(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155500
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】板材
(51)【国際特許分類】
B32B 5/28 20060101AFI20241024BHJP
B27M 3/00 20060101ALI20241024BHJP
B32B 21/08 20060101ALI20241024BHJP
E04F 13/18 20060101ALN20241024BHJP
【FI】
B32B5/28 101
B27M3/00 N
B32B21/08 101
E04F13/18 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023070261
(22)【出願日】2023-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】000184687
【氏名又は名称】小松マテーレ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】奥谷 晃宏
(72)【発明者】
【氏名】中山 武俊
(72)【発明者】
【氏名】細川 穂奈美
【テーマコード(参考)】
2B250
2E110
4F100
【Fターム(参考)】
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(57)【要約】
【課題】軽量で剛性が高い特性と、木材の質感と風合いを有しており、かつ大面積で薄くしても層間剥離が発生しにくい板材を提供する。
【解決手段】発泡芯材の両面に繊維強化樹脂製の板が積層された基材と、前記基材の少なくとも片面に木板が積層された板材であって、前記発泡芯材の曲げ弾性率が15MPa以上であり、かつ全体の厚みが4mm以上30mm以下である板材が提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡芯材の両面に繊維強化樹脂製の板が積層された基材と、前記基材の少なくとも片面に木板が積層された板材であって、前記発泡芯材の曲げ弾性率が15MPa以上であり、かつ全体の厚みが4mm以上30mm以下である、板材。
【請求項2】
前記発泡芯材の5%圧縮強さが0.2MPa以上である、請求項1に記載の板材。
【請求項3】
前記繊維強化樹脂製の板を構成する強化繊維が炭素繊維である、請求項1または請求項2に記載の板材。
【請求項4】
前記繊維強化樹脂製の板を構成する強化繊維の組織が織物である、請求項1または請求項2に記載の板材。
【請求項5】
前記繊維強化樹脂製の板を構成するマトリックス樹脂が、分子中に活性水素基を有し、前記繊維強化樹脂製の板と、前記発泡芯材とが、前記マトリックス樹脂中の活性水素基と化学結合を形成する反応型接着剤を介して接着されている、請求項1または請求項2に記載の板材。
【請求項6】
前記マトリックス樹脂がフェノキシ樹脂である、請求項5に記載の板材。
【請求項7】
前記木板の厚みが0.15mm以上3.0mm以下である、請求項1または請求項2に記載の板材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板材に関する。
【背景技術】
【0002】
木材は、金属、セラミックスなどと比較してぬくもりのある質感や風合いを有し、かつ湿度が高いときには吸湿して、湿度が低いときには放湿して環境を調節する独特の機能を有する。さらに、木材は、構造材としても密度が小さく軽量であることから、現代でも生活の様々な部分で使用されている。
【0003】
一方、木材は、金属、セラミックスなどと比較して剛性が低く、曲げやねじりなどの外力が加わる部分の材料としては使用しにくい欠点がある。また、特に大面積の木材は、採取地域や採取時期、さらに同一部材の中でも場所によって不均一性を有する天然物の特徴を原因として、温度や湿度の条件により不均一に膨張・収縮して反りやたわみが発生するなど、寸法安定性が低く変形しやすい性質も有する。
【0004】
そこで、例えば特許文献1では、全面を合成樹脂又は繊維強化合成樹脂を塗布して被覆した合成樹脂発泡材又はプラスチック格子を芯材とし、この表裏面に木製平板を継ぎ合わせた板の木口を逆にして上板と下板を張り合わせた2層板を固着することによって、木材の外観と高い剛性を有する板材とし、この板材をテラスデッキとして利用する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
テラスデッキのような厚みが問題とならない用途であれば、木材を含む各層に厚みを持たせることによって板材の反りやたわみの発生を抑制できるが、机や棚などの天板や、建具などといった大面積で薄い板材を、木材(木板)を含む積層板によって作製した場合、外力による反りや自重によるたわみ、各層の膨張伸縮差で発生する応力に耐えられず層間剥離を生じやすい。そのため、単純に積層板を大面積化したり薄型化したりすることが困難であるという課題が残っている。
【0007】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、軽量で剛性が高い特性と、木材の質感と風合いを有しており、かつ大面積で薄くしても層間剥離が発生しにくい板材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、以下の本発明の一態様を完成するに至った。
【0009】
(1)本発明にかかる板材は、発泡芯材の両面に繊維強化樹脂製の板が積層された基材と、前記基材の少なくとも片面に木板が積層された板材であって、前記発泡芯材の曲げ弾性率が15MPa以上であり、かつ全体の厚みが4mm以上30mm以下である、板材である。
【0010】
(2)また、本発明にかかる板材は、前記発泡芯材の5%圧縮強さが0.2MPa以上であるとよい。
【0011】
(3)また、本発明にかかる板材は、前記繊維強化樹脂製の板を構成する強化繊維が炭素繊維であるとよい。
【0012】
(4)また、本発明にかかる板材は、前記繊維強化樹脂製の板を構成する強化繊維の組織が織物であるとよい。
【0013】
(5)また、本発明にかかる板材は、前記繊維強化樹脂製の板を構成するマトリックス樹脂が、分子中に活性水素基を有し、前記繊維強化樹脂製の板と、前記発泡芯材とが、前記マトリックス樹脂中の活性水素基と化学結合を形成する反応型接着剤を介して接着されているとよい。
【0014】
(6)また、本発明にかかる板材は、前記マトリックス樹脂が、フェノキシ樹脂であるとよい。
【0015】
(7)また、本発明にかかる板材は、前記木板の厚みが0.15mm以上3.0mm以下であるとよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、軽量で剛性が高い特性と、木材の質感と風合いを有しており、かつ大面積で薄くしても層間剥離が発生しにくい板材を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、いずれも本発明の一具体例を示すものである。また、本発明は、以下の態様のみに限定されるものではなく、本発明の精神と実施の範囲において多くの変形が可能である。
【0018】
本実施の形態にかかる板材は、発泡芯材の両面に繊維強化樹脂製の板が積層された基材と、前記基材の少なくとも片面に木板が積層された板材であって、前記発泡芯材の曲げ弾性率が15MPa以上であり、かつ全体の厚みが4mm以上30mm以下である、板材である。
【0019】
<発泡芯材>
本実施の形態にかかる板材は、基材として、両面に後述する繊維強化樹脂製の板が積層された、曲げ弾性率が15MPa以上の発泡芯材を含む。なお、本発明における発泡芯材とは、内部に径が0.1μm~1mm程度の独立した、または連通した細かな気泡を多数有する多孔質体(発泡体)からなる板状の芯材を指す。
【0020】
本実施の形態にかかる芯材は、比較的高い曲げ弾性率を有しているため、基材に剛性と厚みとを与える役割を担う。かつ芯材として発泡体を用いることで、板材の見かけの密度を小さくし軽量な板材とするとともに、接着面積の確保と、接着剤のアンカー効果の発現とで、発泡芯材と繊維強化樹脂製の板との接着力を向上させている。
【0021】
発泡芯材として用いられる素材としては、曲げ弾性率が15MPa以上となる板状の発泡体を形成できるものであれば特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリウレタン樹脂、ノボラックなどの熱可塑性樹脂、メラミン、レゾールなどの熱硬化性樹脂、セラミックスなどの無機材料が挙げられる。発泡芯材の素材としては、軽量化のために有機系の樹脂を用いるのが好ましく、特に、板材を熱プレスによって湾曲させるなどの賦形を行う場合には、熱可塑性樹脂が好ましい。
【0022】
前記素材を発泡させる方法は特に限定されず、例えば、樹脂をミキサーなどで撹拌したり、気体を注入したりするなどで樹脂中に気泡を形成する機械発泡や、硬化剤や別途の発泡材が反応の過程で発生するガスにより気泡を形成する化学発泡などが挙げられる。また、機械発泡やあらかじめ発泡させて得たビーズのような前記素材を多数集めて板状に成形してもよいし、板状に成形する過程でガスの発生を促し成形と同時に発泡させる方式でもよい。
【0023】
発泡倍率は、選択した素材にもよるが、10倍から25倍が好ましい。発泡倍率が10倍以上であれば板材の軽量化や接着剤のアンカー効果の発現が顕著になる効果が得られる。また、発泡倍率が25倍以下であれば、曲げや圧縮、引っ張りなどの機械的強度が高い発泡芯材を得られやすい。
【0024】
本実施の形態にかかる発泡芯材は、曲げ弾性率が15MPa以上である。曲げ弾性率が15MPa以上と比較的高い発泡芯材を用いることにより、曲げ弾性率が比較的低い場合と比べ、板の各層全体で曲げやねじりなどの外力を受け止められるようになり、層間剥離の原因となる応力を分散させ、層間剥離の発生を抑制できる。発泡芯材の曲げ弾性率は、25MPa以上であるとよく、より好ましくは35MPa以上であり、55MPa以上であるとさらによい。曲げ弾性率の上限は、特に限定されないが、軽量化の観点から150MPa以下が好ましい。なお、曲げ弾性率はJIS K7221-2(2006)に準じて測定することができる。
【0025】
本実施の形態にかかる発泡芯材は、さらに5%圧縮強さが0.2MPa以上であるとよい。発泡芯材の5%圧縮強さが0.2MPa以上であることにより、板材に打撃などの衝撃が加えられた場合においても板材が凹みにくくなる。発泡芯材の5%圧縮強さは、0.3MPa以上であるとよく、より好ましくは0.5MPa以上であり、1.0MPa以上であるとさらによい。発泡芯材の5%圧縮強さの上限は、特に限定されないが、軽量化の観点から3.0MPa以下が好ましい。なお、発泡芯材の5%圧縮強さはJIS K7220(2006)に準じて圧縮試験を行い、試験片の変形率が5%に到達した時点での最大荷重を、試験片の初めの断面積で除することにより求めることができる。
【0026】
<繊維強化樹脂製の板>
本実施の形態にかかる板材は、前記発泡芯材の両面に、繊維強化樹脂製の板が積層された基材を含む。繊維強化樹脂製の板は、強化繊維と、強化繊維に含浸したマトリックス樹脂とを含み、基材に高い剛性を与える役割を担う。
【0027】
繊維強化樹脂製の板を構成する強化繊維として用いられる素材としては、炭素繊維、黒鉛繊維、炭化ケイ素繊維、アルミナ繊維、タングステンカーバイド繊維、ボロン繊維、ガラス繊維、バサルト繊維などの無機系繊維、アラミド繊維、超高分子量ポリエチレン繊維、ポリアリレート繊維、ポリパラフェニレンベンズオキサゾール繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維、ポリイミド繊維、フッ素繊維、ポリビニルアルコール繊維などの有機系繊維、アルミ繊維、鉄繊維、銅繊維、ニッケル繊維、チタン繊維、ステンレス繊維などの金属繊維が挙げられる。なかでも、強化繊維としては、比重が小さく、かつ線膨張係数の小ささと、吸湿性の低さとを兼ね備え、温度や湿度の条件による寸法変化が小さい炭素繊維を用いることが好ましい。
【0028】
繊維強化樹脂製の板を構成する強化繊維は、短繊維であっても長繊維(連続繊維)であってもよい。また、強化繊維の組織は特に限定されず、例えば、短繊維を含む樹脂を後述するマトリックス樹脂に分散させた形態や、短繊維を抄造して得られる不織布、長繊維を単純に引き揃えた一方向材、引き揃えた長繊維を織った織物、または、引き揃えた長繊維を編んだ編物などが挙げられる。板材に加えられた衝撃を面全体に伝導して逃がすことで、板材に耐衝撃性を与えやすいとの観点から、強化繊維は長繊維であることが好ましい。また、強化繊維製の糸が経緯に交差してなる織物は、単純に引き揃えられただけの一方向材や、ループ間で糸が動く余地を有する編物と比較して、マトリックス樹脂を含浸させる工程で厚みのばらつきが発生しにくく、より平坦な板が得られる。繊維強化樹脂製の板が平坦であることにより層間剥離の発生を抑制できるため、強化繊維の組織は、織物であることがより好ましい。さらに、強化繊維製の織物は一方向性材と異なり、面内に強度の異方性が無い。強化繊維の組織として一方向材を用いる場合は、面内強度の異方性を消すために、軸方向を変えながら複数枚積層する必要があり、曲げやねじりの力が加わると各層間でひずむ方向が異なり、層間剥離するおそれがあるが、強化繊維の組織として織物を用いることで、複数枚積層したとしても層間剥離の原因となりにくい。
【0029】
強化繊維製の織物を構成する糸としては、強化繊維を1000本~50万本引き揃えて束ねたものが用いられる。また、繊維強化樹脂製の板は、マトリックス樹脂が強化繊維の束の内部にまで含浸しているとよい。この場合、マトリックス樹脂の強化繊維の束への含浸を容易にするため、強化繊維の束は開繊されているとよいが、十分に粘度が低いマトリックス樹脂を用いる場合には、強化繊維の束は開繊されていなくてもよい。
【0030】
織物の組織としては、平織、綾織、朱子織など、特に限定されない。得られる板材の強度や耐摩耗性を向上させたい場合には平織を選択し、板材の賦形を行う場合にはしわが発生しにくい綾織を選択すればよい。
【0031】
本実施の形態にかかる繊維強化樹脂製の板は、前記強化繊維にマトリックス樹脂を含浸させたものである。
【0032】
マトリックス樹脂として用いられる素材は、特に限定されず、ポリアミド、(メタ)アクリル樹脂、ポリフェニレンサルファイド、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンやポリプロピレンなどの(環状)ポリオレフィン、ポリアセタール、ポリカーボネート、熱可塑性ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ABS樹脂などのゴム、ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ノボラック、フェノキシ樹脂などの熱可塑性樹脂、あるいは、不飽和ポリエステル樹脂、尿素樹脂、メラミン、熱硬化性ポリウレタン樹脂、レゾール、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂が挙げられ、これらをさらに化学修飾したものであってもよい。
【0033】
なかでも、分子中に活性水素基を有するマトリックス樹脂を用いれば、前記繊維強化樹脂製の板と、前記マトリックス樹脂中の活性水素基と化学結合を形成する接着剤とが化学結合を形成し強固に接着できるため好ましい。分子中に活性水素基を有するマトリックス樹脂は、ヒドロキシル基、アミノ基、イミノ基、カルボキシル基、ウレタン基、ウレイド基、チオール基などの活性水素を有する官能基を、分子中に複数有していれば、特に限定されず、例えば、メラミン、熱硬化性ポリウレタン樹脂、レゾール、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂、2-ヒドロキシ(メタ)アクリレートなどの活性水素基を有する(メタ)アクリル樹脂、ノボラック、フェノキシ樹脂などが挙げられる。特に、熱可塑性樹脂であれば、活性水素基が重合の際に消費されず側鎖として多数存在しており、接着剤との結合箇所が増え接着力を向上させられることから、マトリックス樹脂は、熱可塑性樹脂であることがより好ましい。取り分け、マトリックス樹脂としては、耐候性、耐摩耗性に優れるフェノキシ樹脂であることが最も好ましい。なお、マトリックス樹脂だけではなく前記発泡芯材の素材にも熱可塑性樹脂を用いた場合には、熱プレスによる板材の賦形が可能となる効果も有する。
【0034】
前記マトリックス樹脂を前記強化繊維に含浸させる方法は特に限定されず、例えば、強化繊維に低粘度のモノマーを含浸させた後にモノマーを重合して硬化させる現場重合法や、マトリックス樹脂を加熱溶融させて強化繊維に含浸させるホットメルト法などが挙げられる。一般的にモノマーが低粘度であったり低粘度化が容易であったりするため、強化繊維を開繊せずとも強化繊維の束の内部にまで樹脂を含浸させやすいとの観点から、現場重合法を用いるのが好ましい。
【0035】
繊維強化樹脂中に占める強化繊維の体積分率(Vf値)は、20%~80%が好ましく、40%~70%がより好ましい。この範囲であれば、成形性に優れ、かつ得られる板材の剛性と靭性、強度とのバランスに優れる。
【0036】
繊維強化樹脂製の板の厚みは、特に限定されないが、0.2mm~4.0mm程度である。繊維強化樹脂製の板の厚みが0.2mm以上であれば、高い剛性を有する基材が得られやすい。一方、繊維強化樹脂製の板の厚みが4.0mmを超えると、必要以上に剛性が高くなったり、経済的に不利になったりしやすい。繊維強化樹脂製の板の厚みは、強化繊維の太さ、本数、Vf値などで調整すればよく、繊維強化樹脂製の板を複数積層して用いてもよい。
【0037】
<基材>
本実施の形態にかかる板材は、前記発泡芯材の両面に前記繊維強化樹脂製の板が積層された基材を含む。前記発泡芯材の両面に前記繊維強化樹脂製の板を積層することにより、軽量で高い剛性を有する基材を得るとともに、厚み方向に対称な構成とすることで、反りやたわみを抑制することができる。
【0038】
前記発泡芯材と前記繊維強化樹脂製の板とを積層させる方法は、例えば、接着剤を介して発泡芯材と繊維強化樹脂製の板とを接着することで積層してもよいし、発泡芯材または繊維強化樹脂製の板を構成するマトリックス樹脂の少なくとも一方が熱可塑性樹脂である場合には、熱融着によって発泡芯材と繊維強化樹脂製の板とを接着して積層してもよい。ここで、発泡芯材の曲げ弾性率は比較的高いといえども、繊維強化樹脂製の板との曲げ弾性率と比較して10倍から1000倍程度低い材料である。このため、板材に大きな力が加わった場合、層間の変形率が異なり大きな応力が発生し、層間剥離の原因となるおそれがある。接着力を向上させて層間剥離の発生を抑制するために、繊維強化樹脂製の板を構成するマトリックス樹脂として分子中に活性水素基を有する樹脂を用い、前記繊維強化樹脂製の板と発泡芯材とが、前記マトリックス樹脂中の活性水素基と化学結合を形成する反応型接着剤を介して接着されていると好ましい。
【0039】
反応型接着剤としては、例えば、エポキシ樹脂系接着剤、ウレタン樹脂系接着剤、尿素樹脂系やメラミン樹脂系、フェノール樹脂系などのホルムアルデヒド系接着剤、シリコーン樹脂系接着剤、他のベース接着剤にイソシアネートが添加されている接着剤などが挙げられる。
【0040】
発泡芯材と繊維強化樹脂製の板とを接着する方法は、特に限定されず、例えば、接着剤を用いる場合には、発泡芯材または繊維強化樹脂製の板または両方に、必要に応じて希釈や加熱などの処置を加えることにより流動性を有する接着剤を塗布し、塗布面を貼り合わせた後に選択した接着剤の種類に応じて加熱、加湿、紫外線や電子線などの活性エネルギー線の照射などの接着剤硬化促進手段を加えながら養生すればよい。また、発泡芯材と繊維強化樹脂製の板とを熱融着によって接着する場合には、熱可塑性樹脂が溶融する温度まで加熱した後に、必要に応じて脱気をしながら貼り合わせ、放冷すればよい。
【0041】
<木板>
本実施の形態にかかる板材は、前記基材の少なくとも片面に木板が積層された板材である。基材に積層された木板は、化粧材の役割を担う。化粧材として木板を用いることにより、板材に木材の質感と風合いを与えることができる。
【0042】
本実施の形態で用いられる木板の原木は、特に限定されず、例えば、ヒノキ、マツ、スギなどの針葉樹、ナラ、ブナ、ケヤキ、サクラ、クヌギ、ホオノキ、カエデ、ウォールナット、チーク、マホガニーなどの広葉樹が挙げられる。
【0043】
木板の形態は、特に限定されず、無垢材、幅はぎ材、集成材などのいずれでも用いられるが、木材の質感と風合いが強く感じられるとの観点から、丸太から切り出された一枚板である無垢材を用いるのが好ましい。
【0044】
木板の厚みは、0.15mm以上3.0mm以下が好ましい。木板の厚みが0.15mm以上であれば表面の摩擦に強い板材が得られる。また、木板の厚みが3.0mm以下であれば、温度や湿度の条件により木板が膨張・収縮して発生する応力を小さくでき、層間剥離発生を抑制できる。また、木板として無垢材を用いる場合、希少性が高い厚い無垢材よりも薄い無垢材の方が入手しやすく経済的に有利になる利点も有する。木板の厚みのより好ましい範囲は、0.3mm以上2.0mm以下である。
【0045】
<板材>
本実施の形態にかかる板材は、前記基材の少なくとも片面に木板が積層された板材であって、全体の厚みが4mm以上30mm以下である、板材である。
【0046】
前記基材と前記木板とは、接着剤を介して接着して積層される。基材と木板との接着に用いられる接着剤は、特に限定されず、例えば、(水)溶剤型接着剤、エマルジョン型接着剤、ホットメルト型接着剤、反応型接着剤などが挙げられる。ここで、マツやカエデ、チークなどの油分が多くて接着剤での接合が比較的困難であるとされる原木からなる木板を用いる場合には、基材と木板とを接着する接着剤としては、発泡芯材と繊維強化樹脂製の板とを接着する場合と同様に、反応型接着剤を用いるとよい。これにより、反応型接着剤とセルロースとが化学結合を形成し、高い接着力を得ることができる。
【0047】
前記木板の厚みを3.0mm以下と薄くした場合、木板の木目から接着剤がにじみ出てしまうおそれがある。そこで、接着剤のにじみ出しを抑制するため、繊維強化樹脂製の板と木板との間に、シーリング層を積層してもよい。シーリング層は、その層中に浸透した接着剤と一体化して基材と木板との間に積層されることとなる。シーリング層に用いられる材料は、木目から接着剤がにじみ出ることを防ぎ、かつ基材と木板との接着を妨げないものであれば特に限定されず、例えば、紙、不織布、織物などが挙げられる。シーリング層としては、特に、構成する繊維が比較的長くシーリング性に優れ、木板と同じセルロース素材であり接着性を阻害しにくい和紙、またはセルロース製やレーヨンなどの再生繊維製の長繊維不織布であることが好ましい。
【0048】
本実施の形態にかかる板材であれば、全体として4mm以上30mm以下と薄くとも、軽量で剛性が高い特性と、木材の質感と風合いを有しており、かつ大面積であっても層間剥離が発生しにくい板材が得られる。より層間剥離を抑制しやすいとの観点から、板材の厚みは、6mm以上が好ましく、8mm以上であるとさらによい。また、板材の厚みが20mm以下であっても層間剥離が抑制された板材が得られる。なお、板材の厚みは、15mm以下であってもよい。
【0049】
また、板材の端面を化粧するために、板材の端面に化粧用シールや上述した木板を厚みの幅に細く加工したものを貼り付けたり、枠(框)となる別途の素材を板材の端部に配置したりしてもよい。さらに、板材の端面の意匠性を高めるため、端面に傾斜を設けるなどしてもよい。
【0050】
(実施例)
以下、本実施の形態にかかる板材について、実施例および比較例を挙げて詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。なお、本発明の目的を逸脱しない範囲で変更を施すことは、全て本発明の技術的範囲に含まれる。また、以下の例における各種性能の測定、試験および評価は次の方法で行った。
【0051】
<曲げ弾性率>
曲げ弾性率は、JIS K7221-2(2006)に準じて測定した。発泡芯材の試験条件として、試験片のサイズを長さ:350mm×幅:40mm×厚み:10mmとし、支点間距離を300mmとし、加圧くさびの速度を20mm/minとした。板材の試験条件として、板材の試験片のサイズを長さ:400mm×幅:30mmとし、支点間距離を300mmとし、加圧くさびの速度を5mm/minとした。
【0052】
<5%圧縮強さ>
5%圧縮強さは、JIS K7220(2006)に準じて圧縮試験を行い、試験片の変形率が5%に到達した時点での最大荷重を、試験片の初めの断面積で除することにより求めた。
【0053】
<温湿度サイクル試験>
まず、長さ:280cm×幅:100cmの長方形の板材を準備した。環境試験室内に、前記板材を4隅に設置した足で支え、板材の中央部に50kgのおもりを載せた。20℃×60%RHの環境で1時間保持、40℃×20%RHの環境で1時間保持、40℃×95%RHの環境で1時間保持、20℃×60%RHの環境で1時間保持、というサイクルを1サイクルとし、1サイクルごとに板材の層間剥離の有無を確認した。表には、層間剥離の発生が無かったサイクル数の最大値を記載した。
【0054】
<耐荷重試験>
まず、長さ:150cm×幅:80cmの長方形の板材を準備した。前記板材を20℃×60%RHの環境下、支点間距離:100cmの支点に掛け渡し、板材の中央に、圧子の速度:10kgf/sec、最大負荷:100kgfで負荷を掛け、その後同じ速度で除荷する試験を1サイクルとし、500サイクルごとに状態を確認しながら層間剥離が発生するまで試験を続けた。
【0055】
<耐衝撃試験>
JIS S1205(1998)に記載の水平面に対する衝撃試験に準じて試験を実施した。試験体は、長さ:100cm×幅:80cmの長方形の板材の4隅を固定したものを用い、25kgの衝撃体を240mmの高さから10回落下させて衝撃を加え、試験後の凹みが無いものを合格とした。
【0056】
(実施例1)
<強化繊維>
まず、フィラメント太さ:12μmのガラス繊維を一方向に引き揃えてボビンに巻き取った。
【0057】
<繊維強化樹脂製の板>
前記ガラス繊維をボビンから巻き出し、熱溶融させたポリプロピレンを熱ロールでしごきながら含浸させ、厚み:0.6mm、Vf値:54%のプリプレグ(一方向材)を得た。次いで、前記プリプレグを、繊維軸方向を90度変えて2枚積層して熱圧着し、繊維強化樹脂製の板を得た。
【0058】
<基材>
厚み:5mm、発泡倍率:25倍、曲げ弾性率:26.4MPa、5%圧縮強さ:0.32MPaのアクリル樹脂製発泡芯材を準備し、前記発泡芯材の両面にウレタン樹脂系接着剤を塗布した前記繊維強化樹脂製の板を貼り合わせ、養生することによって基材を得た。
【0059】
<板材>
前記基材の片面に、合成ゴム系の接着剤を含浸させた和紙を挟むようにして、厚み:1.0mmのナラの無垢材を積層し、養生することによって板材を得た。得られた板材の評価結果を表1に示す。
【0060】
(比較例1)
発泡芯材として、厚み:5mm、発泡倍率:40倍、曲げ弾性率:12.2MPa、5%圧縮強さ:0.14MPaのアクリル樹脂製発泡芯材を用いたこと以外は、実施例1と同様にして板材を得た。得られた板材の評価結果を表1に示す。
【0061】
(比較例2)
発泡芯材に替えて、厚み:5mm、セルサイズ:10mm、曲げ弾性率:27.9MPa、5%圧縮強さ:0.36MPaのペーパーハニカムコアを芯材に用いたこと以外は、実施例1と同様にして板材を得た。得られた板材の評価結果を表1に示す。
【0062】
【0063】
表1から、曲げ弾性率が15MPa以上の発泡芯材を用いた板材は、温湿度サイクル試験、耐荷重試験の双方において層間剥離が発生しにくい板材であることがわかった。また、5%圧縮強さが0.2MPa以上の芯材を用いた板材は、耐衝撃性に優れていることもわかった。
【0064】
(実施例2)
<強化繊維>
フィラメント太さ:6μmの炭素繊維12000本を一方向に引き揃えた炭素繊維の束を平織にし、炭素繊維製の織物を得た。
【0065】
<繊維強化樹脂製の板>
前記炭素繊維製の織物を、硬化後にフェノキシ樹脂となる2官能性のエポキシモノマーと、硬化剤とを含む液に含浸させ、マングルロールで絞った後に150℃で20分乾燥させることにより、厚み:0.6mm、Vf値:61%のプリプレグ(織物)を得た。次いで、前記プリプレグを2枚積層して熱圧着し、繊維強化樹脂製の板を得た。
【0066】
<基材>
厚み:5mm、発泡倍率:25倍、曲げ弾性率:26.4MPa、5%圧縮強さ:0.32MPaのアクリル樹脂製発泡芯材を準備し、前記発泡芯材の両面にウレタン樹脂系接着剤を塗布した前記繊維強化樹脂製の板を貼り合わせ、養生することによって基材を得た。
【0067】
<板材>
前記基材の両面に、合成ゴム系の接着剤を含浸させた和紙を挟むようにして、厚み:1.0mmのナラ、またはカエデの無垢材を積層し、養生することによって板材を得た。得られた板材の評価結果を表2に示す。
【0068】
(実施例3)
<強化繊維>
フィラメント太さ:12μmのガラス繊維6000本を一方向に引き揃えたガラス繊維の束を平織にし、ガラス繊維製の織物を得た。
【0069】
強化繊維として、前記ガラス繊維製の織物を用いた以外は、実施例2と同様にして板材を得た。得られた板材の評価結果を表2に示す。
【0070】
(実施例4)
<強化繊維>
まず、フィラメント太さ:6μmの炭素繊維を一方向に引き揃えてボビンに巻き取った。
【0071】
<繊維強化樹脂製の板>
前記強化繊維をボビンから巻き出し、硬化後にフェノキシ樹脂となる2官能性のエポキシモノマーと、硬化剤とを含む液に含浸させ、マングルロールで絞った後に150℃で20分乾燥させることにより、厚み:0.5mm~0.6mm、Vf値:56%のプリプレグ(一方向材)を得た。次いで、前記プリプレグを、繊維軸方向を90度変えて2枚積層して熱圧着し、繊維強化樹脂製の板を得た。前記繊維強化樹脂製の板を用いた以外は、実施例2と同様にして板材を得た。得られた板材の評価結果を表2に示す。
【0072】
(実施例5)
繊維強化樹脂製の板を構成するマトリックス樹脂として、実施例1と同様のホットメルト法にてポリプロピレンを含浸させた以外は、実施例2と同様にして板材を得た。得られた板材の評価結果を表2に示す。
【0073】
(実施例6)
木板として、厚み:3.5mmのナラ、またはカエデの無垢材を用いた以外は、実施例2と同様にして板材を得た。得られた板材の評価結果を表2に示す。
【0074】
【0075】
表2から、強化繊維が炭素繊維であること、木板の厚みが3.0mm以下であることにより、温湿度サイクル試験において層間剥離が発生しにくい板材を得られることがわかった。また、繊維強化樹脂製の板を構成する強化繊維の組織が織物であること、繊維強化樹脂製の板を構成するマトリックス樹脂が分子中に活性水素基を有し、前記繊維強化樹脂製の板と発泡芯材とが前記マトリックス樹脂中の活性水素基と化学結合を形成する反応型接着剤を介して接着されていることによって、耐荷重試験において層間剥離が発生しにくい板材を得られることがわかった。