(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155412
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】車線推定方法及び車線推定装置
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20241024BHJP
G01C 21/30 20060101ALI20241024BHJP
B60W 40/06 20120101ALI20241024BHJP
B60W 30/12 20200101ALI20241024BHJP
【FI】
G08G1/16 D
G01C21/30
B60W40/06
B60W30/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023070105
(22)【出願日】2023-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】弁理士法人とこしえ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】酒井 佳奈子
(72)【発明者】
【氏名】土谷 千加夫
【テーマコード(参考)】
2F129
3D241
5H181
【Fターム(参考)】
2F129AA03
2F129BB03
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2F129GG03
2F129GG04
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2F129GG06
3D241BA12
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3D241DC35Z
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5H181AA01
5H181CC03
5H181CC04
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5H181CC12
5H181CC14
5H181CC24
5H181FF04
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5H181LL01
5H181LL02
5H181LL04
5H181LL09
5H181LL15
(57)【要約】
【課題】地図データの車線数の情報が利用できない場合であっても、自車両が走行している道路に含まれる車線のうち、自車両がどの車線を走行しているかを判断できる車線推定方法及び車線推定装置を提供することである。
【解決手段】本発明は、地図情報から走行道路のリンク線の位置情報を取得し、周囲情報に基づいて、対象車線境界線を推定し、対象車線境界線のうちリンク線から最も離れた位置にある車線境界線とリンク線との間の対象距離に基づいて、走行道路の道路幅を推定し、道路幅と、走行道路における1車線あたりの車線幅とに基づいて、走行道路の車線数を推定し、推定した車線数の車線で構成される走行道路と、自車両の現在位置とに基づいて、自車両が走行する走行車線を推定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車線推定装置によって実行される車線推定方法であって、
前記車線推定装置は、
道路ごとにひとつのリンク線によって表される地図情報から、自車両が走行する走行道路の前記リンク線の位置情報を取得し、
前記自車両に搭載されたセンサによって、前記自車両周囲の走行環境を含む周囲情報を取得し、
前記周囲情報に基づいて、前記走行道路に含まれる車線境界線を対象車線境界線として推定し、
推定した前記対象車線境界線のうち前記リンク線から最も離れた位置にある前記車線境界線と、前記リンク線との間の対象距離に基づいて、前記走行道路の道路幅を推定し、
前記道路幅と、前記走行道路における1車線あたりの車線幅とに基づいて、前記走行道路に含まれる車線数を推定し、
推定した前記車線数の車線で構成される前記走行道路と、前記自車両の現在位置とに基づいて、前記自車両が走行する走行車線を推定する車線推定方法。
【請求項2】
前記車線推定装置は、
前記周囲情報に基づいて、前記リンク線との平行度が所定の平行度閾値以上の車線境界線を前記対象車線境界線として推定する請求項1に記載の車線推定方法。
【請求項3】
前記車線推定装置は、
前記自車両が、交差点から所定の距離以内に位置する交差点前道路を走行している場合には、前記自車両が、前記交差点前道路以外の道路を走行している場合よりも、前記所定の平行度閾値を低く設定する請求項2に記載の車線推定方法。
【請求項4】
前記車線推定装置は、
交差点から所定の距離以内に位置する前記リンク線が、途中で角度が変化する第1点を有する場合には、前記車線境界線から垂直方向に前記リンク線上の第2点までの距離を前記対象距離として算出し、
前記第2点は、前記リンク線の前記第1点より自車両の進行方向前方側に位置する請求項1又は2に記載の車線推定方法。
【請求項5】
前記車線推定装置は、
前記対象距離を2倍にした値を前記道路幅として推定する請求項1又は2に記載の車線推定方法。
【請求項6】
前記車線推定装置は、
前記地図情報から、前記走行道路が接続する交差点の形状を取得し、
前記形状と、前記周囲情報に含まれる矢印の路面標示とに基づいて、前記対象車線境界線を推定する請求項1又は2に記載の車線推定方法。
【請求項7】
前記車線推定装置は、
前記周囲情報に基づいて認識された車線の車線境界線が破線である場合に、認識された前記車線に対して前記破線側に隣接する車線の車線境界線を前記対象車線境界線として推定する請求項1又は2に記載の車線推定方法。
【請求項8】
前記走行道路は、交差点に進入する進入道路であって、
前記車線推定装置は、
前記自車両の目的地までの走行経路に基づいて、前記交差点に進入する時に前記自車両が走行すべき進入車線を特定し、
前記走行車線と、前記進入車線と、前記車線数とに基づいて、前記走行車線から前記進入車線まで車線変更するために必要な車線変更回数を算出し、
前記車線変更回数と、前記自車両の現在位置から前記交差点までの距離に基づいて、前記走行車線から前記進入車線までの車線変更が可能か否かを判定する請求項1又は2に記載の車線推定方法。
【請求項9】
道路ごとにひとつのリンク線によって表される地図情報から、自車両が走行する走行道路の前記リンク線の位置情報を取得するリンク取得部と、
前記自車両に搭載されたセンサによって、前記自車両周囲の走行環境を含む周囲情報を取得する周囲情報取得部と、
前記周囲情報に基づいて、前記走行道路に含まれる車線境界線を対象車線境界線として推定する境界線推定部と、
推定した前記対象車線境界線のうち前記リンク線から最も離れた位置にある前記車線境界線と、前記リンク線との間の対象距離に基づいて、前記走行道路の道路幅を推定する道路幅推定部と、
前記道路幅と、前記走行道路における1車線あたりの車線幅とに基づいて、前記走行道路に含まれる車線数を推定する車線数推定部と、
推定した前記車線数の車線で構成される前記走行道路と、前記自車両の現在位置とに基づいて、前記自車両が走行する走行車線を推定する走行車線推定部と、を備える車線推定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車線推定方法及び車線推定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地図データに記録されている走行車線数の情報を参照し、白線検出処理によって検出した白線の位置関係により、自車両が走行している車線を判断する技術が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の技術では、地図データが車線数の情報を記録していないなど、地図データの車線数の情報が利用できない場合、自車両が走行している道路の車線数の情報が参照されないため、当該道路に含まれる車線のうち、自車両がどの車線を走行しているかを判断できないという問題がある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、地図データの車線数の情報が利用できない場合であっても、自車両が走行している道路に含まれる車線のうち、自車両がどの車線を走行しているかを判断できる車線推定方法及び車線推定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、地図情報から走行道路のリンク線の位置情報を取得し、周囲情報に基づいて、対象車線境界線を推定し、対象車線境界線のうちリンク線から最も離れた位置にある車線境界線とリンク線との間の対象距離に基づいて、走行道路の道路幅を推定し、道路幅と、走行道路における1車線あたりの車線幅とに基づいて、走行道路の車線数を推定し、推定した車線数の車線で構成される走行道路と、自車両の現在位置とに基づいて、自車両が走行する走行車線を推定することによって上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、地図データの車線数の情報が利用できない場合であっても、自車両が走行している道路に含まれる車線のうち、自車両がどの車線を走行しているかを判断できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態に係る車線推定装置を備える車両制御装置の構成を示す構成図である。
【
図2】本実施形態に係る境界線推定処理及び対象車線推定処理の一例を説明するための図である。
【
図3】本実施形態に係る境界線推定処理の一例を説明するための図である。
【
図4】本実施形態に係る所定の平行度閾値の設定方法の一例を説明するための図である。
【
図5】本実施形態に係る道路幅推定処理の一例を説明するための図である。
【
図6】本実施形態に係る対象距離算出処理の一例を説明するための図である。
【
図7】本実施形態に係る車線数推定処理の一例を説明するための図である。
【
図8】本実施形態に係る車線推定方法の制御処理のフローを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態では、本発明の実施形態に係る車線推定装置を、車両制御装置に適用した場合を例にして説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る車線推定装置を備える車両制御装置の構成を示す図である。
図1に示すように、車両制御装置1は、車線推定装置10と、センサ群11と、自車位置検出装置12と、地図データベース13と、ナビゲーションシステム14と、入力装置15と、出力装置16と、制御装置17と、駆動制御装置18と、を有している。これら装置は、車両に搭載されている装置であって、相互に情報の授受を行うためにCANその他の車載LANによって接続されている。
【0010】
車両制御装置1は、自車両の自律運転を制御する装置である。車両制御装置1は、自車両の現在位置から目的地までの走行経路に沿って走行するように自車両の自律運転制御を行う。車両制御装置1は、センサ群11及び地図データベース13から各種情報を取得し、取得した情報に基づいて、自車両が走行経路に沿って走行するために必要な制御を決定し、自車両の走行を制御する。例えば、車両制御装置1は、自車両の車線変更が必要か否かを決定し、自車両の車線変更制御を行う。
【0011】
本実施形態では、車両制御装置1は、高精度地図情報を用いずに自車両の自律運転を制御する。具体的には、車両制御装置1が用いる地図情報は、道路の車線数などの車線情報を含まず、ノードとリンクの道路情報を含む。車両制御装置1は、参照する地図情報に車線情報が記録されていないため、センサ群11によって取得された周囲情報と、地図データベース13の地図情報から取得されたリンク線の情報とに基づいて、自車両が走行する道路の車線数などを推定する。車両制御装置1は、推定した車線数等を含む車線情報を用いて、自車両の車線変更の可否を判断する。なお、本実施形態では、地図情報に車線数などの車線情報が記録されていない場合に限らず、地図情報の車線数が利用できない場合であれば、他の状況でも適用されうる。例えば、地図情報が古くて、車線数などの車線情報が利用できない場合などにおいても、適用されうる。
【0012】
ここで、自車両が交差点手前の道路を走行している場面での本実施形態に係る車線推定方法について説明する。例えば、自車両が走行する道路が、交差点手前に位置し、自車両が交差点に進入する進入道路である場合、進入道路は、交差点手前で、交差点における進行方向ごとに複数の車線に分かれている場合がある。この場合、車両制御装置1は、自車両の走行経路から交差点における進行方向を特定して、特定した進行方向に対応する車線を走行して交差点に進入するように自車両の自律運転を制御する。このとき、車両制御装置1は、進入道路に含まれる複数の車線のうち、自車両が走行している走行車線と、自車両が交差点に進入する時に走行すべき目標車線(交差点における進行方向に対応する車線)とを特定し、走行車線から目標車線までの車線変更が可能か否かの判断を行う。例えば、自車両が交差点で右折するために一番右側の車線を走行する必要がある場合には、車両制御装置1は、走行車線から一番右側の車線に車線変更が可能か否かを判断する。
【0013】
走行車線と目標車線を特定する場面で、進入道路の車線数を含む車線情報が地図情報から取得できない場合、従来の技術では、車線情報をセンサの情報から取得する必要がある。しかし、センサの検出範囲には限界があるため、センサの情報からは、道路全体の車線情報が取得できず、走行車線及び目標車線がそれぞれ何番目の車線か正確に判断できないことがある。例えば、センサによって、走行車線と隣接車線を認識できても、隣接車線が一番右側にある目標車線か、隣接車線のさらに隣にある別の車線が一番右側の目標車線かなど正確に判断することが難しい。そのため、従来の技術では、自車両がどの車線を走行すべきなのか、適切な車線選択が実現できず、車線変更の判断を誤る可能性が高くなる。
【0014】
本実施形態では、地図情報に車線数などの車線情報が含まれない場合であっても、センサ群11で取得した周囲情報と、リンク線の情報とに基づいて、車線数を含む車線情報を推定することで、進入道路に含まれる複数の車線のうち、自車両がどの車線を走行しているのかをより正確に判断し、適切な車線選択が可能になる。以下、各装置について説明する。なお、以下の説明では、自車両が交差点に進入する進入道路を走行している場面を例として説明するが、これに限らず、車線変更が必要な場面であればよい。例えば、自車両が高速道路を走行している場合に、高速道路の出口に向かうために出口に最も近い車線への車線変更が必要な場面であってもよい。
【0015】
センサ群11は、自車両に搭載されているセンサであって、自車両周囲の走行環境を検出する。センサ群11としては、例えば、撮像装置、測距装置が挙げられる。撮像装置は、画像により自車両の周囲の対象を撮像した周囲画像を取得する。撮像装置は、たとえば、CCD等の撮像素子を備えるカメラ、超音波カメラ、赤外線カメラなどのカメラである。撮像装置は、一台の車両に複数設けることができ、たとえば、車両の前方、右側方、左側方、後方に配置できる。測距装置は、自車両と周囲の対象との相対距離及び相対速度を演算する装置であって、たとえば、レーザーレーダー、ミリ波レーダーなど(LRF等)、LiDARユニット、超音波レーダーなどのレーダー装置又はソナーである。測距装置は、一台の車両に複数設けることができ、たとえば、車両の前方、右側方、左側方、及び後方に配置できる。センサ群11の検出結果は、自車両の周囲情報として、ナビゲーションシステム14及び車線推定装置10に出力される。
【0016】
センサ群11が検出する検出対象は、例えば、自転車、バイク、自動車(以降、他車両ともいう)、路上障害物、交通信号機、路面標示、及び、道路構造物が挙げられる。路面標示は、車線境界線、センターラインなどの区画線、進行方向の矢印などの道路標示を含む。区画線は、車線を区画するために道路上に描かれた線であって、白色、オレンジ、または黄色などの実線、二重線、破線などを含む。道路構造物は、中央分離帯、ガードレール、縁石、高速道路の側壁を含む。また、センサ群11は、自車両の現在位置を基準とした自車両周囲の対象の相対位置を取得する。センサ群11は、周期的に他車両などの移動物体の位置情報を取得してもよい。本実施形態では、センサ群11は、自車両が走行している走行道路の車線を推定するために必要な情報を含む周囲情報を取得する。例えば、周囲情報は、白線や矢印などの路面標示、道路構造物及び移動物体の位置を含む。
【0017】
自車位置検出装置12は、現在の自車両の位置を示す位置情報を取得する装置である。自車位置検出装置12は、例えば、GPSユニット、ジャイロセンサなどから構成されている。自車位置検出装置12は、GPSユニットにより複数の衛星通信から送信される電波を検出し、自車両の位置情報を周期的に取得するとともに、取得した自車両の位置情報と、ジャイロセンサから取得した角度変化情報と、車速センサ(不図示)から取得した車速に基づいて、自車両の現在位置を検出する。自車位置検出装置12が取得した位置情報は、車線推定装置10、ナビゲーションシステム14及び制御装置17へ出力される。
【0018】
地図データベース13は、地図情報を格納している。地図情報は、道路情報を含む。道路情報は、ノードとリンクの情報を備え、ノードと、ノード間を接続する道路区間を表すリンク(道路リンク)により定義される。ノードは、交差点や分岐点などの道路上の特定の地点を表す。ノードの情報は、個々のノードごとに、ノードを識別する識別番号(ノードID)、緯度・経度の位置情報、ノードに接続する道路リンクの識別番号(リンクID)等が関連付けられた情報である。道路リンクの情報は、道路リンクごとに、道路種別、通行方向、道路リンクを表すリンク線の位置(緯度・経度の位置)が関連付けられた情報である。また、道路情報は、各道路リンクの識別情報ごとに、交差点の位置、交差点の進入方向、交差点の形状、交差点の種別その他の交差点に関する情報を対応づけて記憶する。なお、本実施形態では、地図情報は、いわゆる高精度地図の情報ではなく、道路ごとの車線数などの車線情報を含まない。
【0019】
本実施形態の地図情報は、道路ごとに、ひとつのリンク線によって表される。リンク線は、道路の中心線上に位置する。道路は1条線道路と2条線道路とに分けられる。1条線道路は、道路の上下線をひとつのリンク線で表現している道路である。2条線道路は、例えば中央分離帯などの道路構造物によって物理的に上下線に分かれていて、上り方向の道路及び下り方向の道路をそれぞれひとつのリンク線で表現している道路である。1条線道路の道路リンクの通行方向は、双方向に通行可能である。2条線道路の道路リンクの進行方向は、道路リンクごとに、一方通行に通行可能である。地図データベース13に格納された地図情報は、ナビゲーションシステム14及び車線推定装置10に出力される。これにより、ナビゲーションシステム14及び車線推定装置10は、地図情報を取得する。
【0020】
ナビゲーションシステム14は、自車両の現在位置から目的地までの経路を乗員に提示するシステムである。ナビゲーションシステム14には、自車位置検出装置12から自車両の現在位置の情報が入力される。また、乗員が後述する入力装置15を介して自車両の目的地の情報を入力すると、ナビゲーションシステム14には、目的地の情報が入力される。ナビゲーションシステム14は、入力された各種情報に基づいて、自車両の現在位置から目的地までの走行経路を生成する。走行経路は、現在位置から目的地まで走行するために自車両が通過する各道路区間の道路リンクによって構成される。そして、ナビゲーションシステム14が生成した走行経路を示す経路情報は、後述する出力装置16を介して、乗員に出力される。また経路情報は車線推定装置10に出力される。これにより、車線推定装置10は、自車両の走行経路に関する情報を取得する。
【0021】
入力装置15は、例えば、運転者の手操作による入力が可能なダイヤルスイッチ、ディスプレイ画面上に配置されたタッチパネル又は運転者の音声による入力が可能なマイクなどの装置である。入力装置15に入力された情報は、車線推定装置10及びナビゲーションシステム14に出力される。入力装置15に入力される情報は、例えば、自車両の目的地の情報である。
【0022】
出力装置16は、ナビゲーションシステム14が備えるディスプレイ、ルームミラーに組み込まれたディスプレイ、メーター部に組み込まれたディスプレイ、フロントガラスに映し出されるヘッドアップディスプレイ、あるいは、オーディオ装置が備えるスピーカーなどの装置である。出力装置16は、ナビゲーションシステム14から入力される経路情報を乗員に出力する。また、出力装置16は、車両制御装置1の制御に従って自車両にどのような制御が行われているかを示す情報を乗員に出力する。例えば、車両制御装置によって自車両の車線変更が実行される場合には、出力装置16は、車線変更が行われることを示す情報を出力する。なお、本実施形態では、
図1に示すように、入力装置15と出力装置16を別の装置として備える車線推定装置10を例に挙げて説明するが、例えば、タッチパネル等、入力装置15と出力装置16は一体的な装置で構成されていてもよい。
【0023】
制御装置17は、自車両の走行を制御するためのプログラムを格納したROMと、このROMに格納されたプログラムを実行するCPUと、アクセス可能な記憶装置として機能するRAMとから構成される。制御装置17は、ROMに格納されたプログラムをCPUにより実行することにより、自車両の走行を制御するための各機能を実現する。具体的には、制御装置17は、自車両の走行に関する情報、及び、周囲情報に基づいて、自車両の周囲の走行環境を認識し、自車両が走行経路に沿って走行するように自車両の走行を制御する。例えば、制御装置17は、自車両の走行制御のための制御量(目標車速、操舵角を含む)を算出し、制御量に応じた制御信号を駆動制御装置18に出力する。
【0024】
また、本実施形態では、制御装置17は、車線推定装置10による車線推定の結果に基づいて、自車両の車線変更制御を実行する。例えば、車線推定装置10から、自車両が走行している走行道路の車線数を含む車線情報を取得し、走行道路に含まれる車線のうち、自車両が走行すべき目標車線を選択する車線選択処理を行う。選択した目標車線に車線変更する必要がある場合には、制御装置17は、自車両周囲の走行環境を認識して車線変更が可能か否かを判定する。車線変更が可能であると判定した場合、制御装置17は、自車両の車線変更を実行させる。例えば、制御装置17は、車線変更制御を実行するための制御量を算出し、算出した制御量に応じた制御信号を駆動制御装置18に出力する。また、制御装置17は、車線推定装置10から、車線変更が可能か否かの判定結果を取得して、車線変更制御の判断に用いることとしてもよい。例えば、制御装置17は、車線推定装置10によって車線変更が可能ではないと判定された場合には、交差点における走行経路を再設定(リルート)してもよい。自車両が交差点で右折する必要がある場合に、右折のための車線まで車線変更できないときには、制御装置17は、交差点で右折する走行経路から、交差点を直進してから迂回する走行経路に、走行経路を再設定する。
【0025】
駆動制御装置18は、自車両の走行を制御する。駆動制御装置18は、ブレーキ制御機構、アクセル制御機構、エンジン制御機構、及びHMI(ヒューマンインターフェイス)機器等を備えている。駆動制御装置18には、制御装置170から制御信号が入力される。駆動制御装置18は、制御装置17の制御に応じて、駆動機構の動作(エンジン自動車にあっては内燃機関の動作、電気自動車系にあっては電動モータ動作を含み、ハイブリッド自動車にあっては内燃機関と電動モータとのトルク配分も含む)、ブレーキ動作、及びステアリングアクチュエータの動作等を制御することで、自車両の自律運転を実行する。また駆動制御装置18は、制御装置17からの制御信号に応じて、車両の各輪の制御量を制御することで自車両の移動方向を制御してもよい。なお、各機構の制御は、完全に自動で行われてもよいし、運転者の運転操作を支援する態様で行われてもよい。
【0026】
車線推定装置10は、自車両が走行する走行道路の車線を推定する車線推定処理を実行する。車線推定処理では、車線推定装置10は、走行道路の車線数と、走行道路に含まれる車線のうち、自車両が走行する走行車線とを推定する。すなわち、車線推定装置10は、走行道路が何車線ある道路か、走行道路に含まれる車線のうち走行車線が何番目の車線かを推定する。車線推定装置10は、自車両が走行すべき目標車線が何番目の車線かを推定してもよい。車線推定装置10は、車線推定処理を実行するためのプログラムを格納したROMと、このROMに格納されたプログラムを実行するCPUと、アクセス可能な記憶装置として機能するRAMとから構成される。
【0027】
車線推定装置10は、機能ブロックとして、リンク取得部101と、周囲情報取得部102と、境界線推定部103と、道路幅推定部104と、車線数推定部105と、走行車線推定部106と、判定部107と、を備える。車線推定装置10は、ROMに格納されたプログラムをCPUにより実行することにより、上記各機能を実現する。
【0028】
リンク取得部101は、地図データベース13に格納されている地図情報から、自車両が走行する走行道路のリンク線の位置情報を取得する。本実施形態では、リンク取得部101は、自車位置検出装置12から取得した自車両の現在位置及び地図データベース13から取得した地図情報に基づいて、地図上における自車両の現在位置を特定し、自車両が走行する走行道路を特定する。リンク取得部101は、特定した走行道路のリンク線の位置情報を取得する。また、リンク取得部101は、地図データベース13に格納されている地図情報から、走行道路の道路情報を取得する。道路情報は、道路リンクの情報、交差点に関する情報を含む。リンク取得部101は、リンク線を基準とした自車両の現在位置を算出してもよい。例えば、リンク取得部101は、自車両とリンク線との間の距離を算出する。なお、以下の説明では、走行道路が、上り方向の道路及び下り方向の道路のいずれか一方の道路である場面を例に説明する。この場合、リンク取得部101は、自車両の走行経路に応じて、自車両の進行方向と同じ通行方向の道路のリンク線の位置情報を取得する。なお、本実施形態では、これに限らず、例えば、走行道路は1条線道路であってもよい。
【0029】
周囲情報取得部102は、センサ群11によって、自車両周囲の走行環境を含む周囲情報を取得する。周囲情報は、自車両周囲にある路面標示、道路構造物及び移動物体などの自車両周囲の対象を含む。例えば、周囲情報は、例えば、周囲画像である。周囲情報取得部102は、自車両周囲の路面を撮像した周囲画像を取得する。周囲情報取得部102は、自車両に対する自車両周囲の対象の相対位置を取得する。また、周囲情報取得部102は、他車両などの移動物体が検出される場合には、移動物体の位置を周期的に取得し、取得した移動物体の位置の軌跡を移動物体の走行軌跡として演算してもよい。
【0030】
また、境界線推定部103は、周囲情報に基づいて、走行道路に含まれる対象車線境界線を推定する。境界線推定部103は、周囲情報取得部102によって取得した自車両周囲の路面を含む周囲画像に対して画像認識処理を実行する。境界線推定部103は、画像認識処理によって白線などの区画線を認識した場合には、認識された区画線を対象車線境界線として推定する。また、境界線推定部103は、認識された区画線の間の領域を走行道路に含まれる対象車線として推定することとしてもよい。本実施形態では、対象車線境界線は、地図情報の車線境界線とは異なる車線境界線であって、センサによる認識結果に基づいて推定される車線境界線である。認識結果には、路面標示、道路構造物及び移動物体を含む。
【0031】
また、境界線推定部103は、周囲情報に基づいて、センサ群11の検出範囲外に、認識されていない区画線を対象車線境界線として推定してもよい。さらに、境界線推定部103は、推定された区画線により区画される車線を対象車線として推定してもよい。境界線推定部103は、地図情報から、走行道路が接続する交差点の形状を取得し、交差点の形状と、周囲情報に含まれる矢印の路面標示とに基づいて、対象車線境界線を推定する。例えば、境界線推定部103は、交差点の形状に基づいて、交差点において進行可能な方向を特定する。交差点の形状は、例えば、十字路、丁字路である。交差点において進行可能な方向は、例えば、直進、左折及び右折である。また、境界線推定部103は、周囲画像から路面標示を認識する。路面標示は、直進、左折又は右折を表す矢印である。境界線推定部103は、交差点の形状が十字路であって、左折及び右折が可能な形状であり、かつ、路面上に直進を示す矢印がある場合、直進を表す矢印がある車線の左右にそれぞれ対象車線境界線があると推定する。例えば、境界線推定部103は、直進を表す矢印がある車線を区画する左右の車線境界線から所定の車線幅離れた位置に対象車線境界線を推定する。所定の車線幅は、予め設定された値、例えば、3mであってもよいし、認識している区画線の間の長さと同じ値であってもよい。
【0032】
また、境界線推定部103は、周囲情報に基づいて認識された車線の車線境界線が破線である場合には、当該車線に対して破線側に隣接する車線の車線境界線を対象車線境界線として推定してもよい。これは、認識された車線を区画する白線が破線である場合には、当該車線の破線側に隣接車線があると考えられるためである。また、境界線推定部103は、周囲情報に基づいて、自車両周囲に他車両が認識される場合には、他車両の情報に基づいて、対象車線境界線を推定してもよい。例えば、境界線推定部103は、他車両の位置が、認識されている車線境界線から所定の距離の範囲内にあり、かつ、他車両の走行軌跡と車線境界線との平行度が高い場合には、他車両の走行軌跡に沿って対象車線境界線を推定する。所定の距離は、例えば、所定の車線幅である。本実施形態では、境界線推定部103は、認識されている車線境界線から所定の車線幅離れた位置に対象車線境界線があると推定する。所定の車線幅は、予め設定された値、例えば、3mであってもよいし、認識している区画線の間の長さと同じ値であってもよい。
【0033】
図2を用いて、本実施形態に係る境界線推定処理及び対象車線推定処理の一例について説明する。
図2は、本実施形態に係る境界線推定処理及び対象車線推定処理の一例を説明するための図である。
図2では、自車両V1が交差点に進入する進入道路Rを走行している。境界線推定部103は、自車両V1のセンサ群11によって取得された周囲情報に基づいて、自車両V1の周囲に位置する路面標示S1と、白線L1、L2とを認識する。認識された白線L1、L2が対象車線境界線として推定される。路面標示S1は、直進を示す矢印である。白線L1、L2は、破線である。このとき、境界線推定部103は、白線L1及び白線L2によって区画される車線LA1を対象車線として推定する。
【0034】
また、境界線推定部103は、直進を示す矢印の路面標示S1を認識する場合には、路面標示S1の表示がある車線LA1の左右に、左折のための車線LA2、右折のための車線LA3を推定する。例えば、境界線推定部103は、白線L1から車線LA1とは反対側に所定の車線幅離れた位置に白線L3を推定する。車線LA2は、白線L1と白線L3により区画される車線である。境界線推定部103は、白線L2から車線LA1とは反対側に所定の車線幅離れた位置に白線L4を推定する。車線LA3は、白線L2と白線L4により区画される車線である。車線LA2に左折を示す矢印S2、車線LA3に右折を示す矢印S3があると推定される。また、境界線推定部103は、認識した白線L1、L2が破線である場合に、車線LA1の左右に所定の車線幅離れた位置に白線L3、L4を推定してもよい。また、境界線推定部103は、白線L1と白線L3とによって区画された車線を車線LA2として推定し、白線L2と白線L4とによって区画された車線を車線LA3として推定してもよい。以上のように、
図2の例では、境界線推定部103は、白線L1、L2、L3、L4を対象車線境界線として推定し、車線LA1、LA2、LA3を対象車線として推定する。以上のように、本実施形態では、対象車線は、センサの周囲情報により認識された区画線及び/又は推定された区画線によって区画される車線である。区画線の推定は、周囲情報により認識された自車両周囲の対象の情報に基づく。対象車線境界線及び対象車線が推定される条件は、自車両周囲の対象の状況と関連付けられて、データベース等に格納されている。
図2の例で示されるように、白線L3、L4は、周囲情報から実際に認識された車線境界線ではなく、周囲情報から論理的に推定された車線境界線である。本実施形態では、センサの検出範囲外に対象車線の存在を推定することで、走行道路に、センサの情報で認識される車線数よりも多くの車線が含まれることが想定される。これにより、地図情報から車線数の情報が取得できない場合よりも、車線数を過小評価することなく車線数の情報を取得できる。特に、車線数が少なく見積もられた場合、車線変更において、本来必要な車線変更回数よりも少ない回数で目標車線まで車線変更できると判断してしまうため、車線変更が間に合わず、自車両が目標車線に入れないということが起こりうる。本実施形態では、車線数をより多く見積もることで、本来必要な車線変更回数よりも少ない回数で目標車線まで車線変更できると判断することを抑制できる。
【0035】
境界線推定部103は、対象車線境界線の推定後、対象車線境界線のうちリンク線から最も離れた位置にある車線境界線(道路端)を推定する道路端推定処理を行う。当該車線境界線が走行道路の道路端として推定される。以下、各車線境界線のうち、自車両に対して最も右側に位置する車線境界線を右側道路端候補とし、最も左側に位置する車線境界線を左側道路端候補とする。
図2の例では、左側道路端候補が白線L3となり、右側の道路端候補が白線L4となる。境界線推定部103は、右側道路端候補とリンク線との間の距離、及び、左側道路端候補とリンク線との間の距離を算出し、算出した距離を比較して、リンク線から最も離れた位置にある車線境界線を走行道路の道路端として推定する。各車線境界線とリンク線との間の距離は、自車両の現在位置とリンク線との間の距離と、自車両の現在位置と各車線境界線との間の距離とに基づいて算出される。
【0036】
また、本実施形態では、境界線推定部103は、境界線推定処理において、周囲情報に基づいて、走行道路のリンク線との平行度が所定の平行度閾値以上の車線境界線を対象車線境界線として推定してもよい。すなわち、リンク線との平行度が所定の平行度閾値未満の車線境界線が認識されたとしても、当該車線境界線は対象車線境界線から除外される。自車両周囲に位置する車線境界線であっても、走行道路から分岐する道路の車線境界線など、走行道路の車線とは関係のない車線境界線が認識されることがある。そのため、このような車線境界線が対象車線境界線から除外されることで、走行道路に含まれる車線数をより正確に把握できる。平行度は、例えば、車線境界線とリンク線との間の相対角度を演算することにより算出することができる。算出された相対角度が小さいほど、すなわち0°に近いほど、平行度は高く算出され、逆に、相対角度が大きいほど、平行度は低く算出される。なお、本実施形態では、相対角度から算出した平行度と閾値とを比較することとしているが、これに限らず、相対角度と閾値とを比較してもよい。この場合には、例えば、相対角度が所定の角度閾値未満の車線境界線が対象車線境界線として推定される。
【0037】
また、走行道路から分岐する分岐道路があるなど、自車両周囲に、走行道路のリンク線とは異なる他のリンク線がある場合、境界線推定部103は、周囲情報に基づいて認識された車線境界線と当該他のリンク線との平行度に基づいて対象車線境界線を推定してもよい。例えば、境界線推定部103は、他のリンク線との平行度が所定の平行度閾値未満の車線境界線を対象車線境界線として推定する。すなわち、他のリンク線との平行度が所定の平行度閾値以上の車線境界線が認識されても、当該車線境界線は対象車線境界線から除外される。これは、他のリンク線との平行度が高い車線境界線は、走行道路に含まれる車線境界線ではなく、分岐道路に含まれる車線境界線である可能性が高いためである。また、境界線推定部103は、各車線境界線に対して、走行道路のリンク線との平行度と、他のリンク線との平行度とを比較して、走行道路のリンク線との平行度が他のリンク線との平行度よりも高い場合に、当該車線境界線を対象車線境界線として推定してもよい。
【0038】
ここで、
図3を用いて、対象車線境界線の推定方法の一例について説明する。
図3は、本実施形態に係る境界線推定処理の一例を説明するための図である。自車両V1が走行している走行道路R1から分岐する分岐道路R2がある。白線L1、L2、L3が認識されている。また、走行道路R1のリンク線はリンク線LL1であり、分岐道路R2のリンク線はリンク線LL2である。境界線推定部103は、各白線と各リンク線との平行度を算出する。算出された平行度と平行度閾値との比較によって、白線L3とリンク線LL1との平行度が所定の平行度閾値未満である場合には、白線L3は対象車線境界線から除外される。白線L3とリンク線LL2との平行度が所定の平行度以上である場合には、白線L3は対象車線境界線から除外される。以上により、白線L1、L2が対象車線境界線として推定される。
【0039】
また、所定の平行度閾値は、自車両が、交差点から所定の距離以内に位置する交差点前道路を走行している場合には、自車両が交差点前道路以外の道路を走行している場合よりも低く設定されてもよい。所定の距離は、交差点手前の車線変更禁止区間(白線が破線から実線になる区間)の開始地点までの距離、例えば、30mである。交差点手前の道路では、リンク線は途中で角度が変化していることがある。この場合、境界線推定部103は、所定の平行度閾値を傾斜角度に応じて低く設定してもよい。
図4を用いて、所定の平行度閾値の設定方法について説明する。
図4は、本実施形態に係る所定の平行度閾値の設定方法の一例を説明するための図である。
図4では、自車両V1が交差点前道路を走行している。リンク線LL1は途中で右側にη度分傾いている。角度変化前のリンク線に対する角度変化後のリンク線の傾斜角度がη度である。このような場合には、境界線推定部103は、傾斜角度に応じて、所定の平行度閾値を低く設定する。例えば、傾斜角度が大きいほど、所定の平行度閾値がより低く設定される。
図4の例では、境界線推定部103は、白線L1と角度変化後のリンク線LL1との相対角度θを算出し、相対角度θに応じて平行度を算出する。境界線推定部103は、算出した平行度と、傾斜角度に応じて設定した所定の平行度閾値とを比較する。
【0040】
道路幅推定部104は、走行道路の道路幅を推定する道路幅推定処理を行う。道路幅推定処理では、道路幅推定部104は、リンク線から最も離れた位置にある車線境界線(道路端)とリンク線との間の対象距離に基づいて、道路幅を推定する。対象距離は、リンク線から垂直方向に、リンク線から最も離れた位置にある車線境界線までの距離である。道路幅推定部104は、対象距離を2倍にした値を道路幅として推定する。なお、本実施形態における道路幅は推定値であって、必ずしも実際の道路幅と一致しなくてもよい。
【0041】
図5を用いて、本実施形態に係る道路幅推定処理の一例について説明する。
図5は、本実施形態に係る道路幅推定処理の一例を説明するための図であり、
図2の場面と同じ場面を示す。道路幅推定部104は、自車位置検出装置12及び地図データベース13から取得した情報に基づいて、地図上における自車両の現在位置を特定する。自車両の現在位置とリンク線の位置との位置関係に基づいて、道路幅推定部104は、自車両の現在位置を基準とした座標系にリンク線の位置を変換する。また、自車両周囲の対象の位置は、自車両の現在位置を基準とした相対位置として取得される。これにより、リンク線の位置及び白線等の自車両周囲の対象の位置が自車両の現在位置を基準とした座標系で表現される。
図5の例では、リンク線LL1が白線L2上に特定される。道路幅推定部104は、左側道路端候補である白線L3とリンク線LL1との間の左側距離DLと、右側道路端候補である白線L4とリンク線LL1との間の右側距離DRとを算出し、左側距離DLと右側距離DRとを比較する。道路幅推定部104は、白線L3及び白線L4のうちリンク線との間の距離がより長い白線を特定する。
図5では、左側距離DLが右側距離DRより長いため、白線L3がリンク線から最も離れた位置にある車線境界線として推定される。道路幅推定部104は、白線L3とリンク線LL1との間の左側距離DLを対象距離として、対象距離を2倍にした値を道路幅RDとして推定する。リンク線は道路の中心線に沿って位置するため、リンク線から最も離れた位置にある車線境界線は、走行道路の中心線から最も離れた位置にある道路端である。本実施形態では、リンク線を中心として左右対称の道路を想定して、片側の道路端とリンク線との間の距離である対象距離の2倍の値を道路幅として推定できる。道路幅推定部104は、リンク線LL1から右側に対象距離離れた位置に白線L5を推定する。推定された白線L5が右側の道路端となる。なお、推定される道路幅は推定値であって、必ずしも実際の道路幅の値と一致しなくてもよい。
【0042】
また、本実施形態では、道路幅推定部104は、交差点から所定の距離以内に位置するリンク線が、途中で角度が変化する第1点を有する場合には、リンク線から最も離れた位置にある車線境界線から垂直方向にリンク線上の第2点までの距離を対象距離として算出してもよい。第2点は、リンク線の第1点より自車両の進行方向前方側に位置する。
図6を用いて、本実施形態に係る対象距離算出処理の一例について説明する。
図6は、本実施形態に係る対象距離算出処理の一例を説明するための図である。
図6では、交差点から所定の距離以内に位置するリンク線LL1は第1点P1を起点として右側方向にη度分傾いている。角度変化前のリンク線に対する角度変化後のリンク線の傾斜角度がη度である。このような場合には、道路幅推定部104は、対象距離を、リンク線から垂直方向に、リンク線から最も離れた位置にある車線境界線までの距離ではなく、最も離れた位置にある車線境界線から垂直方向にリンク線上の第2点までの距離に補正する。
図6の例では、道路幅推定部104は、リンク線LL1から垂直方向に白線L5までの対象距離TDと、白線L1と角度変化後のリンク線LL1との間の相対角度θに基づいて、以下の式(1)により、補正後の対象距離TD′を算出する。補正後の対象距離TD′は、白線L5から垂直方向にリンク線LL1上の第2点P2までの距離である。
【数1】
また、道路幅推定部104は、リンク線の角度変化に応じて、車線幅を補正してもよい。道路幅推定部104は、車線幅を、角度変化前のリンク線LL1に対して垂直方向の車線幅DLではなく、角度変化後のリンク線LL1に対して垂直方向の車線幅DL´に補正する。具体的には、道路幅推定部104は、角度変化前のリンク線LL1に対する角度変化後のリンク線LL1の傾斜角度ηに基づいて、以下の式(2)により、補正後の車線幅DL´を算出する。車線幅DLは、予め設定された値であって、例えば、3mである。
【数2】
以上のように、対象距離及び車線幅を補正することにより、リンク線が途中で曲がっている場合であっても、車線数が多く見積もられることを防止できる。
【0043】
車線数推定部105は、道路幅推定部104で推定された道路幅と、1車線当たりの車線幅に基づいて、車線数を推定する。例えば、車線数推定部105は、道路幅を1車線当たりの車線幅で除算した値を車線数として算出する。1車線当たりの車線幅は、センサ群11で取得した認識結果に基づいて算出されるものであってもよいし、地図情報から得られる道路情報から推定してもよいし、予め設定された値、例えば、3mであってもよい。道路情報は、例えば、道路種別である。道路種別は、高速道路、一般道路を含む。
【0044】
図7を用いて、本実施形態に係る車線数推定処理の一例について説明する。
図7は、本実施形態に係る車線数推定処理の一例を説明するための図である。
図7は、
図2で示される場面と同じ場面を示している。
図7では、進入道路Rの道路幅は、道路幅RDとして推定され、車線幅LDは、認識した白線L1と白線L2との間の距離として推定される。車線数推定部105は、道路幅RDを車線幅LDで除算した値を車線数として算出する。
図7の例では、道路Rの車線数は4車線である。したがって、
図2では、車線LA1、LA2、LA3が対象車線として推定されているのに対して、
図7の例では、さらに、4車線目の対象車線LA4が対象車線として推定される。
【0045】
走行車線推定部106は、推定された車線数の車線で構成される走行道路と、自車両の現在位置とに基づいて、走行道路に含まれる車線のうち、自車両が走行する走行車線を推定する。走行車線推定部106は、リンク線を基準として、推定された車線数の車線で構成される走行道路を推定する。例えば、車線数が4車線である場合には、リンク線に対して左右に車線が2車線ずつ存在する走行道路が推定される。また、例えば、車線数が5車線である場合には、リンク線が中央の車線上に存在し、中央の車線の左右に車線が2車線ずつ存在する走行道路が推定される。当該走行道路では、道路幅及び1車線あたりの車線幅は、車線数推定に用いられた値と同じである。また、各車線の位置は、リンク線を基準とした相対位置として特定される。走行車線推定部106は、リンク線を基準とした自車両の相対位置を取得する。走行車線推定部106は、リンク線を基準として、走行道路の各車線の位置と、自車両の位置との位置関係に応じて走行車線を推定する。
図7の例では、リンク線LL1が白線L2上に位置し、自車両V1の現在位置はリンク線LL1と白線L1との間に位置するため、走行車線推定部106は、走行車線は左から2番目の車線LA1であると推定する。なお、本実施形態では、リンク線を基準とした位置関係に基づいて、走行車線を推定することとしているが、これに限らず、自車両の現在位置を基準とした位置関係に基づいて、走行車線を推定してもよい。
【0046】
また、車線推定装置10は、判定部107によって、車線推定結果に基づいて自車両が走行車線から目標車線までの車線変更が可能か否かを判定してもよい。自車両が走行する走行道路が、交差点に進入する進入道路である場合には、目標車線は、交差点に進入する時に自車両が走行すべき進入車線である。判定部107は、自車両の目的地までの走行経路に基づいて、交差点における進行方向を特定する。進行方向は、左折、右折、直進のいずれかである。判定部107は、交差点における進行方向に応じた目標車線を特定する。例えば、判定部107は、交差点における進行方向が右折の場合には、右折のための進入車線を目標車線として特定する。判定部107は、走行車線と、進入車線と、車線数とに基づいて、走行車線から進入車線まで車線変更するために必要な車線変更回数を算出する。例えば、車線数が4車線である道路の場合、判定部107は、右折のための進入車線を一番右側の車線(左から4番目)として推定する。判定部107は、走行車線が左から2番目の車線である場合には、車線変更回数を2回と算出する。なお、本実施形態では、目標車線は、交差点への進入車線に限らない。自車両が高速道路において出口に向かう場合には、目標車線は、出口に一番近い車線であってもよい。
【0047】
車線変更回数を算出した後、判定部107は、車線変更回数と、自車両から交差点までの距離に基づいて、走行車線から進入車線までの車線変更が可能か否かを判定する。判定部107は、1回の車線変更を実行するために必要な距離と車線変更回数とを積算し、積算した距離と、自車両から交差点までの距離と比較する。例えば、1回の車線変更を実行するために必要な距離は過去の走行の際に車線変更開始から車線変更終了までに移動した距離としてよい。また1回の車線変更を実行するために必要な距離は車速に応じた距離としてよい。判定部107は、積算した距離が自車両から交差点までの距離よりも小さい場合には、走行車線から進入車線までの車線変更が可能であると判定する。判定部107は、積算した距離が自車両から交差点までの距離よりも大きい場合には、走行車線から進入車線までの車線変更が不可能であると判定する。判定結果は、制御装置17に出力される。なお、本実施形態では、判定部107の機能が車線推定装置10に備えられるものとして説明したが、これに限らず、制御装置17が判定部107の機能を備えることとしてもよい。この場合には、制御装置17は、車線推定装置10から車線数を含む車線情報を取得して、車線変更が可能か否かを判定する。
【0048】
図8を用いて、本実施形態に係る車線推定方法の制御処理の一例について説明する。
図8は、本実施形態に係る車線推定方法の制御処理のフローを示すフローチャートである。ステップS101にて、車線推定装置10は、地図データベース13に格納されている地図情報から、自車両が走行する走行道路のリンク線の位置情報を取得する。ステップS102では、車線推定装置10は、センサ群11によって、自車両周囲の走行環境を含む周囲情報を取得する。周囲情報は、例えば、自車両周囲に位置する車線境界線、道路標示等の自車両周囲の対象を含む周囲画像である。ステップS103では、車線推定装置10は、周囲情報に基づいて、走行道路に含まれる対象車線境界線を推定する。対象車線境界線は、周囲情報に基づいて認識される区画線、及び、周囲情報に基づいて推定される区画線を含む。ステップS104では、車線推定装置10は、走行道路の道路幅を推定する。車線推定装置10は、対象車線境界線のうちリンク線から最も離れた位置にある車線境界線とリンク線との間の対象距離を算出し、対象距離を2倍にした値を道路幅として推定する。ステップS105では、車線推定装置10は、道路幅と、走行道路における1車線あたりの車線幅とに基づいて、走行道路の車線数を推定する。例えば、車線推定装置10は、道路幅を車線幅で除算することで、車線数を推定する。ステップS106では、車線推定装置10は、推定した車線数の車線で構成される走行道路と自車両の現在位置とに基づいて、自車両が走行する走行車線を推定する。これにより、ステップS106の処理が実行されると、車線推定装置10は処理を終了する。
【0049】
また、本実施形態では、自車両が、交差点に進入する進入道路を走行している場合、車線推定装置10は、走行道路の車線数及び走行車線を推定した後、さらに、交差点進入時に自車両が走行すべき目標車線を推定し、走行車線から目標車線まで車線変更が可能か否かを判定してもよい。例えば、車線推定装置10は、走行車線から目標車線まで車線変更するために必要な車線変更回数を算出し、自車両の現在位置から交差点までの間の距離が、車線変更回数の車線変更を実行するために必要な距離か否かを判定する。車線推定装置10は、車線変更が可能か否かの判定結果を制御装置17に出力する。
【0050】
以上のように、本実施形態に係る車線推定方法及び車線推定装置は、道路ごとにひとつのリンク線によって表される地図情報から、自車両が走行する走行道路のリンク線の位置情報を取得し、自車両に搭載されたセンサによって、自車両周囲の走行環境を含む周囲情報を取得し、周囲情報に基づいて、走行道路に含まれる車線境界線を対象車線境界線として推定し、推定した対象車線境界線のうちリンク線から最も離れた位置にある車線境界線と、リンク線との間の対象距離に基づいて、走行道路の道路幅を推定し、道路幅と、走行道路における1車線あたりの車線幅とに基づいて、走行道路に含まれる車線数を推定し、推定した車線数の車線で構成される走行道路と、自車両の現在位置とに基づいて、自車両が走行する走行車線を推定する。これにより、地図データの車線数の情報が利用できない場合であっても、自車両が走行している道路に含まれる車線のうち、自車両がどの車線を走行しているかを判断できる。
【0051】
また、本実施形態に係る車線推定方法及び車線推定装置は、周囲情報に基づいて、リンク線との平行度が所定の平行度閾値以上の車線境界線を対象車線境界線として推定する。これにより、自車両の走行とは関係がない車線を用いることによる車線数の誤推定を抑制できる。
【0052】
また、本実施形態に係る車線推定方法及び車線推定装置は、自車両が、交差点から所定の距離以内に位置する交差点前道路を走行している場合には、自車両が、交差点前道路以外の道路を走行している場合よりも、所定の平行度閾値を低く設定する。これにより、自車両が走行している道路の車線を自車両の走行とは関係ない車線として除外してしまうことを抑制できる。
【0053】
また、本実施形態に係る車線推定方法及び車線推定装置は、交差点から所定の距離以内に位置するリンク線が、途中で角度が変化する第1点を有する場合には、車線境界線から垂直方向にリンク線上の第2点までの距離を対象距離として算出し、第2点は、リンク線の第1点より自車両の進行方向前方側に位置する。これにより、交差点手前の道路のリンク線において途中で角度が変化しても、リンク線から最も離れた車線とリンク線との間の距離が長く算出されてしまうことによる車線数の誤推定を抑制できる。
【0054】
また、本実施形態に係る車線推定方法及び車線推定装置は、対象距離を2倍にした値を道路幅として推定する。これにより、自車両が走行している道路の幅をより長く推定するため、車線数を過小評価することを抑制できる。
【0055】
また、本実施形態に係る車線推定方法及び車線推定装置は、地図情報から、走行道路が接続する交差点の形状を取得し、形状と、周囲情報に含まれる矢印の路面標示とに基づいて、対象車線境界線を推定する。これにより、センサで認識できない車線があった場合でも、そのような車線を含めて車線数を推定することで、車線数を過小評価することを抑制できる。
【0056】
また、本実施形態に係る車線推定方法及び車線推定装置は、周囲情報に基づいて認識された車線の車線境界線が破線である場合に、認識された車線に対して破線側に隣接する車線の車線境界線を対象車線境界線として推定する。これにより、センサで認識できない車線であっても、そのような車線を含めて車線数を推定することで、車線数を過小評価することを抑制できる。
【0057】
また、本実施形態では、走行道路は、交差点に進入する進入道路であって、車線推定装置は、自車両の目的地までの走行経路に基づいて、交差点に進入する時に自車両が走行すべき進入車線を特定し、走行車線と、進入車線と、車線数とに基づいて、走行車線から進入車線まで車線変更するために必要な車線変更回数を算出し、車線変更回数と、自車両の現在位置から交差点までの距離に基づいて、走行車線から進入車線までの車線変更が可能か否かを判定する。これにより、地図情報に車線数がない場合であっても、交差点に進入するまでに進入車線まで自車両が車線変更できるか判断できる。
【0058】
なお、以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであり、本発明を限定するために記載されたものではない。よって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【符号の説明】
【0059】
1…車両制御装置
10…車線推定装置
101…リンク取得部
102…周囲情報取得部
103…境界線推定部
104…道路幅推定部
105…車線数推定部
106…走行車線推定部
107…判定部