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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155509
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】管理システム
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/22 20060101AFI20241024BHJP
   E02F 3/64 20060101ALI20241024BHJP
   E02F 9/20 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
E02F9/22 A
E02F3/64 A
E02F9/20 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023070284
(22)【出願日】2023-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000231198
【氏名又は名称】日本国土開発株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高田 悦久
(72)【発明者】
【氏名】藤坂 恭史
(72)【発明者】
【氏名】朝倉 健夫
(72)【発明者】
【氏名】関口 政一
【テーマコード(参考)】
2D003
【Fターム(参考)】
2D003AA02
2D003AA04
2D003AB01
2D003BA02
2D003CA02
2D003DA04
2D003DB01
2D003DB03
2D003DB04
(57)【要約】
【課題】スクレーパ車両のアシストを適切なタイミングで行うことができるシステムを提供する。
【解決手段】管理システムSは、牽引部1と、牽引部1によって牽引され、カッティングエッジ24によって掘削した土砂を取り込み収容する収容部23と、を有するスクレーパ車両Vと、スクレーパ車両Vの走行をアシストするブルドーザBと、の運行を管理する。管理システムSは、スクレーパ車両Vの稼働情報を取得する稼働情報取得部45と、スクレーパ車両Vの位置情報を取得する第1位置情報取得部43と、稼働情報取得部45によって取得したスクレーパ車両Vの稼働情報と第1位置情報取得部43によって取得したスクレーパ車両Vの位置情報とに基づいて、ブルドーザBによるスクレーパ車両Vへのアシストの要否を判定する判定部46と、を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
牽引部と、前記牽引部によって牽引され、カッティングエッジによって掘削した土砂を取り込み収容する収容部と、を有するスクレーパ車両と、
前記スクレーパ車両の走行をアシストするアシスト走行機械と、の運行を管理する管理システムであって、
前記スクレーパ車両の稼働情報を取得する稼働情報取得部と、
前記スクレーパ車両の位置情報を取得する第1位置情報取得部と、
前記稼働情報取得部によって取得した前記スクレーパ車両の前記稼働情報と前記第1位置情報取得部によって取得した前記スクレーパ車両の前記位置情報とに基づいて、前記アシスト走行機械による前記スクレーパ車両へのアシストの要否を判定する判定部と、を備える、管理システム。
【請求項2】
請求項1に記載された管理システムであって、
前記カッティングエッジによる掘削状態を検出する掘削状態検出部をさらに備え、
前記判定部は、前記掘削状態検出部によって検出された前記カッティングエッジの状態に基づいて、前記スクレーパ車両へのアシストの要否を判定する、管理システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載された管理システムであって、
前記牽引部の牽引負荷を検出する牽引負荷検出部をさらに備え、
前記判定部は、前記牽引負荷検出部によって検出された前記牽引負荷に基づいて、前記スクレーパ車両へのアシストの要否を判定する、管理システム。
【請求項4】
請求項1または2に記載された管理システムであって、
前記収容部に収容された土砂の収容量を検出する収容量検出部をさらに備え、
前記判定部は、前記収容量検出部によって検出された土砂の収容量に基づいて、前記スクレーパ車両へのアシストの要否を判定する、管理システム。
【請求項5】
請求項1または2に記載された管理システムであって、
前記スクレーパ車両を駆動する駆動源の駆動状態を検出する駆動状態検出部をさらに備え、
前記判定部は、前記駆動状態検出部が検出した前記駆動源の駆動状態と、前記第1位置情報取得部によって取得した前記スクレーパ車両の前記位置情報とに基づいて、前記アシスト走行機械による前記スクレーパ車両へのアシストの要否を判定する、管理システム。
【請求項6】
請求項1または2に記載された管理システムであって、
前記アシスト走行機械は、前記判定部によって判定された前記スクレーパ車両へのアシストの要否の結果を報知する報知部を備える、管理システム。
【請求項7】
請求項1または2に記載された管理システムであって、
前記スクレーパ車両の前記稼働情報と前記スクレーパ車両の前記位置情報とに基づいて、前記アシスト走行機械の運転を制御する制御部をさらに備える、管理システム。
【請求項8】
請求項7に記載された管理システムであって、
前記アシスト走行機械の位置情報を取得する第2位置情報取得部をさらに備え、
前記制御部は、前記第1位置情報取得部によって取得した前記スクレーパ車両の前記位置情報と前記第2位置情報取得部によって取得した前記アシスト走行機械の前記位置情報とに基づいて、前記スクレーパ車両をアシストする位置まで前記アシスト走行機械を誘導する、管理システム。
【請求項9】
牽引部と、前記牽引部によって牽引され、カッティングエッジによって掘削した土砂を取り込み収容する収容部と、を有するスクレーパ車両と、
前記スクレーパ車両の走行をアシストするアシスト走行機械と、の運行を管理する管理システムであって、
前記スクレーパ車両の稼働情報を取得する稼働情報取得部と、
前記スクレーパ車両の位置情報を取得する第1位置情報取得部と、を備え、
前記稼働情報取得部によって取得した前記スクレーパ車両の前記稼働情報と前記第1位置情報取得部によって取得した前記スクレーパ車両の前記位置情報とに基づいて、前記スクレーパ車両をアシストするように前記アシスト走行機械を操作する、管理システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、カッティングエッジによって掘削した土砂を収容するボウル本体を有するスクレーパが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭50-12803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には記載されるようなスクレーパは、掘削時に、掘削及び搬送による負荷が大きい場合には、ブルドーザなどによって後方から押されながら(アシストされて)走行する。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されたスクレーパ車両では、スクレーパをブルドーザで押す必要があるか否かの判断を、スクレーパ車両を運転するドライバやブルドーザを運転するドライバが行っている。このため、スクレーパ車両のアシストを適切なタイミングで行うためには、ドライバの熟練度が求められる。
【0006】
本発明は、ドライバの熟練度に関係なく、スクレーパ車両のアシストを適切なタイミングで行うことができるシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、牽引部と、牽引部によって牽引され、カッティングエッジによって掘削した土砂を取り込み収容する収容部と、を有するスクレーパ車両と、スクレーパ車両の走行をアシストするアシスト走行機械と、の運行を管理する管理システムであって、スクレーパ車両の稼働情報を取得する稼働情報取得部と、スクレーパ車両の位置情報を取得する第1位置情報取得部と、稼働情報取得部によって取得したスクレーパ車両の稼働情報と第1位置情報取得部によって取得したスクレーパ車両の位置情報とに基づいて、アシスト走行機械によるスクレーパ車両へのアシストの要否を判定する判定部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、スクレーパ車両のアシストを適切なタイミングで行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の実施形態に係る管理システムSの概念図である。
図2図2は、本発明の実施形態に係るスクレーパ車両の側面図である。
図3図3は、本発明の実施形態に係るスクレーパ車両の被牽引車両の上面図である。
図4図4は、本発明の実施形態に係る管理システムSのブロック図である。
図5図5は、本発明の実施形態に係る管理システムSが実行する制御の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0011】
本実施形態の管理システムSは、スクレーパ車両V及びスクレーパ車両Vの走行をアシストするブルドーザB(アシスト走行機械)の運行を管理する。まず、図1から図4を参照しながら、本実施の実施形態に係るスクレーパ車両Vの構造について説明する。
【0012】
実施の実施形態に係るスクレーパ車両Vは、土木工事現場において、土砂の掘削、積込、運搬、及び敷均の作業を行う。図1及び図2に示すように、スクレーパ車両Vは、牽引車両1(牽引部)と、牽引車両1により牽引される被牽引車両2と、を備える。なお、以下では、スクレーパ車両Vの前進方向を「前」とし、後退方向を「後」とする。また、スクレーパ車両Vの前後方向を単に「前後方向」といい、スクレーパ車両Vの幅方向を単に「幅方向」という。
【0013】
牽引車両1は、例えば、車輪15を有するトラクタである。牽引車両1は、内燃機関を動力源として構成され、被牽引車両2を牽引する。なお、牽引車両1は、モータを駆動源とする車両であってもよい。また、牽引車両1は、無限軌道を有する車両であってもよい。
【0014】
図1図2及び図4に示すように、牽引車両1は、コントローラ11と、スクレーパ車両Vの位置を検出するためのGPSセンサ12と、牽引車両1の牽引負荷を検出するロードセル13(牽引負荷検出部)と、コントローラ11に接続され他の機器との間で無線通信を行う通信装置14と、内燃機関の駆動状態を検出する駆動状態検出部16と、を備える。駆動状態検出部16は、例えば、内燃機関の回転数を検出する回転数センサである。
【0015】
コントローラ11は、CPU(中央演算処理装置)、ROM(リードオンリメモリ)、RAM(ランダムアクセスメモリ)、及びI/Oインターフェース(入出力インターフェース)を備えたマイクロコンピュータで構成される。本実施形態において、コントローラ11が、車輪15の空転を検出する。
【0016】
コントローラ11は、回転数センサ(駆動状態検出部16)が検出した内燃機関の回転数と、GPSセンサ12が検出したスクレーパ車両Vの位置とを比較し、所定時間(例えば数秒から十数秒)のスクレーパ車両Vの移動距離が所定距離以下(例えば数メートル以下)の場合に空転が発生していると判断する。コントローラ11は、空転が発生した際の状態情報をROMに記憶する。本実施形態において、空転が発生した際の状態情報とは、空転が発生した際のスクレーパ車両Vの位置情報と、回転数センサ(駆動状態検出部16)が検出した内燃機関の回転数と、ロードセル13が検出した牽引負荷情報である。これらに加えて、コントローラ11は、後述の掘削状態検出部31が検出した掘削状態および後述の収容量検出部32が検出した収容量をROMに記憶させてもよい。また、コントローラ11は、空転が発生した際の状態と、内燃機関の型式(最大出力や最大トルクなど)とを紐づけてROMに記憶させてもよい。
【0017】
なお、内燃機関の駆動状態としてトルクセンサによって内燃機関の出力トルクを検出し、この出力トルクと、GPSセンサ12が検出したスクレーパ車両Vの位置とを比較し、所定時間(例えば数秒から十数秒)のスクレーパ車両Vの移動距離が所定距離以下(例えば数メートル以下)の場合に空転が発生していると判断するようにしてもよい。
【0018】
コントローラ11は、通信装置14により、空転が発生した際の状態を管理装置40に送信する。また、コントローラ11は、ROMに記憶させている過去の空転が発生した際の状態を管理装置40に送信してもよい。
【0019】
図2に示すように、被牽引車両2は、フレーム21と、車輪22と、収容容器23(収容部)と、カッティングエッジ24と、第1油圧シリンダ25と、一対の第2油圧シリンダ26と、を備える。
【0020】
図2及び図3に示すように、フレーム21は、一端が牽引車両1に連結され、他端が収容容器23に揺動可能に連結される。フレーム21は、前後方向に延び一端が牽引車両1に連結される第1フレーム部21aと、第1フレーム部21aの他端に接続され、幅方向に延びる第2フレーム部21bと、第2フレーム部21bの両端から後方に延び、収容容器23に揺動可能に連結される一対の第3フレーム部21cと、を有する。
【0021】
収容容器23は、上面が開口するように形成された容器であり、カッティングエッジ24によって掘削された土砂を収容する。図2及び図3に示すように、収容容器23の前方側の側面は、開閉可能なゲート23aによって形成され、収容容器23の後方側の側面は、前後方向に移動可能な可動部材23bによって形成される。
【0022】
カッティングエッジ24は、地面の土砂を削り取るための板状(へら状)の部材である。 カッティングエッジ24は、収容容器23の底面23cの前方側の端部に取り付けられる。カッティングエッジ24の上面とゲート23aとの間には、カッティングエッジ24によって掘削した土砂を取り込むための開口23dが設けられる。
【0023】
図2に示すように、ゲート23aと第1フレーム部21aとの間には、リンク部材28a,28bによって構成されたリンク機構28が設けられる。第1油圧シリンダ25は、リンク部材28aと第2フレーム部21bとの間に設けられる。これにより、第1油圧シリンダ25を伸長させると、リンク機構28が図2に示す状態から持ち上げられることでゲート23aが開く。
【0024】
図2に示すように、第2油圧シリンダ26は、第2フレーム部21bと収容容器23との間に設けられる。具体的には、第2油圧シリンダ26のシリンダチューブ26bが第2フレーム部21bに揺動自在に取り付けられ、第2油圧シリンダ26のロッド26aの先端が収容容器23に揺動自在に取り付けられる。これにより、第2油圧シリンダ26を伸長させると、収容容器23は、収容容器23の後端を支持する車輪22の車軸を支点として、前方側が押し下げられる。この結果、カッティングエッジ24が地面に食い込み、カッティングエッジ24によって地面を掘削することが可能になる。
【0025】
図2及び図4に示すように、被牽引車両2は、カッティングエッジ24による掘削状態を検出する掘削状態検出部31と、収容容器23に収容された土砂の収容量を検出する収容量検出部32と、掘削状態検出部31及び収容量検出部32によって検出された検出結果を取得するコントローラ33と、牽引車両1に搭載されたコントローラ11に接続された通信装置14と通信を行う通信装置34と、をさらに備える。
【0026】
掘削状態検出部31は、例えば、第2油圧シリンダ26のロッド26aの位置を検出する位置センサによって構成される。上述のように、第2油圧シリンダ26を伸長させると、カッティングエッジ24が地面に食い込む。そこで、位置センサによって第2油圧シリンダ26のロッド26aの位置を検出することにより、カッティングエッジ24が地面にどの程度食い込んでいるかを検出することができる。なお、掘削状態検出部31は、位置センサに限らず、収容容器23の傾斜角度(カッティングエッジ24の食い込み量)を検出できればどのようなものであってもよい。具体的には、掘削状態検出部31は、カッティングエッジ24と地面との間の距離を測定する距離センサや、カッティングエッジ24に作用する負荷(掘削抵抗)を検出する荷重センサ、あるいは、収容容器23の角度を検出する角度センサなどを採用することができる。掘削状態検出部31は、スクレーパ車両Vが掘削状態にあるか否かを検出するとともに、掘削状態の程度を検出する。
【0027】
収容量検出部32は、例えば、収容容器23に収容された土砂の重量を検出する荷重センサなどによって構成される。収容量検出部32は、カッティングエッジ24によって掘削された土砂の積載量を検出する。なお、収容量検出部32は、荷重センサに限らず、収容容器23に収容された土砂の上面の位置を検出するレーザ変位計、土砂によって光が遮られたことを検出する光センサなど、収容容器23における土砂の収容量(収容状態)を検出できるものであれば、どのようなものであってもよい。また、収容量検出部32として、カメラによって収容容器23内を撮像し、カメラが撮像した画像から収容容器23の土砂の収容状態(容量)をコントローラ33によって判断するように構成してもよい。収容量検出部32は、収容容器23に収容された土砂の容量・重量を検出するだけでなく、コントローラ33の処理によって、収容容器23に収容された土砂が定格容量(所定の容量)、定格重量(所定の重量)であるか否かを検出することが可能である。
【0028】
コントローラ33は、CPU(中央演算処理装置)、ROM(リードオンリメモリ)、RAM(ランダムアクセスメモリ)、及びI/Oインターフェース(入出力インターフェース)を備えたマイクロコンピュータで構成される。コントローラ33は、掘削状態検出部31及び収容量検出部32によって検出された検出結果を取得し、通信装置34を通じて、牽引車両1に搭載されたコントローラ11に送信する(図4など参照)。なお、本実施形態では、通信装置34及び通信装置14を用いて無線で通信する場合を示しているが、コントローラ33とコントローラ11をケーブルなどで接続するようにしてもよい。また、コントローラ33及び通信装置34を設けずに、掘削状態検出部31及び収容量検出部32によって検出された検出結果を直接コントローラ11に送信するようにしてもよい。
【0029】
ブルドーザBは、スクレーパ車両Vを後方から押すことで、スクレーパ車両Vの走行をアシストする。カッティングエッジ24の地面に対する食い込み代(地面の削り代)が大きい場合などには、牽引車両1の牽引力だけでは、掘削及び走行ができなくなったり、効率が悪くなってしまう場合がある。このような場合には、ブルドーザBは、スクレーパ車両Vを後方から押して、スクレーパ車両Vの走行をアシストする。
【0030】
図1及び図4に示すように、ブルドーザBは、コントローラ51と、コントローラ51に接続され他の機器との間で無線通信を行う通信装置52と、ドライバ(運転員)に対して必要な情報を表示される表示部53(報知部)と、ブルドーザBの位置を検出するためのGPSセンサ54と、を備える。表示部53は、例えば、ディスプレイやランプである。
【0031】
次に、スクレーパ車両Vの走行動作について説明する。
【0032】
まず、スクレーパ車両Vが、所定の掘削範囲まで移動する。スクレーパ車両Vが所定の掘削範囲まで移動したら、レバーまたはスイッチ(いずれも図示せず)が操作されて、第2油圧シリンダ26が伸長する。これにより、カッティングエッジ24が地面に食い込む。この状態で、スクレーパ車両Vを前進させると、カッティングエッジ24によって地面が掘削される。掘削された土砂は、開口23dを通じて収容容器23内に取り込まれる。
【0033】
このとき、牽引車両1の牽引力が不足するなどの恐れがある場合には、後方からブルドーザBがスクレーパ車両Vを押す(アシストする)。すなわち、ブルドーザBが牽引車両1の牽引力(スクレーパ車両Vの推進力)を加勢する。
【0034】
収容容器23が掘削された土砂でいっぱいになる、つまり、収容容器23が定格容量(定格重量)を収容したと判断されると、レバーまたはスイッチ(いずれも図示せず)が操作され、第2油圧シリンダ26が収縮する。これにより、カッティングエッジ24が地面から離間する。
【0035】
この状態で、スクレーパ車両Vを土砂の排出位置まで移動させる。スクレーパ車両Vが土砂の排出位置に到達すると、レバーまたはスイッチ(いずれも図示せず)が操作されて、第1油圧シリンダ25が収縮する。これにより、ゲート23aが開く。この状態で、スクレーパ車両Vを前進させながら、可動部材23bを前方に向かって駆動することで、収容容器23内の土砂が排出され、積卸し及び/又は敷き均される。すなわち、スクレーパ車両Vは、土砂を運搬、敷き均しする。
【0036】
このようにして、スクレーパ車両Vは、土木工事現場において、土砂の掘削、積込、運搬、荷卸し及び/又は敷均の作業を行う。
【0037】
ところで、スクレーパ車両Vの掘削作業中に、ブルドーザBによるアシストが必要か否かの判断は、スクレーパ車両Vを運転するドライバやブルドーザBを運転するドライバが行っている。このため、スクレーパ車両Vのアシストを適切なタイミングで行うことはできていない。
【0038】
そこで、本実施形態では、ドライバ(運転員)に因らずに関係なくスクレーパ車両Vのアシストを行えるように、スクレーパ車両Vのアシストの要否を管理システムSを用いて判断する。さらに、本実施形態では、スクレーパ車両Vへのアシストが必要な場合に、ブルドーザBを自動運転によって自動でスクレーパ車両Vをアシストさせる。以下に、管理システムSが行う制御について図4及び図5を参照しながら説明する。
【0039】
まず、図4を参照しながら、管理システムSの基本構成について具体的に説明する。
【0040】
管理システムSは、管理装置40と、牽引車両1に搭載されたコントローラ11と、被牽引車両2に搭載されたコントローラ33と、ブルドーザBに搭載されたコントローラ51と、を備える。
【0041】
管理装置40は、管理施設などの建物に設置されたコンピュータである。管理装置40は、コントローラ41と、コントローラ41に接続され他の機器(コントローラ11、コントローラ33、及びコントローラ51)との間で無線通信を行う通信装置42と、を備える。
【0042】
コントローラ41は、CPU(中央演算処理装置)、ROM(リードオンリメモリ)、RAM(ランダムアクセスメモリ)、及びI/Oインターフェース(入出力インターフェース)を備えたマイクロコンピュータで構成される。コントローラ41のROMには、過去にブルドーザBによるアシストを行った際のロードセル13によって検出された牽引車両1の牽引負荷、掘削状態検出部31(位置センサ)によって第2油圧シリンダ26のロッド26aの位置、及び収容量検出部32によって検出された収容容器23に収容された土砂の収容量を記憶させるようにしてもよい。
【0043】
コントローラ41は、第1位置情報取得部43と、第2位置情報取得部44と、稼働情報取得部45と、判定部46と、制御部47と、を有する。なお、第1位置情報取得部43、第2位置情報取得部44、稼働情報取得部45、判定部46、及び制御部47は、コントローラ41の各機能を、仮想的なユニットとして示したものであり、物理的に存在することを意味するものではない。
【0044】
第1位置情報取得部43は、スクレーパ車両Vの位置情報を取得する。具体的には、第1位置情報取得部43は、GPSセンサ12によって検出されたスクレーパ車両Vの位置情報を、コントローラ11、通信装置14、及び通信装置42を通じて取得する。
【0045】
第2位置情報取得部44は、ブルドーザBの位置情報を取得する。具体的には、第2位置情報取得部44は、GPSセンサ54によって検出されたブルドーザBの位置情報を、コントローラ51、通信装置52、及び通信装置42を通じて取得する。
【0046】
稼働情報取得部45は、スクレーパ車両Vの稼働情報を取得する。具体的には、稼働情報取得部45は、ロードセル13によって検出された牽引車両1の牽引負荷、掘削状態検出部31(位置センサ)によって第2油圧シリンダ26のロッド26aの位置、及び収容量検出部32によって検出された収容容器23に収容された土砂の収容量を、コントローラ11、通信装置14、及び通信装置42、あるいは、コントローラ51、通信装置52、及び通信装置42を通じて取得する。
【0047】
また、稼働情報取得部45は、牽引車両1の車速、エンジン回転速度、トルク、アクセル開度、操舵角などの情報を、コントローラ11、通信装置14、及び通信装置42を通じて取得する。
【0048】
判定部46は、第1位置情報取得部43及び稼働情報取得部45が取得した各種情報に基づいて、スクレーパ車両Vのアシストの要否を判定する。
【0049】
制御部47は、判定部46の判定結果に基づいて、ブルドーザBの自動運転の制御信号を生成する。
【0050】
次に、図5を参照しながら、管理システムSにおいて実行される具体的な制御のフローを説明する。なお、図5に示すフローチャートに関する制御は、コントローラ41にあらかじめ記憶されたプログラムに基づいて実行される。
【0051】
ステップS1では、スクレーパ車両Vの掘削範囲を特定(設定)する。具体的には、コントローラ41(制御部47)は、予めコントローラ41に入力されたスクレーパ車両Vの掘削範囲を取得する。
【0052】
ステップS2では、ブルドーザBを設定された掘削範囲に誘導する。具体的には、コントローラ41(制御部47)は、ステップS1において取得した掘削範囲と、第2位置情報取得部44によって取得したブルドーザBの位置情報と、に基づいて、ブルドーザBを掘削範囲近傍の待機位置まで誘導する。コントローラ41(制御部47)は、ブルドーザBの現在位置から、掘削範囲までの距離及び掘削範囲への方角などを求めて、その結果をコントローラ51に送信する。なお、ブルドーザBが誘導される位置は、設定された掘削範囲内であっても、設定された掘削範囲の近傍であってもよい。
【0053】
コントローラ51は、受信した結果に基づいて、ブルドーザBのクローラを駆動する油圧モータを制御し、ブルドーザBを待機位置まで移動する。
【0054】
ステップS3では、スクレーパ車両Vの稼働情報を取得する。具体的には、コントローラ41(稼働情報取得部45)は、スクレーパ車両Vが掘削範囲内に存在していることを確認した場合に、上述のようなスクレーパ車両Vの稼働情報を取得する。
【0055】
ステップS4では、アシストが必要か否かを判定する。具体的には、コントローラ41(判定部46)は、コントローラ41(稼働情報取得部45)が取得したスクレーパ車両Vの稼働情報に基づいて、ロードセル13によって検出された牽引車両1の牽引負荷が所定値以上である、掘削状態検出部31(位置センサ)によって第2油圧シリンダ26のロッド26aの位置が所定の範囲にある、及び収容量検出部32によって検出された収容容器23に収容された土砂の収容量が所定値以上である、という条件の少なくともいずれか1つの条件が一定時間継続して成立したか否かを判定する。また、コントローラ41は、コントローラ11が車輪15の空転を検出した際にアシストが必要と判断するようにしてもよく、過去の空転が発生した際の状態や、過去のブルドーザBによるアシストを行った際のスクレーパ車両Vの状態などにより、アシストが必要か否かを判断するようにしてもよい。
【0056】
牽引車両1の牽引負荷が所定値以上である状態が一定時間継続した場合には、牽引車両1の牽引力(駆動力)が不足し、被牽引車両2を牽引できなくなるおそれがある。この場合には、ステップS5に進み、ブルドーザBによるアシスト制御を実行する。つまり、ブルドーザBがスクレーパ車両Vをアシストする。
【0057】
掘削状態検出部31(位置センサ)によって第2油圧シリンダ26のロッド26aの位置が所定の範囲にある場合には、カッティングエッジ24の地面への食い込み量が所定値以上になっている。この場合には、スクレーパ車両Vが掘削状態にあり、収容容器23に収容される土砂が増加していくことが予想される。収容容器23に収容される土砂が増加すると、牽引車両1の牽引力(駆動力)が不足し、被牽引車両2を牽引できなくなるおそれがある。そこで、この場合にも、ステップS5に進み、ブルドーザBによるアシスト制御を実行する。
【0058】
収容量検出部32によって検出された収容容器23に収容された土砂の収容量が所定値未満であっても、路面の状態によっては、牽引車両1の車輪15が空転するなどして、被牽引車両2をけん引できなくなるおそれがある。このため、例えば、コントローラ41は、前日の降雨量や前々日の降雨量、すなわち直近の降雨量に基づいて、ブルドーザBによるアシスト制御を実行するかどうかの判断に重みづけをするようにしてもよい。コントローラ41は、直近の降雨量が所定量を超えており、路面がぬかるんでいると判断した場合には、土砂の収容量が所定値未満であってもブルドーザBによるアシスト制御を実行するようにしてもよい。また、コントローラ41は、アシスト制御を実行するかどうかの各種パラメータ(例えば、牽引車両1の牽引負荷が所定値以上である状態の一定時間を短くする)の閾値を下げるようにしてもよい。
【0059】
なお、これらの条件が成立しない場合には、ブルドーザBによるアシスト制御を実行せずに、ステップS6に進む。
【0060】
ステップS5では、アシスト制御を実行する。具体的には、コントローラ41(制御部47)は、GPSセンサ12によって検出されたスクレーパ車両Vの位置情報と、GPSセンサ54によって検出されたブルドーザBの位置情報と、に基づいて、スクレーパ車両VとブルドーザBとの間の距離などの位置関係を求めて、その結果をコントローラ51に送信する。
【0061】
コントローラ51は、受信した結果に基づいて、クローラを駆動する油圧モータを制御し、スクレーパ車両Vの後方まで誘導し、そのままスクレーパ車両Vを押して、スクレーパ車両Vの走行をアシストする。
【0062】
なお、本実施形態では、GPSセンサ12及びGPSセンサ54によって検出された位置情報に基づいて、ブルドーザBを誘導しているが、例えば、ブルドーザBにカメラ及びレーザ変位計などを搭載しておき、スクレーパ車両VとブルドーザBとの間の距離が所定値以下になった場合に、近接センサ、カメラによって撮像された画像を用いた解析、レーザ変位計等の相対位置センサによって計測された情報に基づいて、ブルドーザBを誘導するようにしてもよい。この場合には、より精度よくブルドーザBを誘導することができる。
【0063】
ステップS6では、スクレーパ車両Vが掘削範囲外にいるか否かを判定する。具体的には、コントローラ41(判定部46)は、GPSセンサ12によって検出されたスクレーパ車両Vの位置情報に基づいて、スクレーパ車両Vがあらかじめ定められた掘削範囲内を走行しているか否かを判定する。スクレーパ車両Vがあらかじめ定められた掘削範囲外を走行している場合には、アシスト制御を終了する。これに対し、スクレーパ車両Vがあらかじめ定められた掘削範囲内を走行していれば、ステップS3に戻り、再びアシスト制御の要否を判定する。
【0064】
このように、本実施形態では、各種センサによって検出された検出値に基づいて、アシスト制御の要否を判断しているので、ドライバの熟練度に関わらず、スクレーパ車両Vのアシストを適切なタイミングで行うことができる。
【0065】
さらに、本実施形態では、ブルドーザBを自動で誘導して、スクレーパ車両Vのアシストを行うことができる。これにより、ブルドーザBを無人化できる。
【0066】
なお、上記実施形態では、アシスト制御の実行を開始すると、ブルドーザBがスクレーパ車両Vを掘削範囲外まで押し続ける場合を例に説明したが、これに限らず、例えば、アシスト制御実行中に、牽引車両1の牽引負荷が所定値未満である状態が一定時間継続した場合、すなわち、ステップS4でのアシスト制御の実行条件が所定時間成立しない場合に、アシスト制御を終了するようにしてもよい。
【0067】
また、上記実施形態では、ブルドーザBを自動で待機位置やアシスト位置まで誘導していたが、これに換えて、アシスト制御の要否の判定結果をブルドーザBのドライバに報知するようにしてもよい。ブルドーザBのドライバへの報知方法は、例えば、ブルドーザBに搭載された表示部53に判定結果を表示する、あるいは、ブルドーザBに搭載されたスピーカ(報知部)から音声によってアシスト制御の必要性を通知するなどが考えられる。なお、表示部53がディスプレイである場合には、判定結果を表示させ、表示部53がランプである場合には、アシスト制御が必要である場合にランプを点灯させるようにする。
【0068】
なお、この場合には、ステップS2における処理に換えて、表示部53に待機場所を表示し、ドライバが待機場所までブルドーザBを移動させるようにしてもよい。
【0069】
これらの場合にも、アシスト制御の要否は、各種センサによって検出された検出値に基づいて判断されるので、ドライバの熟練度に関わらず、スクレーパ車両Vのアシストを適切なタイミングで行うことができる。
【0070】
アシスト制御実行中は、スクレーパ車両Vの車速が所定値以下になるようにブルドーザBがアシストするようにしてもよい。
【0071】
また、管理装置40のコントローラ41に係る機能の少なくとも一部を、コントローラ11やコントローラ51に持たせるようにしてもよい。
【0072】
上記実施形態では、スクレーパ車両Vをアシストするアシスト走行機械としてブルドーザBを例に説明したが、スクレーパ車両Vをアシストすることができるものであれば、どのようなものであってもよい。
【0073】
以上の管理システムSによれば、以下の効果を奏する。
【0074】
管理システムSは、稼働情報取得部45によって取得したスクレーパ車両Vの稼働情報と第1位置情報取得部43によって取得したスクレーパ車両Vの位置情報とに基づいて、ブルドーザBによるスクレーパ車両Vへのアシストの要否を判定する判定部46を備えている。
【0075】
スクレーパ車両Vへのアシストの要否を管理システムSによって判定しているので、ドライバの熟練度に関わらず、適切なタイミングで、スクレーパ車両Vのアシストを行うことができる。
【0076】
また、管理システムSを用いることにより、ブルドーザBを自動で誘導して、スクレーパ車両Vのアシストを行うことができる。これにより、ブルドーザBを無人化できる。
【0077】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一つを示したものに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0078】
S・・・管理システム
V・・・スクレーパ車両
B・・・ブルドーザ(アシスト走行機械)
1・・・牽引車両(牽引部)
2・・・被牽引車両(被牽引部)
11・・・コントローラ
12・・・GPSセンサ
13・・・ロードセル(牽引負荷検出手段)
16・・・駆動状態検出部
23・・・収容容器(収容部)
23a・・・ゲート
23b・・・可動部材
23d・・・開口
24・・・カッティングエッジ
25・・・第1油圧シリンダ
26・・・第2油圧シリンダ
31・・・掘削状態検出部
32・・・収容量検出部
33・・・コントローラ
40・・・管理装置
41・・・コントローラ
43・・・第1位置情報取得部
44・・・第2位置情報取得部
45・・・稼働情報取得部
46・・・判定部
47・・・制御部
51・・・コントローラ
53・・・表示部(報知部)
図1
図2
図3
図4
図5