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  • 特開-軸受 図1
  • 特開-軸受 図2
  • 特開-軸受 図3A
  • 特開-軸受 図3B
  • 特開-軸受 図4
  • 特開-軸受 図5
  • 特開-軸受 図6
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155508
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】軸受
(51)【国際特許分類】
   F16C 35/063 20060101AFI20241024BHJP
   F16C 19/16 20060101ALI20241024BHJP
   F16C 35/067 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
F16C35/063
F16C19/16
F16C35/067
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023070281
(22)【出願日】2023-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100150566
【弁理士】
【氏名又は名称】谷口 洋樹
(74)【代理人】
【識別番号】100142608
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 由佳
(74)【代理人】
【識別番号】100213470
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 真二
(72)【発明者】
【氏名】加藤 雅樹
(72)【発明者】
【氏名】吉川 光彦
【テーマコード(参考)】
3J117
3J701
【Fターム(参考)】
3J117AA02
3J117BA02
3J117DA02
3J117DB01
3J117DB06
3J117DB10
3J701AA03
3J701AA32
3J701AA42
3J701AA52
3J701AA62
3J701BA56
3J701BA69
3J701DA03
3J701EA01
3J701FA42
3J701FA46
3J701GA60
3J701XB03
3J701XB26
3J701XB33
(57)【要約】
【課題】既存設備の兼用化等を図ると共に、軸受と軸との接触範囲を保つことができる軸受を提供する。
【解決手段】軸受1は、内輪端面から軸方向に突出し且つ円周方向に複数設けられる爪部8を備え、これら爪部8が連結機構により軸9に取り付けられる。複数の爪部8の少なくともいずれか一つに、開口部12が設けられている。各爪部8は、内輪2の径方向における最大肉厚2Hよりも薄い肉厚を有し、各爪部8の内径8aは内輪内径2bに等しい。この軸受1は、内外輪2,3と、内外輪2,3間に介在される複数の転動体4と、これら転動体4を保持する保持器5とを備え、外輪3の外周面3bが軸受箱に調心可能に設けられる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内輪と、外輪と、前記内輪と前記外輪との間に配置された複数の転動体とを有し、
前記内輪の端面から軸方向に突出し且つ円周方向に複数設けられる爪部を備え、
複数の前記爪部の少なくともいずれか一つに、開口部が設けられている軸受。
【請求項2】
請求項1に記載の軸受において、前記各爪部は、内輪の径方向における最大肉厚よりも薄い肉厚を有し、前記各爪部の内径は内輪内径に等しい軸受。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の軸受において、前記外輪の外周面が軸受箱に調心可能に設けられる軸受。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の軸受において、前記開口部は、前記爪部の軸方向中間部よりも前記内輪の軌道溝側に位置する軸受。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載の軸受において、前記開口部の軸方向長さは、前記爪部の軸方向長さに対し、最大50%の長さを有する軸受。
【請求項6】
請求項1または請求項2に記載の軸受において、前記開口部の周方向長さは、前記爪部の周方向長さに対し、最大60%の長さを有する軸受。
【請求項7】
請求項1または請求項2に記載の軸受において、前記内輪は、この軌道溝の硬度に比べ前記爪部の硬度を低下させている軸受。
【請求項8】
内輪と、前記内輪の外方に配置された外輪と、前記内輪と前記外輪との間に配置された複数の転動体と、前記内輪の内径面に嵌合される軸を備えた軸受装置において、
前記内輪の端面から軸方向に突出し且つ円周方向に複数設けられる爪部を備え、前記爪部が連結機構により軸に取り付けられ、複数の前記爪部の少なくともいずれか一つに、開口部が設けられている軸受装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸受に関し、例えば、一般産業機械等に用いられる軸受ユニット用の同心カラー軸受に適用される技術に関する。
【背景技術】
【0002】
調心性を備えた軸受ユニットが種々提案されている。従来例の軸受ユニットは、軸との組付け等の簡便化のために、軸受内径と軸はすきま嵌めとし、軸受と軸の固定装置としては、止めねじ、偏心カラー、またはテーパアダプタを一般的に使用している(特許文献1~5)。これらの中でも止めねじ方式は多く採用される。しかし、止めねじを締結することで内輪内径と軸の間のすきま分が、軸受の回転中心に対する軸の芯ずれとなることが避けられないため、高速回転になるにつれて振動が大きくなる問題がある。前記偏心カラーを使用する場合も同様の問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2021/0285497号明細書
【特許文献2】実用新案登録第3184486号公報
【特許文献3】特開昭61-74913号公報
【特許文献4】実用新案登録第3055655号公報
【特許文献5】米国特許第4537519号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このため、高速回転下ではテーパアダプタ方式の軸受が一般的に使用される。このテーパアダプタ方式は、テーパスリーブの締め込み作業により内輪内径と軸とのすきま分をなくすため、芯ずれが基本的になくなることから回転精度・低振動性に優れている。しかし上記軸受に比べ部品点数が多く、さらに他形式の場合と同じ軸径で使用するためには内部構造が変化し、軸受全体では大型化するため、作業性および寸法制約の点で不利である。
【0005】
この対策として、特許文献1等のように軸と軸受内輪を同心状に装着可能な器具(以下、同心カラー)を使用する。しかし、同心カラーを締付け、軸受内輪の端部に設けられた爪部を変形させて軸と軸受の固定を果たす。このため、軸受端部の爪部は、より容易に変形(縮径)可能な形状・肉厚であることが求められる。
【0006】
爪部の変形を容易にするためには、爪部の硬度を低くするか、形状を工夫する手段が挙げられる。
爪部の硬度を低くする場合、軌道部のみの高周波焼入れが良い。ただし、一般的なインサート軸受は軌道輪全体の焼入れおよび焼戻しを採用しているため、一般的なインサート軸受の熱処理の設備を兼用することができない。また、軸受の材質として爪部の変形に適した低硬度材を採用した時は、一般的な軸受鋼を採用した軸受に比べ寿命が劣る欠点がある。
【0007】
爪部形状の工夫については、特許文献1および5のような爪部形状は軸受の軸への締結に有効である。特許文献1および5のような爪部形状は、軸受全体の加工工程が一般にやや複雑であると特許文献4では述べている。但し、特許文献4は爪部の柔軟性に欠ける。いずれの形状も爪部の厚みは柔軟性と強度面を考慮した上で薄く設計しているため、仮にさらに爪部の柔軟性を求められた場合は爪部肉厚面での改良が困難である。
【0008】
本発明の目的は、既存設備の兼用化等を図ると共に、軸受と軸との接触範囲を保つことができる軸受を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の軸受は、内輪と、外輪と、前記内輪と前記外輪との間に配置された複数の転動体とを有し、
前記内輪端面から軸方向に突出し且つ円周方向に複数設けられる爪部を備え、
複数の前記爪部の少なくともいずれか一つに、開口部が設けられている。
【0010】
この構成によると、爪部に開口部を設けたため、内輪の爪部の剛性を内輪軌道部等の剛性よりも低下することができる。これにより、爪部に開口部を設けない構造等に対し、軸受を軸に固定する際の爪部内径と軸との固定力が増す。また、爪部内径面と軸との接触面積の減少はないため、軸受運転中の固定力も維持される。爪部の面積に応じて開口部の加工範囲を変えられるため、前記特許文献等の類似技術で挙げられている爪形状に対しても適用可能で、さらなる柔軟性を得ることができる。
軸受の熱処理は、内輪全体の焼入れおよび焼戻しを行った後、例えば、爪部にのみ高周波焼鈍しを実施することができる。このため、従来の設備に対する変更は最小限になる。このように既存設備の兼用化等を図ると共に、軸受と軸との接触範囲を保つことができる。
【0011】
前記各爪部は、内輪の径方向における最大肉厚よりも薄い肉厚を有し、前記各爪部の内径は内輪内径に等しくしてもよい。この場合、内輪の最大肉厚と同一の爪部よりも、爪部の柔軟性を高め、爪部内径と軸との固定力をより確実に高めることができる。
【0012】
前記外輪の外周面が軸受箱に調心可能に設けられてもよい。このような調心機能を有する軸受に適用可能である。
【0013】
前記開口部は、前記爪部の軸方向中間部よりも前記内輪の軌道溝側に位置してもよい。このように開口部を設ける位置を、内輪の軌道溝側、すなわち爪部の根本に近い程爪部の剛性を低下させるうえで有効となる。
【0014】
前記開口部の軸方向長さは、前記爪部の軸方向長さに対し、最大50%の長さを有してもよい。この場合、爪部内径と軸との接触範囲の減少を抑えることができる。開口部の軸方向長さが、爪部の軸方向長さの50%を超えると、爪部内径と軸との接触範囲が減少し、爪部内径と軸との固定力を維持することが難しい。
【0015】
前記開口部の周方向長さは、前記爪部の周方向長さに対し、最大60%の長さを有してもよい。この場合、爪部内径と軸との接触範囲の減少を抑えることができる。開口部の周方向長さが爪部の周方向長さの60%を超えると、爪部内径と軸との接触範囲が減少し、爪部内径と軸との固定力を維持することが難しい。
【0016】
前記内輪は、この軌道溝の硬度に比べ前記爪部の硬度を低下させていてもよい。例えば、内輪全体の焼入れおよび焼戻しを行った後、例えば、爪部にのみ高周波焼鈍しを行うことで、爪部の硬度を軌道溝よりも低下させ得る。したがって、爪部に柔軟性を与え爪部内径と軸との固定力をより確実に高めることができる。
【0017】
本発明の軸受装置は、内輪と、前記内輪の外方に配置された外輪と、前記内輪と前記外輪との間に配置された複数の転動体と、前記内輪の内径面に嵌合される軸を備えた軸受装置において、
前記内輪の端面から軸方向に突出し且つ円周方向に複数設けられる爪部を備え、前記爪部が連結機構により軸に取り付けられ、複数の前記爪部の少なくともいずれか一つに、開口部が設けられている。
【発明の効果】
【0018】
本発明の軸受は、内輪端面から軸方向に突出し且つ円周方向に複数設けられる爪部を備え、これら爪部が連結機構により軸に取り付けられる。複数の爪部の少なくともいずれか一つに、開口部が設けられているため、既存設備の兼用化等を図ると共に、軸受と軸との接触範囲を保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1の実施形態に係る軸受の縦断面図である。
図2】同軸受の内輪の斜視図である。
図3A】同内輪の正面図である。
図3B】同内輪の爪部を部分的に拡大して示す拡大正面図である。
図4】本発明の第2の実施形態に係る軸受の内輪の正面図である。
図5】本発明の第3の実施形態に係る軸受の内輪の正面図である。
図6】本発明のいずれかの実施形態に係る軸受を軸受ユニットに適用した例を示す軸受ユニットの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[第1の実施形態]
本発明の実施形態に係る軸受を図1ないし図3Bと共に説明する。この軸受は、例えば、一般産業機械等に用いられる後述の軸受ユニットに適用される。
【0021】
<軸受の概略構造>
図1のように、実施形態に係る軸受1は、内外輪2,3と、複数のボール等の転動体4と、保持器5と、シール6と、スリンガ7とを有する玉軸受である。内外輪2,3は軸受鋼から成り、玉4は鋼球等から成る。内輪2は、外輪3よりも幅広に形成され、内輪端面から軸方向に突出し且つ円周方向に複数設けられる爪部8を備える。内輪内径と軸9とは、例えば、隙間嵌めとし、複数の爪部8が連結機構であるカラー10(図6)により軸9に取り付けられる。軸受装置は、前記軸受1と、この軸受1の内輪2の内径面に嵌合される軸9とを備える。
【0022】
外輪3の外周面3bは凸球面状に形成され、後述する軸受箱の球面内径部に外輪3の外周面3bが摺動自在に嵌合する。したがって、外輪3の外周面3bが前記軸受箱に調心可能に設けられる。
複数の転動体4は内外輪2,3の軌道溝2a,3a間に介在し、保持器5はこれら転動体4を保持する。内外輪2,3の軸受空間の両端は、例えば、接触式のシール6,6で密封されている。軸受空間には、潤滑剤であるグリースが封入されている。
【0023】
<スリンガ>
各シール6の軸方向の直ぐ外側には、軸受空間の密封性をさらに高めるためのスリンガ7がそれぞれ設けられている。各スリンガ7は、内輪外周面に嵌合固定される円筒部7aと、この円筒部7aの軸方向内側端から径方向外方に延びる立板部7bとで断面L字形状に形成されている。立板部7bの外径端は、外輪内周面に所定の径方向隙間を介して対向する。
【0024】
<剛性低下手段>
<爪部>
図2のように、内輪2は、剛性低下手段として円周方向に複数(この例では8個)設けられる爪部8を備える。円周方向に隣り合う爪部8,8間の切り割り11の数は、8箇所に設定されている。爪部8,8間の切り割り11の数の増加に従って爪部8の剛性を低下させ得る。但し、爪部8,8間の切り割り11の数は、各爪部8に与えるべき柔軟性、軸受サイズ等設計仕様に応じて適宜に設定される。爪部8,8間の切り割り11の数は、7箇所以下に設定してもよく9箇所以上に増加させることも可能である。
【0025】
図1のように、各爪部8は、内輪2の径方向における最大肉厚2Hよりも薄い肉厚を有する。各爪部8の肉厚t8は、例えば、内輪2の最大肉厚2Hの約50%に設定されている。各爪部8の内径8aは内輪内径2bに等しい。図3Aのように、各爪部8には、それぞれ開口部12が設けられている。開口部12は、爪部8の径方向に貫通する丸孔形状の貫通孔である。但し、開口部12は丸孔形状に限定されるものではない。
【0026】
開口部12の軸方向位置は、内輪2の軌道溝2a側、すなわち爪部8の根本に近い程爪部8の剛性を低下させるうえで有効である。さらに開口部の軸方向位置は、爪部8の軸方向長さ8Lの50%前後までに抑えることで、爪部内径と軸との接触範囲の減少を抑え得る。
具体的には、図3Bのように、開口部12は、爪部8の軸方向中間部P1よりも内輪2の軌道溝2a側に位置する。さらに開口部12の軸方向長さ12Lは、爪部8の軸方向長さ8Lに対し、最大50%の長さを有する。開口部12の周方向長さ12cは、爪部8の周方向長さ8cに対し、最大60%の長さを有する。
【0027】
<熱処理等について>
図1に示す軸受鋼から成る内外輪2,3は、それぞれ一般的な軸受に用いられる全体焼き入れおよび焼き戻しを行う。但し、内輪2の爪部8には、柔軟性を与えるため、内輪全体の焼き入れおよび焼き戻しの後、高周波焼き鈍しを実施する。これにより、内輪2は、この内輪2の軌道溝2aの硬度に比べ爪部8の硬度を低下させている。軌道溝表面と、爪部8の外周面または内周面の各硬度を、公知のロックウェル硬さまたはショア硬さ等によって比較することで、内輪2の軌道溝2aの硬度に対し爪部8の硬度が低下していることを確認し得る。
【0028】
<作用効果>
以上説明した図1に示す軸受1によると、爪部8に開口部12を設けたため、内輪2の爪部8の剛性を内輪軌道部等の剛性よりも低下することができる。これにより、爪部に開口部を設けない従来構造等に対し、軸受1を軸9に固定する際の爪部内径8aと軸9との固定力が増す。また、爪部内径面と軸9との接触面積の減少はないため、軸受運転中の固定力も維持される。爪部8の面積に応じて開口部12の加工範囲を変えるため、前記特許文献等の類似技術で挙げられている爪形状に対しても適用可能で、さらなる柔軟性を得ることができる。
【0029】
軸受の熱処理は、内輪全体の焼入れおよび焼戻しを行った後、例えば、爪部8にのみ高周波焼鈍しを実施することができる。このため、従来の設備に対する変更は最小限になる。このように既存設備の兼用化等を図ると共に、軸受1と軸9との接触範囲を保つことができる。
【0030】
各爪部8は、内輪2の径方向における最大肉厚2Hよりも薄い肉厚を有し、各爪部8の内径8aは内輪内径2bに等しい。この場合、内輪の最大肉厚と同一の爪部よりも、爪部8の柔軟性を高め、爪部内径2bと軸9との固定力をより確実に高めることができる。内輪全体の焼入れおよび焼戻しを行った後、爪部8にのみ高周波焼鈍しを行うことで、爪部8の硬度を軌道溝2aよりも低下させ得る。したがって、爪部8に柔軟性を与え爪部内径8aと軸9との固定力をより確実に高めることができる。
【0031】
<他の実施形態について>
以下の説明においては、各実施形態で先行して説明している事項に対応している部分には同一の参照符号を付し、重複する説明を略する。構成の一部のみを説明している場合、構成の他の部分は、特に記載のない限り先行して説明している実施形態と同様とする。同一の構成は同一の作用効果を奏する。各実施形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施形態同士を部分的に組合せることも可能である。
【0032】
[第2の実施形態:図4
図4のように、爪部8は、四角孔形状の開口部12を有するものであってもよい。この場合にも、前述の実施形態と同様に、開口部12は、爪部8の軸方向中間部P1よりも内輪2の軌道溝2a側に位置する。さらに開口部12の軸方向長さ12Lは、爪部8の軸方向長さ8Lに対し、最大50%の長さを有する。開口部12の周方向長さ12cは、爪部8の周方向長さ8cに対し、最大60%の長さを有する。第2の実施形態においても、前述の実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0033】
[第3の実施形態:図5
図5のように、各爪部8間の切り割り11を部分的に拡張するように、開口部12の周方向位置を設計することも可能である。但し、各開口部12の径が等しい場合は、切り割り11を避け、各爪部8の周方向中心に設けた方が爪部8の剛性を低下させるうえで有効である。
【0034】
<軸受ユニット>
図6は、いずれかの実施形態に係る軸受1を軸受ユニット13に適用した例を示す軸受ユニット13の縦断面図である。軸受ユニット13は、軸受箱14と、軸受箱14に調心可能に設けられる軸受1と、連結機構であるカラー10とを備える。ピロー形の軸受箱14の内周には、凹球面状の球面内径部14aが設けられている。軸受ユニット13は、軸受箱14の球面内径部14aに、軸受1における凸球面状の外輪外径部である外周面3bが摺動自在に嵌合することで、調心機能を有する。
【0035】
<連結機構であるカラー>
カラー10は、円周方向の一箇所が切り欠き形成された円周方向の隙間が形成され、この隙間により縮径可能に構成される。カラー10のうち隙間付近の空隙部分に、締付けねじ15が螺合されることで、カラー10の両端部を接近させ前記隙間を減少させる。これによりカラー10が縮径され爪部内径8aが軸9の外周面を押圧することで、内輪2と軸9が同心に且つ簡単に固定される。
【0036】
複数の爪部8の数は任意に設定することが可能である。
複数の爪部8の少なくともいずれか一つに、開口部12が設けられる構成も可能である。この場合、全ての爪部に開口部を設けるよりも加工工数を低減し製造コストの低減を図れる。
開口部12の孔径は必ずしも同径にする必要はなく、爪部毎に適宜異ならせることも可能である。
開口部12は、爪部8の内周面または外周面に設けられた所謂座繰り孔状の非貫通孔であってもよい。
【0037】
軸受1のシール6を非接触式のシールとすることも可能である。
スリンガ7を省略することも可能である。
各実施形態では、軸受1として玉軸受等の転がり軸受を適用しているが、球面滑り軸受等の滑り軸受を適用することも可能である。
一般産業機械以外の用途に軸受1を適用する可能である。
【0038】
以上、本発明の実施形態を説明したが、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0039】
1…軸受、2…内輪、2a…軌道溝、3…外輪、4…転動体、5…保持器、8…爪部、9…軸、10…カラー(連結機構)、12…開口部
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6