(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155469
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】アキュムレータ
(51)【国際特許分類】
F25B 43/00 20060101AFI20241024BHJP
【FI】
F25B43/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023070208
(22)【出願日】2023-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内田 和秀
(72)【発明者】
【氏名】東山 匡志
(72)【発明者】
【氏名】土方 康種
(57)【要約】
【課題】容器の大型化を回避しつつ、液相冷媒が気相冷媒吸入口から吸入されることを抑制可能なアキュムレータを提供すること。
【解決手段】
アキュムレータは、気液二相冷媒が流入する流入空間Sを形成するとともに、流入する気液二相冷媒を気相冷媒と液相冷媒とに分離する容器20と、気液二相冷媒を流入空間内に流入させる気液冷媒流入口321と、気相冷媒を吸入して流入空間の外部へ導く気相冷媒吸入口41と、流入空間内を流れる液相冷媒の流れを妨げる抵抗部50と、を備える。容器は、気液冷媒流入口より上下方向の下側に、液相冷媒を貯留する液相貯留部211を有する。抵抗部は、気液冷媒流入口より上下方向の下側であって、且つ、液相貯留部より上下方向の上側に配置されており、上下方向の上側から下側に向かって流れる液相冷媒の流速を低下させるとともに液相冷媒を通過させる冷媒流路部51dを有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
気液二相冷媒を気相冷媒と液相冷媒とに分離するアキュムレータであって、
前記気液二相冷媒が流入する流入空間(S)を形成するとともに、流入する前記気液二相冷媒を前記気相冷媒と前記液相冷媒とに分離する容器(20)と、
前記気液二相冷媒を前記流入空間内に流入させる気液冷媒流入口(321)と、
前記気相冷媒を吸入して前記流入空間の外部へ導く気相冷媒吸入口(41)と、
前記流入空間内を流れる前記液相冷媒の流れを妨げる抵抗部(50)と、を備え、
前記容器は、前記気液冷媒流入口より上下方向の下側に、前記液相冷媒を貯留する液相貯留部(211)を有し、
前記抵抗部は、前記気液冷媒流入口より前記上下方向の下側であって、且つ、前記液相貯留部より前記上下方向の上側に配置されており、前記上下方向の上側から下側に向かって流れる前記液相冷媒の流速を低下させるとともに前記液相冷媒を通過させる冷媒流路部(51d、52s)を有するアキュムレータ。
【請求項2】
前記抵抗部は、前記流入空間における前記気液冷媒流入口側の上側空間と前記流入空間における前記液相貯留部側の下側空間とを連通させる空間を有する中空部材であって、
前記冷媒流路部は、前記空間によって構成されている請求項1に記載のアキュムレータ。
【請求項3】
前記抵抗部は、板厚方向が前記上下方向に位置付けられる板状部(51)を有するとともに、前記板状部を前記上下方向に貫通する複数の貫通穴(51d)を有し、
前記空間は、前記複数の貫通穴によって構成されており、
前記貫通穴は、前記上下方向に直交する断面形状が真円形状である請求項2に記載のアキュムレータ。
【請求項4】
前記抵抗部は、板厚方向が前記上下方向に位置付けられる板状部(51)を有するとともに、前記板状部を前記上下方向に貫通する複数の貫通穴(51d)を有し、
前記空間は、前記複数の貫通穴によって構成されており、
前記貫通穴は、前記上下方向に直交する断面形状が楕円形状である請求項2に記載のアキュムレータ。
【請求項5】
前記抵抗部は、板厚方向が前記上下方向に位置付けられる板状部(51)を有するとともに、前記板状部を前記上下方向に貫通する複数の貫通穴(51d)を有し、
前記空間は、前記複数の貫通穴によって構成されており、
前記貫通穴は、前記上下方向に直交する断面形状が、一対の対向する線分と一対の対向する円弧とが連なる形状である請求項2に記載のアキュムレータ。
【請求項6】
前記抵抗部は、板厚方向が前記上下方向に位置付けられる板状部(51)を有するとともに、前記板状部を前記上下方向に貫通する複数の貫通穴(51d)を有し、
前記空間は、前記複数の貫通穴によって構成されており、
前記貫通穴は、前記上下方向に直交する断面形状が、多角形状である請求項2に記載のアキュムレータ。
【請求項7】
前記抵抗部は、前記空間に綿状の抵抗部材(52a)を有し、
前記空間は、綿状の前記抵抗部材の隙間によって構成されている請求項2に記載のアキュムレータ。
【請求項8】
前記抵抗部は、前記空間に格子状に配列された複数の抵抗部材(52a)を有し、
前記空間は、格子状に配列された前記複数の抵抗部材の隙間によって構成されている請求項2に記載のアキュムレータ。
【請求項9】
前記抵抗部は、前記流入空間内に複数備えられている請求項2ないし8のいずれか1つに記載のアキュムレータ。
【請求項10】
複数の前記抵抗部は、該抵抗部が有する前記流入空間における前記上側空間と前記流入空間における前記下側空間とを連通させる前記空間の形状が互いに異なっている請求項9に記載のアキュムレータ。
【請求項11】
前記気相冷媒吸入口は、前記抵抗部より前記上下方向の上方に形成される請求項1ないし8のいずれか1つに記載のアキュムレータ。
【請求項12】
該アキュムレータは、吸い込んだ冷媒を圧縮して吐出する圧縮機(2)と、前記圧縮機から吐出された前記冷媒を凝縮する凝縮器(3)と、前記凝縮器から流出した前記冷媒を減圧する膨張弁(4)と、前記膨張弁で減圧された前記冷媒に吸熱させて前記冷媒を蒸発させる蒸発器(5)と、を備える冷凍サイクル(1)において、前記圧縮機と前記蒸発器との間に設けられており、
前記蒸発器から導出された前記気液二相冷媒の一部を、前記流入空間を迂回して前記圧縮機へ導くバイパス流路部(60)を備える請求項1に記載のアキュムレータ。
【請求項13】
前記蒸発器から導出された前記気液二相冷媒を前記流入空間内に導く気液冷媒導入部(30)を備え、
前記気液冷媒導入部は、前記抵抗部より前記上下方向の下側まで延びて配置されており、
前記バイパス流路部は、冷媒流れ上流側が、前記気液冷媒導入部における前記抵抗部より前記上下方向の下側に位置する部位に接続されている請求項12に記載のアキュムレータ。
【請求項14】
前記気液冷媒導入部は、一部が前記液相貯留部内まで延びて配置されており、
前記バイパス流路部は、冷媒流れ上流側が、前記気液冷媒導入部における前記液相貯留部内に位置する部位に接続されている請求項13に記載のアキュムレータ。
【請求項15】
前記蒸発器から導出された前記気液二相冷媒を前記流入空間内に導く気液冷媒導入部(30)を備え、
前記バイパス流路部は、冷媒流れ上流側が前記気液冷媒導入部に接続されており、前記気液冷媒導入部に接続される部位から冷媒流れ下流側に向かって延びる方向が、水平方向、または前記水平方向より前記上下方向の上側になっている請求項12に記載のアキュムレータ。
【請求項16】
前記蒸発器から導出された前記気液二相冷媒を前記流入空間内に導く気液冷媒導入部(30)を備え、
前記バイパス流路部は、冷媒流れ上流側が前記気液冷媒導入部に接続されており、
前記バイパス流路部における冷媒流れ方向に直交する方向の面積をバイパス流路面積とし、前記気液冷媒導入部における前記バイパス流路部が接続される部位の冷媒流れ方向に直交する方向の面積を冷媒流入流路面積としたとき、前記バイパス流路面積は、前記冷媒流入流路面積に等しい請求項12に記載のアキュムレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アキュムレータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、気液二相冷媒を気相冷媒と液相冷媒とに分離する容器の内部空間を上層と下層とに仕切る位置に、液相冷媒の液面の安定化のための傘状プレートが設けられたアキュムレータが知られている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1に記載のアキュムレータは、容器の内部空間に、分離された気相冷媒を吸入し、吸入した気相冷媒を圧縮機に導く冷媒吐出管を備えている。
【0003】
このアキュムレータでは、上層に導入された気液二相冷媒のうち、気相冷媒が上層から傘状プレートを回り込み、傘状プレートの下方に設けられた気相冷媒吸入口より冷媒吐出管に吸入される。そして、気相冷媒吸入口から吸入された気相冷媒は、冷媒吐出管を流れ圧縮機へ吐出される。また、このアキュムレータは、容器の内部空間の上層に導入された気液二相冷媒のうち分離された液相冷媒が容器の内面に沿って徐々に下層に流れ込むことで、液相冷媒の液面の安定化を保つ構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、発明者らの鋭意検討によれば、特許文献1に記載のアキュムレータにおいて、液相冷媒が容器の内面に沿って下層に流れ込み、流れ込んだ液相冷媒が液相冷媒の液面に衝突すると、液相冷媒の液面において液相冷媒の巻き上げが発生する虞がある。液相冷媒が巻き上がると、この巻き上がった液相冷媒が傘状プレートの下面に設けられた気相冷媒吸入口より吸入され、冷媒吐出管を介して圧縮機に流入する虞がある。
【0006】
このように、液相冷媒が巻き上がると、巻き上がった液相冷媒が気相冷媒吸入口から吸入される虞がある。すなわち、液相冷媒の巻き上げは、アキュムレータの気液分離性の悪化の要因となる。そして、アキュムレータの気液分離性の悪化に起因する液相冷媒の圧縮機への流入は、冷凍サイクル1の効率が悪化する要因となる。
【0007】
このため、発明者らは、巻き上がった液相冷媒が気相冷媒吸入口から吸入されることを回避するため、容器の上下方向の大きさを大きくして、液相冷媒の液面と気相冷媒吸入口との距離を充分に確保することを検討した。しかし、上下方向の大きさを大きくする容器の大型化は、アキュムレータ自体を大型化させる要因となり、好ましくない。
【0008】
本開示は、容器の大型化を回避しつつ、液相冷媒が気相冷媒吸入口から吸入されることを抑制可能なアキュムレータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、
気液二相冷媒を気相冷媒と液相冷媒とに分離するアキュムレータであって、
気液二相冷媒が流入する流入空間(S)を形成するとともに、流入する気液二相冷媒を気相冷媒と液相冷媒とに分離する容器(20)と、
気液二相冷媒を流入空間内に流入させる気液冷媒流入口(321)と、
気相冷媒を吸入して流入空間の外部へ導く気相冷媒吸入口(41)と、
流入空間内を流れる液相冷媒の流れを妨げる抵抗部(50)と、を備え、
容器は、気液冷媒流入口より上下方向の下側に、液相冷媒を貯留する液相貯留部(211)を有し、
抵抗部は、気液冷媒流入口より上下方向の下側であって、且つ、液相貯留部より上下方向の上側に配置されており、上下方向の上側から下側に向かって流れる液相冷媒の流速を低下させるとともに液相冷媒を通過させる冷媒流路部(51d、52s)を有する。
【0010】
これによれば、液相貯留部より上方に配置された気液冷媒流入口から流出された気液二相冷媒から分離された液相冷媒が上下方向の上側から下側に向かって流れる際の流れを抵抗部に衝突させることで、液相冷媒の流速を低減させることができる。そして、抵抗部によって流速が低減した液相冷媒を、冷媒流路孔を通過させて液相貯留部に貯留することができる。
【0011】
このため、液相冷媒を液相貯留部に貯留する際、貯留する液相冷媒が液相貯留部に貯留された液相冷媒の液面に衝突することで巻き上げることを抑制することができる。したがって、液相冷媒の液面と気相冷媒吸入口との距離を確保するために容器の上下方向の大きさを大きくすることなく、液相冷媒が気相冷媒吸入口から吸入されることを抑制することができる。
【0012】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1実施形態に係るアキュムレータを含んだ冷凍サイクルの構成を示す図である。
【
図2】第1実施形態に係るアキュムレータの断面図である。
【
図3】
図2に示すIII-III断面図であって、第1実施形態に係る抵抗部の断面図である。
【
図5】第2実施形態に係る抵抗部の断面図であって、第1実施形態の
図3に相当する図ある。
【
図6】第3実施形態に係る抵抗部の断面図であって、第1実施形態の
図3に相当する図ある。
【
図7】第3実施形態に係る抵抗部に形成された冷媒流路孔を示す図である。
【
図8】第4実施形態に係る抵抗部の断面図であって、第1実施形態の
図3に相当する図ある。
【
図10】第5実施形態に係る抵抗部の糸状体を省略した図である。
【
図11】第6実施形態に係る抵抗部の断面図であって、第6実施形態の
図3に相当する図ある。
【
図13】第7実施形態に係るアキュムレータの断面図である。
【
図14】第8実施形態に係るアキュムレータの断面図である。
【
図15】第9実施形態に係るアキュムレータを含んだ冷凍サイクルの構成を示す図である。
【
図16】第9実施形態に係るアキュムレータの断面図である。
【
図17】第10実施形態に係るアキュムレータの断面図である。
【
図18】第11実施形態に係るアキュムレータを含んだ冷凍サイクルの構成を示す図である。
【
図19】第11実施形態に係るアキュムレータの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の実施形態において、先行する実施形態で説明した事項と同一もしくは均等である部分には、同一の参照符号を付し、その説明を省略する場合がある。また、実施形態において、構成要素の一部だけを説明している場合、構成要素の他の部分に関しては、先行する実施形態において説明した構成要素を適用することができる。以下の実施形態は、特に組み合わせに支障が生じない範囲であれば、特に明示していない場合であっても、各実施形態同士を部分的に組み合わせることができる。
【0015】
(第1実施形態)
本実施形態のアキュムレータ10について、
図1~
図4を参照して説明する。本実施形態では、アキュムレータ10が電気自動車に搭載される車両用空調装置の
図1に示す冷凍サイクル1に適用される例について説明する。
図1に示すように、冷凍サイクル1は、圧縮機2と、凝縮器3と、膨張弁4と、蒸発器5と、アキュムレータ10とを備えている。冷凍サイクル1では、冷媒として、例えば、HFO系冷媒、具体的には、R1234yfを採用しており、圧縮機2から吐出された吐出冷媒の圧力が冷媒の臨界圧力を超えない蒸気圧縮式の亜臨界冷凍サイクルを構成している。なお、冷媒として、HFC系冷媒、例えば、R134aを用いてもよいし、自然冷媒、例えば、二酸化炭素等を用いてもよい。
【0016】
まず、冷凍サイクル1について説明する。
【0017】
圧縮機2は、冷媒を吸入して圧縮し、その圧縮した冷媒を吐出するものである。圧縮機2は、例えば、駆動源である不図示の電動モータおよび当該電動モータによって駆動する吐出容量が固定された不図示の固定容量型圧縮機構を有する電動型圧縮機である。圧縮機2は、電動モータの回転数を調整することにより冷媒吐出能力を調整することができる。圧縮機2は、圧縮した高温高圧の気相冷媒を凝縮器3へ吐出する。
【0018】
凝縮器3は、圧縮機2から吐出された気相冷媒を外気と熱交換することによって冷却して凝縮する熱交換器である。凝縮器3は、圧縮機2から吐出された気相冷媒を凝縮して液相冷媒にして膨張弁4へ導出する。
【0019】
膨張弁4は、凝縮器3から流出する冷媒を減圧膨張させる減圧装置である。膨張弁4は、冷媒を減圧・膨張させて凝縮器3から流出された液相冷媒を低温低圧の気液二相状態の気液二相冷媒にして蒸発器5に供給するとともに、その気液二相冷媒の冷媒流量を調整する。膨張弁4は、例えば、オリフィスまたはノズルのような固定絞り、あるいは適宜の可変絞りで構成される。
【0020】
蒸発器5は、図示しない空調ケース内に配置されており、空調ケース内を流れる空気を冷却するエバポレータである。蒸発器5は、蒸発器5内を流れる気液二相冷媒が蒸発する際の蒸発潜熱を利用して、空調ケース内を流れる空気から吸熱してこの空気を冷却する。蒸発器5で冷却された空気は、不図示のヒータコアで温度調整されて車室内へ吹き出される。また、蒸発器5を通過した気液二相冷媒は、アキュムレータ10に流入する。蒸発器5およびアキュムレータ10は、第1冷媒配管6によって接続されている。
【0021】
アキュムレータ10は、蒸発器5から導入された気液二相冷媒を、気相冷媒と液相冷媒とに分離して冷凍サイクル1内の余剰の液相冷媒を貯留するとともに、気相冷媒を圧縮機2へ供給する気液分離器である。アキュムレータ10は、冷凍サイクル1において、蒸発器5と圧縮機2との間に配置されている。また、アキュムレータ10は、貯留する液相冷媒中に溶け込んでいる潤滑用オイルを圧縮機2へ吸入させる機能も有する。アキュムレータ10および圧縮機2は、第2冷媒配管7によって接続されている。
【0022】
次に、本実施形態のアキュムレータ10の詳細について、
図2を参照して説明する。
【0023】
図2に示すように、アキュムレータ10は、容器20、気液冷媒導入部30、気相冷媒排出部40および抵抗部50などを備えている。なお、
図2に記載した上下方向を示す矢印は、アキュムレータ10を車両に搭載した際のアキュムレータ10の姿勢の上下方向、すなわち天地方向を示している。以下、上下方向における上側に向かう方向を単に上方、上下方向における下側に向かう方向を単に下方と示す。
【0024】
容器20は、内部に流入した気液二相冷媒を、気相冷媒と液相冷媒とに分離して貯留するものである。容器20は、有底円筒形状の容器本体21と、この容器本体21の開口側である上端部を塞ぐ蓋部22と、を有する。容器本体21および蓋部22は、例えば、金属部材で形成されている。容器20は、容器本体21の上端部が蓋部22と溶接固定されて塞がれている。
【0025】
容器本体21は、気液二相冷媒が流入する流入空間Sを形成する圧力タンクである。容器本体21は、流入する気液二相冷媒から分離された気相冷媒を流入空間Sの上方部分に留めるとともに、気液二相冷媒から分離された液相冷媒を流入空間Sの下方部分に留める。容器本体21は、下方部分に液相冷媒を貯留する液相貯留部211を有する。液相貯留部211には、液相冷媒とともに冷凍サイクル1を循環する潤滑用オイルが液相冷媒に溶け込んだ状態で貯留されている。また、容器本体21は、液相貯留部211内に抵抗部50を収容している。なお、容器本体21の形状は、円筒形状に限定されず、角筒形状であってもよい。
【0026】
蓋部22は、容器本体21の開口部を閉塞する閉塞部であって、上下方向が板厚方向である板状に形成されている。蓋部22には、気液冷媒導入部30が挿入される導入開口部221と、気相冷媒排出部40が挿入される排出開口部222と、気相冷媒排出部40に液相冷媒が流入することを抑制する内壁部223と、が形成されている。導入開口部221および排出開口部222は、蓋部22を上下方向に貫通して形成されている。蓋部22は、導入開口部221に気液冷媒導入部30が挿入され、排出開口部222に気相冷媒排出部40が挿入されている。
【0027】
内壁部223は、蓋部22の下方側の面から下方に向かって突出して形成されている。内壁部223は、排出開口部222と後述の気液冷媒流入口321との間を遮る位置において、上下方向における当該気液冷媒流入口321の位置より下方まで延びて形成されている。これにより、流入空間Sは、排出開口部222と気液冷媒流入口321との間の空間が内壁部223によって遮られる。
【0028】
気液冷媒導入部30は、蒸発器5を通過した気液二相冷媒をアキュムレータ10の流入空間S内に導く冷媒流路を形成する冷媒流路部である。気液冷媒導入部30は、冷媒流れ上流側が蒸発器5に接続される第1冷媒配管6に接続されており、冷媒流れ下流側がアキュムレータ10の蓋部22に接続されている。具体的に、気液冷媒導入部30は、冷媒流れ下流側が抵抗部50を貫通して抵抗部50より下方まで延び、液相貯留部211内まで延びて配置されている。
【0029】
気液冷媒導入部30は、第1冷媒配管6に接続される筒状の内側導入部31と、流入空間S内において内側導入部31の周囲を囲む筒状の外側導入部32とを有する二重配管構造となっている。内側導入部31および外側導入部32は、流入空間S内において上下方向に沿って延びる直線状に形成されている。内側導入部31および外側導入部32は、それぞれの中心軸が同軸となるように配置されている。
【0030】
内側導入部31は、冷媒流れ上流側および冷媒流れ下流側のいずれも開放された円筒形状であって、蒸発器5を通過した気液二相冷媒が内部を流通可能に形成されている。内側導入部31は、導入開口部221に挿入されており、下方端部が容器本体21の底側から離れた位置に位置付けられている。内側導入部31は、下方部分が上下方向において液相貯留部211に重なる位置まで下方に延びている。すなわち、内側導入部31は、少なくとも一部が液相冷媒に漬かる位置に位置付けられている。
【0031】
外側導入部32は、上方側が開口し、下方側が閉塞する有底円筒形状であって、流入空間S内の内側導入部31における上方部分を除く周囲を囲んでいる。また、外側導入部32は、上方端部が蓋部22から離れ、底側が容器本体21の底部に固定されている。このように形成される内側導入部31の周囲を囲む外側導入部32によって、内側導入部31の外周部と外側導入部32の内周部との間には、気液二相冷媒が流通する冷媒流路が形成される。外側導入部32は、上方端部に、気液二相冷媒を流入空間S内に流入させる気液冷媒流入口321を有する。
【0032】
このように形成される気液冷媒導入部30では、蒸発器5を通過した気液二相冷媒が内側導入部31内を上方側から下方側に向かって流れ、下方端部から内側導入部31の外部へ排出される。内側導入部31から排出された気液二相冷媒は、折り返すように内側導入部31の外周部と外側導入部32の内周部との間の冷媒流路を流れた後、外側導入部32の上方端部の気液冷媒流入口321から流入空間S内に流出される。
【0033】
流入空間S内に流出された気液二相冷媒は、流入空間S内において気相冷媒と液相冷媒に分離される。気相冷媒は、流入空間Sの上方に留まる。液相冷媒は、流入空間S内を下方に向かって流れ、液相貯留部211に貯留される。
【0034】
気相冷媒排出部40は、アキュムレータ10において気液二相冷媒から分離された気相冷媒を圧縮機2に導く冷媒流路を形成する冷媒流路部である。気相冷媒排出部40は、冷媒流れ上流側がアキュムレータ10の蓋部22に接続されており、冷媒流れ下流側が第2冷媒配管7に接続されている。具体的に、気相冷媒排出部40は、冷媒流れ上流側が蓋部22の排出開口部222に挿入されている。気相冷媒排出部40は、下方端部に、流入空間Sの上方に留まる気相冷媒を吸入して流入空間Sの外部へ導く気相冷媒吸入口41を有する。
【0035】
抵抗部50は、アキュムレータ10において気液二相冷媒から分離された液相冷媒の流れを妨げるものである。抵抗部50は、気液冷媒流入口321および気相冷媒吸入口41より上下方向の下側であって、且つ、液相貯留部211より上下方向の上側の位置に配置されている。具体的に、抵抗部50は、液相貯留部211に液相冷媒が最も多く貯留された状態の液相冷媒の液面Lよりも上方となる位置に位置付けられている。換言すれば、抵抗部50は、液相貯留部211に貯留された液相冷媒の冷媒量に限られず、液相冷媒に漬からない位置に位置付けられている。そして、抵抗部50は、抵抗部50が設けられる位置の流入空間S内全体を覆っており、流入空間Sを上下方向に仕切っている。抵抗部50は、例えば、容器本体21の内周部に溶接などの接合手段によって固定されている。
【0036】
また、抵抗部50は、流入空間S内を上下方向における上側から下側に向かって流れる液相冷媒の流れを妨げて、当該液相冷媒の流速を低減可能に構成されている。抵抗部50は、流入空間Sにおける気液冷媒流入口321側の上側空間と流入空間Sにおける液相貯留部211側の下側空間とを連通させる空間を有する中空部材である。具体的に、本実施形態の抵抗部50は、
図2および
図3に示すように、上下方向が板厚方向の円盤形状に形成された板状部51を有する。
【0037】
板状部51は、上方側に上面51aを有するとともに、下方側に下面51bを有する。また、板状部51には、略中央に気液冷媒導入部30を貫通させるための導入貫通穴51cが形成されるとともに、液相冷媒を通過させるための複数の冷媒流路孔51dが形成されている。導入貫通穴51cおよび冷媒流路孔51dは、板状部51を上面51aから下面51bに至るまで上下方向に貫通して形成されている。すなわち、冷媒流路孔51dは、流入空間Sにおける気液冷媒流入口321側の上側空間と流入空間Sにおける液相貯留部211側の下側空間とを連通させる空間である。
【0038】
これら複数の冷媒流路孔51dは、
図3に示すように、上下方向に直交する断面形状が真円形状であって、互いの内径が等しく形成されている。また、複数の冷媒流路孔51dは、板状部51の全体に亘って形成されており、互いの間隔が等間隔となるように配列されている。具体的に、複数の冷媒流路孔51dは、直線上に並ぶ一群の穴と、当該直線上に並ぶ一群の穴に交差して直線上に並ぶ一群の穴とが規則的に組み合わされて配列されている。なお、真円形状は、製造誤差等の僅かなばらつき等によって発生する歪みを含むものであってもよい。本実施形態では、複数の冷媒流路孔51dが冷媒流路部として機能する。
【0039】
また、複数の冷媒流路孔51dは、互いの間隔が等間隔とならないように配列されていてもよい。例えば、複数の冷媒流路孔51dは、抵抗部50の中心に向かうほど上面51aにおける冷媒流路孔51dが占める割合が少なくなるように形成されていてもよい。また、複数の冷媒流路孔51dは、抵抗部50の中心に向かうほど上面51aにおける冷媒流路孔51dが占める割合が多くなるように形成されていてもよい。また、複数の冷媒流路孔51dは、互いの間隔が不均一となるように配列されていてもよい。
【0040】
そして、複数の冷媒流路孔51dは、それぞれの内径が異なって形成されていてもよい。例えば、複数の冷媒流路孔51dは、抵抗部50の中心に向かうほど冷媒流路孔51dの内径が大きくなるように形成されていてもよいし、抵抗部50の中心に向かうほど冷媒流路孔51dの内径が小さくなるように形成されていてもよい。
【0041】
本実施形態の抵抗部50は、例えば、アルミなどの金属で形成された円盤部材にパンチング加工などの穴あけ加工を行うことによって形成することができる。ただし、抵抗部50の部材は、アルミに限定されるものでなく、アルミ以外の金属、例えば、ステンレスで形成されていてもよいし、金属とは異なる部材、例えば、樹脂で形成されていてもよい。
【0042】
このような抵抗部50を備える本実施形態のアキュムレータ10の抵抗部50の効果について、
図4に示す抵抗部50を備えない比較用の比較アキュムレータ100を用いて説明する。比較アキュムレータ100は、
図4に示すように、本実施形態のアキュムレータ10の容器本体21に相当する比較容器本体210および本実施形態のアキュムレータ10の気液冷媒導入部30に相当する比較気液冷媒導入部300を有する。比較気液冷媒導入部300は、本実施形態のアキュムレータ10の内側導入部31および外側導入部32それぞれに相当する比較内側導入部310および比較外側導入部320を有する。
【0043】
比較アキュムレータ100は、比較容器本体210が容器本体21の上下方向の大きさよりも大きくなっている。また、比較容器本体210の上下方向の大きさが大きくなるにともない、比較内側導入部310および比較外側導入部320の上下方向の大きさが内側導入部31および外側導入部32それぞれより大きくなっている。
【0044】
そして、このように形成される比較アキュムレータ100では、蒸発器5を通過した気液二相冷媒が比較アキュムレータ100内に流入されると、気液二相冷媒が比較内側導入部310内を上方側から下方側に向かって流れる。そして、比較内側導入部310の下方端部から比較内側導入部310の外部へ排出された気液二相冷媒は、折り返すように比較内側導入部310の外周部と比較外側導入部320の内周部との間の冷媒流路を流れる。その後、気液二相冷媒は、比較外側導入部320の上方端部の気液冷媒流入口321から流入空間S内に流出されて、流入空間S内において気相冷媒と液相冷媒に分離される。液相冷媒は、流入空間S内を下方に向かって流れ、液相貯留部211に貯留される。
【0045】
ところで、液相冷媒が流入空間S内を上方か下方に向かって流れ液相貯留部211に貯留された液相冷媒の液面Lに衝突すると、液相冷媒の巻き上げが発生する虞がある。液相冷媒が巻き上がると、この巻き上がった液相冷媒が気相冷媒吸入口41より吸入され、気相冷媒排出部40を介して圧縮機2へ流入する虞がある。比較アキュムレータ100は、気液二相冷媒を気相冷媒と液相冷媒とに分離するものであるところ、このような液相冷媒の気相冷媒吸入口41への吸入は、比較アキュムレータ100の気液分離性の確保の観点から好ましくない。気液分離性が悪化すると、冷凍サイクル1の効率が悪化する要因となるためである。
【0046】
このため、比較容器本体210は、上下方向の大きさを本実施形態のアキュムレータ10の容器本体21の上下方向の大きさより大きくすることで、液相貯留部211に貯留された液相冷媒の液面Lと気相冷媒吸入口41との距離を充分に確保している。すなわち、比較容器本体210は、巻き上がった液相冷媒が気相冷媒吸入口41から吸入され難い構成となっている。しかし、比較容器本体210の上下方向の大型化は、比較アキュムレータ100自体を大型化させる要因となり、好ましくない。
【0047】
また、比較容器本体210の上下方向の大きさを大きくするにともない、比較気液冷媒導入部300の上下方向の大きさも大きくなっている。これにより、気液二相冷媒が比較気液冷媒導入部300を流れる際に発生する圧力損失が、気液冷媒導入部30を流れる際に発生する圧力損失より大きくなるため、好ましくない。
【0048】
これに対して、本実施形態のアキュムレータ10は、流入空間S内を流れる液相冷媒の流れを妨げる抵抗部50を備えている。抵抗部50は、気液冷媒流入口321より上下方向の下側であって、且つ、液相貯留部211より上下方向の上側に配置されている。そして、抵抗部50は、液相冷媒の流速を低下させるとともに、液相冷媒を通過させる複数の冷媒流路孔51dが形成されている。
【0049】
これによれば、液相貯留部211より上方に配置された気液冷媒流入口321から流出された気液二相冷媒から分離された液相冷媒が上方から下方に向かって流れる際の流れを抵抗部50に衝突させることで、液相冷媒の流速を低減させることができる。そして、抵抗部50によって流速が低減した液相冷媒を、冷媒流路孔51dを通過させて液相貯留部211に貯留することができる。
【0050】
このため、この上方から下方に向かって流れる液相冷媒を液相貯留部211に貯留する際、貯留する液相冷媒が液相貯留部211に貯留された液相冷媒の液面Lに衝突することで巻き上げることを抑制することができる。したがって、液相冷媒の液面Lと気相冷媒吸入口41との距離を確保するために容器本体21の上下方向の大きさを大きくすることなく、液相冷媒が気相冷媒吸入口41から吸入されることを抑制することができる。すなわち、アキュムレータ10の気液分離性を確保することができ、液相冷媒が気相冷媒排出部40を介して圧縮機2へ流入し難くなる。これにより、冷凍サイクル1の効率を向上させることができる。
【0051】
また、上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0052】
(1)上記実施形態では、気相冷媒吸入口41は、抵抗部50より上下方向の上方に形成されている。
【0053】
ところで、流入空間S内に存在する気相冷媒は、液相貯留部211から離れた位置に存在する気相冷媒ほど気相冷媒の渇き度が高く、これに対して、液相貯留部211に近い位置に存在する気相冷媒ほど気相冷媒の渇き度が低くなる。そして、圧縮機2へ流出させる気相冷媒は、圧縮機2の構成部品の保護の観点から渇き度が高いほど好ましい。
【0054】
このため、気相冷媒吸入口41を抵抗部50より上方に設けることによって、気相冷媒吸入口41を抵抗部50より下方に設ける構成に比較して、圧縮機2へ流出させる気相冷媒の渇き度を高くすることができる。
【0055】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について、
図5を参照して説明する。本実施形態では、抵抗部50に形成される冷媒流路孔51dの形状が第1実施形態と相違している。これ以外は、第1実施形態と同様である。このため、本実施形態では、第1実施形態と異なる部分について主に説明し、第1実施形態と同様の部分について説明を省略することがある。
【0056】
図5に示すように、本実施形態の複数の冷媒流路孔51dは、上下方向に直交する断面形状が楕円形状に形成されている。冷媒流路孔51dは、所定の方向に延びる長径および当該所定の方向に直交する短径を有する。また、複数の冷媒流路孔51dは、板状部51の全体に亘って形成されており、それぞれの形状が等しく、互いの間隔が等間隔となるように配列されている。
【0057】
なお、複数の冷媒流路孔51dは、それぞれの形状が互いに異なって形成されていてもよい。例えば、複数の冷媒流路孔51dは、互いの長径および短径のうちのいずれか一方または両方がそれぞれ異なって形成されていてもよい。また、複数の冷媒流路孔51dは、一部の冷媒流路孔51dの形状が等しく、残る冷媒流路孔51dの形状が異なっていてもよい。すなわち、複数の冷媒流路孔51dのうちのいずれか複数は、それぞれの長径および短径が等しく、残りがそれぞれの長径および短径のうち、いずれか一方または両方が互いに異なって形成されていてもよい。
【0058】
その他の構成は、第1実施形態と同様である。本実施形態のアキュムレータ10は、第1実施形態と同様または均等となる構成から奏される作用効果を第1実施形態と同様に得ることができる。
【0059】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について、
図6を参照して説明する。本実施形態では、抵抗部50に形成される冷媒流路孔51dの形状が第1実施形態と相違している。これ以外は、第1実施形態と同様である。このため、本実施形態では、第1実施形態と異なる部分について主に説明し、第1実施形態と同様の部分について説明を省略することがある。
【0060】
図6および
図7に示すように、本実施形態の複数の冷媒流路孔51dは、上下方向に直交する断面形状が、一対の対向する線分と一対の対向する円弧とが連なる形状に形成されている。具合的に、冷媒流路孔51dは、上下方向に直交する断面形状が、対向する同じ長さの線分と、対向する同じ長さの円弧とが連なっている。円弧は、円弧の中心から円弧の一方側端部まで延びる仮想の直線と、円弧の中心から円弧の他方側の端部まで延びる仮想の直線とによって規定される角度が180°より小さくなるように形成されている。
【0061】
ここで、
図7に示すように、冷媒流路孔51dを形成する一対の線分が延びる方向を第1方向D1、第1方向D1に直交する方向を第2方向D2とする。冷媒流路孔51dは、第1方向D1の大きさが第2方向D2の大きさに比較して大きく形成されている。
【0062】
なお、円弧は、円弧の中心から円弧の一方側端部まで延びる仮想の直線と、円弧の中心から円弧の他方側の端部まで延びる仮想の直線とによって規定される角度が180°となるように形成されていてもよい。この場合、冷媒流路孔51dは、長円形状となる。すなわち、冷媒流路孔51dは、上下方向に直交する断面形状が、小判形状であってもよい。また、冷媒流路孔51dは、第1方向D1の大きさが第2方向D2の大きさに比較して小さく形成されていてもよい。また、複数の冷媒流路孔51dは、それぞれの形状が互いに異なって形成されていてもよい。例えば、複数の冷媒流路孔51dのうちのいずれか複数は、第1方向D1の大きさが第2方向D2の大きさに比較して大きく形成され、残りの複数は第1方向D1の大きさが第2方向D2の大きさに比較して小さく形成されていてもよい。
【0063】
その他の構成は、第1実施形態と同様である。本実施形態のアキュムレータ10は、第1実施形態と同様または均等となる構成から奏される作用効果を第1実施形態と同様に得ることができる。
【0064】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態について、
図8を参照して説明する。本実施形態では、抵抗部50に形成される冷媒流路孔51dの形状が第1実施形態と相違している。これ以外は、第1実施形態と同様である。このため、本実施形態では、第1実施形態と異なる部分について主に説明し、第1実施形態と同様の部分について説明を省略することがある。
【0065】
図8に示すように、本実施形態の複数の冷媒流路孔51dは、上下方向に直交する断面形状が多角形状に形成されている。具体的に、冷媒流路孔51dは、上下方向に直交する断面形状が四角形状であって、略正方形状に形成されている。
【0066】
なお、冷媒流路孔51dは、上下方向に直交する断面形状が四角形状とは異なる多角形状に形成されていてもよい。例えば、冷媒流路孔51dは、上下方向に直交する断面形状が三角形状に形成されていてもよいし、五角形状、六角形状等に形成されていてもよい。また、複数の冷媒流路孔51dは、それぞれの形状が互いに異なって形成されていてもよい。例えば、複数の冷媒流路孔51dのうちのいずれか複数は、上下方向に直交する断面形状が四角形状に形成され、残りの複数は上下方向に直交する断面形状が六角形状に形成されていてもよい。また、複数の冷媒流路孔51dは、上下方向に直交する断面形状が互いに異なる複数の多角形状を3つ以上有する構成であってもよい。
【0067】
その他の構成は、第1実施形態と同様である。本実施形態のアキュムレータ10は、第1実施形態と同様または均等となる構成から奏される作用効果を第1実施形態と同様に得ることができる。
【0068】
(第5実施形態)
次に、第5実施形態について、
図9および
図10を参照して説明する。本実施形態では、抵抗部50の形状が第1実施形態と相違している。これ以外は、第1実施形態と同様である。このため、本実施形態では、第1実施形態と異なる部分について主に説明し、第1実施形態と同様の部分について説明を省略することがある。
【0069】
本実施形態の抵抗部50は、
図9に示すように、絡まった綿状の複数の抵抗部材52aと、複数の抵抗部材52aが配置される中空形状の配置部52sを有する筒部52bと、を有する。筒部52bは、上下方向に軸心を有し、上下方向の上方および下方が開口された円筒形状であって、中央に導入貫通穴51cを有するとともに、内部に配置部52sが形成されている。すなわち、抵抗部50は、流入空間Sにおける気液冷媒流入口321側の上側空間と流入空間Sにおける液相貯留部211側の下側空間とを連通させる空間である配置部52sを有する中空部材である。なお、
図9では、抵抗部材52aを説明するため、配置部52s内に収容された抵抗部材52aを実線で示している。
【0070】
また、筒部52bは、
図10に示すように、アルミなどの金属で形成された円筒形状部材の内側円筒部52dと、内側円筒部52dの周囲を囲む外側円筒部52eとを有する二重円環構造となっている。そして、筒部52bは、これら内側円筒部52dと外側円筒部52eとの間に複数の抵抗部材52aを収容する配置部52sを形成している。内側円筒部52dおよび外側円筒部52eは、配置部52sに収容された複数の抵抗部材52aによって互いの距離が一定となるように複数の抵抗部材52aに固定されている。
【0071】
なお、筒部52bの部材は、アルミに限定されるものでなく、アルミ以外の金属、例えば、ステンレスで形成されていてもよいし、金属とは異なる部材、例えば、樹脂で形成されていてもよい。
【0072】
複数の抵抗部材52aは、配置部52s内に充填されている。複数の抵抗部材52aは、例えば、アルミなどの金属で形成された針金部材で形成されており、これら複数の抵抗部材52aが互いに不規則的に絡み合って構成されている。また、複数の抵抗部材52a同士の間には隙間が形成されており、それぞれの抵抗部材52aの間の隙間を液相冷媒が流通可能となっている。すなわち、複数の抵抗部材52a同士の間の隙間は、流入空間Sにおける気液冷媒流入口321側の上側空間と流入空間Sにおける液相貯留部211側の下側空間とを連通させる空間である。本実施形態では、配置部52sにおける複数の抵抗部材52a同士の間に形成された隙間が冷媒流路部として機能する。
【0073】
これによれば、気液冷媒流入口321から流出された気液二相冷媒から分離された液相冷媒が上方から下方に向かって流れる際の流れを絡み合った複数の抵抗部材52aに衝突させることで、液相冷媒の流速を低減させることができる。そして、複数の抵抗部材52aによって流速を低減させた液相冷媒を、配置部52sにおける複数の抵抗部材52a同士の間に形成された隙間を通過させて液相貯留部211に貯留することができる。
【0074】
このため、この上方から下方に向かって流れる液相冷媒を液相貯留部211に貯留する際、貯留する液相冷媒が液相貯留部211に貯留された液相冷媒の液面Lに衝突することで巻き上げることを抑制することができる。したがって、液相冷媒の液面Lと気相冷媒吸入口41との距離を確保するために容器本体21の上下方向の大きさを大きくすることなく、液相冷媒が気相冷媒吸入口41から吸入されることを抑制することができる。すなわち、アキュムレータ10の気液分離性を確保することができ、液相冷媒が気相冷媒排出部40を介して圧縮機2へ流入し難くなる。これにより、冷凍サイクル1の効率を向上させることができる。
【0075】
(第6実施形態)
次に、第6実施形態について、
図11および
図12を参照して説明する。本実施形態では、抵抗部材52aの形状が第5実施形態と相違している。これ以外は、第5実施形態と同様である。このため、本実施形態では、第5実施形態と異なる部分について主に説明し、第5実施形態と同様の部分について説明を省略することがある。
【0076】
本実施形態の複数の抵抗部材52aは、
図11に示すように、直線状に形成されている。そして、複数の直線状の抵抗部材52aが格子状に形成されている。具体的に、複数の抵抗部材52aは、
図12に示すように、上下方向に沿う方向から視た形状が、所定方向に沿って直線上に延びる複数の第1抵抗部材52aaと、当該所定方向に直交する方向に沿って延びる複数の第2抵抗部材52abとが交差して構成された網目状に形成されている。そして、複数の第1抵抗部材52aaと複数の第2抵抗部材52abとによって囲まれる隙間を液相冷媒が流通可能となっている。すなわち、格子状に配列された複数の第1抵抗部材52aaと複数の第2抵抗部材52abとの間の隙間は、流入空間Sにおける気液冷媒流入口321側の上側空間と流入空間Sにおける液相貯留部211側の下側空間とを連通させる空間である。本実施形態では、配置部52sにおける複数の第1抵抗部材52aaと複数の第2抵抗部材52abとによって囲まれる隙間が冷媒流路部として機能する。
【0077】
本実施形態の複数の抵抗部材52aは、第1抵抗部材52aaと複数の第2抵抗部材52abとによって囲まれる隙間の上下方向に直交する断面形状が四角形状であって、略正方形となるように形成されている。複数の抵抗部材52aは、例えば、アルミなどの金属で形成された糸状の針金部材を網目状に編み込むことで形成することができる。
【0078】
なお、第1抵抗部材52aaと複数の第2抵抗部材52abとによって囲まれる隙間の上下方向に直交する断面形状は、正方形とは異なる形状であってもよく、例えば、菱形となるように形成されてもよい。この場合、アルミなどの金属で形成された薄板部材を、格子状に切れ目を入れながら押し広げることで、この切れ目を菱形状に形成することができる。
【0079】
これによれば、気液冷媒流入口321から流出された気液二相冷媒から分離された液相冷媒が上方から下方に向かって流れる際の流れを網目状の第1抵抗部材52aaおよび第2抵抗部材52abに衝突させることで、液相冷媒の流速を低減させることができる。そして、網目状の第1抵抗部材52aaおよび第2抵抗部材52abによって流速を低減させた液相冷媒を、配置部52sにおける複数の抵抗部材52a同士の間に形成された隙間を通過させて液相貯留部211に貯留することができる。
【0080】
このため、この上方から下方に向かって流れる液相冷媒を液相貯留部211に貯留する際、貯留する液相冷媒が液相貯留部211に貯留された液相冷媒の液面Lに衝突することで巻き上げることを抑制することができる。したがって、液相冷媒の液面Lと気相冷媒吸入口41との距離を確保するために容器本体21の上下方向の大きさを大きくすることなく、液相冷媒が気相冷媒吸入口41から吸入されることを抑制することができる。すなわち、アキュムレータ10の気液分離性を確保することができ、液相冷媒が気相冷媒排出部40を介して圧縮機2へ流入し難くなる。これにより、冷凍サイクル1の効率を向上させることができる。
【0081】
(第7実施形態)
次に、第7実施形態について、
図13を参照して説明する。本実施形態では、抵抗部50の数量が第1実施形態と相違している。これ以外は、第1実施形態と同様である。このため、本実施形態では、第1実施形態と異なる部分について主に説明し、第1実施形態と同様の部分について説明を省略することがある。
【0082】
図13に示すように、本実施形態のアキュムレータ10は、流入空間S内に2つの抵抗部50が設けられている。2つの抵抗部50は、上下方向に所定の間隔を空けて設けられている。これら2つの抵抗部50は、いずれも気液冷媒流入口321および気相冷媒吸入口41より上下方向の下側であって、且つ、液相貯留部211より上下方向の上側の位置に配置されている。換言すれば、2つの抵抗部50は、いずれも液相貯留部211に貯留された液相冷媒の冷媒量に限られず、液相冷媒に漬からない位置に位置付けられている。また、2つの抵抗部50は、それぞれに形成された冷媒流路孔51dが上下方向に重ならないように配置されている。
【0083】
なお、2つの抵抗部50は、それぞれに形成された冷媒流路孔51dが上下方向に重なるように配置されていてもよい。また、抵抗部50は、流入空間S内に3つ以上設けられていてもよい。
【0084】
これによれば、気液冷媒流入口321から流出された気液二相冷媒から分離された液相冷媒が上方から下方に向かって流れる際の流れを2つの抵抗部50のうちの上方の抵抗部50の上面51aに衝突させて液相冷媒の流速を低減させることができる。さらに、上方の抵抗部50の冷媒流路孔51dを通過させた液相冷媒を、下方の抵抗部50の上面51aに衝突させることで、さらに液相冷媒の流速を低減させることができる。そして、下方の抵抗部50によってさらに流速が低減した液相冷媒を、下方の抵抗部50の冷媒流路孔51dを通過させて液相貯留部211に貯留することができる。
【0085】
このため、この上方から下方に向かって流れる液相冷媒を液相貯留部211に貯留する際、貯留する液相冷媒が液相貯留部211に貯留された液相冷媒の液面Lに衝突することで巻き上げることをさらに抑制することができる。したがって、液相冷媒の液面Lと気相冷媒吸入口41との距離を確保するために容器本体21の上下方向の大きさを大きくすることなく、液相冷媒が気相冷媒吸入口41から吸入されることを抑制することができる。すなわち、アキュムレータ10の気液分離性を確保することができ、液相冷媒が気相冷媒排出部40を介して圧縮機2へ流入し難くなる。これにより、冷凍サイクル1の効率を向上させることができる。
【0086】
(第8実施形態)
次に、第8実施形態について、
図14を参照して説明する。本実施形態では、抵抗部50の構成が第7実施形態と相違している。これ以外は、第7実施形態と同様である。このため、本実施形態では、第1実施形態と異なる部分について主に説明し、第7実施形態と同様の部分について説明を省略することがある。
【0087】
図14に示すように、本実施形態のアキュムレータ10は、流入空間S内に2つの抵抗部50が設けられている。そして、2つの抵抗部50は、それぞれの構成が異なっている。具体的に、2つの抵抗部50は、上方の抵抗部50が第1実施形態で説明した構成のものが採用されており、下方の抵抗部50が第5実施形態で説明した構成のものが採用されている。
【0088】
すなわち、2つの抵抗部50のうちの上方の抵抗部50は、上下方向が板厚方向の円盤形状であって、上下方向に直交する断面形状が真円形状の冷媒流路孔51dを複数有する。また、2つの抵抗部50のうちの下方の抵抗部50は、上下方向に軸心を有する円筒形状であって、絡まった糸状の複数の抵抗部材52aと、複数の抵抗部材52aを収容する中空形状の配置部52sを有する筒部52bと、を有する。このため、本実施形態では、2つの抵抗部50は、それぞれに形成される流入空間Sにおける気液冷媒流入口321側の上側空間と流入空間Sにおける液相貯留部211側の下側空間とを連通させる空間の形状が互いに異なっている。換言すれば、2つの抵抗部50は、それぞれに形成される冷媒流路部の形状が互いに異なっている。
【0089】
なお、2つの抵抗部50は、上記構成に限定されず、それぞれに形成される冷媒流路部の形状が異なるのであれば、上方の抵抗部50が第1実施形態で説明した構成とは異なるものが採用されてもよい。また、下方の抵抗部50が第5実施形態で説明した構成とは異なるものが採用されてもよい。
【0090】
これによれば、気液冷媒流入口321から流出された気液二相冷媒から分離された液相冷媒が上方から下方に向かって流れる際の流れを2つの抵抗部50のうちの上方の抵抗部50の上面51aに衝突させて液相冷媒の流速を低減させることができる。さらに、上方の抵抗部50の冷媒流路孔51dを通過させた液相冷媒を、下方の抵抗部50の抵抗部材52aに衝突させることで、さらに液相冷媒の流速を低減させることができる。そして、下方の抵抗部50によってさらに流速が低減した液相冷媒を、配置部52sにおける複数の抵抗部材52a同士の間に形成された隙間を通過させて液相貯留部211に貯留することができる。
【0091】
このため、この上方から下方に向かって流れる液相冷媒を液相貯留部211に貯留する際、貯留する液相冷媒が液相貯留部211に貯留された液相冷媒の液面Lに衝突することで巻き上げることをさらに抑制することができる。したがって、液相冷媒の液面Lと気相冷媒吸入口41との距離を確保するために容器本体21の上下方向の大きさを大きくすることなく、液相冷媒が気相冷媒吸入口41から吸入されることを抑制することができる。すなわち、アキュムレータ10の気液分離性を確保することができ、液相冷媒が気相冷媒排出部40を介して圧縮機2へ流入し難くなる。これにより、冷凍サイクル1の効率を向上させることができる。
【0092】
(第9実施形態)
次に、第9実施形態について、
図15および
図16を参照して説明する。本実施形態では、アキュムレータ10がバイパス流路部60を有している点が第1実施形態と相違している。これ以外は、第1実施形態と同様である。このため、本実施形態では、第1実施形態と異なる部分について主に説明し、第1実施形態と同様の部分について説明を省略することがある。
【0093】
図15および
図16に示すように、本実施形態のアキュムレータ10は、気液冷媒導入部30と第2冷媒配管7とを接続するバイパス流路部60を有する。バイパス流路部60は、蒸発器5から導出された気液二相冷媒の一部を、流入空間Sを迂回して圧縮機2へ導くものである。
【0094】
バイパス流路部60は、冷媒流れ上流側が気液冷媒導入部30の外側導入部32に接続されている。具体的に、バイパス流路部60は、冷媒流れ上流側が、外側導入部32における抵抗部50より下方に位置する部位であって、液相貯留部211内に位置する部位に接続されている。すなわち、バイパス流路部60は、液相貯留部211に液相冷媒が最も少なく貯留された状態の液相冷媒の液面Lよりも下方となる位置に位置付けられている。換言すれば、バイパス流路部60は、液相貯留部211に貯留された液相冷媒の冷媒量に限られず、液相冷媒に漬かる位置に位置付けられている。
【0095】
そして、バイパス流路部60は、冷媒流れ下流側が第2冷媒配管7に接続されている。このバイパス流路部60は、内側導入部31の外周部と外側導入部32の内周部との間の冷媒流路および第2冷媒配管7内の冷媒流路を連通させる。
【0096】
本実施形態のバイパス流路部60は、外側導入部32から水平方向に沿って延びて形成されており、容器本体21を貫通して容器本体21の外側まで延びている。すなわち、バイパス流路部60における外側導入部32から延びる方向をバイパス方向としたとき、バイパス方向は、水平方向に沿っている。なお、バイパス方向は、製造誤差等の僅かなばらつき等によって発生する傾きを含むものであってもよく、バイパス流路部60は、水平方向から僅かに傾いて延びて形成されていてもよい。
【0097】
また、バイパス流路部60の冷媒流れ方向に直交する断面の断面積が気液冷媒導入部30におけるバイパス流路部60が接続される部位の冷媒流れ方向に直交する断面の断面積と略等しくなっている。具体的に、バイパス流路部60の断面積は、気液冷媒導入部30の断面積のうち、外側導入部32の断面積から内側導入部31の断面積を除く部分の断面積に等しくなっている。ここで、気液冷媒導入部30における冷媒流れ方向に直交する方向の面積のうち、外側導入部32の断面積から内側導入部31の断面積を除く部分の断面積を冷媒流入流路面積とする。また、バイパス流路部60における冷媒流れ方向に直交する方向の面積をバイパス流路面積とする。冷媒流入流路面積およびバイパス流路面積は、等しくなっている。なお、冷媒流入流路面積およびバイパス流路面積が等しいとは、製造誤差等の僅かなばらつき等によって互いの面積が僅かに異なるものを含むものである。
【0098】
このようなバイパス流路部60を備える理由について説明する。冷媒が冷凍サイクル1を循環して流れる際、冷凍サイクル1の各冷媒流路内を流れることによって圧力損失が発生する。例えば、アキュムレータ10では、内側導入部31によって形成される冷媒流路および内側導入部31の外周部と外側導入部32の内周部との間の冷媒流路を気液二相冷媒が流れる際、圧力損失が発生する。このアキュムレータ10で発生する圧力損失は、冷媒が折り返すように流れる気液冷媒導入部30内を流れる際に特に大きくなり易い。そして、アキュムレータ10で発生する圧力損失は、冷凍サイクル1を循環する冷媒の流量が多いほど大きくなり、また、冷媒の流速が速いほど大きくなる。
【0099】
ところで、本実施形態のアキュムレータ10は、電気自動車に搭載される車両用空調装置の冷凍サイクル1に適用される。そして、電気自動車の車両用空調装置の冷凍サイクル1では、冷媒が車両用駆動装置の動力源となるバッテリの冷却にも用いられることがある。この場合、内燃機関を動力源とする車両に適用される場合に比較して、循環する冷媒の大流量化が求められ、また、循環させる冷媒の流速の高速化が求められる。
【0100】
ただし、循環する冷媒の流量の増加に伴いアキュムレータ10の体格を大きくすると、冷凍サイクル1自体が大きくなる要因となる。このため、循環する冷媒の流量が増加する場合であっても、アキュムレータ10の体格の維持が望まれる。しかし、アキュムレータ10の体格を維持しつつ、冷媒の流量を増加させると、アキュムレータ10を冷媒が通過する際に発生する圧力損失が大きくなる虞がある。冷媒がアキュムレータ10を通過する際に発生する圧力損失の増加は、冷凍サイクル1の効率が低下する要因となるため好ましくない。
【0101】
これに対して、本実施形態のアキュムレータ10は、蒸発器5から導出された気液二相冷媒の一部を、流入空間Sを迂回して圧縮機2へ導くバイパス流路部60を備えている。このため、気液二相冷媒を流入空間S内へ流出させるために気液冷媒導入部30に流す気液二相冷媒の流量を減らすことができる。したがって、アキュムレータ10で発生する圧力損失を減少させることができる。
【0102】
ところで、バイパス流路部60によって、蒸発器5から導出された気液二相冷媒の一部を、流入空間Sを迂回して圧縮機2へ導く場合、流入空間S内によって気相冷媒と液相冷媒とに分離されない気液二相状態の冷媒が圧縮機2へ流れることとなる。この場合、流入空間Sから気相冷媒排出部40を介して圧縮機2へ流れる気相冷媒に比較して、渇き度が低い冷媒が圧縮機2へ流れる虞がある。
【0103】
しかし、冷媒の渇き度は、冷凍サイクル1を循環することによって徐々に一定の値に安定する。すなわち、冷媒の渇き度は、冷凍サイクル1の循環によって、所定の値に収束していく。このため、冷凍サイクル1を循環し始めの直後では、一時的に圧縮機2に乾き度が低い冷媒が流入するが、冷媒が冷凍サイクル1を複数回循環することによって、アキュムレータ10に流入する冷媒の渇き度とアキュムレータ10から流出する冷媒の渇き度とは、ほぼ同等の値となる。
【0104】
このため、バイパス流路部60によって、蒸発器5から導出された気液二相冷媒の一部を、流入空間Sを迂回して圧縮機2へ導いたとしても、渇き度が低い冷媒が圧縮機2へほぼ流れることはない。
【0105】
以上の如く、本実施形態のアキュムレータ10は、圧縮機2と蒸発器5との間に設けられており、蒸発器5から導出された気液二相冷媒の一部を、流入空間Sを迂回して圧縮機2へ導くバイパス流路部60を備える。
【0106】
これによれば、アキュムレータ10で発生する圧力損失を減少させることができる。これにより、冷凍サイクル1の効率を向上させることができる。特に、循環する冷媒の大流量化が求められ、また、循環させる冷媒の流速の高速化が求められる電気自動車の冷凍サイクル1に本実施形態のアキュムレータ10を適用することは好適である。
【0107】
また、上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0108】
(1)上記実施形態では、バイパス流路部60は、冷媒流れ上流側が、気液冷媒導入部30における抵抗部50より下方に位置する部位に接続されている。
【0109】
仮に、バイパス流路部60が気液冷媒導入部30における抵抗部50より上方に位置する部位に接続されている場合、気液冷媒流入口321から流入空間S内に流入して分離された液相冷媒が抵抗部50に衝突する前にバイパス流路部60に衝突する虞がある。すると、バイパス流路部60に衝突した液相冷媒が気相冷媒吸入口41から吸入される虞がある。
【0110】
これに対して、本実施形態によれば、バイパス流路部60が気液冷媒導入部30における抵抗部50より下方に位置する部位に接続されている。このため、気液冷媒流入口321から流入空間S内に流入して分離された液相冷媒が抵抗部50に衝突する前にバイパス流路部60に衝突することを回避することができる。したがって、バイパス流路部60に衝突した液相冷媒が気相冷媒吸入口41から吸入されることを回避することができる。
【0111】
(2)上記実施形態では、バイパス流路部60が外側導入部32から水平方向に沿って延びて形成されている。
【0112】
バイパス流路部60が水平方向より下方に向かって延びる構成である場合、バイパス流路部60に冷媒が流れ易くなる。すると、冷凍サイクル1を循環させた際の冷媒の渇き度が安定するまでに必要な時間が長くなる虞がある。
【0113】
これに対して、バイパス流路部60を外側導入部32から水平方向に沿って延びて形成する構成とすることで、バイパス流路部60が水平方向より下方に向かって延びる構成に比較して、バイパス流路部60に冷媒が流れ難くなる。このため、冷凍サイクル1を循環させた際の冷媒の渇き度が安定するまでに必要な時間が長くなることを回避しつつ、アキュムレータ10で発生する圧力損失を減少させることができる。
【0114】
(3)上記実施形態では、冷媒流入流路面積およびバイパス流路面積は等しくなっている。
【0115】
バイパス流路部60に流れる冷媒の流量は、バイパス流路面積が大きいほど多くなる。このため、バイパス流路面積を大きくするほど、アキュムレータ10内を流れることによって発生する圧力損失を減少させることができる。ただし、バイパス流路面積を大きくしてバイパス流路部60に流れる冷媒の流量を増加させるほど、冷凍サイクル1を循環させた際の冷媒の渇き度が安定するまでに必要な時間が長くなる。
【0116】
これに対して、冷媒流入流路面積およびバイパス流路面積を等しくすることで、冷媒流入流路面積よりバイパス流路面積が大きい場合に比較して、バイパス流路部60に冷媒が流れ難くなる。このため、冷凍サイクル1を循環させた際の冷媒の渇き度が安定するまでに必要な時間が長くなることを回避しつつ、発生する圧力損失を減少させることができる。
【0117】
(第9実施形態の第1の変形例)
上述の第9実施形態では、バイパス流路部60が気液冷媒導入部30に接続される部位から冷媒流れ下流側に向かって延びる方向が水平方向に向かって延びて形成されている例について説明したが、これに限定されない。例えば、バイパス流路部60は、気液冷媒導入部30に接続される部位から冷媒流れ下流側に向かって延びる方向が水平方向より上方に向かって延びて形成されていてもよい。
【0118】
(第9実施形態の第2の変形例)
上述の第9実施形態では、冷媒流入流路面積およびバイパス流路面積が等しくなっている例について説明したが、これに限定されない。例えば、バイパス流路部60は、バイパス流路面積が冷媒流入流路面積より小さくなっていてもよい。
【0119】
(第10実施形態)
次に、第10実施形態について、
図17を参照して説明する。本実施形態では、気液冷媒導入部30におけるバイパス流路部60が接続される位置が第9実施形態と相違している。これ以外は、第1実施形態と同様である。このため、本実施形態では、第9実施形態と異なる部分について主に説明し、第9実施形態と同様の部分について説明を省略することがある。
【0120】
図17に示すように、本実施形態のバイパス流路部60は、冷媒流れ上流側が、外側導入部32における抵抗部50より下方に位置する部位であって、且つ、液相貯留部211より上方に位置する部位に接続されている。具体的に、バイパス流路部60は、冷媒流れ上流側が、外側導入部32における抵抗部50より下方に位置する部位であって、液相貯留部211の外部に位置する部位に接続されている。すなわち、バイパス流路部60は、液相貯留部211に液相冷媒が最も多く貯留された状態の液相冷媒の液面Lよりも上方となる位置に位置付けられている。換言すれば、バイパス流路部60は、液相貯留部211に貯留された液相冷媒の冷媒量に限られず、液相冷媒に漬からない位置に位置付けられている。
【0121】
その他の構成は、第9実施形態と同様である。本実施形態のアキュムレータ10は、第9実施形態と同様または均等となる構成から奏される作用効果を第9実施形態と同様に得ることができる。
【0122】
(第11実施形態)
次に、第11実施形態について、
図18および
図19を参照して説明する。本実施形態では、気液冷媒導入部30におけるバイパス流路部60が接続される位置が第9実施形態と相違している。これ以外は、第1実施形態と同様である。このため、本実施形態では、第1実施形態と異なる部分について主に説明し、第1実施形態と同様の部分について説明を省略することがある。
【0123】
図18および
図19に示すように、本実施形態のバイパス流路部60は、冷媒流れ上流側が、気液冷媒導入部30における内側導入部31に接続されている。具体的に、バイパス流路部60は、内側導入部31における容器本体21の外側に位置する部位に接続されている。このように、バイパス流路部60が容器本体21の外側に接続される場合であっても、バイパス流路部60は、蒸発器5から導出された気液二相冷媒の一部を、流入空間Sを迂回して圧縮機2へ導くことができる。
【0124】
その他の構成は、第9実施形態と同様である。本実施形態のアキュムレータ10は、第9実施形態と同様または均等となる構成から奏される作用効果を第9実施形態と同様に得ることができる。
【0125】
(他の実施形態)
以上、本開示の代表的な実施形態について説明したが、本開示は、上述の実施形態に限定されることなく、例えば、以下のように種々変形可能である。
【0126】
上述の実施形態では、アキュムレータ10が車両である電気自動車に搭載される例について説明したが、これに限定されない。例えば、アキュムレータ10は、内燃機関を動力として持つ車両、工場や家屋に用いられる冷凍サイクル1等に適用してもよい。
【0127】
上述の実施形態では、気相冷媒吸入口41が抵抗部50より上下方向の上方に形成されている例について説明したが、これに限定されない。例えば、気相冷媒吸入口41は、抵抗部50より上下方向の下方に形成されていてもよい。
【0128】
上述の第9実施形態および第10実施形態では、バイパス流路部60の冷媒流れ上流側が、気液冷媒導入部30における抵抗部50より下方に位置する部位に接続されている例について説明したが、これに限定されない。例えば、バイパス流路部60の冷媒流れ上流側が、気液冷媒導入部30における抵抗部50より下方に位置する部位に接続されている例について説明したが、これに限定されない。
【0129】
上述の第9実施形態~第11実施形態では、バイパス流路部60が水平方向、または水平方向より上方に向かって延びて形成されている例について説明したが、これに限定されない。例えば、バイパス流路部60は、水平方向より下方に向かって延びて形成されていてもよい。
【0130】
上述の第9実施形態~第11実施形態では、冷媒流入流路面積およびバイパス流路面積が等しくなっている例について説明したが、これに限定されない。例えば、バイパス流路部60は、バイパス流路面積が冷媒流入流路面積より大きくなっていてもよい。
【0131】
上述の実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0132】
上述の実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されない。
【0133】
上述の実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されない。
【符号の説明】
【0134】
20 容器
41 気相冷媒吸入口
50 抵抗部
51d、52s 冷媒流路
211 液相貯留部
321 気液冷媒流入口
S 流入空間