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特開2024-155449静止誘導機器、及び静止誘導機器の製造方法
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  • 特開-静止誘導機器、及び静止誘導機器の製造方法 図1
  • 特開-静止誘導機器、及び静止誘導機器の製造方法 図2
  • 特開-静止誘導機器、及び静止誘導機器の製造方法 図3
  • 特開-静止誘導機器、及び静止誘導機器の製造方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155449
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】静止誘導機器、及び静止誘導機器の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 30/10 20060101AFI20241024BHJP
   H01F 27/32 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
H01F30/10 T
H01F30/10 H
H01F27/32 140
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023070173
(22)【出願日】2023-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】513296958
【氏名又は名称】東芝産業機器システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】倉本 拓実
(72)【発明者】
【氏名】池田 翔太
【テーマコード(参考)】
5E044
【Fターム(参考)】
5E044CA09
(57)【要約】
【課題】鉄心の角部によって角筒コイルが破損することを抑制する。
【解決手段】静止誘導機器は、断面が矩形状に形成された脚部を有する鉄心と、角筒状に形成されて脚部の外周側に装着された角筒コイルと、電気絶縁性を有する部材で構成され脚部の4つの角部のうち、少なくとも対角となる2つの角部で、かつ、脚部の軸方向の少なくとも上端側を覆う保護部材と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面が矩形状に形成された脚部を有する鉄心と、
角筒状に形成されて前記脚部の外周側に装着された角筒コイルと、
電気絶縁性を有する部材で構成され前記脚部の4つの角部のうち、少なくとも対角となる2つの角部で、かつ、前記脚部の軸方向の少なくとも上端側を覆う保護部材と、
を備える静止誘導機器。
【請求項2】
前記保護部材は、前記脚部の4つの角部に設けられている、
請求項1に記載の静止誘導機器。
【請求項3】
前記保護部材の全長は、前記角筒コイルの軸方向の長さよりも長く設定されている、
請求項1に記載の静止誘導機器。
【請求項4】
断面が矩形状に形成された脚部を有する鉄心において、前記脚部の4つの角部のうち、少なくとも対角となる2つの角部で、かつ前記脚部の軸方向の少なくとも端部側に、電気絶縁性を有する部材で構成された保護部材を取り付ける工程と、
前記保護部材を取り付けた前記脚部に、角筒状に巻かれた角筒コイルを挿入して装着する工程と、
を備える静止誘導機器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、静止誘導機器、及び静止誘導機器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、断面が矩形状の鉄心の周囲に、角筒状に形成された角筒コイルを装着した静止誘導機器が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-150611号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような静止誘導機器において、小型化及び高出力化を図るため、鉄心と角筒コイルとの隙間を極力小さくすることが望ましい。しかしながら、鉄心と巻線との隙間を小さくすると、鉄心の角部が巻線に接触し易くなる。そして、鉄心の角部が巻線に接触すると、巻線が破損する可能性がある。
【0005】
そこで、鉄心の角部によって角筒コイルが破損することを抑制できる静止誘導機器、及び静止誘導機器の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
静止誘導機器は、断面が矩形状に形成された鉄心と、角筒状に形成されて前記鉄心の外周に装着される角筒コイルと、電気絶縁性を有する部材で断面がL字状に構成され、前記鉄心の角部のうち少なくとも対角となる2つの角部の少なくとも一部を覆う保護部材と、を備える。
【0007】
また、静止誘導機器の製造方法は、断面が矩形状に形成された鉄心の角部のうち少なくとも対角となる2つの角部でかつ少なくとも前記鉄心の端部側に、電気絶縁性を有する部材で断面がL字状に構成された保護部材を取り付ける保護部材取付工程と、角筒状に巻かれた角筒コイルを、前記保護部材を取り付けた前記鉄心に前記端部側から挿入して装着するコイル装着工程と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態による静止誘導機器の一例を概略的に示す図
図2】一実施形態による静止誘導機器の一例について、1組の脚部及び角筒コイルについて図1のX2-X2線に沿って示す断面を拡大して示す図
図3】一実施形態による静止誘導機器の一例について、保護部材を構成する帯状の部材の例を示す図
図4】一実施形態による静止誘導機器の製造方法の一例を概略的に示す図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、一実施形態による静止誘導機器及び静止誘導機器の製造方法ついて図面を参照しながら説明する。図1に示す静止誘導機器10は、鉄心20、角筒コイル30、及び保護部材40を備えている。なお、本実施形態の説明では、説明の簡略化のため鉄心20や角筒コイル30の保持構造などは図示を省略している。本実施形態の静止誘導機器10は、例えば筐体内に冷却油を充填した油入変圧器や、角筒コイル30を樹脂材料でモールドしたモールド変圧器を対象とすることができる。以下の説明では、図1に示すように、静止誘導機器10を設置した状態の重力方向を上下方向とする。
【0010】
鉄心20は、例えばケイ素鋼板などの電磁鋼板を複数枚積層した積層鉄心で構成することができる。鉄心20は、例えば下部鉄心20a及び上部鉄心20bを組み合わせて構成されている。下部鉄心20aは、2つまたは3つの脚部21を有している。この場合、静止誘導機器10は、単相に対応したものであれば脚部21を2つ有し、三相に対応したものであれば脚部21を3つ有している。
【0011】
脚部21は、鉄心20のうち角筒コイル30が装着される部分である。すなわち、角筒コイル30は、脚部21の外周側に装着される。脚部21は、上部鉄心20b側へ向かって伸びる、つまり上下方向に長い長尺の棒状に形成されている。図1の例では、脚部21の長手方向を脚部21の軸方向とする。この場合、脚部21の軸方向は、鉄心20の上下方向となる。脚部21は、図2に示すように、水平方向つまり脚部21の軸方向に対して直角方向に切断した断面が矩形状に形成されている。本実施形態の場合、脚部21は、断面が正方形状または長方形状に形成されている。
【0012】
角筒コイル30は、導線などの巻線を角筒状に巻いて形成されたコイルである。本実施形態において、角筒状とは、断面が略矩形の筒状を意味する。断面が略矩形とは、角筒状の外側及び内側の角部が直角に形成されている場合だけでなく、図2に示すように丸みを帯びた角部に形成されている場合も含む意味である。角筒コイル30は、鉄心20の各脚部21の外周側に装着される。角筒コイル30を構成する巻線は、例えば断面が円形のいわゆる丸線でも良いし、断面が矩形のいわゆる平角線でも良い。
【0013】
保護部材40は、鉄心20の角部211から角筒コイル30を保護するための部材である。保護部材40は、電気絶縁性を有する部材で構成されている。保護部材40の材料としては、例えば厚みが0.1mm~2mm程度のプレスボードや絶縁紙、樹脂若しくは木材の板またはシート材等を利用することができる。この場合、プレスボードや絶縁紙は、静止誘導機器10の製造時に、保護部材40の以外の目的でも利用する材料である。このため、保護部材40にプレスボードや絶縁紙を採用することで、静止誘導機器10の製造現場にある材料で保護部材40を構成することができる。これにより、静止誘導機器10の現場で保護部材40を調達することができ、その結果、作業性や利便性が向上する。
【0014】
保護部材40は、図2に示すように、鉄心20の角部211の形状に沿って、例えば断面がL字状に構成されている。保護部材40は、鉄心20の4つ角部211のうち、少なくとも対角となる2つの角部211に設けられている。また、保護部材40は、角部211のうち少なくとも脚部21の軸方向の上端側つまり上部鉄心20b側に設けられている。
【0015】
本実施形態の場合、保護部材40は、3つの脚部21のそれぞれにおいて、各角部211に設けられている。また、保護部材40は、脚部21の角部211の長手方向の全長または概ね全長に亘って設けられている。すなわち、本実施形態の場合、保護部材40の全長寸法L1は、角筒コイル30の軸方向の全長寸法L2よりも長く設定されている。このため、図1に示すように、保護部材40の両端は、角筒コイル30の上下端側から外方に延び出ている。
【0016】
保護部材40は、例えば静止誘導機器10の製造現場で、作業者がプレスボードや絶縁紙などの材料を切断及び折り曲げ加工をすることで製造可能に構成されている。この場合、作業者は、プレスボードや絶縁紙などの材料を、例えば図3の(A)、(B)のように長尺の帯状に切断し、その切断した帯状の部材40a、40bを幅方向の中心位置Cで折り曲げることで、保護部材40を製造することができる。
【0017】
保護部材40を構成する帯状の部材40aは、例えば図3(A)に示すように単純な帯状に構成しても良い。また、保護部材40を構成する帯状の部材40bは、図3(B)に示すように、長手方向に沿って間欠的に設けられた複数の穴41を有する構成としても良い。帯状の部材40bに複数の穴41を設けることで、帯状の部材40bの折り曲げ加工をし易くすることができる。
【0018】
次に、上述した静止誘導機器10の製造方法について、図4も参照して説明する。まず、作業者は、例えば静止誘導機器10の製造現場で、プレスボードや絶縁紙などを加工して保護部材40を製造する。次に、作業者は、図4(1)に示すように、下部鉄心20aの脚部21の角部211に保護部材40を取り付ける。すなわち、作業者は、脚部21の4つの角部211のうち少なくとも対角となる2つの角部211で、かつ脚部21の軸方向の少なくとも端部側に、保護部材40を取り付ける。角部211に対する保護部材40の固定は、例えば両面テープや接着剤を用いることができる。この、脚部21の角部211に保護部材40を取り付ける工程を保護部材取付工程と称する。
【0019】
次に、作業者は、図4(2)に示すように、角筒状に巻かれた角筒コイル30を、保護部材40を取り付けた脚部21に挿入して装着する。この、脚部21に角筒コイル30を装着する工程をコイル装着工程と称する。作業者は、角筒コイル30の内側を保護部材40に接触させながら保護部材40に沿わせて、角筒コイル30を脚部21に挿入する。このため、保護部材40は、脚部21に対する角筒コイル30の挿入を案内する案内部としても機能する。そして、次に作業者は、図4(3)に示すように、下部鉄心20aに上部鉄心20bを接続固定し、これにより静止誘導機器10が完成する。
【0020】
以上説明した実施形態によれば、静止誘導機器10は、鉄心20と、角筒コイル30と、保護部材40と、を備える。鉄心20は、断面が矩形状に形成された脚部21を有する。角筒コイル30は、角筒状に形成されて脚部21の外周側に装着されている。保護部材40は、電気絶縁性を有する部材で構成されており、脚部21の4つの角部211のうち、少なくとも対角となる2つの角部211で、かつ、脚部21の軸方向の少なくとも上端側を覆っている。
【0021】
また、実施形態による静止誘導機器10の製造方法は、保護部材取付工程と、コイル装着工程と、を備える。保護部材取付工程は、断面が矩形状に形成された脚部21を有する鉄心20において、脚部21の4つの角部211のうち、少なくとも対角となる2つの角部211で、かつ脚部21の軸方向の少なくとも端部側に、電気絶縁性を有する部材で構成された保護部材40を取り付ける工程である。コイル装着工程は、保護部材40を取り付けた脚部21に、角筒状に巻かれた角筒コイル30を挿入して装着する工程である。
【0022】
ここで、脚部21の4つの角部211のうち少なくとも対角となる2つの角部211に保護部材40が設けられていれば、角筒コイル30の内側が保護部材40に接触した場合に、保護部材40が設けられていない残りの2つの角部211と保護部材40の内側との間に隙間が生じ易くなる。このため、脚部21の4つの角部211のうち少なくとも対角となる2つの角部211に保護部材40が設けられていれば、残りの角部211と角筒コイル30の内側とが直接接触することを抑制できる。このように、本実施形態によれば、鉄心20に角筒コイル30を装着したものにおいて、鉄心20の角部211が角筒コイル30に接触して角筒コイル30が破損することを抑制できる。
【0023】
また、保護部材40は、脚部21の4つの角部211に設けられている。これによれば、角筒コイル30の内側が面する全ての角部211に保護部材40が設けられているため、角部211が角筒コイル30の内側に接触することをより確実に抑制することができる。その結果、鉄心20の角部211が角筒コイル30に接触して角筒コイル30が破損することをより確実に防ぐことができる。
【0024】
保護部材40の全長寸法L1は、角筒コイル30の軸方向の長さ寸法L2よりも長く設定されている。すなわち、保護部材40は、角筒コイル30の内側に対向する角部211の全長に亘って設けられている。これによれば、角部211が角筒コイル30の内側に接触することを更に確実に抑制することができる。その結果、鉄心20の角部211が角筒コイル30に接触して角筒コイル30が破損することを更に確実に防ぐことができる。
【0025】
本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【符号の説明】
【0026】
10…静止誘導機器、20…鉄心、21…脚部、211…角部、30…角筒コイル、40…保護部材
図1
図2
図3
図4