(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155492
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】印刷装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20241024BHJP
【FI】
B41J2/01 301
B41J2/01 401
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023070253
(22)【出願日】2023-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 浩徳
(72)【発明者】
【氏名】村中 大翔
(72)【発明者】
【氏名】渥美 英敏
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 昌和
(72)【発明者】
【氏名】竹之内 努
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼山 智博
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EC03
2C056EC04
2C056EC06
2C056EC37
2C056FA10
2C056JA01
2C056JC13
2C056KB13
2C056KC02
2C056KD10
(57)【要約】
【課題】消費電力を抑えつつユーザに合わせた脱臭性能を得ることができる印刷装置を提供する。
【解決手段】印刷部が収容される本体ケーシング90と、前記本体ケーシング内の空気中に含まれる臭気成分を除去して該本体ケーシングの外部へ排出する脱臭ユニット10と、を備えた印刷装置1。印刷装置1は、入力部4aと、前記脱臭ユニットを複数の駆動モードで駆動制御可能であって、前記入力部から送信された指示信号に基づいて、前記選択された1つの駆動モードにて前記脱臭ユニットを駆動する制御部80と、を備え、前記複数の駆動モードは、前記印刷部による印刷開始時から印刷終了時までの時間帯である第1の時間帯だけ前記脱臭ユニットを駆動させる第1の駆動モードと、前記第1の時間帯と、該第1の時間帯の前後の印刷が行われていない所定の時間帯である第2の時間帯とにおいて、前記脱臭ユニットを駆動させる第2の駆動モードと、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被印刷物に対して印刷を施す印刷部が収容される本体ケーシングと、
前記本体ケーシング内の空気中に含まれる臭気成分を除去して該本体ケーシングの外部へ排出する脱臭ユニットと、
を備えた印刷装置において、
ユーザからの指示を受け付ける入力部と、
前記脱臭ユニットを予め設定された駆動タイミングが異なる複数の駆動モードで駆動制御可能であって、前記入力部から送信された前記駆動モードを選択する指示信号に基づいて、選択された1つの駆動モードにて前記脱臭ユニットを駆動させる制御部と、
を備え、
前記複数の駆動モードは、
前記印刷部による印刷開始時から印刷終了時までの時間帯である第1の時間帯だけ前記脱臭ユニットを駆動させる第1の駆動モードと、
前記第1の時間帯と、該第1の時間帯の前後の印刷が行われていない所定の時間帯である第2の時間帯とにおいて、前記脱臭ユニットを駆動させる第2の駆動モードと、を含むことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記制御部及び前記脱臭ユニットに対して電力を供給する主電力供給部と、
前記主電力供給部からの電力を前記印刷部に供給する副電力供給部と、を備え、
前記主電力供給部及び前記副電力供給部は、それぞれ、電力を供給可能なON状態と電力の供給を停止するOFF状態とに切り替え可能に構成され、
前記第2の駆動モードは、前記第2の時間帯における前記脱臭ユニットの駆動タイミングが異なる複数のパターンを有し、
前記複数のパターンは、
前記副電力供給部がON状態となった場合に前記脱臭ユニットを駆動させて、該副電力供給部がOFF状態となった場合に前記脱臭ユニットの駆動を停止する第1のパターンと、
前記主電力供給部がON状態となった場合に前記脱臭ユニットを駆動させて、該主電力供給部がOFF状態となった場合に前記脱臭ユニットの駆動を停止する第2のパターンと、を含み、
前記制御部は、前記第2の駆動モードが選択された際に前記入力部から送信された前記パターンを選択する指示信号に基づいて、選択された1つのパターンにて前記脱臭ユニットを駆動させることを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記複数のパターンは、
前記脱臭ユニットの駆動開始時間及び駆動停止時間を指示するタイマ指示信号が送信された場合に、前記第2の時間帯において、前記駆動開始時間から前記駆動停止時間までの時間帯だけ前記脱臭ユニットを駆動させる第3のパターンを含むことを特徴とする請求項2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記脱臭ユニットは、前記本体ケーシング内の空気を該脱臭ユニット内へ吸引するファンを有し、
前記制御部は、前記ファンの回転数をPWM信号で制御し、
前記PWM信号のデューティー比は、前記第1の時間帯よりも前記第2の時間帯の方が低くなるように設定されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記脱臭ユニットは、前記本体ケーシング内の空気を該該脱臭ユニット内へ吸引するファンを有し、
前記制御部は、前記ファンの回転数をPWM信号で制御し、前記PWM信号のデューティー比は、前記第1の時間帯、前記第2の時間帯であって前記副電力供給部がON状態である第1の非印刷時間帯、及び、前記主電力供給部がON状態且つ前記副電力供給部がOFF状態である第2の非印刷時間帯の順に低くなるように設定されていることを特徴とする請求項2又は3に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記入力部からの指示信号を受けて、前記第1の時間帯、前記第1の非印刷時間帯、及び、前記第2の非印刷時間帯のそれぞれに対して前記デューティー比を変更可能なファン駆動調節部を有することを特徴とする請求項5に記載の印刷装置。
【請求項7】
前記複数の駆動モードは、
前記脱臭ユニットの駆動を常時停止する第3の駆動モードを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置、特に、装置内部で生じた臭気を脱臭するための脱臭ユニットを備えた印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
対象物に画像や文字を印刷する印刷装置では、印刷に使用するインクとして、例えば、顔料と有機溶剤とを含む溶剤インクや、顔料と紫外線硬化成分とを含む紫外線(UV)硬化インク等が用いられており、これらのインクは、印刷時に臭気を発生する。
【0003】
近年では、カフェ等の飲食を伴う様な商業的環境に印刷装置を設置する状況も生じており、このような環境下では、設置機器からの臭気を可及的に除去することが望まれる。それ故、印刷時に発生する臭気を脱臭してから装置の外部へ排出する脱臭ユニットを備えた印刷装置が開発されている。
【0004】
例えば、特許文献1では、紫外線硬化インクを用いて対象物に印刷を施す印刷装置において、印刷時に生じた装置本体内の空気中に含まれる臭気成分を除去してから装置本体の外部へ排出する脱臭ユニットを備えた印刷装置が記載されている。この脱臭ユニットは、ファンの駆動によって、装置本体内の空気を脱臭手段に導き入れて臭気成分を除去するとともに、脱臭された空気を装置本体の外部へ排出するようにしている。この印刷装置では、インクを吐出する印刷部が作動する印刷時に、脱臭ユニットが駆動して装置本体内の空気を脱臭し、印刷が終了すると脱臭ユニットが駆動停止するように自動制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の印刷装置では、印刷時に脱臭ユニットを駆動させることにより、印刷時にインクから発生する臭気を抑制することができるとともに、印刷終了時に脱臭ユニットを自動停止させることで、脱臭ユニットの駆動による消費電力を抑えることができる。
【0007】
しかしながら、臭気に対する感度は人によって異なるため、印刷時のみでは十分に臭気を除去できないことがあり、飲食を伴う環境で印刷装置を使用する場合には、臭気に敏感なユーザが不快を感じることのないように配慮しなければならないという状況が有る。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、消費電力を抑えつつユーザに合わせた脱臭性能を得ることができる印刷装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係る印刷装置は、被印刷物に対して印刷を施す印刷部が収容される本体ケーシングと、前記本体ケーシング内の空気中に含まれる臭気成分を除去して該本体ケーシングの外部へ排出する脱臭ユニットと、を備えた印刷装置において、ユーザからの指示を受け付ける入力部と、前記脱臭ユニットを予め設定された駆動タイミングが異なる複数の駆動モードで駆動制御可能であって、前記入力部から送信された前記駆動モードを選択する指示信号に基づいて、選択された1つの駆動モードにて前記脱臭ユニットを駆動させる制御部と、を備え、前記複数の駆動モードは、前記印刷部による印刷開始時から印刷終了時までの時間帯である第1の時間帯だけ前記脱臭ユニットを駆動させる第1の駆動モードと、前記第1の時間帯と、該第1の時間帯の前後の印刷が行われていない所定の時間帯である第2の時間帯とにおいて、前記脱臭ユニットを駆動させる第2の駆動モードと、を含むことを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、ユーザが入力部によって指示した駆動モードの指示信号に基づいて制御部が脱臭ユニットを駆動制御する。そして、例えば、ユーザが印刷装置から発生される臭気が気になる環境においては、ユーザが第2の駆動モードを選択することで、印刷開始時から印刷終了時までの時間帯のみならず、その前後の印刷が行われていない時間帯においても脱臭ユニットを駆動させて本体ケーシング内の臭気成分を除去することができる。したがって、印刷装置から臭気が排出されることを必要なレベルに応じて防止することができる。また、例えば、ユーザが臭気を特段に気にすることのない環境下で印刷装置を使用する場合には、入力部によって第1の駆動モードを選択することで、印刷が行われている時間帯にのみ脱臭ユニットを駆動させて、消費電力を抑えることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、印刷装置の消費電力を抑えながら、ユーザの要望に合わせた有効な脱臭性能を得ることができ、印刷装置の設置場所の多様化やユーザの趣向の多様化に対して的確に対応することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施の形態である印刷装置の斜視図である。
【
図4】印刷装置の概略構成を示すブロック図である。
【
図8】印刷装置における脱臭ユニットの配置説明図である。
【
図9】脱臭ユニットの駆動モードを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら本発明に係る印刷装置1の一実施の形態について説明する。
図1は本発明の一実施の形態である印刷装置1の斜視図、
図2は印刷装置1の装置本体2の側面図、
図3は印刷装置1の背面図、
図4は印刷装置1の概略構成を示すブロック図である。印刷装置1は、印刷を施す印刷部60及び臭気を脱臭する脱臭ユニット10を備えた装置本体2と、装置本体2に対して情報の入力操作を行う入力部である操作端末4と、を備えている。
図4に示すように、装置本体2は通信部40を備え、操作端末4は端末通信部4bを備えており、装置本体2と操作端末4とは、通信部40及び端末通信部4bを介して、データを送受信可能に構成されている。
【0014】
図1において、符号U及びDは上方及び下方、符号Fr及びRrは前方及び後方、符号L及びRは左方及び右方を示している。ここで、前方Fr及び後方Rrとは、装置本体2の正面にいるユーザから見て、ユーザに向かう方向及びユーザから遠ざかる方向をそれぞれ意味し、左方L及び右方Rとは、装置本体2の正面にいるユーザから見た左方向及び右方向をそれぞれ意味する。また、本実施の形態では、装置本体2のインクヘッド50の移動方向を主走査方向Yといい、主走査方向Yと平面視で直交する方向を副走査方向Xといい、主走査方向Y及び副走査方向Xと直交する方向を高さ方向Zという。本実施の形態において、主走査方向Yは左右方向と一致し、副走査方向Xは前後方向と一致し、高さ方向Zは上下方向と一致している。
【0015】
図1及び
図4に示すように、印刷装置1の装置本体2は、被印刷物を載置するテーブル50と、被印刷物に対してインクを吐出して印刷を施すインク吐出ヘッド64を有する印刷部60と、インク吐出ヘッド64と被印刷物とを相対的に移動させる移動機構70と、装置本体2の内部で生じた臭気を脱臭するための脱臭ユニット10と、印刷部60、移動機構70及び脱臭ユニット90の駆動を制御する制御部80と、外部電源と接続される電源部75と、通信部40と、これらを収容する本体ケーシング90と、を備えている。
【0016】
印刷対象である被印刷物は、例えば、柔軟性のある記録紙や樹脂シート、剛性のある板材、各種ケース、小型電子機器、日用品等である。被印刷物の素材や形状は特に限定されるものではなく、例えば、紙、樹脂、布帛、金属、木、ガラス等の素材、また、平面形状や立体形状の物とすることができる。印刷装置1は、テーブル50に被印刷物を複数載置した状態で各被印刷物に印刷を施すことが可能である。
【0017】
本体ケーシング(以下、単に「ケーシング」とも称する)90は、本体部92と、フロントカバー96と、を備えている。本体部92は、底壁部92aと、前壁部92bと、後壁部92cと、左側壁部92dと、右側壁部92eと、上壁部92fとで囲まれた箱状に形成されており、本体部92の前面から上面に亘って開口した開口部93を有している。右側壁部92eには通気孔95が設けられている。通気孔95は、後述するガイドレール72に対して、前方側かつ下方側となる領域に形成されている。
図3に示すように、ケーシング90は、脱臭ユニット10の臭気除去フィルター18を通過した空気をケーシング90の外部へ排出させる排気孔94を有している。本実施の形態では、装置本体2の背面を形成する後壁部92cに、上下方向に長いスリット状の排気孔94を複数設けている。
図3に示すように、右側壁部92eには電源スイッチ98が設けられている。電源スイッチ98は、後述する電源部75の主電力供給部76をON状態とOFF状態とに切り替えるスイッチである。
【0018】
本体部92は、印刷装置1のテーブル50、印刷部60、移動機構70及び制御部80は、直接的又は間接的に支持している。フロントカバー96は、本体部92の開口部93を開閉自在に覆う半透明の板状に形成されている。
【0019】
テーブル50は、被印刷物を下方から支持するものであり、平板状に形成されている。テーブル50の上面は、被印刷物が載置される平面状の載置面50aを形成している。載置面50aは、前後方向及び左右方向に広がり、主走査方向Yと副走査方向Xは、載置面50aと平行な方向となっている。
【0020】
移動機構70は、インク吐出ヘッド64を搭載するキャリッジ71と、ガイドレール72と、キャリッジ71をガイドレール72に沿って移動させる図示していないキャリッジ移動機構とを備える。ガイドレール72は、テーブル50よりも上方に配置され、主走査方向Yに延びている。本実施の形態では、ガイドレール72がケーシング90の前後方向の中央部に配置されている。キャリッジ71は、内部にインク吐出ヘッド64を収容した状態で、ガイドレール72に係合されている。キャリッジ移動機構はモータを備えており、モータの駆動力によって、キャリッジ71をガイドレール72に沿って主走査方向Yへ移動させる。
【0021】
また、移動機構70は、
図4に示すように、テーブル50を移動させる図示していないテーブル移動機構を備える。テーブル移動機構は、テーブル50をガイドレール72よりも下方側で上下方向に移動させる昇降装置と、テーブル50を副走査方向Xである前後方向に移動させる水平移動装置とを有している。なお、
図2では、テーブル50が最も上昇した位置であって最も前方側へ移動した状態を示している。
【0022】
図5に示すように、印刷部60は、タンク収容ボックス61に収容された複数のインクタンク62と、インク吐出ヘッド64と、インクタンク62とインク吐出ヘッド64とを繋ぐインク流路63と、キャップ66と、インク排出流路68と、廃液タンク69と、を備える。インクタンク62は、例えばインクカートリッジなどのインクを貯留する容器であり、インクの種類(例えばインクの色ごと等)に応じて1つ以上設けられる。
図1では、一例として6つのインクタンク62が記載されている。インクタンク62の形状は任意に設定でき、例えばパウチ状や箱状とすることができる。インクタンク62は、インク吐出ヘッド64よりも上方に配置されており、インク流路63は各インクタンク62に対して設けられている。
【0023】
インク吐出ヘッド64は、インクタンクから62供給されたインクを微小な液滴状に精密に制御して被印刷物に吐出する。インク吐出ヘッド64は、下面にインクを吐出する複数のノズル孔64aが形成されたノズル面64bを有する。ノズル面64bは、印刷が行われていない非印刷時に、キャップ66によって覆われる。
【0024】
キャップ66は、
図1及び
図2に示すようにガイドレール72の右端部に設定されたインク吐出ヘッド64のホームポジション位置の下方側に配置されており、
図5に示すキャッピング機構67によって駆動されてノズル面64bに対して装着・取り外しされる。ここでホームポジション位置とは、非印刷時にインク吐出ヘッド64が待機する位置である。キャッピング機構67は、キャップ66を支持して、キャップ66を上下方向へ移動させる機構であり、ホームポジション位置まで移動したインク吐出ヘッド64のノズル面64bに対して、非印刷時にキャップ66を装着し、印刷開始時にノズル面64bからキャップ66を取り外す。
図2では、キャップ66が下方側へ移動してノズル面64bから取り外された状態を示している。このように、非印刷時にノズル面64bがキャップ66で覆われることにより、インク吐出ヘッド64に付着したインクが硬化してノズル孔64aが詰まることを防止することができる。キャップ66は、インク排出流路68を介して廃液タンク69が接続されており、キャップ66内のインクは、インク排出流路68を通って廃液タンク69に排出される。
【0025】
脱臭ユニット10は、ケーシング90内で発生した臭気を除去するものであり、ケーシング90内に配置されている。
図6及び
図7に示すように、脱臭ユニット10は、壁部で仕切られた空気流路11と、空気中の臭気成分を除去して脱臭する臭気除去部である臭気除去フィルター18と、ケーシング90内の空気を脱臭ユニット10の空気流路11内に吸引する吸引部であるファン22と、空気中に含まれるインクのミストを吸収可能な吸収体38、を備えている。なお、
図7において符号26で示した部分は、ファン22に電気を供給するためのケーブルの出入口を示している。
【0026】
空気流路11は、ケーシング90内に設けられ、本実施の形態では両端が開口した略直方体状の筐体24で形成されている。筐体24は、壁部を構成する、底板24aと、底板24aから立設された一対の側壁24b,24cと、一対の側壁の上端を連結する上板24dとを有している。筐体24は、2つの筐体パーツ、すなわち一方の側壁24bを形成する板状の第1部材24-1と、他方の側壁24cと上板24dを形成する断面L字状の第2部材24-2と、を組み合わせて構成されている。なお、
図7では、筐体24内を理解しやすいように第2部材24-2を半透明状態で示している。また、本実施の形態では、筐体24の底板24aとして、ケーシング90の底壁部92aを用いており、第1部材24-1及び第2部材24-2は、ネジ等を用いて底壁部92aに固定される。本実施の形態では、空気流路11の上流側に脱臭除去フィルター18を配置しており、下流側にファン22を配置している。
【0027】
臭気除去フィルター18は、筐体24の一方の開口端部に配置され、この開口を塞ぐ直方体状に形成されている。本実施の形態では、臭気除去フィルター18の一例として、活性炭フィルターを用いている。臭気除去フィルター18が配置される筐体24の開口端部には、気密部材32が取り付けられており、この気密部材32を間に挟んで筐体24の開口端部に臭気除去フィルター18が設置される。気密部材32は、例えば、柔軟性、弾力性に富んだ発泡シール材などを使用することができる。
図7に示すように筐体24の一方の開口端部には、底壁24aから開口端部の外側へ延設されたフィルター受け部28が設けられており、臭気除去フィルター18は、このフィルター受け部28に載置される。また、筐体24の上板24dには、フィルター受け部28に載置された臭気除去フィルター18を気密部材32側へ付勢する付勢手段であるL字状の板バネ30が取り付けられている。板バネ30は、フィルター受け部28とともに臭気除去フィルター18を上下方向で挟持しつつ、臭気除去フィルター18を気密部材32側へ付勢する。
【0028】
ファン22は、脱臭除去フィルター18の下流側に配置されている。本実施の形態では、空気流路11内において、臭気除去フィルター18から所定距離だけ離れた位置に、空気流路11を仕切る板状部材20が配置されており、ファン22は、この板状部材20に取り付けられている。板状部材20は、中央部に貫通孔を有しており、ファン22は、この板状部材20の下流側の表面に、板状部材20の貫通孔を覆うように設置されている。このように、臭気除去フィルター18とファン22との間に、臭気除去フィルター18の下流側端面と板状部材20とで仕切られた空間、すなわちチャンバーを設けることで、ファン22を駆動した際に脱臭ユニット10に吸引される空気が、臭気除去フィルター18の全域を均一に通過するようにすることができる。
【0029】
ファン22は、吸引した空気を空気流路11内に吹き出す吹出口22aを有している。ファン22の吹出口22aは、下方側(筐体24の底板22a側)を向くように開口している。本実施の形態では、ファン22の一例として、シロッコファンを用いている。
図2及び4に示すように、筐体24の下流側の開口端部は、脱臭ユニット10をケーシング90内に設置した状態で、ケーシング94の後壁部92cに当接しており、この後壁部92cによって筐体24の下流側の開口端部が覆われている。
図3に示すように、筐体24の開口端部を覆う後壁部92cには、吹出口22aから吹き出された空気をケーシング90の外部へ排出するための排気孔94が複数設けられている。各排気孔94は、吹出口22aよりも上方側に設けられている。
【0030】
さらに、筐体24内には、空気中に含まれる霧状のインクであるミストを吸収可能な吸収体38が配置されている。吸収体38は、発泡樹脂等の多孔質材料で形成され、吸水性を有している。本実施の形態では、吹出口22aと対向する筐体24の底壁24a表面にシート状の吸収体38を配置している。
【0031】
図1に示すように、本実施の形態の脱臭ユニット10は、ケーシング90の内部において、左方側かつ後方側(背面側)に配置されている。本実施の形態では、脱臭ユニット10がテーブル50よりも左方側に配置されており、装置本体2において、ガイドレール72よりも前方側かつテーブル50よりも左方側の領域(すなわち、脱臭ユニット10の前方側の領域)には、空間部が設けられている。なお、脱臭ユニット10の配置場所はこれに限られず、
図8に示すように、後壁部92cの一部をケーシング90の外側に向かって凸状に形成し、その内部に脱臭ユニット10を配置するようにしてもよい。
【0032】
上述した脱臭ユニット10は、制御部10によってファン22の駆動を制御する、具体的にはファン22の回転数をPWM信号で制御することによって駆動制御される。PWM信号のデューティー比は、後述する制御部80のファン駆動調節部83によって変更可能に構成されている。
【0033】
図4に示すように、制御部80は、印刷部60、移動機構70及び脱臭ユニット10と通信可能に接続されており、これらの動作を制御する。また、制御部80は、装置本体2の通信部40を介して操作端末4と通信可能であって、操作端末4から送信された電気信号に基づいて、印刷部60、移動機構70及び脱臭ユニット10の動作を制御することができる。制御部80は、例えば、操作端末4から送信された印刷データ等を受信するインターフェイス(I/F)、制御プログラムを実行する中央演算処理装置(CPU)、制御プログラムを格納するROM、CPUが処理を実行する際に作業領域として使用されるRAM、及び、各種データを格納する記録媒体等を備えている。
【0034】
本実施の形態において、制御部80は、記憶部81と、タイマ設定部82と、ファン駆動調節部83と、を備える。記憶部81には、脱臭ユニット10のファン22の駆動を制御する制御プログラムが格納されており、この制御プログラムでは、ファン22を駆動させるタイミングが異なる複数の駆動モードが予め設定されている。制御部80は、複数の駆動モードの中から選択された一つの駆動モードに基づいて脱臭ユニット10を駆動制御する。各駆動モードについては、後段で詳説する。
【0035】
タイマ設定部82は、操作端末4から送信されたタイマ指示信号に基づいて、脱臭ユニット10の駆動開始時間と駆動停止時間とを設定可能に構成されている。ファン駆動調節部83は、操作端末4から送信されたPWM信号のデューティー比を指示するデューティー比指示信号に基づいて、ファン22を駆動させるPWM信号のデューティー比を設定可能に構成されている。
【0036】
図4に示すように、装置本体2は、商用電源等の図示していない外部電源に接続されて装置本体2を起動させるための電力を供給する電源部75を備えている。電源部75は、通信部40、制御部80及び脱臭ユニット10に対して電力を供給する主電力供給部76と、主電力供給部76からの電力を印刷部60及び移動機構70に供給する副電力供給部78と、を備える。主電力供給部76及び副電力供給部78は、それぞれ電気回路によって構成されている。
【0037】
主電力供給部76は、本体装置2に設けられた電源スイッチ98(
図3参照)のON操作によって、電力を供給可能な出力状態(以下、「ON状態」とも称する)となり、電源スイッチ98のOFF操作によって、電力の供給を停止する出力停止状態(以下、「OFF状態」とも称する)となるように、ON/OFF状態を切り替え可能に構成されている。
【0038】
副電力供給部78は、操作端末4にインストールされた印刷装置用のアプリケーション(以下、「印刷用アプリケーション」ともいう)4dを起動によって、電力を供給可能な出力状態(以下「ON状態」とも称する)となり、印刷用アプリケーション4dを終了させることで、電力の供給を停止する出力停止状態(以下、「OFF状態」とも称する)となるように、ON/OFF状態を切り替え可能に構成されている。具体的には、操作端末4において印刷用アプリケーション4dを起動又は終了すると、操作端末4は端末通信部4bから副電力供給部78をON状態又はOFF状態にするための信号を送信し、この信号を装置本体2の通信部40が受信すると、制御部80が受信した信号に応じて副電力供給部78をON状態又はOFF状態に切り替える。なお、副電力供給部78は、操作端末4の印刷用アプリケーション4dを起動した後、操作端末4から本体装置2に対して一定時間データ通信が行われなかった場合に、印刷用アプリケーション4dが起動中であっても自動的にOFF状態となるように構成することも可能である。
【0039】
印刷装置1は、例えば装置本体2の電源スイッチ98がON状態であっても、節電等の目的で、一定時間放置されたときにスリープ状態に切り替わるように構成されているものがある。本実施の形態では、電源スイッチ98により主電力供給部76がOFF状態からON状態に切り替えられたときに、副電力供給部78のOFF状態を維持して、装置本体2がスリープ状態となり、その後、副電力供給部78がON状態に切り替えられたときにスリープ状態が解消されて印刷可能なスタンバイ状態となるように構成されている。なお、副電力供給部78のON/OFF状態の切り替えは、例えば、装置本体2に設けた専用のスイッチ(図示せず)の操作によって行ってもよいし、装置本体2に操作パネルが設けられている場合には、この操作パネルの操作によって、ON/OFF状態の切り替えが可能となるように構成してもよい。
【0040】
操作端末4は、装置本体2とデータ通信可能に接続される端末であり、ユーザからの指示を受け付ける入力部として機能する。ユーザは操作端末4を用いて、被印刷物に対して印刷を施すための印刷データや、脱臭ユニット10の駆動のタイミングを選択する指示信号を装置本体2に対して送信することができる。操作端末4は、記憶装置や中央演算処理装置(CPU)等を備えたコンピュータであり、装置本体2と通信するための通信装置や情報を表示するディスプレイ等を備えている。本実施の形態の操作端末4は、
図4に示すように、データの送受信を行う端末通信部4bと、タッチパネル4aと、端末制御部4bと、を備えている。
【0041】
タッチパネル4aは、情報を入力する入力部及び情報を表示する表示部として機能する。操作端末4は、例えば、タブレット端末やモバイル端末とすることができ、汎用の端末に、装置本体2を作動させるためのソフトウエアを端末制御部4bの記憶部にインストールすることによって、装置本体2の印刷部60や脱臭ユニット10を作動させるための指示情報を受け付ける入力部として機能させることができる。本実施の形態では、操作端末4にインストールされた印刷用アプリケーション4dを起動して、タッチパネル4aで印刷用アプリケーション4dを操作することにより、装置本体2を作動させるための指示情報を入力することができる。なお、印刷装置1は、操作端末4とともに又は操作端末4に代えて、装置本体2に入力部及び表示部として機能する操作パネルを設ける構成であってもよい。
【0042】
次に、上述した印刷装置1における脱臭ユニット10の動作について説明する。主電力供給部76から電力が供給されている状態で制御部80が脱臭ユニット10を作動させると、脱臭ユニット10のファン22が駆動し、ケーシング90内の空気が脱臭ユニット10の空気流路11内に吸引される。また、ファン22の駆動により、ケーシング90の隙間、特に、本体部92とフロントカバー96との間の隙間や、本体部92に設けられた通気孔95から、外部の空気がケーシング内90に流れ込む。脱臭ユニット10の空気流路11に吸引された空気は、臭気除去フィルター18を通過することにより脱臭される。臭気除去フィルター18を通過した空気は、ファン22の吹出口22aから吹き出されて、筐体24の底壁24aに衝突した後、衝突により流れ方向が変更されて排出孔94からケーシング90の外部へ排出される。空気流路11内に吸い込まれる空気の中には、インクのミストが含まれることがあるが、このミストは、底壁24aに配置された吸収体38に吸収させることができる。
【0043】
次に、上述した印刷装置1における脱臭ユニット10の駆動モードについて説明する。本実施の形態の印刷装置1は、操作端末4で起動された印刷用アプリケーション4dを操作することにより、脱臭ユニット10を駆動させるタイミングを変更可能に構成されている。具体的には、印刷装置1は、制御部80に設定されたファン22の駆動タイミングが異なる複数の駆動モードの中から、選択された1つの駆動モードに基づいて、脱臭ユニット10が駆動される。
図9に示すように、本実施の形態では、複数の駆動モードとして、第1の駆動モードと、第2の駆動モードと、第3の駆動モードとが設定されている。なお、
図9では、各モードにおいて、ファン22を駆動している状態を「ON」とし、ファン22を停止している状態を「OFF」として記載している。
【0044】
第1の駆動モードは、印刷部60による印刷開始時から印刷終了時までの時間帯(以下、「第1の時間帯」とも称する)だけ脱臭ユニット10を駆動させるモードである。以下、第1の駆動モードを「モードA」とも称する。本実施の形態では、一例として、印刷開始時を制御装置80に印刷データが送られた時(すなわち、通信部40が印刷データを受信した時)とし、印刷終了時を被印刷物に対する印刷が終了してフロントカバー96を開けることが可能となった時としている。なお、印刷開始時及び印刷終了時のタイミングはこれに限定されるものではなく、適宜設定することが可能である。
【0045】
第2の駆動モードは、第1の時間帯と第1の時間帯の前後の印刷が行われていない所定の時間帯(以下、「第2の時間帯」という)とにおいて脱臭ユニット10を駆動させるモードである。第2の駆動モードは、第2の時間帯における脱臭ユニット10の駆動タイミングが異なる複数のパターンを有しており、本実施の形態では、第1のパターンと、第2のパターンと、第3のパターンと、を有している。
【0046】
第1のパターンは、副電力供給部78がON状態となった場合に脱臭ユニット10を駆動させて、副電力供給部78がOFF状態となった場合に前記脱臭ユニットの駆動を停止するパターンである。以下、第1のパターンを「モードB」とも称する。
【0047】
第2のパターンは、主電力供給部76がON状態となった場合に脱臭ユニット10を駆動させて、主電力供給部76がOFF状態となった場合に脱臭ユニット10の駆動を停止するパターンである。以下、第2のパターンを「モードC」とも称する。第3のパターンは、制御部80のタイマ設定部82に駆動開始時間と駆動停止時間とが設定された場合に、第2の時間帯において、設定された駆動開始時間から駆動停止時間までの時間帯だけ脱臭ユニット10を駆動させるパターンである。
【0048】
第3の駆動モードは、脱臭ユニット10の駆動を常時停止させるモードである。以下、第3の駆動モードを「モードD」とも称する。
【0049】
制御部80には、ファン22を駆動するためのPWM信号のデューティー比の初期値が設定されている。
図9では、各モード(すなわち、モードA、モードB、モードC及びモードD)の各時間帯におけるPWM信号のデューティー比の初期値を記載している。図示例のように、初期値においてデューティー比は、印刷が実行される第1の時間帯よりも、印刷が実行されない第2の時間帯の方が低くなるように設定されている。さらに、PWM信号のデューティー比は、第1の時間帯、第2の時間帯であって副電力供給部78がON状態である第1の非印刷時間帯、及び、主電力供給部76がON状態且つ副電力供給部78がOFF状態である第2の非印刷時間帯の順に低くなるように設定されている。本実施の形態では、第1の時間帯のデューティー比が50%、第1の非印刷時間帯のデューティー比が40%、第2の被印刷時間帯のデューティー比が20%となるように初期設定されている。
【0050】
制御部80のファン駆動調節部83は、操作端末4からの指示信号を受けて、第1の時間帯、第1の非印刷時間帯、及び、第2の非印刷時間帯のそれぞれに対してPWM信号のデューティー比を変更可能に構成されている。本実施の形態のファン駆動調節部83は、デューティー比を0%~100%の範囲において、10%単位で変更可能となっている。
【0051】
次に、
図4及び
図9を用いて、印刷装置1における脱臭ユニット10の動作モードの選択方法について説明する。本実施の形態の印刷装置1では、制御部80が、操作端末4から送信された駆動モードを選択する指示信号に基づき、選択された1つの駆動モードにて脱臭ユニット10を駆動する。また、第2の駆動モードが選択された際には、操作端末4から送信されたパターンを選択する指示信号に基づき、選択された1つのパターンにて脱臭ユニット10を駆動させる。
【0052】
一例として、印刷装置1は、操作端末4において印刷用アプリケーション4dを起動し、タッチパネル4aに表示された当該アプリケーションのメニューから「脱臭装置」の項目を選択すると、「モードA」、「モードB」、「モードC」及び「モードD」の中から1つモードを選択可能な構成とすることができる。ユーザによるタッチパネル4aの操作によって「モードA」が選択されると、次に、第1の時間帯におけるファン22のデューティー比を設定可能な画面が表示され、ユーザはデューティー比を設定することができる。操作端末4の端末通信部4bは、「モードA」が選択されると、第1の駆動モードを選択する指示信号を送信し、デューティー比が設定された場合には、さらにデューティー比を指示する指示信号を送信する。この指示信号を装置本体2の通信部40が受信すると、制御部80は、第1の駆動モード(
図9の「モードA」を参照)及び設定されたデューティー比で脱臭ユニット10を駆動制御する。なお、印刷装置1は、初期設定として、印刷用アプリケーション4dによってモードが選択されない場合に、脱臭ユニット10が「モードA」で駆動されるようにすることができる。
【0053】
ユーザによるタッチパネル4aの操作によって「モードB」が選択されると、第1の時間帯及び第1の非印刷時間帯のそれぞれについてファン22のデューティー比を設定可能な画面が表示され、ユーザは各時間帯のデューティー比を設定することができる。操作端末4の端末通信部4bは、「モードB」が選択されると、第2の駆動モードの第1のパターンを選択する指示信号を送信し、各時間帯のデューティー比が設定された場合には、さらにデューティー比を指示する指示信号を送信する。装置本体2の通信部40が指示信号を受信すると、制御部80は、第2の駆動モードの第1のパターン(
図9の「モードB」を参照)及び設定されたデューティー比に従って、脱臭ユニット10を駆動制御する。
【0054】
タッチパネル4aの操作によって「モードC」が選択されると、第1の時間帯、第1の非印刷時間帯及び第2の被印刷時間帯のそれぞれについてファン22のデューティー比を設定可能な画面が表示され、ユーザは各時間帯のデューティー比を設定することができる。「モードC」が選択された場合には、さらに、タイマ機能のON又はOFFを選択する画面が表示される。タイマ機能についてOFFが選択されると、操作端末4は、第2の駆動モードの第2のパターンを選択する指示信号を送信し、各時間帯のデューティー比が設定された場合には、さらにデューティー比を指示する指示信号を送信する。装置本体2の通信部40がこれらの指示信号を受信すると、制御部80は、第2の駆動モードの第2のパターン(
図9の「モードC」を参照)及び設定されたデューティー比に従って、脱臭ユニット10を駆動制御する。また、「モードC」においてタイマ機能がONに選択されると、脱臭ユニット10を駆動させるための駆動開示時間と駆動終了時間とを設定するための画面が表示される。ユーザによって駆動開示時間及び駆動終了時間が設定されると、操作端末4は、第2の駆動モードの第3のパターンを選択する指示信号を送信し、各時間帯のデューティー比が設定された場合には、さらにデューティー比を指示する指示信号を送信する。第3のパターンの指示信号には、制御部80のタイマ設定部82に駆動開示時間及び駆動終了時間を設定するためのタイマ指示信号が含まれている。装置本体2の通信部40がこれらの指示信号を受信すると、制御部80は、第2の駆動モードの第3のパターン(
図9の「モードC」(タイマ有り)を参照)及び設定されたデューティー比に従って、脱臭ユニット10を駆動制御する。
【0055】
タッチパネル4aの操作によって「モードD」が選択されると、端末通信部4bは、第3の駆動モードを選択する指示信号を送信する。装置本体2の通信部40がこの指示信号を受信すると、制御部80は、第3の駆動モード(
図9の「モードD」を参照)に従って、脱臭ユニット10を駆動制御する。なお、印刷装置1における各モードの選択手順は、上述した例に限られるものではなく、適宜変更することが可能である。
【0056】
上述した印刷装置1では、例えば飲食店など、ユーザが印刷装置1の装置本体2から発生される臭気が気になる環境においては、ユーザが第2の駆動モード(モードB又はモードC)を選択することで、印刷開始時から印刷終了時までの時間帯のみならず、その前後の印刷が行われていない時間帯においても脱臭ユニット10を駆動させてケーシング90内の臭気成分を除去することができる。装置本体2において、インク吐出用ヘッド64のノズル面64bを覆うキャップ66にはインクが付着するため、印刷が行われていない時間帯においてもキャップ66から臭気が発生することがある。このような状況では、ユーザが第2の駆動モードを選択することで、ユーザが装置本体2のフロントカバー96を開けた際に、臭気を感じることを防止することができる。また、ユーザが臭気を特段に気にすることのない環境下で印刷装置1を使用する場合には、操作端末4を用いて第1の駆動モード(モードA)を選択することで、印刷が行われている時間帯にのみ脱臭ユニット10を駆動させて、消費電力を抑えることができる。また、第1の駆動モードを選択することで、脱臭ユニット10における脱臭用フィルター18の交換頻度を抑えることができる。
【0057】
また、本実施の形態の印刷装置1は、ユーザが第2の駆動モードの第1のパターン(モードB)を選択することで、副電力供給部76がON状態になって印刷部60がスタンバイ状態になったタイミングで脱臭ユニット10が駆動させ、副電力供給部76がOFF状態になって印刷部60がスリープ状態になったタイミングで脱臭ユニット10の駆動を停止させることができる。これにより、印刷が行われていない時間帯であっても、印刷の予定がない状況では脱臭ユニット10の駆動を停止して消費電力を抑えることができる。また、第2の駆動モードの第2のパターン(モードC)が選択された場合には、装置本体2の電源スイッチ98のON/OFF操作に応じて脱臭ユニット10が駆動されるので、フロントカバー96を閉じている状況において、ケーシング90の隙間から臭気が漏れることを適切に防止することができる。
【0058】
また、ユーザが第2の駆動モードの第3のパターン(モードCのタイマ有り)を選択することで、フロントカバー96を閉じている状況で、ケーシング90の隙間から臭気が漏れることを防止しつつ、ユーザが装置本体2から離れている時間帯などに脱臭ユニット10の駆動を停止させて消費電力を抑えることができる。例えば、印刷装置1を店舗等で使用する場合、印刷装置1の装置本体2の電源スイッチ98が常にON状態とされていることがあるが、このような場合に、タイマ機能を用いて、店舗の営業時間に合わせて脱臭ユニット10を駆動させることができる。これにより、営業時間中に装置本体2から発生する臭気を抑えながら、営業時間外に消費される電力を抑えることができる。
【0059】
また、例えば、工場内など臭気を気にすることのない環境下で印刷装置1を使用する場合には、ユーザが第3の駆動モード(モードD)を選択して脱臭ユニット10を常に停止状態とすることで、より消費電力を抑えることができるとともに、脱臭用フィルター18の交換頻度を大幅に抑えることができる。このように、本実施の形態の印刷装置1では、装置本体2から臭気が排出されることを必要なレベルに応じて防止することができる。
【0060】
また、本実施の形態の印刷装置1では、制御部80の初期設定において、印刷が実施されていない時間帯よりも印刷が実施される時間帯の方が、ファン22を制御するPWM信号のデューティー比が大きくなる、すなわちファン22の回転数が大きくなるように設定されているため、インクの吐出によって臭気が多く発生する時間帯において、脱臭ユニット10による脱臭性能を高めて臭気を適切に除去することができる。さらに、
図9に示すように、ファン22のデューティー比は、初期設定において、印刷が実施される第1の時間帯、印刷部60がスタンバイ状態である第1の非印刷時間帯、印刷部60がスリープ状態である第2の非印刷時間帯の順に低くなるように設定されているため、臭気の発生が少ない時間帯において消費電力を抑えることができるとともに、印刷が実施されていない時間帯においてファン22の駆動による騒音の発生を抑えることができる。
【0061】
また、本実施の形態の印刷装置1では、第1の時間帯、第1の非印刷時間帯、及び、第2の非印刷時間帯のそれぞれに対して、ファン22のデューティー比を変更することが可能であるため、よりユーザのニーズに合わせた脱臭性能を実現することができる。
【0062】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。本実施の形態においては、印刷時と、副電力供給部がオン状態時と、主電力供給部がオン状態時とで、脱臭装置のモードを変更可能に構成したが、これに限定されず、印刷時以外のインク臭が気になる他の工程、例えば、クリーニングやフラッシングにおいても、脱臭装置を駆動させてもよい。本実施の形態において、クリーニングやフラッシング時にインク臭が気になる場合は、モードBを選択することで、副電力供給部76がON状態になって印刷部60がスタンバイ状態になったタイミングで脱臭ユニット10が駆動させることで、脱臭性能を実現することができる。これに対して、印刷時+クリーニングやフラッシング時に、脱臭ユニット10が駆動するモードをもうけることにより、よりきめ細やかなユーザのニーズに合わせた脱臭性能を実現することができる。
【符号の説明】
【0063】
1 印刷装置
2 装置本体
4 操作端末
4a タッチパネル(入力部)
4b 端末通信部
4d 印刷用アプリケーション
10 脱臭ユニット
11 空気流路
18 臭気除去フィルター
22 ファン
24 筐体
40 通信部
50 テーブル
60 印刷部
64 インク吐出ヘッド
70 移動機構
71 キャリッジ
72 ガイドレール
75 電源部
76 主電力供給部
78 副電力供給部
80 制御部
81 記憶部
82 タイマ設定部
83 ファン駆動調整部
90 本体ケーシング
94 排気孔
98 電源スイッチ