(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155439
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 23/29 20060101AFI20241024BHJP
【FI】
H01L23/36 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023070150
(22)【出願日】2023-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109612
【弁理士】
【氏名又は名称】倉谷 泰孝
(74)【代理人】
【識別番号】100116643
【弁理士】
【氏名又は名称】伊達 研郎
(74)【代理人】
【識別番号】100184022
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 美保
(72)【発明者】
【氏名】横山 脩平
(72)【発明者】
【氏名】柴田 祥吾
【テーマコード(参考)】
5F136
【Fターム(参考)】
5F136BB18
5F136DA04
5F136DA27
5F136GA35
(57)【要約】
【課題】 リードフレームと放熱用金属板との間に樹脂が十分に充填された半導体装置を提供する。
【解決手段】 半導体装置は、ヒートシンクと、ヒートシンクの上側に離隔して設けられたダイパッドと、ダイパッドのヒートシンクと対向する面と反対側の面に設けられたパワーチップと、ヒートシンクの一部、ダイパッド及びパワーチップを封止するモールド樹脂と、を備え、ヒートシンクのダイパッドに対向する面は、ダイパッドと重なる領域で、かつ、パワーチップと重ならない領域で、ダイパッドを含む平面から離れるように形成された流動促進部を含む。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒートシンクと、
前記ヒートシンクの上側に離隔して設けられたダイパッドと、
前記ダイパッドの前記ヒートシンクと対向する面と反対側の面に設けられたパワーチップと、
前記ヒートシンクの一部、前記ダイパッド及び前記パワーチップを封止するモールド樹脂と、
を備え、
前記ヒートシンクの前記ダイパッドに対向する面は、前記ダイパッドと重なる領域で、かつ、前記パワーチップと重ならない領域で、前記ダイパッドを含む平面から離れるように形成された流動促進部を含むことを特徴とする
半導体装置。
【請求項2】
前記モールド樹脂の外形部には、他の前記モールド樹脂の樹脂とは光沢が異なる、又は凹みや突起により前記外形部の表面とは高さが異なるゲート痕が設けられており、前記ヒートシンクの前記流動促進部は、前記ゲート痕が設けられた側と反対側の位置に設けられていることを特徴とする
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記パワーチップを複数備え、
前記ヒートシンクの前記ダイパッドの側の面は、複数の前記ダイパッドの間に対応する位置において、前記ダイパッドを含む平面から離れるように形成された窪み部を含むことを特徴とする
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記ヒートシンクの上側に離隔して設けられ、前記ダイパッドを有するリードフレームは、前記モールド樹脂から露出した端子部と、前記端子部と前記ダイパッドとを接続する曲げ部と、を有し、
前記端子部を含む面は、前記ダイパッドを含む面よりも前記ヒートシンクから離れた位置に設けられ、
前記ヒートシンクは、平面視で前記曲げ部と重なる領域に前記リードフレームの前記曲げ部に沿った傾斜部を有することを特徴とする
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記リードフレームは、前記曲げ部にスリットを有することを特徴とする
請求項4に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記パワーチップは、RC-IGBTを含むことを特徴とする
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の半導体装置において、前記パワーチップ及びダイオード素子がワイドバンドギャップ半導体によって形成されていることを特徴とする
半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、モールド成形された半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来技術では、半導体素子と、リードフレームと、放熱用金属板とを備え、半導体素子、リードフレーム、及び放熱用金属板がモールドされた半導体装置が開示されている。(例えば、特許文献1。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術では、樹脂によって半導体素子を封入する際、リードフレームと放熱用金属板との間が狭い場合に、樹脂が未充填となるおそれがあるという課題があった。
【0005】
本開示は、上記のような問題点を解決するためになされたもので、リードフレームと放熱用金属板との間に樹脂が十分に充填された半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る半導体装置は、ヒートシンクと、ヒートシンクの上側に離隔して設けられたダイパッドと、ダイパッドのヒートシンクと対向するメント反対側の面に設けられたパワーチップと、ヒートシンクの一部、ダイパッド及びパワーチップを封止するモールド樹脂と、を備え、ヒートシンクのダイパッドに対向する面は、ダイパッドと重なる領域で、かつ、パワーチップと重ならない領域で、パワーチップを含む平面から離れるように形成された流動促進部を含むものである。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係る半導体装置によれば、リードフレームとヒートシンクとの間が狭い場合であっても、リードフレームと放熱用金属板との間に樹脂を十分に充填することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の実施の形態1に係る半導体装置の上面模式図である。
【
図2】本開示の実施の形態1に係る半導体装置の側面図である。
【
図3】本開示の実施の形態1に係る半導体装置の側面図である。
【
図4】本開示の実施の形態1に係る半導体装置のヒートシンクの拡大図である。
【
図5】本開示の実施の形態2に係る半導体装置の側面図である。
【
図6】本開示の実施の形態3に係る半導体装置の上面図である。
【
図7】本開示の実施の形態3に係る半導体装置の側面図である。
【
図8】本開示の実施の形態3に係る半導体装置の側面図である。
【
図9】本開示の実施の形態4に係る半導体装置の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施の形態について、添付の図面を参照しながら説明する。なお、図面は模式的に示されたものであり、異なる図面にそれぞれ示されているサイズ及び位置の相互関係は、必ずしも正確に記載されたものではなく、適宜変更され得る。また、以下の説明では、同様の構成要素には同じ符号を付して図示し、それらの名称及び機能も同一又は同様のものとする。よって、それらについての詳細な説明を省略する場合がある。
【0010】
実施の形態1.
実施の形態1における半導体装置101について、
図1から
図4を用いて説明する。
図1は実施の形態1に係る半導体装置101の上面模式図である。
【0011】
図1に示すように、本実施の形態に係る半導体装置101は、複数のパワーチップ(スイッチング素子)1と、複数のパワーチップ1にそれぞれ電気的に接続された複数のフリーホイールダイオード(ダイオード素子)3と、パワーチップ1の高圧側に電気的に接続された高圧IC4と、パワーチップ1の低圧側に電気的に接続された低圧IC5と、少なくとも一部が高圧IC4と電気的に接続されたブートストラップ回路を形成するダイオード(ブートストラップダイオード)2と、パワーチップ1、ダイオード2、フリーホイールダイオード3、高圧IC4、低圧IC5の各素子が設置されたリードフレーム6と、各素子を電気的に接続する複数のワイヤ7と、を含む。
【0012】
リードフレーム6は、
図1に点線で示しており複数の部材を合わせてリードフレーム6としている。すなわち、リードフレーム6はパワーチップ1が載置されるダイパッド8及びそれ以外の部分を含む。パワーチップ1は、ダイパッド8の上面に設けられる。リードフレーム6のダイパッド8以外の部分としては、例えば、ダイオード2、高圧IC4及び低圧IC5がそれぞれ設けられる部分、端子として機能する部分等がある。
【0013】
パワーチップ1、ブートストラップダイオード2、フリーホイールダイオード3、高圧IC4、及び低圧IC5は、それぞれリードフレーム6の上面に設けられる。
図1に示すように、パワーチップ1は、リードフレーム6の上面に、例えば、図面上下方向に6個設けられる。
【0014】
ダイパッド8は、例えば、複数設けられる。
図1では、ダイパッド8が4つ図面上下方向に設けられており、上部のダイパッド8のみ3つのパワーチップ1を有し、それ以外のダイパッド8についてはそれぞれ1つのパワーチップ1を有している。フリーホイールダイオード3は、リードフレーム6の上面に、例えば、図面上下方向に6個設けられる。
【0015】
なお、フリーホイールダイオード3は、パワーチップ1が設置される位置に対応して設けられており、上述した複数のダイパッド8にパワーチップ1と同じ数だけ設けられている。ブートストラップダイオード2は、リードフレーム6のダイパッド8とは異なる部分の上面に、例えば、3個設けられる。
【0016】
図1に示すように、本実施の形態の半導体装置101は、半導体素子として、例えば、パワーチップ1とフリーホイールダイオード3とが一体となったRC-IGBTを含む。なお、半導体素子はRC-IGBTでなくてもよい。
【0017】
高圧IC4は、リードフレーム6のダイパッド8とは異なる部分の上面に、例えば、1個設けられる。低圧IC5は、リードフレーム6のダイパッド8とは異なる部分の上面に、例えば、1個設けられる。本実施の形態においては、高圧IC4及び低圧IC5は同一のリードフレーム6に設けられている。なお、
図1において、パワーチップ1、ダイオード2、フリーホイールダイオード3、高圧IC4、低圧IC5の各素子については、図面の見かけの簡便さのため一部の素子のみ符号を付している。
【0018】
複数のワイヤ7は、ブートストラップダイオード2とリードフレーム6とを電気的に接続する。また、ワイヤ7は高圧IC4とリードフレーム6とを電気的に接続する。また、ワイヤ7は、高圧IC4とパワーチップ1とを電気的に接続する。また、ワイヤ7は、低圧IC5とリードフレーム6とを電気的に接続する。また、ワイヤ7は、低圧IC5とパワーチップ1とを電気的に接続する。また、ワイヤ7は、パワーチップ1とフリーホイールダイオード3とを電気的に接続する。また、ワイヤ7は、フリーホイールダイオード3とリードフレーム6とを電気的に接続する。なお、
図1においてパワーチップ1、ダイオード2、フリーホイールダイオード3、高圧IC4、低圧IC5の各素子を接続している線状の構成はすべてワイヤ7を示しており、図面の見かけの簡便さのため一部のワイヤ7にのみ符号を付してある。
【0019】
図1に示すように、パワーチップ1、ダイオード2、フリーホイールダイオード3、高圧IC4、低圧IC5の各素子及びリードフレーム6の一部はモールド樹脂10によって封止されている
【0020】
図2は実施の形態1に係る半導体装置101の側面図である。
図2は、
図1の紙面下方向(
図1の方向A)から見た半導体装置101の側面に対応する図である。
図2に示すように、半導体装置101はリードフレーム6の各素子が設けられている側とは異なる側にヒートシンク9を含む。すなわち、ヒートシンク9はリードフレーム6の下面側に設けられる。ヒートシンク9はリードフレーム6のうち特にダイパッド8の下面に対応する位置に設けられる。ヒートシンク9はパワーチップ1で発生した熱を受け取り、半導体装置101の外に放熱する。
【0021】
パワーチップ1は、リードフレーム6に含まれるダイパッド8の上面に設けられる。すなわち、パワーチップ1は、ダイパッド8のヒートシンク9と対向する面と反対側の面に設けられる。
【0022】
パワーチップ1、ブートストラップダイオード2、フリーホイールダイオード3、高圧IC4、低圧IC5、リードフレーム6の一部、ワイヤ7、及びヒートシンク9の一部は、モールド樹脂10で封止される。
【0023】
すなわち、パワーチップ1、ブートストラップダイオード2、フリーホイールダイオード3、高圧IC4、低圧IC5、及びワイヤ7は、全体がモールド樹脂10で封止される。一方、リードフレーム6及びヒートシンク9は、一部がモールド樹脂10から露出している。
【0024】
半導体装置101の下面には、図示しないフィンが設けられる。フィンは半導体装置101の冷却を行う。
図2に示すように、ヒートシンク9は、フィンを取り付けるフィン取付け面11である下面が、モールド樹脂10から露出している。
【0025】
フィンは半導体装置101の下面において、ヒートシンク9及びモールド樹脂10と接して設けられている。リードフレーム6とフィンとは、モールド樹脂10によって電気的に絶縁される。
【0026】
リードフレーム6とヒートシンク9との間に、絶縁層14が設けられる。絶縁層14は、リードフレーム6とヒートシンク9とを絶縁する。絶縁層14は、モールド樹脂10を充填する際に、モールド樹脂10と一体に成型される。
【0027】
リードフレーム6とヒートシンク9は予め定められた一定の距離を保った状態で離れている。すなわち、リードフレーム6は、ヒートシンク9の上側に離隔して設けられる。よって、リードフレーム6に含まれるダイパッド8は、ヒートシンク9の上側に離隔して設けられる。ダイパッド8とヒートシンク9との間に、モールド樹脂10が流し込まれる。ダイパッド8が含まれる面とヒートシンク9が含まれる面が平行であることが望ましい。リードフレーム6が含まれる面とヒートシンク9が含まれる面が平行であることにより、パワーチップ1及びフリーホイールダイオード3の放熱について均等な放熱効果が得られる。
【0028】
モールド樹脂10は、例えば、
図2の紙面手前側から充填される。
【0029】
図1に示すように、リードフレーム6はモールド樹脂10から露出した端子部20を含む。リードフレーム6は、例えば、
図1の左右方向の2面から露出している。リードフレーム6のうち、モールド樹脂10から露出している端子部20がリード端子として機能する。
【0030】
ブートストラップダイオード2が設けられるリードフレーム6に近い面、すなわち、
図1の左側の面から露出しているリード端子が制御側端子である。また、パワーチップ1が設けられるリードフレーム6が位置する面、すなわち、
図1の右側の面から露出している端子部20がリード端子としてのパワー側端子である。
【0031】
制御側端子とパワー側端子とは、
図1に示すように、例えば、別の面から露出するように設けられる。
【0032】
なお、リードフレーム6は、
図1に示す面とは別の面から露出していてもよい。また、全体がモールド樹脂10で封止されるリードフレーム6が存在してもよい。
【0033】
モールド樹脂10は、例えば、
図1に示すA方向に充填される。モールド樹脂10は、半導体装置の製造時において、図示しない金型の内部にパワーチップ1、ダイオード2、フリーホイールダイオード3、高圧IC4、低圧IC5の各素子及びリードフレーム6の一部を設置し、熱した流動性のあるモールド樹脂10を金型内に注入する。金型におけるモールド樹脂10の注入口は
図1の方向Aが示された側面、すなわち
図2で示された側面、及び
図3に示すA方向の側に存在すればよく形状、位置は問わない。
【0034】
図3は実施の形態1に係る半導体装置101の側面図である。
図3に示すように、パワーチップ1の下側にリードフレーム6を介してヒートシンク9が設けられる。
図3において、リードフレーム6のうちパワーチップ1が設置される部分は、特に、ダイパッド8である。
【0035】
図4は実施の形態1に係る半導体装置101のヒートシンク9の拡大図である。
図4は、
図3における紙面右側の一点鎖線で囲まれた部分を拡大して示したものである。
【0036】
図4に示すように、ヒートシンク9は、ヒートシンク9の上面の中央部から端部にかけて、徐々にパワーチップ1を含む平面から離れるように形成される流動促進部12を含む。すなわち、ヒートシンク9のダイパッド8に対向する面である上面は、平面視において、ダイパッド8と重なる領域で、かつ、パワーチップ1はと重ならない領域で、ダイパッド8を含む平面から離れるように形成された流動促進部12を有する。流動促進部12は、曲線形状、いわゆるR形状でもよい。また、流動促進部12は、直線形状でもよい。
【0037】
図4に示すように、流動促進部12は、パワーチップ1の下面に対応する位置には設けられていない。
図4に示す破線は、パワーチップ1が設けられている領域の端を示している。流動促進部12は、ヒートシンク9のうち、破線よりも端に近い位置、すなわち、
図4の破線よりも紙面右側に設けられている。すなわち、ヒートシンク9のリードフレーム6に対向する面は、パワーチップ1に対応する領域の外側で、かつ、リードフレーム6の端部に対向する位置において、パワーチップ1を含む平面から離れるように形成された流動促進部12を含んでいる。ここで、ヒートシンク9のパワーチップ1に対応する領域とは、例えば、
図4の上側、すなわち、半導体装置をパワーチップ1が設置された側から見た際、パワーチップ1によって隠れるヒートシンク9の領域である。
【0038】
また、ヒートシンク9のうち、パワーチップ1の下面に対応する位置、すなわち、
図4の破線で挟まれた領域において、ヒートシンク9は平らである。すなわち、ヒートシンク9の上面はパワーチップ1を含む平面と平行である。
【0039】
流動促進部12は、パワーチップ1の下面に対応する位置、すなわち、パワーチップが存在する領域の真下の位置には設けられていない。言い換えれば、ヒートシンク9のうち、パワーチップ1の下面に対応する位置はパワーチップ1を含む平面と平行であることで、パワーチップ1とヒートシンク9とが離れることを防ぐことができるので、放熱性能が悪化することを防ぐことができる。
【0040】
一方、流動促進部12のリードフレーム6との位置関係について、流動促進部12は、ヒートシンク9の流動促進部12と対向する位置、すなわち、
図4の上側、すなわち、半導体装置をパワーチップ1が設置された側から見た際、リードフレーム6の端部の直下の領域を含む。
【0041】
流動促進部12は、リードフレーム6の端部の直下の領域にすべて含まれてもよいし、流動促進部12の一部が、リードフレーム6の端部の直下よりも外側に存在していてもよい。すなわち、流動促進部12が形成されたヒートシンク9の領域の上面方向においてリードフレーム6の端部が含まれればよい。
【0042】
流動促進部12が形成されたヒートシンク9の領域の上面方向においてリードフレーム6の端部が含まれることにより、ヒートシンク9の大型化を回避できるとともに、パワーチップ1の放熱効率を最大化することが可能となる。
【0043】
先に述べた通り、本実施の形態において、モールド樹脂10は、
図3に示すA方向に充填される。すなわち、
図3の紙面左側から充填される。つまり、モールド樹脂10の充填口が
図3の紙面左側に設けられている。
【0044】
モールド樹脂10の外形部には、他のモールド樹脂10の樹脂とは光沢が異なるゲート痕が設けられている。又は、モールド樹脂10の外形部には、凹みや突起により外形部の表面とは高さが異なるゲート痕が設けられている。
【0045】
モールド樹脂10の外形部とは、モールド樹脂10の表面のことである。すなわち、モールド樹脂10が半導体装置101から露出している面を指す。ゲート痕とは、モールド樹脂10を注入する注入口に残る痕である。
【0046】
流動促進部12は、モールド樹脂10が充填される面とは反対側の面に近い端部に設けられる。すなわち、ヒートシンク9のうち、モールド樹脂10が到達するのが最も遅い面の端部に設けられる。すなわち、ヒートシンク9の流動促進部12は、ゲート痕が設けられた側と反対側の位置に設けられている。
【0047】
モールド樹脂10を充填する際に、充填口から遠いところでは、充填口から近いところに比べ、モールド樹脂10の圧力が小さくなる。ヒートシンク9のうち、モールド樹脂10が到達するのが最も遅い面の端部に流動促進部12を設けることで、余分なモールド樹脂10半導体装置101の外に押し出されるときの出口を広くすることができるため、モールド樹脂10の流動性を上げることができる。
【0048】
モールド樹脂10の流動性を上げることができると、モールド樹脂10を充填する際に発生する樹脂ボイドを半導体装置101の外部に押し出すことが可能となる。樹脂ボイドを押し出せることにより、リードフレーム6とヒートシンク9との間が狭い場合、すなわち、絶縁層14が薄い場合でも、リードフレーム6とヒートシンク9との間にモールド樹脂10を十分充填することができ、放熱性及び絶縁性を向上させることができる。
【0049】
なお、モールド樹脂10は、
図3の紙面左側から充填されることに限られない。また、流動促進部12は、モールド樹脂10が到達するのが最も遅い面の端部に設けられることに限られない。
【0050】
例えば、流動促進部12が、モールド樹脂10が充填される面に近い面に設けられる場合にも、モールド樹脂10の流動性を上げることができる。
【0051】
半導体装置101は、トランスファーモールド法で成型される。また、半導体装置101は大電力用途で使用される。
【0052】
なお、ブートストラップダイオード2は設けられていなくてもよい。また、リードフレーム6は一部が曲げられていてもよいし、曲げられていなくてもよい。
【0053】
実施の形態2.
実施の形態2における半導体装置102について
図5を用いて説明する。実施の形態1と同様の構成については説明を省略する。また、
図5において
図1から4と同一の符号は同一又は相当部分を示す。
【0054】
図5は実施の形態2に係る半導体装置102の側面図である。
図2は、
図1の紙面左方向から見た側面に対応する図である。本実施の形態に係る半導体装置102のヒートシンク21は、
図5に示すように、複数の窪み部22を有する点が実施の形態1と異なる。以下、実施の形態1のヒートシンク9と異なる点を中心に説明する。
【0055】
図5に示すように、ヒートシンク21のダイパッド8の側の面、すなわち、ヒートシンク21の上面は、複数のダイパッド8の間に対応する位置おいて、徐々にパワーチップ1を含む平面から離れるように形成される窪み部22を有する。
図5において、複数の窪み部22を四角点線で示している。窪み部22は、例えば、ダイパッド8同士の間の数に対応するように3個設けられる。すなわち、ダイパッド8の個数よりも1つ少ない個数設けられる。なお、ヒートシンク21に設けられる窪み部22は、ダイパッド8の個数に限らなくてもよい。例えば、1個であればよい。
【0056】
本実施の形態において、半導体装置の製造時において、モールド樹脂10は、パワーチップ1が並べられる方向、すなわち、ダイパッド8が並べられる方向に充填される。言い換えると、モールド樹脂10は、複数の窪み部22が並べられる方向に充填される。つまり、モールド樹脂10は、
図5の紙面左側又は紙面右側から充填される。樹脂が充填される方向は、
図5に示すA方向又はB方向である。
【0057】
複数のダイパッド8の間に対応する位置において、窪み部22が設けられることで、リードフレーム6とヒートシンク21との間のうち、ダイパッド8の下面に対応する位置においても、モールド樹脂10の流動性が向上する。モールド樹脂10の流動性が向上するため、モールド樹脂10を充填する際に発生する樹脂ボイドを半導体装置102の外に押し出すことが容易になる。
【0058】
樹脂ボイドを半導体装置102の外に押し出すことが容易になることで、リードフレーム6とヒートシンク21との間にモールド樹脂10を十分充填することができる。すなわち、モールド樹脂10が十分充填された絶縁層14を形成することができる。
【0059】
窪み部22は、複数のダイパッド8の間に設けられており、パワーチップ1の下面に対応する位置には設けられていない、すなわち、ヒートシンク21のうち、パワーチップ1の下面に対応する位置はパワーチップ1を含む平面と平行である。
【0060】
窪み部22が、パワーチップ1の下面に対応する位置には設けられていないことで、パワーチップ1とヒートシンク21とが離れることを防ぐことができるので、放熱性能が悪化することを防ぐことができる。
【0061】
実施の形態3.
実施の形態3における半導体装置103について
図6から8を用いて説明する。実施の形態1と同様の構成については説明を省略する。また、
図6から8において
図1から5と同一の符号は同一又は相当部分を示す。
【0062】
本実施の形態に係る半導体装置103は、ヒートシンク31が傾斜部32を有し、リードフレーム33が曲げ部34を有する点が実施の形態1と異なる。以下、実施の形態1と異なる点を中心に説明する。
【0063】
図6は実施の形態3に係る半導体装置103の上面図である。本実施の形態に係る半導体装置103のリードフレーム33は、
図6に示すように、曲げ部34を有する。曲げ部34は、リードフレーム33のうち、モールド樹脂10から露出している端子部20とダイパッド8との間に設けられている。すなわち、曲げ部34は、端子部20とダイパッド8とを接続する。
【0064】
本実施の形態において、モールド樹脂10は、例えば、
図6に示すC方向に充填される。すなわち、
図6の紙面右側から充填される。
【0065】
図7は実施の形態3に係る半導体装置103の側面図である。
図7は、
図6の紙面下方向から見た側面に対応する図である。
【0066】
図7に示すように、リードフレーム33は、端子部20から、ダイパッド8にかけて、ヒートシンク31の下面に近づくよう傾斜している曲げ部34を有する。曲げ部34は、例えば、リードフレーム33のうち、リード端子15とダイパッド8との間の一部に設けられる。ここで、端子部20を含む面は、ダイパッド8を含む面よりもヒートシンク31から離れた位置に設けられている。
【0067】
ヒートシンク31は、リードフレーム33の曲げ部34に沿うような傾斜部32を有する。言い換えると、リードフレーム33の曲げ部34は、ヒートシンク31の傾斜部32に沿うように形成されている。傾斜部32は、ヒートシンク31のうち、平面視で曲げ部34と重なる領域に設けられる。
【0068】
モールド樹脂10は、
図7に示すC方向に充填される。すなわち、
図7の紙面右側から充填される。
【0069】
ヒートシンク31の傾斜部32及びリードフレーム33の曲げ部34は、モールド樹脂10が充填される方向に対して、徐々にフィン取付け面11に近づくように傾斜しているため、絶縁層14において、モールド樹脂10が流れやすくなる。
【0070】
絶縁層14において、モールド樹脂10の流速が増し、流動性が向上することで、モールド樹脂10充填性が向上する。よって、絶縁層14が薄い場合でも、リードフレーム6とヒートシンク9との間にモールド樹脂10を十分充填することができ、放熱性及び絶縁性を向上させることができる。
【0071】
図8は実施の形態3に係る半導体装置103の側面図である。
図8は、
図6の紙面右方向、すなわち
図6の方向Cから見た側面に対応する図である。
【0072】
図8に示す破線は、リードフレーム33である。リードフレーム33は、リード端子15から、ダイパッド8にかけて、ヒートシンク31の下面に近づくよう傾斜している曲げ部34を有するため、パワーチップ1が設けられるダイパッド8は、例えば、ヒートシンク31のフィン取付け面11から最も離れている部分よりも、フィン取付け面11に近い。
【0073】
なお、ダイパッド8は、ヒートシンク31のフィン取付け面11から最も離れている部分よりも、フィン取付け面11から遠いところに設けられていてもよい。
【0074】
モールド樹脂10は、
図8の紙面手前側から充填される。
【0075】
実施の形態4.
実施の形態4における半導体装置104について
図9を用いて説明する。実施の形態1と同様の構成については説明を省略する。また、
図9において
図1から8と同一の符号は同一又は相当部分を示す。
【0076】
本実施の形態に係る半導体装置104は、リードフレーム41の曲げ部42にスリット43が設けられている点が実施の形態3と異なる。以下、実施の形態3と異なる点を中心に説明する。
【0077】
図9は実施の形態4に係る半導体装置104の上面図である。本実施の形態に係る半導体装置104のリードフレーム41は、
図9に示すように、複数の曲げ部42にそれぞれ複数のスリット43を有する。
【0078】
モールド樹脂10は、
図9に示すC方向に充填される。すなわち、
図9の紙面右側から充填される。
【0079】
リードフレーム41の曲げ部42にスリット43が設けられることで、曲げ部42の上面からも、絶縁層14にモールド樹脂10が流れ込む。スリット43からも絶縁層14にモールド樹脂10が流れ込むことで、絶縁層14におけるモールド樹脂10の流速が増加し、絶縁層14が薄い場合でも、リードフレーム6とヒートシンク9との間にモールド樹脂10を十分充填することができ、放熱性を向上させることができる。なお、
図9では、複数の曲げ部42すべてにそれぞれスリット43を設けたが、曲げ部42すべてにスリット43を設ける必要はなく一部の曲げ部42にのみスリット43を設けても構わない。
【0080】
実施の形態5.
実施の形態5における半導体装置105について説明する。実施の形態1と同様の構成については説明を省略する。
【0081】
本実施の形態に係る半導体装置105は、スイッチング素子及びダイオード素子がワイドギャップバンドギャップ半導体によって形成されている。
【0082】
ワイドバンドギャップ半導体によって形成されたスイッチング素子及びダイオード素子は、耐電圧性が高く、許容電流密度も高いため、スイッチング素子及びダイオード素子の小型化が可能である。小型化されたスイッチング素子及びダイオード素子を用いることにより、半導体装置の小型化が可能となる。
【0083】
また、ワイドバンドギャップ半導体によって形成されたスイッチング素子及びダイオード素子は耐熱性も高いため、ヒートシンク及びフィンの小型化が可能になる。更に、ワイドバンドギャップ半導体は電力損失が低いため、スイッチング素子や及びダイオード素子の高効率化が可能であり、半導体装置の高効率化が可能になる。
【0084】
なおスイッチング素子及びダイオード素子の両方がワイドバンドギャップ半導体によって形成されていることが望ましいが、いずれか一方の素子がワイドバンドギャップ半導体よって形成されていてもよい。
【0085】
なお、本明細書で説明した上記の各実施の形態では、各構成要素の材質、材料、寸法、形状、相対的配置関係又は実施の条件等について記載している場合があるが、これらは全ての局面において例示であって、各実施の形態が記載されたものに限られることはない。よって、例示されていない無数の変形例が、各実施の形態の範囲内において想定される。例えば、任意の構成要素を変形する場合、追加する場合又は省略する場合、さらには、少なくとも1つの実施形態における少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施形態の構成要素と組み合わせる場合が含まれる。
【0086】
以上、好ましい実施の形態等について詳説したが、上述した実施の形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0087】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0088】
(付記1)
ヒートシンクと、
前記ヒートシンクの上側に離隔して設けられたダイパッドと、
前記ダイパッドの前記ヒートシンクと対向する面と反対側の面に設けられたパワーチップと、
前記ヒートシンクの一部、前記ダイパッド及び前記パワーチップを封止するモールド樹脂と、
を備え、
前記ヒートシンクの前記ダイパッドに対向する面は、前記ダイパッドと重なる領域で、かつ、前記パワーチップと重ならない領域で、前記ダイパッドを含む平面から離れるように形成された流動促進部を含むことを特徴とする
半導体装置。
(付記2)
前記モールド樹脂の外形部には、他の前記モールド樹脂の樹脂とは光沢が異なる、又は凹みや突起により前記外形部の表面とは高さが異なるゲート痕が設けられており、前記ヒートシンクの前記流動促進部は、前記ゲート痕が設けられた側と反対側の位置に設けられていることを特徴とする
付記1に記載の半導体装置。
(付記3)
前記パワーチップを複数備え、
前記ヒートシンクの前記ダイパッドの側の面は、複数の前記ダイパッドの間に対応する位置において、前記ダイパッドを含む平面から離れるように形成された窪み部を含むことを特徴とする
付記1又は2に記載の半導体装置。
(付記4)
前記ヒートシンクの上側に離隔して設けられ、前記ダイパッドを有するリードフレームは、前記モールド樹脂から露出した端子部と、前記端子部と前記ダイパッドとを接続する曲げ部と、を有し、
前記端子部を含む面は、前記ダイパッドを含む面よりも前記ヒートシンクから離れた位置に設けられ、
前記ヒートシンクは、平面視で前記曲げ部と重なる領域に前記リードフレームの前記曲げ部に沿った傾斜部を有することを特徴とする
付記1から3のいずれか1項に記載の半導体装置。
(付記5)
前記リードフレームは、前記曲げ部にスリットを有することを特徴とする
付記4に記載の半導体装置。
(付記6)
前記パワーチップは、RC-IGBTを含むことを特徴とする
付記1から5のいずれか1項に記載の半導体装置。
(付記7)
請求項1から6のいずれか1項に記載の半導体装置において、前記パワーチップ及びダイオード素子がワイドバンドギャップ半導体によって形成されていることを特徴とする
半導体装置。
【符号の説明】
【0089】
1 パワーチップ、2 ブートストラップダイオード、3 フリーホイールダイオード、6、33、41 リードフレーム、7 ワイヤ、8 ダイパッド、9、21、31 ヒートシンク、10 モールド樹脂、12 流動促進部、14 絶縁層、15 リード端子、22 窪み部、32 傾斜部、34、42 曲げ部、43 スリット、101、102、103、104 半導体装置、