(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155454
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】保護素子及び回路基板
(51)【国際特許分類】
H01H 37/76 20060101AFI20241024BHJP
【FI】
H01H37/76 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023070189
(22)【出願日】2023-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100215935
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 茂輝
(74)【代理人】
【識別番号】100141999
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 敬一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】木村 裕二
【テーマコード(参考)】
5G502
【Fターム(参考)】
5G502AA02
5G502AA20
5G502BA08
5G502BB01
5G502BB08
5G502BB10
5G502BB16
5G502BB17
5G502BC07
5G502BD02
5G502BD07
5G502CC04
5G502CC28
5G502EE04
5G502EE05
5G502EE06
5G502FF08
(57)【要約】
【課題】ヒューズエレメントの熱変形及び脱落を抑制することができる保護素子を提供する。
【解決手段】保護素子11は、絶縁基板26上の電極21,22,23に固定用はんだ28を介してヒューズエレメント20が設けられているものである。固定用はんだ28の固相線温度T1は、ヒューズエレメント20の固相線温度T2より大きい(T2<T1)。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上の電極に固定用はんだを介してヒューズエレメントが設けられている保護素子であって、
前記固定用はんだの固相線温度T1は、前記ヒューズエレメントの固相線温度T2より大きい(T2<T1)、
保護素子。
【請求項2】
前記固定用はんだの初回溶融時の固相線温度T1aは、前記固定用はんだの再溶融時の固相線温度T1bと異なる(T1a≠T1b)、
請求項1に記載の保護素子。
【請求項3】
前記固定用はんだの初回溶融時の固相線温度T1aは、前記ヒューズエレメントの固相線温度T2より小さく、かつ、前記固定用はんだの再溶融時の固相線温度T1bは、前記ヒューズエレメントの固相線温度T2より大きい(T1a<T2<T1b)、
請求項2に記載の保護素子。
【請求項4】
前記固定用はんだの組成は、Sn-Bi-X(ただし、Xは、Ag、Cu、Ni、Zn又はInである)で示される、
請求項1から3の何れか一項に記載の保護素子。
【請求項5】
前記ヒューズエレメントの固相線温度T2は、150℃以上250℃以下である(150℃≦T2≦250℃)、
請求項1から3の何れか一項に記載の保護素子。
【請求項6】
前記固定用はんだの補助剤としてエポキシ系フラックスを更に含む、
請求項1から3の何れか一項に記載の保護素子。
【請求項7】
素子基板上の電極に固定用はんだを介してヒューズエレメントが設けられている保護素子を、実装用はんだを介して実装した回路基板であって、
前記固定用はんだの固相線温度T1は、前記実装用はんだの固相線温度T3より大きく、かつ、前記ヒューズエレメントの固相線温度T2は、前記実装用はんだの固相線温度T3以下である(T2≦T3<T1)、
回路基板。
【請求項8】
前記ヒューズエレメントの固相線温度T2は、150℃以上250℃以下である(150℃≦T2≦250℃)、
請求項7に記載の回路基板。
【請求項9】
前記実装用はんだの固相線温度T3は、150℃以上250℃以下である(150℃≦T2≦250℃)、
請求項7又は8に記載の回路基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護素子及び回路基板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電流経路に定格を超える電流が流れたときに、発熱して溶断し、電流経路を遮断するヒューズエレメントがある。ヒューズエレメントを備える保護素子(ヒューズ素子)は、家電製品から電気自動車など幅広い分野で使用されている。
【0003】
例えば、リチウムイオン電池は、モバイル機器用途から電気自動車(EV)、蓄電池など幅広い用途に用いられており、大容量化が進んでいる。リチウムイオン電池は、大容量化が進むにつれて、異常時に発火等するリスクが高まる。このため、製品の安全を確保するために、一般的に、保護素子を使った保護回路を組み込む手法が採用されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、基板上の電極にソルダーペースト(はんだ)を介してヒューズエレメントが設けられている保護素子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のはんだによる接合技術では、以下の課題がある。
例えば、はんだの溶融温度がヒューズエレメントの溶融温度と同じ場合、はんだによる接合時の熱によって、ヒューズエレメントの熱変形(ヒューズエレメントにおいてはんだと接触している部分の他の部分の変形)が生じる可能性が高い。
例えば、ヒューズエレメントの溶融温度がはんだの溶融温度よりも高い場合、通電加熱等によるヒューズエレメントの温度上昇開始から溶断までの時間が長くなり、保護素子の回路基板への実装部分がヒューズエレメントの溶断前に溶融し、保護素子が回路基板から外れる等の脱落が生じる可能性が高い。
【0007】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、ヒューズエレメントの熱変形及び脱落を抑制することができる保護素子及び回路基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を提供する。
【0009】
[1]基板上の電極に固定用はんだを介してヒューズエレメントが設けられている保護素子であって、前記固定用はんだの固相線温度T1は、前記ヒューズエレメントの固相線温度T2より大きい(T2<T1)、保護素子。
【0010】
[2]前記固定用はんだの初回溶融時の固相線温度T1aは、前記固定用はんだの再溶融時の固相線温度T1bと異なる(T1a≠T1b)、[1]に記載の保護素子。
【0011】
[3]前記固定用はんだの初回溶融時の固相線温度T1aは、前記ヒューズエレメントの固相線温度T2より小さく、かつ、前記固定用はんだの再溶融時の固相線温度T1bは、前記ヒューズエレメントの固相線温度T2より大きい(T1a<T2<T1b)、[2]に記載の保護素子。
【0012】
[4]前記固定用はんだの組成は、Sn-Bi-X(ただし、Xは、Ag、Cu、Ni、Zn又はInである)で示される、[1]から[3]の何れかに記載の保護素子。
【0013】
[5]前記ヒューズエレメントの固相線温度T2は、150℃以上250℃以下である(150℃≦T2≦250℃)、[1]から[4]の何れかに記載の保護素子。
【0014】
[6]前記固定用はんだの補助剤としてエポキシ系フラックスを更に含む、[1]から[5]の何れかに記載の保護素子。
【0015】
[7]素子基板上の電極に固定用はんだを介してヒューズエレメントが設けられている保護素子を、実装用はんだを介して実装した回路基板であって、前記固定用はんだの固相線温度T1は、前記実装用はんだの固相線温度T3より大きく、かつ、前記ヒューズエレメントの固相線温度T2は、前記実装用はんだの固相線温度T3以下である(T2≦T3<T1)、回路基板。
【0016】
[8]前記ヒューズエレメントの固相線温度T2は、150℃以上250℃以下である(150℃≦T2≦250℃)、[7]に記載の回路基板。
【0017】
[9]前記実装用はんだの固相線温度T3は、150℃以上250℃以下である(150℃≦T2≦250℃)、[7]又は[8]に記載の回路基板。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ヒューズエレメントの熱変形及び脱落を抑制することができる保護素子及び回路基板を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】第1実施形態に係るバッテリパックの回路図である。
【
図2】第1実施形態に係る保護素子を示す平面図である。
【
図3】第1実施形態に係る保護素子を示す図であって、
図2のIII-III断面図である。
【
図4】第1実施形態に係るヒューズエレメントの一例を示す斜視図である。
【
図5】第1実施形態に係るバッテリパックの回路図の一例を示す図であって、熱感応素子としてのサーモスタットが加熱される前を示す図である。
【
図6】上記のサーモスタットが加熱され、ヒューズエレメントが溶断された状態を示す図である。
【
図7】第1実施形態に係るバッテリパックの回路図の一例を示す図であって、ProtectionIC及びスイッチを搭載した場合を示す図である。
【
図8】第1実施形態に係る保護素子を回路基板に実装した状態を示す図である。
【
図9】第1実施形態に係る保護素子の製造方法の一工程を示す平面図である。
【
図10】
図9に続く、保護素子の製造方法の一工程を示す平面図である。
【
図11】第2実施形態に係る保護素子の平面図である。
【
図12】第2実施形態に係る保護素子を示す図であって、第1保持部材を省略して示す平面図である。
【
図15】第2実施形態に係る第1保持部材の平面図である。
【
図16】第2実施形態に係る第2保持部材の平面図である。
【
図17】第2実施形態に係る第1保持部材及び第2保持部材の断面図である。
【
図18】第3実施形態に係る保護素子の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、実施形態について、図面を適宜参照しながら詳細に説明する。以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などは実際とは異なっていることがある。以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、本発明の効果を奏する範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0021】
(第1実施形態)
まず、本発明の一実施形態の保護素子を備えるバッテリパック及び保護回路について、
図1を参照して説明する。本実施形態のバッテリパックは、例えばリチウムイオン二次電池を使用する高電圧大電流(100V/100A以上)の電気回路の一部を構成する。バッテリパックは、例えば、電気自動車(EV)などに搭載される。
【0022】
図1に示すように、バッテリパック10は、例えば、複数のリチウムイオン二次電池のバッテリセル15a(
図5参照)からなるバッテリスタック15と、バッテリスタック15と直列に接続された保護素子11と、保護素子11の動作を制御する熱感応素子12と、を備える。
【0023】
保護素子11は、バッテリパック10の異常時にバッテリスタック15の充放電経路を遮断する。熱感応素子12は、熱により導通のオン・オフや抵抗値、出力電圧等の電気特性が変動する。熱感応素子12は、所定の温度以上の温度に加熱されると保護素子11を作動させる。バッテリパック10は、熱感応素子12の電気特性の変動に応じて保護素子11の動作が制御される。
【0024】
バッテリスタック15は、過電圧や過電流等から保護するための制御を要するバッテリセル15a(
図5参照)を備える。バッテリセル15aは、直列及び/又は並列に接続されている。バッテリスタック15は、バッテリパック10の正極端子10a、負極端子10bを介して、着脱可能に充電装置13に接続されている。バッテリスタック15は、バッテリパック10の正極端子10a、負極端子10bを介して、充電装置13からの充電電圧が印加される。充電装置13により充電されたバッテリパック10は、正極端子10a、負極端子10bをバッテリで動作する電子機器に接続することによって、この電子機器を動作させることができる。
【0025】
バッテリパック10は、バッテリスタック15の充放電を制御する充放電制御回路16を備える。充放電制御回路16は、バッテリスタック15から充電装置13に流れる電流経路に直列接続された2つの電流制御素子17,18と、これらの電流制御素子17,18の動作を制御する制御部19と、を備える。
【0026】
電流制御素子17,18は、例えば、電界効果トランジスタ(以下「FET」ともいう。)により構成されている。電流制御素子17,18は、制御部19によりゲート電圧を制御することによって、バッテリスタック15の電流経路の充電方向及び/又は放電方向への導通と遮断とを制御する。制御部19は、充電装置13から電力供給を受けて動作する。制御部19は、各バッテリセル15aの電圧を検出する図示しない検出回路による検出結果に応じて、バッテリスタック15が過放電又は過充電であるか否か判定する。制御部19は、バッテリスタック15が過放電又は過充電であると判定したとき、電流経路を遮断するように、電流制御素子17,18の動作を制御する。
【0027】
(保護素子)
保護素子11は、例えば、バッテリスタック15と充放電制御回路16との間の充放電電流経路上に接続されている。保護素子11の動作は、熱感応素子12によって制御される。保護素子11は、基板上の電極21,22,23に固定用はんだを介してヒューズエレメント20が設けられているものである。保護素子11の構成要素(例えば、基板や電極、固定用はんだ、ヒューズエレメント)の形状及び配置等は、特に限定されない。
【0028】
図2及び
図3を併せて参照し、保護素子11は、素子基板(基板)としての絶縁基板26と、絶縁基板26上に形成された第1、第2の電極22、23(以下「端子部」ともいう。)と、発熱体給電極25と、絶縁基板26の表面に形成された発熱抵抗体24と、発熱抵抗体24を被覆する絶縁層27と、絶縁層27上に積層されるとともに発熱抵抗体24と接続された発熱体引出電極21と、第1の電極22、発熱体引出電極21及び第2の電極23にわたって固定用はんだ28を介して搭載されるヒューズエレメント20と、を備える。発熱体引出電極21及び第1、第2の電極22、23は、基板上の電極の一例である。第1、第2の電極22、23は、所定方向に互いに離れて配置されている。
【0029】
以下、各図に適宜XYZ直交座標系(3次元直交座標系)を設定し、各構成について説明する場合がある。
第1の電極22と第2の電極23とが並ぶ上記所定方向を、前後方向と呼ぶ。前後方向は、各図においてX軸方向に相当する。X軸方向のうち、-X側を前側と呼び、+X側を後側と呼ぶ。なお、前後方向は、第1の電極22と第2の電極23とを結ぶ方向であり、保護素子11の使用時において電気が流れる方向でもあることから、通電方向と言い換えてもよい。
【0030】
第1の電極22及び第2の電極23の各板面が向く方向を、上下方向と呼ぶ。上下方向は、前後方向と直交する方向であり、各図においてZ軸方向に相当する。上下方向のうち、上側は+Z側に相当し、下側は-Z側に相当する。
【0031】
前後方向及び上下方向と直交する方向を、左右方向と呼ぶ。左右方向は、各図においてY軸方向に相当する。左右方向のうち、左側は-Y側に相当し、右側は+Y側に相当する。詳しくは、-Y側は、保護素子11を後側(+X側)から見たときの左側であり、+Y側は、保護素子11を後側から見たときの右側である。なお、左右方向は、幅方向と言い換えてもよい。この場合、例えば、幅方向一方側は-Y側に相当し、幅方向他方側は+Y側に相当する。
【0032】
なお、本実施形態において、前側、後側、上側、下側、左側及び右側とは、各構成の相対的な位置関係をわかりやすく説明するための便宜的な名称であり、実際の配置関係等は、これらの名称で示される配置関係以外の配置関係等であってもよい。
【0033】
第1、第2の電極22,23は、バッテリセル15aの充放電経路上に接続される第1、第2の端子部である。第1、第2の電極22,23は、それぞれ上下方向と垂直な面方向(X-Y面方向)に広がる板状をなしている。第1、第2の電極22,23は、具体的には、略四角形板状である。
【0034】
第1の電極22の後端部(+X端部)は、ヒューズエレメント20の前端部(-X端部)と接続されている。第1の電極22の前端部は、保護素子11の前側から保護素子11の外部に露出している。第2の電極23の前端部は、ヒューズエレメント20の後端部と接続されている。第2の電極23の後端部は、保護素子11の後側から保護素子11の外部に露出している。
【0035】
図1を併せて参照し、発熱抵抗体24は、発熱体給電極25と接続されている。発熱抵抗体24は、発熱体給電極25を介して熱感応素子12と接続されている。発熱抵抗体24は、発熱体引出電極21がヒューズエレメント20と電気的に接続されることにより、ヒューズエレメント20及びバッテリスタック15の充放電経路と接続されている。
【0036】
絶縁基板26は、例えば、アルミナ、ガラスセラミックス、ムライト、ジルコニアなどの絶縁性を有する材料で形成されている。
図2及び
図3を併せて参照し、絶縁基板26は、例えば略方形状に形成されている。なお、絶縁基板26は、その他にも、ガラスエポキシ基板、フェノール基板等のプリント配線基板に用いられる材料で形成されていてもよい。例えば、絶縁基板26の形成態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0037】
絶縁基板26の相対向する両端部(具体的には、絶縁基板26の前端部及び後端部)には、第1、第2の電極22,23が形成されている。第1、第2の電極22,23は、AgやCu等の導電パターンによって形成されている。第1、第2の電極22,23は、保護素子11が実装される外部回路基板に設けられた接続電極に接続される。これにより、ヒューズエレメント20は、外部回路基板上に形成された電流経路の一部に組み込まれる。
【0038】
発熱抵抗体24は、比較的抵抗値が高く通電すると発熱する導電性を有する部材である。発熱抵抗体24は、例えばニクロム、W、Mo、Ru等又はこれらを含む材料からなる。発熱抵抗体24は、これらの合金あるいは組成物、化合物の粉状体を樹脂バインダ等と混合して、ペースト状にしたものを絶縁基板26上にスクリーン印刷技術を用いてパターン形成して、焼成する等によって形成することができる。
【0039】
発熱抵抗体24は、ヒューズエレメント20が重畳されることによりヒューズエレメント20と熱的に接続されている。発熱抵抗体24は、通電によって発熱するとヒューズエレメント20を溶断する。発熱抵抗体24は、一端が熱感応素子12と接続されることにより、常時、電流及び発熱が制限されている。発熱抵抗体24は、熱感応素子12による通電や電気抵抗値の低下等により電流が増加することにより発熱量が増大する。発熱抵抗体24の発熱量が増大することにより、ヒューズエレメント20を溶断することができる。発熱抵抗体24は、ヒューズエレメント20と電気的にも接続されている。
【0040】
ヒューズエレメント20は、固定用はんだ28により第1の電極22から第2の電極23に跨って接続されている。ヒューズエレメント20は、例えば、金属製の板状部材、シート状部材、又は金属箔等により構成されている。図の例では、ヒューズエレメント20は、上下方向から見て、前後方向に長い四角形状をなしている。ヒューズエレメント20は、通常使用時には第1、第2の電極22,23間を導通させ、保護素子11が組み込まれた外部回路の電流経路の一部を構成する。
【0041】
ヒューズエレメント20は、定格を超える電流が通電することによって自己発熱(ジュール熱)により溶断する。ヒューズエレメント20は、発熱抵抗体24によって所定の温度以上に加熱されると溶断される。ヒューズエレメント20は、発熱抵抗体24の発熱により溶断し、第1、第2の電極22,23間を遮断する。
【0042】
ヒューズエレメント20は、所定の定格電流値を有し、発熱抵抗体24の発熱や定格電流値を超える電流が通電された際の自己発熱により速やかに溶断する。ヒューズエレメント20は、ニッケル、錫、鉛から選択されるいずれか1種を主成分とすることが好ましい。なお、主成分とは、材料全質量を基準として、50wt%以上である成分をいう。
【0043】
図4を併せて参照し、ヒューズエレメント20は、低融点金属層41と高融点金属層42とを積層させた積層構造を有してもよい。例えば、低融点金属としては、Pbフリーはんだなどのはんだを用いることが好ましい。例えば、高融点金属としては、Ag、Cu又はこれらを主成分とする合金などを用いることが好ましい。高融点金属と低融点金属とを含有することによって、保護素子11をリフロー実装する場合に、リフロー温度が低融点金属層の溶融温度を超えて、低融点金属が溶融しても、ヒューズエレメント20として溶断するに至らない。
【0044】
例えば、ヒューズエレメント20は、内層を低融点金属とし、外層を高融点金属としてもよい。例えば、ヒューズエレメント20は、内層の低融点金属層41の全表面が外層の高融点金属層42で被覆された構成であってもよい。この構成によれば、リフロー温度よりも融点の低い低融点金属を用いた場合でも、リフロー実装時に、内層の低融点金属の外部への流出を抑制することができる。また、ヒューズエレメント20の溶断時も、内層の低融点金属が溶融することにより、外層の高融点金属を溶食(はんだ食われ)し、速やかに溶融させることができる。
【0045】
熱感応素子12は、電気特性が温度依存性を有する電子部品を用いることができる。
図1及び
図5を併せて参照し、熱感応素子12は、周囲の温度変化に伴い回路を開閉させるサーモスタット12aを用いることができる。例えば、熱感応素子12は、バッテリスタック15に近接又は接触して配置され、バッテリスタック15と熱的に接続されてもよい。この場合、熱感応素子12は、バッテリスタック15が異常発熱することにより熱せられる。これにより、熱感応素子12は、抵抗値や出力電圧等の電気特性が変化する。
【0046】
例えば、熱感応素子12としてサーモスタット12aを用いた場合、サーモスタット12aの一端は、バッテリスタック15の開放端と接続される。サーモスタット12aの他端は、保護素子11の発熱抵抗体24と接続される。サーモスタット12aは、常時、バッテリスタック15から発熱抵抗体24への通電経路を開放している。バッテリパック10は、バッテリスタック15が異常発熱する等によりサーモスタット12aが加熱されると、サーモスタット12aがバッテリスタック15から発熱抵抗体24への通電経路を閉路するように変位する。これにより、ヒューズエレメント20を溶断させるに十分なバッテリスタック15の電力が発熱抵抗体24へ通電する。
【0047】
なお、図示はしないが、熱感応素子12としては、サーモスタット12aの他にも、周囲の温度上昇に伴い抵抗値が低下する負特性サーミスタ(NTCサーミスタ、CTRサーミスタ)を用いることができる。また、熱感応素子12としては、閾値となる温度を超えると電圧が変化するダイオードを用いることができる。その他、熱感応素子12としては、ペルチェ素子、熱電対、バイメタル、温度センサ等が挙げられる。例えば、熱感応素子12の構成態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0048】
(保護回路)
図1及び
図5を併せて参照し、保護素子11は、第1、第2の電極22,23間にわたって直列接続されたヒューズエレメント20と、ヒューズエレメント20の接続点を介して通電して発熱させることによってヒューズエレメント20を溶断する発熱抵抗体24と、を含む回路構成である。保護素子11は、熱感応素子12、発熱体給電極25、発熱抵抗体24及びヒューズエレメント20に至る発熱抵抗体24への通電経路が形成され、熱感応素子12によって発熱抵抗体24への通電が制御されている。
【0049】
保護素子11は、第1の電極22を介してバッテリスタック15の一方の開放端側に接続されている。保護素子11は、第2の電極23を介してバッテリパック10の正極端子10a側に接続されている。これにより、ヒューズエレメント20は、第1、第2の電極22,23を介してバッテリパック10の充放電電流経路上に直列接続されている。
【0050】
保護素子11は、発熱体給電極25が発熱抵抗体24に通電させるバッテリスタック15の一方の開放端と接続されるとともに、熱感応素子12(例えば、サーモスタット12a)によって発熱抵抗体24への通電が制限されている。そのため、ヒューズエレメント20は発熱抵抗体24の発熱により溶断することなく、バッテリパック10の充放電電流経路は通電可能とされている。
【0051】
バッテリパック10は、バッテリセル15aの過電圧等による異常発熱や火災などによる周囲の温度の異常過熱等、バッテリパック10の電流経路を遮断する必要が生じ得る。この場合、バッテリパック10は、熱感応素子12が加熱され、所定の閾値を超えると発熱抵抗体24への通電経路を閉路する。これにより、バッテリスタック15から発熱抵抗体24へ通電される。これにより、保護素子11は、発熱抵抗体24が高温に発熱され、バッテリパック10の電流経路上に組み込まれたヒューズエレメント20が溶融される。ヒューズエレメント20の溶融導体は、濡れ性の高い発熱体引出電極21及び第1、第2の電極22,23に引き寄せられることによりヒューズエレメント20が溶断される。したがって、バッテリパック10は、第1の電極22~発熱体引出電極21~第2の電極23の間を溶断させ、バッテリスタック15の電流経路を遮断することができる(
図6参照)。
【0052】
このようなバッテリパック10は、熱感応素子12によって保護素子11を作動させることによりバッテリスタック15の充放電電流経路を遮断することができる。したがって、電流制御素子17,18のスイッチ動作や保護素子11を制御する制御ICによらず、高温環境にさらされた場合にも誤作動する危険がなく、バッテリスタック15の充放電電流経路を遮断することができる。
【0053】
保護素子11は、ヒューズエレメント20が発熱抵抗体24と接続されることにより、発熱抵抗体24への通電経路の一部を構成する。したがって、保護素子11は、ヒューズエレメント20が溶融し、外部回路との接続が遮断されると、発熱抵抗体24への通電経路も遮断されるため、発熱を停止させることができる。
【0054】
なお、
図7に示すように、バッテリパック10は、熱感応素子12(図では、サーミスタ12b)に加え、スイッチ回路50を備えてもよい。スイッチ回路50は、バッテリスタック15全体の電圧及び/又は各バッテリセル15aの異常電圧を検出し、スイッチ操作によって保護素子11を作動させる機能を持つ。例えば、スイッチ回路50は、バッテリスタック15全体の電圧及び/又は各バッテリセル15aの電圧をモニタするProtectionIC51と、ProtectionIC51によって操作されるスイッチ52と、を備える。
【0055】
スイッチ52は、例えばFETである。スイッチ52の一端は、バッテリスタック15又はバッテリセル15aの一方の開放端と接続されている。スイッチ52の他端は、保護素子11の発熱抵抗体24と接続されている。これにより、スイッチ52は、熱感応素子12(図では、サーミスタ12b)と並列されている。スイッチ52は、ProtectionIC51によってオン状態とオフ状態とに切替制御される。
【0056】
ProtectionIC51は、例えばバッテリスタック15や各バッテリセル15aの両開放端と接続されている。ProtectionIC51は、例えば、常時バッテリスタック15全体の電圧及び/又は各バッテリセル15aの電圧をモニタし、異常電圧時にスイッチ52をオンに切替え、発熱抵抗体24に通電させる。
【0057】
具体的に、ProtectionIC51は、バッテリスタック15及び/又はバッテリセル15aの両端の電圧に基づき、過電圧であるか否かを判定する。例えば、ProtectionIC51は、充電中にバッテリセル15aの電圧が予め設定されている所定の閾値を超えた場合、バッテリスタック15又はバッテリセル15aの電圧が過電圧であると判定する。ProtectionIC51は、過電圧と判定した場合、スイッチ52をオフ状態からオン状態にする制御を行う。これにより、保護素子11が作動し、ヒューズエレメント20を溶断することで、バッテリスタック15の充放電電流経路を遮断することができる。
【0058】
なお、上述した保護回路では、熱感応素子12がバッテリスタック15の充放電経路と並列に設けられているが、これに限定されない。例えば、熱感応素子12は、バッテリスタック15の充放電経路と電気的に独立した経路上に設け、別途設けられる電源から電力が供給されてもよい。また、本発明のバッテリパックは、リチウムイオン二次電池のバッテリパック10に用いる場合に限らず、異常過熱の際に電流経路の遮断を必要とする様々な用途にも応用可能である。
【0059】
(各構成要素の固相線温度の関係)
本実施形態では、固定用はんだ28の固相線温度T1は、ヒューズエレメント20の固相線温度T2より大きい(T2<T1)。固相線は、それより低い温度において金属が完全に固定である温度を意味する。なお、複数の金属を様々な割合で含む合金は、単一の溶融温度ではなく、溶融温度に幅がある。このため、合金の場合は、溶融温度範囲のうちの最高温度が固相線温度となる。
【0060】
固定用はんだ28の固相線温度T1は、固定用はんだ28が完全に固体である最高温度を意味する。固定用はんだ28の固相線温度T1より低い温度では、固定用はんだ28の組成物のすべての成分が固体である。ヒューズエレメント20の固相線温度T2は、ヒューズエレメント20が完全に固体である最高温度を意味する。ヒューズエレメント20の固相線温度T2より低い温度では、ヒューズエレメント20の組成物のすべての成分が固体である。例えば、ヒューズエレメント20の組成がSn-3.0%Ag-0.5%Cuである場合は、融点217℃(固相線)となる。
【0061】
本実施形態では、固定用はんだ28の初回溶融時の固相線温度T1aは、固定用はんだ28の再溶融時の固相線温度T1bと異なる(T1a≠T1b)。固定用はんだ28の初回溶融時の固相線温度T1aは、ヒューズエレメント20を固定する固定用はんだ28が製品状態において最初に溶解した際の温度を意味する。固定用はんだ28の再溶融時の固相線温度T1bは、固定用はんだ28が再度溶解した際の温度を意味する。
【0062】
例えば、固定用はんだ28としては、融点シフトを生じる可変融点はんだを用いることができる。例えば、処理温度範囲内の温度ではんだ付けされる場合、可変融点はんだ組成物の固相線は、処理温度範囲の外側へと押し上げられる。可変融点はんだによって実現される融点シフトは、可変融点はんだ組成物が初期固相線温度以上に加熱される場合に、はんだ処理の際に金属間化合物相を形成する成分相互作用によるものである。
【0063】
例えば、可変融点はんだ組成物としては、主要金属、融点降下金属及び添加金属を含むものが挙げられる。例えば、主要金属としては、In、Bi、Snのうちの1種を含むものが挙げられる。例えば、融点降下金属としては、In、Bi、Sn及びそれらの組み合わせのうちの1種を含むものであって、主要金属とは異なる少なくとも1つを含むものが挙げられる。例えば、添加金属としては、Ni、Sb、及びそれらの組み合わせのうちの1種を含むものが挙げられる。例えば、可変融点はんだ組成物は、初期固相線温度を有し、かつ、添加金属と少なくとも1種の融点降下金属との間に金属間化合物相が形成された後に、可変融点はんだ組成物は固体であり、かつ初期固相線温度を超える最終固相線温度を有するものでもよい。例えば、可変融点はんだ組成物がその初期固相線温度以上に加熱される場合、添加金属と融点降下金属との間に金属間化合物相が形成され、可変融点はんだ組成物の固相線が上昇する。
【0064】
例えば、可変融点はんだ組成物の機械的特性及び/又は溶融挙動を高めるために、追加の成分元素が可変融点はんだ組成物に加えられてもよい。例えば、追加の成分元素としては、Ag、Al、As、Au、B、Be、Bi、C、Ca、Ce、Co、Cr、Cu、Fe、Ga、Ge、H、In、La、Mg、Mo、Mn、N、Nb、Ni、O、P、Pd、Po、Pt、Re、Rh、Sb、Si、Sn、Te、Ti、Tl、V、W、Zn、Zrを含むものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0065】
例えば、可変融点はんだ組成物がSn、Ag及びCuを含むものである場合、その可変融点はんだ組成物がその初期固相線温度以上に加熱されると、SnがAg、Cu等と反応し高融点化する。例えば、固定用はんだ28の再溶融時の固相線温度T1bは、上記の可変溶融はんだ組成物の加熱による金属間化合物の形成に伴い上昇するものでもよい。
【0066】
本実施形態では、固定用はんだ28の初回溶融時の固相線温度T1aは、ヒューズエレメント20の固相線温度T2より小さく、かつ、固定用はんだ28の再溶融時の固相線温度T1bは、ヒューズエレメント20の固相線温度T2より大きい(T1a<T2<T1b)。
【0067】
例えば、固定用はんだ28の初回溶融時の固相線温度T1aは、ヒューズエレメント20の固相線温度T2より5℃以上小さくすることが好ましく、より好ましくは10℃以上小さくする。これにより、一般に生じ得る固定用はんだ28の初回溶融時の温度バラツキに対応することができる。なお、固定用はんだ28の初回溶融時の固相線温度T1aとヒューズエレメント20の固相線温度T2との差は、上記に限らず、設計仕様に応じて変更することができる。
【0068】
例えば、固定用はんだ28の再溶融時の固相線温度T1bは、ヒューズエレメント20の固相線温度T2より5℃以上大きくすることが好ましく、より好ましくは10℃以上大きくする。これにより、一般に生じ得る固定用はんだ28の再溶融時の温度バラツキに対応することができる。なお、固定用はんだ28の再溶融時の固相線温度T1bとヒューズエレメント20の固相線温度T2との差は、上記に限らず、設計仕様に応じて変更することができる。
【0069】
本実施形態では、ヒューズエレメント20の固相線温度T2は、150℃以上250℃以下である(150℃≦T2≦250℃)。例えば、ヒューズエレメント20の固相線温度T2が150℃である場合、固定用はんだ28の初回溶融時の固相線温度T1aは、150℃未満とし、かつ、固定用はんだ28の再溶融時の固相線温度T1bは、150℃超過とする。なお、一般に生じ得る固定用はんだ28の温度バラツキに対応する点からは、ヒューズエレメント20の固相線温度T2が150℃である場合、固定用はんだ28の初回溶融時の固相線温度T1aは、145℃以下とすることが好ましく、より好ましくは140℃以下とする。また、一般に生じ得る固定用はんだ28の再溶融時の温度バラツキに対応する点からは、ヒューズエレメント20の固相線温度T2が150℃である場合、固定用はんだ28の再溶融時の固相線温度T1bは、155℃以上とすることが好ましく、より好ましくは160℃以上とする。
【0070】
図3及び
図8を併せて参照し、本実施形態の回路基板9は、素子基板上の電極21,22,23に固定用はんだ28を介してヒューズエレメント20が設けられている保護素子11を、実装用はんだ36を介して実装したものである。図の例では、パッド部35を有する保護素子11が、実装用はんだ36を介して回路基板9に実装されている。
【0071】
固定用はんだ28の固相線温度T1は、実装用はんだ36の固相線温度T3より大きく、かつ、ヒューズエレメント20の固相線温度T2は、実装用はんだ36の固相線温度T3以下である(T2≦T3<T1)。具体的に、固定用はんだ28の再溶融時の固相線温度T1bは、実装用はんだ36の固相線温度T3より大きく、かつ、ヒューズエレメント20の固相線温度T2は、実装用はんだ36の固相線温度T3以下である(T2≦T3<T1b)。
【0072】
例えば、固定用はんだ28の再溶融時の固相線温度T1bは、実装用はんだ36の固相線温度T3より5℃以上大きくすることが好ましく、より好ましくは10℃以上大きくする。これにより、一般に生じ得る固定用はんだ28の再溶融時の温度バラツキ又は実装用はんだ36による実装時の温度バラツキに対応することができる。なお、固定用はんだ28の再溶融時の固相線温度T1bと実装用はんだ36の固相線温度T3との差は、上記に限らず、設計仕様に応じて変更することができる。
【0073】
本実施形態の回路基板9では、実装用はんだ36の固相線温度T3は、150℃以上250℃以下である(150℃≦T2≦250℃)。例えば、実装用はんだ36の固相線温度T3が250℃である場合、固定用はんだ28の再溶融時の固相線温度T1bは、250℃超過とする。なお、一般に生じ得る固定用はんだ28の再溶融時の温度バラツキ又は実装用はんだ36による実装時の温度バラツキに対応する点からは、実装用はんだ36の固相線温度T3が250℃である場合、固定用はんだ28の再溶融時の固相線温度T1bは、255℃以上とすることが好ましく、より好ましくは260℃以上とする。
【0074】
(ヒューズエレメント等との接合)
図2及び
図3を併せて参照し、本実施形態のヒューズエレメント20は、エポキシ系フラックス29を補助剤とした固定用はんだ28(以下単に「はんだ」ともいう。)によって端子部22,23に接合されている。エポキシ系フラックス29は、エポキシ樹脂、カルボン酸及び溶剤を含有している。エポキシ系フラックス29は、更に必要に応じてその他の成分を含有している。
【0075】
図の例では、固定用はんだ28とエポキシ系フラックス29とが一体になっているが、これに限らない。例えば、固定用はんだ28とエポキシ系フラックス29とは、一体でなくてもよい。例えば、ヒューズエレメント20は、端子部22,23に形成されたエポキシ系フラックス29上に形成された固定用はんだ28によって端子部22,23に接合されていてもよい。例えば、固定用はんだ28及びエポキシ系フラックス29の配置態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0076】
エポキシ系フラックス29に含まれるエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、又はこれらの変性エポキシ樹脂等の熱硬化性エポキシ樹脂等が挙げられる。エポキシ樹脂は、上記のうちの1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0077】
エポキシ系フラックス29に含まれるカルボン酸としては、例えば、飽和脂肪族系ジカルボン酸、不飽和脂肪族系ジカルボン酸、環状脂肪族系ジカルボン酸、アミノ基含有カルボン酸、水酸基含有カルボン酸、複素環系ジカルボン酸、又はこれらの混合物等が挙げられる。カルボン酸としては、具体的には、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、ドデカン2酸、イタコン酸、メサコン酸、シクロブタンジカルボン酸、L-グルタミン酸、クエン酸、リンゴ酸、チオプロピオン酸、チオジブチル酸、ジチオグリコール酸等が挙げられる。
【0078】
エポキシ系フラックス29に含まれる溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類、エチレングリコール系溶剤、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、オクタンジオール等が挙げられる。
エポキシ系フラックス29に含まれるその他の成分としては、例えば、チクソ剤、キレート化剤、界面活性剤、酸化防止剤等の添加剤等が挙げられる。
エポキシ系フラックス29としては、特に制限はなく、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。エポキシ系フラックス29は、上記に限らず、設計仕様に応じて変更することができる。
【0079】
本実施形態の固定用はんだ28の組成は、Sn-Bi-X(ただし、Xは、Ag、Cu、Ni、Zn又はInである)で示される。固定用はんだ28の組成は、例えば、Sn-Ag-Cu-Biで示される。
【0080】
なお、固定用はんだ28の組成は、上記に限らず、Sn-Bi-AgやSn-Bi-Cu、Sn-Bi-Ni、Sn-Bi-Zn、Sn-Bi-Inで示されてもよい。固定用はんだ28の組成は、例えば、Snを主成分としてBiを含み、更に上記のX(Ag、Cu、Ni、Zn又はIn)のうちの2種以上を含んで示されてもよい。例えば、固定用はんだ28の組成は、Sn-Ag-Cu-Bi-Ni系やSn-Bi-Sb系、Sn-Ag-In-Bi系でもよい。固定用はんだ28の組成は、上記に限らず、設計仕様に応じて変更することができる。
【0081】
例えば、固定用はんだ28の材料は、低融点金属粒子(Bi)と、高融点金属粒子群(Sn,Ag,Cu等)とを混合したもの、又は、高融点金属粒子表面に低融点金属粒子の被膜層を有したものでもよい。例えば、固定用はんだ28の材料は、初期の融点が150℃未満(低融点)であって、再溶融時に250℃以下で溶融しない(高融点)を選定するとよい。例えば、固定用はんだ28の材料は、上記に限らず、設計仕様に応じて変更することができる。
【0082】
(保護素子の製造方法)
本実施形態の保護素子11の製造方法は、基板上の電極21,22,23に固定用はんだ28を介してヒューズエレメント20を接続する工程を含み、固定用はんだ28の固相線温度T1は、ヒューズエレメント20の固相線温度T2より大きい(T2<T1)。以下、本実施形態の保護素子11の製造方法の一例について、
図9から
図10を参照しつつ説明する。
【0083】
まず、ヒューズエレメント20と端子部22,23とを接続する。本実施形態では、ヒューズエレメント20を、エポキシ系フラックス29を補助剤とした固定用はんだ28によって端子部22,23に接合する。例えば、
図9に示すように、発熱体引出電極21及び端子部22,23上にエポキシ系フラックス29を補助剤とした固定用はんだ28を塗布する。その後、
図10に示すように、固定用はんだ28を介して、発熱体引出電極21及び端子部22,23にヒューズエレメント20を接続する。例えば、固定用はんだ28としては、Sn-Bi系のはんだ材料を含むはんだペーストを用いる。なお、固定用はんだ28としては、接着剤併用型Sn-Biはんだペーストを用いてもよい。
【0084】
次に、不図示のリフロー炉(リフロー装置)を用いてリフロー加熱を行い、ヒューズエレメント20を発熱体引出電極21及び端子部22,23にはんだ接続する。本実施形態では、固定用はんだ28としてSn-Bi系のはんだ材料を用いることで、リフロー加熱は150℃未満の温度で行うことができる。リフロー加熱により、固定用はんだ28を溶融させ、土台の金属とヒューズエレメント20とを合金化させる。これにより、ヒューズエレメント20と発熱体引出電極21及び端子部22,23とを電気的に接続し、固定する。なお、はんだ接続時の加熱は、上記に限らず、ヒータを熱源としたホットプレートを用いてもよい。
【0085】
例えば、基板上の電極21,22,23に固定用はんだ28を介してヒューズエレメント20を接続する際の溶融温度の関係は次の通りである。例えば、ヒューズエレメント20の溶融温度が150℃以上250℃以下である場合、ヒューズエレメント20を接続する固定用はんだ28の溶融温度は150℃未満とし、保護素子11の実装用はんだ36の溶融温度は150℃以上250℃以下とする。これにより、ヒューズエレメント20の接続時にヒューズエレメント20が熱変形(ヒューズエレメント20において固定用はんだ28と接触している部分の他の部分が変形)することを抑制することができる。
【0086】
図示はしないが、ヒューズエレメント20と端子部22,23とを接続した後、端子部22,23にエポキシ系フラックスを形成してもよい。なお、絶縁基板26とヒューズエレメント20との間等にアンダーフィルを充填してもよい。
【0087】
これにより、エポキシ系フラックス29を補助剤とした固定用はんだ28が発熱体引出電極21及び端子部22,23上で溶融後、土台の金属(例えば、はんだ合金)上にエポキシ系フラックスが形成される。このため、ヒューズエレメント20と発熱体引出電極21及び端子部22,23との金属接続を強化することができる。
【0088】
図示はしないが、ヒューズエレメント20と端子部22,23とを接続した後、端子部22,23とカバー部材とを接続してもよい。例えば、端子部22,23に形成されたエポキシ系フラックス上にエポキシ系樹脂接着材を塗布した後、エポキシ系樹脂接着材を介して端子部22,23上にカバー部材を接着してもよい。
【0089】
これにより、カバー部材と端子部22,23との接続は、端子部22,23の金属表面に硬化したエポキシ系フラックス(例えば、エポキシ樹脂の層)が形成されているので、カバー部材との接着に使用するエポキシ系樹脂と相性がよい。したがって、カバー部材との接着強度を向上させることができる。
【0090】
(保護素子を実装した回路基板の製造方法)
例えば、上記の方法で得られた保護素子11を、リフロー加熱等で回路基板9に実装してもよい。例えば、回路基板9の製造方法は、素子基板上の電極21,22,23に固定用はんだ28を介してヒューズエレメント20が設けられている保護素子11を、実装用はんだ36を介して実装する工程を含み、固定用はんだ28の固相線温度T1は、実装用はんだ36の固相線温度T3より大きく、かつ、ヒューズエレメント20の固相線温度T2は、実装用はんだ36の固相線温度T3以下である(T2≦T3<T1)。具体的に、固定用はんだ28の再溶融時の固相線温度T1bは、実装用はんだ36の固相線温度T3より大きく、かつ、ヒューズエレメント20の固相線温度T2は、実装用はんだ36の固相線温度T3以下である(T2≦T3<T1b)。
【0091】
例えば、
図8に示すように、回路基板9に実装するためのパッド部35を有する保護素子11を、リフロー加熱等により、実装用はんだ36を介して回路基板9に実装し、固定する。例えば、実装時にヒューズエレメント20への熱影響を抑える点からは、保護素子11においてヒューズエレメント20を覆うカバー部材34を被せた後、得られた保護素子11を回路基板9に実装することが好ましい。
【0092】
例えば、保護素子11を回路基板9に実装する際の溶融温度の関係は次の通りである。例えば、ヒューズエレメント20の溶融温度が150℃以上250℃以下である場合、保護素子11の実装用はんだ36の溶融温度は150℃以上250℃以下とし、ヒューズエレメント20を接続する固定用はんだ28の再溶融時の溶融温度は250℃超過とする。これにより、保護素子11を回路基板9に実装時にヒューズエレメント20が熱変形することを抑制することができる。なお、保護素子11がヒューズエレメント20を覆うカバー部材34を備える場合は、保護素子11を回路基板9に実装する際の熱がヒューズエレメント20に影響しにくいため、ヒューズエレメント20の熱変形を抑制する上で好ましい。
【0093】
(本実施形態の作用効果)
以上説明した本実施形態の保護素子11は、絶縁基板26上の電極21,22,23に固定用はんだ28を介してヒューズエレメント20が設けられているものである。固定用はんだ28の固相線温度T1は、ヒューズエレメント20の固相線温度T2より大きい(T2<T1)。
この構成によれば、固定用はんだ28の固相線温度T1がヒューズエレメント20の固相線温度T2と同じ場合と比較して、固定用はんだ28による接合時の熱によって、ヒューズエレメント20の熱変形(ヒューズエレメント20において固定用はんだ28と接触している部分の他の部分の変形)が生じる可能性は低い。加えて、固定用はんだ28の固相線温度T1がヒューズエレメント20の固相線温度T2より小さい場合と比較して、通電加熱等によるヒューズエレメント20の温度上昇開始から溶断までの時間が長くなることを抑制することができる。このため、保護素子11の回路基板9への実装部分がヒューズエレメント20の溶断前に溶融することを抑制し、保護素子11が回路基板9から外れる等の脱落が生じる可能性は低い。したがって、ヒューズエレメント20の熱変形及び脱落を抑制することができる。
加えて、ヒューズエレメント20の熱変形が抑制されることで、保護素子11(完成品)の抵抗値の個体差(ばらつき)を低減することができる。
【0094】
本実施形態では、固定用はんだ28の初回溶融時の固相線温度T1aは、固定用はんだ28の再溶融時の固相線温度T1bと異なる(T1a≠T1b)。
この構成によれば、固定用はんだ28の初回溶融時の固相線温度T1aが固定用はんだ28の再溶融時の固相線温度T1bと同じ場合と比較して、固定用はんだ28の材料選択の幅が広がるため、製造コストを低下させることができる。
【0095】
本実施形態では、固定用はんだ28の初回溶融時の固相線温度T1aは、ヒューズエレメント20の固相線温度T2より小さく、かつ、固定用はんだ28の再溶融時の固相線温度T1bは、ヒューズエレメント20の固相線温度T2より大きい(T1a<T2<T1b)。
この構成によれば、固定用はんだ28の初回溶融時の固相線温度T1aがヒューズエレメント20の固相線温度T2以上である場合と比較して、固定用はんだ28の初回溶融時の熱によって、ヒューズエレメント20の熱変形(ヒューズエレメント20において固定用はんだ28と接触している部分の他の部分の変形)が生じる可能性は低い。加えて、固定用はんだ28の再溶融時の固相線温度T1bがヒューズエレメント20の固相線温度T2以下である場合と比較して、固定用はんだ28の再溶融時の熱によって、ヒューズエレメント20の熱変形が生じる可能性は低い。したがって、固定用はんだ28の初回溶融時及び再溶融時の両時においてヒューズエレメント20の熱変形を抑制することができる。
【0096】
本実施形態では、固定用はんだ28の組成は、Sn-Bi-X(ただし、Xは、Ag、Cu、Ni、Zn又はInである)で示される。
例えば、はんだ材料として融点を高くした高温はんだ(例えば、Sn-3.0%Ag-0.5%Cu)を用いた場合、ヒューズエレメント20との接合は200℃以上の温度で行う必要がある。このため、ヒューズエレメント20に熱のダメージがかかり、抵抗値(ヒューズ抵抗)が不安定となる可能性がある。
これに対し本構成によれば、はんだ材料として融点を低くした低温はんだ(例えば、Sn-Bi系)を用いることで、ヒューズエレメント20との接合は150℃未満の温度で行うことができる。このため、ヒューズエレメント20への熱のダメージを抑制することができ、ヒューズ抵抗が不安定となる可能性は低い。
【0097】
本実施形態では、ヒューズエレメント20の固相線温度T2は、150℃以上250℃以下である(150℃≦T2≦250℃)。
この構成によれば、ヒューズエレメント20の固相線温度T2が150℃より小さい場合と比較して、ヒューズエレメント20の熱変形を抑制することができる。加えて、ヒューズエレメント20の固相線温度T2が250℃より大きい場合と比較して、通電加熱等によるヒューズエレメント20の温度上昇開始から溶断までの時間が長くなることを抑制することができる。このため、保護素子11としての動作反応が遅くなることを抑制することができる。
【0098】
本実施形態では、保護素子11は、固定用はんだ28の補助剤としてエポキシ系フラックス29を含む。
この構成によれば、固定用はんだ28の補助剤としてロジン系フラックスを用いた場合よりも、固定用はんだ28の接合強度を向上させることができる。したがって、ヒューズエレメント20との接合強度を向上させることができる。
例えば、Sn-Bi系のはんだ材料は合金組織が大きいため、溶融後の強度が弱いという弱点がある。本構成によれば、上記のエポキシ系フラックス29を用いることにより固定用はんだ28の接合強度を向上できるため、上記の弱点を補填することができる。
【0099】
本実施形態の回路基板9は、絶縁基板26上の電極21,22,23に固定用はんだ28を介してヒューズエレメント20が設けられている保護素子11を、実装用はんだ36を介して実装したものである。固定用はんだ28の固相線温度T1は、実装用はんだ36の固相線温度T3より大きく、かつ、ヒューズエレメント20の固相線温度T2は、実装用はんだ36の固相線温度T3以下である(T2≦T3<T1)。
この構成によれば、固定用はんだ28の固相線温度T1がヒューズエレメント20の固相線温度T2と同じ場合と比較して、固定用はんだ28による接合時の熱によって、ヒューズエレメント20の熱変形(ヒューズエレメント20において固定用はんだ28と接触している部分の他の部分の変形)が生じる可能性は低い。加えて、固定用はんだ28の固相線温度T1がヒューズエレメント20の固相線温度T2より小さい場合と比較して、通電加熱等によるヒューズエレメント20の温度上昇開始から溶断までの時間が長くなることを抑制することができる。このため、保護素子11の回路基板9への実装部分がヒューズエレメント20の溶断前に溶融することを抑制し、保護素子11が回路基板9から外れる等の脱落が生じる可能性は低い。したがって、ヒューズエレメント20の熱変形及び脱落を抑制することができる。
加えて、ヒューズエレメント20の熱変形が抑制されることで、保護素子11を実装した回路基板9(完成品)の抵抗値の個体差(ばらつき)を低減することができる。
【0100】
本実施形態の回路基板9では、ヒューズエレメント20の固相線温度T2は、150℃以上250℃以下である(150℃≦T2≦250℃)。
この構成によれば、ヒューズエレメント20の固相線温度T2が150℃より小さい場合と比較して、ヒューズエレメント20の熱変形を抑制することができる。加えて、ヒューズエレメント20の固相線温度T2が250℃より大きい場合と比較して、通電加熱等によるヒューズエレメント20の温度上昇開始から溶断までの時間が長くなることを抑制することができる。このため、保護素子11を実装した回路基板9としての動作反応が遅くなることを抑制することができる。
【0101】
本実施形態の回路基板9では、実装用はんだ36の固相線温度T3は、150℃以上250℃以下である(150℃≦T2≦250℃)。
この構成によれば、実装用はんだ36の固相線温度T3が150℃より小さい場合と比較して、ヒューズエレメント20の熱変形を抑制することができる。加えて、実装用はんだ36の固相線温度T3が250℃より大きい場合と比較して、加熱設備の最大加熱温度を下げることができるため、保護素子11を実装した回路基板9を省エネルギーで製造することができる。
【0102】
本発明は前述の実施形態に限定されず、例えば下記に説明するように、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において構成の変更等が可能である。なお、他の実施形態や変形例の図示においては、前述の実施形態と同じ構成要素には同一の符号を付し、下記では主に異なる点について説明する。
【0103】
(保護素子(第2実施形態))
本発明の第2実施形態に係る保護素子211について、
図11~
図17を参照して説明する。第2実施形態の保護素子211は、主に、位置決め構造を持つ絶縁カバー260を備える点で、前述の第1実施形態と異なる。なお、本実施形態の各図において、第1実施形態と同様又はほぼ同様の構成部材については、同じ符号や同じ名称を付すなどして説明を省略する場合がある。
【0104】
図11から
図17を併せて参照し、保護素子211は、絶縁基板226と、ヒューズ端子として機能する第1、第2の電極222,223(端子部222,223)と、ヒータ端子として機能する第3の電極225と、絶縁基板226の表面上に形成された発熱抵抗体224と、発熱抵抗体224を被覆する絶縁層227と、絶縁層227上に積層されるとともに発熱抵抗体224と接続された発熱体引出電極221と、第1の電極222、発熱体引出電極221及び第2の電極223にわたって固定用はんだ28を介して搭載されるヒューズエレメント220と、島状電極233と、絶縁カバー260と、を備える。ヒューズエレメント220は、エポキシ系フラックス29を補助剤とした固定用はんだ28によって端子部222,223等に接合されている。
【0105】
絶縁カバー260は、上下方向に積層して配置される第1保持部材261及び第2保持部材262を備える。
第1保持部材261は、上側が閉塞し且つ下側が開口する略四角形の有底筒状である。第1保持部材261の各角部(四つの隅部)には、凹部263が形成されている。
第2保持部材262は、平面視で第1保持部材261と同じ外形を持つ略四角形であり、断面視で中央部が上側に開口する凹形状である。第2保持部材262の各角部(四つの隅部)には、凹部263に嵌合可能な凸部264が設けられている。
【0106】
第1保持部材261に形成された凹部263及び第2保持部材262に設けられた凸部264は、絶縁カバー260の位置決め構造を構成する。例えば、まず、第1保持部材261の下面と第2保持部材262の上面との少なくとも一面に接着剤を塗布する。次に、平面視で第1保持部材261及び第2保持部材262が重なるように第1保持部材261の下面と第2保持部材262の上面とを合わせることで、各凸部264を各凹部263に嵌合する。これにより、第1保持部材261と第2保持部材262とを接着剤で固定することができる。
【0107】
なお、第1保持部材261の各角部に凹部263が形成され、第2保持部材262の各角部に凸部264が設けられることに限定されない。例えば、第1保持部材261の各角部に凸部264が設けられ、第2保持部材262の各角部に凹部263が形成されていてもよい。例えば、凸部264の設置態様及び凹部263の形成態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0108】
第1の電極222の後端部(+X端部)は、ヒューズエレメント220の前端部(-X端部)と接続されている。第1の電極222の前端部は、絶縁ケース260の前側から絶縁ケース260の外部に突出することで露出している。
第2の電極223の前端部は、ヒューズエレメント220の後端部と接続されている。第2の電極223の後端部は、絶縁ケース260の後側から絶縁ケース260の外部に突出することで露出している。
第3の電極225の右端部は、発熱体引出電極221の左端部と接続されている。第3の電極225の左端部は、絶縁ケース260の左側から絶縁ケース260の外部に突出することで露出している。
【0109】
なお、第2実施形態の保護素子211は、ねじ止め式である。具体的に、保護素子211は、絶縁ケース260の外に突出した各電極222,223,225の孔(各端子の孔)にねじを通して配線に接続するものである。
【0110】
島状電極233は、絶縁基板226の表面の両端部に形成されている。絶縁基板226の一端側の島状電極233と他端側の島状電極233とは、発熱抵抗体224等を介して、前後方向に互いに離間している。島状電極233は、ヒューズエレメント220が溶断したとき、ぬれ性によって、ヒューズエレメント220の溶融導体の一部を、第1、第2の電極222,223と離間して保持する。
【0111】
以上説明した本実施形態の保護素子211は、位置決め構造を持つ絶縁カバー260を備える。
この構成によれば、絶縁カバー260を構成する第1保持部材261と第2保持部材262とを、位置決めしつつ固定することができる。
【0112】
(保護素子(第3実施形態))
本発明の第3実施形態に係る保護素子311について、
図18を参照して説明する。第3実施形態の保護素子311は、主に、発熱抵抗体324が絶縁基板326A,326Bにある構造がヒューズエレメント320を挟み込んでいる点で、前述の第2実施形態と異なる。なお本実施形態の図において、第1実施形態及び第2実施形態と同様又はほぼ同様の構成部材については、同じ符号や同じ名称を付すなどして説明を省略する場合がある。
【0113】
図18に示すように、保護素子311は、第1、第2の絶縁基板326A,326Bと、第1、第2の電極222,223(端子部222,223)と、絶縁基板326A,326Bの表面上に設けられた発熱抵抗体324と、発熱抵抗体324を被覆する絶縁層327と、絶縁層327上に積層されるとともに発熱抵抗体324と接続された発熱体引出電極321と、第1の電極222、発熱体引出電極321及び第2の電極223にわたって固定用はんだ28を介して搭載されるヒューズエレメント320と、表面電極371と、導電層372と、裏面電極373と、島状電極333と、絶縁カバー260と、を備える。ヒューズエレメント320は、エポキシ系フラックス29を補助剤とした固定用はんだ28によって端子部222,223等に接合されている。
【0114】
絶縁基板326A,326Bは、第1、第2の電極222,223の間に配置されている。絶縁基板326A,326Bは、互いに上下方向に離間している。一方の絶縁基板326Aは、ヒューズエレメント320の上方に配置されている。他方の絶縁基板326Bは、ヒューズエレメント320の下方に配置されている。
絶縁基板326A,326Bには、絶縁基板326A,326Bの厚さ方向に貫通する貫通孔326hが形成されている。
【0115】
表面電極371は、絶縁基板326A,326Bの表面上(ヒューズエレメント320側の面上)に形成されている。表面電極371は、ヒューズエレメント320と絶縁層327との間に配置されている。表面電極371は、ヒューズエレメント320の一部とはんだ等を介して接続されている。
【0116】
ヒューズエレメント320が発熱抵抗体324の発熱により溶融すると、溶融したヒューズエレメント320(以下「溶融導体」ともいう。)が表面電極371に凝集する。このため、表面電極371に凝集した溶融導体を、毛管現象により貫通孔326h内に吸引させることができる。これにより、保護素子311は、大電流用途に対応するためにヒューズエレメント320の断面積を増大させた場合にも、溶融導体が絶縁基板326A,326Bの表面上に過剰に凝集することが無く、確実に第1、第2の電極222,223間の電流経路を遮断することができる。
【0117】
導電層372は、絶縁基板326A,326Bの貫通孔326hの内周面に形成されている。導電層372は、表面電極371と連続している。導電層372は、例えば、溶融導体がぬれ広がる金属材料で形成されている。導電層372は、例えば、ペースト処理、メッキ処理等で形成されている。
【0118】
導電層372が表面電極371と連続していることにより、保護素子311は、表面電極371に凝集した溶融導体を貫通孔326h内に引き込みやすくなる。これにより、より多くの溶融導体を貫通孔326h内に吸引させることができる。
【0119】
裏面電極373は、絶縁基板326A,326Bの裏面(ヒューズエレメント320とは反対側の面)に形成されている。裏面電極373は、絶縁基板326A,326B等を挟んで表面電極371とは反対側に形成されている。裏面電極373は、導電層372と連続している。
【0120】
裏面電極373が導電層372と連続していることにより、導電層372を伝って貫通孔326h内に吸引された溶融導体が裏面電極373に凝集する。このため、さらにより多くの溶融導体を吸引させることができる。
【0121】
島状電極333は、絶縁基板326A,326Bの表面の端部に形成されている。島状電極333は、前後方向において表面電極371の外側に離間している。島状電極333は、ヒューズエレメント320が溶断したとき、ぬれ性によって、溶融導体の一部を、表面電極371や第1、第2の電極222,223と離間して保持する。
【0122】
なお、貫通孔326h内には、ヒューズエレメント320よりも融点の低い予備はんだ375が充填されていてもよい。この構成によれば、発熱抵抗体324が発熱したとき、予備はんだ375がヒューズエレメント320より先に溶融するため、溶融導体を貫通孔326hに呼び込むことができる。このため、溶融導体を、効率よく絶縁基板326A,326Bの表面側から裏面側に吸引し、姿勢に拘わらず、第1の電極222と第2の電極223との間の電流経路を確実に遮断することができる。
【0123】
例えば、貫通孔326h内の少なくとも一部には、予備はんだ375と共に、又は予備はんだ375に代えて、フラックスが充填されていてもよい。この構成によっても、ヒューズエレメント320の濡れ性を高め、効率よく溶融導体を貫通孔326hに呼び込むことができる。
【0124】
本実施形態では、複数の発熱抵抗体324が、ヒューズエレメント320の上下方向の両面側にそれぞれ配置されている。
各発熱抵抗体324の一端は、発熱体引出電極321を介してヒューズエレメント320と接続されている。各発熱抵抗体324の他端は、不図示の外部接続電極を介して発熱抵抗体324を発熱させるための電源に接続されている。
【0125】
保護素子311は、ヒューズエレメント320を溶断する際には、各発熱抵抗体324がそれぞれ発熱するとともに溶融導体を各貫通孔326h内に吸引する。したがって、保護素子311は、大電流用途に対応するためにヒューズエレメント320の断面積を増大させ溶融導体が多量に発生した場合にも、溶融導体を上下方向両側から吸引し、確実にヒューズエレメント320を溶断させることができる。また、保護素子311は、上下方向両側から溶融導体を吸引することにより、より速やかにヒューズエレメント320を溶断させることができる。
【0126】
保護素子311は、ヒューズエレメント320として、内層を構成する低融点金属を高融点金属で被覆する被覆構造を用いた場合にも、ヒューズエレメント320を速やかに溶断させることができる。高融点金属で被覆されたヒューズエレメント320は、発熱抵抗体324が発熱した場合にも、外層の高融点金属が溶融する温度まで加熱するのに時間を要する。保護素子311は、複数の発熱抵抗体324を備え、同時に各発熱抵抗体324を発熱させることで、外層の高融点金属を速やかに溶融温度まで加熱することができる。したがって、保護素子311によれば、外層を構成する高融点金属層の厚みを厚くすることができ、さらなる高定格化を図りつつ、速溶断特性を維持することができる。
【0127】
保護素子311は、一対の発熱抵抗体324が対向してヒューズエレメント320に接続されることが好ましい。これにより、保護素子311は、一対の発熱抵抗体324で、ヒューズエレメント320の同一箇所を両面側から同時に加熱するとともに上下方向両側から溶融導体を吸引することができる。したがって、より速やかにヒューズエレメント320を加熱、溶断することができる。
【0128】
なお、発熱抵抗体324は、絶縁基板326A,326Bの表面側に設けられることに限らず、絶縁基板326A,326Bの裏面側に設けられてもよい。例えば、発熱抵抗体324の設置態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0129】
(変形例)
上記実施形態では、固定用はんだの初回溶融時の固相線温度T1aは、固定用はんだの再溶融時の固相線温度T1bと異なる(T1a≠T1b)例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、固定用はんだの初回溶融時の固相線温度T1aは、固定用はんだの再溶融時の固相線温度T1bと同じであってもよい(T1a=T1b)。例えば、固定用はんだの初回溶融時の固相線温度T1aと固定用はんだの再溶融時の固相線温度T1bとの関係は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0130】
上記実施形態では、固定用はんだの初回溶融時の固相線温度T1aは、ヒューズエレメントの固相線温度T2より小さく、かつ、固定用はんだの再溶融時の固相線温度T1bは、ヒューズエレメントの固相線温度T2より大きい(T1a<T2<T1b)例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、固定用はんだの初回溶融時の固相線温度T1aは、ヒューズエレメントの固相線温度T2以上であってもよい(T1a≧T2)。例えば、固定用はんだの再溶融時の固相線温度T1bは、ヒューズエレメントの固相線温度T2以下であってもよい(T1b≦T2)。例えば、固定用はんだの初回溶融時の固相線温度T1aと、ヒューズエレメントの固相線温度T2と、固定用はんだの再溶融時の固相線温度T1bとの関係は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0131】
上記実施形態では、固定用はんだの組成は、Sn-Bi-X(ただし、Xは、Ag、Cu、Ni、Zn又はInである)で示される例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、固定用はんだの組成は、Sn-Bi以外の組成で示されてもよい。例えば、固定用はんだの組成は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0132】
上記実施形態では、ヒューズエレメントの固相線温度T2は、150℃以上250℃以下である(150℃≦T2≦250℃)例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、ヒューズエレメントの固相線温度T2は、150℃より小さくてもよい(T2<150℃)。例えば、ヒューズエレメントの固相線温度T2は、250℃より大きくてもよい(T2>250℃)。例えば、ヒューズエレメントの固相線温度T2の温度範囲は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0133】
上記実施形態では、保護素子は、固定用はんだの補助剤としてエポキシ系フラックスを含む例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、保護素子は、固定用はんだの補助剤としてエポキシ系フラックスを含まなくてもよい。例えば、保護素子は、固定用はんだの補助剤としてエポキシ系フラックス以外のフラックスを含んでもよい。例えば、保護素子は、固定用はんだの補助剤としてロジン系フラックスを含んでもよい。例えば、固定用はんだの補助剤の態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0134】
上記実施形態では、実装用はんだの固相線温度T3は、150℃以上250℃以下である(150℃≦T2≦250℃)例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、実装用はんだの固相線温度T3は、150℃より小さくてもよい(T3<150℃)。例えば、実装用はんだの固相線温度T3は、250℃より大きくてもよい(T3>250℃)。例えば、実装用はんだの固相線温度T3の温度範囲は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0135】
本発明の保護素子は、上述した実施形態に限定されるものではない。
【0136】
本発明は、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において、前述の実施形態、変形例および参考例等で説明した各構成を組み合わせてもよく、また、構成の付加、省略、置換、その他の変更が可能である。また本発明は、前述した実施形態等によって限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【符号の説明】
【0137】
9 回路基板
11,211,311 保護素子
20,220,320 ヒューズエレメント
21,221,321 発熱体引出電極(電極)
22,222 第1の電極(電極)
23.223 第2の電極(電極)
26,226,326A,326B 絶縁基板(基板、素子基板)
28 固定用はんだ
29 エポキシ系フラックス
36 実装用はんだ