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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155495
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】予備解凍後調理用冷凍餃子
(51)【国際特許分類】
   A23L 35/00 20160101AFI20241024BHJP
   A23L 3/365 20060101ALI20241024BHJP
   A23L 3/36 20060101ALI20241024BHJP
   A23L 7/109 20160101ALI20241024BHJP
【FI】
A23L35/00
A23L3/365 Z
A23L3/36 Z
A23L7/109 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023070256
(22)【出願日】2023-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【弁理士】
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(74)【代理人】
【識別番号】100152308
【弁理士】
【氏名又は名称】中 正道
(74)【代理人】
【識別番号】100201558
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 恵二郎
(72)【発明者】
【氏名】加藤 史紘
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 隆博
【テーマコード(参考)】
4B022
4B036
4B046
【Fターム(参考)】
4B022LA01
4B022LB02
4B022LJ01
4B022LN01
4B022LQ02
4B022LQ10
4B036LC01
4B036LE04
4B036LF11
4B036LF12
4B036LH12
4B036LH22
4B036LH29
4B036LH38
4B036LK02
4B036LP02
4B036LP17
4B046LA09
4B046LB10
4B046LC20
4B046LE11
4B046LE19
4B046LG02
4B046LG16
4B046LG21
4B046LG29
4B046LP69
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、時短調理が可能で、かつ良好な調理後品質を実現し得る冷凍餃子を提供すること。
【解決手段】予備解凍後調理用の冷凍餃子であって、冷凍品を予備解凍後、喫食時に焼成されることを特徴とする、冷凍餃子。該冷凍餃子と、予備解凍後に焼成加熱することにより、時短調理が可能である旨を記載した包装体とを含む、一包装形態の冷凍餃子製品。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
予備解凍後調理用の冷凍餃子であって、冷凍品を予備解凍後、喫食時に焼成されることを特徴とする、冷凍餃子。
【請求項2】
予備解凍時間が10分から100時間である、請求項1記載の冷凍餃子。
【請求項3】
予備解凍温度が0~100℃である、請求項1又は2記載の冷凍餃子。
【請求項4】
予備解凍手段が蒸し加熱、冷蔵ないし常温保存、又はそれらの組み合わせである、請求項1~3のいずれか一項に記載の冷凍餃子。
【請求項5】
焼成時間が2~5分である、請求項1~4のいずれか一項に記載の冷凍餃子。
【請求項6】
焼成時の温度が100~300℃である、請求項1~5のいずれか一項に記載の冷凍餃子。
【請求項7】
焼成時に水を添加せず、蓋を用いない、請求項1~6のいずれか一項に記載の冷凍餃子。
【請求項8】
皮に酢酸澱粉を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の冷凍餃子。
【請求項9】
中具の水分量が、中具全体に対して25~35重量%である、請求項1~8のいずれか一項に記載の冷凍餃子。
【請求項10】
凍結前に熱湯に浸漬される、請求項1~9のいずれか一項に記載の冷凍餃子。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の冷凍餃子と、予備解凍後に焼成加熱することにより、時短調理が可能である旨を記載した包装体とを含む、一包装形態の冷凍餃子製品。
【請求項12】
請求項1~10のいずれか一項に記載の冷凍餃子と、予備解凍後に焼成加熱することにより、時短調理が可能で、かつ水を添加せず蓋をしないで焼成しても、予備解凍せずに、加水し、蓋をして焼成した場合と同等以上の調理後品質が得られる旨を記載した包装体とを含む、一包装形態の冷凍餃子製品。
【請求項13】
請求項1~10のいずれか一項に記載の冷凍餃子を、予備解凍後に焼成加熱することにより、時短調理が可能である旨を記載した包装体で包装することを含む、一包装形態の冷凍餃子製品の製造方法。
【請求項14】
請求項1~10のいずれか一項に記載の冷凍餃子を、予備解凍後に焼成加熱することにより、時短調理が可能で、かつ水を添加せず蓋をしないで焼成しても、予備解凍せずに、加水し、蓋をして焼成した場合と同等以上の調理後品質が得られる旨を記載した包装体で包装することを含む、一包装形態の冷凍餃子製品の製造方法。
【請求項15】
請求項1に記載の冷凍餃子を予備解凍することを含む、短時間で調理可能な餃子の調製方法であって、該冷凍餃子は、任意で、
(a)皮に酢酸澱粉を含む、及び/又は
(b)中具の水分量が、中具全体に対して25~35重量%である、及び/又は
(c)凍結前に熱湯に浸漬される、
方法。
【請求項16】
予備解凍時間が10分から100時間である、請求項15記載の方法。
【請求項17】
予備解凍温度が0~100℃である、請求項15又は16記載の方法。
【請求項18】
予備解凍手段が蒸し加熱、冷蔵ないし常温保存、又はそれらの組み合わせである、請求項15~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
請求項15~18のいずれか一項に記載の方法により得られた餃子を焼成加熱することを含む、焼き餃子の製造方法。
【請求項20】
焼成時間が2~5分である、請求項19記載の方法。
【請求項21】
焼成時の温度が100~300℃である、請求項19又は20記載の方法。
【請求項22】
焼成時に水を添加せず、蓋を用いない、請求項19~21のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、予備解凍後調理用の冷凍餃子、並びにその解凍及び調理方法等に関する。より詳細には、本発明は、予備解凍を施すことにより、調理時間を短縮することができ、かつ焼成加熱時に蓋及び加水が不要で調理が簡便でありながらも、従来品と同等もしくはそれ以上の良好な調理後品質を実現し得る冷凍餃子、該冷凍餃子を予備解凍することによる、短時間で簡便に調理可能な餃子の製造方法、並びに、予備解凍した該冷凍餃子を焼成加熱することによる餃子の時短調理方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
冷凍餃子は、消費者に人気の高い冷凍食品の一つであり、その調理方法としては、凍結状態のまま、フライパン等の焼き器を用いて焼成加熱(加水後、蓋をして蒸し焼き等)して焼き餃子とするのが一般的である。
しかしながら、飲食店におけるランチタイムのように、短時間に大量の餃子を調理する必要がある場合には、冷凍餃子は焼き上がりまでの所要時間が長い点で不利である。
また、冷凍餃子に限らず、一般的に焼き餃子の加熱調理は、加水後に蓋をして蒸し焼きすることにより行われるので、工程が煩雑となり、やはり調理時間のロスを生じるが、当該工程を省くと、調理後品質の劣化を招くことが懸念される。
【0003】
冷凍包餡食品を解凍もしくは加熱し、冷蔵ないし常温で保存した後、(再)加熱する調理方法が知られている。例えば、特許文献1及び2には、冷凍餃子等を加熱調理して常温/冷蔵保存後に、喫食時に再加熱することが記載されている。また、特許文献3には、凍結した中華まん類を常温/冷蔵解凍して、保温器や電子レンジにて加熱調理する方法が記載されている。さらに、特許文献4及び5には、チルド品をその状態で冷蔵保存後、喫食時に焼成する方法が記載されている。
【0004】
しかしながら、冷凍餃子を予備解凍した後で焼成加熱することは報告されておらず、それにより得られる効果についても全く不明であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2019/176682号
【特許文献2】特開2004-141026号公報
【特許文献3】特開2017-70256号公報
【特許文献4】特開2006-115792号公報
【特許文献5】特開平7-67564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、時短調理が可能で、かつ良好な調理後品質を実現し得る冷凍餃子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、冷凍餃子を予備解凍した後に焼成加熱することにより、加熱時に蓋や加水を行わずとも優れた調理後品質が得られ、調理時間の短縮化と調理後品質の維持・向上とを両立させることに成功した。また、餃子の皮の組成や中具の水分量、さらには、餃子の凍結前の下処理などを適宜工夫することにより、予備解凍後、焼成加熱した際の調理後品質をさらに向上させ得ることに成功し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は以下の通りである。
[項1]
予備解凍後調理用の冷凍餃子であって、冷凍品を予備解凍後、喫食時に焼成されることを特徴とする、冷凍餃子。
[項2]
予備解凍時間が10分から100時間である、項1記載の冷凍餃子。
[項3]
予備解凍温度が0~100℃である、項1又は2記載の冷凍餃子。
[項4]
予備解凍手段が蒸し加熱、冷蔵ないし常温保存、又はそれらの組み合わせである、項1~3のいずれか一項に記載の冷凍餃子。
[項5]
焼成時間が2~5分である、項1~4のいずれか一項に記載の冷凍餃子。
[項6]
焼成時の温度が100~300℃である、項1~5のいずれか一項に記載の冷凍餃子。
[項7]
焼成時に水を添加せず、蓋を用いない、項1~6のいずれか一項に記載の冷凍餃子。
[項8]
皮に酢酸澱粉を含む、項1~7のいずれか一項に記載の冷凍餃子。
[項9]
中具の水分量が、中具全体に対して25~35重量%である、項1~8のいずれか一項に記載の冷凍餃子。
[項10]
凍結前に熱湯に浸漬される、項1~9のいずれか一項に記載の冷凍餃子。
[項11]
項1~10のいずれか一項に記載の冷凍餃子と、予備解凍後に焼成加熱することにより、時短調理が可能である旨を記載した包装体とを含む、一包装形態の冷凍餃子製品。
[項12]
項1~10のいずれか一項に記載の冷凍餃子と、予備解凍後に焼成加熱することにより、時短調理が可能で、かつ水を添加せず蓋をしないで焼成しても、予備解凍せずに、加水し、蓋をして焼成した場合と同等以上の調理後品質が得られる旨を記載した包装体とを含む、一包装形態の冷凍餃子製品。
[項13]
項1~10のいずれか一項に記載の冷凍餃子を、予備解凍後に焼成加熱することにより、時短調理が可能である旨を記載した包装体で包装することを含む、一包装形態の冷凍餃子製品の製造方法。
[項14]
項1~10のいずれか一項に記載の冷凍餃子を、予備解凍後に焼成加熱することにより、時短調理が可能で、かつ水を添加せず蓋をしないで焼成しても、予備解凍せずに、加水し、蓋をして焼成した場合と同等以上の調理後品質が得られる旨を記載した包装体で包装することを含む、一包装形態の冷凍餃子製品の製造方法。
[項15]
項1に記載の冷凍餃子を予備解凍することを含む、短時間で調理可能な餃子の調製方法であって、該冷凍餃子は、任意で、
(a)皮に酢酸澱粉を含む、及び/又は
(b)中具の水分量が、中具全体に対して25~35重量%である、及び/又は
(c)凍結前に熱湯に浸漬される、
方法。
[項16]
予備解凍時間が10分から100時間である、項15記載の方法。
[項17]
予備解凍温度が0~100℃である、項15又は16記載の方法。
[項18]
予備解凍手段が蒸し加熱、冷蔵ないし常温保存、又はそれらの組み合わせである、項15~17のいずれか一項に記載の方法。
[項19]
項15~18のいずれか一項に記載の方法により得られた餃子を焼成加熱することを含む、焼き餃子の製造方法。
[項20]
焼成時間が2~5分である、項19記載の方法。
[項21]
焼成時の温度が100~300℃である、項19又は20記載の方法。
[項22]
焼成時に水を添加せず、蓋を用いない、項19~21のいずれか一項に記載の方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、予備解凍しておくことにより解凍された状態で焼成されるので、焼き上がりまでの調理時間を短縮することができる。また、焼成時に加水したり、蓋を用いて蒸し加熱したりする必要がないので、調理が簡便である。しかも、予備解凍後、加水せず蓋をしないで焼成しても、予備解凍せずに、加水し蓋をして焼成した場合と同等以上の調理後品質が得られるので、時短調理と、品質の維持・向上という、通常相反すると考えられる効果を両立させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、調理時間短縮化及び調理の簡便化と、良好な調理後品質とを両立し得る、予備加熱後調理用の冷凍餃子(以下、「本発明の冷凍餃子」ともいう。)を提供する。
【0011】
本発明における「餃子」は、その形状、製造方法等に制限されることなく、一般に餃子と称されるものを広く包含し得るが、典型的には、中具(挽肉、野菜、調味料等の混合物)と、当該中具を包む外皮(小麦粉等に水を加えて捏ね、薄く延ばした生地)とを少なくとも有する食品をいう。本明細書において「餃子」なる用語は、中具と当該中具を包む外皮とを少なくとも有する食品を広く包含する概念として使用され、例えば、小籠包、焼売、ニラ饅頭等もこれに包含される。本発明における「餃子」は、中具を外皮で包んだのみで加熱していないものであってよく、又は、加熱処理(例、蒸し加熱、焼き加熱、茹で加熱等)に供したものであってもよく、これらの両方を包含する概念である。
【0012】
本発明の冷凍餃子に用いられる餃子は特に制限されず、餃子の形状、サイズ、中具及び外皮の成分、構成、量等は、所望の餃子に応じて適宜決定してよく、また中具及び外皮の製造方法、中具の包み方等は、自体公知の方法又はそれに準ずる方法により行ってよい。中具、外皮は市販品を用いてもよく、あるいは、市販の餃子を用いてもよい。
【0013】
一実施態様において、餃子の外皮として、例えば、穀物粉に、必要に応じて澱粉や、それらに物理的処理、化学的処理、酵素的処理等の加工処理を施した加工澱粉を加えたものに、水分含量が20~40重量%となるように水分を加えて混錬した後、手作業もしくは各種の圧延装置等を用いて、適当な厚さ、形状となるように成型したものを用いることができる。
【0014】
本明細書において、「穀物粉」とは、穀物を製粉、粉砕等して得られる、粉状乃至粒状の食品原料をいう。本発明の羽根形成用組成物が含有し得る穀物粉は特に制限されず、例えば、小麦粉、米粉、トウモロコシ粉、大麦粉、そば粉、馬鈴薯粉、大豆粉、小豆粉、ひえ粉、栗粉、キビ粉等が挙げられる。好ましくは小麦粉であり、例えば、強力粉、準強力粉、中力粉を使用することが好適であるが、薄力粉を使用することもできる。外皮における穀物粉の含有量としては、例えば、50~80重量%であり、好ましくは、60~80重量%である。
【0015】
澱粉としては、例えば、ウルチ米澱粉、モチ米澱粉、小麦澱粉、コーン澱粉、ワキシーコーン澱粉、タピオカ澱粉、サゴヤシ澱粉、緑豆澱粉、馬鈴薯澱粉、サツマイモ澱粉等が挙げられる。化学的処理を施された加工澱粉としては、例えば、アセチル化アジピン酸架橋澱粉、アセチル化リン酸架橋澱粉、アセチル化酸化澱粉、オクテニルコハク酸澱粉ナトリウム、酢酸澱粉、酸化澱粉、ヒドロキシプロピル澱粉、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉、リン酸モノエステル化リン酸架橋澱粉、リン酸化澱粉、リン酸架橋澱粉等が挙げられる。物理的処理(酸処理、アルカリ処理、漂白処理等の加水分解程度の簡単な化学的処理を含む)を施された加工澱粉としては、例えば、α化澱粉、湿熱処理澱粉、油脂加工澱粉、酸処理澱粉、アルカリ処理澱粉、漂白澱粉等が挙げられる。酵素的処理を施された加工澱粉としては、例えば、酵素処理澱粉等が挙げられる。好ましい加工澱粉としては、酢酸澱粉、アセチル化やヒドロキシプロピル化等のエステル化、エーテル化処理された澱粉が挙げられ、より好ましくは、酢酸澱粉が挙げられる。酢酸澱粉等の加工澱粉を配合することにより、予備解凍後調理時の皮品質(例えば、腹部の弾力)を向上させることができる。外皮における澱粉(加工澱粉を含む)の含有量としては、例えば、1~20重量%であり、好ましくは、3~10重量%である。
これらの澱粉は一種単独で用いてよく、又は二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0016】
餃子の外皮には、必要に応じて、他の成分、例えば、塩などの粉末調味料、グルテン、粉末油脂等を配合することができるが、これらに制限されない。また、これらの配合量としては、餃子の皮の生地に適した、当該技術分野において通常使用される量を適宜採用することができる。
【0017】
餃子の中具としては、例えば、みじん切りにした野菜、挽肉等に調味料で味付けをして捏ねたもの等が挙げられる。中具の水分量を調節することにより、予備解凍後調理時の皮品質(例えば、皮の合わせ目の硬さ)を向上させることができる。中具の水分量としては、例えば、中具全体に対して10~40重量%が挙げられるが、好ましくは25~35重量%である。
【0018】
餃子の製造は、通常に用いられる手法にて行うことができる。即ち、上記の外皮に中具の一部又は全部を包餡することで製造することができる。包餡形態としては、特に制限はなく、中具の全部を包む形態、中具をロール状に巻く形態、中具の一部のみを包む形態等、餃子の種類に応じて適宜決定することができるが、通常の餃子では、皮の中央部に中具を置き、折り畳んで対向する周縁部がお互いに接するように圧着又は水等の塗布にて接着して包餡する。
【0019】
本発明の冷凍餃子に用いられる餃子は、一態様として、生餃子であってよく、あるいは、他の一態様として、生餃子を、喫食に適した状態とならない程度に加熱したものであってもよい。予備解凍調理後の皮の食感の観点から、喫食に適した状態とならない程度に加熱したものが好ましい。当該加熱手段は特に制限されないが、例えば、蒸し加熱、熱湯への浸漬等が挙げられる。加熱条件(例、加熱温度、加熱時間等)も特に制限されず、加熱方法等に応じて適宜設定すればよいが、加熱温度は通常70~120℃、好ましくは90~100℃である。加熱時間は2分間以上、好ましくは3分間以上、より好ましくは5分間以上である。加熱時間の上限は特に制限はないが、例えば、30分間以下、好ましくは25分間以下、より好ましくは20分間以下であり得る。
【0020】
好ましい一実施態様において、蒸し加熱を行った後に、さらに餃子を熱湯に浸漬することができる。熱湯への浸漬は、95~100℃の熱湯に、例えば10~60秒間、好ましくは20~60秒間、餃子を浸漬することにより実施され得る。当該浸漬処理を行うことにより、予備解凍後調理時の皮品質(例えば、皮の合わせ目の硬さ)を向上させることができる。
【0021】
本発明の冷凍餃子に用いられる餃子は、餃子の製造において周知慣用の処理(例えば、中具の野菜等に含まれる酵素を失活させる処理等)を適宜施されていてよい。
【0022】
本発明の冷凍餃子は、上記のようにして得られた未加熱の生餃子又は加熱済みの餃子を凍結させることにより製造することができる。凍結処理は、自体公知の方法又はそれに準ずる方法によって行えばよく特に制限されないが、凍結温度は通常-10℃以下であり、好ましくは-15℃以下である。
本発明において「冷凍餃子」とは、凍結状態の餃子本体(生餃子又は加熱済み餃子を凍結させた凍結物そのもの)、並びに、凍結状態の餃子と凍結状態の食品材料とを含む冷凍食品(例えば、凍結状態の餃子と当該餃子に凍結状態で付着している食品材料とを含む冷凍食品等)を包含する概念である。ここで「食品材料」には、餃子羽根形成用組成物が包含される。したがって、餃子羽根形成用組成物が凍結状態で付着している冷凍餃子は、換言すると、凍結状態の餃子と当該餃子に凍結状態で付着している餃子羽根形成用組成物とを含む冷凍食品とも言い得る。別の態様において、本発明の冷凍餃子は、餃子羽根形成用組成物を含まない凍結状態の餃子、即ち、凍結状態の餃子本体からなるか、凍結状態の餃子と餃子羽根形成用組成物以外の凍結状態の食品材料(例、凍結状態の水単体、凍結状態の油単体等)とを含む冷凍食品であり得る。
【0023】
本発明において「餃子羽根形成用組成物」とは、餃子の表面に付着させて焼成加熱したり、加熱した状態で餃子の表面に付着させたりすることにより、羽根を形成し得る組成物である。本発明に用いられる餃子羽根形成用組成物は、上記の特性を具備する限り、その組成に特に制限はないが、通常、餃子羽根形成用組成物は、水及び澱粉を必須成分として含有する。餃子羽根形成用組成物は、さらに、油、乳化剤、増粘剤、ゲル化剤、穀物粉、調味料等を任意で含有してもよい。
また、餃子の「羽根」とは、餃子の焼き面、その周辺部に形成される、薄膜状のパリパリとした食感を有する部分をいい、一般に「バリ」等とも称される。ここで餃子の「焼き面」とは、加熱によって焼き目(焦げ目)が付与されるように、当該加熱に用いられる焼き器(例、フライパン、餃子焼き機、鉄板、ホットプレート等)に接するか、又は焼き器に近接して配置されて加熱された面をいう。
【0024】
餃子羽根形成用組成物が含有する澱粉(加工澱粉を含む)、水、油、乳化剤、増粘剤、穀物粉、調味料等としては、従来公知のものを適宜用いることができ、例えば、国際公開第2019/21348号参照を参照することができる。
【0025】
本発明の冷凍餃子は予備解凍後調理用であるので、該冷凍餃子が餃子羽根形成用組成物を含む場合には、冷凍餃子を冷蔵ないし常温下で予備解凍保存した後の保形性があり、餃子本体と一体でトレイから取り出すことができ、かつ冷凍保存したものをそのまま焼成加熱した場合(通常調理品)と同等の調理後品質を再現し得るものであることが望ましい。
【0026】
一実施態様において、本発明に用いられる餃子羽根形成用組成物は、澱粉(該餃子羽根形成用組成物が穀物粉をさらに含む場合は、該穀物粉中に含まれる澱粉を含む)含有量が4~25重量%であり、通常の冷凍保存条件(例えば-18℃以下)よりも高温条件下で保存後(予備解凍後)の澱粉の糊化度(以下、単に「保存後の糊化度」と略記する場合がある。)が25~100%であることを特徴とする(実施態様A)。
【0027】
実施態様Aにおいて、餃子羽根形成用組成物の澱粉含有量は、該組成物のより高い保形性の観点から、4重量%以上、好ましくは5重量%以上、より好ましくは7重量%以上であり得る。一方、調理時の羽根のひろがり易さの観点か餃子羽根形成用組成物の澱粉含有量は、25重量%以下、好ましくは20重量%以下、より好ましくは15重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下であり得る。
【0028】
本明細書において、「糊化度」とは、澱粉がα化澱粉に変化した割合をいい、βアミラーゼ・プルラナーゼ法(BAP法)により測定することができる。
【0029】
餃子羽根形成用組成物の保存後の糊化度は、25%以上であり、該組成物のより高い保形性及びより優れた調理後品質の観点から、好ましくは45%以上、より好ましくは60%以上であり、さらに好ましくは80%以上、さらにより好ましくは90%以上であり得る。
【0030】
実施態様Aにおいて、餃子羽根形成用組成物が含有し得る澱粉は(加工澱粉を含む)は、可食性であれば特に制限されず、従来知られているもの(例えば、国際公開第2019/21348号参照)を使用することができるが、濃度10重量%の水懸濁液を100℃に加熱して5分間保持した後、50℃まで冷却し保持した場合の粘度推移において、最低粘度が350cP以上であることが望ましい。当該最低粘度が350cP以上であれば、該澱粉を含有する餃子羽根形成用組成物は、保存後の糊化度が所望の数値範囲となり、餃子羽根形成用組成物の保形性及び調理後品質が担保される。好ましくは、前記条件で測定される澱粉水懸濁液の最低粘度は、850cP以上、より好ましくは1000cP以上、さらに好ましくは1300cP以上、いっそう好ましくは1500cP以上である。粘度測定は、自体公知の方法及び装置を用いて実施することができるが、当該最低粘度は、回転粘度計「Rapid Visco Analyzer 4500(RVA-4500、株式会社エヌエスピー)」を用いて、以下の条件:
回転速度:160rpm
温度管理:50℃で30秒間保持→4分間をかけて100℃まで加熱し5分間保持
→2分間をかけて50℃まで冷却し4分間保持
にて温度変化による粘度推移を測定した場合の、100℃に昇温後の粘度推移における最低粘度として定義される。
【0031】
実施態様Aにおいて、餃子羽根形成用組成物は、好ましい加工澱粉として、例えば、アセチル化アジピン酸架橋澱粉、アセチル化リン酸架橋澱粉、酢酸澱粉、ヒドロキシプロピル澱粉、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉、リン酸モノエステル化リン酸架橋澱粉、リン酸化澱粉、リン酸架橋澱粉、α化澱粉等が挙げられる。さらに好ましい澱粉種として、未加工のモチ米澱粉又はそのリン酸架橋処理物、未加工の馬鈴薯澱粉又はそのヒドロキシプロピル化処理物を含有することができる。
【0032】
実施態様Aにおいて、餃子羽根形成用組成物は、餃子を喫食に適した状態とするための加熱(調理加熱)とは別に、予め加熱されたものであることが望ましい。餃子羽根形成用組成物が、調理加熱とは別に、予め加熱されたものである場合、その加熱方法としては、例えば、蒸し加熱等が挙げられる。加熱条件(例、加熱温度、加熱時間等)も特に制限されず、加熱方法等に応じて適宜設定すればよいが、加熱温度は通常70~120℃、好ましくは90~100℃である。加熱時間は2分間以上、好ましくは3分間以上、より好ましくは5分間以上加熱する。当該加熱処理により、餃子羽根形成用組成物中の澱粉の「保存後の糊化度」を所望の数値範囲、即ち25~100%に調整することができる。加熱時間の上限は特に制限はないが、例えば、30分間以下、好ましくは25分間以下、より好ましくは20分間以下であり得る。
【0033】
別の一実施態様において、餃子羽根形成用組成物は、-18℃以下の冷凍温度帯以外で保存した後も、高い保形性及び調理後品質を維持するために、以下の条件を満たすことを特徴とする(実施態様B)。即ち、
テクスチャーアナライザーを用いて、保存後の餃子羽根形成用組成物の硬さ(最大応力(単位:g))と付着力(負の面積値(単位:g・sec))を測定した場合に、該餃子羽根形成用組成物の硬さ(X)と付着力(Y)とが、式(1):
Y > ‐1.4167X + 52.4436 (1)
で示される関係にある。
ここで「保存後」とは、通常の冷凍保存条件(例えば-18℃以下)よりも高温条件下で保存後(予備解凍後)を意味する。
【0034】
具体的には、餃子羽根形成用組成物中の保存後の硬さと付着力は、下記の条件:
(1)表1に記載の形状を有する専用カップに約30gの羽根形成用組成物を入れ、急速凍結し、-18℃で冷凍保存した後、4℃以上(例、4℃、25℃、40℃)で24時間インキュベートする;
【0035】
【表1】
【0036】
(2)工程(1)終了後の羽根形成用組成物を入れた専用カップを、テクスチャーアナライザー(TA-XT-Plus;Stable Micro Systems社製)に設置し、以下の条件で治具を降下させ圧縮し、応力の経時変化を測定する;
・治具のスタート位置高さ:35 mm
・治具:直径35 mmのアルミ円柱
・測定条件:
Library Hold until time
Test Mode Compression
Test Speed 5 mm/sec
Post-Test Speed 3 mm/sec
Target Mode Distance
Distance 23.5 mm
Hold Time 2 sec
Trigger Type Button
(3)工程(2)で得られる応力-時間曲線から正の最大応力(単位:g)を羽根形成用組成物の硬さ(X)、負の面積値(単位:g・sec)を付着力(Y)として計測・算出する;
ことにより、求めることができる。
【0037】
実施態様Bにおいて、餃子羽根形成用組成物は、好ましい加工澱粉として、α化澱粉を含有することができる。より好ましくは、リン酸架橋処理されていないα化澱粉であり、アセチル化やヒドロキシプロピル化等のエステル化、エーテル化処理もされていないα化澱粉がさらに好ましい。特に好ましい澱粉種として、α化コーン澱粉、α化馬鈴薯澱粉が挙げられ、とりわけ化学的処理を施されていない、就中α化以外の加工を施されていない、α化コーン澱粉、α化馬鈴薯澱粉を挙げることができる。
【0038】
実施態様Bにおいて、餃子羽根形成用組成物の澱粉(該羽根形成用組成物が穀物粉をさらに含む場合は、該穀物粉中に含まれる澱粉を含む)含有量は、保存後の保形性が認められる限り特に制限されないが、例えば、α化澱粉量として、2重量%以上、好ましくは2.5重量%以上、より好ましくは3重量%以上である。澱粉含有量の上限も特に制限されないが、調理時の羽根のひろがり易さの観点から、例えば、25重量%以下、好ましくは20重量%以下で、より好ましくは15重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下であり得る。
【0039】
餃子羽根形成用組成物はゲル化剤を含有してよい。ゲル化剤を配合することにより、保存後の羽根形成用組成物の保形性をさらに補強することができる。当該ゲル化剤は食用であれば特に制限されないが、例えば、ゼラチン、寒天、カラギーナン、グルコマンナン、コンニャクイモ抽出物、ペクチン等が挙げられ、好ましくは、ゼラチン、寒天、カラギーナン、グルコマンナン及びコンニャクイモ抽出物が挙げられる。調理時のバッターの広がり(羽根の量)や羽根の食感の良さ等の観点から、より好ましくは、ゼラチン、寒天、カラギーナンを挙げることができ、さらに好ましくはゼラチンである。これらのゲル化剤は一種単独で用いてよく、又は二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
餃子羽根形成用組成物がゲル化剤を含有する場合、その含有量は、保存後の羽根形成用組成物の保形性が得られれば特に制限されないが、例えば0.01重量%以上であり、好ましくは0.05重量%以上であり、より好ましくは0.1重量%以上である。また当該含有量は、例えば15重量%以下であり、好ましくは10重量%以下であり、より好ましくは5重量%以下であり、さらにより好ましくは3重量%以下である。
【0041】
餃子羽根形成用組成物は、上記の成分の他、本発明の目的を損わない限り、餃子羽根形成用組成物が通常含有し得る成分(例、調味料、塩類、糖類、アミノ酸類、タンパク質類、セルロース類、乳化補助剤等)を任意で含有してよい。
【0042】
餃子羽根形成用組成物の調製方法は特に制限されず、自体公知の方法又はそれに準ずる方法で調製し得る。例えば、水と澱粉(及び/又は穀物粉)とを市販の混合撹拌装置等を用いて撹拌し、該羽根形成用組成物が油(及び乳化剤、増粘剤、ゲル化剤)を含有する場合は、前記撹拌液に油等を投入してさらに撹拌・混合することにより調製することができる。ゲル化剤が溶解しにくい場合は、ゲル化剤を油と混合しながら熱水を加えることにより溶解させることができる。
【0043】
実施態様Bにおいて、餃子羽根形成用組成物は、餃子を喫食に適した状態とするための加熱(調理加熱)とは別に、予め加熱することもできるが、当該羽根形成用組成物は、未加熱のままであっても、従来の羽根形成用組成物とは異なり、保存後の保形性に優れ、餃子本体と一体でトレイから取り出すことができる。
【0044】
餃子羽根形成用組成物は、餃子の表面に付着させて用いられ得る。餃子羽根形成用組成物を餃子の表面に付着させる方法や付着の態様は、喫食に適した状態になるよう加熱した餃子に羽根が形成されれば特に制限されないが、餃子の焼き面となる面に付着させることが好ましい。餃子羽根形成用組成物は、餃子の焼き面となる面の全部に付着するものであってよく、又は焼き面となる面の一部に付着するものであってもよい。また餃子羽根形成用組成物は、餃子の焼き面となる面に加え、当該焼き面となる面に連続する部分(例えば、底面に連絡する側面部等)にも付着してよい。
【0045】
餃子羽根形成用組成物の、餃子への付着量は、所望の羽根の大きさや形状に応じて調整すればよく特に制限されないが、通常、餃子100重量部に対して、2.5~100重量部であり、好ましくは4~60重量部であり、より好ましくは8~35重量部である。
【0046】
餃子羽根形成用組成物は、凍結状態で冷凍餃子に付着させ得る。餃子羽根形成用組成物を、凍結状態で冷凍餃子に付着させる方法は特に制限されないが、例えば、餃子羽根形成用組成物を表面に付着させた餃子を、喫食に適した状態となるための加熱処理を施す前に、凍結処理を施すこと等によって行うことができる。あるいは、餃子羽根形成用組成物を餃子に付着させずに凍結させ、得られた凍結状態の餃子羽根形成用組成物を、凍結状態の餃子に付着させること等によっても、餃子羽根形成用組成物を凍結状態で冷凍餃子に付着させ得る。
【0047】
本発明の冷凍餃子は、予備解凍後に焼成することにより焼き餃子として調理される。予備解凍することにより、(1)餃子の温度が高くなるため、短時間で喫食可能な状態とすることができるので、調理時間が短縮され簡便性が向上する、また、(2)焼成時に加水し、蓋をして蒸し焼きにせずとも、-18℃以下で保存した餃子を凍結したまま、加水し、蓋をして蒸し焼きした場合と同等もしくはそれ以上の調理後品質が得られる等の利点がある。従って、本発明は、予備解凍後調理用の冷凍餃子、該冷凍餃子を予備解凍処理することを含む、短時間で調理可能な餃子の調製方法、並びに、当該方法により得られた餃子を焼成加熱することを含む、焼き餃子の製造方法を提供する。
ここで「予備解凍後調理」とは、冷凍餃子を、凍結状態からいったん解凍された状態にした後で、焼成加熱を行い喫食に適した状態とすることを意味する。
【0048】
予備解凍処理は、冷凍餃子を、凍結状態からいったん解凍された状態にし得る限りいかなる処理であっても制限はない。予備解凍温度は、例えば、0~100℃の間で適宜選択することができる。また、予備解凍時間は、例えば、10分~100時間の間で適宜選択することができる。予備解凍手段も特に制限されないが、電子レンジ加熱以外の解凍処理が好ましく、例えば、蒸し加熱や熱湯への浸漬(約90~約100℃)、冷蔵(例、約4~約10℃)ないし常温(例、約15~約40℃)での保存、又はそれらの組み合わせなどを挙げることができる。より具体的には、例えば、冷蔵庫内(約4℃)で3~100時間、好ましくは6~72時間保存したり、常温(例えば、約15℃)で1~24時間、好ましくは3~12時間静置したり、蒸し加熱を3~30分間、好ましくは5~20分間行ったり、熱湯に30秒~3分間、好ましくは1~2分間浸漬するなどの処理が挙げられる。
【0049】
予備解凍された餃子は、焼成加熱することにより焼き餃子に調理される。本発明における「焼き餃子」とは、喫食に適した状態となるように焼成加熱された餃子をいい、「焼成加熱」とは、焼き器(例、フライパン、鉄板、ホットプレート、餃子焼き機等)を用いて(詳細には、焼き器を直接の熱媒体として)加熱する熱処理をいう。
焼成加熱の条件(例、加熱温度、加熱時間等)は特に制限されず、加熱方法等に応じて適宜設定すればよいが、加熱温度は通常100~300℃であり、好ましくは150~250℃であり、より好ましくは190~240℃であり、加熱時間は通常1~10分間であり、好ましくは2~5分間である。
【0050】
焼成時には、焼き餃子の加熱調理法として一般的に用いられている、加水し、焼き器に蓋をして蒸し焼きにする方法を用いることもできるが、本発明の冷凍餃子は、予備解凍後、焼成時に水を添加せず、蓋を用いなくとも、予備解凍なしで、加水あり・蓋ありで焼成した場合と同等もしくはそれ以上の調理後品質が得られるので、加水なし・蓋なしで焼成することが望ましい。それにより調理時間をさらに短縮でき、煩雑な工程がなく簡便に調理することができ、熟練を要しない。
【0051】
本発明において、餃子(冷凍餃子を含む)は、容器(例、トレイ等)に収容されて提供されるものであってよい。餃子を収容する容器は特に制限されず、慣用の容器を用いればよいが、例えば、国際公開第2014/007387号、国際公開第2016/199882号等に記載の容器、トレイを用い得る。餃子は、容器に収容せず、包装体(例、外装袋、箱)に収容されて提供されてもよい。
【0052】
本発明はまた、上記したいずれかの本発明の冷凍餃子と、予備解凍後に焼成加熱することにより、時短調理が可能である旨、又は、予備解凍後に焼成加熱することにより、時短調理が可能で、かつ水を添加せず蓋をしないで焼成しても、予備解凍せずに、加水し、蓋をして焼成した場合と同等以上の調理後品質が得られる旨を記載した包装体とを含む、一包装形態の冷凍餃子製品を提供する。当該記載は、包装体の表面に印刷されていることが好ましい。
本発明はまた、本発明の冷凍餃子を、予備解凍後に焼成加熱することにより、時短調理が可能である旨、又は、予備解凍後に焼成加熱することにより、時短調理が可能で、かつ水を添加せず蓋をしないで焼成しても、予備解凍せずに、加水し、蓋をして焼成した場合と同等以上の調理後品質が得られる旨を記載した包装体で包装することを含む、一包装形態の冷凍餃子製品の製造方法を提供する。
【0053】
以下の実施例において本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
尚、以下の実施例において用いられた原料は、特にことわりのない限り、いずれも食品用として市販されているものである。
【実施例0054】
[サンプル作製]
(1)外皮の作製
小麦粉、グルテン、塩、水を表2の配合割合にて混錬して作製した生地を、ロール式製麺機で0.7 mm程度に圧延し、麺帯を作製した。当該麺帯を長径90 mm×短径80 mmの楕円形に切り抜いて、餃子用の外皮(1枚当たりの重量:6g)を作製した。
【0055】
【表2】
【0056】
(2)中具と餃子の作製
挽肉、みじん切りにした野菜及び調味料等を混錬して餃子用の中具を作製した後、当該中具13 gを、上記(1)で作製した外皮5.5 gで被覆して、半円形状の餃子を作製した。
【0057】
(3)餃子の蒸し・凍結
スチームコンベクション(水蒸気量100%,98℃)にて6分間の蒸し加熱を行い、サンプルを急速凍結庫にて急速凍結した。
【0058】
(4)焼成調理条件
油を滴下したフライパンを中火で熱した後、餃子を並べて中火で焼成した(焼成中の水滴下および蓋は無し)。焼成温度は、フライパン表面温度として、以下のとおりであった。
調理開始時(餃子をいれるとき):170℃
調理開始1分 :180~200℃
調理開始2分 :195~220℃
調理開始3分 :200~220℃
【0059】
[評価]
各評価項目について、表3の基準に従い合議制で評価を行い、それらをもとに総合評価を実施した。対照区はT2(24時間の冷蔵予備解凍後にフライパンで3分焼成)とした。
各項目において◎が一つ以上つく場合は総合評価『◎(より好ましい)』、〇,△のいずれかである場合は総合評価『〇(好ましい)』、×が一つ以上つく場合は総合評価『×(好ましくない)』とした。通常調理品(上記(1)~(3)により調製した冷凍餃子を、予備解凍せずに、加水あり・蓋ありで焼成したもの;調理時間約8分)と同等もしくはそれ以上の品質(総合評価◎,〇)を実施例、通常調理品より品質が劣るもの(総合評価×)を比較例とした。
【0060】
【表3】
【0061】
試験例1 予備解凍による時短調理と品質の両立が可能であることの確認
試験区T1~T4は、冷蔵庫内(約4℃)で24時間予備解凍後に、それぞれ2、3、4及び5分間焼成したものである。試験区T5~T9は、冷凍品を、予備解凍せずに、それぞれ1、2、3、4及び5分間焼成したものである。結果を表4に示す。
【0062】
【表4】
【0063】
予備解凍後調理によって、調理時間が2分以上であれば通常調理品と同等の品質が得られ、時短調理と品質の両立が可能であることが明らかとなった。予備解凍なしでは時短調理ができなかった。
【0064】
試験例2 通常調理後、保存して再加熱する方法との比較
試験区T10~T13は、通常調理品(T0)を24時間冷蔵保存後、それぞれ電子レンジ加熱を30秒、1分、1分30秒、あるいは蒸し加熱を2分間行って再加熱したものである。結果を対照区T2との比較として表5に示す。
【0065】
【表5】
【0066】
予備解凍後に焼成調理することにより、再加熱品と比べて品質の優位性が確認された。レンジ再加熱によると、耳(皮の合わせ目)の硬化や焼き面品質の低下が認められた。一方、蒸し調理によると、焼き面品質の低下が認められた。予備解凍後調理は焼き面品質に対して効果が大きいことが明らかとなった。
【0067】
試験例3 電子レンジ/蒸し加熱に対する焼成加熱の品質優位性
試験区T14~T18は、冷蔵庫内で24時間予備解凍後に、それぞれ電子レンジ加熱を30秒、1分、1分30秒、あるいは蒸し加熱を2、3分間行ったものである。結果を対照区T2との比較として表6に示す。
【0068】
【表6】
【0069】
フライパン調理に比べて、レンジ、蒸し器調理ともに耳の硬化や腹の弾力低下などの品質差が確認された。
【0070】
試験例4 チルド品に対する品質優位性
試験区T19は、チルド品(未凍結)をチルド状態のまま3分間焼成加熱したものである。結果を対照区T2との比較として表7に示す。
【0071】
【表7】
【0072】
チルド品に対して、冷凍品の予備解凍後調理の品質優位性が確認された。
【0073】
試験例5 品質良好を維持できる予備解凍時間の確認及びチルドとの比較
試験区T20~23は、冷凍品をそれぞれ冷蔵庫内で3、6、12及び72時間予備解凍後に3分間焼成加熱したものであり、試験区T24は、チルド品(未凍結)をチルド状態のまま3分間焼成加熱したものである。結果を対照区T2との比較として表8に示す。
【0074】
【表8】
【0075】
少なくとも、冷蔵予備解凍時間3時間から3日までは、24時間予備解凍と同等の品質で時短調理が可能であることが確認された。
【0076】
試験例6 予備解凍手段の検証
試験区T25は常温(約20℃)で5時間静置、T26は蒸し器で蒸し加熱を10分間行うことで予備解凍した後に3分間焼成加熱したものである。試験区T27及びT28は、10分間の蒸し加熱の後、それぞれ冷蔵及び常温で5時間保存し、3分間焼成したものである。結果を対照区T2との比較として表9に示す。
【0077】
【表9】
【0078】
予備解凍をして焼成調理することで品質を維持した状態で時短調理が可能であり、予備解凍法については、常温、冷蔵、蒸し、蒸し後の保存など手段は問わないことが確認された。
【0079】
試験例7 冷凍餃子の組成、調製方法によるさらなる品質向上の検討
添加物や工程面の工夫で皮品質のさらなる向上を試みた。試験区T29は、上記(1)において、小麦粉の5重量%を酢酸澱粉に置換したものであり、T30は、対照区T2の中具水分量16重量%に対して、中具水分量が30%になるように調整したものであり、T31は、上記(3)において、蒸し加熱後、凍結直前に餃子を熱湯(95~100℃)に30秒間浸漬したものである。各試験区とも対照区T2と同様、冷蔵庫内で24時間予備解凍した後、3分間焼成加熱した。
(a)耳の硬さ、中具のパサつきのいずれかで-1点以上の向上、又は
(b)腹の弾力、焼き目の色、焼き目のパリ感のいずれかで1点以上の向上
が認められた場合に「◎(より好ましい品質)」と評価した。結果を対照区T2との比較として表10に示す。
【0080】
【表10】
【0081】
外皮への酢酸澱粉の配合、中具の水分増量、凍結前の熱湯浸漬といった手段を組み合わせることにより、予備解凍後調理における皮品質をさらに向上させ得ることが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明の冷凍餃子は、時短調理と優れた調理後品質の両立が可能であるので、飲食店のランチタイム等の混雑時、短時間に大量の餃子を提供する必要がある場合において、極めて有用である。