(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155432
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】ブレーキペダル装置
(51)【国際特許分類】
B60T 7/06 20060101AFI20241024BHJP
G05G 1/30 20080401ALI20241024BHJP
G05G 1/50 20080401ALI20241024BHJP
G05G 5/04 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
B60T7/06 G
B60T7/06 E
G05G1/30 E
G05G1/50
G05G5/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023070137
(22)【出願日】2023-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】000151209
【氏名又は名称】マーレジャパン株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】506292974
【氏名又は名称】マーレ インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】MAHLE International GmbH
【住所又は居所原語表記】Pragstrasse 26-46, D-70376 Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】輿水 裕矢
(72)【発明者】
【氏名】小見山 聡
【テーマコード(参考)】
3D124
3J070
【Fターム(参考)】
3D124AA33
3D124BB01
3D124CC03
3D124CC58
3D124DD14
3D124DD21
3D124DD24
3J070AA32
3J070BA10
3J070BA66
3J070BA77
3J070CA51
3J070CB01
3J070CB37
3J070CC04
3J070CD23
3J070DA01
(57)【要約】
【課題】軽量化しつつ損傷を抑制することができるブレーキペダル装置を提供する。
【解決手段】ブレーキペダル装置1は、車両に固定される車両側部材としてのブラケット2と、ブラケット2によって所定の回動軸A1を中心として回動可能に支持されるとともに樹脂を含んで構成されるペダル3と、ペダル3のストローク量を所定量以下に規制する規制部5と、を備える。ペダル3は、ブレーキ装置に接続される接続部312を有する。規制部5は、ブラケット2に設けられた固定側部51と、固定側部51に当接可能であるとともにペダル3に設けられた可動側部52と、を有する。回動軸A1から固定側部51と可動側部52との当接位置までの距離は、回動軸A1から接続部312までの距離よりも長い。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に固定される車両側部材と、
前記車両側部材によって所定の回動軸を中心として回動可能に支持されるとともに樹脂を含んで構成されるペダルと、
前記ペダルのストローク量を所定量以下に規制する規制部と、を備え、
前記ペダルは、ブレーキ装置に接続される接続部を有し、
前記規制部は、前記車両側部材に設けられた固定側部と、前記固定側部に当接可能であるとともに前記ペダルに設けられた可動側部と、を有し、
前記回動軸から前記固定側部と前記可動側部との当接位置までの距離は、前記回動軸から前記接続部までの距離よりも長いことを特徴とするブレーキペダル装置。
【請求項2】
前記固定側部と前記可動側部とのうち少なくとも一方に弾性変形部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のブレーキペダル装置。
【請求項3】
前記可動側部が前記固定側部に向かう凸状に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のブレーキペダル装置。
【請求項4】
前記可動側部が前記ペダルの先端部に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のブレーキペダル装置。
【請求項5】
前記ペダルの全体が樹脂により形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のブレーキペダル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレーキペダル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両には、ブレーキペダルとブラケットとを備えたブレーキペダル装置が設けられる。即ち、車両側に固定されたブラケットによってブレーキペダルが回動可能に支持され、運転者がブレーキペダルを踏むことによってブレーキペダルが回動し、ブレーキ装置のブースタ等に力が伝達されるようになっている。このようなブレーキペダル装置として、溶融樹脂を射出成形することでベース部材やペダルアーム等の各部を製造したものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載されたブレーキペダル装置では、構成部品を樹脂によって適宜に一体成形することにより、部品数および組み付け工数の低減を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたブレーキペダル装置のように、適宜な構成部品を樹脂製とすれば、金属製の部品と比較して軽量化することができる。しかしながら、ブレーキペダル装置のうちペダル等の力が加わりやすい部品を樹脂製とした場合、機械的な強度を確保することが困難となる。そこで部分的に金属を用いたり補強部を設けたりすることで機械的な強度を確保する方法も考えられるものの、重量が増加してしまうため、軽量化と損傷の抑制とを両立することは困難であった。
【0005】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、軽量化しつつ損傷を抑制することができるブレーキペダル装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係るブレーキペダル装置は、車両に固定される車両側部材と、前記車両側部材によって所定の回動軸を中心として回動可能に支持されるとともに樹脂を含んで構成されるペダルと、前記ペダルのストローク量を所定量以下に規制する規制部と、を備え、前記ペダルは、ブレーキ装置に接続される接続部を有し、前記規制部は、前記車両側部材に設けられた固定側部と、前記固定側部に当接可能であるとともに前記ペダルに設けられた可動側部と、を有し、前記回動軸から前記固定側部と前記可動側部との当接位置までの距離は、前記回動軸から前記接続部までの距離よりも長いことを特徴とする。
【0007】
この態様によれば、ペダルのストローク量を規制する規制部が設けられていることで、ペダルに対して大きな踏力が加わった場合に、ペダルの損傷を抑制しやすくすることができる。このとき、回動軸から固定側部と可動側部との当接位置までの距離が、回動軸から接続部までの距離よりも長いことで、作用点となる接続部の周囲に作用する応力を低減し、接続部の周囲において特に損傷を抑制しやすい。また、ペダルが樹脂を含んで構成されていることで、ブレーキペダル装置を軽量化することができ、ペダル自体の強度が低い場合であっても上記のように損傷を抑制することができる。
【0008】
前記固定側部と前記可動側部とのうち少なくとも一方に弾性変形部が設けられていてもよい。この態様によれば、固定側部と可動側部とが当接した状態から、運転者がペダルをさらに踏み込んだ際に、弾性変形部を変形させることができる。これにより、ペダルの踏み心地を、規制部が設けられていない状態に近づけることができる。
【0009】
前記可動側部が前記固定側部に向かう凸状に形成されていてもよい。この態様によれば、車両側部材の形状の複雑化を抑制することができる。ペダルの方が車両側部材よりも形状を簡素としやすいことから、凸状の部分を形成しても、例えば型を用いて成形する際に、型の個数の増加を抑制することができる。
【0010】
前記可動側部が前記ペダルの先端部に設けられていてもよい。この態様によれば、回動規制後にペダルに作用する応力をさらに抑制することができる。
【0011】
前記ペダルの全体が樹脂により形成されていてもよい。この態様によれば、ブレーキペダル装置をさらに軽量化することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るブレーキペダル装置によれば、軽量化しつつ機械的強度を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態に係るブレーキペダル装置を示す斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るブレーキペダル装置においてペダルが回動した様子を示す斜視図である。
【
図3】本発明の実施形態に係るブレーキペダル装置の断面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係るブレーキペダル装置のペダルに作用する応力の一例を示すグラフである。
【
図5】本発明の実施形態に係るブレーキペダル装置におけるペダルストローク量と踏力との関係の一例を示すグラフである。
【
図6】本発明の第1の変形例のブレーキペダル装置の要部を示す部分断面図である。
【
図7】本発明の第2の変形例のブレーキペダル装置の要部を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。本発明の実施形態に係るブレーキペダル装置1は、
図1~3に示すように、車両に固定される車両側部材としてのブラケット2と、ブラケット2によって所定の回動軸A1を中心として回動可能に支持されるとともに樹脂を含んで構成されるペダル3と、ペダル3のストローク量を所定量以下に規制する規制部5と、を備える。ペダル3は、ブレーキ装置に接続される接続部312を有する。規制部5は、ブラケット2に設けられた固定側部51と、固定側部51に当接可能であるとともにペダル3に設けられた可動側部52と、を有する。回動軸A1から固定側部51と可動側部52との当接位置までの距離は、回動軸A1から接続部312までの距離よりも長い。
【0015】
ここで、
図1は、本発明の実施形態に係るブレーキペダル装置1を示す斜視図であり、
図2は、ブレーキペダル装置1においてペダル3が回動した様子を示す斜視図であり、
図3は、ブレーキペダル装置1の断面図である。
【0016】
本実施形態では、鉛直方向をZ方向とし、車両の前後方向をX方向とし、車両の幅方向をY方向とする。また、Z方向における上下を単に上下と呼ぶことがあり、X方向における前後を単に前後と呼ぶことがある。Y方向において、車両の中央側(車内空間側)を内側とし、車両の中心側から外側に向かう方向を外側とする。
【0017】
ブレーキペダル装置1は、車両側部材としてのブラケット2と、ペダル3と、弾性変形部としてのブーツ部4と、を別体に備える。
【0018】
ブラケット2は、全体が樹脂によって構成され、車両に固定される固定部21と、ペダル3を支持する支持部22と、固定部21から延長される延長部23と、を一体に有する。尚、ブラケット2は樹脂のみによって構成されていてもよいし、樹脂と金属部材との両方を含んだものであってもよいし、金属のみによって構成されていてもよい。
【0019】
固定部21は、YZ平面に沿って延びる四角形枠状の第1固定部211と、第1固定部211の上方に設けられた第2固定部212と、を有する。第1固定部211は、その四隅に、固定用のボルトが挿通される貫通孔が形成されている。第2固定部212は、第1固定部211に対して上方且つ後方に配置されており、固定用のボルトが挿通される貫通孔が2つ形成されている。第1固定部211と第2固定部212との間には段差が形成されているが、これらの位置関係は車両における取付位置の形状に応じたものであればよく、
図1,2の形態に限定されない。
【0020】
支持部22は、第2固定部212から後方に向かって突出した突出部であり、Y方向に貫通する貫通孔と、後述する被支持部311を収容する凹部と、が形成されている。この貫通孔に軸部材24が挿通され、ペダル3が回動可能に支持されるようになっている。
【0021】
延長部23は、第1固定部21の下端部から下方かつ後方に向かって、車両の内面に沿って棒状に延びている。本実施形態では、延長部23は、Z方向に沿って延びる鉛直部231と、鉛直部231から屈曲されて下方かつ後方に向かって延びる傾斜部232と、を有している。また、延長部23は、傾斜部232に貫通孔を有し、ボルトによって車両に固定されるようになっている。
【0022】
ペダル3は、全体が樹脂によって構成され、アーム部31と、ペダル本体32と、凸部33と、を一体に有する。尚、ペダル3は樹脂のみによって構成されていてもよいし、樹脂と金属部材との両方を含んだものであってもよい。
【0023】
アーム部31は、一端部31Aに被支持部311を有するとともに他端部31Bがペダル本体32に接続されたものであって、一端部31Aから他端部31Bにかけて、下方かつ後方に向かうように延びている。被支持部311は、Y方向に延びる貫通孔を有し、支持部22の凹部に収容される。軸部材24が支持部22の貫通孔および被支持部311の貫通孔に挿通されることにより、Y方向に沿った回動軸A1を中心として、アーム部31が支持部22によって回動可能に支持される。アーム部31は、ブレーキ装置のブースタに接続される接続部312を有している。尚、ブレーキ装置とは、車輪に対して制動力を付与する装置であり、ブースタを含んでいないものであってもよい。
【0024】
ペダル本体32は、運転席側を向いた踏み込み面を有して平板状に形成され、アーム部31の上側に配置される。本実施形態では、ペダル本体32に対して別体の(例えばゴム製の)ペダルカバー34が被せられており、ペダルカバー34の上面が実際の踏み込み面となる。運転者が踏み込み面に足を載せてペダル本体32を踏み込むことにより、ペダル3が回動軸A1を中心に回動する。
【0025】
凸部33は、アーム部31の他端部31Bから、ペダル本体32の裏側に向かって(前方かつ下方に向かって)突出する。本実施形態では、凸部33は四角柱状に形成されている。
【0026】
ブーツ部4は、
図3に示すように、ゴムや樹脂等の弾性部材によって有底筒状に形成され、底部41と、筒部42と、を有している。筒部42の内面形状は、凸部33の外面形状に対応したものであればよく、本実施形態では四角筒状となっている。ブーツ部4は、凸部33に被せられるようにして装着される。即ち、凸部33の側面が筒部42によって覆われ、先端面が底部41によって覆われる。
【0027】
ここで、ブレーキペダル装置1の各部の位置関係について説明する。まず、ペダル3に対して運転者が力を加えていない状態を基準状態(
図1)とする。基準状態から運転者がペダル3を踏み込んでいくと、ペダル3が回動軸A1を中心として回動していくことにより、他端部31Bがブラケット2の延長部23に対して近づいていく。ペダル3のストローク量が所定量となった際、凸部33に設けられたブーツ部4が延長部23の先端部23Aに当接する。ブーツ部4が先端部23Aに当接開始した状態を初期当接状態(
図2)とする。
【0028】
このように、凸部33の位置および延長部23の長さは、これらが互いに当接可能なように設定されている。また、基準状態におけるブーツ部4と先端部23Aとの間隔によって、初期当接状態に至るまでのペダル3のストローク量が決まる。
【0029】
ブーツ部4が先端部23Aに当接して初期当接状態となることから、ブレーキペダル装置1は、ペダル3のストローク量を所定量以下に規制する規制部5を備える。規制部5は、ブラケット2の延長部23に設けられた固定側部51と、ペダル3に設けられた可動側部52と、を有する。即ち、延長部23の先端部23Aが固定側部51として機能し、凸部33及びブーツ部4が可動側部52として機能する。
【0030】
このとき、可動側部52としての凸部33及びブーツ部4は、ペダル3において、接続部312に対して回動軸A1とは反対側に配置されている。即ち、回動軸A1から固定側部51と可動側部52との当接位置までの距離が、回動軸A1から接続部312までの距離よりも長い。アーム部31においては、回動の支点となる回動軸A1が一端部31Aに配置され、作用点となる接続部312が中間部に配置され、回動を規制するための凸部33及びブーツ部4が他端部31Bに配置されている。
【0031】
次に、運転者がペダル3を踏み込んだ際に作用する応力について
図4のグラフを参照しつつ説明する。尚、ここでは説明の都合上、ブーツ部4が変形しないものとして取り扱う。
図4では、横軸が踏力となっており、縦軸が応力となっており、踏力と応力との関係を示す。基準状態(横軸において0)から初期当接状態(このときの踏力をP1とする)にかけて踏み込み力を大きくしていくにしたがって、作用点である接続部312に作用する応力が、踏み込み力に比例して大きくなっていく(グラフにおける実線)。この応力は、接続部312からペダル本体32までの距離にも比例する。従って、基準状態と初期当接状態との間におけるグラフの傾きは、接続部312からペダル本体32までの距離に比例する。
【0032】
初期当接状態からさらに踏み込み力を大きくすると、凸部33が圧縮されていき、凸部33に圧縮応力が作用する。即ち、踏み込み力に比例してこの圧縮応力の絶対値が大きくなる(グラフにおける破線)。初期当接状態以降では、回転軸A1を基準として接続部312よりも遠くに配置された規制部5によってペダル3の回動が規制されることから、接続部312に作用する応力の傾きが、初期当接状態以前よりも緩やかになる。グラフ中には、規制部が設けられていない場合に、初期当接状態以降に接続部312に作用する応力を一点鎖線にて示している。
【0033】
規制部5が設けられているブレーキペダル装置1においては、ペダル3のアーム部31だけでなく凸部33にも応力が作用するものの、所定の最大踏力(
図4のMaximum press force(P2))となった際に、いずれの応力の絶対値もアーム部31の許容応力の最大値(
図4のAllowable stress(A))以内としやすい。
【0034】
次に、ペダル3のストローク量と踏力との関係について
図5に基づいて説明する。ペダル3のストロークには、遊びやブレーキブースターのジャンピング等による、ペダル反力を伴わないストロークがあり、ブレーキ力が生じたのち油圧を介するペダル3へのブレーキ反力の作用が生じる開始状態(横軸においてS0)までは、ストローク量が増加しても踏力はわずかにしか上昇しない。開始状態以降においては、ストローク量が大きくなるほどブレーキ力も大きくなっていくものの、ストローク量が予め定められた量に達すると、規制部5が機能してペダルストロークが規制される。その際のペダル3のストローク量を最大有効ストローク量S1とする。
【0035】
本実施形態では、ペダル3が最大有効ストローク量S1だけ回動した際に、規制部5が機能して初期当接状態となる。ここで、この最大有効ストローク量S1は、ブレーキ力が常用領域の最大値近傍となるときの踏力P1となるように設定されており、
図5の縦軸のP1と、
図4の横軸のP1と、が一致するようになっている。
【0036】
初期当接状態は、ブーツ部4が先端部23Aに対して当接を開始した状態であることから、この状態からさらにペダル3が踏み込まれると、ブーツ部4の底部41が圧縮されることにより、初期当接状態からさらにペダル3のストローク量が増加可能となっている。底部41は弾性変形することから、その復元力は圧縮量に比例して大きくなる。即ち、ペダル3のストローク量を増加させるためには、より大きな踏力が必要となり、初期当接状態以降においては、踏力とストローク量とが一次の関係を有することとなる。尚、初期当接は、初期当接後の可動ストローク範囲を大きくしたり、ブーツ部4の圧縮反力小さくしたりする等により、最大有効ストロークに達する少し前に初期当接状態となるように規制部5を設定としてもよい。同様に、最大有効ストローク量よりも僅かに大きいストローク量において初期当接状態となるように規制部5を設定としてもよい。例えば、最大有効ストローク量の95~120%において、初期当接状態となるようにしてもよい。
【0037】
これに対し、硬質な部材同士が当接する規制部の場合、初期当接状態からペダル3のストローク量を増加させることはできず、踏力が増加してもペダル3のストローク量が略一定となる(
図5における一点鎖線)。
【0038】
このように、本発明の実施形態に係るブレーキペダル装置1によれば、ペダル3のストローク量を所定量以下に規制する規制部5が設けられていることで、ペダル3に対して大きな踏力が加わった場合に、ペダル3の損傷を抑制しやすくすることができる。このとき、回動軸A1から固定側部51と可動側部52との当接位置までの距離が、回動軸A1から接続部312までの距離よりも長いことで、作用点となる接続部312の周囲に生じる応力を低減し、接続部312の周囲において特に損傷を抑制しやすい。また、ペダル3が樹脂を含んで構成されていることで、ブレーキペダル装置1を軽量化することができ、ペダル3自体の強度が低い場合であっても上記のように損傷を抑制することができる。
【0039】
また、規制部5の可動側部52である凸部33に、弾性変形部としてのブーツ部4が設けられていることで、ペダル3の回動規制後においても、固定側部51と可動側部52とが当接した状態から、運転者がペダル3をさらに踏み込んだ際に、ブーツ部4を変形させることができる。これにより、ペダル3の踏み心地を、規制部5が設けられていない状態に近づけることができる。
【0040】
また、可動側部52が凸部33を含む凸状に形成されていることで、ブラケット2の形状の複雑化を抑制することができる。ペダル3の方がブラケット2よりも形状が簡素であることから、凸部33を設けても、型を用いて成形する際に、型の個数の増加を抑制することができる。
【0041】
また、可動側部52の凸部33がペダル3の先端部である他端部31Bに設けられていることで、回動規制後にペダル3に作用する応力をさらに抑制することができる。
【0042】
また、ペダル3の全体が樹脂により形成されていることで、ブレーキペダル装置1をさらに軽量化することができる。
【0043】
尚、本発明は上記の実施形態に限定されず、本発明の目的が達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。例えば、上記の本発明の実施形態では、可動側部52が凸状に形成されているものとしたが、固定側部が凸状であってもよいし、可動側部および固定側部の両方が凸状であってもよいし、いずれも凸状には形成されずに互いに適宜に接近していてもよい。即ち、ブレーキペダル装置における各部の形状や材質、ブレーキペダル装置が設けられる車両の形状等に応じて、可動側部および固定側部が適宜な形状を有してペダルのストローク量を所定値以下に規制すればよい。
【0044】
また、上記の本発明の実施形態では、規制部5の可動側部52である凸部33に、弾性変形部としてのブーツ部4が設けられているものとしたが、弾性変形部は、ゴムや樹脂によって形成されたものに限定されない。例えば、
図6に示すように弾性変形部としてコイルばね6を設けてもよいし、
図7に示すように弾性変形部として蛇腹部材7を設けてもよい。尚、特にコイルばね6を設ける場合には、凸部33の先端部およびコイルばね6を覆うようなカバー部材8を設けることにより、異物の侵入を抑制してもよい。このように、弾性変形部は、圧縮量が大きくなるほど復元力が大きくなるような作用を有するものであればよい。
【0045】
また、弾性変形部は、可動側部および固定側部のいずれに設けられてもよいし、両方に設けられてもよい。さらに、可動側部および固定側部の一方が凸部であり他方が平坦である場合、凸部に弾性変形部を設けてもよいし平坦な側に弾性変形部を設けてもよい。また、規制部に対して弾性変形部が設けられていなくてもよく、このような構成によればブレーキペダル装置の構成を簡素化することができる。
【0046】
また、上記の本発明の実施形態では、可動側部52の凸部33がペダル3の先端部である他端部31Bに設けられているものとしたが、回動軸から固定側部と可動側部との当接位置までの距離が回動軸から接続部までの距離よりも長ければよく、可動側部がペダルの先端部以外に設けられていてもよい。
【0047】
また、上記の本発明の実施形態では、ペダル3の全体が樹脂により形成されているものとしたが、ペダルは、樹脂を基材として、金属等の他の部材を含んで形成されていてもよく、例えば金属を含んでインサート成形されたものであってもよい。
【0048】
また、上記の本発明の実施形態では、車両側部材としてのブラケット2に固定側部51が設けられているものとしたが、固定側部は、ブラケットとは別体に形成されていてもよい。即ち、ペダルを支持するブラケットと、固定側部と、が独立に車両に固定されており、これらが車両側部材を構成してもよい。
【0049】
また、上記の本発明の実施形態では、ペダル3が所定量だけ回動してから規制部5が機能するものとしたが、規制部は、ペダルのストローク量を所定量以下に規制するものであればよく、ストローク量を限りなくゼロに近づける(即ち、ペダルが踏み込まれる前または踏み込み直後から初期当接状態となっている)ものとしてもよい。このような構成は、規制部や弾性変形部の反力を調節することで実現可能である。例えば、初期当接状態からペダルを踏み込んだ際に、弾性変形部が変形することでペダルが回動し、ペダルの回動に伴いブレーキ力が上昇していくような構成としてもよい。
【0050】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に係るブレーキペダル装置に限定されるものではなく、本発明の概念及び特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含む。また、上述した課題及び効果の少なくとも一部を奏するように、各構成を適宜選択的に組み合わせてもよい。例えば、上記実施形態における、各構成要素の形状、材料、配置、サイズ等は、本発明の具体的使用態様によって適宜変更され得る。
【符号の説明】
【0051】
1…ブレーキペダル装置、2…ブラケット(車両側部材)、3…ペダル、312…接続部、4…ブーツ部(弾性変形部)、5…規制部、51…固定側部、52…可動側部、A1…回動軸