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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155458
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】ウェアラブルセンサ
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/1455 20060101AFI20241024BHJP
   A61B 5/00 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
A61B5/1455
A61B5/00 B
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023070193
(22)【出願日】2023-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】520487808
【氏名又は名称】シャープディスプレイテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】原 猛
(72)【発明者】
【氏名】植本 寿雄
(72)【発明者】
【氏名】千田 満
(72)【発明者】
【氏名】影山 翠
(72)【発明者】
【氏名】瀧田 力也
(72)【発明者】
【氏名】曲 陽
【テーマコード(参考)】
4C038
4C117
【Fターム(参考)】
4C038KL05
4C038KL07
4C038KX02
4C038KX04
4C038KY03
4C038KY10
4C038KY11
4C117XB01
4C117XC11
4C117XE33
(57)【要約】
【課題】受光感度が高められたウェアラブルセンサを提供する。
【解決手段】
被験者が装着するウェアラブルセンサであって、支持基板と、上記支持基板上に配置された複数のセンサ素子と、を有し、上記複数のセンサ素子は、それぞれ、有機発光ダイオード又は無機発光ダイオードである発光部と、上記発光部から出射されて被験者の生体内で反射した光の光量を測定する反射光受光部と、を有し、好ましくは、平面視において、上記反射光受光部の少なくとも一部は、上記発光部と重畳しない、ウェアラブルセンサ。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者が装着するウェアラブルセンサであって、
支持基板と、前記支持基板上に配置された複数のセンサ素子と、を有し、
前記複数のセンサ素子は、それぞれ、
有機発光ダイオード又は無機発光ダイオードである発光部と、
前記発光部から出射されて被験者の生体内で反射した光の光量を測定する反射光受光部と、を有することを特徴とするウェアラブルセンサ。
【請求項2】
平面視において、前記反射光受光部の少なくとも一部は、前記発光部と重畳しないことを特徴とする請求項1に記載のウェアラブルセンサ。
【請求項3】
前記反射光受光部は、前記支持基板側から順に、反射光受光用のスイッチング素子と、反射光受光用のセンサ部と、を有し、
前記反射光受光用のセンサ部は、前記支持基板側から順に、反射光受光用の下部電極と、反射光受光用の光電変換層と、反射光受光用の上部電極と、を有する、ことを特徴とする請求項1に記載のウェアラブルセンサ。
【請求項4】
前記反射光受光用のスイッチング素子は、アモルファスシリコン、低温ポリシリコン、及び、インジウムガリウム亜鉛酸化物の少なくとも一つを含有する反射光受光用の半導体層を備える、ことを特徴とする請求項3に記載のウェアラブルセンサ。
【請求項5】
前記反射光受光用のスイッチング素子は、ダブルゲート構造を有する、ことを特徴とする請求項3に記載のウェアラブルセンサ。
【請求項6】
更に、前記発光部から出射されて被験者の生体内を通過していない光の光量を測定する発光光受光部を備えることを特徴とする請求項1に記載のウェアラブルセンサ。
【請求項7】
前記発光光受光部は、前記支持基板側から順に、発光光受光用のスイッチング素子と、発光光受光用のセンサ部と、を有し、
前記発光光受光用のセンサ部は、前記支持基板側から順に、発光光受光用の下部電極と、発光光受光用の光電変換層と、発光光受光用の上部電極と、を有する、ことを特徴とする請求項6に記載のウェアラブルセンサ。
【請求項8】
前記発光光受光用のスイッチング素子は、アモルファスシリコン、低温ポリシリコン、及び、インジウムガリウム亜鉛酸化物の少なくとも一つを含有する発光光受光用の半導体層を備える、ことを特徴とする請求項7に記載のウェアラブルセンサ。
【請求項9】
前記発光光受光用のスイッチング素子は、ダブルゲート構造を有する、ことを特徴とする請求項7に記載のウェアラブルセンサ。
【請求項10】
前記発光部は、前記支持基板側から順に、反射電極及び発光層を備え、
前記発光光受光部は、発光光受光用の光電変換層を備え、
前記ウェアラブルセンサは、前記支持基板側から順に、前記発光光受光用の光電変換層、前記反射電極及び前記発光層を備え、
平面視において、前記発光層の少なくとも一部は、前記反射電極を介さずに前記発光光受光用の光電変換層と重畳することを特徴とする請求項6に記載のウェアラブルセンサ。
【請求項11】
前記発光部は、前記支持基板側から順に、反射電極及び発光層を備え、
前記発光光受光部は、発光光受光用の光電変換層を備え、
前記ウェアラブルセンサは、前記支持基板側から順に、前記発光光受光用の光電変換層、前記反射電極及び前記発光層を備え、
平面視において、前記反射電極は、前記発光光受光用の光電変換層と重畳する領域の少なくとも一部に開口部が設けられていることを特徴とする請求項6に記載のウェアラブルセンサ。
【請求項12】
前記発光部は、前記支持基板側から順に、反射電極と発光層とを備え、
平面視において、前記発光層の少なくとも一部は、前記反射電極と重畳することを特徴とする請求項1に記載のウェアラブルセンサ。
【請求項13】
前記支持基板は、フレキシブル基板であることを特徴とする請求項1~12のいずれかに記載のウェアラブルセンサ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
以下の開示は、ウェアラブルセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
健康志向の高まりにより、生活習慣の改善、病気の早期発見、体調管理などの観点から、自己の体調に関する情報を簡便に測定できるウェアラブルセンサが注目されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、被験者の身体に取り外し可能に取り付け可能であるように適合された監視装置であって、前記装置は、測定ユニットであって、少なくとも2つの発光源と、前記少なくとも2つの発光源から放出された光ビームを検出するための少なくとも1つのセンサと、を備えた測定ユニットと、前記測定ユニットに結合された制御装置であって、前記被験者の生理学的徴候を測定および分析するように構成された制御装置と、を備えた監視装置が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、所定の波長の光を発する光源と、前記光源から射出された光を直線偏光に変換する偏光子と、前記直線偏光の偏光方向を変調する変調器と、生体である被測定物の外周に沿って一部が開環した多角形の各辺に配置され、前記変調器で変調された光を前記被測定物側に全反射し、前記被測定物の外周に沿って前記被測定物の内部を透過させる複数のミラーと、前記被測定物からの透過光の偏光方向に基づいて、前記透過光から前記被測定物中にて散乱された散乱光を分離する検光子と、前記検光子で散乱光が分離された前記透過光を検出する検出器と、を備える測定装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2019-506205号公報
【特許文献2】特許第6642421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図9は、特許文献1の測定ユニットを示す断面模式図である。図10は、生体内での光の反射について説明する断面模式図である。図9及び図10中の破線矢印の方向は、光ビームの方向を示す。例えば、図9に示される特許文献1の測定ユニット300Rは、被験者の皮膚30に隣接して載置される。光ビームが皮膚30に浸透して血管31からセンサ310Rに向けて反射されるように、発光源320Rから光ビームが皮膚30内に放出される。放出されたビームと受光された(反射された)ビームとの間のデータの差は、血管31内の血液による放射線吸収に関するインディケーションを提供し、血管31内の血液の特徴および血液測定値を非侵襲的な手順で示す。また、測定ユニット300Rは、超音波信号の送受信が可能な超音波ユニット340Rを備える。
【0007】
図9に示される特許文献1の測定ユニットのように、レーザー光や発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)を利用した生体センサはこれまでにも実用化されている。しかしながら、発光ダイオードは1つあたり数mm程度の大きさがあるため、従来の生体センサでは発光ダイオードを配置するためのスペースを確保することが課題となっていた。そのため、従来の生体センサでは、多くの発光光源及び受光部を配置することは難しく、従来の生体センサが備える光源及び受光部は数個レベルであり、充分な受光感度を得ることが困難であった。また、図10に示すように、生体内の反射光は散乱するため、微弱な光しか受光できず、充分な受光感度が得られなかった。
【0008】
上記特許文献1及び2には、受光感度が高められたウェアラブルセンサは開示されていない。
【0009】
本発明は上記現状に鑑みてなされたものであり、受光感度が高められたウェアラブルセンサを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明の一実施形態は、被験者が装着するウェアラブルセンサであって、支持基板と、上記支持基板上に配置された複数のセンサ素子と、を有し、上記複数のセンサ素子は、それぞれ、有機発光ダイオード又は無機発光ダイオードである発光部と、上記発光部から出射されて被験者の生体内で反射した光の光量を測定する反射光受光部と、を有するウェアラブルセンサ。
【0011】
(2)また、本発明のある実施形態は、上記(1)の構成に加え、平面視において、上記反射光受光部の少なくとも一部は、上記発光部と重畳しない、ウェアラブルセンサ。
【0012】
(3)また、本発明のある実施形態は、上記(1)又は上記(2)の構成に加え、上記反射光受光部は、上記支持基板側から順に、反射光受光用のスイッチング素子と、反射光受光用のセンサ部と、を有し、上記反射光受光用のセンサ部は、上記支持基板側から順に、反射光受光用の下部電極と、反射光受光用の光電変換層と、反射光受光用の上部電極と、を有する、ウェアラブルセンサ。
【0013】
(4)また、本発明のある実施形態は、上記(3)の構成に加え、上記反射光受光用のスイッチング素子は、アモルファスシリコン、低温ポリシリコン、及び、インジウムガリウム亜鉛酸化物の少なくとも一つを含有する反射光受光用の半導体層を備える、ウェアラブルセンサ。
【0014】
(5)また、本発明のある実施形態は、上記(3)又は上記(4)の構成に加え、上記反射光受光用のスイッチング素子は、ダブルゲート構造を有する、ウェアラブルセンサ。
【0015】
(6)また、本発明のある実施形態は、上記(1)、上記(2)、上記(3)、上記(4)又は上記(5)の構成に加え、更に、上記発光部から出射されて被験者の生体内を通過していない光の光量を測定する発光光受光部を備える、ウェアラブルセンサ。
【0016】
(7)また、本発明のある実施形態は、上記(6)の構成に加え、上記発光光受光部は、上記支持基板側から順に、発光光受光用のスイッチング素子と、発光光受光用のセンサ部と、を有し、上記発光光受光用のセンサ部は、上記支持基板側から順に、発光光受光用の下部電極と、発光光受光用の光電変換層と、発光光受光用の上部電極と、を有する、ウェアラブルセンサ。
【0017】
(8)また、本発明のある実施形態は、上記(7)の構成に加え、上記発光光受光用のスイッチング素子は、アモルファスシリコン、低温ポリシリコン、及び、インジウムガリウム亜鉛酸化物の少なくとも一つを含有する発光光受光用の半導体層を備える、ウェアラブルセンサ。
【0018】
(9)また、本発明のある実施形態は、上記(7)又は上記(8)の構成に加え、上記発光光受光用のスイッチング素子は、ダブルゲート構造を有する、ウェアラブルセンサ。
【0019】
(10)また、本発明のある実施形態は、上記(6)、上記(7)、上記(8)又は上記(9)の構成に加え、上記発光部は、上記支持基板側から順に、反射電極及び発光層を備え、上記発光光受光部は、発光光受光用の光電変換層を備え、上記ウェアラブルセンサは、上記支持基板側から順に、上記発光光受光用の光電変換層、上記反射電極及び上記発光層を備え、平面視において、上記発光層の少なくとも一部は、上記反射電極を介さずに上記発光光受光用の光電変換層と重畳する、ウェアラブルセンサ。
【0020】
(11)また、本発明のある実施形態は、上記(6)、上記(7)、上記(8)、上記(9)又は上記(10)の構成に加え、上記発光部は、上記支持基板側から順に、反射電極及び発光層を備え、上記発光光受光部は、発光光受光用の光電変換層を備え、上記ウェアラブルセンサは、上記支持基板側から順に、上記発光光受光用の光電変換層、上記反射電極及び上記発光層を備え、平面視において、上記反射電極は、上記発光光受光用の光電変換層と重畳する領域の少なくとも一部に開口部が設けられている、ウェアラブルセンサ。
【0021】
(12)また、本発明のある実施形態は、上記(1)、上記(2)、上記(3)、上記(4)、上記(5)、上記(6)、上記(7)、上記(8)、上記(9)、上記(10)又は上記(11)の構成に加え、上記発光部は、上記支持基板側から順に、反射電極と発光層とを備え、平面視において、上記発光層の少なくとも一部は、上記反射電極と重畳する、ウェアラブルセンサ。
【0022】
(13)また、本発明のある実施形態は、上記(1)、上記(2)、上記(3)、上記(4)、上記(5)、上記(6)、上記(7)、上記(8)、上記(9)、上記(10)、上記(11)又は上記(12)の構成に加え、上記支持基板は、フレキシブル基板である、ウェアラブルセンサ。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、受光感度が高められたウェアラブルセンサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】実施形態1のウェアラブルセンサの斜視模式図である。
図2】実施形態1のウェアラブルセンサの機能の一例を説明する模式図である。
図3】実施形態1のウェアラブルセンサの断面模式図である。
図4】実施形態1のウェアラブルセンサが備える第1の受光部の回路図の一例である。
図5】実施形態2のウェアラブルセンサの斜視模式図である。
図6】実施形態2のウェアラブルセンサの機能の一例を説明する模式図である。
図7】実施形態2のウェアラブルセンサの断面模式図である。
図8】実施形態2のウェアラブルセンサが備える第2の受光部の回路図の一例である。
図9】特許文献1の測定ユニットを示す断面模式図である。
図10】生体内での光の反射について説明する断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に記載された内容に限定されるものではなく、本発明の構成を充足する範囲内で、適宜設計変更を行うことが可能である。なお、以下の説明において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して適宜用い、その繰り返しの説明は適宜省略する。本発明の各態様は、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜組み合わされてもよい。
【0026】
(実施形態1)
図1は、実施形態1のウェアラブルセンサの斜視模式図である。本実施形態のウェアラブルセンサ1は、被験者が装着するウェアラブルセンサであって、支持基板10と、支持基板10上に配置された複数のセンサ素子20を有する。複数のセンサ素子20は、それぞれ、有機発光ダイオード(OLED:Organic Light Emitting Diod)又は無機発光ダイオード(無機LED(Light Emitting Diod))である発光部21と、発光部21から出射されて被験者の生体内で反射した光の光量を測定する反射光受光部22と、を有する。このような態様とすることにより、各発光部21の配置スペースを抑えることが可能となり、ウェアラブルセンサ1内により多くのセンサ素子20をアレイ状に配置することが可能となる。その結果、受光感度を高めることができる。また、支持基板10をフレキシブル基板(フレキシブル基材ともいう)とすることにより、ウェアラブル性を高めることができる。
【0027】
本実施形態のウェアラブルセンサ1は、より具体的には、発光部21に対応するOLEDディスプレイを応用した発光素子と、反射光受光部22に対応するX線センサを応用した半導体センサと、をアレイ状に配置することにより生体センサを実現し、上記課題を解決する。高精細発光素子及び受光素子をある程度の面積を持ったアレイ状に配置することで、生体内で反射した光(生体内で散乱した光も含む)を効率よく受光することができる。また個体によって異なる血管配置の違いによる影響も受け難いため、生体センサとしての精度と感度を向上させることができる。また、発光素子と半導体センサとをフレキシブル基材上に形成することで、ウェアラブル性が高められたデバイスを実現することができる。
【0028】
以上のように、本実施形態のウェアラブルセンサ1では、OLEDディスプレイ技術とX線センサ技術を応用して、ある程度の面積に、高精細に発光源と検出センサをアレイ状に配置することで、生体内で反射した光を効率よく受光できるため感度を向上させることができる。また、センサ素子20をフレキシブル基板上に形成することで、ウェアラブル性の良いデバイスを実現することができる。
【0029】
上記特許文献1には、人体に設置可能な生体センサが開示されている。上記特許文献1に開示された生体センサは、少なくとも2つの発光源と、少なくとも1つの検出センサを有しており、人体の生理学的徴候を測定及び分析することができる。発光波長は400~2500nmの間の特定の波長である。データ分析により、糖尿病、脱水症、服薬の状況をモニタリングすることができる。
【0030】
上記特許文献1の生体センサには、図9に示すように、数個程度の発光源と検出センサしか設置できないため、生体内で反射した光を効率よく受光できず感度が悪い。また、リジッドなデバイスであるため、ウェアラブル性が悪い。
【0031】
上記特許文献2には、所定の波長の光を発する光源と、その光を直線偏光に変換する偏光子と、この光を被測定物中で反射させるミラーと、検出部と、を有するセンサが開示されている。特許文献2のセンサでは、反射を繰り返すことで、生体センシングの高精度化を図っている。特許文献2では、反射を何度も繰り返すための強い光源とミラーが必要であるが、光源やミラーを複数個の設置することは不可能であるため、散乱光を効率よく受光することができない。また、何度も反射させるため、散乱光自体も多くなる。更に、リジッドなデバイスであるため、ウェアラブル性が悪い。
【0032】
以下、本実施形態のウェアラブルセンサ1の詳細を説明する。
【0033】
図2は、実施形態1のウェアラブルセンサの機能の一例を説明する模式図である。図3は、実施形態1のウェアラブルセンサの断面模式図である。図2及び図3に示す実線矢印は発光部からの出射光を表し、破線矢印は、生体内で反射した光を表す。図2及び図3に示すように、本実施形態のウェアラブルセンサ1は、例えば、人や動物の皮膚30の上から装着され、被験者の生体内の状態を測定するウェアラブルセンサである。
【0034】
ウェアラブルセンサ1は、複数のセンサ素子20を有する。複数のセンサ素子(画素ともいう)20は、それぞれ、OLED又は無機LEDである発光部21と、発光部21から出射されて被験者の生体内で反射した光の光量を測定する反射光受光部22と、を有する。センサ素子20は、支持基板10上にアレイ状に配置されてもよい。
【0035】
支持基板10は、センサ素子20を支持する基板であれば特に限定されない。支持基板10としては、例えば、フレキシブル基板、ガラス基板等が挙げられる。支持基板10は、フレキシブル基板であることが好ましい。このような態様とすることにより、ウェアラブルセンサ1の柔軟性が高まり、ウェアラブル性を向上させることができる。フレキシブル基板は、合成樹脂材料(例えばポリイミド系樹脂等)からなり、絶縁性及び可撓性を有するフィルム状の基材である。
【0036】
支持基板10は、被験者と接する側に配置されても、被験者と接する側とは反対側に配置されてもよい。支持基板10が被験者と接する側に配置される場合、支持基板10は、光透過性を有することが好ましい。支持基板10が被験者と接する側に配置される場合、支持基板10の透過率は、例えば、80%以上、100%以下であり、90%以上、100%以下であることが好ましく、95%以上、100%以下であることがより好ましい。透過率は、JIS-K-7375に準拠した測定方法で、測定することができる。
【0037】
センサ素子20は、例えば、一方向(例えば「行方向」)及び当該一方向に対する交差方向(例えば「列方向」)にマトリクス状に配置される。ウェアラブルセンサ1は、センサ素子20を複数個有する。このような態様とすることにより、受光感度を高めることができる。
【0038】
発光部21は、OLED又は無機LEDである。発光部21は、例えば、OLEDディスプレイを応用した発光素子であってもよい。発光部21は、発光を制御する機能を有する発光用のスイッチング素子を備えていてもよい。
【0039】
発光部21は、生体センシングに適した波長の光を出射することが好ましい。例えば、近赤外光は生体内に深く侵入することができるため、得られる生体情報を増加させることができる。発光部21は、例えば、波長700nm以上、2500nm以下の光を出射することが好ましく、波長700nm以上、1700nm以下の光を出射することがより好ましく、波長1000nm以上、1700nm以下の光を出射することが更に好ましい。なお、発光部21は、可視光(例えば、波長380nm以上、700nm未満の光)を出射してもよい。このような態様とすることにより、可視光でセンシング可能な生体情報を取得することができる。
【0040】
発光部21は、複数種類の波長の光を出射することが好ましい。このような態様とすることにより、得られる生体情報を増加することができる。また、発光部21は、出射する光の光量を変化させることが好ましい。このような態様とすることにより、光量を変えてセンシングすることが可能となり、得られる生体情報を増加させることができる。
【0041】
図3に示すように、ウェアラブルセンサ1は、支持基板10上に、互いに平行に延設された複数の発光用のゲート線21Gと、複数の発光用のゲート線21Gと交差する方向に互いに平行に延設された複数の発光用のソース線21Sと、を備え、複数の発光用のゲート線21G及び複数の発光用のソース線21Sは、各センサ素子20を区画するように全体として格子状に形成されている。複数の発光用のゲート線21G及び複数の発光用のソース線21Sの交点には、発光用のスイッチング素子211が設けられている。
【0042】
各発光部21は、支持基板10側から順に、発光用のスイッチング素子211と、反射電極212と、発光層213と、を備える。より具体的には、支持基板10側から順に、発光用のスイッチング素子211と、第1の絶縁膜241と、第2の絶縁膜242と、第3の絶縁膜243と、第4の絶縁膜244と、反射電極212と、発光層213と、を備える。発光用のスイッチング素子211は、支持基板10側から順に、発光用のゲート電極211Gと、ゲート絶縁膜240と、発光用の半導体層211Cと、発光用のドレイン電極211D及び発光用のソース電極211Sとを有する。
【0043】
ゲート絶縁膜240、第1の絶縁膜241、第2の絶縁膜242、第3の絶縁膜243、第4の絶縁膜244、及び、後述する第5の絶縁膜245は、無機絶縁膜、有機絶縁膜、又は、上記有機絶縁膜と無機絶縁膜との積層体である。
【0044】
無機絶縁膜としては、例えば、窒化珪素(SiNx)、酸化珪素(SiO)等の無機膜(比誘電率ε=5~7)や、それらの積層膜を用いることができる。無機絶縁膜の膜厚は、例えば、1500Å以上、3500Å以下である。有機絶縁膜としては、例えば、感光性アクリル樹脂等の比誘電率の小さい有機膜(比誘電率ε=2~5)や、それらの積層膜を用いることができる。有機絶縁膜の膜厚は特に限定されないが、例えば、2μm以上、4μm以下である。
【0045】
ゲート絶縁膜240、第1の絶縁膜241及び第3の絶縁膜243は、SiN、SiO、SiON等の無機絶縁膜であることが好ましい。第2の絶縁膜242、第4の絶縁膜244及び第5の絶縁膜は、アクリル樹脂系の有機絶縁膜であることが好ましい。
【0046】
発光用のスイッチング素子211は、発光層213の発光を制御する機能を有する。発光用のスイッチング素子211は、発光用のゲート電極211Gと、発光用のソース電極211Sと、発光用のドレイン電極211Dと、発光用の半導体層211Cとを備える三端子スイッチである。発光用のスイッチング素子211としては、例えば、薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)が挙げられる。発光用のスイッチング素子211はダブルゲート構造であることが好ましい。
【0047】
本明細書において「ゲート電極」とは、TFTを構成する3つの電極の1つ(残りはソース電極及びドレイン電極)であり、ゲート電極に印加する電圧によって半導体層のチャネル領域に誘起する電荷量を変調し、ソース・ドレイン間に流れる電流を制御する。「ソース電極」とは、TFTを構成する3つの電極の1つであり、TFTの半導体層を流れるキャリアの供給源となる電極である。本明細書において「ドレイン電極」とは、TFTを構成する3つの電極の1つであり、TFTの半導体層を流れるキャリアの供給先となる電極である。
【0048】
本明細書において「半導体層」とは、半導体の特性を有する層(例えば、チャネル領域)のみならず、半導体の特性を有する層をチャネル領域よりも比抵抗が小さくなるように低抵抗化処理した層(例えば、ソース領域及びドレイン領域)も包含するものとする。また、半導体層に用いられる材料としては、アモルファスシリコン(a-Si)、低温ポリシリコン(LTPS:Low Temperature Poly-Silicon)、インジウムガリウム亜鉛酸化物(IGZO:Indium Gallium Zinc Oxide)、LTPS+IGZO(TOPS)等が挙げられる。
【0049】
発光用のスイッチング素子211が備える発光用の半導体層211Cは、LTPS及びIGZOの少なくとも一方を含むことが好ましい。すなわち、発光用のスイッチング素子211が備える発光用の半導体層211Cは、LTPS又はIGZOを含むことが好ましい。このような態様とすることにより、発光層に充分な電荷・電流を印可することができる。発光用のスイッチング素子211が備える半導体層211Cは、移動度の高いLTPS、又は、高移動度IGZOを含むことがより好ましい。
【0050】
発光用のドレイン電極211Dは、コンタクトホール21CH1を介して反射電極212と接続されている。発光用のソース電極211Sは、コンタクトホール21CH2を介して、対応する発光用のソース線に接続されている。
【0051】
反射電極212は、反射率の高い金属材料を含む。反射電極212は、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、銀又は銀合金を含む。発光層213から出射された光は反射電極212により反射され、被験者側へ出射される。
【0052】
発光層213は、有機発光材料又は無機発光材料を含有する。発光層213は、ナノパーティクルを含む発光材料でもよいし、Siウェハー上に作製したLED素子を分断した後ピック&プレイスすることで発光素子として機能する構造でもよい。
【0053】
発光部21がOLEDである場合、発光層213は有機発光材料を含有する。有機発光材料を含有する発光層213は、有機発光層ともいう。OLEDは、蒸着又は塗布により形成することができる。OLEDは、必要によって、発光物質のほか、電荷輸送を効率的に行うための追加の有機物を含有することもできる。
【0054】
OLEDは、2つの電極の間に少なくとも1層の有機発光層を含む。例えば、OLEDは、上記有機発光層と電極との間に電荷注入または輸送層、例えば、電子輸送層、電子注入層、正孔輸送層、正孔注入層、正孔遮断層、電子遮断層などを含むことができる。また、必要によって、2つの電極の間に有機発光層を1層以上含むOLED発光ユニットが2つ以上積層されてもよい。
【0055】
上記OLED発光ユニットとは、有機発光層を含み、電圧の印加時に発光できる最小単位を意味する。OLED発光ユニットの間には、中間導電層または電荷発生層が備えられるとよい。中間導電層は、電極材料として使用可能な導電性材料を用いて形成されるとよい。積層された2以上のOLED発光ユニットは、同じ色を発光するように備えられてもよく、互いに異なる色を発光するように備えられてもよい。例えば、積層された構造のOLEDにおいて、2以上のOLED発光ユニットで互いに異なる色を発光して白色を発光するように備えられるとよい。
【0056】
発光部21が無機LEDである場合、発光層213は無機発光材料を含有する。無機発光材料を含有する発光層213は、無機発光層ともいう。無機LEDは、蒸着又は塗布により形成することができる他、Siウェハー上に作製した後、ピック&プレイスで配置して形成することもできる。ピック&プレイスで形成される無機LEDは、マイクロLEDともいう。無機LEDは、必要によって、発光物質のほか、電荷輸送を効率的に行うための追加の無機物を含有することもできる。
【0057】
無機LEDは、2つの電極の間に少なくとも1層の無機発光層を含む。例えば、無機LEDは、上記無機発光層と電極との間に電荷注入または輸送層、例えば、電子輸送層、電子注入層、正孔輸送層、正孔注入層、正孔遮断層、電子遮断層などを含むことができる。また、必要によって、2つの電極の間に無機発光層を1層以上含む無機LED発光ユニットが2つ以上積層されてもよい。
【0058】
上記無機LED発光ユニットとは、無機発光層を含み、電圧の印加時に発光できる最小単位を意味する。無機LED発光ユニットの間には、中間導電層または電荷発生層が備えられるとよい。中間導電層は、電極材料として使用可能な導電性材料を用いて形成されるとよい。積層された2以上の無機LED発光ユニットは、同じ色を発光するように備えられてもよく、互いに異なる色を発光するように備えられてもよい。例えば、積層された構造の無機LEDにおいて、2以上の無機LED発光ユニットで互いに異なる色を発光して白色を発光するように備えられるとよい。
【0059】
無機LEDのうち、マイクロLEDは、LEDチップの1辺が100μm以下である。マイクロLEDチップの1辺は、例えば、5μm以上、100μm以下であり、厚みは、例えば、3μm以上、30μm以下である。マイクロLEDは、ピック&プレイス方式で基板上に実装される。ピック&プレイス方式は、切り出されたチップを一つひとつピックアップして、回路基板上の所定の箇所に設置する方法である。このような方法により、効率的に基板を組み立てることができる。
【0060】
発光部21は、支持基板10側から順に、反射電極212と発光層213とを備え、平面視において、発光層213の少なくとも一部は、反射電極212と重畳する。このような態様とすることにより、発光層213から出射された光が反射電極212により効果的に反射され、被験者側へ出射される。その結果、受光感度をより高めることができる。
【0061】
反射光受光部22は、発光部21から出射されて被験者の生体内で反射した光(生体内で散乱した光を含む)の光量を測定する機能を有する。反射光受光部22は、反射(散乱)光受光センサともいう。
【0062】
図4は、実施形態1のウェアラブルセンサが備える反射光受光部の回路図の一例である。図3及び図4に示すように、反射光受光部22は、光を受けて電荷を発生し、発生した電荷を蓄積する反射光受光用のセンサ部221と、反射光受光用のセンサ部221に蓄積された電荷を読み出すための反射光受光用のスイッチング素子222と、を含む。
【0063】
図4に示すように、ウェアラブルセンサ1は、支持基板10上に、互いに平行に延設された複数の反射光受光用のゲート線22Gと、複数の反射光受光用のゲート線22Gと交差する方向に互いに平行に延設された複数の反射光受光用のソース線22Sと、を備え、複数の反射光受光用のゲート線22G及び複数の反射光受光用のソース線22Sは、各センサ素子20を区画するように全体として格子状に形成されている。複数の反射光受光用のゲート線22G及び複数の反射光受光用のソース線22Sの交点には、反射光受光用のスイッチング素子222が設けられている。反射光受光用のゲート線22Gは、反射光受光用のスイッチング素子222をオン/オフするための配線であり、反射光受光用のソース線22Sは、反射光受光用のセンサ部221に蓄積された電荷を読み出すため配線である。
【0064】
図3に示すように、反射光受光部22は、支持基板10側から順に、反射光受光用のスイッチング素子222と、反射光受光用のセンサ部221と、を有する。より具体的には、反射光受光部22は、支持基板10側から順に、反射光受光用のスイッチング素子222と、第1の絶縁膜241と、第2の絶縁膜242と、反射光受光用のセンサ部221と、第3の絶縁膜243と、第4の絶縁膜244と、第5の絶縁膜245と、を備える。
【0065】
反射光受光用のセンサ部221は、支持基板10側から順に、反射光受光用の下部電極221Aと、反射光受光用の光電変換層221Bと、反射光受光用の上部電極221Cと、を有する。反射光受光用のセンサ部221は、例えば、アノード電極及びカソード電極(反射光受光用の下部電極221A及び反射光受光用の上部電極221C)とその間に挟まれたPINダイオード(反射光受光用の光電変換層221B)とを有する。ここで、PINダイオード(P-intrinsic-N Diode)は、P型半導体とN型半導体のPN接合部の間に、電気抵抗の大きな真性半導体であるI型半導体が挟まれてあるシリコンダイオードである。
【0066】
反射光受光用のスイッチング素子222は、支持基板10側から順に、反射光受光用のゲート電極222Gと、ゲート絶縁膜240と、反射光受光用の半導体層222Cと、反射光受光用のドレイン電極222D及び反射光受光用のソース電極222Sとを有する。反射光受光用のスイッチング素子222としては、例えば、薄膜トランジスタが挙げられる。反射光受光用のスイッチング素子222はダブルゲート構造であることが好ましい。
【0067】
反射光受光用の半導体層222Cは、例えば、アモルファスシリコン、低温ポリシリコン、及び、インジウムガリウム亜鉛酸化物の少なくとも一つを含有する。反射光受光用の半導体層222Cは、低温ポリシリコン、及び、インジウムガリウム亜鉛酸化物の少なくとも一方を含むことがより好ましい。すなわち、反射光受光用の半導体層222Cは、LTPS又はIGZOを含むことがより好ましい。このような態様とすることにより、センシング特性を向上させることができる。反射光受光用の半導体層222Cは、オフリークの小さいIGZOを含むことが更に好ましい。
【0068】
反射光受光用のドレイン電極222Dは、コンタクトホール22CH1を介して反射光受光用の下部電極221Aと接続されている。反射光受光用のソース電極222Sは、コンタクトホール22CH2を介して、反射光受光用のソース線22Sと接続されている。
【0069】
平面視において、反射光受光部22の少なくとも一部は、発光部21と重畳しないことが好ましい。このような態様とすることにより、生体内で反射した光を反射光受光部22により効果的に受光することが可能となり、受光感度を高めることができる。
【0070】
より具体的には、反射光受光部22が備える反射光受光用の光電変換層221Bの少なくとも一部は、発光部21が備える発光層213と重畳しないことが好ましい。このような態様とすることにより、生体内で反射した光を反射光受光部22により効果的に受光することが可能となり、受光感度を高めることができる。
【0071】
更に、反射光受光部22には、各反射光受光用のソース線22Sと並列に反射光受光用の共通電極配線22Aが設けられている。反射光受光用の共通電極配線22Aは、一端及び他端が並列に接続されており、一端が所定のバイアス電圧を供給する反射光受光用の電源22Bに接続されている。反射光受光用のセンサ部221は反射光受光用の共通電極配線22Aに接続されており、反射光受光用の共通電極配線22Aを介してバイアス電圧が印加されている。
【0072】
反射光受光用のゲート線22Gには、各反射光受光用のスイッチング素子222をスイッチングするための制御信号が流れる。このように制御信号が各反射光受光用のゲート線22Gに流れることによって、各反射光受光用のスイッチング素子222が スイッチング(オン/オフ)される。
【0073】
反射光受光用のソース線22Sには、各センサ素子20の反射光受光用のスイッチング素子222がオン状態の場合に、各センサ素子20に蓄積された電荷に応じた電気信号が流れる。より具体的には、各反射光受光用のソース線22Sには、当該反射光受光用のソース線22Sに接続されたセンサ素子20の何れかの反射光受光用のスイッチング素子222がオンされることにより蓄積された電荷量に応じた電気信号が流れる。
【0074】
各反射光受光用のソース線22Sには、各反射光受光用のソース線22Sに流れ出した電気信号を検出する反射光受光用の信号検出回路22Cが接続されている。また、各反射光受光用のゲート線22Gには、各反射光受光用のゲート線22Gに反射光受光用のスイッチング素子222をオン/オフするための制御信号を出力する反射光受光用のスキャン信号制御回路22Dが接続されている。図4では、反射光受光用の信号検出回路22C及び反射光受光用のスキャン信号制御回路22Dをそれぞれ1つに簡略化して示しているが、例えば、反射光受光用の信号検出回路22C及び反射光受光用のスキャン信号制御回路22Dをそれぞれ複数設けて所定本毎に反射光受光用のソース線22S又は反射光受光用のゲート線22Gを接続してもよい。
【0075】
反射光受光用の信号検出回路22Cは、反射光受光用のソース線22S毎に、入力される電気信号を増幅する増幅回路を内蔵している。反射光受光用の信号検出回路22Cでは、各反射光受光用のソース線22Sより入力される電気信号を増幅回路により増幅し、ADC(アナログ・デジタル変換器)によりデジタル信号へ変換する。
【0076】
この反射光受光用の信号検出回路22C及び反射光受光用のスキャン信号制御回路22Dには、反射光受光用の信号検出回路22Cにおいて変換されたデジタル信号に対してノイズ除去などの所定の処理を施すとともに、反射光受光用の信号検出回路22Cに対して信号検出のタイミングを示す制御信号を出力し、反射光受光用のスキャン信号制御回路22Dに対してスキャン信号の出力のタイミングを示す制御信号を出力する反射光受光用の制御部22Eが接続されている。
【0077】
本実施形態の反射光受光用の制御部22Eは、マイクロコンピュータによって構成されており、CPU(中央処理装置)、ROM及びRAM、フラッシュメモリ等からなる不揮発性の記憶部を備える。反射光受光用の制御部22Eは、反射光受光用の信号検出回路22Cから入力された、各センサ素子20の電荷情報を示す電気信号に基づいて、照射された放射線が示す画像を生成する。
【0078】
本実施形態のウェアラブルセンサ1は、例えば、以下の製法により製造することができる。まず、IGZO-TFTを形成する。ウェアラブルセンサ1には、発光素子制御用のTFT(発光用のスイッチング素子211)、生体内反射光センサ制御用のTFT(反射光受光用のスイッチング素子222)が必要である。制御性向上のためにTFTの数を増やしてもよい。IGZOに替えて、LTSP、a-Siを用いてもよい。IGZO-TFTの場合でもトップゲートやダブルゲートのTFT構造にしてもよい。
【0079】
次いで、受光センサ(反射光受光部22)用のアノード電極及びカソード電極(反射光受光用の下部電極221A及び反射光受光用の上部電極221C)と、その間に挟まれたPINダイオード(反射光受光用の光電変換層221B)とを形成する。次いで、発光素子(発光部21)用の反射電極212と発光層213を形成する。
【0080】
ウェアラブルセンサ1は、各エレメント(各センサ素子20)にOLEDディスプレイを応用した発光素子(発光部21)と、Xセンサを応用した受光素子(反射光受光部22)と、を有する。複数のセンサ素子20は、ある程度の面積を持って高精細にアレイ状に配置される。全てのセンサ素子20のセンシング量を合算することで、生体内で散乱した光を効率よくセンシングできる。
【0081】
(実施形態2)
本実施形態では、本実施形態に特有の特徴について主に説明し、上記実施形態1と重複する内容については説明を省略する。本実施形態は、ウェアラブルセンサ1が、反射光受光部22に加えて発光光受光部を備えることを除いて、実施形態1と実質的に同じである。
【0082】
図5は、実施形態2のウェアラブルセンサの斜視模式図である。図6は、実施形態2のウェアラブルセンサの機能の一例を説明する模式図である。図7は、実施形態2のウェアラブルセンサの断面模式図である。図8は、実施形態2のウェアラブルセンサが備える発光光受光部の回路図の一例である。図6及び図7に示す実線矢印は発光部からの出射光を表し、破線矢印は、生体内を通過した光を表す。
【0083】
図5図8に示すように、本実施形態のウェアラブルセンサ1は、更に、発光部21から出射されて被験者の生体内を通過していない光の光量を測定する発光光受光部23を備える。ここで、生体センサを実現するには、発光素子(発光部21)から出射される光の光量と、生体内で反射した光の光量の差分の変化量を検知することが重要である。そのため、本実施形態のウェアラブルセンサ1は、センサ素子20毎に、生体内で反射した光を受光するためのセンサ(反射光受光部22)に加えて、発光素子(発光部21)の光量測定用のセンサ(発光光受光部23)を備える。このような態様とすることにより、生体内の変化をより的確に検知することが可能となる。
【0084】
本実施形態のウェアラブルセンサ1は、より具体的には、発光部21に対応するOLEDディスプレイを応用した発光素子と、反射光受光部22及び発光光受光部23に対応するX線センサを応用した半導体センサと、をアレイ状に配置することにより生体センサを実現し、上記課題を解決する。高精細発光素子及び受光素子をある程度の面積を持ったアレイ状に配置することで、生体内で反射した光を効率よく受光することができる。また個体によって異なる血管配置の違いによる影響も受け難いため、生体センサとしての精度と感度を向上させることができる。また、発光素子と半導体センサとをフレキシブル基材上に形成することで、ウェアラブル性が高められたデバイスを実現することができる。
【0085】
発光光受光部23は、発光部21から出射されて被験者の生体内を通過していない光の光量を測定する機能を有する。発光光受光部23は、発光光受光センサともいう。
【0086】
図7及び図8に示すように、発光光受光部23は、光を受けて電荷を発生し、発生した電荷を蓄積する発光光受光用のセンサ部231と、発光光受光用のセンサ部231に蓄積された電荷を読み出すための発光光受光用のスイッチング素子232と、を含む。
【0087】
図8に示すように、ウェアラブルセンサ1は、支持基板10上に、互いに平行に延設された複数の発光光受光用のゲート線23Gと、複数の発光光受光用のゲート線23Gと交差する方向に互いに平行に延設された複数の発光光受光用のソース線23Sと、を備え、複数の発光光受光用のゲート線23G及び複数の発光光受光用のソース線23Sは、各センサ素子20を区画するように全体として格子状に形成されている。複数の発光光受光用のゲート線23G及び複数の発光光受光用のソース線23Sの交点には、発光光受光用のスイッチング素子232が設けられている。発光光受光用のゲート線23Gは、発光光受光用のスイッチング素子232をオン/オフするための配線であり、発光光受光用のソース線23Sは、発光光受光用のセンサ部231に蓄積された電荷を読み出すため配線である。
【0088】
図7に示すように、発光光受光部23は、支持基板10側から順に、発光光受光用のスイッチング素子232と、発光光受光用のセンサ部231と、を有する。より具体的には、発光光受光部23は、支持基板10側から順に、発光光受光用のスイッチング素子232と、第1の絶縁膜241と、第2の絶縁膜242と、発光光受光用のセンサ部231と、第3の絶縁膜243と、第4の絶縁膜244と、第5の絶縁膜245と、を備える。
【0089】
発光光受光用のセンサ部231は、支持基板10側から順に、発光光受光用の下部電極231Aと、発光光受光用の光電変換層231Bと、発光光受光用の上部電極231Cと、を有する。発光光受光用のセンサ部231は、例えば、アノード電極及びカソード電極(発光光受光用の下部電極231A及び発光光受光用の上部電極231C)とその間に挟まれたPINダイオード(発光光受光用の光電変換層231B)とを有する。ここで、PINダイオード(P-intrinsic-N Diode)は、P型半導体とN型半導体のPN接合部の間に、電気抵抗の大きな真性半導体であるI型半導体が挟まれてあるシリコンダイオードである。
【0090】
発光光受光用のスイッチング素子232は、支持基板10側から順に、発光光受光用のゲート電極232Gと、ゲート絶縁膜240と、発光光受光用の半導体層232Cと、発光光受光用のドレイン電極232D及び発光光受光用のソース電極232Sとを有する。発光光受光用のスイッチング素子232としては、例えば、薄膜トランジスタが挙げられる。発光光受光用のスイッチング素子232はダブルゲート構造であることが好ましい。
【0091】
発光光受光用の半導体層232Cは、例えば、アモルファスシリコン、低温ポリシリコン、及び、インジウムガリウム亜鉛酸化物の少なくとも一つを含有する。発光光受光用の半導体層232Cは、低温ポリシリコン、及び、インジウムガリウム亜鉛酸化物の少なくとも一方を含むことがより好ましい。すなわち、発光光受光用の半導体層232Cは、LTPS又はIGZOを含むことがより好ましい。このような態様とすることにより、センシング特性を向上させることができる。発光光受光用の半導体層232Cは、オフリークの小さいIGZOを含むことが更に好ましい。
【0092】
発光光受光用のドレイン電極232Dは、コンタクトホール23CH1を介して発光光受光用の下部電極231Aと接続されている。発光光受光用のソース電極232Sは、コンタクトホール23CH2を介して、発光光受光用のソース線23Sと接続されている。
【0093】
平面視において、発光光受光部23の少なくとも一部は、発光部21と重畳することが好ましい。このような態様とすることにより、発光光受光部23が、発光部21から出射される光をより効果的に受光することが可能となり、反射光受光部22との測定結果を比較することで生体内の変化をより的確に検知することが可能となる。
【0094】
より具体的には、発光光受光部23が備える発光光受光用の光電変換層231Bの少なくとも一部は、発光部21が備える発光層213と重畳することが好ましい。このような態様とすることにより、発光光受光部23が、発光部21から出射される光をより効果的に受光することが可能となり、生体内の変化をより的確に検知することが可能となる。
【0095】
発光部21は、支持基板10側から順に、反射電極212及び発光層213を備え、発光光受光部23は、受光素子としての発光光受光用の光電変換層231Bを備え、ウェアラブルセンサ1は、支持基板10側から順に、発光光受光用の光電変換層231B、反射電極212及び発光層213を備え、平面視において、発光層213の少なくとも一部は、反射電極212を介さずに発光光受光用の光電変換層231Bと重畳することが好ましい。このような態様とすることにより、発光部21から出射された光の光量をより正確に測定することができる。
【0096】
平面視において、発光層213の面積の1%以上、20%以下は、反射電極212を介さずに発光光受光用の光電変換層231Bと重畳することが好ましい。
【0097】
発光部21は、支持基板10側から順に、反射電極212及び発光層213を備え、発光光受光部23は、受光素子としての発光光受光用の光電変換層231Bを備え、ウェアラブルセンサ1は、支持基板10側から順に、発光光受光用の光電変換層231B、反射電極212及び発光層213を備え、反射電極212は、平面視において、発光光受光用の光電変換層231Bと重畳する領域の少なくとも一部に開口部212Xが設けられていることが好ましい。このような態様とすることにより、発光部21から出射された光の光量をより正確に測定することができる。
【0098】
更に、発光光受光部23には、各発光光受光用のソース線23Sと並列に発光光受光用の共通電極配線23Aが設けられている。発光光受光用の共通電極配線23Aは、一端及び他端が並列に接続されており、一端が所定のバイアス電圧を供給する発光光受光用の電源23Bに接続されている。発光光受光用のセンサ部231は発光光受光用の共通電極配線23Aに接続されており、発光光受光用の共通電極配線23Aを介してバイアス電圧が印加されている。
【0099】
発光光受光用のゲート線23Gには、各発光光受光用のスイッチング素子232をスイッチングするための制御信号が流れる。このように制御信号が各発光光受光用のゲート線23Gに流れることによって、各発光光受光用のスイッチング素子232が スイッチング(オン/オフ)される。
【0100】
発光光受光用のソース線23Sには、各センサ素子20の発光光受光用のスイッチング素子232がオン状態の場合に、各センサ素子20に蓄積された電荷に応じた電気信号が流れる。より具体的には、各発光光受光用のソース線23Sには、当該発光光受光用のソース線23Sに接続されたセンサ素子20の何れかの発光光受光用のスイッチング素子232がオンされることにより蓄積された電荷量に応じた電気信号が流れる。
【0101】
各発光光受光用のソース線23Sには、各発光光受光用のソース線23Sに流れ出した電気信号を検出する発光光受光用の信号検出回路23Cが接続されている。また、各発光光受光用のゲート線23Gには、各発光光受光用のゲート線23Gに発光光受光用のスイッチング素子232をオン/オフするための制御信号を出力する発光光受光用のスキャン信号制御回路23Dが接続されている。図4では、発光光受光用の信号検出回路23C及び発光光受光用のスキャン信号制御回路23Dをそれぞれ1つに簡略化して示しているが、例えば、発光光受光用の信号検出回路23C及び発光光受光用のスキャン信号制御回路23Dをそれぞれ複数設けて所定本毎に発光光受光用のソース線23S又は発光光受光用のゲート線23Gを接続してもよい。
【0102】
発光光受光用の信号検出回路23Cは、発光光受光用のソース線23S毎に、入力される電気信号を増幅する増幅回路を内蔵している。発光光受光用の信号検出回路23Cでは、各発光光受光用のソース線23Sより入力される電気信号を増幅回路により増幅し、ADC(アナログ・デジタル変換器)によりデジタル信号へ変換する。
【0103】
この発光光受光用の信号検出回路23C及び発光光受光用のスキャン信号制御回路23Dには、発光光受光用の信号検出回路23Cにおいて変換されたデジタル信号に対してノイズ除去などの所定の処理を施すとともに、発光光受光用の信号検出回路23Cに対して信号検出のタイミングを示す制御信号を出力し、発光光受光用のスキャン信号制御回路23Dに対してスキャン信号の出力のタイミングを示す制御信号を出力する発光光受光用の制御部23Eが接続されている。
【0104】
本実施形態の発光光受光用の制御部23Eは、マイクロコンピュータによって構成されており、CPU(中央処理装置)、ROM及びRAM、フラッシュメモリ等からなる不揮発性の記憶部を備える。発光光受光用の制御部23Eは、発光光受光用の信号検出回路23Cから入力された、各センサ素子20の電荷情報を示す電気信号に基づいて、照射された放射線が示す画像を生成する。
【0105】
本実施形態のウェアラブルセンサ1は、例えば、以下の製法により製造することができる。まず、IGZO-TFTを形成する。ウェアラブルセンサ1には、発光素子制御用のTFT(発光用のスイッチング素子211)、生体内反射光センサ制御用のTFT(反射光受光用のスイッチング素子222)及び、発光光受光センサ制御用のTFT(発光光受光用のスイッチング素子232)の最低3つのTFTが必要である。制御性向上のためにTFTの数を増やしてもよい。IGZOに替えて、LTSP、a-Siを用いてもよい。IGZO-TFTの場合でもトップゲートやダブルゲートのTFT構造にしてもよい。
【0106】
次いで、受光センサ(反射光受光部22及び発光光受光部)用のアノード電極及びカソード電極(反射光受光用の下部電極221A及び反射光受光用の上部電極221C、並びに、発光光受光用の下部電極231A及び発光光受光用の上部電極231C)と、その間に挟まれたPINダイオード(反射光受光用の光電変換層221B、及び、発光光受光用の光電変換層231B)とを形成する。次いで、発光素子(発光部21)用の反射電極212と発光層213を形成する。この時、発光層213の直下に光が抜けるように、反射電極212に開口部212Xを設けておく。この部分の発光量を確保するために、開口部212Xに透明電極を形成しておいてもよい。
【0107】
ウェアラブルセンサ1は、各エレメント(各センサ素子20)にOLEDディスプレイを応用した発光素子(発光部21)と、Xセンサを応用した受光素子(反射光受光部22及び発光光受光部23)と、を有する。複数のセンサ素子20は、ある程度の面積を持って高精細にアレイ状に配置される。全てのセンサ素子20のセンシング量を合算することで、生体内で散乱した光を効率よくセンシングできる。
【0108】
ウェアラブルセンサ1は、各エレメント(各センサ素子20)にOLEDディスプレイを応用した発光素子(発光部21)と、Xセンサを応用した受光素子(反射光受光部22及び発光光受光部23)と、を有する。複数のセンサ素子20は、ある程度の面積を持って高精細にアレイ状に配置される。全てのセンサ素子20のセンシング量を合算することで、生体内で散乱した光を効率よくセンシングできる。
【0109】
本実施形態のウェアラブルセンサ1は、各発光素子(発光部21)の光量を測定するためのセンサ(反射光受光部22)と、生体内の反射光を測定するためのセンサ(発光光受光部23)の2種類のセンサを有する。2種類のセンサの差分の変化量をモニタリングすることで、生体内の変化を検知することができる。また、全てのセンサ素子20のセンシング量の合算することで、生体内で散乱した光を効率よくセンシングできる。更に、本手法を用いることで、OLEDディスプレイで必要であった各発光素子の発光量の制御(ムラ抑制)は不要であるため、TFT素子数を減らすことができ、ムラ抑制処理も不要となる。また、OLED発光素子が劣化しても、受光感度の低下を抑えることができる。
【0110】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明の効果を説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0111】
(実施例1)
本例のウェアラブルセンサ1は、上記実施形態1のウェアラブルセンサ1に対応する。本例のウェアラブルセンサ1は、被験者が装着するウェアラブルセンサであって、支持基板10と、支持基板10上に配置された複数のセンサ素子20と、を有し、複数のセンサ素子20は、それぞれ、OLED又は無機LEDである発光部21と、発光部21から出射されて被験者の生体内で反射した光の光量を測定する反射光受光部22と、を有する。本例のウェアラブルセンサ1は、受光感度を高めることができる。
【0112】
(実施例2)
本例のウェアラブルセンサ1は、上記実施形態2のウェアラブルセンサ1に対応する。本例のウェアラブルセンサ1は、実施形態1の構成に加えて、更に、発光部21から出射されて被験者の生体内を通過していない光の光量を測定する発光光受光部23を備える。本例のウェアラブルセンサ1は、受光感度を高めることができるとともに、生体内の変化をより的確に検知することが可能である。
【0113】
以上に示した本発明の各態様は、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜組み合わされてもよい。
【符号の説明】
【0114】
1:ウェアラブルセンサ
10:支持基板
20:センサ素子(画素)
21:発光部
21G、22G、23G:ゲート線
21S、22S、23S:ソース線
22:反射光受光部
22A、23A:共通電極配線
22B、23B:電源
22C、23C:信号検出回路
22D、23D:スキャン信号制御回路
22E、23E:制御部
23:発光光受光部
30:皮膚
31:血管
211、222、232:スイッチング素子
211C、222C、232C:半導体層
211D、222D、232D:ドレイン電極
211G、222G、232G:ゲート電極
211S、222S、232S:ソース電極
212:反射電極
212X:開口部
213:発光層
221、231:センサ部
221A、231A:下部電極
221B、231B:光電変換層
221C、231C:上部電極
240:ゲート絶縁膜
241、242、243、244、245:絶縁膜
310R:センサ
320R:発光源
300R:測定ユニット
340R:超音波ユニット


図1
図2
図3
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図10