF2…絶縁シート、L1,L2…寸法、S1…第1側面、S2…第2側面、80…金属シート、162…絶縁部、300…積層シート、GR1…第1溝、GR2…第2溝、x1…第1位置、x2…第2位置、D1…第1距離、D2…第2距離。
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