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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155510
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】印刷装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20241024BHJP
   B41J 2/165 20060101ALI20241024BHJP
   B41J 29/377 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
B41J2/01 301
B41J2/165 101
B41J29/377 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023070287
(22)【出願日】2023-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 浩徳
(72)【発明者】
【氏名】村中 大翔
(72)【発明者】
【氏名】渥美 英敏
(72)【発明者】
【氏名】野中 亮佑
(72)【発明者】
【氏名】竹之内 努
(72)【発明者】
【氏名】古川 倫久
【テーマコード(参考)】
2C056
2C061
【Fターム(参考)】
2C056EA16
2C056FA10
2C056JA01
2C056JC13
2C056JC29
2C056KB13
2C056KC02
2C056KD10
2C061AP01
2C061AQ05
2C061AS02
2C061BB02
2C061BB17
2C061BB35
2C061CC01
2C061CF10
2C061HJ10
(57)【要約】
【課題】コストを抑えながら、脱臭された空気中に含まれるインクのミストが外部へ排出されることを抑制することができる印刷装置を提供する。
【解決手段】インクを吐出するインク吐出ヘッド64が収容される本体ケーシング90と、該本体ケーシング内で発生した臭気を除去する臭気除去部18を有する脱臭ユニット10と、を備えた印刷装置10において、前記脱臭ユニットは、前記本体ケーシング内に配置される筐体24と、前記筐体内に設けられ、前記臭気除去部で臭気を除去された空気が通過する空気流路11と、前記本体ケーシング内の空気を前記空気流路内に吸引し、吸引された前記空気を吹出口から前記空気流路外へ吹き出す吸引部22と、前記吹出口と対向配置され、前記吹出口から吹き出された空気が衝突する吹出空気衝突部36と、を備え、前記本体ケーシングは、前記吹出空気衝突部にて衝突された空気を外部へ排出する排気孔を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被印刷物に対してインクを吐出するインク吐出ヘッドが収容される本体ケーシングと、
該本体ケーシング内で発生した臭気を除去する臭気除去部を有する脱臭ユニットと、を備えた印刷装置において、
前記脱臭ユニットは、
前記本体ケーシング内に配置される筐体と、
前記筐体内に設けられ、前記臭気除去部で臭気を除去された前記ケーシング内の空気が通過する空気流路と、
前記本体ケーシング内の空気を前記空気流路内に吸引し、吸引された前記空気を吹出口から前記空気流路外へ吹き出す吸引部と、
前記吹出口と対向配置され、前記吹出口から吹き出された空気が衝突する吹出空気衝突部と、を備え、
前記本体ケーシングは、前記吹出空気衝突部にて衝突された空気を外部へ排出する排気孔を有することを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記吹出空気衝突部は、吹出口よりも下方側に配置され、
前記排気孔は、前記吹出口よりも上方側に設けられたことを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記吹出空気衝突部には、前記インクのミストを吸収可能な吸収体が配置されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記本体ケーシング内に配置され、前記インク吐出ヘッドの移動を案内するガイドレールを備え、
前記脱臭ユニットは、前記ガイドレールの前面よりも後方側に配置されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記インク吐出ヘッドのノズル面を覆うキャップを備え、
前記脱臭ユニットは、前記キャップよりも下方側に配置されたことを特徴とする請求項3に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記吸引部は、シロッコファンであることを特徴とする請求項1又は2に記載の印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置、特に、装置内で発生した臭気を除去するための脱臭ユニットを備えた印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
対象物に画像や文字を印刷する印刷装置では、印刷に使用するインクとして、例えば、顔料と有機溶剤とを含む溶剤インクや、顔料と紫外線硬化成分とを含む紫外線(UV)硬化インク等が用いられており、これらのインクは、印刷時に臭気を発生する。
【0003】
近年では、カフェ等の飲食を伴う様な商業的環境に印刷装置を設置する状況も生じており、このような環境下では、設置機器からの臭気を可及的に除去することが望まれる。この様な状況の下、臭気を脱臭してから装置の外部へ排出する脱臭ユニットを備えた印刷装置が開発されている。
【0004】
例えば、特許文献1の印刷装置では、装置本体に組付けられた脱臭ユニットが、装置内の空気を外部へ排出する排気ダクトを備えており、排気ダクトの内部には、装置内の空気を吸引して外部へ排出するファンと、空気中の臭気成分を除去する脱臭用フィルターとが配設されている。この印刷装置では、ファンを駆動することにより、印刷時に発生した臭気成分がフィルターを通して除去され、排気ダクトの排気口から清浄な空気を印刷装置の外部に排出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-16674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1の印刷装置では、ファンによって排気ダクト内に吸引される空気中には、インクヘッドからインク摘が吐出される際に発生する霧状のインク(すなわちインクのミスト)が混入しているおそれがある。このミストの一部は、脱臭用フィルターを通過して排気中に混在することがあり、ミストが排出されると、印刷装置の排気口の近傍に置かれた物体にミストが付着して汚れが生じるおそれがある。しかしながら、ミスト回収用の装置を別途設けると製造コストが嵩むという問題がある。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、コストを抑えながら、脱臭された空気中に含まれるインクのミストが外部へ排出されることを抑制することができる印刷装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係る印刷装置は、被印刷物に対してインクを吐出するインク吐出ヘッドが収容される本体ケーシングと、該本体ケーシング内で発生した臭気を除去する臭気除去部を有する脱臭ユニットと、を備えた印刷装置において、前記脱臭ユニットは、前記本体ケーシング内に配置される筐体と、前記筐体内に設けられ、前記臭気除去部で臭気を除去された前記ケーシング内の空気が通過する空気流路と、前記本体ケーシング内の空気を前記空気流路内に吸引し、吸引された前記空気を吹出口から前記空気流路外へ吹き出す吸引部と、前記吹出口と対向配置され、前記吹出口から吹き出された空気が衝突する吹出空気衝突部と、を備え、前記本体ケーシングは、前記吹出空気衝突部にて衝突された空気を外部へ排出する排気孔を有することを特徴とする。
【0009】
上記印刷装置によれば、被印刷物への印刷によって臭気が発生した場合に、脱臭ユニットの吸引部を駆動させると、本体ケーシング内の空気が壁部で仕切られた空気流路内に吸引され臭気除去部を通過することにより脱臭される。また、空気流路内に吸引された空気は、吸引部の吹出口から吹き出されて、空気流路に設けられた吹出空気衝突部に衝突した後、衝突により流れ方向が変更されて排出孔から本体ケーシングの外部へ排出される。空気流路内に吸い込まれる空気の中には、霧状のインクであるミストが含まれることがあるが、吸引部の吹出口から吹き出された空気が吹出空気衝突部に衝突することで、空気中のミストがこの吹出空気衝突部に付着して除去されるので、排気孔から本体ケーシングの外部へミストが排出されることを抑制することができる。これにより、ミスト回収用の装置を別途設けることなく、低コストでミストの排出を抑制することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、コストを抑えながら、脱臭された空気中に含まれるミストが印刷装置の外部へ排出されることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施の形態である印刷装置の斜視図である。
図2】印刷装置の装置本体の側面図である。
図3】印刷装置の装置本体の背面図である。
図4図2のA-A線の位置の断面図であって、本体ケーシング内の脱臭ユニット、ガイドレール及びキャップの配置を説明する図である。
図5】印刷部の概略説明図である。
図6】脱臭ユニットの構成概念図である。
図7】脱臭ユニットの斜視図である。
図8】装置本体の斜視図であって脱臭ユニットを作動させた際の空気の流れを説明する図である。
図9】装置本体の側面図であって脱臭ユニットを作動させた際の空気の流れを説明する図である。
図10】印刷装置における脱臭ユニットの配置説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本発明に係る印刷装置1の一実施の形態について説明する。図1は本発明の一実施の形態である印刷装置1の斜視図、図2は印刷装置1の装置本体2の側面図、図3は印刷装置1の背面図である。印刷装置1は、印刷を施す印刷部60及び臭気を脱臭する脱臭ユニット10を備えた装置本体2と、装置本体2に対して情報の入力操作を行う入力部である操作端末4と、を備えている。
【0013】
図1において、符号U及びDは上方及び下方、符号Fr及びRrは前方及び後方、符号L及びRは左方及び右方を示している。ここで、前方Fr及び後方Rrとは、装置本体2の正面にいるユーザから見て、ユーザに向かう方向及びユーザから遠ざかる方向をそれぞれ意味し、左方L及び右方Rとは、装置本体2の正面にいるユーザから見た左方向及び右方向をそれぞれ意味する。また、本実施の形態では、装置本体2のインクヘッド50の移動方向を主走査方向Yといい、主走査方向Yと平面視で直交する方向を副走査方向Xといい、主走査方向Y及び副走査方向Xと直交する方向を高さ方向Zという。本実施の形態において、主走査方向Yは左右方向と一致し、副走査方向Xは前後方向と一致し、高さ方向Zは上下方向と一致している。
【0014】
図1に示すように、印刷装置1の装置本体2は、被印刷物を載置するテーブル50と、被印刷物に対してインクを吐出して印刷を施すインク吐出ヘッド64を有する印刷部60と、インク吐出ヘッド64と被印刷物とを相対的に移動させる移動機構70と、装置本体2の内部で生じた臭気を脱臭するための脱臭ユニット10と、制御部80と、これらを収容する本体ケーシング90と、を備えている。
【0015】
印刷対象である被印刷物は、例えば、柔軟性のある記録紙や樹脂シート、剛性のある板材、各種ケース、小型電子機器、日用品等である。被印刷物の素材や形状は特に限定されるものではなく、例えば、紙、樹脂、布帛、金属、木、ガラス等の素材、また、平面形状や立体形状の物とすることができる。印刷装置1は、テーブル50に被印刷物を複数載置した状態で各被印刷物に印刷を施すことが可能である。
【0016】
本体ケーシング(以下、単に「ケーシング」とも称する)90は、本体部92と、フロントカバー96と、を備えている。本体部92は、底壁部92aと、前壁部92bと、後壁部92cと、左側壁部92dと、右側壁部92eと、上壁部92fとで囲まれた箱状に形成されており、本体部92の前面から上面に亘って開口した開口部93を有している。右側壁部92eには通気孔95が設けられている。通気孔95は、後述するガイドレール72に対して、前方側かつ下方側となる領域に形成されている。図3に示すように、ケーシング90は、脱臭ユニット10の臭気除去フィルター18を通過した空気をケーシング90の外部へ排出させる排気孔94を有している。本実施の形態では、装置本体2の背面を形成する後壁部92cに、上下方向に長いスリット状の排気孔94を複数設けている。
【0017】
本体部92は、印刷装置1のテーブル50、印刷部60、移動機構70及び制御部80は、直接的又は間接的に支持している。フロントカバー96は、本体部92の開口部93を開閉自在に覆う半透明の板状に形成されている。
【0018】
テーブル50は、被印刷物を下方から支持するものであり、平板状に形成されている。テーブル50の上面は、被印刷物が載置される平面状の載置面50aを形成している。載置面50aは、前後方向及び左右方向に広がり、主走査方向Yと副走査方向Xは、載置面50aと平行な方向となっている。
【0019】
移動機構70は、インク吐出ヘッド64を搭載するキャリッジ71と、ガイドレール72と、キャリッジ71をガイドレール72に沿って移動させる図示していないキャリッジ移動機構とを備える。ガイドレール72は、テーブル50よりも上方に配置され、主走査方向Yに延びている。本実施の形態では、ガイドレール72がケーシング90の前後方向の中央部に配置されている。キャリッジ71は、内部にインク吐出ヘッド64を収容した状態で、ガイドレール72に係合されている。キャリッジ移動機構はモータを備えており、モータの駆動力によって、キャリッジ71をガイドレール72に沿って主走査方向Yへ移動させる。
【0020】
また、移動機構70は、図4に示すように、テーブル50を移動させるテーブル移動機構54を備える。テーブル移動機構54は、テーブル50をガイドレール72よりも下方側で上下方向に移動させる昇降装置と、テーブル50を副走査方向Xである前後方向に移動させる水平移動装置とを有している。なお、図2では、テーブル50が最も上昇した位置であって最も前方側へ移動した状態を示している。
【0021】
図5に示すように、印刷部60は、タンク収容ボックス61に収容された複数のインクタンク62と、インク吐出ヘッド64と、インクタンク62とインク吐出ヘッド64とを繋ぐインク流路63と、キャップ66と、インク排出流路68と、廃液タンク69と、を備える。インクタンク62は、例えばインクカートリッジなどのインクを貯留する容器であり、インクの種類(例えばインクの色ごと等)に応じて1つ以上設けられる。図1では、一例として6つのインクタンク62が記載されている。インクタンク62の形状は任意に設定でき、例えばパウチ状や箱状とすることができる。インクタンク62は、インク吐出ヘッド64よりも上方に配置されており、インク流路63は各インクタンク62に対して設けられている。
【0022】
インク吐出ヘッド64は、インクタンクから62供給されたインクを微小な液滴状に精密に制御して被印刷物に吐出する。インク吐出ヘッド64は、下面にインクを吐出する複数のノズル孔64aが形成されたノズル面64bを有する。ノズル面64bは、印刷が行われていない非印刷時に、キャップ66によって覆われる。
【0023】
キャップ66は、図4に示すようにガイドレール72の右端部に設定されたホームポジション位置に配置されており、図5に示すキャッピング機構67によって駆動されてノズル面64bに対して装着・取り外しされる。ここでホームポジション位置とは、非印刷時にインク吐出ヘッド64が待機する位置である。キャッピング機構67は、キャップ66を支持して、キャップ66を上下方向へ移動させる機構であり、ホームポジション位置まで移動したインク吐出ヘッド64のノズル面64bに対して、非印刷時にキャップ66を装着し、印刷開始時にノズル面64bからキャップ66を取り外す。図2では、キャップ66が下方側へ移動してノズル面64bから取り外された状態を示している。このように、非印刷時にノズル面64bがキャップ66で覆われることにより、インク吐出ヘッド64に付着したインクが硬化してノズル孔64aが詰まることを防止することができる。キャップ66は、インク排出流路68を介して廃液タンク69が接続されており、キャップ66内のインクは、インク排出流路68を通って廃液タンク69に排出される。
【0024】
脱臭ユニット10は、ケーシング90内で発生した臭気を除去するものであり、ケーシング90内に配置されている。図6及び図7に示すように、脱臭ユニット10は、筐体24と、筐体24の壁部で仕切られた空気流路11と、空気中の臭気成分を除去して脱臭する臭気除去部である臭気除去フィルター18と、ケーシング90内の空気を空気流路11内に吸引する吸引部であるファン22と、空気中に含まれるインクのミストを吸収可能な吸収体38と、を備えている。なお、図7において符号26で示した部分は、ファン22に電気を供給するためのケーブルの出入口を示している。
【0025】
空気流路11は、ケーシング90内に設けられ、本実施の形態では両端が開口した略直方体状の筐体24で形成されている。筐体24は、壁部を構成する、底板24aと、底板24aから立設された一対の側壁24b,24cと、一対の側壁の上端を連結する上板24dとを有している。筐体24は、2つの筐体パーツ、すなわち一方の側壁24bを形成する板状の第1部材24-1と、他方の側壁24cと上板24dを形成する断面L字状の第2部材24-2と、を組み合わせて構成されている。なお、図7では、筐体24内を理解しやすいように第2部材24-2を半透明状態で示している。また、本実施の形態では、筐体24の底板24aとして、ケーシング90の底壁部92aを用いており、第1部材24-1及び第2部材24-2は、ネジ等を用いて底壁部92aに固定される。本実施の形態では、空気流路11の上流側に脱臭除去フィルター18を配置しており、下流側にファン22を配置している。
【0026】
臭気除去フィルター18は、筐体24の一方の開口端部に配置され、この開口を塞ぐ直方体状に形成されている。本実施の形態では、臭気除去フィルター18の一例として、活性炭フィルターを用いている。臭気除去フィルター18が配置される筐体24の開口端部には、気密部材32が取り付けられており、この気密部材32を間に挟んで筐体24の開口端部に臭気除去フィルター18が設置される。気密部材32は、例えば、柔軟性、弾力性に富んだ発泡シール材などを使用することができる。図7に示すように筐体24の一方の開口端部には、底壁24aから開口端部の外側へ延設されたフィルター受け部28が設けられており、臭気除去フィルター18は、このフィルター受け部28に載置される。また、筐体24の上板24dには、フィルター受け部28に載置された臭気除去フィルター18を気密部材32側へ付勢する付勢手段であるL字状の板バネ30が取り付けられている。板バネ30は、フィルター受け部28とともに臭気除去フィルター18を上下方向で挟持しつつ、臭気除去フィルター18を気密部材32側へ付勢する。
【0027】
ファン22は、脱臭除去フィルター18の下流側に配置されており、図6に示すように、空気の吸込み口22bと吹出口22aとを有している。本実施の形態では、筐体24内において、臭気除去フィルター18から所定距離だけ離れた位置に、空気流路11を仕切る板状部材20が配置されており、ファン22は、この板状部材20に取り付けられている。板状部材20は、中央部に図示していない貫通孔を有しており、ファン22は、吸込み口22bが板状部材22の貫通孔と重なった状態で、この板状部材20の下流側の表面に、板状部材20の貫通孔を覆うように設置されている。このように、臭気除去フィルター18とファン22との間に、臭気除去フィルター18の下流側端面と板状部材20とで仕切られた空気流路11となる空間、すなわちチャンバーを設けることで、ファン22を駆動した際に脱臭ユニット10に吸引される空気が、臭気除去フィルター18の全域を均一に通過するようにすることができる。
【0028】
ファン22は、空気流路11内に吸引された空気を空気流路11外へ吹き出す吹出口22aを有している。ファン22の吹出口22aは、下方側(筐体24の底板22a側)を向くように開口している。本実施の形態では、ファン22の一例として、シロッコファンを用いている。
【0029】
脱臭ユニット10は、ファン22の吹出口22aと対向配置され、吹出口22aから吹き出された空気が衝突する吹出空気衝突部36を有している。吹出空気衝突部36は、空気の流れ方向にて、吹出口22aと排気孔94との間に設けられる。本実施の形態では、吹出口22aと対向する筐体24の底板24a、すなわち、板状部材20から空気流路11の下流側に位置する底板24aが、吹出空気衝突部36を構成している。図2及び4に示すように、筐体24の下流側の開口端部は、脱臭ユニット10をケーシング90内に設置した状態で、ケーシング94の後壁部92cに当接しており、この後壁部92cによって筐体24の下流側の開口端部が覆われている。図3に示すように、筐体24の開口端部を覆う後壁部92cには、吹出口22aから吹き出されて吹出空気衝突部36にて衝突された空気をケーシング90の外部へ排出するための排気孔94が複数設けられている。各排気孔94は、吹出口22aよりも上方側に設けられている。
【0030】
さらに、筐体24内には、空気中に含まれる霧状のインクであるミストを吸収可能な吸収体38が配置されている。吸収体38は、発泡樹脂等の多孔質材料で形成され、吸水性を有している。本実施の形態では、吹出空気衝突部36の表面にシート状の吸収体38を配置している。
【0031】
図1に示すように、本実施の形態の脱臭ユニット10は、ケーシング90の内部において、左方側かつ後方側(背面側)に配置されている。図2及び図4に示すように、脱臭ユニット10は、左右方向に延びるガイドレール72の前面72aよりも後方側に配置されることが好ましい。また、図2に示すように、脱臭ユニット10は、キャップ66よりも下方側に配置されることが好ましい。本実施の形態では、脱臭ユニット10がテーブル50よりも左方側に配置されており、装置本体2において、ガイドレール72よりも前方側かつテーブル50よりも左方側の領域(すなわち、脱臭ユニット10の前方側の領域)には、空間部が設けられている。
【0032】
制御部80は、印刷部60、移動機構70及び脱臭ユニット10と通信可能に接続されており、これらの動作を制御する。また、制御部80は、操作端末4と通信可能であって、操作端末4から送信された電気信号に基づいて、印刷部60、移動機構70及び脱臭ユニット10の動作を制御することができる。制御部80は、例えば、操作端末4から送信された印刷データ等を受信するインターフェイス(I/F)、制御プログラムを実行する中央演算処理装置(CPU)、制御プログラムを格納するROM、CPUが処理を実行する際に作業領域として使用されるRAM、及び、各種データを格納する記録媒体等を備えている。
【0033】
操作端末4は、装置本体2とデータ通信可能に接続される端末であり、ユーザからの指示を受け付ける入力部として機能する。操作端末4は、記憶装置や中央演算処理装置(CPU)等を備えたコンピュータであり、装置本体2と通信するための通信装置や情報を表示するディスプレイ等を備えている。操作端末4は、例えば、タブレット端末やモバイル端末とすることができ、汎用の端末に、装置本体2を作動させるためのソフトウエアをインストールすることによって、装置本体2の印刷部60や脱臭ユニット10を作動させるための指示情報を受け付ける入力部として機能させることができる。本実施の形態の端末装置4はタッチパネル4aを備えており、タッチパネル4aの操作によって、装置本体2を作動させるための指示情報を入力することができる。なお、印刷装置1は、装置本体2に入力部である操作パネルを設ける構成であってもよい。
【0034】
次に、印刷装置1の脱臭ユニット10の動作について説明する。図8及び図9では、脱臭ユニット10を作動させた際にケーシング90内で生じる空気の流れを実線の矢印で示している。なお、図9では、上下方向における排気孔94の位置を破線で示している。上述した印刷装置1では、フロントカバー96を開けて、テーブル50に被印刷物を載置した状態で、制御部80が印刷部60を作動させて印刷を実行する。印刷部60が印刷を行っているときや、印刷を実施した後などには、インク吐出ヘッド64から吐出されるインクによって臭気や、霧状のインクであるミストが発生することがある。このような状況において、制御部80が脱臭ユニット10を作動させると、脱臭ユニット10のファン22が駆動し、ケーシング90内の空気が空気流路11内に吸引される。また、ファン22の駆動により、ケーシング90の隙間、特に、本体部92とフロントカバー96との間の隙間や、本体部92に設けられた通気孔95から、外部の空気がケーシング内90に流れ込む。
【0035】
脱臭ユニット10の空気流路11に吸引された空気は、臭気除去フィルター18を通過することにより脱臭される。臭気除去フィルター18を通過した空気は、ファン22の吹出口22aから空気流路11外へ吹き出されて吹出空気衝突部36に衝突した後、衝突により流れ方向が変更されて排出孔94からケーシング90の外部へ排出される。空気流路11内に吸い込まれる空気の中には、インクのミストが含まれることがあるが、ファン22の吹出口22aから吹き出された空気が吹出空気衝突部36に衝突することで、空気中のミストがこの吹出空気衝突部36に付着して除去される。これにより、排気孔94からケーシング90の外部へミストが排出されることを抑制することができる。このように、印刷装置1では、脱臭ユニット10の筐体24内に吹出空気衝突部38を設けることで、ミスト回収用の装置を別途設けることなく、低コストでミストの排出を抑制することができる。さらに、本実施の形態の印刷装置1では、吹出空気衝突部36に吸収体38を配置して吸収体38にミストを吸収させることにより、ミストを除去する効果を高めることができる。
【0036】
また、本実施の形態の脱臭ユニット10では、ファン22としてシロッコファンを用いるので、簡易な構成で、吸引された空気を吹出空気衝突部36に向かうように流れ方向を変えて吹出口22aから吹き出すことができる。また、インクのミストは、空気よりも比重が大きいため、本実施の形態のように、ファン22の吹出口22aよりも下方側に吹出空気衝突部36を配置して、排気孔94を吹出口22aよりも上方側に設けることで、空気中のミストが吹出空気衝突部36に衝突せずに排気孔94から排出されることを抑制することができる。これにより、吹出口22と排気孔94との距離を小さくして脱臭ユニット10の小型化を図りながら、吹出空気衝突部36によるミストの除去効果を向上させることができる。
【0037】
また、上述した印刷装置1では、脱臭ユニット10が、ガイドレール72の前面72aよりも後方側、すなわち、臭気の発生部となるインク吐出ヘッド64よりも後方側に配置されているため、ファン22の駆動によって、ケーシング90内では、印刷中に発生した臭気が後方側に流れるように空気流が発生する。これにより、臭気がケーシング90の正面に設けられた開口部93から外部へ漏れることを防止することができる。また、インク吐出ヘッド64は、ホームポジション位置においてキャップ66が装着されて、付着したインクが取り除かれる際にも臭気が発生することがある。インクに含まれる揮発性有機化合物は、空気よりも比重が大きいため、印刷時に発生する臭気はケーシング90内の下方側に溜りやすい傾向があるが、本実施の形態では、脱臭ユニット10が、キャップ66よりも下方側に配置されているため、比重の重い臭気を効率よく空気流路11内に吸引して脱臭性能を向上させることができる。
【0038】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0039】
例えば、上述した実施の形態では、脱臭ユニット10をケーシング90において平面状に形成された後壁部92cの内側に配置しているが、配置場所はこれに限られず、図10に示すように、後壁部92cの一部をケーシング90の外側に向かって凸状に形成し、その内部に脱臭ユニット10を配置するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 印刷装置
2 装置本体
4 操作端末
10 脱臭ユニット
11 空気流路
18 臭気除去フィルター(臭気除去部)
22 ファン(吸引部)
22a 吹出口
24 筐体
36 吹出空気衝突部
38 吸収体
50 テーブル
60 印刷部
64 インク吐出ヘッド
64b ノズル面
66 キャップ
70 移動機構
71 キャリッジ
72 ガイドレール
72a ガイドレールの前面
90 本体ケーシング
94 排気孔
95 通気孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10