(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155436
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】長尺物の調査装置
(51)【国際特許分類】
B64U 10/60 20230101AFI20241024BHJP
G05D 1/46 20240101ALI20241024BHJP
E03F 7/00 20060101ALI20241024BHJP
B64U 20/80 20230101ALI20241024BHJP
B64U 20/87 20230101ALI20241024BHJP
B64U 101/70 20230101ALN20241024BHJP
B64U 101/31 20230101ALN20241024BHJP
【FI】
B64U10/60
G05D1/10
E03F7/00
B64U20/80
B64U20/87
B64U101:70
B64U101:31
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023070146
(22)【出願日】2023-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】陰山 晃治
(72)【発明者】
【氏名】後藤 正広
(72)【発明者】
【氏名】内堀 宗一朗
(72)【発明者】
【氏名】益池 孝治
【テーマコード(参考)】
2D063
5H301
【Fターム(参考)】
2D063BA37
2D063EA03
5H301AA01
5H301AA04
5H301AA06
5H301AA10
5H301BB10
(57)【要約】
【課題】
マンホールの長手方向の軸と、長尺物の長手方向の軸とが離れている場合でも、マンホールと矩形部との接続部あるいは矩形部と下水管の長尺物の接続部に線状部材が接触しない長尺物の調査装置を提供することにある。
【解決手段】
一端を入り口とし、長手方向を第1の軸とする入り口経路と、入り口経路の他端に接続され、内部に矩形空間を有する矩形部と、矩形部に入り口経路と異なる面に接続され、第1の軸と異なり、第1の軸とは所定距離離れた第2の軸を有し、内部空間を有する長尺物とを有するインフラにおける、長尺物の内部空間を調査する調査装置であって、長尺物の内部を移動する移動体と、移動体に接続された線状部材と、線状部材を繰り出す繰り出し部と、線状部材を矩形部と長尺物との接続部に接触させないよう、繰り出し部を、矩形部と長尺物との接続部付近に移動させる移動部とを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端を入り口とし、長手方向を第1の軸とする入り口経路と、前記入り口経路の他端に接続され、内部に矩形空間を有する矩形部と、前記矩形部に前記入り口経路と異なる面に接続され、前記第1の軸と異なり、前記第1の軸とは所定距離離れた第2の軸を有し、内部空間を有する長尺物とを有するインフラにおける、前記長尺物の内部空間を調査する調査装置であって、
前記長尺物の内部を移動する移動体と、
前記移動体に接続された線状部材と、
前記線状部材を繰り出す繰り出し部と、
前記線状部材を前記矩形部と前記長尺物との接続部に接触させないよう、前記繰り出し部を、前記矩形部と前記長尺物との接続部付近に移動させる移動部とを有する
長尺物の調査装置。
【請求項2】
請求項1に記載の長尺物の調査装置であって、
前記調査装置は、
前記入り口経路から前記矩形部の内部まで延伸し、前記矩形部の矩形空間で屈曲する支持棒を有し、
前記移動部は、前記支持棒に沿って、前記入り口経路の軸方向から前記長尺物の軸方向に移動する
長尺物の調査装置。
【請求項3】
請求項2に記載の長尺物の調査装置であって、
前記繰り出し部が、前記線状部材を巻き取るボビンを内蔵する
長尺物の調査装置。
【請求項4】
請求項1に記載の長尺物の調査装置であって、
前記繰り出し部は、前記入り口から導入された線状部材を、前記入り口経路の軸方向から前記長尺物の軸方向へ方向転させる
長尺物の調査装置。
【請求項5】
請求項1に記載の長尺物の調査装置であって、
前記入り口経路から前記矩形部の内部まで延伸し、前記矩形部の矩形空間で屈曲し、前記移動部を支持する第1の支持棒と、
前記入り口経路から前記矩形部の内部まで延伸し、前記線状部材を支持する第2の支持棒と、を有する
長尺物の調査装置。
【請求項6】
請求項2に記載の長尺物の調査装置であって、
前記移動部が車両型移動体である
長尺物の調査装置。
【請求項7】
一端を入り口とし、長手方向を第1の軸とする入り口経路と、前記入り口経路の他端に接続され、内部に矩形空間を有する矩形部と、前記矩形部に前記入り口経路と異なる面に接続され、前記第1の軸と異なり、前記第1の軸とは所定距離離れた第2の軸を有し、内部空間を有する長尺物とを有するインフラにおける、前記長尺物の内部空間を調査する調査装置であって、
前記長尺物の内部を移動する移動体と、
前記移動体に接続された線状部材と、
前記線状部材を繰り出す繰り出し部と、
前記線状部材を前記矩形部と前記長尺物との接続部に接触させないよう、前記繰り出し部を、前記矩形部と前記長尺物との接続部付近に移動させる移動部と、
前記入り口経路から前記矩形部の内部まで延伸し、前記矩形部の矩形空間で屈曲し、前記移動部を支持する第1の支持棒と、
前記入り口経路から前記矩形部の内部まで延伸し、前記線状部材を支持する第2の支持棒と、
前記移動部に搭載され、前記線状部材を前記第1の支持棒の方向に引き寄せるように、前記線状部材を引っ掛けた前記繰り出し部を水平方向に回転させる水平回転モータと、
前記移動部に搭載され、前記第1の支持棒の方向に引き寄せた前記線状部材を、グリップするグリップ部と、を有する
長尺物の調査装置。
【請求項8】
請求項2及び7の何れか一項に記載の長尺物の調査装置であって、
前記繰り出し部と共に、前記移動部によって、移動するFPV映像受信アンテナ、操縦電波送信アンテナ、管口カメラ、管内照明のうちいずれか一つを有する
長尺物の調査装置。
【請求項9】
請求項2及び7の何れか一項に記載の長尺物の調査装置であって、
前記長尺物は、下水管あるいは雨水管である
長尺物の調査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺物をその軸方向に移動する移動体を有する長尺物の調査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インフラ施設の調査に飛行体が使われるようになっている。インフラ施設として、例えば、硫化水素が発生中の下水管が考えられる。このような下水管では、調査のため投入した飛行体のような移動体が落下した場合に人が回収に行くことが困難である。そのため、予め飛行体に回収紐を接続しておき、飛行体を投入する地上から回収紐を逐次繰り出して飛行させるようにする。飛行体が落下した場合には、回収紐を地上に巻き取ることで回収する。
【0003】
しかし、下水管は地上からマンホールの下方に延伸する垂直部(マンホール)と、マンホールの下端から水平方向に延長される長尺物とを有する。特に、下水管が円形管の場合、マンホールと水平部である長尺物とを接続する部分で、矩形の空間を形成する矩形部が設けられることが多い。
【0004】
マンホールから水平部は、矩形部により接続されるため、矩形部の横方向の寸法がマンホール径より大きい場合には、マンホールから下水管の水平部を見通すことができない場合がある。
【0005】
また、飛行体が下水管の水平方向に移動すると、マンホールと矩形部との接続部や下水管の水平部と矩形部の接続部に回収紐が接触する。そのため、回収紐が摩耗し、最悪の場合には切れてしまう。
【0006】
下水管の調査に関連し、特許文献1および特許文献2がある。
【0007】
特許文献1では、マンホールより長いケーブルガイドと、その先端のケーブルガイドローラーを介してケーブルを接続することで、マンホールの壁面や縁にケーブルが接触することを回避する技術が開示されている。
【0008】
特許文献2では、飛行ドローンと多機能ケーブルにて接続され、飛行ドローンに追従して下水管の内部を移動するフロート式ドローンが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2019-167044号公報
【特許文献2】特開2021-011266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1や特許文献2でも、マンホール直下から下水管の長尺物を見通せない下水管を調査対象とする場合には、矩形部と長尺物との接続部に回収紐が接触して摩耗する課題を解決できない。つまり、マンホールの長手方向の軸と、長尺物の長手方向の軸とが離れている場合には、長尺物の内部を調査する移動体の回収紐がマンホールと矩形部、矩形部と長尺物の接続部に接触してしまう。
【0011】
本発明の目的は、深い位置の下水管の中に回収紐等の線状部材を接続した移動体を移動させる場合、マンホール直下から長尺物が見通すことができない場合(マンホールの長手方向の軸と、長尺物の長手方向の軸とが離れている場合)でも、マンホールと矩形部との接続部あるいは矩形部と下水管の長尺物の接続部に線状部材が接触しない長尺物の調査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
以上の課題を解決するため、本発明の長尺物の調査装置の一態様は、一端を入り口とし、長手方向を第1の軸とする入り口経路と、入り口経路の他端に接続され、内部に矩形空間を有する矩形部と、矩形部に入り口経路と異なる面に接続され、第1の軸と異なり、第1の軸とは所定距離離れた第2の軸を有し、内部空間を有する長尺物とを有するインフラにおける、長尺物の内部空間を調査する調査装置であって、長尺物の内部を移動する移動体と、移動体に接続された線状部材と、線状部材を繰り出す繰り出し部と、線状部材を矩形部と長尺物との接続部に接触させないよう、繰り出し部を、矩形部と長尺物との接続部付近に移動させる移動部とを有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、マンホール直下から下水管の長尺物を見通せない場合であっても、移動体に接続した回収紐として機能する線状部材が、壁面や下水管の接続部に接触による摩耗や、切断を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、移動体22が長尺物を飛行している一例を示す見取模式図である。
【
図3】
図3は、従来の方法で、移動体が下水管内を飛行している一例を示す見取模式図である。
【
図5】
図5は、対比される他の従来方法で、移動体が下水管内を飛行している一例を示す見取模式図である。
【
図7】
図7は、繰り出し部20と支持棒24の変形例の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、送り出し部20に設けられる機器の一例を示した図である。
【
図9】
図9は、移動体22が下水管内を飛行している他の一例を示す見取模式図である。
【
図10】
図10は、2つの支持棒を有する他の例を示した見取模式図である。
【
図11】
図11は、繰り出し部20および移動部26の動作の一例を示す断面模式図である。
【
図13】
図13は、移動部26が車両型の走行体である場合の一例を示す見取模式図である。
【
図15】
図15は、移動体22が船体型移動体32の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。なお、各図において、各部の寸法及び縮尺は、実際のものと異なる場合がある。また、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
【0016】
なお、移動体としては、下水管や雨水管内の調査用の飛行体や車両型移動体、船体型移動体が含まれる。調査対象とする長尺物としては、雨水管や貯留管、農業用水トンネルや共同溝、ガス管、発電所配管、煙道など作業者が容易に内部へ入れないインフラが含まれる。
【0017】
以下、インフラの例として、下水管を用いて説明するが、下水管と同様、空間の入口から先の位置で複数回方向転換しなければ軸方向を前方に直視できない長尺物を利用する、例えば、雨水管や貯留管、農業用水トンネルや共同溝、ガス管、発電所配管、煙道など作業者が容易に内部へ入れないインフラにも適応できる。
【実施例0018】
図1は、移動体22が長尺物を飛行している見取模式図である。移動体22は、ドローン等の飛行体であり、長尺物10の内部を移動する。ドローンはバッテリーを搭載しており、バッテリーの電力により飛行するため、例えば、飛行時間は5-6minといった制限がある。また、移動体22は、制御不能な場合(トラブルにより自力で帰還できなくなった場合等)に、移動体22を回収するための回収紐等の線状部材18が接続されている。
【0019】
下水管の垂直部(マンホール)14は、移動体22が投入される入り口断面に平行な面に所定寸法、例えば、600mmの直径を有し、入り口断面に対して垂直方向に一定の長さ(例えば、2-10m)を有する。下水管の他、インフラが雨水管や貯留管、農業用水トンネルや共同溝、ガス管、発電所配管、煙道の場合には、入り口断面が垂直面等、水平面にない場合がある。その場合、マンホール14は、これらを包括する用語として入り口経路とするのが適切である。つまり、入り口経路は、移動体22が投入される入り口の断面に平行な面に所定寸法、例えば、所定の直径や、縦、横に所定の寸法を有し、入り口断面に対して垂直方向に一定の長さを有する。
【0020】
入り口経路は、入り口12を一端とし、他端を矩形部16と接続される。矩形部16は、入り口断面より大きな寸法を有する矩形空間を有する。下水管の場合、矩形部16は、内部に幅、奥行き、高さがそれぞれ4-5m程の矩形空間を有する。
【0021】
矩形部の一面に長尺物10を接続する。長尺物10は、内部に内部空間を有し、その断面が所定の直径を有し、断面に対して垂直方向に所定の長さを有する。長尺物10の長さ方向(軸方向)は、入り口経路14の長さ方向(軸方向)と異なり、長尺物10の軸と入り口経路14の軸が、所定の角度となるよう矩形部16に接続される。
図1の例では、長尺物10の軸と入り口経路14の軸とが交わることはなく、更に、90度有することとなる。また、入り口経路14と矩形部16との接続点と、長尺物10と矩形部16との接続点とは、所定の距離隔てられた位置に設けられる。尚、下水管では、マンホール14と矩形部16は、人が昇降するためのはしごを同一線上に設けるため、マンホール14は、矩形部16の一辺に沿って設けられる。一方、長尺物10は、そのような制限がなく、矩形部の各辺から離れた位置に設けられる。そのため、長尺物の軸とマンホールの軸とでは、2-3m程距離が離れるのが一般的である。
【0022】
以下、内容を理解しやすくするため、包括的な入り口経路という用語の代わりに、適用分野の一例として下水管として、入口経路をマンホールとして説明する。
【0023】
マンホール14の下部は、矩形空間を有する矩形部(以下、矩形空間16とも称する)と接続部により接続される。矩形空間16の壁面、つまり、マンホール14が接続される面とは異なる面に、下水管の長尺物10が接続される。
【0024】
長尺物10の内部空間の長手方向の軸(長尺物の軸)は、入り口であるマンホールの長手方向の軸(マンホールの軸)とは一定の角度を有し、さらに、二つの軸が交わらない。そして、長尺物の軸とマンホールの軸とは、一定の距離離れることとなるため、入り口から長尺物の内部を直接観察することはできない。マンホール14の軸と長尺物10の軸とが2-3m離れていても、移動体22の移動に伴い、線状部材18が長尺物10と矩形部16の接続部のエッジと接触しないことが、線状部材18を長寿命化させるためには重要となる。
【0025】
図2は、
図1の右側から見た際の断面模式図である。
マンホール14の上部には、櫓などの地上構造物38が設けられる。マンホール14と地上構造物38とが接する面が地表面200であり、地表面200から下水管の空間の入り口が、地上の空間の入り口12である。マンホール14の上端は、下水道などの空間の入り口12となる。下水管(長尺物10)が円形管であり、マンホール14の下端では、マンホール14と長尺物10とを接続する部分で、矩形の空間を形成する矩形部16がある。矩形部16は、上辺において、マンホール14と接続され、側面では、下水管の長尺物10と接続される。マンホール14や長尺物10は、中が空洞の円柱形が一般的である。矩形部16のサイズ、特に横方向のサイズが、マンホール14の径より大きい場合には、矩形部16と下水管の長尺物10との接続部が見通りにくい。
【0026】
移動体22は、移動体22が制御不能になった場合に、移動体22を回収するための回収紐等の線状部材18が接続されている。繰り出し部20は、線状部材18が取り付けられた移動体22の移動に干渉しないように線状部材18を繰り出す。移動部26は、線状部材18を矩形部16と長尺物10との接続部に接触させないよう、繰り出し部20を、矩形部16と長尺物10との接続部付近に移動させるための機構を有する。支持棒24は、移動部26を支持する。
【0027】
線状部材18は、材質が紐の場合には回収紐となる。この材質は紐でなくても良く、ロープ、ケーブル、ワイヤー、糸、テグスなどでも良い。
【0028】
繰り出し部20は、移動体22の移動に伴い、線状部材18を繰り出したり、巻き取ったりする。移動部26は、支持棒24に沿って繰り出し部20を移動させる機能を有する。支持棒24は、移動部26を支持し、移動部26を移動させるための部材である。支持棒24は、地上構造物38の内部に一端があり、地上構造物38によって支持される。支持棒24は、マンホール14を介して、矩形部16まで垂直方向に延伸されている。また、支持棒14は、矩形部16で、例えば、水平方向に方向を変えられ、水平方向に延伸される。移動部26が支持棒24に沿って移動することで、矩形部16と長尺物10との接続点付近まで移動する。これにより、マンホール14の軸と長尺物10の軸とが一定距離離れていても、マンホールの軸から長尺物の軸に向かって移動部26が移動するので、矩形部16と長尺物10との接続点付近において、繰り出し部20により移動体22に接続された線状部材18を繰り出すことができる。そのため、矩形部16と長尺物10との接続点のエッジに線状部材が接触することを防止することができる。
【0029】
図1や
図2において、線状部材18は、繰り出し部20から繰り出され、長尺物10の内側に伸びて移動体22に接続される。繰り出し部20は、支持棒24に沿って、マンホール14の軸方向から長尺物10の軸方向まで移動部26により移動するため、線状部材18は矩形部16と長尺物10の接続箇所であるエッジとの接触を回避できる。
【0030】
このように線状部材18は、矩形部16とマンホール14との接続部のエッジ、矩形部16と下水管の長尺物10との接続部のエッジとの接触がないため摩耗が少なく、長期間問題なく使用できる。
【0031】
移動体22が長尺物10(水平部)の中を、遠方まで移動した場合、即ち、繰り出し部20から相当遠方まで移動した場合、線状部材18は自身の重みで垂れ下がってしまい、長尺物10の底面に接触することがある。この場合であっても、その接触はエッジなど鋭角部ではないため摩耗は少なく、線状部材18は長期間問題なく使用できる。
【0032】
さらに、長尺物が下方の水がある場合には、線状部材18の比重が水より大きくても長尺物10の底面に接触する力は小さく、線状部材18を長期間問題なく使用できる。線状部材18の比重が水より小さい場合には、線状部材18は長尺物に接触しないため、摩耗を防止でき、さらに長期間使用できる。
【0033】
また、長尺物10が完全な直管ではなく左右に折れ曲がるなどする場合であっても、多くの下水管のように屈折が鋭角でなければ壁面での接触での線状部材18の摩耗は少ない。
【0034】
図1や
図2において、支持棒24、移動部26、繰り出し部20は空中に浮いているわけでは無く、地上構造物38から牽引して固定される。支持棒24は、マンホール14の内部あるいは矩形部16で固定することもできる。より好ましくは、支持棒24は、地上から回収できるように地上構造物38に固定すれば、下水管に硫化水素が存在しても、人がマンホールから降りることによる被害を避けられる。
【0035】
支持棒24は、繰り出し部20の重量に加えて、線状部材18や線状部材18を巻き取って回収される移動体22の重量も加算されるため、金属など強靭な素材であることが望ましい。
【0036】
図3は、対比される従来の移動体が下水管内を飛行している見取模式図である。即ち、地上に設置した繰り出し部20から線状部材18を繰り出し、移動体22が下水管内10を飛行している見取模式図である。
【0037】
図3では、
図1や
図2に示した支持棒24や移動部26が無い場合に、空間の入口12に設置した繰り出し部20から線状部材18を繰り出し、移動体22に接続されている状態を示している。
図4は、
図3を右側から左側に向けて見た際の断面模式図を示す。
【0038】
図3や
図4の中に示すA地点において、線状部材18はマンホール14と矩形部16との接続箇所のエッジと接触している。また、
図3や
図4の中に示すB地点において、線状部材18は矩形部16と長尺物である下水管の長尺物10との接続箇所のエッジとも接触している。
【0039】
線状部材18は、移動体22が落下するなどトラブルにより自力で帰還できなくなった場合に、移動体22を地上へ回収するために巻き取られる。そのため、切れてしまうとその目的を達成することができない。さらに、このようにエッジと線状部材18が接触すると、摩擦抵抗が生じるため、移動体22が長尺物である下水管の長尺物10の内部を移動する際に必要となる動力が増えてしまい、エネルギー効率が悪くなる。通常、移動体は、内部のバッテリーで限られた時間で動作可能であるが、エネルギー効率低下による動作時間の短縮は、作業効率全体を低下させてしまう。またエネルギー効率低下は、省エネにとっても好ましくない。
【0040】
したがって、
図3や
図4に示すように、空間の入口12に設置した繰り出し部20から線状部材18を繰り出すと、線状部材18がマンホール14と矩形部16の接続箇所や、下水管の長尺物10と矩形部16の接続箇所等のエッジに接触する状況は望ましくない。実施例1として述べた
図1や
図2の構成とすることが良い。
【0041】
図5は、対比される他の従来方法で、移動体が下水管内を飛行している見取模式図である。
つまり、
図1及び
図2で示した、支持棒24の内、水平方向に屈曲する水平部や、移動部26が無い場合に、空間の入口12から挿入した支持棒34の下端側に接続された繰り出し部20から線状部材18が繰り出され、移動体22に接続されている場合の見取模式図である。
【0042】
図6は、
図5を右側から左側に向けて見た際の断面模式図を示す。
【0043】
図5及び
図6の中に示すC地点において、線状部材18は矩形部16と長尺物10との接続箇所のエッジと接触している。その結果、線状部材18は摩耗することで耐久性が低下し、最悪の場合には切れてしまう。
【0044】
線状部材18は、移動体22が落下するなどトラブルにより自力で帰還できなくなった場合に、巻き取られて、移動体22を地上へ回収することを目的とするものである。そのため、一度でも切れてしまうとその目的を達成することができない。さらに、このようにエッジと線状部材18が接触するとその点で摩擦抵抗が生じるため、移動体22が長尺物10の内部を移動する際に必要となる動力が増えてしまい、エネルギー効率も悪くなってしまう。省エネの観点からも好ましくない。
【0045】
したがって、
図5や
図6に示すように、線状部材18が、空間の入口12から挿入した支持棒34の下端側に接続された繰り出し部20から移動体22に接続される状況は望ましくなく、
図1や
図2に示す構成とするのが良い。
【0046】
図7は、繰り出し部20と支持棒24の変形例を示す図である。支持棒24の先端に繰り出し部20を配置し、繰り出し部20の内部に収められた線状部材18が移動体22につながっている。
図7は、
図2で示した断面模式図を具体化した一例である。
【0047】
図7において、線状部材18を繰り出すあるいは巻き取るためのボビンが繰り出し部20の内部に収められ、線状部材18が支持棒24にそって延長しない点である。
【0048】
繰り出し部20の繰り出しあるいは巻き取りの信号は、空間の入口12から有線あるいは無線で送受信できることが望ましいが、繰り出し部20に備えられた制御装置で自律的に繰り出しあるいは巻き取りを実行しても良い。
【0049】
また、移動部26の移動信号は、空間の入口12から有線あるいは無線で送受信できることが望ましいが、移動部26に備えられた制御装置で自律的に移動を実行しても良い。
【0050】
この構成を取ることにより、支持棒24、移動部26、繰り出し部20、移動体22を空間の入口12から導入する際に、線状部材18を巻き取っておけばその線状部材18が、維持棒24、移動部26、繰り出し部20、移動体22の他、マンホール14のハシゴに絡まるなどのトラブルを防止することができる。
【0051】
図7の支持棒24は垂直部分と水平部分があるが、水平部分の距離が長い場合には垂直部分と水平部分がつながる部分に電動アクチュエータ36を設けて水平部分の角度を調整する。
【0052】
これにより、地上など空間の入口12から機材(支持棒24、移動部26、繰り出し部20、移動体22)を導入する際には、機材が一直線に配置されるため、容易となる。例えば、導入時には電動アクチュエータ36のピストン長を伸ばして支持棒24を1本の棒のようにして地上など空間の入口12からマンホール14内に垂直に降ろし、その後で電動アクチュエータ36のピストン長を短くして支持棒24の水平部分を水平にする。これにより、支持棒24、移動部26、繰り出し部20、移動体22等の機材がマンホール14の側面に接触するトラブルを低減できる。
【0053】
図7には、支持棒24の水平部分を移動できる移動部26を示している。これはモノレールのように自身の車輪を駆動させて支持棒24をレールとして移動する形態である。その他、ロープ―ウェイやウインチのように自身の中にあるボビンにケーブルや紐を巻き取って移動する形態でも良い。この移動部26によって、繰り出し部20を適切な位置へ移動させることによって、線状部材18が矩形空間16と長尺物10との接続箇所のエッジに接触することを防止できる。
【0054】
移動部26は、支持棒24と一体であっても良い。繰り出し部20が支持棒24に固定されていても、電動アクチュエータで支持棒24の一部を空間的に移動して線状部材18が矩形部16と長尺物10との接続箇所のエッジに接触しない位置まで繰り出し部20を移動させるようにする。電動アクチュエータ36により、送り出し部20を矩形部16と長尺物10との接続箇所付近に移動できれば所望の効果を得ることができる。
【0055】
図8は、送り出し部20に設けられる機器を示した図である。つまり、FPV映像受信アンテナ40、操縦電波送信アンテナ42、管口カメラ44、管内照明46を備えた場合の断面模式図である。
【0056】
移動体22を空間の入口12からFPV(First Person's View)操縦で移動させる場合、移動体22の前方の撮影映像をリアルタイムで目視確認する必要がある。しかし、電波は直進性が高いため、空間の入口12にFPV映像受信アンテナ40を設置しても減衰が大きい。そのため、作業者が空間の入口12に設置した地上モニターやゴーグルで撮影映像を目視確認できる移動体22の移動距離は短い。
【0057】
図1、
図2、
図7で示した繰り出し部20と同様に、空間の入口12から有線で接続されたFPV映像受信アンテナ40を、移動部26によって支持棒24に沿って移動するようにする。これにより、線状部材18と同様、マンホール14と矩形空部16との接続箇所のエッジや矩形部16と長尺物10との接続箇所のエッジで電波が遮られることが無くなる。遠方まで移動体22が移動しても、作業者が移動体22の前方の撮影映像を空間の入口12に設置した地上モニターやゴーグルでリアルタイムにて目視確認することができる。
【0058】
移動体22を地上からの電波による操縦で移動させるには、操縦信号を移動体まで送信する必要がある。しかし、電波は直進性が高いため空間の入口12に設置した操縦電波送信アンテナ42から電波を送っても減衰が大きく操縦可能な距離は短い。
【0059】
図1、
図2、
図7で示した繰り出し部20と同様に、空間の入口12から有線で接続された電波送信アンテナ42を、支持棒24や移動部26によって移動させる。電波送信アンテナ42を移動させることで、線状部材18と同様、マンホール14と矩形部16との接続箇所のエッジや、矩形部16と長尺物10との接続箇所のエッジにおいて、操縦電波が遮られることが無く、遠方まで移動体22が移動しても操縦が可能となる。
【0060】
移動体22を空間の入口12からの操縦で移動させる場合、移動体22とその周囲の状況を空間の入口12においてリアルタイムに目視確認できれば、より適切な操縦が可能となる。
【0061】
しかし、可視光は直進性が高いため、空間の入口12に設置した管口カメラや管内照明では、長尺物10の中を撮影できない。
【0062】
図1、
図2、
図7で示した繰り出し部20と同様に、空間の入口12から有線で接続された管口カメラ44および管内照明46を、支持棒24や移動部26によって移動できるように構成する。これにより、線状部材18と同様、マンホール14と矩形部16との接続箇所のエッジや、矩形部16と長尺物10との接続箇所のエッジで、照射光や反射光を遮ることを防止できる。遠方まで移動体22が移動しても移動体22とその周囲の状況の撮影を可能とする。
繰り出し部20は、線状部材18の方向を変換する。例えば、繰り出し部20は、内側の摩擦抵抗が小さい滑らかな金属製あるいは樹脂製のリングである方向変換部として機能する。方向変換部は、線状部材18の取り付けや取り外しの手間を減らすため、カラビナや完全な環状では無いフックで実現しても良い。あるいは、方向変換部はプーリーを用いても良い。この場合には、線状部材18の向きが変わる箇所での抵抗を大幅に削減できる。プーリーの場合には、軸の部分にベアリングを内蔵することがなお望ましい。
繰り出し部20以外でも、繰り出し部20に至るまでに線状部材18の方向が転換する箇所、例えば、電動アクチュエータ36の付近の支持棒24が垂直方向から水平方向に方向転換する箇所等に、線状部材18にかかる抵抗が小さくするため、方向変換部としてベアリングプーリーや滑車を設けることが望ましい。