(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155435
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】テストストリップ
(51)【国際特許分類】
G01N 35/08 20060101AFI20241024BHJP
G01N 37/00 20060101ALI20241024BHJP
G01N 21/77 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
G01N35/08 A
G01N37/00 101
G01N21/77 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023070145
(22)【出願日】2023-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003683
【氏名又は名称】弁理士法人桐朋
(72)【発明者】
【氏名】林田 優馬
(72)【発明者】
【氏名】藤原 秀徳
(72)【発明者】
【氏名】兒玉 崇行
(72)【発明者】
【氏名】和田 遼太郎
【テーマコード(参考)】
2G058
【Fターム(参考)】
2G058CC09
2G058DA07
2G058GA06
(57)【要約】 (修正有)
【課題】テストストリップにおいて、所望形状で安定的に試薬部を形成すること。
【解決手段】テストストリップ10は、板状の本体部22を備える。本体部22は、サンプルが流通する流路26と、流路26内に設けられサンプルと反応する試薬30Aを備えた試薬部30と、流路26の始端に設けられサンプルを流路26内に導入する取込部とを備える。本体部22の流路26には、流路26に対して本体部22の板厚方向に窪んだ凹部28を有する。試薬部30が、凹部28内を満たす試薬30Aによって形成される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプルが流通する流路と、
前記流路内に設けられ前記サンプルと反応する試薬を備えた試薬部と、
前記流路の始端に設けられ前記サンプルを前記流路内に導入する取込部と、
を備えた板状の本体部を有し、
前記試薬部の前記試薬と前記サンプルとが反応した反応生成物に対して、前記本体部の板厚方向に測定光を透過させるテストストリップであって、
前記本体部には、前記流路に設けられ前記流路に対して前記板厚方向に窪んだ凹部を有し、
前記試薬部は、前記凹部内に配置された前記試薬によって形成される、テストストリップ。
【請求項2】
請求項1記載のテストストリップにおいて、
前記流路の延在方向と直交し、且つ前記本体部の前記板厚方向と直交する幅方向において、前記本体部は、前記凹部の少なくとも幅方向一方側に親水面を備え、前記親水面が前記本体部の表面に露出し、
前記本体部の前記板厚方向に見た平面視において、前記凹部及び前記試薬部が前記流路の前記延在方向に延在する長方形状に形成される、テストストリップ。
【請求項3】
請求項1又は2記載のテストストリップにおいて、
前記流路の延在方向と直交し、且つ前記本体部の前記板厚方向と直交する幅方向において、前記試薬部の幅と前記凹部の幅とが同一である、テストストリップ。
【請求項4】
請求項1又は2記載のテストストリップにおいて、
前記凹部は、前記本体部の表面に開口した開口部と、
前記板厚方向と垂直に形成される底部と、
前記板厚方向と平行に形成され、前記開口部と前記底部とを接続する側部と、
を備える、テストストリップ。
【請求項5】
請求項2記載のテストストリップにおいて、
前記親水面は、前記凹部の前記幅方向一方側及び幅方向他方側にそれぞれ設けられる、テストストリップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テストストリップに関する。
【背景技術】
【0002】
テストストリップは、取込部から導入されたサンプル(血液)を毛細管力によって流通させる流路を備え、流路には、サンプルと反応可能な試薬を有した試薬部を備える。特許文献1には、基板の表面にスロットダイコーティングによって試薬を塗布し、試薬部を形成したテストストリップが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
テストストリップにおいて、所望形状で安定的に試薬部を形成することが望まれている。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の態様は、サンプルが流通する流路と、前記流路内に設けられ前記サンプルと反応する試薬を備えた試薬部と、前記流路の始端に設けられ前記サンプルを前記流路内に導入する取込部と、を備えた板状の本体部を有し、前記試薬部の前記試薬と前記サンプルとが反応した反応生成物に対して、前記本体部の板厚方向に測定光を透過させるテストストリップであって、前記本体部には、前記流路に設けられ前記流路に対して前記板厚方向に窪んだ凹部を有し、前記試薬部は、前記凹部内に配置された前記試薬によって形成される、テストストリップである。
【0007】
このテストストリップによれば、凹部内に試薬部を設けることで、本体部の平面視において、所望形状の試薬部を安定的に形成することができる。
【0008】
(2)上記の(1)記載のテストストリップにおいて、前記流路の延在方向と直交し、且つ前記本体部の前記板厚方向と直交する幅方向において、前記本体部は、前記凹部の少なくとも幅方向一方側に親水面を備え、前記親水面が前記本体部の表面に露出し、前記本体部の前記板厚方向に見た平面視において、前記凹部及び前記試薬部が前記流路の前記延在方向に延在する長方形状に形成されてもよい。
【0009】
流路に沿ってサンプルを試薬部へ供給する際に、試薬部と親水面では、サンプルが流れる速度が異なる。このため、試薬部が、親水面上に円形に形成される場合、サンプルは、試薬部を取り囲むように隣接する親水面に沿って速い速度で流れる。この場合、試薬部上を流れるサンプルに対し、親水面上を流れるサンプルが試薬部の後方に先に回り込むことで、試薬部上に空気が残留する可能性がある。これに対し、平面視で試薬部が長方形状に形成される構成では、流路の延在方向と平行方向において、試薬部の両端に沿うように隣接する親水面が設けられており、サンプルが、この試薬部の両端に沿って隣接する親水面上を流路の延在方向と平行に流れる。このため、試薬部が円形に形成される場合と比較して、試薬部を長方形状に形成することで、サンプルを試薬部へ供給する際に試薬部上に空気が残留することを抑制することができる。
【0010】
(3)上記の(1)又は(2)記載のテストストリップにおいて、前記流路の延在方向と直交し、且つ前記本体部の前記板厚方向と直交する幅方向において、前記試薬部の幅と前記凹部の幅とが同一であってもよい。
【0011】
この構成により、テストストリップにおける凹部の幅によって、試薬部(試薬)の幅を効果的に管理することができる。
【0012】
(4)上記の(1)~(3)のいずれか1つに記載のテストストリップにおいて、前記凹部は、前記本体部の表面に開口した開口部と、前記板厚方向と垂直に形成される底部と、前記板厚方向と平行に形成され、前記開口部と前記底部とを接続する側部と、を備えてもよい。
【0013】
この構成により、本体部の平坦面に試薬を滴下して試薬部を形成する構成と比較し、測定光の透過方向において、試薬部の表面のフラット部を広く確保することができる。これにより、試薬とサンプルとを反応させた際、反応生成物に対して広範囲に測定光を透過させることができる。
【0014】
(5)上記の(2)記載のテストストリップにおいて、前記親水面は、前記凹部の前記幅方向一方側及び幅方向他方側にそれぞれ設けられてもよい。
【0015】
この構成により、流路に沿ってサンプルを試薬部に供給する際、試薬部の幅方向両側に隣接する親水面上をサンプルが流路と平行に流れることで、親水面上を流動するサンプルによって、試薬部上を流動するサンプルの流動を効果的に促進させることができる。試薬部の後方へのサンプルの回り込みがより効果的に抑制される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、流路及び試薬部を有した本体部が、流路に設けられ流路に対して前記板厚方向に窪んだ凹部を有し、凹部内に試薬部が設けられることで、本体部の平面視において、所望形状の試薬部を安定的に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係るテストストリップを含む成分測定システムの全体構成図である。
【
図3】
図3は、
図1のテストストリップにおける本体部の平面図である。
【
図4】
図4は、
図3のIV-IV線に沿った模式断面図である。
【
図6】
図6は、成分測定装置にテストストリップを装着した状態を示す測光部の周辺の拡大断面図である。
【
図7】
図7Aは、第1変形例に係るテストストリップの模式断面図である。
図7Bは、第2変形例に係るテストストリップの模式断面図である。
図7Cは、第3変形例に係るテストストリップの模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1に示されるように、本実施形態に係るテストストリップ10は、成分測定システム12に用いられる。成分測定システム12は、サンプルを保持可能なテストストリップ10と、テストストリップ10が装着されることで、サンプルに含まれるアナライト量を測定する成分測定装置14とを備える。テストストリップ10は、サンプルに含まれるアナライト量を測定した後に廃棄される。
【0019】
図2に示すように、テストストリップ10の内部には、サンプル(試料)が導入される。テストストリップ10は、その内部でサンプルと試薬30Aとを反応させて呈色させた状態(呈色状態)で、成分測定装置14内の検出対象位置に保持されるように構成される。成分測定装置14は、テストストリップ10の検出対象位置で、サンプルと試薬30Aとの反応生成物を光学的に検出する。なお、テストストリップ10は、チップ、センサ等と称されることもある。サンプルは、例えば血液である。
【0020】
図1に示すように、成分測定装置14は、テストストリップ10の検出対象位置で、呈色状態の血液を光学的に検出する比色式の血糖計141として構成される(以下、血糖計141ともいう)。特に、血糖計141は、所定波長の測定光L(
図4参照)を検出対象位置の血液に照射して、呈色状態の血液を透過した測定光Lを検出する測定部56により血糖値の測定を行う。
【0021】
成分測定システム12は、ユーザ(患者)が操作するパーソナルユースの測定システムとして用いられる。例えば、ユーザは、テストストリップ10及び血糖計141を使用して、血糖値を測定し、自身の血糖管理を行う。なお、成分測定システム12は、医療従事者が患者の血糖値を測定する装置として、医療施設等で用いられてもよい。
【0022】
血糖計141に対してテストストリップ10が装着された状態で、テストストリップ10の一部が血糖計141の外側に突出する。テストストリップ10は、血糖計141の外部に突出した取込部18からテストストリップ10内に血液を導入することで、血糖計141での血糖値測定ができる。テストストリップ10は、1回の測定毎に廃棄する、ディスポーザブルのデバイスである。
【0023】
図3に示すように、テストストリップ10は、チップ本体16を備える。チップ本体16は、血糖計141に対する挿入及び離脱方向に沿って長尺に形成される。チップ本体16は、チップ本体16の延在方向(長手方向)と直交する板厚方向に薄い平板状に形成される(
図2参照)。以下、
図1に示すように、血糖計141に対してチップ本体16を装着した際、血糖計141から露出するチップ本体16の長手方向一端を先端161と呼び、血糖計141内に収容される側の長手方向他端を基端162と呼ぶ。チップ本体16を血糖計141に装着する方向(装着方向)とチップ本体16の長手方向とが一致する。
【0024】
テストストリップ10の平面視において、チップ本体16の先端161は先端方向に向けて凸状な半円状に形成される。先端161は、テストストリップ10が血糖計141に装着された状態で血糖計141から露出される部分となる(
図1参照)。
【0025】
チップ本体16の先端161には、チップ本体16内に血液を取り込む開口としての取込部18が形成される。チップ本体16の基端部は、基端方向に向けて徐々に幅が小さくなる。チップ本体16の基端162は、基端方向に突出した一対の突部20を有する。突部20は、チップ本体16の延在方向と直交する幅方向に互いに離間する。
【0026】
チップ本体16は、本体部22と、カバー部材24と、本体部22とカバー部材24とを固定する接着フィルム25とを備える。接着フィルム25を挟んで本体部22及びカバー部材24が板厚方向に積層される。本体部22及びカバー部材24が一体化することでチップ本体16が構成される(
図2参照)。チップ本体16の平面視において、本体部22及びカバー部材24が略同一形状で形成される。
【0027】
本体部22は、親水性を有した樹脂材料から形成される。本体部22は、成分測定装置14の測定光Lが透過可能な透明に形成される。本体部22は、一定の板厚を有した板状部材から形成される。あるいは、本体部22は、所望の形状となるように、複数の板状部材を貼り合わせて形成してもよい。本体部22の表面の接触角θは、0°超、且つ50°以下とするのが好ましい(0°<θ≦50°)。
【0028】
本体部22は、流路26と、凹部28と、試薬部30とを備える。本体部22は、本体部22の上面に形成されカバー部材24が装着される取付面221を有する。取付面221は、本体部22の板厚方向に垂直な平坦面に形成される。
【0029】
流路26は、血液が流通可能に形成される。流路26は、本体部22の延在方向に沿って直線状に形成される。流路26は、本体部22の先端161から流路26の延在方向における略中央部まで延在する。流路26の始端は、先端開口261を有する。先端開口261は、流路26の先端に設けられ本体部22の先端161において先端方向に開口する。先端開口261は、取込部18の一部を構成する。流路26は、本体部22の幅方向中央に配置される。
図2に示すように、流路26は、本体部22の取付面221から板厚方向に窪んで形成される。本体部22の延在方向から見たとき、流路26の断面形状は幅方向に長尺な長方形状である。なお、流路26の断面形状は長方形状に限定されるものではない。例えば、流路26の断面形状は正方形状であってもよい。
【0030】
流路26は、第1通路部321と、第2通路部322とを備える。第1通路部321は、流路26の先端から本体部22の基端に向けて延在する。
図4に示すように、本体部22の取付面221に対する第1通路部321の深さは、流路26の延在方向に一定である。
【0031】
図3に示すように、第2通路部322は、第1通路部321の基端に設けられる。第1通路部321の幅と第2通路部322の幅とが同一である。
図4に示すように、本体部22の取付面221に対する第2通路部322の深さは、流路26の延在方向に一定である。第2通路部322の深さは、第1通路部321の深さよりも小さい。
【0032】
第2通路部322の基端には、排気部34としての開口を有する。排気部34は、第2通路部322の基端に設けられ基端に対して空間接続する。すなわち、排気部34は、本体部22に設けられた開口部空間である。排気部34は、第2通路部322の基端側において、本体部22を板厚方向に貫通し、テストストリップ10の外部へ通じる孔として形成される。取込部18から血液をテストストリップ10内に導入した際に、先端161から基端方向に向けて流路26内で押し出される空気を排気部34を通じてテストストリップ10の外部に排出する。第2通路部322の基端(排気部34の先端でもある)において、血液は、表面張力によって第2通路部322内に保持される。
【0033】
凹部28は、流路26の第2通路部322に配置される。凹部28は、流路26において排気部34の上流に設けられる。すなわち、凹部28は、第1通路部321と排気部34との間に配置される。
図4に示すように、凹部28は、第2通路部322の表面322Aに対して板厚方向に窪んで形成される。本体部22の板厚方向において、第2通路部322の表面322Aに対する第1通路部321の深さに対し、表面322Aに対する凹部28の深さが小さい。
【0034】
本体部22の幅方向から見たとき、凹部28の断面形状は長方形状である。例えば、本体部22の延在方向に凹部28が長く、本体部22の板厚方向に凹部28が短く形成される。
図5に示すように、本体部22の延在方向から見たとき、凹部28の断面形状は長方形状である。本体部22の幅方向に凹部28が長く、本体部22の板厚方向に凹部28が短く形成される。すなわち、凹部28は、本体部22の板厚方向において薄く形成される(
図4参照)。
【0035】
図5に示すように、凹部28は、開口部36と、底部38と、側部40とを備える。開口部36は、第2通路部322の表面322Aに開口する。
図3に示す本体部22の平面視において、開口部36の形状は長方形状である。
【0036】
底部38は、開口部36に対して板厚方向に離間する。底部38は、本体部22の板厚方向と垂直な平坦面である。
【0037】
側部40は、本体部22の板厚方向と平行に形成される。側部40は、開口部36と底部38とを接続し底部38を囲むように厚み方向(板厚方向)へ立設する4つの壁部40Aを有する。
図3に示すように、壁部40Aは、本体部22の延在方向と平行な一対の長辺部411と、本体部22の延在方向と直交する一対の短辺部412とを有する。一方の長辺部411及び他方の長辺部411の端部がそれぞれ短辺部412によって互いに接続される。
【0038】
試薬部30は、凹部28内に設けられる。すなわち、試薬部30は、流路26の延在方向における途中に設けられる。試薬部30は、血液と反応する試薬30Aを備える。試薬30Aは、流路26内で血液と混合し、凹部28から拡散した試薬30Aは、血液中のグルコースと反応し呈色する反応生成物を形成する。
【0039】
図3に示すテストストリップ10の平面視において、試薬部30と凹部28とが同じ形状である。なお、試薬部30の形状は、長方形状に限定されるものではない。例えば、試薬部30の形状が正方形状であってもよい。また、
図5に示すように、本体部22の幅方向において、試薬部30(試薬30A)の幅W1と凹部28の幅W2とが同一である。
【0040】
テストストリップ10の製造工程において、試薬部30を形成する際には、例えば、ディスペンサーによって液体の試薬30Aを凹部28の上方から凹部28内に滴下し、試薬30Aが凹部28に沿って充填される。凹部28内を試薬30Aで満たした後に、試薬30Aを乾燥させることで試薬30Aが固化して試薬部30が形成される。このとき、試薬30Aを凹部28内に滴下した後、乾燥させる工程を繰り返してもよい。複数回にわけて試薬30Aを滴下することで、1回当たりの試薬30Aの滴下量を抑え、凹部28内に試薬30Aを確実に滴下させることが可能である。
【0041】
試薬部30の外縁部30Bは、凹部28の壁部40Aに接することで壁部40Aと接する部位が、試薬30Aが溶融した試薬水溶液の表面張力によって湾曲した湾曲形状となる。外縁部30Bに囲まれる試薬部30の中央部は、外縁部30Bから徐々に略水平となって延在する。試薬部30の上面には、フラット部30Fを有する。本体部22の幅方向において、フラット部30Fは、試薬部30における一方の外縁部30Bと他方の外縁部30Bとの間に設けられる。すなわち、フラット部30Fの幅は、試薬部30の幅W1と同一に形成される。換言すると、フラット部30Fの幅は、凹部28の幅W2と同一である。フラット部30Fは、第2通路部322の表面322Aに対して凹部28の底部38側へわずかに窪んだ位置で、表面322Aと略平行になっている試薬部30の表面を指す。
【0042】
図4に示すように、試薬部30は、凹部28の開口部36を介して本体部22の板厚方向のみに露出する。カバー部材24に向かい合う方向に、試薬部30は、本体部22の上面(第2通路部322の表面322A)のみに露出している。
【0043】
図5に示すように、本体部22の幅方向において、凹部28の幅方向両側には一組の親水面421、422を備える。一組の親水面421、422は、接触角θが0°超、且つ50°以下であることが好ましい。一組の親水面421、422は、凹部28を有する第2通路部322の表面322Aに設けられる。すなわち、親水面421、422は、本体部22の上面側に露出する。一方で、試薬部30は、乾燥試薬の状態であるため、試薬部30の表面は、一組の親水面421、422に比べて親水性に劣る。この試薬部30の表面上を血液が流動する際、試薬部30の幅方向両側に配置された親水面421、422を血液が円滑に流動することで、親水面421、422を流動する血液によって試薬部30における血液の流動を促進させる。
図3に示すように、本体部22の延在方向において、親水面421、422の幅は一定である。例えば、親水面421、422それぞれの幅は、試薬部30の幅W1よりも小さい。例えば、試薬部30の幅W1に対する親水面421、422それぞれの幅の比率は、例えば5%~20%である。親水面421、422は、凹部28に沿って本体部22の延在方向に直線状に延在する。なお、凹部28の幅方向両側に一組の親水面421、422を備える構成に限定されない。凹部28の幅方向一方のみに親水面を備える構成であってもよい。
【0044】
本体部22が親水性を有した樹脂材料から形成される場合に限定されない。少なくとも第2通路部322の表面322Aに親水性を有した親水面が形成されていればよい。
【0045】
カバー部材24は、疎水性を有した樹脂材料のフィルム部材から形成される。カバー部材24は、疎水性を有したフィルム部材から形成される場合に限定されるものではない。親水性を有したフィルム部材からカバー部材24を形成してもよい。
図4に示すように、カバー部材24の厚みは、本体部22の厚みより小さい。
【0046】
カバー部材24は、カバー本体241と、カバー本体241の上面に設けられる遮光部44とを有する。カバー本体241は、成分測定装置14の測定光Lが透過可能な透明に形成される。遮光部44は、テストストリップ10において測定光Lを遮光する。遮光部44は、例えば、カバー本体241の上面を黒色のフィルム部材で覆うことで構成してもよい。なお、遮光部44は、測定光Lを適切に遮光可能であれば特に限定されるものではない。カバー本体241を、遮光性を有する部材で形成することで遮光部44としてもよい。
【0047】
カバー部材24は、取込口46と、測定孔48とを備える。取込口46は、取込部18の一部を形成する。取込口46は、カバー部材24の先端に形成される。
図3に示すカバー部材24の平面視において、取込口46は、カバー部材24の先端から基端方向に切り欠かれた矩形状に形成される。取込口46は、カバー部材24の板厚方向に貫通する。取込口46は、流路26における第1通路部321の先端開口261に向かい合う。取込口46及び先端開口261によって取込部18が構成される。
【0048】
図2に示すように、接着フィルム25は、例えば透明な樹脂材料から形成されるフィルム部材である。チップ本体16の平面視において、接着フィルム25とカバー部材24とが略同一形状で形成される。カバー本体241の下面と本体部22の取付面221との間に接着フィルム25が挟持される。接着フィルム25の上面及び下面は、例えば接着剤等が塗布された接着面である。接着フィルム25の上面が、カバー本体241の下面に貼着される。接着フィルム25の下面が、本体部22の取付面221に貼着される。接着フィルム25によって、カバー部材24(カバー本体241)と本体部22とが板厚方向に互いに固定される。カバー部材24及び接着フィルム25によって、本体部22の取付面221の全体が板厚方向に覆われる。カバー部材24によって、流路26、試薬部30、凹部28が覆われる。
【0049】
図2に示すように、測定孔48は、遮光部44に形成される。測定孔48は、取込口46からカバー部材24の基端方向に所定距離離れた位置に配置される。測定孔48は、遮光部44のみを板厚方向に貫通する(
図4参照)。
図3に示すように、測定孔48は、カバー部材24の幅方向の略中央に位置する。カバー部材24の平面視で、測定孔48は円形状に形成される。測定孔48は、試薬部30(凹部28)の中央に向かい合う。なお、測定孔48は、カバー部材24の遮光部44のみを貫通する場合に限定されない。遮光部44及びカバー本体241からなる多層構造のカバー部材24に代えて、例えば、遮光性を有する材料からなる単層構造のカバー部材が用いられ、当該単層構造のカバー部材を測定孔が貫通してもよい。この場合、測定孔の下端は、接着フィルム25によって塞がれ、本体部22の流路26と測定孔とが非連通である。
【0050】
次に、テストストリップ10が装着される血糖計141(成分測定装置14)について
図1を参照しながら説明する。血糖計141は、血糖値の測定を繰り返して実施することが可能なリユースタイプに構成されている。血糖計141の筐体50は、ユーザが把持して操作し易い大きさで形成される。筐体50は、制御部52を収容する箱体部54と、箱体部54から突出して内部に光学式の測定部56を収容する測光部58とを有する。
【0051】
箱体部54の上面には、電源ボタン60と、操作ボタン62と、ディスプレイ64とが設けられる。測光部58の上面には、使用後のテストストリップ10を取り外す操作部としてのイジェクトレバー66が設けられる。イジェクトレバー66は、測光部58の延在方向に沿って移動可能に設けられる。イジェクトレバー66は、測光部58内に設けられるイジェクトピン106(
図6参照)に接続されている。
【0052】
図6に示すように、測光部58には、テストストリップ10が挿入される挿入孔70が設けられる。測定部56は、血液中のグルコースを光学的に検出する。測定部56は、発光部72及び受光部74を備える。発光部72及び受光部74は、挿入孔70を挟んで互いに対向するように配置される。
【0053】
発光部72としては、LED、有機EL、レーザダイオード等が用いられる。挿入孔70にテストストリップ10が装着された状態で、発光部72は、テストストリップ10の測定孔48に向かって所定の波長の測定光Lを照射する。受光部74としては、例えば、フォトダイオードが用いられる。受光部74は、テストストリップ10の試薬部30を透過した測定光Lを受光する。
【0054】
図1に示すように、制御部52は、図示しない変換器、プロセッサ、メモリ、入出力インターフェースを有する制御回路(コンピュータ)により構成される。制御部52は、例えば、ユーザの操作下に、測定部56を駆動させて血液中のグルコース量(又は濃度)に応じた信号に基づき血糖値を算出する。算出した血糖値は、ディスプレイ64に表示される。
【0055】
本実施形態に係るテストストリップ10を用いた血糖値の測定について説明する。
【0056】
図6に示すように、ユーザは、血糖計141の挿入孔70にテストストリップ10を挿入し、テストストリップ10の試薬部30を発光部72と受光部74との間に位置させる。次に、ユーザは、テストストリップ10の取込部18に少量の血液を付着させる。血液は、毛細管力により、取込部18から流路26を試薬部30に向かって流動する。具体的に、血液は、先端開口261から流路26の第1通路部321、第2通路部322に沿って試薬部30に向かう方向へ引っ張られる。
【0057】
図4に示すように、第1通路部321から第2通路部322へと血液が到達し、第2通路部322とカバー部材24とによって囲まれた上部空間76へ流動する。
【0058】
図4に示すように、上部空間76において、血液が、流路26の延在方向に沿って試薬部30の後方(基端方向)に向けて流動する。
図3に示すように、一組の親水面421、422における血液の流動方向は、凹部28の延在方向と平行な方向である。流路26内に存在している空気は、血液の流動によって流路26に沿って基端方向に押し出され、排気部34を通じて外部に排出される。
【0059】
試薬部30の試薬30Aは、親水面421、422に比べて疎水性が高い。このため、本実施形態とは異なり、例えば、平面視で円形の試薬部を備える場合には、試薬部の両端に隣接する親水面上を血液が試薬部の外縁(円形)に沿って流れた後、試薬部を流動する血液よりも先行して試薬部の後方に血液が回り込む傾向がある。これにより、試薬部上に存在している空気が回り込んだ血液によって囲まれ、測定孔48の直下、すなわち測定光Lの光路内に空気が取り残される可能性がある。
【0060】
これに対し、本実施形態では、一組の親水面421、422上で血液は、流路26の延在方向に沿って平行に流れるため、試薬部30を流動する血液より先行しても試薬部30の後方側に回り込むことがない。試薬部30における血液の流動方向と、一組の親水面421、422における血液の流動方向とが互いに略平行なままで、基端方向に向けて共に流動する。
【0061】
試薬部30の幅方向両側に親水面421、422を備えているため、試薬部30の幅方向両側において血液を後方に向けて円滑且つ流路26に沿って平行に流動させることができる。親水面421、422に沿って流動する血液によって、試薬部30を流動する血液を、流路26の後方へ向けて促進させることができる。一方の親水面421における血液の流れと、他方の親水面422における血液の流れとが略同一の速度で流れることで、親水面421、422を流動する血液の試薬部30の後方への回り込みが抑制される。
【0062】
流路26内の上部空間76に血液が到達することに伴い、血液が試薬部30に接触し、試薬30Aが血液に溶解する。試薬30Aの血液への溶解に伴って試薬成分が血液中に拡散する。流路26において試薬30Aと血液とが反応することで反応生成物が生成される。試薬部30がフラット部30Fを有するため、血液と試薬30Aとが均一に混合し、反応生成物は、試薬部30の略上方に向けて拡散する。
【0063】
次に、ユーザは、血糖計141の操作ボタン62を操作して血糖値の測定を開始する(
図1参照)。
図6に示すように、発光部72から発せられた測定光Lは、測定孔48、カバー本体241、接着フィルム25、試薬部30、本体部22を透過して受光部74で受光される。このとき、測定光Lの透過方向は、テストストリップ10の板厚方向と平行である。このとき、
図5に示すように、測定光Lは、試薬部30のフラット部30Fを透過するように照射される。本体部22の幅方向において、測定光Lの透過範囲は、フラット部30Fの幅以下である。測定光Lが試薬部30における反応生成物を透過する。血糖計141の制御部52は、受光部74からの出力信号に基づいて血糖値を算出し、ディスプレイ64に表示させる。これにより、血糖計141による血糖値の測定が終了する。
【0064】
なお、
図5に示すように、本体部22の延在方向から見た凹部28及び試薬部30の断面形状は、長方形状に形成される場合に限定されない。
図7Aに示すように、凹部281及び試薬部301の断面形状が、開口部361の幅に対して底部381の幅が小さな台形状に形成されてもよい。凹部281の側部401は、開口部361から底部381に向けて幅方向内方に向けて傾斜する。本構成では、試薬部301に対して測定光Lを透過させるとき、測定光Lの透過範囲は、凹部281の幅以下である。
【0065】
図7Bに示すように、本体部22の延在方向から見た凹部282及び試薬部302の断面形状が、平行四辺形に形成されてもよい。凹部282の側部402は、開口部362から底部382に向けて幅方向内方に向けて傾斜し、且つ平行に形成される。本構成では、試薬部302に対して測定光Lを透過させるとき、測定光Lの透過範囲は、開口部362の幅方向一端と底部382の幅方向他端との幅以下である。
【0066】
図7Cに示すように、本体部22の延在方向から見た凹部283及び試薬部303の断面形状が、底部383と側部403との角部に円弧部78を備えていてもよい。円弧部78は、所定の半径で形成された円弧形状である。円弧部78は、底部383と側部403とを繋ぎ、凹部283から外方に向けて凸状に形成される。本構成では、試薬部303に対して測定光Lを透過させるとき、測定光Lの透過範囲は、平坦な底部383の幅以下である。
【0067】
本実施形態は、以下の効果を奏する。
【0068】
図2に示すように、板状の本体部22は、血液(サンプル)が流通する流路26と、流路26内に設けられ試薬30Aを備えた試薬部30を備え、本体部22には、流路26に設けられ流路26に対して板厚方向に窪んだ凹部28を有する(
図4参照)。試薬部30は、凹部28内に配置された試薬30Aによって形成される。
【0069】
これにより、テストストリップ10における本体部22の凹部28内に試薬部30を設けることで、本体部22の平面視において、所望形状の試薬部30を安定して形成することができる。
【0070】
図5に示すように、本体部22における流路26の延在方向と直交し、且つ本体部22の板厚方向と直交する幅方向において、本体部22は、凹部28の少なくとも幅方向一方側に親水面421、422を備える。親水面421、422が、本体部22の表面に露出する。
図2に示すように、本体部22の板厚方向に見た平面視において、凹部28及び試薬部30が流路26の延在方向に延在する長方形状に形成される。
【0071】
これにより、流路26に沿って血液を試薬部30へ供給する際に、試薬部30と親水面421、422とでは血液が流れる速度が異なる。このため、試薬部が、親水面上に円形に形成される場合、血液は、試薬部を取り囲むように隣接する親水面に沿って流れて速い速度で流れる。この場合、試薬部上を流れる血液に対し、親水面に沿って流れる血液が、試薬部の後方に先に回り込むことで、試薬部上において空気が残留して血液内に取り残される可能性がある。これに対し、本実施形態では、試薬部30が平面視で長方形状に形成され、流路26の延在方向と平行な方向において、試薬部30の両端に沿うように隣接する親水面421、422が設けられているため、試薬部30の両端に沿って親水面421、422上を血液が流路26の延在方向と平行に流れる。このため、試薬部が円形に形成される構成と比較して、試薬部30を長方形状とすることで、血液を試薬部30へ供給する際に試薬部30上に空気が残留することを抑制することができる。
【0072】
図5に示されるように、流路26の延在方向と直交し、且つ本体部22の板厚方向と直交する本体部22の幅方向において、試薬部30(試薬30A)の幅W1と凹部28の幅W2とが同一であるため、凹部28の幅W2によって、試薬部30(試薬30A)の幅W1を効果的に管理することができる。
【0073】
凹部28は、本体部22の表面に開口した開口部36と、本体部22の板厚方向と垂直に形成される底部38と、板厚方向と平行に形成され開口部36と底部38とを接続する側部40とを備える。これにより、本体部の平坦面に試薬を滴下して試薬部を形成する構成と比較し、測定光Lの透過方向において、試薬部30の表面のフラット部30Fを広く確保することができる。これにより、試薬30Aとサンプルとを反応させた際、反応生成物に対して広範囲に測定光Lを透過させることができる。フラット部30Fを広く確保することで、試薬部30の略上方に向けて反応生成物を拡散させることができ、反応生成物が幅方向に過度に拡散することが抑制される。これにより、測定光Lの光路内において、反応生成物を確実に測定することができる。
【0074】
親水面421、422は、凹部28の幅方向一方側及び幅方向他方側にそれぞれ設けられる。これにより、流路26に沿って血液を試薬部30に供給する際、試薬部30の幅方向両側に隣接する一組の親水面421、422上を血液が流路26と平行に流れる。一組の親水面421、422上を流動する血液によって、試薬部30上を流動する血液の後方への流動を効果的に促進させることができる。一組の親水面421、422を設けることで、試薬部30の後方への血液の回り込みをより効果的に抑制することができる。
【0075】
なお、本発明は、上述した開示に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得る。
【符号の説明】
【0076】
10…テストストリップ
16…チップ本体
18…取込部
22…本体部
26…流路
28、281、282、283…凹部
30、301、302、303…試薬部