(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155473
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】媒体処理装置および貨幣処理装置
(51)【国際特許分類】
G07D 11/26 20190101AFI20241024BHJP
B65H 1/14 20060101ALI20241024BHJP
G07D 11/16 20190101ALI20241024BHJP
【FI】
G07D11/26
B65H1/14 322C
G07D11/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023070218
(22)【出願日】2023-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129067
【弁理士】
【氏名又は名称】町田 能章
(74)【代理人】
【識別番号】100183162
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 義文
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 智久
(72)【発明者】
【氏名】若林 円
(72)【発明者】
【氏名】細川 和宏
【テーマコード(参考)】
3E141
3F343
【Fターム(参考)】
3E141AA01
3E141AA05
3E141AA06
3E141AA08
3E141DA06
3E141FA03
3E141FA10
3E141FC00
3E141FG04
3E141JA14
3E141LA23
3F343FA04
3F343FB07
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3F343GA02
3F343GB01
3F343GC01
3F343GD01
3F343HA17
3F343HA21
3F343HD09
3F343HD16
3F343KB02
3F343KB03
3F343KB17
(57)【要約】
【課題】異物が誤投入された場合に現地での除去作業が容易である媒体処理装置および貨幣処理装置を提供するものである。
【解決手段】投入された媒体を分離して装置内に取り込む媒体処理装置であって、積層された前記媒体を収納する空間であって、昇降するステージ20を内部に収納する紙幣収納部19と、紙幣収納部19の天井部19aに設置され、ステージ20に載せられた前記媒体を分離ゲート40aに送り出すピッカローラ14と、分離ゲート40aに設置され、前記媒体を分離して装置内に取り込む分離ローラ15と、を備え、ステージ20は、誤投入された異物としての硬貨Cを当該ステージ20の裏側に潜り込ませないための潜り込み抑制構造としての壁形状部25aを有する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
投入された媒体を分離して装置内に取り込む媒体処理装置であって、
積層された前記媒体を収納する空間であって、昇降するステージを内部に収納する媒体収納部と、
前記媒体収納部の天井部に設置され、前記ステージに載せられた前記媒体を分離ゲートに送り出すピッカローラと、
前記分離ゲートに設置され、前記媒体を分離して装置内に取り込む分離ローラと、を備え、
前記ステージは、誤投入された異物を当該ステージの裏側に潜り込ませないための潜り込み抑制構造を有する、
ことを特徴とする媒体処理装置。
【請求項2】
前記潜り込み抑制構造は、前記ステージの裏側に設けられた壁形状部を有する、ことを特徴とする請求項1に記載された媒体処理装置。
【請求項3】
前記ステージの側面の一部が前記分離ゲートの方向に突出すると共に、前記分離ゲートを構成するガイドの一部が突出部分に対応して凹んだ入れ子構造になっており、
前記壁形状部は、前記突出部分の先端下部に設けられている、
ことを特徴とする請求項2に記載された媒体処理装置。
【請求項4】
前記壁形状部は、前記ステージが最上部に位置した状態で、前記分離ゲートを塞ぐことが可能な高さに設定されている、
ことを特徴とする請求項2に記載された媒体処理装置。
【請求項5】
前記潜り込み抑制構造は、前記壁形状部から連続して設けられ、当該壁形状部から離れるに従って高さが増大する傾斜リブをさらに有する、
ことを特徴とする請求項2に記載された媒体処理装置。
【請求項6】
投入された媒体を分離して装置内に取り込む媒体処理装置であって、
積層された前記媒体を収納する空間であって、昇降するステージを内部に収納する媒体収納部と、
前記媒体収納部の天井部に設置され、前記ステージに載せられた前記媒体を分離ゲートに送り出すピッカローラと、
前記分離ゲートに設置され、前記媒体を分離して装置内に取り込む分離ローラと、を備え、
前記ステージの裏側は、誤投入された異物が潜り込んでくる範囲で、前記分離ローラから前記異物を取り除く場合に障害となる部分が削除されている、
ことを特徴とする媒体処理装置。
【請求項7】
前記分離ローラによって取り込まれた前記媒体を収納する収納庫を備える、ことを特徴とする請求項1に記載された媒体処理装置。
【請求項8】
請求項1に記載された前記媒体処理装置は、紙幣の処理を行う紙幣ユニットであり、
前記紙幣ユニットと、硬貨の処理を行う硬貨ユニットとを備える、
ことを特徴とする貨幣処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体処理装置および貨幣処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、媒体(一例は紙幣)の取引をする装置として、例えば、小売店などに設置されるレジスタ、釣銭機や入出金機、金融機関などに設置される現金自動預払機(ATM:Automated Teller Machine)、駅などに設置される発券機などがある。これらの装置は、媒体の処理を行う媒体処理装置(一例は紙幣ユニット)を備える。
【0003】
従来の媒体処理装置が有する入金ユニット902の構成例を
図14に示す。
図14に示すように、従来の入金ユニット902は、投入口902aを開閉するシャッタ911と、受け渡しを行う紙幣Bを収納する空間である紙幣収納部919と、紙幣収納部919内を上下方向(より具体的には、上斜め後方および下斜め前方)に移動(昇降)するステージ920とを備える。
図14に示すように、紙幣収納部919に紙幣Bが投入されると、
図15に示すようにしてシャッタ911が符号α1で示す方向に移動して閉まる。また、ステージ920を下側から支持するステージアーム931によってステージ920が符号α2で示すように上昇して紙幣Bをピッカローラ914へ押圧し、ピッカローラ914と分離ローラ915が回転し始める。これにより、紙幣Bの分離動作が開始する。この時、紙幣Bは、バネにより分離ローラ側に押し付けられるピンチローラ917の付勢力により、分離ローラ915の回転力が伝達され、搬送路の後方へ搬送される。
図16に示すように、分離された紙幣Bは、符号α3で示すように装置内に取り込まれる。紙幣Bの減少と共に(分離動作が進むにつれて)ステージ920が上昇し、常に紙幣Bを上方へ押圧する。そのため、
図17に示すように、最終の紙幣Bの分離後は、ステージ920が最上部に位置する。
【0004】
投入口902aから異物(一例は硬貨)が誤って投入される場合があり、その対策として、例えば、特許文献1,2に記載された技術が存在する。
特許文献1に記載された技術では、異物は一旦分離ゲートを通過させ、その先の搬送路の曲率を利用して異物が搬送されないように留めておく。センサが異物を検知(ON継続)すると、図示しないアクチュエータで搬送路が開いて、異物が自重でガイドの開口から排出される(特許文献1の
図4などを参照)。
また、特許文献2に記載された技術では、ビルプレスとプールガイドによる異物除去動作によって、紙幣間に挟まった硬貨を衝撃で落下させる(特許文献2の
図5などを参照)。硬貨を除去しきれなかった場合には、分離ゲートに互い違いに設けたリブにより硬貨の侵入を防止する(特許文献2の
図6などを参照)。硬貨より小さいクリップなどの異物は分離ゲートを通過してしまうが、分離ゲート直後の搬送路の曲率を小さくすることで異物を残留させ、以降の装置内に侵入させないようにする(特許文献2の
図7などを参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-286753号公報
【特許文献2】特開2002-008095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図14で示した構成の入金ユニット902では、投入口902aから異物(例えば、硬貨)が誤投入された場合、紙幣Bの分離動作中に分離ローラ915で異物を噛み込んでしまうことがある。例えば、
図18に示すように、ステージ920上に硬貨C、紙幣Bの順番に重ねられている場合を想定する。この場合、
図19に示すように、繰り出された紙幣Bと共に硬貨Cが分離ゲート940aへ引き込まれ、その勢いで硬貨Cが分離ローラ915に噛み込まれる。
図20に示すように、分離動作中は分離ローラ915の回転によって硬貨Cが符号α4で示す装置内方向へ寄せられているが、
図21に示すように、分離動作を停止すると分離ローラ915のゴムやガイドの変形の戻り、ピンチローラ917の付勢力等が作用して硬貨Cが符号α5で示す投入口902a方向へ押し出される。
【0007】
このとき、
図21に示すように、最上部にあるステージ920の裏に硬貨Cが潜り込むことがある。硬貨Cが潜り込む場所は、例えば、ステージ920と分離ゲート940aを構成する下側搬送ガイドの端部部分942aとの隙間に紙幣Bが入り込まないようにするために形成された入れ子構造の部分である。この入れ子構造は、ステージ920の後面920bに対して一部が装置内方向(取り込み方向)に突出した突出部925と、それに対応した凹み部(図示せず)とからなる。この入れ子構造によって、ステージ920と下側搬送ガイドの端部部分942aとの隙間は一直線ではなくジグザグとなり、紙幣Bが当該隙間に挿入しないようになっている。突出部925は、原則として紙幣以外が接触しないため、製造する上で最低限必要な厚みにするのが一般的である。例えば、ステージ920が成型品である場合、突出部925は成型で推奨される厚みとなっている。そのため、突出部925の厚み(高さ寸法)は、ステージ920の後面920bの高さ寸法に対して小さくなり、後面920bと突出部925とによって段差が形成され、硬貨Cが潜り込む空間が生まれる。
【0008】
図21に示すように、硬貨Cがステージ920の下に潜り込んだ状態になると、硬貨Cが邪魔をしてステージ920を下げることができずにエラーとなる。なお、投入口902aを介して手作業で硬貨Cを除去しようとしても、ステージ920を下側から支持するステージアーム931が邪魔で硬貨Cに手が届かない。硬貨Cは押し出す力を分離ローラ915などから受けていて、ステージ920の後面920bに突き当たった状態であるので、棒状の工具を用いたとしても硬貨Cを除去できる程の力を込められない。また、分離ローラ915を回転しようとしても、硬貨Cが挟まれた状態のために分離ローラ915の負荷が高く、分離ローラ915を回せない。また、ピッカローラ914を回転しようとしても、ステージ920によってピッカローラ914が隠れているため、手動でピッカローラ914を回せない。このように、
図21に示す状態になると、現地での硬貨Cの除去作業が困難となり、分解を要するため装置交換が必要となる。
【0009】
本発明は、前記問題に鑑みてなされたものであり、異物が誤投入された場合に現地での除去作業が容易である媒体処理装置および貨幣処理装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため、本発明の一態様に係る媒体処理装置は、投入された媒体を分離して装置内に取り込む媒体処理装置であって、積層された前記媒体を収納する空間であって、昇降するステージを内部に収納する媒体収納部と、前記媒体収納部の天井部に設置され、前記ステージに載せられた前記媒体を分離ゲートに送り出すピッカローラと、前記分離ゲートに設置され、前記媒体を分離して装置内に取り込む分離ローラと、を備え、前記ステージは、誤投入された異物を当該ステージの裏側に潜り込ませないための潜り込み抑制構造を有することを特徴とする。
【0011】
また、前記課題を解決するため、本発明の一態様に係る貨幣処理装置は、前記した媒体処理装置が紙幣の処理を行う紙幣ユニットであり、前記紙幣ユニットと、硬貨の処理を行う硬貨ユニットとを備えるものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、異物が誤投入された場合に現地での除去作業が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る媒体処理装置の斜視図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る入金ユニット(シャッタが開放された状態)を説明するための図であり、
図1のII-IIに対応する断面図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係る入金ユニット(シャッタが閉鎖された状態)を説明するための図であり、
図1のII-IIに対応する断面図である。
【
図4】本発明の第1実施形態に係る入金ユニットの横断面図であり、
図3のIV-IVに対応する断面図である。
【
図5】ステージおよび当該ステージを上下動するリンク機構の斜視図である。
【
図6】本発明の第1実施形態に係る入金ユニットにおける分離ローラに硬貨が噛み込んだ場合の対応を説明するための図である。
【
図7】本発明の第1実施形態に係る入金ユニットにおける分離ローラに硬貨が噛み込んだ場合の対応を説明するための図である。
【
図8】本発明の第2実施形態に係る入金ユニットの課題を説明するための図である。
【
図9】本発明の第2実施形態に係る入金ユニットの断面図である。
【
図10】本発明の第2実施形態に係るステージの要部拡大斜視図である。
【
図11】変形例に係る入金ユニットの断面図である。
【
図12】変形例に係るステージの要部拡大斜視図である。
【
図13】本発明の実施形態に係る媒体処理装置を備える貨幣処理装置の斜視図である。
【
図18】本発明の課題を説明するための図であり、従来の入金ユニットの断面図である。
【
図19】本発明の課題を説明するための図であり、従来の入金ユニットの断面図である。
【
図20】本発明の課題を説明するための図であり、従来の入金ユニットの断面図である。
【
図21】本発明の課題を説明するための図であり、従来の入金ユニットの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。各図は、本発明を十分に理解できる程度に、概略的に示してあるに過ぎない。よって、本発明は、図示例のみに限定されるものではない。また、参照する図面において、本発明を構成する部材の寸法は、説明を明確にするために誇張または矮小化して表現されている場合がある。なお、各図において、共通する構成要素や同様な構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を省略する。
【0015】
[第1実施形態]
<第1実施形態に係る媒体処理装置の構成について>
図1を参照して、第1実施形態に係る媒体処理装置1の構成について説明する。
図1は、第1実施形態に係る媒体処理装置1の斜視図である。媒体処理装置1における「上下」、「左右」、「前後」は、
図1の矢印に従う。当該方向は、説明の便宜上定めるものであり、本発明を限定するものではない。
【0016】
図1に示す媒体処理装置1は、媒体の処理を行う装置である。媒体は、例えば紙幣や券類などの紙葉類である。本実施形態では、媒体として紙幣を想定し、媒体処理装置1として紙幣の処理を行う紙幣ユニットを想定する。媒体処理装置1は、例えば、硬貨ユニットと共に用いられて釣銭機を構成する。また、媒体処理装置1は、POS(Point of sale)端末や硬貨ユニットと共に用いられて、店舗のチェックアウトカウンターに設置されて商品の会計処理を行うレジスタを構成する。
【0017】
図1に示すように、媒体処理装置1は、入金ユニット2と、搬送ユニット3とを主に備える。入金ユニット2は、紙幣が投入されると共に紙幣を排出する投入口2aを有し、主に入金および出金に関する処理を行う。搬送ユニット3は、入金ユニット2の後方に隣接して配置され、入金ユニット2との間で紙幣の受け渡しを行う。搬送ユニット3は、紙幣の収納庫(図示せず)を有しており、入金された紙幣を収納庫まで搬送して収納する。入金ユニット2および搬送ユニット3は、カバー4によって覆われている。カバー4は、例えば樹脂製である。
【0018】
図2ないし
図5を参照して、入金ユニット2の構成について説明する。
図2は、入金ユニット2を説明するための図であり、
図1のII-IIに対応する断面図である。
図2では、シャッタ11が閉じられていない状態(シャッタ11が開放された状態)である。
図3は、入金ユニット2を説明するための図であり、
図2と同じ位置での断面図である。
図3では、シャッタ11が閉じられた状態(シャッタ11が閉鎖された状態)である。
図4は、入金ユニット2の横断面図であり、
図3のIV-IVに対応する断面図である。なお、
図4では、紙幣Bの記載を省略している。
図5は、ステージ20およびステージ20を上下動するリンク機構の斜視図であり、ステージ20を下方向から見た場合を示している。
【0019】
図2に示すように、入金ユニット2は、開口である投入口2aを有する筐体10と、上下方向に移動して投入口2aを開閉するシャッタ11と、受け渡しを行う紙幣Bを収納する空間である紙幣収納部19とを有する。紙幣Bは、積層した状態で紙幣収納部19に収納される。投入口2aは、紙幣収納部19に連通しており、紙幣収納部19は、投入口2aを介して空間として外部に繋がっている。紙幣収納部19は、短手方向を前後方向にするとともに、長手方向を左右方向にした状態で紙幣Bを収納する。
【0020】
図2に示すように、紙幣収納部19内には、ステージ20が配置されている。ステージ20は、紙幣Bを載せるための部材であり、昇降可能である。ステージ20は、上昇することで、紙幣収納部19の天井部19aに設けられるピッカローラ14に紙幣Bを押し付ける役割を担う。ステージ20は、紙幣Bを載せることが可能な形状およびサイズになっている。
図4に示すように、本実施形態のステージ20は、平面視で長方形状を呈し、ステージ20の表面21(紙幣と接する側の面)は平面となっている。一方、
図5に示すように、ステージ20の裏面22側(紙幣Bと接する側とは反対の面)は、軽量化などを目的として肉抜き加工が施されている。ステージ20は、例えば、成型品である。
【0021】
図2に示すように、ステージ20は、支持部30によって下側から支持されており、支持部30の回動動作によって昇降する。
図5に示すように、支持部30は、棒状の部材の両端を同一方向に折り曲げたコの字状(略U字状)の部材である。支持部30は、ステージ20に接続される2本のステージアーム31を有する。ステージアーム31は、一方(基端側)の端部31aが軸部13に固定され、他方(先端側)の端部31bがステージ20の裏面22に接続される。ステージアーム31は、軸部13を回動軸として回動可能である。ステージアーム31の先端側の端部31bには、長孔31cが形成されており、ステージ20に設けられた棒状の取付部23が長孔31cに挿入されている。つまり、支持部30と軸部13とは、軸部13を回動することでステージ20が上下動するリンク機構を構成する。
【0022】
また、
図4に示すように、紙幣収納部19(
図2参照)を構成する左側面19bには、上下方向に向かって溝部19baが形成されている。溝部19baには、ステージ20の左側面20cから突出して形成されるガイド部24が挿入される。同様に、紙幣収納部19(
図2参照)を構成する右側面19cには、上下方向に向かって溝部19caが形成されている。溝部19caには、ステージ20の右側面20dから突出して形成されるガイド部24が挿入される。これにより、ステージ20の移動は上下方向に限定される。
【0023】
ここまで説明した構成によって、ステージ20は、処理の状況に応じて位置を変更することが可能である。例えば、
図2に示すステージ20の位置は、入金時において紙幣収納部19への紙幣Bの投入を受け付けるときや、出金時において紙幣収納部19から取り出される紙幣Bを一時的に収納するときの位置である(投入ポジション)。
また、
図3に示すステージ20の位置は、入金時において紙幣収納部19内の紙幣Bを分離し、分離ゲート40aを介して搬送ユニット3(
図1参照)へ分離した紙幣Bを搬送するときの位置である(分離ポジション)。紙幣Bを分離する場合には、ステージ20が上昇して紙幣Bをピッカローラ14へ押圧する。
【0024】
図2に示す分離ゲート40aは、搬送ユニット3(
図1参照)へ繋がる搬送路40の出入り口である。搬送路40は、主に、上側搬送ガイド41と、下側搬送ガイド42とで構成される。上側搬送ガイド41は、紙幣収納部19の天井部19aから連続して設けられており、また、下側搬送ガイド42は、紙幣収納部19の後面19dから連続して設けられている。
【0025】
図2に示すように、入金ユニット2は、ピッカローラ14と、分離ローラ15と、リバースローラ16と、ピンチローラ17とを備える。ピッカローラ14は、紙幣収納部19の天井部19aであって、分離ゲート40a付近に設けられる。分離ローラ15は、分離ゲート40aを構成する上側搬送ガイド41に設けられ、リバースローラ16およびピンチローラ17は、分離ゲート40aを構成する下側搬送ガイド42に設けられる。なお、ピッカローラ14と分離ローラ15は、紙幣Bを送る力を発生させるように外周の一部が高摩擦のゴムで構成されている。
ピッカローラ14は、ステージ20に載せられた紙幣Bを分離ゲート40aに送り出す。分離ローラ15は、紙幣Bを一枚ずつに分離し、分離した紙幣Bを装置内に取り込む。リバースローラ16は、搬送路40を挟んで分離ローラ15と互い違いに配置され、装置内から出て行く方向のみに回動可能であり、出金時等において紙幣Bを装置内からステージ20の方向に搬送する。ピンチローラ17は、バネによって分離ローラ側に押し付けられる付勢力が付与されており、分離ローラ15の回転に伴って回転する。
【0026】
図4に示すように、ステージ20と下側搬送ガイド42(
図2参照)との間に紙幣Bが入り込まないようにするために、ステージ20の一部が取り込み方向(本実施形態では後方)に突出すると共に、下側搬送ガイド42の端部部分42aの一部がステージ20に対応して凹んだ入れ子構造になっている。つまり、ステージ20の後面20bには、突出部25が形成され、また、下側搬送ガイド42の端部部分42aには、突出部25に対応した凹み部18が形成されており、突出部25が下側搬送ガイド42の端部部分42aに入り込んでいる。これにより、ステージ20と下側搬送ガイド42との隙間は一直線ではなくジグザグとなり、紙幣Bが当該隙間に挿入しないようになっている。
【0027】
(異物の潜り込みを抑制するための構造)
ここまで、紙幣収納部19に収納された紙幣Bを分離し、分離した紙幣Bを装置内に取り込むための構成について説明した。本実施形態に係る入金ユニット2は、紙幣収納部19に誤って異物が投入された場合に、当該異物がステージ20の裏側に潜り込んでステージ20の降下を邪魔するのを抑制する潜り込み抑制構造を備える。本実施形態での潜り込み抑制構造は、ステージ20の裏側に設けられた壁形状部25aを想定する。
図5に示すように、壁形状部25aは、突出部25の後面側に形成される。従来のステージ920の突出部925(
図14を参照)と比較した場合、壁形状部25aは、突出部925の先端下部に設けられている。つまり、壁形状部25aは、突出部925の先端から垂下した形として形成されている。壁形状部25aは、ステージ20が最上部に位置した状態で、分離ゲート40aを塞ぐことが可能な高さに設定されているのが望ましい。なお、壁形状部25aは、すべての突出部25に設けなくてもよく、異物が挟まり易い部分にのみ設けるようにしてもよい。異物が挟まり易い部分は、例えばリバースローラ16外側にある分離ローラ15の付近であり、硬貨が押し込まれることで分離ローラ15の外周のゴムの部分が変形し、挟まり易くなる。
【0028】
<第1実施形態に係る媒体処理装置の動作について>
(紙幣の分離動作)
図2および
図3を参照して、投入された紙幣Bの分離動作について説明する。
図2に示すように、紙幣収納部19に紙幣Bが投入されると、
図3に示すようにしてシャッタ11が符号α1に示す方向に移動して閉まる。また、ステージ20が符号α2に示すように上昇して紙幣Bをピッカローラ14へ押圧し、分離ローラ15が回転し始める。これにより、紙幣Bの分離動作が開始する。紙幣Bの減少と共に(分離動作が進むにつれて)ステージ20も上昇し、常に紙幣Bを上方へ押圧する。
【0029】
(分離ローラに硬貨が噛み込んだ場合の対応)
図6および
図7を参照して、分離ローラ15に硬貨Cが噛み込んだ場合の対応について説明する。本実施形態に係るステージ20は、突出部25の後面側に壁形状部25aを有する。これにより、分離動作停止時に硬貨Cが押し出されても、
図6に示すように硬貨Cが壁形状部25aに突き当たる。そのため、ステージ20の裏面22に入り込むことがないので、
図7に示すようにステージ20を下げることが可能となる。ステージ20を下げることができれば、分離ローラ15を排出方向(分離とは逆方向)に回して硬貨Cの噛みこみを解除できる。その結果、紙幣収納部19へ硬貨Cが排出されるので、現地での硬貨除去作業が可能になり、装置交換せずに復旧できる。
【0030】
以上のように、第1実施形態に係る入金ユニット2は、ステージ20の分離ゲート40aに対向する部分に、分離ローラ15に挟まれた状態の硬貨Cが突き当たる壁形状部25aを設ける。これにより、分離動作停止時に硬貨Cが押し出されても、
図6に示すように異物(例えば、硬貨C)が壁形状部25aに突き当たり、ステージ20の裏面22に入り込むことがない。そのため、
図7に示すようにステージ20を下げることが可能なので、異物が誤投入された場合に現地での除去作業が容易である。
また、ステージ20の裏面22側の形状変更のみで対策できるため、紙幣走行面や分離ゲート40aの形状を変更する必要が無く、紙幣Bのハンドリング(分離・搬送・集積)へのリスクが殆ど無い。
【0031】
[第2実施形態]
上述した通り、第1実施形態では、ステージ20の分離ゲート40aに対向する側面(後面20b)に壁形状部25aを設け、壁形状部25aは、ステージ20が最上部に位置した状態で、分離ゲート40aを塞ぐことが可能な高さに設定するのが望ましいとしていた。しかしながら、ステージ20の可動範囲で壁形状部25aが他部品と接触する場合には、分離ゲート40aを完全に塞ぐ高さにすることができない場合も想定される。例えば、
図8に示すように、ステージ20を最下部まで下げたときに、突出部25(壁形状部25a)がステージアーム31と干渉する場合である。
【0032】
<第2実施形態に係る入金ユニット2の構成について>
図9および
図10を参照して、第2実施形態に係る入金ユニット102の構成について説明する。
図9は、第2実施形態に係る入金ユニット102の断面図である。
図10は、ステージ120の要部拡大斜視図であり、ステージ120を下方向から見た場合を示している。
【0033】
図9に示すように、第2実施形態に係る入金ユニット102は、第1実施形態に係る入金ユニット2(
図2および
図5参照)に対して、ステージ120の構成が異なる。以下では、第1実施形態との相違点を中心に説明を行い、第1実施形態と同様の構成については説明を省略する。
【0034】
図9に示すように、第2実施形態に係るステージ120は、第1実施形態と同様に、紙幣収納部19内に配置され、ピッカローラ14に紙幣Bを押し付ける役割を担う。ステージ120は、支持部30に下側から支持されており、支持部30の回動動作によって昇降する。
【0035】
図9に示すように、ステージ120は、分離ローラ15に挟まれた状態の硬貨Cが突き当たる壁形状部125aと、前後方向に設けられた傾斜リブ126とを有する。壁形状部125aは、第1実施形態の壁形状部25aと同様の機能を有する。壁形状部125aは、ステージ120の可動範囲で他部品と接触しない高さ寸法に設定されている。
図10に示すように傾斜リブ126は、壁形状部125aから離れるに従って高さが増大する(つまり、後部部分が最も低く、前に進むにつれて徐々に高くなっている)。傾斜リブ126は、引っ掛かりなく硬貨Cを案内するためのスロープの役割をなす。傾斜リブ126は、壁形状部125aから連続して設けられるのがよい。これにより、ステージ120では、分離ローラ15に挟まれた状態の硬貨Cは壁形状部125aに原則は突き当たるが、壁形状部125aと硬貨Cとの当接が万が一解除して、硬貨Cがステージ120(突出部125)の下に入り込んだとしても、分離ローラ15を排出方向(分離とは逆方向)に回転することで硬貨Cの噛みこみを解除できる。その結果、
図9に示すように、硬貨Cがステージ120の下へ排出され、ステージ120を降下させることが可能になり、現地での硬貨除去作業ができる。
【0036】
以上説明した第2実施形態に係る入金ユニット102によっても、第1実施形態と同等の効果を奏することができる。つまり、ステージ120の分離ゲート40aに対向する部分に、分離ローラ15に挟まれた状態の硬貨Cが当接する壁形状部125aが形成されているので、分離動作停止時に硬貨Cが押し出されても、
図9に示すように異物(例えば、硬貨C)が壁形状部125aに突き当たり、ステージ120の裏面22に入り込むことを抑制できる。
また、第2実施形態では、壁形状部125aと硬貨Cとの当接が解除して、硬貨Cがステージ120(突出部125)の下に入り込んだとしても、傾斜リブ126によって硬貨Cを導くことができるので、分離ローラ15を排出方向(分離とは逆方向)に回転することで硬貨Cの噛みこみを解除できる。そのため、異物が誤投入された場合に現地での除去作業が容易である。
【0037】
なお、第2実施形態では、ステージ120が最上部に位置するときに分離ゲート40aを壁形状部125aで必ずしも塞がなくてもよいので、壁形状部125aの高さを第1実施形態よりも低くすることが可能である。そのため、様々な装置に適用可能である。
【0038】
[変形例]
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲の趣旨を変えない範囲で実施することができる。実施形態の変形例は、例えば以下に示すものである。
【0039】
第1および第2実施形態のステージ20,120では、分離ゲート40aに対向する部分に壁形状部25a,125aを設け、当該壁形状部25a,125aに硬貨Cを突き当てることで、ステージ20,120の裏側へ硬貨Cが入り込むのを抑制していた。しかしながら、分離ゲート40aに対向する部分に壁形状を設けずに、分離ローラ15に挟まれた状態の硬貨Cが潜り込んでくる範囲で、分離ローラ15から硬貨Cを取り除く場合に障害となる部分を削除してもよい。
【0040】
図11および
図12を参照して、変形例に係る入金ユニット202の構成について説明する。
図11は、変形例に係る入金ユニット202の断面図である。
図12は、ステージ220の要部拡大斜視図であり、ステージ220を下方向から見た場合を示している。
図11に示すように、入金ユニット202のステージ220は、従来のステージ920(
図14参照)に対して、硬貨Cがステージ220の裏へ潜り込んでくる範囲で壁となる形状をすべて削除してある(つまり、硬貨Cが突き当たる形状を取り除いている)。例えば、
図12に示すように、従来のステージ920に比べてステージ220の後面220bの高さを低くしてある。なお、
図12に示す突出部225は、従来と同様であり、成型で推奨される厚みとなっている。後面220bの高さは、例えば突出部225の厚みと同じである。
【0041】
なお、硬貨Cが潜り込んでくる範囲に傾斜リブ226を設けてもよい。傾斜リブ226は、後部部分が最も低く、前に進むにつれて徐々に高くなっている。傾斜リブ226は、引っ掛かりなく硬貨Cを案内するためのスロープの役割をなす。
これにより、分離ローラ15を排出方向へ強制的に回すことで、硬貨Cがステージ220の下へ落下して除去可能となる。この手段でもステージ裏の形状変更のみのため、紙幣ハンドリングへのリスクがない。
【0042】
また、各実施形態では潜り込み抑制構造として壁形状部25a,125aを例示したが、潜り込みを抑制できる形状であれば他の形状であってもよい。例えば、潜り込み抑制構造は、先端や側面で異物の侵入を防ぐ棒形状や、棒形状のものを複数並べた柵形状などを有するものであってもよい。また、壁形状部25a,125aは、硬貨Cが突き当たる部分が曲面であってもよい。
【0043】
また、各実施形態では、媒体として紙幣を想定し、媒体処理装置1として紙幣の処理を行う紙幣ユニットを想定していた。しかしながら、媒体は、紙幣に限定されずに券類や帳票類などであってもよく、媒体処理装置1は、これらの種類の媒体を処理するユニットであってもよい。
【0044】
また、各実施形態では、媒体処理装置1として独立した装置を想定していた。しかしながら、媒体処理装置1が別の装置の一部として組み込まれていてもよい。媒体処理装置1は、例えば硬貨ユニットと共に用いられて一つの装置(貨幣処理装置)を構成してもよい。
図13に、媒体処理装置1を含んだ貨幣処理装置の一例を示す。
図13に示す貨幣処理装置1001は、釣銭機であり、紙幣を処理する紙幣ユニット1002と、硬貨を処理する硬貨ユニット1003とを備える。
【0045】
また、各実施形態に記載の各構成要素の一部を組合せ/省略しても良い。また、上述した各実施形態や、各変形例の構成及び/又は機能の全部又は一部を組み合わせても良い。また、各実施形態及び各変形例の構成及び/又は機能のうち少なくとも一部を省略してもよい。または各実施形態及び各変形例の構成及び/又は機能のうち少なくとも一部を、他の実施形態及び他の変形例の構成及び/又は機能と置き換えてもよい。または、各実施形態及び各変形例の構成及び/又は機能のうち少なくとも一部を、他の実施形態及び他の変形例のうち少なくとも一つに、新たな構成及び/又は機能として追加してもよい。
【符号の説明】
【0046】
1 媒体処理装置
2,102,202 入金ユニット
2a 投入口
3 搬送ユニット
4 カバー
10 筐体
11 シャッタ
13 軸部
14 ピッカローラ
15 分離ローラ
16 リバースローラ
17 ピンチローラ
19 紙幣収納部
20,120,220 ステージ
23 取付部
25,125,225 突出部
25a,125a 壁形状部
126,226 傾斜リブ
30 支持部
31 ステージアーム
40 搬送路
40a 分離ゲート
41 上側搬送ガイド
42 下側搬送ガイド