(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155413
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】車両用フード
(51)【国際特許分類】
B62D 25/10 20060101AFI20241024BHJP
【FI】
B62D25/10 E
B62D25/10 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023070106
(22)【出願日】2023-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】加嶋 寛子
(72)【発明者】
【氏名】吉田 正敏
(72)【発明者】
【氏名】高橋 直人
(72)【発明者】
【氏名】李 威澄
【テーマコード(参考)】
3D004
【Fターム(参考)】
3D004AA01
3D004AA04
3D004BA02
3D004CA02
3D004CA15
(57)【要約】
【課題】軽量化を図りつつ、十分な張り剛性が確保され、しかも、良好な歩行者保護性能が確保されて安全性が向上された車両用フードを提供する。
【解決手段】アウタパネル11と、インナパネル13と、車両の前部に設けられたロック機構に係合されるロック部材15と、インナパネル13に設けられてインナパネル13におけるロック部材15が取り付けられたロック部30を補強するロック補強材17と、を備え、インナパネル13は、底面部21と、底面部21からアウタパネル11側へ張り出す内側接合部25と、底面部21と内側接合部25との間を繋ぐ傾斜壁部25aと、を有し、傾斜壁部25aは、アウタパネル11へ向かって切り起こされてアウタパネル11に接合する切り起こし部41を有し、ロック補強材17は、アウタパネル11側へ延在し、切り起こし部41をアウタパネル11と反対側から支持する支持部である一端側支持部53a及び他端側支持部53bを有する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に取り付けられる車両用フードであって、
前記車両の外側を構成するアウタパネルと、
前記アウタパネルの内側に設けられるインナパネルと、
前記インナパネルに設けられ、前記車両の前部に設けられたロック機構に係合されるロック部材と、
前記インナパネルに設けられ、前記インナパネルにおける前記ロック部材が取り付けられたロック部を補強するロック補強材と、
を備え、
前記インナパネルは、底面部と、前記底面部から前記アウタパネル側へ張り出す内側接合部と、前記底面部と前記内側接合部との間を繋ぐ傾斜壁部と、を有し、
前記傾斜壁部は、前記アウタパネルへ向かって切り起こされて前記アウタパネルに接合する切り起こし部を有し、
前記ロック補強材は、前記アウタパネル側へ延在し、前記切り起こし部を前記アウタパネルと反対側から支持する支持部を有する、
車両用フード。
【請求項2】
前記インナパネルは、複数の前記切り起こし部を有し、
前記ロック補強材の前記支持部によって複数の前記切り起こし部が支持されている、
請求項1に記載の車両用フード。
【請求項3】
前記ロック補強材は、複数の前記切り起こし部の少なくとも一部を支持する複数の前記支持部を有する、
請求項2に記載の車両用フード。
【請求項4】
前記ロック補強材は、複数の前記切り起こし部を支持する一つの前記支持部を有する、
請求項2に記載の車両用フード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用フードに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両における乗員の安全性向上が求められており、係る目的のために車体の強度を向上させてきた。他方、地球温暖化問題等の深刻化を背景に、自動車の燃費改善の動きが加速している。燃費改善には車体の軽量化が有効であることが知られている。
【0003】
自動車等の車両の前部に配置される車両用フードでは、フード前側の張り剛性を高めるために、デント補強材を設けている。例えば、特許文献1には、フードを構成するアウタパネルとインナパネルとの間に、フードの開閉時などにアウタパネルに入力する荷重をインナパネルに伝達させて分散する支持部材を設けることが開示されている。また、特許文献2には、アウタパネルの内側に、アウタパネルを補強しつつ歩行者保護性能を向上させるためのアウタパネル補強材を取り付けた車両用フードが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-128169号公報
【特許文献2】特開2021-116018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、デント補強材によって幅広い領域の張り剛性を確保する場合には、デント補強材を大型化する必要があり、さらに、フードを薄肉化する際には、張り剛性を確保するためにデント補強材を厚肉にする必要がある。
【0006】
一方、車両の軽量化に対応するため、車両用フードでは、薄肉化とともに、デント補強材の小型化や省略が検討されている。しかし、デント補強材を省略すると、フードの張り剛性が極端に低下し、洗車時やフードを閉じる際などにフードの前部側に手をついた際の荷重によってアウタパネルが凹むおそれがある。また、単に、デント補強材を省略した場合、衝突時における変形抵抗が小さくなり、頭部障害値(HIC値)を低く抑えることが難しい。
【0007】
そこで本発明は、軽量化を図りつつ、十分な張り剛性が確保され、しかも、良好な歩行者保護性能が確保されて安全性が向上された車両用フードを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は下記の構成からなる。
車両に取り付けられる車両用フードであって、
前記車両の外側を構成するアウタパネルと、
前記アウタパネルの内側に設けられるインナパネルと、
前記インナパネルに設けられ、前記車両の前部に設けられたロック機構に係合されるロック部材と、
前記インナパネルに設けられ、前記インナパネルにおける前記ロック部材が取り付けられたロック部を補強するロック補強材と、
を備え、
前記インナパネルは、底面部と、前記底面部から前記アウタパネル側へ張り出す内側接合部と、前記底面部と前記内側接合部との間を繋ぐ傾斜壁部とを有し、
前記傾斜壁部は、前記アウタパネルへ向かって切り起こされて前記アウタパネルに接合する切り起こし部を有し、
前記ロック補強材は、前記アウタパネル側へ延在し、前記切り起こし部を前記アウタパネルと反対側から支持する支持部を有する、
車両用フード。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、車両用フードの軽量化を図りつつ、十分な張り剛性を確保し、しかも、良好な歩行者保護性能を確保して安全性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る車両用フードの分解斜視図である。
【
図2】
図2は、アウタパネルを装着した状態の車両用フードの
図1におけるII-II線に沿った断面図である。
【
図3】
図3は、インナパネルの前側の斜視図である。
【
図4】
図4は、
図3におけるIV-IV線に沿った断面矢視図である。
【
図5】
図5は、他の形状のロック補強材を備えた車両用フードを説明する
図3におけるIV-IV断面に相当する断面矢視図である。
【
図6】
図6は、他の形状のロック補強材が設けられたインナパネルの前側の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係る車両用フード100の分解斜視図である。
図2は、アウタパネル11を装着した状態の車両用フード100の
図1におけるII-II線に沿った断面図である。
【0012】
図1及び
図2に示すように、本実施形態に係る車両用フード100は、アウタパネル11と、インナパネル13と、ロック部材15と、ロック補強材17とを備えている。車両用フード100は、自動車等の車両を構成する部材であり、車両前部のエンジンルームを開閉可能に車両に取り付けられる。なお、以下の説明において、「前後」及び「左右」とは、車両用フード100が取り付けられた車両の進行方向前方を「前」、進行方向後方を「後」とし、進行方向に直交する方向の一方の側を「右」、他方の側を「左」とする。また、「上下」は、車両用フード100がエンジンルームを閉じた状態での鉛直方向の上下を意味する。
【0013】
車両用フード100は、アウタパネル11とインナパネル13とを互いに重ね合わせて構成されている。車両用フード100は、エンジンルームを閉じた状態において、アウタパネル11が車両の上面を構成し、インナパネル13がエンジンルームの内面を構成する。
【0014】
アウタパネル11及びインナパネル13は、例えば、アルミニウム系材料からなる板材をプレス成形することにより形成される。アウタパネル11とインナパネル13とは、互いに重ね合わされて接合されている。アウタパネル11は、その外周部11aをヘム加工(折り返し加工)することにより、インナパネル13に固着される。
【0015】
インナパネル13は、
図1に示すように、底面部21と、外周接合部23と、内側接合部25と、を有している。外周接合部23は、底面部21の周囲を囲うように、底面部21の全周にわたって設けられており、アウタパネル11側である上方へ突出している。外周接合部23は、インナパネル13の外周を構成する部分であり、この外周接合部23に、アウタパネル11の外周部11aがヘム加工されて接合される。
【0016】
内側接合部25は、底面部21の内側に形成されており、アウタパネル11側である上方へ向かって張り出している。インナパネル13にアウタパネル11を組付けた状態で、内側接合部25とアウタパネル11との間には、マスチック(図示略)が介在される。この内側接合部25には、アウタパネル11と反対側の下方へ隆起する複数のビード部27が形成されており、これらのビード部27を形成することにより、インナパネル13の剛性が高められている。これらのビード部27は、車両の左右方向に延在され、車両の前後方向に互いに間隔をあけて形成されている。なお、ビード部27の数、形状及び延在方向は、車両用フード100の形状やサイズ等に応じて適宜選択される。
【0017】
底面部21には、その後端側における幅方向(左右方向)の両側に、ヒンジ補強部29が設けられている。これらのヒンジ補強部29には、ヒンジ(図示略)が取り付けられる。車両用フード100は、ヒンジ補強部29に取り付けられるヒンジを介して車両に組付けられ、エンジンルームの上部において、エンジンルームの開口部分を開閉可能に支持される。
【0018】
図2に示すインナパネル13の前側には、ロック部材15及びロック補強材17が取り付けられるロック部30を有している。本実施形態では、ロック部30は、
図1に示すように、インナパネル13の前側における底面部21において、幅方向の中央に設けられている。
図2に示すように、ロック部材15は、インナパネル13から下方へ突出するように、インナパネル13に固定されている。ロック部材15は、車両用フード100がエンジンルームを閉じた状態で、車両前部に設けられたロック機構(図示略)に係合される。これにより、車両用フード100が車両のエンジンルームを塞いだ状態に維持される。なお、ロック部30は、本実施形態と異なり、複数設けても良いし、インナパネル13の前側における底面部21において幅方向の中央以外の部分に設けても良い。
【0019】
図3は、インナパネル13の前側の斜視図である。
図4は、
図3におけるIV-IV線に沿った断面矢視図である。
【0020】
図4に示すロック部材15は、略U字状に形成され、ロック機構のラッチ(図示略)が係合する先端側の係合部15aと、係合部15aの両端から基端側に向けて同一方向に延びる一対の固定部15bを有する。ロック部材15は、例えば、鋼材から形成されている。このロック部材15は、インナパネル13から下方へ突出するように、インナパネル13に対して係合部15aを下方にして後述のベースプレート31を介してインナパネル13に固定されている。
【0021】
ロック部材15は、固定部15bの端部がベースプレート31に溶接等によって固定されている。ベースプレート31は、例えば、鋼板からなるもので、インナパネル13の底面部21の上面側において、ロック補強材17の後述する底壁部51に配置されている。ベースプレート31は、ボルト・ナット等の締結具33によってロック補強材17の底壁部51とともにインナパネル13の底面部21に共締めされてインナパネル13に固定されている。
【0022】
ロック補強材17は、インナパネル13の前側に設けられており、アウタパネル11とインナパネル13との間に配置されている。このロック補強材17は、インナパネル13に取り付けられており、インナパネル13の前側におけるロック部材15が取り付けられたロック部30を補強する。ロック補強材17は、例えば、アルミニウム系材料からなる板材をプレス成形することにより形成される。なお、以下において、ロック補強材17の構成を説明する際の左右、前後および上下とは、それぞれ、ロック補強材17がインナパネル13に設けられた状態において前述と同様の意味とする。
【0023】
図3に示すように、インナパネル13は、その前側において、底面部21と内側接合部25との間を繋ぐ傾斜壁部25aに、複数の切り起こし部41を有している。これらの切り起こし部41は、インナパネル13の幅方向に間隔をあけて形成されている。これらの切り起こし部41は、アウタパネル11側である上方へ向かって切り起こされている。そして、これらの切り起こし部41を形成することにより、傾斜壁部25aには、穴部43が形成される。このインナパネル13は、それぞれの切り起こし部41が、
図4に示すマスチック45を介してアウタパネル11に接合している。なお、切り起こし部41は、1つ以上設けられれば良い。また、切り起こし部41が複数設けられる場合には、インナパネル13の幅方向におけるこれらの切り起こし部41の間隔は、均等であっても良いし、不均等であっても良い。
【0024】
ロック補強材17は、底壁部51と、一端側支持部53a及び他端側支持部53bとを有している。ロック補強材17は、底壁部51がベースプレート31とともに締結具33によってインナパネル13の底面部21に固定されることにより、インナパネル13に取り付けられる。なお、底壁部51は、インナパネル13に対してスポット溶接によってインナパネル13の底面部21に固定してもよい。
【0025】
本実施形態のロック補強材17は、
図3に示すように、一端側支持部53a及び他端側支持部53bとの2つの支持部を有している。一端側支持部53a及び他端側支持部53bのそれぞれは、切り起こし部41をアウタパネル11と反対側から支持する構成となっている。具体的には、一端側支持部53a及び他端側支持部53bのそれぞれは、底壁部51の後端に連設され、それぞれアウタパネル11側へ延在している。本実施形態における一端側支持部53a及び他端側支持部53bは、インナパネル13の切り起こし部41同士の間隔と同一間隔をあけて設けられ、インナパネル13の幅方向の中央の2つの切り起こし部41を支持する構成となっている。また、一端側支持部53a及び他端側支持部53bは、それぞれの先端部に接合板部55を有している。そして、一端側支持部53a及び他端側支持部53bの接合板部55がインナパネル13の切り起こし部41に対して、例えば、スポット溶接等によって接合されている。なお、複数の一端側支持部53a及び他端側支持部53bを設ける場合、本実施形態のように、少なくとも一部の切り起こし部41に対して支持部を設けても良いが、全ての切り起こし部41に対してそれぞれ支持部を設けても良い。また、少なくとも一部の切り起こし部41に対して支持部を設ける構成の場合、支持部を設ける切り起こし部41は、任意に選択して良い。
【0026】
このように、本実施形態に係る車両用フード100によれば、インナパネル13が、アウタパネル11へ向かって切り起こされてアウタパネル11に接合する切り起こし部41を有し、インナパネル13におけるロック部30を補強するロック補強材17が、アウタパネル11側へ延在して切り起こし部41を支持する一端側支持部53a及び他端側支持部53bを有する。したがって、車両用フード100の上部からの荷重に対するアウタパネル11の変形を抑制するためのデント補強材を設けることなく、インナパネル13の切り起こし部41とロック補強材17の一端側支持部53a及び他端側支持部53bとによってアウタパネル11を補強して、十分な張り剛性を確保できる。これにより、デント補強材を省略して軽量化を図りつつ、十分な張り剛性を確保できる。
【0027】
また、衝突初期には、ロック補強材17の一端側支持部53a及び他端側支持部53bが変形抵抗となって加速度一次ピークが向上する。そして、衝突後半には、切り起こし部41を形成することによってインナパネル13の傾斜壁部25aに穴部43が形成されているため変形抵抗が小さくなり、これにより衝突による加速度が減少する。このようにして、頭部障害値(HIC値)を低く抑えて良好な歩行者保護性能を確保して安全性を向上できる。
【0028】
また、インナパネル13は、複数の切り起こし部41を有し、ロック補強材17の一端側支持部53a及び他端側支持部53bによって複数の切り起こし部41が支持されている。したがって、複数箇所でアウタパネル11に接合するインナパネル13の切り起こし部41をロック補強材17の一端側支持部53a及び他端側支持部53bによって支持し、アウタパネル11の張り剛性をより高めることができる。
【0029】
しかも、本実施形態では、ロック補強材17の一端側支持部53a及び他端側支持部53bは、高い張り剛性が要求されるインナパネル13の幅方向中央の切り起こし部41を支持する構成となっている。これにより、ロック補強材17の重量の増加を抑えつつ、より効率的に高い張り剛性を確保できる。
【0030】
なお、上記実施形態では、ロック補強材17の一端側支持部53a及び他端側支持部53bの先端部を後方へ向かって屈曲させて接合板部55を形成したが、
図5に示すように、一端側支持部53a及び他端側支持部53bの先端部を前方側へ向かって屈曲させた接合板部55Aであってもよい。
【0031】
また、上記実施形態に係る車両用フード100では、インナパネル13の幅方向における中央部分の複数の切り起こし部41をそれぞれ支持する複数の支持部、即ち、一端側支持部53a及び他端側支持部53bを有するロック補強材17を備える場合を例示したが、
図6に示すように、底壁部51の後縁に、1つの幅広支持部53cを形成したロック補強材17を備えてもよい。このロック補強材17では、1つの幅広支持部53cが、アウタパネル11側へ延在され、この幅広支持部53cの端部の接合板部55がインナパネル13の2つの切り起こし部41それぞれに接合されている。これにより、インナパネル13の幅方向における中央部分の2つの切り起こし部41が、ロック補強材17の幅広支持部53cによって支持される。このロック補強材17を備える車両用フード100によれば、ロック補強材17の構造の簡略化及び剛性の向上を図りつつ、インナパネル13の複数の切り起こし部41を良好に支持できる。
【0032】
このように、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、実施形態の各構成を相互に組み合わせることや、明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者が変更、応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。
【0033】
以上の通り、本明細書には次の事項が開示されている。
(1) 車両に取り付けられる車両用フードであって、
前記車両の外側を構成するアウタパネルと、
前記アウタパネルの内側に設けられるインナパネルと、
前記インナパネルに設けられ、前記車両の前部に設けられたロック機構に係合されるロック部材と、
前記インナパネルに設けられ、前記インナパネルにおける前記ロック部材が取り付けられたロック部を補強するロック補強材と、
を備え、
前記インナパネルは、底面部と、前記底面部から前記アウタパネル側へ張り出す内側接合部と、前記底面部と前記内側接合部との間を繋ぐ傾斜壁部と、を有し、
前記傾斜壁部は、前記アウタパネルへ向かって切り起こされて前記アウタパネルに接合する切り起こし部を有し、
前記ロック補強材は、前記アウタパネル側へ延在し、前記切り起こし部を前記アウタパネルと反対側から支持する支持部を有する、車両用フード。
この車両用フードによれば、インナパネルが、アウタパネルへ向かって切り起こされてアウタパネルに接合する切り起こし部を有し、インナパネルにおけるロック部を補強するロック補強材が、アウタパネル側へ延在して切り起こし部を支持する支持部を有する。したがって、車両用フードの上部からの荷重に対するアウタパネルの変形を抑制するためのデント補強材を設けることなく、インナパネルの切り起こし部とロック補強材の支持部とによってアウタパネルを補強して十分な張り剛性を確保できる。これにより、デント補強材を省略して軽量化を図りつつ、十分な張り剛性を確保できる。
また、衝突初期には、ロック補強材の支持部が変形抵抗となって加速度一次ピークが向上し、衝突後半には、切り起こし部を形成することによってインナパネルの傾斜壁部に穴部が形成されているため変形抵抗が小さくなる。これにより変形しやすくなって衝突による加速度が減少する。このようにして、頭部障害値(HIC値)を低く抑えて良好な歩行者保護性能を確保して安全性を向上できる。
【0034】
(2) 前記インナパネルは、複数の前記切り起こし部を有し、
前記ロック補強材の前記支持部によって複数の前記切り起こし部が支持されている、(1)に記載の車両用フード。
この車両用フードによれば、複数箇所でアウタパネルに接合するインナパネルの切り起こし部をロック補強材の支持部によって支持し、アウタパネルの張り剛性をより高めることができる。
【0035】
(3) 前記ロック補強材は、複数の前記切り起こし部の少なくとも一部を支持する複数の前記支持部を有する、(2)に記載の車両用フード。
この車両用フードによれば、ロック補強材の重量の増加を抑えつつ、インナパネルの複数の切り起こし部を良好に支持できる。
【0036】
(4) 前記ロック補強材は、複数の前記切り起こし部を支持する一つの前記支持部を有する、(2)に記載の車両用フード。
この車両用フードによれば、ロック補強材の構造の簡略化及び剛性の向上を図りつつ、インナパネルの複数の切り起こし部を良好に支持できる。
【符号の説明】
【0037】
11 アウタパネル
13 インナパネル
15 ロック部材
17 ロック補強材
21 底面部
25 内側接合部
25a 傾斜壁部
30 ロック部
41 切り起こし部
53a 一端側支持部(支持部)
53b 他端側支持部(支持部)
53c 幅広支持部(支持部)
100 車両用フード