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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155491
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置及び高周波窓
(51)【国際特許分類】
   H05H 1/46 20060101AFI20241024BHJP
【FI】
H05H1/46 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023070252
(22)【出願日】2023-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003942
【氏名又は名称】日新電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】池田 拓弥
【テーマコード(参考)】
2G084
【Fターム(参考)】
2G084BB24
2G084BB30
2G084CC13
2G084CC33
2G084DD04
2G084DD12
2G084DD25
2G084DD38
2G084DD40
2G084DD55
2G084DD62
2G084FF22
(57)【要約】
【課題】真空容器の内部を真空排気する真空排気装置への負荷を十分に抑える。
【解決手段】プラズマ処理装置(100)は、真空容器(1)と、真空容器(1)の外部に設けられるアンテナ(2)と、真空容器(1)におけるアンテナ(2)に臨む位置に形成される開口部(1x)を塞ぐスリット板(7)と、スリット板(7)に形成されたスリット(7x)を真空容器(1)の外側から塞ぐ誘電体板(8)と、誘電体板(8)を真空容器(1)の外側から気密に覆うシート部材(21)と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部が真空排気される真空容器と、
前記真空容器の外部に設けられ、高周波電流が導入されることにより、前記真空容器の内部にプラズマを発生させるためのアンテナと、
前記真空容器における前記アンテナに臨む位置に形成される開口部を塞ぐスリット板と、
前記スリット板に形成されたスリットを前記真空容器の外側から塞ぐ誘電体板と、
前記誘電体板を前記真空容器の外側から気密に覆うシート部材と、を備えることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項2】
前記シート部材の周縁部は、前記スリット板に固定されることを特徴とする請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記周縁部と、前記スリット板と、の間をシールするシール部材をさらに備えることを特徴とする請求項2に記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記シート部材は、前記誘電体板に接触するように張られた状態で、前記スリット板に固定されることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
前記誘電体板は、1枚の板で構成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項6】
前記真空容器の外側から、前記シート部材を前記スリット板に固定する固定部材をさらに備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項7】
前記シート部材の厚みは、50μm以上0.5mm以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項8】
請求項1から3のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置が備える高周波窓であって、前記スリット板、前記誘電体板及び前記シート部材を備えることを特徴とする高周波窓。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プラズマ処理装置及び高周波窓に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、真空容器におけるアンテナに臨む位置に形成された開口を塞ぐスリット板と、スリット板に形成されたスリットを真空容器の外側から塞ぐ誘電体板と、を備えるプラズマ処理装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-111595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示のプラズマ処理装置では、誘電体板が破損した場合、真空容器の外部から真空容器の内部に気体が入り込むことにより、真空容器の内部の圧力が急激に上昇する。これにより、上記プラズマ処理装置では、真空容器の内部を真空排気する真空排気装置に大きな負荷がかかる点において改善の余地がある。本開示の一態様は、真空容器の内部を真空排気する真空排気装置への負荷を十分に抑えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本開示の一態様に係るプラズマ処理装置は、内部が真空排気される真空容器と、前記真空容器の外部に設けられ、高周波電流が導入されることにより、前記真空容器の内部にプラズマを発生させるためのアンテナと、前記真空容器における前記アンテナに臨む位置に形成される開口部を塞ぐスリット板と、前記スリット板に形成されたスリットを前記真空容器の外側から塞ぐ誘電体板と、前記誘電体板を前記真空容器の外側から気密に覆うシート部材と、を備える。
【発明の効果】
【0006】
本開示の一態様によれば、真空容器の内部を真空排気する真空排気装置への負荷を十分に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本開示の実施形態1に係るプラズマ処理装置の構成を示す縦断面図である。
図2図1に示すプラズマ処理装置の構成を示す横断面図である。
図3図1に示すプラズマ処理装置が備える高周波窓の周辺構造を示す断面図である。
図4図3に示す高周波窓をZ軸正方向から見た図である。
図5図3に示す高周波窓が備える誘電体板が破損した場合を示す断面図である。
図6】本開示の実施形態2に係るプラズマ処理装置が備える高周波窓の周辺構造を示す断面図である。
図7】本開示の実施例1において誘電体板が破損した様子と、真空容器の内部が真空排気されている様子と、を示す写真である。
図8】本開示の実施例2において誘電体板が破損した様子と、真空容器の内部が真空排気されている様子と、を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
〔実施形態1〕
<プラズマ処理装置100の構成>
図1は、本開示の実施形態1に係るプラズマ処理装置100の構成を示す縦断面図である。図2は、図1に示すプラズマ処理装置100の構成を示す横断面図である。図1及び図2において、複数のスリット7xが並ぶ方向をX軸方向、真空容器1からアンテナ2に向かう方向をZ軸方向、X軸方向及びZ軸方向の両方の方向に直交する方向をY軸方向とする。X軸方向及びZ軸方向は互いに直交する方向である。ここで説明した方向の定義については、他の図においても適用されるものとする。
【0009】
プラズマ処理装置100は、誘導結合型のプラズマPを用いて基板Wに処理を施すものである。基板Wは、例えば、液晶ディスプレイもしくは有機ELディスプレイ等のフラットパネルディスプレイ(FPD)用の基板、または、フレキシブルディスプレイ用のフレキシブル基板等である。また、基板Wに施す処理は、例えば、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法もしくはスパッタ法による膜形成、プラズマによるエッチング、アッシングまたは被覆膜除去等である。
【0010】
図1及び図2に示すように、プラズマ処理装置100は、真空容器1と、アンテナ2と、高周波電源3と、整合回路31と、真空排気装置4と、基板ホルダ5と、ヒータ51と、バイアス電源6と、高周波窓9と、を備える。
【0011】
<真空容器1の構成>
真空容器1は、例えば金属製の容器であり、真空容器1の上壁1aには、開口部1xが形成されている。開口部1xは、上壁1aにおけるアンテナ2に臨む位置に形成される。真空容器1は、グランドと接続されることにより電気的に接地されている。真空容器1の内部は真空排気装置4によって真空排気される。真空排気装置4は、真空容器1の内部を真空排気するポンプを有する。真空容器1の内部には、例えば図示しない流量調整器、または、真空容器1に形成される少なくとも1つのガス導入口11を経由して、ガスGが導入される。
【0012】
ガスGは、基板Wに施す処理内容に応じたものにすればよい。例えば、プラズマCVD法によって基板Wに膜形成を行う場合には、ガスGは、原料ガスまたはそれを希釈ガス(例えばH)で希釈したガスである。原料ガスがSiHの場合はSi膜を、SiH+NHの場合はSiN膜を、SiH+Oの場合はSiO膜を、SiF+Nの場合はSiN:F膜(フッ素化シリコン窒化膜)を、それぞれ基板W上に形成することができる。
【0013】
<アンテナ2の構成>
アンテナ2は、真空容器1の外部に設けられており、開口部1xに臨む位置に配置されている。アンテナ2は、高周波電流IRが導入されて磁界を発生させることにより、真空容器1の内部にプラズマPを発生させるためのものである。アンテナ2の形状は、棒状または円筒状である。アンテナ2の本数は1本に限らず、複数本であってもよい。
【0014】
図2に示すように、アンテナ2の両側は、Z軸正方向に向かって湾曲している。アンテナ2の一端部である給電端部2aは、整合回路31を介して、高周波電源3に接続されている。アンテナ2の他端部である終端部2bは、グランドと接続されることにより電気的に接地されている。なお、終端部2bは、コンデンサまたはコイル等を介してグランドと接続されてもよい。
【0015】
<高周波電源3の構成>
高周波電源3は、整合回路31を介して、アンテナ2に高周波電流IRを通電させることができる。高周波の周波数は例えば一般的な13.56MHzであるが、これに限られるものではなく適宜変更されてもよい。高周波電源3はグランドと接続されている。高周波電源3によってアンテナ2に高周波電流IRが導入されることにより、アンテナ2の周囲に磁界が発生する。
【0016】
<基板ホルダ5の構成>
真空容器1の内部には、基板Wを保持する基板ホルダ5が設けられている。基板ホルダ5にはバイアス電源6からバイアス電圧が印加されてもよい。バイアス電圧は、例えば負の直流電圧または負のバイアス電圧等であるが、これに限られるものではない。このようなバイアス電圧によって、例えば、プラズマP中の正イオンが基板Wに入射する時のエネルギーを制御して、基板Wの表面に形成される膜の結晶化度の制御等を行うことができる。基板ホルダ5内には、基板Wを加熱するヒータ51が設けられていてもよい。バイアス電源6はグランドに接続されている。
【0017】
<高周波窓9の構成>
図3は、図1に示すプラズマ処理装置100が備える高周波窓9の周辺構造を示す断面図である。図4は、図3に示す高周波窓9をZ軸正方向から見た図である。図5は、図3に示す高周波窓9が備える誘電体板8が破損した場合を示す断面図である。図4では、真空容器1の図示を省略している。
【0018】
高周波窓9は、真空容器1の内部でプラズマPを発生させるために、アンテナ2が発生させる高周波磁場を真空容器1の内部に導入させるものである。図3及び図4に示すように、高周波窓9は、スリット板7と、誘電体板8と、粘着材料Zと、シール部材20と、シート部材21と、を有する。
【0019】
<スリット板7の構成>
スリット板7は、真空容器1の上壁1aに形成される開口部1xを塞ぐように、上壁1aに設けられている。スリット板7には、スリット板7の厚み方向、つまり、Z軸方向に貫通するスリット7xが形成されている。図4に示すように、スリット板7は、互いに平行な複数のスリット7xが形成された平板状のものである。スリット板7の機械強度は、誘電体板8の機械強度よりも高いことが好ましく、スリット板7におけるZ軸方向に沿った厚みは、誘電体板8におけるZ軸方向に沿った厚みよりも大きいことが好ましい。
【0020】
スリット板7は、電気的に接地される真空容器1に設けられることにより、電気的に接地される。スリット板7は、電気的に接地されることにより、アンテナ2から発生する磁界を真空容器1の内部に透過させるとともに、アンテナ2に高周波電流IRが導入される場合にアンテナ2の電位に由来して発生する電界を遮断するものとなる。アンテナ2から発生する磁界は、誘電体板8及びシート部材21を介して複数のスリット7xから真空容器1の内部に導入される。
【0021】
スリット板7は、例えばCu、Al、Zn、Ni、Sn、Si、Ti、Fe、Cr、Nb、C、Mo、WもしくはCoを含む群から選択される1種の金属またはそれらの合金(例えばステンレス合金またはアルミニウム合金等)等の金属材料から構成される。スリット板7と上壁1aとの間には、プラズマ処理装置100が備えるシール部材Sが介在している。シール部材Sは、スリット板7と上壁1aとの間を真空シールする。シール部材Sは、Oリングまたはゴムシート等のガスケットである。
【0022】
<誘電体板8の構成>
誘電体板8は、スリット板7に形成された複数のスリット7xを真空容器1の外側から塞ぐように、スリット板7に設けられる。誘電体板8は、複数のスリット7xでの気体の移動を遮断する、つまり、開口部1xでの気体の移動を遮断する。これにより、誘電体板8は、真空容器1の内部の気密を保持する。
【0023】
誘電体板8は、全体が誘電体物質で構成された平板状のものであり、例えばアルミナ、炭化ケイ素もしくは窒化ケイ素等のセラミックス、石英ガラス、無アルカリガラス等の無機材料、または、フッ素樹脂等の樹脂材料等からなる。誘電体板8は、アンテナ2から発生する磁界を真空容器1の内部に透過させる。これにより、真空容器1の内部において、磁界が形成されて誘導電界が発生し、誘導電界によってガスGが電離されることによりプラズマPが発生する。
【0024】
誘電体板8は、1枚の板で構成されていることが好ましい。誘電体板8が1枚の板で構成されていることにより、誘電体板8の厚みを小さくし易い。よって、アンテナ2と真空容器1との間の距離を容易に短くできるため、真空容器1の内部に高周波磁場を効率良く発生させ易い。
【0025】
<粘着材料Zの構成>
粘着材料Zは、スリット板7及び誘電体板8の少なくとも一方に塗布されて、スリット板7及び誘電体板8の間においてスリット7xを取り囲むように設けられている。粘着材料Zは、蒸気圧の低い高粘性の潤滑油であり、例えば真空グリスである。粘着材料Zは、スリット板7と誘電体板8との間を真空シールするものであり、複数のスリット7xの全てを取り囲むように設けられており、互いに隣り合うスリット7xの間にも設けられている。
【0026】
<シート部材21の構成>
シート部材21は、誘電体板8を真空容器1の外側から気密に覆うものである。シート部材21は、樹脂から構成され、例えばカプトン(登録商標)等のポリイミドフィルムである。シート部材21は、誘電正接が0.01以下のものが好ましく、0.005以下のものがより好ましい。シート部材21として誘電正接が0.01以下のものを用いることにより、シート部材21の過度な発熱を抑制することができる。
【0027】
シート部材21の周縁部21aは、スリット板7に固定される。シート部材21の周縁部21aがスリット板7に固定されるため、シート部材21が誘電体板8を真空容器1の外側から気密に覆うことができる。また、スリット板7、誘電体板8及びシート部材21をまとめて交換することができ、交換の作業性を向上することができる。換言すると、プラズマ処理装置100から高周波窓9を容易に交換することができる。
【0028】
上述のように、シート部材21が誘電体板8を真空容器1の外側から気密に覆う。これにより、図5に示すように、誘電体板8が破損した場合であっても、誘電体板8の破損部分Bがシート部材21によって真空容器1の外側から覆われる状態となり、真空容器1の内部の気密性が維持される。よって、真空容器1の内部の圧力が急激に上昇することを防ぐことができ、真空容器1の内部を真空排気する真空排気装置4への負荷を十分に抑えることができる。また、誘電体板8の破片が真空容器1の外部に飛散することを防止できる。
【0029】
また、シート部材21は、誘電体板8に接触するように張られた状態で、スリット板7に固定されることが好ましい。これにより、シート部材21が誘電体板8に密着し、撓みなくスリット板7に固定される。
【0030】
よって、誘電体板8が破損した場合、シート部材21が誘電体板8に密着するため、シート部材21と、スリット板7または誘電体板8と、の間に摩擦力が生じる。したがって、シート部材21とスリット板7との固定箇所にかかる力を低減でき、シート部材21がスリット板7から外れる可能性を低減できる。
【0031】
さらに、シート部材21が撓みなくスリット板7に固定されるため、誘電体板8が破損した場合、誘電体板8の破損部分Bでのシート部材21の凹み部分を十分に小さくできる。よって、シート部材21の凹み部分から誘電体板8の破損部分Bにかかる力を十分に小さくすることができ、誘電体板8のさらなる破損を防ぐことができる。
【0032】
シート部材21の厚みは、50μm以上0.5mm以下であることが好ましい。シート部材21の厚みが50μm以上であることにより、誘電体板8が破損した場合であっても、シート部材21が誘電体板8の破損部分Bを覆う状態を維持できる程度に、シート部材21を十分に丈夫なものにすることができる。また、シート部材21の厚みが0.5mm以下であることにより、アンテナ2と真空容器1との間の距離を十分に短くできるため、真空容器1の内部に高周波磁場を効率良く発生させることができる。
【0033】
なお、シート部材21の周縁部21aは、スリット板7ではなく真空容器1の上壁1aに固定されてもよい。この場合、シート部材21は、スリット板7及び誘電体板8を真空容器1の外側から気密に覆う。
【0034】
<シール部材20の構成>
シール部材20は、シート部材21の周縁部21aと、スリット板7と、の間をシールする。シール部材20は、Oリングまたはゴムシート等のガスケットである。周縁部21aとスリット板7との間がシール部材20によってシールされるため、誘電体板8が破損した場合において、シート部材21とスリット板7との間の気密性をより向上することができる。
【0035】
また、シール部材20におけるZ軸方向に沿った厚みは、誘電体板8におけるZ軸方向に沿った厚みと略同一であることが好ましい。これにより、シート部材21と誘電体板8との接触面積を極力大きくすることができる。よって、誘電体板8が破損した場合、シート部材21と、スリット板7または誘電体板8と、の間に摩擦力を生じさせ易くできる。なお、シール部材20におけるZ軸方向に沿った厚みは、誘電体板8におけるZ軸方向に沿った厚み以下であってもよい。
【0036】
〔実施形態2〕
本開示の実施形態2について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、実施形態1にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。図6は、本開示の実施形態2に係るプラズマ処理装置101が備える高周波窓9Aの周辺構造を示す断面図である。図6に示すように、プラズマ処理装置101は、プラズマ処理装置100に比べて、高周波窓9が高周波窓9Aに変更される点が異なる。
【0037】
高周波窓9Aは、高周波窓9に比べて、固定部材22を有する点が異なる。固定部材22は、真空容器1の外側から、シート部材21をスリット板7に固定する。具体的には、固定部材22は、シート部材21の周縁部21aをスリット板7に固定する。また、固定部材22、シート部材21の周縁部21a及びシール部材20をZ軸方向に貫通するネジが、スリット板7に固定される。これにより、固定部材22、シート部材21の周縁部21a及びシール部材20がスリット板7に固定される。
【0038】
上述のように、固定部材22が真空容器1の外側から、シート部材21をスリット板7に固定する。このため、固定部材22によりシート部材21を誘電体板8に容易に密着させ、スリット板7にシート部材21を撓みなくより強固に固定することができる。よって、誘電体板8が破損した場合、シート部材21が誘電体板8に密着するため、シート部材21と、スリット板7または誘電体板8と、の間に摩擦力が生じる。これにより、シート部材21とスリット板7との固定箇所にかかる力を低減でき、シート部材21がスリット板7から外れる可能性を低減できる。
【0039】
また、アンテナ2の両側は、Z軸正方向に向かって湾曲していることにより、アンテナ2が固定部材22と干渉しないようにしつつ、アンテナ2と真空容器1との間の距離を十分に短くすることができる。なお、2枚のシール部材20がZ軸方向に重なっていてもよい。2枚のシール部材20のうち、Z軸負方向側のシール部材20は、スリット板7と誘電体板8との間の位置まで延伸していてもよい。
【0040】
〔実施例1〕
本開示の実施例1では、誘電体板8が破損した場合、図6に示すプラズマ処理装置101が備える真空排気装置4が、真空容器1の内部を真空排気したときについて図7を用いて説明する。図7は、本開示の実施例1において誘電体板8が破損した様子と、真空容器1の内部が真空排気されている様子と、を示す写真である。
【0041】
図7の符号701に示すように、誘電体板8に亀裂B1が入った状態を考える。この状態で、真空排気装置4は、真空容器1の内部を真空排気した。このとき、図7の符号702に示すように、シート部材21が破けることなく、誘電体板8の亀裂B1がシート部材21によって真空容器1の外側から覆われる状態となり、真空容器1の内部の気密性が維持された。よって、誘電体板8に亀裂B1が入った状態であっても、シート部材21によって真空容器1の内部の気密性を維持することができる。
【0042】
〔実施例2〕
本開示の実施例2では、誘電体板8が破損した場合、図6に示すプラズマ処理装置101が備える真空排気装置4が、真空容器1の内部を真空排気したときについて図8を用いて説明する。図8は、本開示の実施例2において誘電体板8が破損した様子と、真空容器1の内部が真空排気されている様子と、を示す写真である。
【0043】
図8の符号801に示すように、誘電体板8のうち1つのスリット7xを覆う部分が脱落し、誘電体板8に脱落部分B2が生じた状態を考える。この状態で、真空排気装置4は、真空容器1の内部を真空排気した。このとき、図8の符号802に示すように、シート部材21は、誘電体板8の脱落部分B2でスリット7xに向かって凹んだ状態となった。
【0044】
しかし、シート部材21が破けることなく、誘電体板8の脱落部分B2がシート部材21によって真空容器1の外側から覆われる状態となり、真空容器1の内部の気密性が維持された。よって、誘電体板8に脱落部分B2が生じた状態であっても、シート部材21によって真空容器1の内部の気密性を維持することができる。
【0045】
〔まとめ〕
本開示の態様1に係るプラズマ処理装置は、内部が真空排気される真空容器と、前記真空容器の外部に設けられ、高周波電流が導入されることにより、前記真空容器の内部にプラズマを発生させるためのアンテナと、前記真空容器における前記アンテナに臨む位置に形成される開口部を塞ぐスリット板と、前記スリット板に形成されたスリットを前記真空容器の外側から塞ぐ誘電体板と、前記誘電体板を前記真空容器の外側から気密に覆うシート部材と、を備える。
【0046】
シート部材が誘電体板を真空容器の外側から気密に覆う。これにより、誘電体板が破損した場合であっても、誘電体板の破損部分がシート部材によって真空容器の外側から覆われる状態となり、真空容器の内部の気密性が維持される。よって、真空容器の内部の圧力が急激に上昇することを防ぐことができ、真空容器の内部を真空排気する真空排気装置への負荷を十分に抑えることができる。また、誘電体板の破片が真空容器の外部に飛散することを防止できる。
【0047】
本開示の態様2に係るプラズマ処理装置では、上記態様1において、前記シート部材の周縁部は、前記スリット板に固定されてもよい。シート部材の周縁部がスリット板に固定されるため、シート部材が誘電体板を真空容器の外側から気密に覆うことができる。また、スリット板、誘電体板及びシート部材をまとめて交換することができ、交換の作業性を向上することができる。
【0048】
本開示の態様3に係るプラズマ処理装置は、上記態様2において、前記周縁部と、前記スリット板と、の間をシールするシール部材をさらに備えてもよい。シート部材の周縁部とスリット板との間がシール部材によってシールされる。このため、誘電体板が破損した場合において、シート部材とスリット板との間の気密性をより向上することができる。
【0049】
本開示の態様4に係るプラズマ処理装置は、上記態様1から3のいずれかにおいて、前記シート部材は、前記誘電体板に接触するように張られた状態で、前記スリット板に固定されてもよい。
【0050】
シート部材が誘電体板に接触するように張られた状態でスリット板に固定されることにより、シート部材が誘電体板に密着し、撓みなくスリット板に固定される。よって、誘電体板が破損した場合、シート部材が誘電体板に密着するため、シート部材と、スリット板または誘電体板と、の間に摩擦力が生じる。これにより、シート部材とスリット板との固定箇所にかかる力を低減でき、シート部材がスリット板から外れる可能性を低減できる。
【0051】
さらに、シート部材が撓みなくスリット板に固定されるため、誘電体板が破損した場合、誘電体板の破損部分でのシート部材の凹み部分を十分に小さくできる。よって、シート部材の凹み部分から誘電体板の破損部分にかかる力を十分に小さくすることができ、誘電体板のさらなる破損を防ぐことができる。
【0052】
本開示の態様5に係るプラズマ処理装置では、上記態様1から4のいずれかにおいて、前記誘電体板は、1枚の板で構成されていてもよい。誘電体板が1枚の板で構成されていることにより、誘電体板の厚みを小さくし易い。よって、アンテナと真空容器との間の距離を容易に短くできるため、真空容器の内部に高周波磁場を効率良く発生させ易い。
【0053】
本開示の態様6に係るプラズマ処理装置は、上記態様1から5のいずれかにおいて、前記真空容器の外側から、前記シート部材を前記スリット板に固定する固定部材をさらに備えてもよい。
【0054】
固定部材が真空容器の外側から、シート部材をスリット板に固定する。このため、固定部材によりシート部材を誘電体板に容易に密着させ、スリット板にシート部材を撓みなくより強固に固定することができる。よって、誘電体板が破損した場合、シート部材が誘電体板に密着するため、シート部材と、スリット板または誘電体板と、の間に摩擦力が生じる。これにより、シート部材とスリット板との固定箇所にかかる力を低減でき、シート部材がスリット板から外れる可能性を低減できる。
【0055】
本開示の態様7に係るプラズマ処理装置は、上記態様1から6のいずれかにおいて、前記シート部材の厚みは、50μm以上0.5mm以下であってもよい。シート部材の厚みが50μm以上であることにより、誘電体板が破損した場合であっても、シート部材が誘電体板の破損部分を覆う状態を維持できる程度に、シート部材を十分に丈夫なものにすることができる。また、シート部材の厚みが0.5mm以下であることにより、アンテナと真空容器との間の距離を十分に短くできるため、真空容器の内部に高周波磁場を効率良く発生させることができる。
【0056】
本開示の態様8に係る高周波窓は、上記態様1から7のいずれかのプラズマ処理装置が備える高周波窓であって、前記スリット板、前記誘電体板及び前記シート部材を備えてもよい。
【0057】
本開示は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本開示の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0058】
1 真空容器
1x 開口部
2 アンテナ
4 真空排気装置
7 スリット板
7x スリット
8 誘電体板
9、9A 高周波窓
20 シール部材
21 シート部材
21a 周縁部
22 固定部材
100、101 プラズマ処理装置
図1
図2
図3
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図5
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図8