特開 2024-155478 電気接続部品、および電気接続ユニット

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】公開特許公報(A)

(11)【公開番号】P2024155478

(43)【公開日】2024-10-31

(54)【発明の名称】電気接続部品、および電気接続ユニット

(51)【国際特許分類】

   H01R 9/00 20060101AFI20241024BHJP

   H01R 13/73 20060101ALI20241024BHJP

   H05K 7/12 20060101ALI20241024BHJP

   H02K 5/22 20060101ALN20241024BHJP

【ＦＩ】

H01R9/00 A

H01R13/73 Z

H05K7/12 D

H02K5/22

【審査請求】未請求

【請求項の数】10

【出願形態】ＯＬ

(21)【出願番号】P 2023070228

(22)【出願日】2023-04-21

(71)【出願人】

【識別番号】395011665

【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所

(71)【出願人】

【識別番号】000183406

【氏名又は名称】住友電装株式会社

(71)【出願人】

【識別番号】000002130

【氏名又は名称】住友電気工業株式会社

(74)【代理人】

【識別番号】100105957

【弁理士】

【氏名又は名称】恩田 誠

(74)【代理人】

【識別番号】100068755

【弁理士】

【氏名又は名称】恩田 博宣

(72)【発明者】

【氏名】工藤 康弘

(72)【発明者】

【氏名】橋本 大輔

(72)【発明者】

【氏名】舘 健太郎

(72)【発明者】

【氏名】辻井 芳朋

【テーマコード（参考）】

4E353

5E086

5H605

【Ｆターム（参考）】

4E353AA05

4E353BB02

4E353CC12

4E353DR08

4E353DR49

4E353GG11

5E086JJ03

5E086LL10

5E086LL17

5H605BB05

5H605CC06

5H605EC07

5H605EC18

(57)【要約】

【課題】小型化できる電気接続部品、および電気接続ユニットを提供する。
【解決手段】電気接続部品３は、配線２が一体に設けられた本体部６を備え、本体部６が取付け先の筐体４に締結部７によって固定される。本体部６は、締結部７の軸部２１を通す孔２２が設けられた取付部２３を有する。取付部２３の少なくとも１つは、筐体４と本体部６との位置決め部を兼ねる。
【選択図】図３

【特許請求の範囲】

【請求項1】

配線が一体に設けられた本体部を備え、前記本体部が取付け先の筐体に締結部によって固定される電気接続部品であって、
前記本体部は、前記締結部の軸部を通す孔が設けられた取付部を有し、
前記取付部の少なくとも１つは、前記筐体と前記本体部との位置決め部を兼ねる、電気接続部品。

【請求項2】

前記本体部は、複数の前記配線の間を絶縁する絶縁部と、前記絶縁部と一体に設けられるとともに前記筐体に前記締結部によって固定されるプレート部と、を有し、
前記取付部の少なくとも１つは、前記プレート部に設けられている、請求項１に記載の電気接続部品。

【請求項3】

前記取付部の少なくとも１つは、前記プレート部に一体形成されている、請求項２に記載の電気接続部品。

【請求項4】

前記取付部は、前記孔の周縁から前記筐体に向かって突出する突壁を有する絞り加工部を含む、請求項３に記載の電気接続部品。

【請求項5】

前記取付部の少なくとも１つは、前記本体部とは独立する別部品を含んで構成されている、請求項１に記載の電気接続部品。

【請求項6】

前記本体部は、複数の前記配線の間を絶縁する絶縁部と、前記絶縁部と一体に設けられるとともに前記筐体に前記締結部によって固定されるプレート部と、を有し、
前記別部品は、前記プレート部に形成されたプレート孔に連通するカラー孔を有しつつ、前記プレート部に取付けられるカラーであり、
前記取付部の少なくとも１つは、前記プレート孔および前記カラーを含む、請求項５に記載の電気接続部品。

【請求項7】

前記本体部は、複数の前記配線の間を絶縁する絶縁樹脂であり、
前記取付部の少なくとも１つは、前記絶縁樹脂にインサート成型された前記別部品としてのインサートカラーにより構成されている、請求項５に記載の電気接続部品。

【請求項8】

前記筐体は、前記取付部に係合する係合部を有し、
前記係合部は、前記筐体の表面から突出する突状部を有し、前記突状部が前記取付部に係合しつつ、前記電気接続部品と前記筐体とを位置決めする、請求項１に記載の電気接続部品。

【請求項9】

前記筐体は、前記取付部に係合する係合部を有し、
前記係合部は、前記筐体の表面から凹む凹状部を有し、前記凹状部が前記取付部を収容しつつ、前記電気接続部品と前記筐体とを位置決めする、請求項１に記載の電気接続部品。

【請求項10】

配線が一体に設けられた本体部を有する電気接続部品と、前記電気接続部品が締結部によって固定される筐体と、を備える電気接続ユニットであって、
前記本体部は、前記締結部の軸部を通す孔が設けられた取付部を有し、
前記取付部の少なくとも１つは、前記筐体と前記本体部との位置決め部を兼ねる、電気接続ユニット。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、電気接続部品、および電気接続ユニットに関する。

【背景技術】

【0002】

従来、特許文献１に開示されるように、回転電機用端子台は、電力用コネクタ、信号用コネクタ、およびカラーが溶融樹脂によりインサート成型された台座部を有する。回転電機用端子台は、ケースに固定されるとき、台座部に設けられた位置決めピンがケースに嵌め込まれることにより位置決めされる。そして、台座部は、ねじによりケースに固定される。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0003】

【特許文献1】特開２０１１－１６０６１９号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0004】

特許文献１に開示された回転電機用端子台の場合、台座部に位置決めピンを形成する必要があるので、その分、台座部ひいては回転電機用端子台が大型化する懸念があった。
本開示の目的は、小型化できる電気接続部品、および電気接続ユニットを提供することにある。

【課題を解決するための手段】

【0005】

前記課題を解決する電気接続部品は、配線が一体に設けられた本体部を備え、前記本体部が取付け先の筐体に締結部によって固定される構成であって、前記本体部は、前記締結部の軸部を通す孔が設けられた取付部を有し、前記取付部の少なくとも１つは、前記筐体と前記本体部との位置決め部を兼ねる。

【発明の効果】

【0006】

本開示は、電気接続部品を小型化できる。

【図面の簡単な説明】

【0007】

【図1】図１は、第１実施形態に係る電気接続ユニットの外観を示す斜視図である。

【図2】図２は、電気接続部品を裏面から見た斜視図である。

【図3】図３は、電気接続ユニットの分解斜視図である。

【図4】図４は、図１に示すIV－IV線の断面図である。

【図5】図５は、電気接続ユニットの一部を拡大して示す断面図である。

【図6】図６（ａ）～図６（ｄ）は、絞り加工の手順を示す説明図である。

【図7】図７は、第２実施形態に係る筐体の外観を示す斜視図である。

【図8】図８は、電気接続ユニットの一部を拡大して示す断面図である。

【図9】図９は、第３実施形態に係る電気接続部品を裏面から見た斜視図である。

【図10】図１０は、電気接続ユニットの縦断面図である。

【図11】図１１は、電気接続ユニットの一部を拡大して示す断面図である。

【図12】図１２は、かしめカラーの取付けの概要を示す説明図である。

【図13】図１３は、第４実施形態に係る電気接続部品を裏面から見た斜視図である。

【図14】図１４は、電気接続ユニットの縦断面図である。

【図15】図１５は、電気接続ユニットの一部を拡大して示す断面図である。

【図16】図１６は、別例の電気接続ユニットの一部を拡大して示す断面図である。

【発明を実施するための形態】

【0008】

最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
［１］本開示の電気接続部品は、配線が一体に設けられた本体部を備え、前記本体部が取付け先の筐体に締結部によって固定される構成であって、前記本体部は、前記締結部の軸部を通す孔が設けられた取付部を有し、前記取付部の少なくとも１つは、前記筐体と前記本体部との位置決め部を兼ねる。

【0009】

本構成によれば、締結部によって筐体に取付けられる電気接続部品において、締結部を取付けるための取付部が、電気接続部品と筐体との位置決め部を兼ねる。このため、取付部と位置決め部とを別々に設ける必要がない。よって、電気接続部品を小型化することが可能となる。

【0010】

［２］上記［１］において、前記本体部は、複数の前記配線の間を絶縁する絶縁部と、前記絶縁部と一体に設けられるとともに前記筐体に前記締結部によって固定されるプレート部と、を有し、前記取付部の少なくとも１つは、前記プレート部に設けられている。この構成によれば、プレート部が薄い部材であるので、電気接続部品の小型化に一層寄与する。

【0011】

［３］上記［２］において、前記取付部の少なくとも１つは、前記プレート部に一体形成されている。この構成によれば、取付部をプレート部と別体で構成する場合に比べて、部品点数を削減することが可能となる。

【0012】

［４］上記［３］において、前記取付部は、前記孔の周縁から前記筐体に向かって突出する突壁を有する絞り加工部を含む。この構成によれば、絞り加工によって取付部をプレート部と一体に簡易に形成することが可能となる。

【0013】

［５］上記［１］において、前記取付部の少なくとも１つは、前記本体部とは独立する別部品を含んで構成されている。この構成によれば、別部品を用いて取付部の製造のバリエーションを増やすことが可能となる。

【0014】

［６］上記［５］において、前記本体部は、複数の前記配線の間を絶縁する絶縁部と、前記絶縁部と一体に設けられるとともに前記筐体に前記締結部によって固定されるプレート部と、を有し、前記別部品は、前記プレート部に形成されたプレート孔に連通するカラー孔を有しつつ、前記プレート部に取付けられるカラーであり、前記取付部の少なくとも１つは、前記プレート孔および前記カラーを含む。この構成によれば、汎用のカラーを用いて取付部を簡易に形成することが可能となる。

【0015】

［７］上記［５］において、前記本体部は、複数の前記配線の間を絶縁する絶縁樹脂であり、前記取付部の少なくとも１つは、前記絶縁樹脂にインサート成型された前記別部品としてのインサートカラーにより構成されている。この構成によれば、配線およびインサートカラーを樹脂でインサート成型するという簡易な方法により、電気接続部品を製造することが可能となる。

【0016】

［８］上記［１］から［７］のいずれかにおいて、前記筐体は、前記取付部に係合する係合部を有し、前記係合部は、前記筐体の表面から突出する突状部を有し、前記突状部が前記取付部に係合しつつ、前記電気接続部品と前記筐体とを位置決めする。この構成によれば、筐体に係合部としての突状部を突出させて電気接続部品に至らせることにより、両者を係合する。このため、例えば取付部が突出形状である場合に、その突出量を高くする必要がない。よって、電気接続部品の小型化に一層寄与する。

【0017】

［９］上記［１］から［７］のいずれかにおいて、前記筐体は、前記取付部に係合する係合部を有し、前記係合部は、前記筐体の表面から凹む凹状部を有し、前記凹状部が前記取付部を収容しつつ、前記電気接続部品と前記筐体とを位置決めする。この構成によれば、筐体に係合部を設ける場合、筐体の表面の一部を凹設する簡易な加工で済む。よって、筐体の簡易な製造に寄与する。

【0018】

［１０］本開示の電気接続ユニットは、配線が一体に設けられた本体部を有する電気接続部品と、前記電気接続部品が締結部によって固定される筐体と、を備える構成であって、前記本体部は、前記締結部の軸部を通す孔が設けられた取付部を有し、前記取付部の少なくとも１つは、前記筐体と前記本体部との位置決め部を兼ねる。この構成によれば、電気接続部品の作用効果と同様の作用効果を得ることができる。

【0019】

［本開示の実施形態の詳細］
（第１実施形態）
本開示の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。各図面では、説明の便宜上、構成の一部を誇張または簡略化して示す場合がある。また、各部分の寸法比率についても、実際とは異なる場合がある。

【0020】

（電気接続ユニット１）
図１に示すように、電気接続ユニット１は、配線２を有する電気接続部品３と、電気接続部品３の取付け先となる筐体４と、を備える。電気接続部品３は、例えば、相手配線（図示略）を配線２にボルト等で固定して取付ける端子台である。配線２は、例えば、大電流が流れる棒状の導体、いわゆる、バスバーである。電気接続ユニット１は、例えば、端子台ユニットである。

【0021】

（電気接続部品３）
図２および図３に示すように、配線２は、電気接続部品３の幅方向（図２等のＹ軸方向）に並ぶように複数設けられている。本例の場合、複数の配線２は、電気接続部品３の幅方向（図２等のＹ軸方向）に等間隔で配置されている。配線２は、例えば、金属製バスバーである。配線２の両端には、相手配線（図示略）を固定するためのボルト等の部材が挿入される挿入孔５が形成されている。

【0022】

電気接続部品３は、例えば、筐体４の内部に搭載されたモータ（図示略）と、外部のインバータ（図示略）と、を電気接続する。モータは、例えば、三相交流モータである。この場合、３本の配線２は、Ｕ相、Ｖ相、Ｗ相を構成する。Ｕ相、Ｖ相、Ｗ相の各配線２には、例えば、互いに位相が１２０度異なる交流信号が流される。各配線２には、三相交流モータに必要な高電圧および大電流の信号が流れる。

【0023】

電気接続部品３は、配線２が一体に設けられた本体部６を備える。電気接続部品３は、本体部６が取付け先の筐体４に締結部７（図３等参照）によって固定される。締結部７は、例えば、ボルトである。本例の場合、本体部６は、複数（本例は、２つ）の締結部７によって筐体４に固定されている。

【0024】

本体部６は、複数設けられた配線２を絶縁するための絶縁部８を有する。絶縁部８の材料は、例えば、樹脂が使用される。絶縁部８は、配線２を支持する配線支持部９と、配線支持部９と交差する方向に延びるフランジ部１０と、を有する。配線支持部９は、フランジ部１０の裏面に設けられるとともに、電気接続部品３を筐体４へ取付けたときに筐体４の開口孔１１（図３参照）に配置される。配線支持部９には、隣同士の配線２を絶縁するための壁部１２が複数立設されている。

【0025】

本体部６は、電気接続部品３を筐体４に取付けるときに使用される金属製のプレート部１４を備える。プレート部１４は、絶縁部８と一体に設けられるとともに、取付け先の筐体４に締結部７によって固定される。プレート部１４は、例えば、配線２とともにインサート成型されることにより、配線２および絶縁部８と一体に形成されている。プレート部１４は、例えば、両端の先端が略テーパ状となる略長板状に形成されている。プレート部１４の材料は、例えば、鉄等の金属材料が使用される。

【0026】

図２に示す通り、電気接続部品３は、電気接続部品３と筐体４との間の隙間を封止するためのシール部材１６を有する。シール部材１６は、例えば、環状に形成されている。シール部材１６は、例えば、ゴムパッキンである。シール部材１６の材料としては、例えば、アクリル材やシリコン材などが使用される。シール部材１６は、シール部材１６を支持するために絶縁部８に設けられたシール支持部１７によって押し付けられている。シール支持部１７は、例えば、配線支持部９を囲むようにフランジ部１０の裏面に環状に形成されている。シール支持部１７は、シール部材１６の両側に一対の位置決め壁１８を有する。

【0027】

配線２、絶縁部８、およびプレート部１４を有するアセンブリは、例えば、インサート成型によって形成されている。具体的には、配線２およびプレート部１４を金型にセットするとともに、金型内に樹脂を充填するインサート成型によって、配線２、絶縁部８、およびプレート部１４が一体化されたアセンブリが製造される。このように、プレート部１４は、インサート成型により、絶縁部８と一体形成されている。

【0028】

（電気接続部品３と筐体４との固定構造）
図３および図４に示すように、本体部６は、締結部７の軸部２１を通す孔２２が設けられた取付部２３を有する。本例の場合、取付部２３の少なくとも１つは、プレート部１４に設けられている。具体的には、取付部２３の少なくとも１つは、プレート部１４に一体形成されている。取付部２３は、プレート部１４の両側に設けられている。このように、本例の場合、プレート部１４は、プレート部１４の幅方向（図３等のＹ軸方向）の両側に各々配置された計２つの取付部２３を有する。

【0029】

図４および図５に示すように、取付部２３は、孔２２の周縁から筐体４に向かって突出する突壁２４を有する絞り加工部を含む。このように、取付部２３は、絞り加工によって形成されている。取付部２３は、前述の孔２２および突壁２４を有する。孔２２の内周面は、ネジ山のない非凹凸形状に形成されている。このように、孔２２の内周面は、凹凸のないフラットな面である。締結部７は、頭部２５を取付部２３の上面に当接させつつ、筐体４に凹設された被締結部２６に軸部２１を締結することにより、プレート部１４を筐体４に固定する。

【0030】

（電気接続部品３と筐体４との位置決め構造）
図３および図４に示す通り、筐体４は、取付部２３に係合する係合部２９を有する。本例の場合、係合部２９は、筐体４の表面３０から突出する突状部３１を有する。係合部２９は、筐体４の両側に設けられることにより、計２つ形成されている。係合部２９は、平面視で周状（本例は、真円状）に形成されている。係合部２９は、突状部３１の内側に凹部３２を有する。被締結部２６は、凹部３２の底面に凹設されるとともに、凹部３２の中心に配置されている。

【0031】

図５に示す通り、係合部２９は、取付部２３を突状部３１に係合させることにより、電気接続部品３と筐体４とを位置決めする。このように、本例の取付部２３の少なくとも１つは、筐体４と本体部６との位置決め部を兼ねる。本例の場合、取付部２３は、突状部３１の内側に係合される。すなわち、取付部２３は、電気接続部品３を筐体４に取付けるとき、突状部３１の内部に嵌合される。突壁２４の高さＨ１は、プレート部１４によって支持されたシール支持部１７の厚みと、シール支持部１７によって押圧されて弾性変形したシール部材１６の厚みと、を合わせた値に設定されている。

【0032】

次に、本実施形態の作用について説明する。
（絞り加工の手順）
図６（ａ）に示すように、プレート部１４に取付部２３を形成するには、まず、プレート部１４の基材（以降、プレート基材３４と記す）を絞り加工機３５にセットする。具体的には、絞り加工機３５の台座部３６にプレート基材３４を載置するとともに、絞り加工機３５の押圧部３７によってプレート基材３４の上面を押さえる。押圧部３７は、プレート基材３４を叩くためのパンチ３８が通過する開口部３９を有する。台座部３６は、パンチ３８により叩かれたときのプレート基材３４の変形をガイドするガイド凹部４０を有する。

【0033】

図６（ｂ）に示すように、絞り加工機３５は、パンチ３８でプレート基材３４を叩く。このとき、パンチ３８の押圧力の負荷により、プレート基材３４に凹み４１が形成される。また、パンチ３８によってプレート基材３４に凹み４１が形成されると、プレート基材３４の端部が凹み４１に向かって引っ張られて移動する。このとき、パンチ３８によってプレート基材３４が強制的に引っ張られることにより、台座部３６の角に対応するプレート基材３４の位置に環状模様が一周刻まれる。

【0034】

そして、図６（ｃ）に示すように、パンチ３８は、凹み４１が必要な深さに達するまで、凹み４１を繰り返し叩く。このとき、パンチ３８による凹み４１の打撃力や、単位時間当たりの打撃回数は、凹み４１の変形量に関係なく一定であることに限らない。例えば、凹み４１を所望の深さとするために、パンチ３８による凹み４１の打撃力や単位時間当たりの打撃回数を、適宜変更させてもよい。

【0035】

図６（ｄ）に示すように、凹み４１の深さが必要深さに到達すると、パンチ３８による叩き加工を終了する。そして、プレート基材３４を絞り加工機３５から取り外すとともに、凹み４１の底壁を治具（図示略）で切削することにより、凹み４１を貫通させる。これにより、孔２２および突壁２４を有する取付部２３が形成される。同様に、プレート基材３４の反対側にも同様の絞り加工を施すことにより、取付部２３が形成される。以上のようにして、取付部２３は、プレート基材３４の両側に形成される。

【0036】

（電気接続部品３の筐体４に対する位置決め）
図３に示す通り、電気接続部品３を筐体４に固定するとき、電気接続部品３の配線支持部９を筐体４の開口孔１１に挿し込むとともに、電気接続部品３に形成された取付部２３の突壁２４を、筐体４に形成された係合部２９の凹部３２に嵌合する。そして、取付部２３の孔２２に締結部７の軸部２１が挿入されるとともに、この軸部２１が凹部３２内の被締結部２６に締結されることにより、電気接続部品３が筐体４に固定される。本例の場合、電気接続部品３は、２つの締結部７で筐体４に固定される。

【0037】

このように、電気接続部品３を筐体４に固定するときは、電気接続部品３の突壁２４が筐体４の凹部３２に嵌合されることにより、電気接続部品３が筐体４に位置決めされる。すなわち、締結部７を通すための取付部２３は、電気接続部品３を筐体４に位置決めするためにも使用される。このため、取付部２３とは別に位置決め部を設ける必要がない。よって、電気接続部品３、ひいては電気接続ユニット１の小型化が可能となる。

【0038】

（第１実施形態の効果）
第１実施形態の電気接続部品３（電気接続ユニット１）によれば、以下のような効果を得ることができる。

【0039】

（1.1）電気接続部品３は、配線２が一体に設けられた本体部６を備え、本体部６が取付け先の筐体４に締結部７によって固定される。本体部６は、締結部７の軸部２１を通す孔２２が設けられた取付部２３を有する。取付部２３の少なくとも１つは、筐体４と本体部６との位置決め部を兼ねる。

【0040】

本構成によれば、締結部７によって筐体４に取付けられる電気接続部品３において、締結部７を取付けるための取付部２３が、電気接続部品３と筐体４との位置決め部を兼ねる。このため、取付部２３と位置決め部とを別々に設ける必要がない。よって、電気接続部品３を小型化することができる。

【0041】

（1.2）本体部６は、複数の配線２の間を絶縁する絶縁部８と、絶縁部８と一体に設けられるとともに筐体４に締結部７によって固定されるプレート部１４と、を有する。取付部２３の少なくとも１つは、プレート部１４に設けられている。この構成によれば、プレート部１４が薄い部材であるので、電気接続部品３の小型化に一層寄与する。

【0042】

（1.3）取付部２３の少なくとも１つは、プレート部１４に一体形成されている。この構成によれば、取付部２３をプレート部１４と別体で構成する場合に比べて、部品点数を削減することができる。

【0043】

（1.4）取付部２３は、孔２２の周縁から筐体４に向かって突出する突壁２４を有する絞り加工部を含む。この構成によれば、絞り加工によって取付部２３をプレート部１４と一体に簡易に形成することができる。

【0044】

（1.5）筐体４は、取付部２３に係合する係合部２９を有する。係合部２９は、筐体４の表面３０から突出する突状部３１を有し、突状部３１が取付部２３に係合しつつ、電気接続部品３と筐体４とを位置決めする。この構成によれば、筐体４に係合部２９としての突状部３１を突出させて電気接続部品３に至らせることにより、両者を係合する。このため、例えば取付部２３が突出形状である場合に、その突出量を高くする必要がない。よって、電気接続部品３の小型化に一層寄与する。

【0045】

（第２実施形態）
次に、第２実施形態を説明する。なお、第２実施形態は、第１実施形態の係合部２９の形状を変更した実施例である。よって、第１実施形態と同一部分には同じ符号を付して説明を省略し、異なる部分についてのみ詳述する。

【0046】

（電気接続部品３と筐体４との位置決め構造）
図７に示すように、係合部２９は、筐体４の表面３０から凹む凹状部４４を有する。凹状部４４は、筐体４の幅方向（図７のＹ軸方向）の両側に設けられることにより、計２つ形成されている。凹状部４４は、平面視で円形状の穴として形成されている。被締結部２６は、凹状部４４の底面において凹状部４４の中心に配置されている。

【0047】

図８に示すように、係合部２９は、取付部２３を凹状部４４に収容することにより、電気接続部品３と筐体４とを位置決めする。本例の場合、取付部２３の突壁２４が凹状部４４に収容されることにより、筐体４と本体部６とが位置決めされる。このように、取付部２３の突壁２４は、凹状部４４の内部に嵌合される。突壁２４の高さＨ２は、プレート部１４によって支持されたシール支持部１７の厚みと、シール支持部１７によって押圧されて弾性変形したシール部材１６の厚みと、凹状部４４の深さと、を合わせた値に設定されている。

【0048】

（電気接続部品３の筐体４に対する位置決め）
図８に示す通り、電気接続部品３を筐体４に固定するとき、電気接続部品３の配線支持部９を筐体４の開口孔１１に挿し込むとともに、電気接続部品３に形成された取付部２３の突壁２４を、筐体４に形成された係合部２９の凹状部４４に嵌合する。そして、取付部２３の孔２２に締結部７の軸部２１が挿入されるとともに、この軸部２１が凹状部４４内の被締結部２６に締結されることにより、電気接続部品３が筐体４に固定される。

【0049】

このように、電気接続部品３を筐体４に固定するときは、電気接続部品３の突壁２４が筐体４の凹状部４４に嵌合されることにより、電気接続部品３が筐体４に位置決めされる。このため、本例の場合も、締結部７を通すための取付部２３が電気接続部品３および筐体４の位置決めにも使用されるので、取付部２３とは別に位置決め部を設ける必要がない。よって、電気接続部品３、ひいては電気接続ユニット１の小型化が可能となる。

【0050】

（第２実施形態の効果）
第２実施形態の構成によれば、上記実施形態に記載の効果に加え、以下の効果を得ることができる。

【0051】

（2.1）係合部２９は、筐体４の表面３０から凹む凹状部４４を有し、凹状部４４が取付部２３を収容しつつ、電気接続部品３と筐体４とを位置決めする。この構成によれば、筐体４に係合部２９を設ける場合、筐体４の表面３０の一部を凹設する簡易な加工で済む。よって、筐体４の簡易な製造に寄与する。

【0052】

（第３実施形態）
次に、第３実施形態を説明する。なお、第３実施形態も第１実施形態および第２実施形態と異なる部分についてのみ詳述する。

【0053】

（電気接続部品３の本体部６の構造）
図９および図１０に示すように、取付部２３は、本体部６とは独立する別部品４７を含んで構成されている。このように、電気接続部品３は、本体部６に取付部２３として取付けられた別部品４７を有する。本例の場合、別部品４７は、例えば、プレート部１４に後付けされたカラー４８である。

【0054】

図１０に示す通り、プレート部１４は、全体が平板状に形成されている。本例の場合、プレート部１４は、例えば、平板状のプレート部１４を孔開け加工することにより形成されたプレート孔１４ａを有する。カラー４８は、このプレート孔１４ａに取付け固定されている。本例の場合、締結部７の軸部２１を通す孔２２は、プレート孔１４ａと、カラー４８が有するカラー孔４９とを含む。また、取付部２３は、プレート孔１４ａおよびカラー４８を含む。

【0055】

図１１に示すように、カラー４８は、プレート孔１４ａにカラー孔４９が連通するように、プレート部１４に後付けされている。プレート孔１４ａとカラー孔４９とは、同軸に配置されている。カラー孔４９の径は、プレート孔１４ａの径と一致するように形成されている。カラー孔４９の内周面は、ネジ山のない非凹凸形状に形成されている。カラー４８は、係合部２９としての凹状部４４に嵌合される。

【0056】

図１２に示すように、カラー４８は、例えば、プレート孔１４ａにかしめ加工によって取付けられるかしめカラーであることが好ましい。本例の場合、カラー４８は、上部の周縁に、かしめのための掛かり代５０を有する。掛かり代５０は、例えば、径方向外側に所定量飛び出した突片である。カラー４８は、プレート孔１４ａの内周面に掛かり代５０をかしめることにより、プレート部１４に取付け固定される。

【0057】

（電気接続部品３の筐体４に対する位置決め）
図１１に示す通り、電気接続部品３を筐体４に固定するときは、電気接続部品３のカラー４８が筐体４の凹状部４４に嵌合されることにより、電気接続部品３が筐体４に位置決めされる。このため、本例の場合も、締結部７を通すためのカラー４８が電気接続部品３および筐体４の位置決めにも使用されるので、カラー４８とは別に位置決め部を設ける必要がない。よって、電気接続部品３、ひいては電気接続ユニット１の小型化が可能となる。

【0058】

（第３実施形態の効果）
第３実施形態の構成によれば、上記実施形態に記載の効果に加え、以下の効果を得ることができる。

【0059】

（3.1）取付部２３の少なくとも１つは、本体部６とは独立する別部品４７を含んで構成されている。この構成によれば、別部品４７を用いて取付部２３の製造のバリエーションを増やすことができる。

【0060】

（3.2）別部品４７は、プレート部１４に形成されたプレート孔１４ａに連通するカラー孔４９を有しつつ、プレート部１４に取付けられるカラー４８である。取付部２３の少なくとも１つは、プレート孔１４ａおよびカラー４８を含む。この構成によれば、汎用のカラー４８を用いて取付部２３を簡易に形成することができる。

【0061】

（第４実施形態）
次に、第４実施形態を説明する。なお、第４実施形態も第１実施形態から第３実施形態と異なる部分についてのみ詳述する。

【0062】

（電気接続部品３の本体部６の構造）
図１３および図１４に示すように、本体部６は、複数の配線２の間を絶縁する絶縁樹脂５３である。このように、配線２を支持する部材は、絶縁樹脂５３の１つのみとなっている。絶縁樹脂５３は、配線２を支持する配線支持部９と、配線支持部９と交差する方向に延びて別部品４７が配置されるフランジ部１０と、を有する形状に形成されている。絶縁樹脂５３の材料としては、例えば、フェノール樹脂などの種々の絶縁材料が使用される。

【0063】

取付部２３の少なくとも１つは、絶縁樹脂５３にインサート成型された別部品４７としてのインサートカラー５４により構成されている。インサートカラー５４は、絶縁樹脂５３の両側に設けられることにより、計２つ形成されている。本例の場合、配線２およびインサートカラー５４がセットされた金型に樹脂を充填するインサート成型により、配線２およびインサートカラー５４が絶縁樹脂５３と一体となった電気接続部品３が形成される。

【0064】

図１５に示すように、インサートカラー５４は、絶縁樹脂５３を厚さ方向（図１５のＺ軸方向）に貫通するように設けられている。インサートカラー５４は、締結部７の軸部２１を通すための孔２２としてのカラー孔５５を有する。カラー孔５５の内周面は、ネジ山のない非凹凸形状に形成されている。

【0065】

（電気接続部品３の筐体４に対する位置決め）
図１５に示す通り、電気接続部品３を筐体４に固定するときは、電気接続部品３のインサートカラー５４が筐体４の凹状部４４に嵌合されることにより、電気接続部品３が筐体４に位置決めされる。このため、本例の場合も、締結部７を通すためのインサートカラー５４が電気接続部品３および筐体４の位置決めにも使用されるので、インサートカラー５４とは別に位置決め部を設ける必要がない。よって、電気接続部品３、ひいては電気接続ユニット１の小型化が可能となる。

【0066】

（第４実施形態の効果）
第４実施形態の構成によれば、上記実施形態に記載の効果に加え、以下の効果を得ることができる。

【0067】

（4.1）本体部６は、複数の配線２の間を絶縁する絶縁樹脂５３である。取付部２３の少なくとも１つは、絶縁樹脂５３にインサート成型された別部品４７としてのインサートカラー５４により構成されている。この構成によれば、配線２およびインサートカラー５４を樹脂でインサート成型するという簡易な方法により、電気接続部品３を製造することができる。

【0068】

（他の実施形態）
なお、本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態および以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。

【0069】

・第１実施形態において、図１６に示すように、位置決め構造は、例えば、平板状のプレート部１４に設けられた孔２２に、筐体４の突状部３１を係合する構造でもよい。すなわち、プレート部１４から突壁２４を省略し、取付部２３に形成された孔２２に筐体４の突状部３１を係合することにより、電気接続部品３を筐体４に位置決めしてもよい。この構成によっても、取付部２３を電気接続部品３および筐体４の位置決めとしても使用することができる。

【0070】

・第１実施形態において、突状部３１は、周方向に間隔を空けて配置された複数の突片部でもよい。
・第１および第２実施形態において、突壁２４は、筒状に限らず、例えば、周方向に断続的に形成されることによって板片として形成されてもよい。

【0071】

・第１および第２実施形態において、絞り加工の工法は、実施例以外の他の工法に適宜変更できる。
・第１および第２実施形態において、プレート部１４は、インサート成型によって絶縁部８に一体形成されることに限定されない。プレート部１４は、例えば、配線２および絶縁部８のアセンブリに対して後付けされる構成でもよい。

【0072】

・第１～第３実施形態において、プレート部１４が四角形状の場合、取付部２３は、４隅に形成されてもよい。これは、第４実施形態の絶縁樹脂５３でも同様である。
・第１～第３実施形態において、取付部２３の孔２２（プレート孔１４ａ）の内周面は、例えば、タップ加工によってネジ山が形成されてもよい。

【0073】

・第１～第３実施形態において、筐体４への電気接続部品３の取付け固定は、全てプレート部１４で行うことに限定されない。例えば、取付け固定の一部がプレート部１４であり、他の部位が絶縁部８であってもよい。

【0074】

・第３および第４実施形態において、別部品４７は、カラー４８（インサートカラー５４）に限らず、他の部材を用いてもよい。
・各実施形態において、配線２は、板状に限らず、柱状でもよい。また、配線２は、柱状とした場合、両端を板状に形成してもよい。

【0075】

・各実施形態において、配線２は、真っ直ぐの形状に限らず、途中で屈曲した形状でもよい。
・各実施形態において、取付部２３の配置位置や個数を適宜変更してもよい。

【0076】

・各実施形態において、取付部２３は、電気接続部品３を筐体４に固定する部位として用いられることに限定されない。例えば、電気接続部品３に他の部品を取り付ける部位として用いられてもよい。

【0077】

・各実施形態において、取付部２３の配置や個数は、適宜変更できる。
・各実施形態において、締結部７は、ボルトやネジに限らず、例えばクリップなどの他の部材を用いてもよい。

【0078】

・各実施形態において、孔２２は、孔周縁の一部が切り欠かれた形状でもよい。
・各実施形態において、複数の取付部２３は、各々異なる形状としてもよい。
・各実施形態において、電気接続部品３は、端子台に限らず、コネクタとしてもよい。この場合、電気接続ユニット１は、端子台ユニットに限らず、コネクタユニットでもよい。

【0079】

・各実施形態において、本開示において使用される「少なくとも１つ」という表現は、所望の選択肢の「１つ以上」を意味する。一例として、本開示において使用される「少なくとも１つ」という表現は、選択肢の数が２つであれば「１つの選択肢のみ」または「２つの選択肢の双方」を意味する。他の例として、本開示において使用される「少なくとも１つ」という表現は、選択肢の数が３つ以上であれば「１つの選択肢のみ」または「２つ以上の任意の選択肢の組み合わせ」を意味する。

【0080】

・各実施形態において、本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。

【符号の説明】

【0081】

１ 電気接続ユニット
２ 配線
３ 電気接続部品
４ 筐体
５ 挿入孔
６ 本体部
７ 締結部
８ 絶縁部
９ 配線支持部
１０ フランジ部
１１ 開口孔
１２ 壁部
１４ プレート部
１４ａ プレート孔（取付部）
１６ シール部材
１７ シール支持部
１８ 位置決め壁
２１ 軸部
２２ 孔
２３ 取付部（位置決め部、絞り加工部）
２４ 突壁
２５ 頭部
２６ 被締結部
２９ 係合部
３０ 表面
３１ 突状部
３２ 凹部
３４ プレート基材
３５ 絞り加工機
３６ 台座部
３７ 押圧部
３８ パンチ
３９ 開口部
４０ ガイド凹部
４４ 凹状部
４７ 別部品
４８ カラー（取付部）
４９ カラー孔
５０ 掛かり代
５３ 絶縁樹脂
５４ インサートカラー（別部品、取付部）
５５ カラー孔
Ｈ１ 高さ
Ｈ２ 高さ

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】