(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155482
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】電解セルシステム
(51)【国際特許分類】
C25B 15/08 20060101AFI20241024BHJP
C25B 1/042 20210101ALI20241024BHJP
C25B 9/00 20210101ALI20241024BHJP
【FI】
C25B15/08 302
C25B1/042
C25B9/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023070238
(22)【出願日】2023-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡本 光
【テーマコード(参考)】
4K021
【Fターム(参考)】
4K021AA01
4K021BA02
4K021CA08
4K021CA09
4K021DC03
(57)【要約】
【課題】より容易に適量の水素極オフガスを還流させる。
【解決手段】電解セルシステムは、電解セルの水素極入口に接続された水素極入口側ラインと、電解セルの水素極出口に接続された水素極出口側ラインと、水を蒸発させて前記水素極入口側ラインに送る蒸発部と、断熱性を有し電解セルと水素極入口ラインと水素極出口ラインと蒸発部とを収容するケースと、水供給ラインと、ケース外に設けられ水供給ラインに接続された流体入口とケース内に設けられ蒸発部に接続された流体出口とケース内に設けられ水素極出口側ラインから分岐して接続された吸気口とを有し流体入口から流体出口に向かって流れる水を作動流体として吸気口を減圧する減圧器と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水蒸気電解により水素を生成する電解セルを含む電解セルシステムであって、
前記電解セルの水素極入口に接続された水素極入口側ラインと、
前記電解セルの水素極出口に接続された水素極出口側ラインと、
水を蒸発させて前記水素極入口側ラインに送る蒸発部と、
断熱性を有し、前記電解セルと前記水素極入口ラインと前記水素極出口ラインと前記蒸発部とを収容するケースと、
水を供給する水供給ラインと、
前記ケース外に位置すると共に前記水供給ラインに接続された流体入口と、前記ケース内に位置すると共に前記蒸発部に接続された流体出口と、前記ケース内に位置すると共に前記水素極出口側ラインから分岐して接続された吸気口とを有し、前記流体入口から前記流体出口に向かって流れる水を作動流体として前記吸気口を減圧する水流減圧器と、
を備える電解セルシステム。
【請求項2】
請求項1に記載の電解セルシステムであって、
前記水供給ラインは、前記水流減圧器に水を供給する第1水供給ラインと、前記水流減圧器を介さずに前記蒸発部に水を供給する第2水供給ラインと、を有する、
電解セルシステム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電解セルシステムであって、
前記水流減圧器は、入口よりも出口の断面積が大きくなっており該出口に前記流体出口を有するディフューザ部と、入口よりも出口の断面積が小さくなっており該入口に前記流体入口を有するノズル部と、互いに向かい合う前記ノズル部の出口と前記ディフューザ部の入口との間に形成されると共に前記吸気口を有する減圧部と、を備える、
電解セルシステム。
【請求項4】
請求項3に記載の電解セルシステムであって、
前記水流減圧器は、前記ノズル部の出口の開口面積を調整するバルブ部、または、前記ノズル部を冷却する冷却部を有する、
電解セルシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、電解セルシステムについて開示する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の電解セルシステムとしては、電気化学セル(高温水蒸気電解セル)と、電気化学セルに水蒸気を含む水素極入口供給ガスを供給する水素極入口供給ラインと、電気化学セルの水素を含む水素極出口ガスを排出する水素極側出口ラインと、水素極入口供給ラインに介在し水素極供給ガス(水蒸気)の圧力を調整する圧力調整機構と、圧力調整機構に水素極出口ガスの一部を循環ガスとして供給する循環ガス吸引機構(エジェクタ)と、を備えるものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した電解セルシステムでは、気体である水蒸気を作動流体として、エジェクタ内部に負圧を発生させ、負圧により水素極出口ガスの一部を循環ガスとして吸引する。発生する負圧は作動流体の密度に依存するため、作動流体を気体とするエジェクタでは、多量の作動流体(水蒸気)の供給を必要とし、大きな負圧を発生させることができないという問題がある。また、発生する負圧は作動流体の速度にも依存するが、水蒸気を安定して一定速度で供給することは困難であり、水素極出口ガスの引き込み量の調整が難しいといった問題もある。
【0005】
本開示の電解セルシステムは、より容易に適量の水素極オフガスを還流させることができる電解セルシステムを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の電解セルシステムは、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本開示の電解セルシステムは、
水蒸気電解により水素を生成する電解セルを含む電解セルシステムであって、
前記電解セルの水素極入口に接続された水素極入口側ラインと、
前記電解セルの水素極出口に接続された水素極出口側ラインと、
水を蒸発させて前記水素極入口側ラインに送る蒸発部と、
断熱性を有し、前記電解セルと前記水素極入口ラインと前記水素極出口ラインと前記蒸発部とを収容するケースと、
水を供給する水供給ラインと、
前記ケース外に位置すると共に前記水供給ラインに接続された流体入口と、前記ケース内に位置すると共に前記蒸発部に接続された流体出口と、前記ケース内に位置すると共に前記水素極出口側ラインから分岐して接続された吸気口とを有し、前記流体入口から前記流体出口に向かって流れる水を作動流体として前記吸気口を減圧する水流減圧器と、
を備えることを要旨とする。
【0008】
この本開示の電解セルシステムでは、液体である水を作動流体として吸気口を減圧して負圧を発生させ、水素極から水素極出口側ラインに排出された水素極オフガスを負圧により吸引して水素極に還流させる。発生する負圧は作動流体の密度に依存するため、気体である水蒸気を作動流体とするものに比して、少ない流量で水素極オフガスを引き込むことができる。この結果、より容易に適量の水素極オフガスを還流させることができる電解セルシステムとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態の電解セルシステムの概略構成図である。
【
図3】他の実施形態に係る水流減圧器の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。
【0011】
図1は、本実施形態の電解セルシステムの概略構成図である。本実施形態の電解セルシステム10は、電解セルスタック21を含む電解モジュール20と、水流減圧器40(アスピレータ)と、電解モジュール20に水を供給する水供給系50と、電解モジュール20にスイープガスとしての空気を供給する空気供給系60と、電解動作により生成された水素を回収する水素回収系70と、を備える。
【0012】
電解モジュール20は、電解セルスタック21の他に、蒸発器31やヒータ32,33,34などを含み、これらは、断熱材で形成された箱形のモジュールケース35に収容されている。
【0013】
電解セルスタック21は、固体電解質21aと、当該固体電解質21aの一方の面側に配置される水素極21bと、当該固体電解質21aの他方の面側に配置されるLSCF等の酸素極21cと、をそれぞれ含む複数の固体酸化物形の単セルを備える。電解セルスタック21は、電源からの電力の供給を受けて、水素極21bに供給される水蒸気を電気分解して水素を生成する。なお、電源としては、系統電源や、再生可能エネルギ(例えば太陽光発電装置)、蓄電池などを用いることができる。
【0014】
電解セルスタック21は高温で作動するため、固体電解質21aや水素極21b、酸素極21cは、セラミックス材料により作製される。また、触媒により水蒸気を酸素イオンと水素とに分解するため、水素極21bには、触媒作用をもつニッケル等の金属とセラミックスとのサーメットが用いられる。水素極21bの触媒活性を良好に維持するためには、水素極21bを還元雰囲気に保ち、金属の酸化を防止する必要がある。このため、本実施形態では、水素極21bに供給される水蒸気には、水素ガス(還元用水素)が混合される。
【0015】
電解セルスタック21の水素極21bの入口には、水素極入口側配管22の一端が接続され、当該水素極入口側配管22の他端には、蒸発器31と水流減圧器40とを介して水供給系50が接続されている。また、水素極入口側配管22には、当該水素極入口側配管22を流れる水蒸気を昇温させるためのヒータ33が設置されている。電解セルスタック21の酸素極21cの入口には、酸素極入口側配管23の一端が接続され、当該酸素極入口側配管23の他端には、空気供給系60が接続されている。また、酸素極入口側配管23には、当該酸素極入口側配管23を流れるスイープガス(空気)を昇温させるためのヒータ34が設置されている。
【0016】
また、電解セルスタック21の水素極21bの出口には、水素極出口側配管24の一端が接続され、当該水素極出口側配管24の他端には、水素回収系70が接続されている。電解セルスタック21の酸素極21cの出口には、酸素極21cで発生した酸素をスイープガスと共にモジュールケース35外へ排出するための酸素極出口側配管25が接続されている。
【0017】
水供給系50は、水(原料水)を貯留する水タンク51と、水タンク配管52と、液送ポンプ53と、第1水供給管54と、第2水供給管55と、を備える。
【0018】
水タンク51には水タンク配管52の一端が接続され、水タンク配管52の他端には、第1水供給管54の一端と第2水供給管55の一端とが接続されている。第1水供給管54の他端には、水流減圧器40が接続されている。第2水供給管55の他端には、蒸発器31が接続されている。また、水タンク配管52には、液送ポンプ53が設置され、第1水供給管54と第2水供給管55とには、マスフローコントローラ56,57が設置されている。液送ポンプ53を作動させることで、水タンク51から取り出された水の一部は、第1水供給管54により水流減圧器40を介して蒸発器31に供給され、水タンク51から取り出された水の他の一部は、第2水供給管55により蒸発器31に直接に供給される。本実施形態では、第1水供給管54と第2水供給管55とにそれぞれマスフローコントローラ56,57が設置されているから、第1水供給管54からの水の供給流量と第2水供給管55からの水の供給流量とを個別に制御することができる。
【0019】
水流減圧器40は、アスピレータであり、作動流体として水を利用してベンチュリ効果により負圧状態をつくり、負圧により水素極出口側配管24を流れる水素極オフガスを引き込んで蒸発器31に供給する。水流減圧器40は、
図2に示すように、入口より出口の断面積が小さくなっており当該入口に給水口41aを有するノズル部41と、入口より出口の断面積が大きくなっており当該出口に放水口42aを有するディフューザ部42と、互いに向かい合うノズル部41の出口とディフューザ部42の入口との間に形成されると共に吸気口43aを有する減圧部43と、減圧部43に設けられた逆流防止弁44と、を備える。水流減圧器40は、電解モジュール20の内外境界部分に位置するように、モジュールケース35を貫通して当該モジュールケース35に固定される。給水口41aは、電解モジュール20の外側に位置し、給水口41aには、第1水供給管54が接続されている。放水口42aは、電解モジュール20の内側に位置し、放水口42aには、蒸発器31が接続されている。吸気口43aは、電解モジュール20の内側に位置し、吸気口43aには、水素極出口側配管24から分岐する還流配管26に接続されている。
【0020】
空気供給系60は、図示しないフィルタに一端が接続されると共に酸素極入口側配管23に他端が接続された空気供給管61と、空気供給管61に設置されたエアブロワ62と、を備える。エアブロワ62を駆動することにより、フィルタを介して空気供給管61に吸入された空気は、ヒータ34により、必要温度まで昇温させられてから電解セルスタック21の酸素極21cに供給される。
【0021】
水素回収系70は、水素極オフガスから水素を回収するものであり、水素を貯蔵する水素タンク71と、水素極オフガスに含まれる水蒸気を凝縮させて気液分離する気液分離器72と、を備える。気液分離器72は、冷却水と熱交換が可能な熱交換流路を有し、当該熱交換流路の入口には、水素極出口側配管24の他端が接続され、当該熱交換流路の出口には、回収配管73の一端が接続されている。回収配管73の他端には、水素タンク71が接続されている。水素と水蒸気とを含む水素極オフガスは、冷却水との熱交換により、水素極オフガスに含まれる水蒸気が凝縮させられた後、図示しない昇圧ポンプの駆動により回収配管73を通って水素タンク71に回収される。また、気液分離器72で水素極オフガスが凝縮することにより得られた凝縮水は、上述した水タンク51に蓄えられる。水タンク51に蓄えられた水は、電解用の水蒸気を生成するための原料水に用いられる。
【0022】
次に、こうして構成された本実施形態の電解セルシステム10の動作(電解動作)について説明する。
【0023】
電解動作では、電解セルスタック21の水素極21bには、水蒸気と若干量の還元用水素とが水素極入口側配管22を介して導入され、電解セルスタック21の酸素極21cには、スイープガスとしての空気が酸素極入口側配管23を介して導入される。そして、電源により電解セルスタック21の端子間に所定電圧の電力が供給されると、水素極21bに導入された水蒸気は、水素極21bにおいて電解作用により水素と酸素イオン(O2-)とに分解され、当該酸素イオンが固体電解質21aを透過することで酸素極21cにおいて酸素が生成される。水素極21bには、水蒸気と共に若干量の還元用水素も供給されるため、水素極21bが還元雰囲気に保たれ、当該水素極21bの触媒金属が酸化するのを防止することができる。
【0024】
水素極21bで生成された水素は、電解未反応の水蒸気と共に水素極オフガスとして水素極出口側配管24に排出される。水素極出口側配管24に排出された水素極オフガスの一部は、水供給系50(第1水供給管54)から水流減圧器40に供給される水を作動流体として発生する負圧により還流配管26を介して吸引され、還元用水素として水素極21bに還流する。また、水素極オフガスの残りは、水素回収系70へ供給される。そして、水素回収系70に供給された水素極オフガスは、気液分離器72で冷却水との熱交換により冷却させられて水蒸気が除去された後、回収配管73を通って水素タンク71に回収される。
【0025】
ここで、上述したように、水素極21bの触媒金属の酸化を防止するため、水素極21bには、水素ガス(還元用水素)が供給される。本実施形態では、水流減圧器40において、水の流れによるベンチュリ効果を用いて、水素極21bから水素極出口側配管24に排出された水素と水蒸気とを含む水素極オフガスを吸引して水素極21bに還流させる。電解モジュール20内の高温の水素極オフガスを還流させることで、水素回収系70で回収した水素を水素極21bに供給する場合に比して、熱損失が少なく、エネルギ効率を向上させることができる。また、電解モジュール20内において、水素極オフガスを還流させるため、高温環境下で高耐久性を有したポンプやブロワは不要である。
【0026】
ベンチュリ効果は、流体の流れのエネルギと圧力のエネルギとの和が一定であるという次式(1)のベルヌーイの定理により導かれる。ここで、式(1)中、「ρ」は流体の密度[kg/m3]を示し、「V」は流体の速度[m/s]を示し、「P」は圧力[kg/m2]を示す。式(1)により、圧力Pは、速度Vの二乗および密度ρに比例することがわかる。すなわち、水流減圧器40の減圧部43で発生する圧力Pは、ノズル部41の入口の断面積Sinとノズル部41の出口の断面積Soutとの比と水の密度と流速(マスフローコントローラ56の設定流量)とによって決まる。流体として密度ρの大きい水(液体)を用いることにより、水蒸気(気体)を用いる場合に比して、圧力Pを大幅に小さく(負圧の絶対値を大幅に大きく)することができる。これにより、少量の水の供給により、水流減圧器40で発生させる負圧を大きくすることができ、広い調整幅をもって水素極オフガスの引き込み量を調整することができる。さらに、マスフローコントローラ56により水の流量を制御することができ、安定した流速で水流減圧器40に水を供給することができる。このため、水流減圧器40で発生する負圧の変動を少なくして、水素極オフガスの引き込み量を安定させることができる。
【0027】
ρ×V2+P=一定 …(1)
【0028】
また、本実施形態では、水供給系50として、水流減圧器40を介して蒸発器31に水を供給する第1水供給管54と、直接に蒸発器31に水を供給する第2水供給管55と、を備える。このため、第1水供給管54から供給する水により適量の水素極オフガスを還流させながら、第1水供給管54から供給する水では水蒸気量が不足する場合には、マスフローコントローラ57により第2水供給管55から不足する量の水を供給することができる。
【0029】
水を作動流体として水流減圧器40の減圧部43で負圧を発生させるためには、ノズル部41内で水が蒸発しないことが必要である。このため、モジュールケース35の断熱層の断熱が不足する場合、ノズル部41に熱が伝達され、ノズル部41内で水が蒸発するおそれがある。この場合、
図3に示すように、水流減圧器40は、ノズル部41の周辺に冷却チラー(冷却水循環装置)141を備え、冷却チラー141に冷却水を循環させてもよい。これにより、ノズル部41を冷却してノズル部41内で水が蒸発するのを防止することができる。なお、ディフューザ部42は冷却されないから、ディフューザ部42を流れる水の一部は電解モジュール20内の熱により蒸発する場合がある。
【0030】
また、水流減圧器40は、
図3に示すように、ノズル部41内にノズル部41の出口に対して進退移動が可能なニードルバルブ142を備えてもよい。ノズル部41の出口をニードルバルブ142の先端が出入りすることで、ノズル部41の出口の断面積Soutを可変、すなわちノズル部41の入口の断面積Sinとノズル部41の出口の断面積Soutとの比を可変とすることができる。ニードルバルブ142を用いることにより、ノズル部41の出口を流れる水の速度を調整することができ、減圧部43内の負圧の大きさ、すなわち水素極オフガスの引き込み量を調整することができる。この結果、第1水供給管54のみで水素極オフガスの還流量と水蒸気の発生量の双方を調整することが可能となる。この場合、第2水供給管55は省略されてもよい。
【0031】
上述した実施形態では、水タンク配管52に液送ポンプ53が設置され、第1水供給管54および第2水供給管55にそれぞれマスフローコントローラ56,57が設置されるものとした。しかし、水タンク配管52の液送ポンプ53を省略し、第1水供給管54および第2水供給管55に、それぞれマスフローコントローラ56,57に代えて液送ポンプが設置されるようにしてもよい。
【0032】
上述した実施形態では、水素極入口側配管22には、ヒータ33が設けられたが、水素極出口側配管24に排出された水素極オフガスまたは酸素極出口側配管25に排出された酸素極オフガスと水素極入口側配管22を流れる水蒸気と熱交換させるための熱交換器が設けられてもよい。また、酸素極入口側配管23には、ヒータ34が設けられたが、水素極出口側配管24に排出された水素極オフガスまたは酸素極出口側配管25に排出された酸素極オフガスと酸素極入口側配管23を流れる空気(スイープガス)と熱交換させるための熱交換器が設けられてもよい。
【0033】
上述した実施形態では、電解セルシステム10は、高温水蒸気電解により水素を生成する電解動作を行なうものとした。しかし、電解セルシステム10は、電解セルスタック21を可逆作動固体酸化物形セルスタックとして用いることで、上述した電解動作を行なうECモードと、燃料ガスとしての水素と空気に含まれる酸素との反応により発電する発電動作を行なうFCモードとを有してもよい。FCモードでは、電解セルスタック21の水素極21bには、燃料ガスとして水素タンク71からの水素が水素極入口側配管22を介して導入され、電解セルスタック21の酸素極21cには、空気供給系60からの空気が酸素極入口側配管23を介して導入される。そして、酸素極21cでは、酸化物イオン(O2-)が生成され、当該酸化物イオンが固体電解質21aを透過して水素極21bで水素と反応することにより電気エネルギが得られる。
【0034】
以上、本開示を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本開示はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本開示は、電解セルシステムの製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0036】
10 電解セルシステム、21 電解セルスタック(電解セル)、22 水素極入口側配管(水素極入口側ライン)、24 水素極出口側配管(水素極出口側ライン)、31 蒸発器(蒸発部)、35 モジュールケース(ケース)、40 水流減圧器、41 ノズル部、41a 給水口(流体入口)、42 ディフューザ部、42a 放水口(流体出口)、43 減圧部、43a 吸気口、54 第1水供給管(第1水供給ライン)、55 第2水供給管(第2水供給ライン)、141 冷却チラー(冷却部)、142 ニードルバルブ(バルブ部)。