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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155512
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】作業機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/22 20060101AFI20241024BHJP
   E02F 9/24 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
E02F9/22 Q
E02F9/24 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023070289
(22)【出願日】2023-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 将
【テーマコード(参考)】
2D003
2D015
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003AB04
2D003BA07
2D003CA02
2D003DA04
2D003DB02
2D003DB03
2D003DB04
2D015GA03
2D015GB04
2D015GB07
(57)【要約】
【課題】安全性を向上させることを目的とする。
【解決手段】上部旋回体に設けられたアタッチメントと、前記アタッチメントに含まれるエンドアタッチメントの開き動作中における前記エンドアタッチメントの開き角度に応じて、前記エンドアタッチメントが回動する速度を制御する制御装置と、を有する作業機械である。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部旋回体に設けられたアタッチメントと、
前記アタッチメントに含まれるエンドアタッチメントの開き動作中における前記エンドアタッチメントの開き角度に応じて、前記エンドアタッチメントが回動する速度を制御する制御装置と、を有する作業機械。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記開き角度が大きくなるにしたがって、前記エンドアタッチメントが回動する速度を遅くするように制御する、請求項1記載の作業機械。
【請求項3】
前記制御装置は、
前記開き角度が所定の角度以上となった後に、前記エンドアタッチメントが回動する速度を段階的に遅くする、請求項2記載の作業機械。
【請求項4】
前記制御装置は、
前記開き角度に応じた前記エンドアタッチメントに対する負荷の予測値を算出し、前記予測値を用いて前記エンドアタッチメントが回動する速度を制御する、請求項1記載の作業機械。
【請求項5】
前記エンドアタッチメントに対する負荷の予測値は、
前記エンドアタッチメントの形状と、前記開き角度とを用いて算出される、前記エンドアタッチメントの内部の被積載物の重量の予測値である、請求項4記載の作業機械。
【請求項6】
前記エンドアタッチメントは、バケットであり、
前記制御装置は、
前記エンドアタッチメントの内部の被積載物の重量の予測値と、前記バケットの爪先の目標軌道とを入力として、前記爪先の速度指令値を出力とするモデルを有し、
前記モデルから出力された前記爪先の速度指令値に基づき、前記エンドアタッチメントが回動する速度を制御する、請求項5記載の作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来では、自動排土制御において、バケットの傾きが所定の排土完了角度になるまでバケットを排土方向に回転させる作業機械が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-172972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
作業機械が排土する際、バケット内の土砂はバケットが開くにつれて落下するため、バケットに対する負荷は徐々に減少する。しかしながら、上述した従来の技術では、負荷の変化が考慮されていないため、バケットが過度に開き、土砂が積み込まれるダンプトラック等に接触するリスクが増大する可能性がある。
【0005】
本開示は、安全性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態に係る作業機械は、上部旋回体に設けられたアタッチメントと、前記アタッチメントに含まれるエンドアタッチメントの開き動作中における前記エンドアタッチメントの開き角度に応じて、前記エンドアタッチメントが回動する速度を制御する制御装置と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
安全性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1A】本発明の実施形態に係るショベルの側面図である。
図1B】本発明の実施形態に係るショベルの上面図である。
図2図1Aのショベルに搭載される油圧システムの構成例を示す概略図である。
図3A】アームシリンダの操作に関する油圧システム部分を抜き出した図である。
図3B】旋回用油圧モータの操作に関する油圧システム部分を抜き出した図である。
図3C】ブームシリンダの操作に関する油圧システム部分を抜き出した図である。
図3D】バケットシリンダの操作に関する油圧システム部分を抜き出した図である。
図4】コントローラの機能ブロック図である。
図5】自律制御機能の構成例を示すブロック図である。
図6】バケットの動作の制御について説明する図である。
図7】バケット内に残存している土砂の重量の予測について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
最初に、図1A及び図1Bを参照して、本発明の実施形態に係る掘削機としてのショベル100について説明する。図1Aはショベル100の側面図であり、図1Bはショベル100の上面図である。
【0010】
本実施形態では、ショベル100の下部走行体1はクローラ1Cを含む。クローラ1Cは、下部走行体1に搭載されている走行用油圧モータ2Mによって駆動される。具体的には、クローラ1Cは左クローラ1CL及び右クローラ1CRを含む。左クローラ1CLは左走行用油圧モータ2MLによって駆動され、右クローラ1CRは右走行用油圧モータ2MRによって駆動される。
【0011】
下部走行体1には旋回機構2を介して上部旋回体3が旋回可能に搭載されている。旋回機構2は、上部旋回体3に搭載されている旋回用油圧モータ2Aによって駆動される。但し、旋回用油圧モータ2Aは、電動アクチュエータとしての旋回用電動発電機であってもよい。
【0012】
上部旋回体3にはブーム4が取り付けられている。ブーム4の先端にはアーム5が取り付けられ、アーム5の先端にはエンドアタッチメントとしてのバケット6が取り付けられている。ブーム4、アーム5、及びバケット6は、アタッチメントの一例である掘削アタッチメントATを構成する。ブーム4はブームシリンダ7で駆動され、アーム5はアームシリンダ8で駆動され、バケット6はバケットシリンダ9で駆動される。
【0013】
ブーム4は、上部旋回体3によって回動可能に支持されている。そして、ブーム4にはブーム角度センサS1が取り付けられている。ブーム角度センサS1は、ブーム4の回動角度であるブーム角度βを検出できる。ブーム角度βは、例えば、ブーム4を最も下降させた状態からの上昇角度である。そのため、ブーム角度βは、ブーム4を最も上昇させたときに最大となる。
【0014】
アーム5は、ブーム4に関して回動可能に支持されている。そして、アーム5にはアーム角度センサS2が取り付けられている。アーム角度センサS2は、アーム5の回動角度であるアーム角度βを検出できる。アーム角度βは、例えば、アーム5を最も閉じた状態からの開き角度である。そのため、アーム角度βは、アーム5を最も開いたときに最大となる。
【0015】
バケット6は、バケットリンク機構6aにより、アーム5に関して回動可能に支持されている。そして、バケット6にはバケット角度センサS3が取り付けられている。バケット角度センサS3は、バケット6の回動角度であるバケット角度βを検出できる。バケット角度βは、バケット6を最も閉じた状態からの開き角度である。そのため、バケット角度βは、バケット6を最も開いたときに最大となる。
【0016】
図1A及び図1Bに示す実施形態では、ブーム角度センサS1、アーム角度センサS2、及びバケット角度センサS3のそれぞれは、加速度センサとジャイロセンサの組み合わせで構成されている。但し、ブーム角度センサS1、アーム角度センサS2、及びバケット角度センサS3の少なくとも1つは、加速度センサのみで構成されていてもよい。また、ブーム角度センサS1は、ブームシリンダ7に取り付けられたストロークセンサであってもよく、ロータリエンコーダ、ポテンショメータ、又は慣性計測装置等であってもよい。アーム角度センサS2及びバケット角度センサS3についても同様である。
【0017】
上部旋回体3には、運転室としてのキャビン10が設けられ、且つ、エンジン11等の動力源が搭載されている。また、上部旋回体3には、物体検知装置70、撮像装置80、機体傾斜センサS4、及び旋回角速度センサS5等が取り付けられている。キャビン10の内部には、操作装置26、コントローラ30、表示装置D1、及び音出力装置D2等が設けられている。なお、本書では、便宜上、上部旋回体3における、掘削アタッチメントATが取り付けられている側を前方とし、カウンタウェイトが取り付けられている側を後方とする。
【0018】
物体検知装置70は、周囲監視装置の一例であり、ショベル100の周囲に存在する物体を検知するように構成されている。物体は、例えば、人、動物、車両、建設機械、建造物、壁、柵、又は穴等である。物体検知装置70は、例えば、カメラ、超音波センサ、ミリ波レーダ、ステレオカメラ、LIDAR、距離画像センサ、又は赤外線センサ等である。本実施形態では、物体検知装置70は、キャビン10の上面前端に取り付けられた前センサ70F、上部旋回体3の上面後端に取り付けられた後センサ70B、上部旋回体3の上面左端に取り付けられた左センサ70L、及び、上部旋回体3の上面右端に取り付けられた右センサ70Rを含む。
【0019】
物体検知装置70は、ショベル100の周囲に設定された所定領域内の所定物体を検知するように構成されていてもよい。物体検知装置70は、人と人以外の物体とを区別できるように構成されていてもよい。物体検知装置70は、物体検知装置70又はショベル100から認識された物体までの距離を算出するように構成されていてもよい。
【0020】
撮像装置80は、周囲監視装置の別の一例であり、ショベル100の周囲を撮像する。本実施形態では、撮像装置80は、上部旋回体3の上面後端に取り付けられた後カメラ80B、上部旋回体3の上面左端に取り付けられた左カメラ80L、及び、上部旋回体3の上面右端に取り付けられた右カメラ80Rを含む。撮像装置80は、前カメラを含んでいてもよい。
【0021】
後カメラ80Bは後センサ70Bに隣接して配置され、左カメラ80Lは左センサ70Lに隣接して配置され、且つ、右カメラ80Rは右センサ70Rに隣接して配置されている。撮像装置80が前カメラを含む場合、前カメラは、前センサ70Fに隣接して配置されていてもよい。
【0022】
撮像装置80が撮像した画像は表示装置D1に表示される。撮像装置80は、俯瞰画像等の視点変換画像を表示装置D1に表示できるように構成されていてもよい。俯瞰画像は、例えば、後カメラ80B、左カメラ80L及び右カメラ80Rのそれぞれが出力する画像を合成して生成される。
【0023】
機体傾斜センサS4は、所定の平面に対する上部旋回体3の傾斜を検出するように構成されている。本実施形態では、機体傾斜センサS4は、水平面に関する上部旋回体3の前後軸回りの傾斜角(ロール角)及び左右軸回りの傾斜角(ピッチ角)を検出する加速度センサである。上部旋回体3の前後軸及び左右軸は、例えば、互いに直交してショベル100の旋回軸上の一点であるショベル中心点を通る。機体傾斜センサS4は、加速度センサとジャイロセンサの組み合わせで構成されていてもよい。
【0024】
旋回角速度センサS5は、上部旋回体3の旋回角速度を検出するように構成されている。本実施形態では、旋回角速度センサS5は、ジャイロセンサである。旋回角速度センサS5は、レゾルバ又はロータリエンコーダ等であってもよい。旋回角速度センサS5は、旋回速度を検出してもよい。旋回速度は、旋回角速度から算出されてもよい。
【0025】
以下では、ブーム角度センサS1、アーム角度センサS2、バケット角度センサS3、機体傾斜センサS4、及び旋回角速度センサS5のそれぞれは、姿勢検出装置とも称される。
【0026】
表示装置D1は、様々な情報を表示するように構成されている。音出力装置D2は、音を出力するように構成されている。操作装置26は、操作者がアクチュエータの操作のために用いる装置である。
【0027】
コントローラ30は、ショベル100を制御するための制御装置である。本実施形態では、コントローラ30は、CPU、揮発性記憶装置、及び不揮発性記憶装置等を備えたコンピュータで構成されている。そして、コントローラ30は、各機能に対応するプログラムを不揮発性記憶装置から読み出して実行する。各機能は、例えば、操作者によるショベル100の手動操作をガイド(案内)するマシンガイダンス機能、及び、操作者によるショベル100の手動操作を自動的に支援するマシンコントロール機能等を含む。
【0028】
具体的には、コントローラ30は、積み込み作業が自動的に行われるように、ショベル100を制御する。積み込み作業とは、バケット6に土砂を積載し、ダンプトラックの荷台等へ排土することで、ダンプトラックの荷台等に土砂を積み込む作業である。土砂は、被積載物の一例である。積み込み作業において、バケット6に積載された土砂を、ダンプトラックの荷台等に排土する動作を排土動作と呼ぶ。
【0029】
排土動作では、バケット角度βが大きくなるにつれて、バケット6内に積載された土砂が排土されていき、バケット6に積載された土砂の重量が減少していく。言い換えれば、排土動作では、バケット角度βが大きくなるにつれて、バケット6に対する負荷が減少していく。
【0030】
本実施形態では、この点に着目し、バケット角度βに応じて、バケット6が開く方向に回動する速度(開き速度)を制御することで、排土動作の完了時に、バケット6がダンプトラック等に接触するリスクを低減させる。
【0031】
より具体的には、本実施形態では、バケット角度βが大きくなるにつれて、バケット6が開く方向に回動する速度(開き速度)が遅くなるように、バケット6の動作を制御する。これにより、バケット6の動作に、バケット6に対する負荷の変化が反映されることになり、バケット6を適切に動作させることができ、作業における安全性が向上する。
【0032】
なお、上述したバケット6の動作の制御は、排土動作以外であっても、バケット6を開く開き動作を行う際に適用されてよい。つまり、本実施形態のコントローラ30は、バケット6の開き動作中のバケット6の開き角度に応じて、バケット6(エンドアタッチメント)の開き動作を遅くさせる。
【0033】
コントローラ30によるバケット6の動作の制御の仕方の詳細は、後述する。
【0034】
次に、図2を参照し、ショベル100に搭載される油圧システムの別の構成例について説明する。図2は、ショベル100に搭載される油圧システムの別の構成例を示す図である。図2は、機械的動力伝達系、作動油ライン、パイロットライン及び電気制御系を、それぞれ二重線、実線、破線及び点線で示している。
【0035】
図2の油圧システムは、主に、エンジン11、レギュレータ13、メインポンプ14、パイロットポンプ15、コントロールバルブ17、操作装置26、吐出圧センサ28、操作圧センサ29及びコントローラ30等を含む。
【0036】
図2において、油圧システムは、エンジン11によって駆動されるメインポンプ14から、センターバイパス管路40又はパラレル管路42を経て作動油タンクまで作動油を循環させている。
【0037】
エンジン11は、ショベル100の駆動源である。本実施形態では、エンジン11は、例えば、所定の回転数を維持するように動作するディーゼルエンジンである。エンジン11の出力軸は、メインポンプ14及びパイロットポンプ15の入力軸に連結されている。
【0038】
メインポンプ14は、作動油ラインを介して作動油をコントロールバルブ17に供給する。本実施形態では、メインポンプ14は、斜板式可変容量型油圧ポンプである。
【0039】
レギュレータ13は、メインポンプ14の吐出量を制御する。本実施形態では、レギュレータ13は、コントローラ30からの制御指令に応じてメインポンプ14の斜板傾転角を調節することによってメインポンプ14の吐出量を制御する。
【0040】
パイロットポンプ15は、パイロットラインを介して操作装置26を含む油圧制御機器に作動油を供給するように構成されている。本実施形態では、パイロットポンプ15は、固定容量型油圧ポンプである。但し、パイロットポンプ15は、省略されてもよい。この場合、パイロットポンプ15が担っていた機能は、メインポンプ14によって実現されてもよい。すなわち、メインポンプ14は、コントロールバルブ17に作動油を供給する機能とは別に、絞り等により作動油の圧力を低下させた後で操作装置26等に作動油を供給する機能を備えていてもよい。
【0041】
コントロールバルブ17は、ショベル100における油圧システムを制御する油圧制御装置である。本実施形態では、コントロールバルブ17は、制御弁171~176を含む。制御弁175は制御弁175L及び制御弁175Rを含み、制御弁176は制御弁176L及び制御弁176Rを含む。コントロールバルブ17は、制御弁171~176を通じ、メインポンプ14が吐出する作動油を1又は複数の油圧アクチュエータに選択的に供給できる。制御弁171~176は、メインポンプ14から油圧アクチュエータに流れる作動油の流量、及び、油圧アクチュエータから作動油タンクに流れる作動油の流量を制御する。油圧アクチュエータは、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、バケットシリンダ9、左走行用油圧モータ2ML、右走行用油圧モータ2MR及び旋回用油圧モータ2Aを含む。
【0042】
操作装置26は、操作者がアクチュエータの操作のために用いる装置である。アクチュエータは、油圧アクチュエータ及び電動アクチュエータの少なくとも一方を含む。本実施形態では、操作装置26は、パイロットラインを介して、パイロットポンプ15が吐出する作動油を、コントロールバルブ17内の対応する制御弁のパイロットポートに供給する。パイロットポートのそれぞれに供給される作動油の圧力(パイロット圧)は、油圧アクチュエータのそれぞれに対応する操作装置26の操作方向及び操作量に応じた圧力である。但し、操作装置26は、上述のようなパイロット圧式ではなく、電気制御式であってもよい。この場合、コントロールバルブ17内の制御弁は、電磁ソレノイド式スプール弁であってもよい。
【0043】
吐出圧センサ28は、メインポンプ14の吐出圧を検出する。本実施形態では、吐出圧センサ28は、検出した値をコントローラ30に対して出力する。
【0044】
操作圧センサ29は、操作者による操作装置26の操作の内容を検出する。本実施形態では、操作圧センサ29は、アクチュエータのそれぞれに対応する操作装置26のレバー又はペダルの操作方向及び操作量を圧力(操作圧)の形で検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。操作装置26の操作の内容は、操作圧センサ以外の他のセンサを用いて検出されてもよい。
【0045】
メインポンプ14は、左メインポンプ14L及び右メインポンプ14Rを含む。そして、左メインポンプ14Lは、左センターバイパス管路40L又は左パラレル管路42Lを経て作動油タンクまで作動油を循環させ、右メインポンプ14Rは、右センターバイパス管路40R又は右パラレル管路42Rを経て作動油タンクまで作動油を循環させる。
【0046】
左センターバイパス管路40Lは、コントロールバルブ17内に配置された制御弁171、173、175L及び176Lを通る作動油ラインである。右センターバイパス管路40Rは、コントロールバルブ17内に配置された制御弁172、174、175R及び176Rを通る作動油ラインである。
【0047】
制御弁171は、左メインポンプ14Lが吐出する作動油を左走行用油圧モータ2MLへ供給し、且つ、左走行用油圧モータ2MLが吐出する作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
【0048】
制御弁172は、右メインポンプ14Rが吐出する作動油を右走行用油圧モータ2MRへ供給し、且つ、右走行用油圧モータ2MRが吐出する作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
【0049】
制御弁173は、左メインポンプ14Lが吐出する作動油を旋回用油圧モータ2Aへ供給し、且つ、旋回用油圧モータ2Aが吐出する作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
【0050】
制御弁174は、右メインポンプ14Rが吐出する作動油をバケットシリンダ9へ供給し、且つ、バケットシリンダ9内の作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
【0051】
制御弁175Lは、左メインポンプ14Lが吐出する作動油をブームシリンダ7へ供給するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。制御弁175Rは、右メインポンプ14Rが吐出する作動油をブームシリンダ7へ供給し、且つ、ブームシリンダ7内の作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
【0052】
制御弁176Lは、左メインポンプ14Lが吐出する作動油をアームシリンダ8へ供給し、且つ、アームシリンダ8内の作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
【0053】
制御弁176Rは、右メインポンプ14Rが吐出する作動油をアームシリンダ8へ供給し、且つ、アームシリンダ8内の作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
【0054】
左パラレル管路42Lは、左センターバイパス管路40Lに並行する作動油ラインである。左パラレル管路42Lは、制御弁171、173、175Lの何れかによって左センターバイパス管路40Lを通る作動油の流れが制限或いは遮断された場合に、より下流の制御弁に作動油を供給できる。右パラレル管路42Rは、右センターバイパス管路40Rに並行する作動油ラインである。右パラレル管路42Rは、制御弁172、174、175Rの何れかによって右センターバイパス管路40Rを通る作動油の流れが制限或いは遮断された場合に、より下流の制御弁に作動油を供給できる。
【0055】
レギュレータ13は、左レギュレータ13L及び右レギュレータ13Rを含む。左レギュレータ13Lは、左メインポンプ14Lの吐出圧に応じて左メインポンプ14Lの斜板傾転角を調節することによって、左メインポンプ14Lの吐出量を制御する。具体的には、左レギュレータ13Lは、例えば、左メインポンプ14Lの吐出圧の増大に応じて左メインポンプ14Lの斜板傾転角を調節して吐出量を減少させる。右レギュレータ13Rについても同様である。吐出圧と吐出量との積で表されるメインポンプ14の吸収馬力がエンジン11の出力馬力を超えないようにするためである。
【0056】
操作装置26は、左操作レバー26L、右操作レバー26R及び走行レバー26Dを含む。走行レバー26Dは、左走行レバー26DL及び右走行レバー26DRを含む。
【0057】
左操作レバー26Lは、旋回操作とアーム5の操作に用いられる。左操作レバー26Lは、前後方向に操作されると、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用し、レバー操作量に応じた制御圧を制御弁176のパイロットポートに導入させる。また、左右方向に操作されると、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用し、レバー操作量に応じた制御圧を制御弁173のパイロットポートに導入させる。
【0058】
具体的には、左操作レバー26Lは、アーム閉じ方向に操作された場合に、制御弁176Lの右側パイロットポートに作動油を導入させ、且つ、制御弁176Rの左側パイロットポートに作動油を導入させる。また、左操作レバー26Lは、アーム開き方向に操作された場合には、制御弁176Lの左側パイロットポートに作動油を導入させ、且つ、制御弁176Rの右側パイロットポートに作動油を導入させる。また、左操作レバー26Lは、左旋回方向に操作された場合に、制御弁173の左側パイロットポートに作動油を導入させ、右旋回方向に操作された場合に、制御弁173の右側パイロットポートに作動油を導入させる。
【0059】
右操作レバー26Rは、ブーム4の操作とバケット6の操作に用いられる。右操作レバー26Rは、前後方向に操作されると、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用し、レバー操作量に応じた制御圧を制御弁175のパイロットポートに導入させる。また、左右方向に操作されると、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用し、レバー操作量に応じた制御圧を制御弁174のパイロットポートに導入させる。
【0060】
具体的には、右操作レバー26Rは、ブーム下げ方向に操作された場合に、制御弁175Rの左側パイロットポートに作動油を導入させる。また、右操作レバー26Rは、ブーム上げ方向に操作された場合には、制御弁175Lの右側パイロットポートに作動油を導入させ、且つ、制御弁175Rの左側パイロットポートに作動油を導入させる。また、右操作レバー26Rは、バケット閉じ方向に操作された場合に、制御弁174の右側パイロットポートに作動油を導入させ、バケット開き方向に操作された場合に、制御弁174の左側パイロットポートに作動油を導入させる。
【0061】
走行レバー26Dは、クローラ1Cの操作に用いられる。具体的には、左走行レバー26DLは、左クローラ1CLの操作に用いられる。左走行ペダルと連動するように構成されていてもよい。左走行レバー26DLは、前後方向に操作されると、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用し、レバー操作量に応じた制御圧を制御弁171のパイロットポートに導入させる。右走行レバー26DRは、右クローラ1CRの操作に用いられる。右走行ペダルと連動するように構成されていてもよい。右走行レバー26DRは、前後方向に操作されると、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用し、レバー操作量に応じた制御圧を制御弁172のパイロットポートに導入させる。
【0062】
吐出圧センサ28は、吐出圧センサ28L及び吐出圧センサ28Rを含む。吐出圧センサ28Lは、左メインポンプ14Lの吐出圧を検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。吐出圧センサ28Rについても同様である。
【0063】
操作圧センサ29は、操作圧センサ29LA、29LB、29RA、29RB、29DL、29DRを含む。操作圧センサ29LAは、操作者による左操作レバー26Lに対する前後方向への操作の内容を圧力の形で検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。操作の内容は、例えば、レバー操作方向、レバー操作量(レバー操作角度)等である。
【0064】
同様に、操作圧センサ29LBは、操作者による左操作レバー26Lに対する左右方向への操作の内容を圧力の形で検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。操作圧センサ29RAは、操作者による右操作レバー26Rに対する前後方向への操作の内容を圧力の形で検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。操作圧センサ29RBは、操作者による右操作レバー26Rに対する左右方向への操作の内容を圧力の形で検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。操作圧センサ29DLは、操作者による左走行レバー26DLに対する前後方向への操作の内容を圧力の形で検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。操作圧センサ29DRは、操作者による右走行レバー26DRに対する前後方向への操作の内容を圧力の形で検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。
【0065】
コントローラ30は、操作圧センサ29の出力を受信し、必要に応じてレギュレータ13に対して制御指令を出力し、メインポンプ14の吐出量を変化させる。また、コントローラ30は、絞り18の上流に設けられた制御圧センサ19の出力を受信し、必要に応じてレギュレータ13に対して制御指令を出力し、メインポンプ14の吐出量を変化させる。絞り18は左絞り18L及び右絞り18Rを含み、制御圧センサ19は左制御圧センサ19L及び右制御圧センサ19Rを含む。
【0066】
左センターバイパス管路40Lには、最も下流にある制御弁176Lと作動油タンクとの間に左絞り18Lが配置されている。そのため、左メインポンプ14Lが吐出した作動油の流れは、左絞り18Lで制限される。そして、左絞り18Lは、左レギュレータ13Lを制御するための制御圧を発生させる。左制御圧センサ19Lは、この制御圧を検出するためのセンサであり、検出した値をコントローラ30に対して出力する。コントローラ30は、この制御圧に応じて左メインポンプ14Lの斜板傾転角を調節することによって、左メインポンプ14Lの吐出量を制御する。コントローラ30は、この制御圧が大きいほど左メインポンプ14Lの吐出量を減少させ、この制御圧が小さいほど左メインポンプ14Lの吐出量を増大させる。右メインポンプ14Rの吐出量も同様に制御される。
【0067】
具体的には、図2で示されるようにショベル100における油圧アクチュエータが何れも操作されていない待機状態の場合、左メインポンプ14Lが吐出する作動油は、左センターバイパス管路40Lを通って左絞り18Lに至る。そして、左メインポンプ14Lが吐出する作動油の流れは、左絞り18Lの上流で発生する制御圧を増大させる。その結果、コントローラ30は、左メインポンプ14Lの吐出量を許容最小吐出量まで減少させ、吐出した作動油が左センターバイパス管路40Lを通過する際の圧力損失(ポンピングロス)を抑制する。一方、何れかの油圧アクチュエータが操作された場合、左メインポンプ14Lが吐出する作動油は、操作対象の油圧アクチュエータに対応する制御弁を介して、操作対象の油圧アクチュエータに流れ込む。そして、左メインポンプ14Lが吐出する作動油の流れは、左絞り18Lに至る量を減少或いは消失させ、左絞り18Lの上流で発生する制御圧を低下させる。その結果、コントローラ30は、左メインポンプ14Lの吐出量を増大させ、操作対象の油圧アクチュエータに十分な作動油を循環させ、操作対象の油圧アクチュエータの駆動を確かなものとする。なお、コントローラ30は、右メインポンプ14Rの吐出量も同様に制御する。
【0068】
上述のような構成により、図2の油圧システムは、待機状態においては、メインポンプ14における無駄なエネルギ消費を抑制できる。無駄なエネルギ消費は、メインポンプ14が吐出する作動油がセンターバイパス管路40で発生させるポンピングロスを含む。また、図2の油圧システムは、油圧アクチュエータを作動させる場合には、メインポンプ14から必要十分な作動油を作動対象の油圧アクチュエータに確実に供給できる。
【0069】
次に、図3A図3Dを参照し、コントローラ30がマシンコントロール機能によってアクチュエータを自動的に動作させるための構成について説明する。図3A図3Dは、油圧システムの一部を抜き出した図である。具体的には、図3Aは、アームシリンダ8の操作に関する油圧システム部分を抜き出した図であり、図3Bは、旋回用油圧モータ2Aの操作に関する油圧システム部分を抜き出した図である。また、図3Cは、ブームシリンダ7の操作に関する油圧システム部分を抜き出した図であり、図3Dは、バケットシリンダ9の操作に関する油圧システム部分を抜き出した図である。
【0070】
図3A図3Dに示すように、油圧システムは、比例弁31及びシャトル弁32を含む。比例弁31は、比例弁31AL~31DL及び31AR~31DRを含み、シャトル弁32は、シャトル弁32AL~32DL及び32AR~32DRを含む。
【0071】
比例弁31は、マシンコントロール用制御弁として機能する。比例弁31は、パイロットポンプ15とシャトル弁32とを接続する管路に配置され、その管路の流路面積を変更できるように構成されている。本実施形態では、比例弁31は、コントローラ30が出力する制御指令に応じて動作する。そのため、コントローラ30は、操作者による操作装置26の操作とは無関係に、パイロットポンプ15が吐出する作動油を、比例弁31及びシャトル弁32を介し、コントロールバルブ17内の対応する制御弁のパイロットポートに供給できる。
【0072】
シャトル弁32は、2つの入口ポートと1つの出口ポートを有する。2つの入口ポートのうちの一方は操作装置26に接続され、他方は比例弁31に接続されている。出口ポートは、コントロールバルブ17内の対応する制御弁のパイロットポートに接続されている。そのため、シャトル弁32は、操作装置26が生成するパイロット圧と比例弁31が生成するパイロット圧のうちの高い方を、対応する制御弁のパイロットポートに作用させることができる。
【0073】
この構成により、コントローラ30は、特定の操作装置26に対する操作が行われていない場合であっても、その特定の操作装置26に対応する油圧アクチュエータを動作させることができる。
【0074】
例えば、図3Aに示すように、左操作レバー26Lは、アーム5を操作するために用いられる。具体的には、左操作レバー26Lは、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用し、前後方向への操作に応じたパイロット圧を制御弁176のパイロットポートに作用させる。より具体的には、左操作レバー26Lは、アーム閉じ方向(後方向)に操作された場合に、操作量に応じたパイロット圧を制御弁176Lの右側パイロットポートと制御弁176Rの左側パイロットポートに作用させる。また、左操作レバー26Lは、アーム開き方向(前方向)に操作された場合には、操作量に応じたパイロット圧を制御弁176Lの左側パイロットポートと制御弁176Rの右側パイロットポートに作用させる。
【0075】
左操作レバー26LにはスイッチNSが設けられている。本実施形態では、スイッチNSは、押しボタンスイッチである。操作者は、スイッチNSを押しながら左操作レバー26Lを操作できる。スイッチNSは、右操作レバー26Rに設けられていてもよく、キャビン10内の他の位置に設けられていてもよい。
【0076】
操作圧センサ29LAは、操作者による左操作レバー26Lに対する前後方向への操作の内容を圧力の形で検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。
【0077】
比例弁31ALは、コントローラ30が出力する電流指令に応じて動作する。そして、パイロットポンプ15から比例弁31AL及びシャトル弁32ALを介して制御弁176Lの右側パイロットポート及び制御弁176Rの左側パイロットポートに導入される作動油によるパイロット圧を調整する。比例弁31ARは、コントローラ30が出力する電流指令に応じて動作する。そして、パイロットポンプ15から比例弁31AR及びシャトル弁32ARを介して制御弁176Lの左側パイロットポート及び制御弁176Rの右側パイロットポートに導入される作動油によるパイロット圧を調整する。比例弁31AL、31ARは、制御弁176L、176Rを任意の弁位置で停止できるようにパイロット圧を調整可能である。
【0078】
この構成により、コントローラ30は、操作者によるアーム閉じ操作とは無関係に、パイロットポンプ15が吐出する作動油を、比例弁31AL及びシャトル弁32ALを介し、制御弁176Lの右側パイロットポート及び制御弁176Rの左側パイロットポートに供給できる。すなわち、アーム5を自動的に閉じることができる。また、コントローラ30は、操作者によるアーム開き操作とは無関係に、パイロットポンプ15が吐出する作動油を、比例弁31AR及びシャトル弁32ARを介し、制御弁176Lの左側パイロットポート及び制御弁176Rの右側パイロットポートに供給できる。すなわち、アーム5を自動的に開くことができる。
【0079】
また、図3Bに示すように、左操作レバー26Lは、旋回機構2を操作するためにも用いられる。具体的には、左操作レバー26Lは、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用し、左右方向への操作に応じたパイロット圧を制御弁173のパイロットポートに作用させる。より具体的には、左操作レバー26Lは、左旋回方向(左方向)に操作された場合に、操作量に応じたパイロット圧を制御弁173の左側パイロットポートに作用させる。また、左操作レバー26Lは、右旋回方向(右方向)に操作された場合には、操作量に応じたパイロット圧を制御弁173の右側パイロットポートに作用させる。
【0080】
操作圧センサ29LBは、操作者による左操作レバー26Lに対する左右方向への操作の内容を圧力の形で検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。
【0081】
比例弁31BLは、コントローラ30が出力する電流指令に応じて動作する。そして、パイロットポンプ15から比例弁31BL及びシャトル弁32BLを介して制御弁173の左側パイロットポートに導入される作動油によるパイロット圧を調整する。比例弁31BRは、コントローラ30が出力する電流指令に応じて動作する。そして、パイロットポンプ15から比例弁31BR及びシャトル弁32BRを介して制御弁173の右側パイロットポートに導入される作動油によるパイロット圧を調整する。比例弁31BL、31BRは、制御弁173を任意の弁位置で停止できるようにパイロット圧を調整可能である。
【0082】
この構成により、コントローラ30は、操作者による左旋回操作とは無関係に、パイロットポンプ15が吐出する作動油を、比例弁31BL及びシャトル弁32BLを介し、制御弁173の左側パイロットポートに供給できる。すなわち、旋回機構2を自動的に左旋回させることができる。また、コントローラ30は、操作者による右旋回操作とは無関係に、パイロットポンプ15が吐出する作動油を、比例弁31BR及びシャトル弁32BRを介し、制御弁173の右側パイロットポートに供給できる。すなわち、旋回機構2を自動的に右旋回させることができる。
【0083】
また、図3Cに示すように、右操作レバー26Rは、ブーム4を操作するために用いられる。具体的には、右操作レバー26Rは、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用し、前後方向への操作に応じたパイロット圧を制御弁175のパイロットポートに作用させる。より具体的には、右操作レバー26Rは、ブーム上げ方向(後方向)に操作された場合に、操作量に応じたパイロット圧を制御弁175Lの右側パイロットポートと制御弁175Rの左側パイロットポートに作用させる。また、右操作レバー26Rは、ブーム下げ方向(前方向)に操作された場合には、操作量に応じたパイロット圧を制御弁175Rの右側パイロットポートに作用させる。
【0084】
操作圧センサ29RAは、操作者による右操作レバー26Rに対する前後方向への操作の内容を圧力の形で検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。
【0085】
比例弁31CLは、コントローラ30が出力する電流指令に応じて動作する。そして、パイロットポンプ15から比例弁31CL及びシャトル弁32CLを介して制御弁175Lの右側パイロットポート及び制御弁175Rの左側パイロットポートに導入される作動油によるパイロット圧を調整する。比例弁31CRは、コントローラ30が出力する電流指令に応じて動作する。そして、パイロットポンプ15から比例弁31CR及びシャトル弁32CRを介して制御弁175Lの左側パイロットポート及び制御弁175Rの右側パイロットポートに導入される作動油によるパイロット圧を調整する。比例弁31CL、31CRは、制御弁175L、175Rを任意の弁位置で停止できるようにパイロット圧を調整可能である。
【0086】
この構成により、コントローラ30は、操作者によるブーム上げ操作とは無関係に、パイロットポンプ15が吐出する作動油を、比例弁31CL及びシャトル弁32CLを介し、制御弁175Lの右側パイロットポート及び制御弁175Rの左側パイロットポートに供給できる。すなわち、ブーム4を自動的に上げることができる。また、コントローラ30は、操作者によるブーム下げ操作とは無関係に、パイロットポンプ15が吐出する作動油を、比例弁31CR及びシャトル弁32CRを介し、制御弁175Rの右側パイロットポートに供給できる。すなわち、ブーム4を自動的に下げることができる。
【0087】
また、図3Dに示すように、右操作レバー26Rは、バケット6を操作するためにも用いられる。具体的には、右操作レバー26Rは、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用し、左右方向への操作に応じたパイロット圧を制御弁174のパイロットポートに作用させる。より具体的には、右操作レバー26Rは、バケット閉じ方向(左方向)に操作された場合に、操作量に応じたパイロット圧を制御弁174の左側パイロットポートに作用させる。また、右操作レバー26Rは、バケット開き方向(右方向)に操作された場合には、操作量に応じたパイロット圧を制御弁174の右側パイロットポートに作用させる。
【0088】
操作圧センサ29RBは、操作者による右操作レバー26Rに対する左右方向への操作の内容を圧力の形で検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。
【0089】
比例弁31DLは、コントローラ30が出力する電流指令に応じて動作する。そして、パイロットポンプ15から比例弁31DL及びシャトル弁32DLを介して制御弁174の左側パイロットポートに導入される作動油によるパイロット圧を調整する。比例弁31DRは、コントローラ30が出力する電流指令に応じて動作する。そして、パイロットポンプ15から比例弁31DR及びシャトル弁32DRを介して制御弁174の右側パイロットポートに導入される作動油によるパイロット圧を調整する。比例弁31DL、31DRは、制御弁174を任意の弁位置で停止できるようにパイロット圧を調整可能である。
【0090】
この構成により、コントローラ30は、操作者によるバケット閉じ操作とは無関係に、パイロットポンプ15が吐出する作動油を、比例弁31DL及びシャトル弁32DLを介し、制御弁174の左側パイロットポートに供給できる。すなわち、バケット6を自動的に閉じることができる。また、コントローラ30は、操作者によるバケット開き操作とは無関係に、パイロットポンプ15が吐出する作動油を、比例弁31DR及びシャトル弁32DRを介し、制御弁174の右側パイロットポートに供給できる。すなわち、バケット6を自動的に開くことができる。
【0091】
ショベル100は、下部走行体1を自動的に前進・後進させる構成を備えていてもよい。この場合、左走行用油圧モータ2MLの操作に関する油圧システム部分、及び、右走行用油圧モータ2MRの操作に関する油圧システム部分は、ブームシリンダ7の操作に関する油圧システム部分等と同じように構成されてもよい。
【0092】
また、図2及び図3A図3Dでは油圧式パイロット回路を備えた油圧式操作レバーを記載したが、油圧式操作レバーではなく電気式パイロット回路を備えた電気式操作レバーが採用されてもよい。この場合、電気式操作レバーのレバー操作量は、電気信号としてコントローラ30へ入力される。また、パイロットポンプ15と各制御弁のパイロットポートとの間には電磁弁が配置される。電磁弁は、コントローラ30からの電気信号に応じて動作するように構成される。この構成により、電気式操作レバーを用いた手動操作が行われると、コントローラ30は、レバー操作量に対応する電気信号によって電磁弁を制御してパイロット圧を増減させることで各制御弁を移動させることができる。なお、各制御弁は電磁スプール弁で構成されていてもよい。この場合、電磁スプール弁は、電気式操作レバーのレバー操作量に対応するコントローラ30からの電気信号に応じて動作する。
【0093】
次に、図4を参照し、コントローラ30の機能について説明する。図4は、コントローラ30の機能ブロック図である。
【0094】
図4の例では、コントローラ30は、姿勢検出装置、操作装置26、物体検知装置70、撮像装置80、及びスイッチNS等が出力する信号を受け、様々な演算を実行し、比例弁31、表示装置D1、及び音出力装置D2等に制御指令を出力できるように構成されている。姿勢検出装置は、ブーム角度センサS1、アーム角度センサS2、バケット角度センサS3、機体傾斜センサS4及び旋回角速度センサS5を含む。コントローラ30は、姿勢記録部30A、軌道算出部30B及び自律制御部30Cを機能要素として有する。各機能要素は、ハードウェアで構成されていてもよく、ソフトウェアで構成されていてもよい。
【0095】
姿勢記録部30Aは、ショベル100の姿勢に関する情報を記録するように構成されている。本実施形態では、姿勢記録部30Aは、スイッチNSが押されたときのショベル100の姿勢に関する情報をRAMに記録する。具体的には、姿勢記録部30Aは、スイッチNSが押される度に姿勢検出装置の出力を記録する。姿勢記録部30Aは、第1時点でスイッチNSが押されたときに記録を開始し、第2時点でスイッチNSが押されたときにその記録を終了するように構成されていてもよい。この場合、姿勢記録部30Aは、第1時点から第2時点まで、ショベル100の姿勢に関する情報を所定の制御周期で繰り返し記録してもよい。
【0096】
軌道算出部30Bは、ショベル100を自律的に動作させるときにショベル100の所定部位が描く軌道である目標軌道を算出するように構成されている。所定部位は、例えば、バケット6の背面にある所定点である。本実施形態では、軌道算出部30Bは、自律制御部30Cがショベル100を自律的に動作させるときに利用する目標軌道を算出する。具体的には、軌道算出部30Bは、姿勢記録部30Aが記録したショベル100の姿勢に関する情報に基づいて目標軌道を算出する。
【0097】
軌道算出部30Bは、周囲監視装置の一例である物体検知装置70としてのLIDARの出力に基づいて目標軌道を算出してもよい。或いは、軌道算出部30Bは、周囲監視装置の別の一例である撮像装置80の出力に基づいて目標軌道を算出してもよい。或いは、軌道算出部30Bは、姿勢記録部30Aが記録したショベル100の姿勢に関する情報と周囲監視装置の出力とに基づいて目標軌道を算出してもよい。
【0098】
自律制御部30Cは、ショベル100を自律的に動作させるように構成されている。本実施形態では、所定の開始条件が満たされた場合に、軌道算出部30Bが算出した目標軌道に沿ってショベル100の所定部位を移動させるように構成されている。具体的には、スイッチNSが押されている状態で操作装置26が操作されたときに、ショベル100の所定部位が目標軌道に沿って移動するように、ショベル100を自律的に動作させる。
【0099】
例えば、スイッチNSが押されている状態で、左操作レバー26Lが右旋回方向に操作され、且つ、右操作レバー26Rがブーム上げ方向に操作されたときに、バケット6の下端が目標軌道に沿って移動するように、ショベル100を自律的に動作させてもよい。この場合、左操作レバー26L及び右操作レバー26Rのそれぞれは、任意のレバー操作量で操作されてもよい。したがって、操作者は、レバー操作量を気にすることなく、所定の移動速度でバケット6の下端を目標軌道に沿って移動させることができる。或いは、バケット6の移動速度は、左操作レバー26L又は右操作レバー26Rの操作量の変化に応じて変化するように構成されていてもよい。
【0100】
自律制御部30Cは、例えば、バケット6の下端が目標軌道に沿うようにブームシリンダ7及び旋回用油圧モータ2Aの少なくとも1つを制御するように構成されていてもよい。例えば、自律制御部30Cは、ブーム4の上昇速度に応じて上部旋回体3の旋回速度を半自動的に制御してもよい。例えば、ブーム4の上昇速度が大きいほど上部旋回体3の旋回速度を大きくしてもよい。この場合、ブーム4は右操作レバー26Rのブーム上げ方向へのレバー操作量に応じた速度で上昇するが、上部旋回体3は左操作レバー26Lの右旋回方向へのレバー操作量に応じた速度とは異なる速度で旋回してもよい。
【0101】
或いは、自律制御部30Cは、上部旋回体3の旋回速度に応じてブーム4の上昇速度を半自動的に制御してもよい。例えば、上部旋回体3の旋回速度が大きいほどブーム4の上昇速度を大きくしてもよい。この場合、上部旋回体3は左操作レバー26Lの右旋回方向へのレバー操作量に応じた速度で旋回するが、ブーム4は右操作レバー26Rのブーム上げ方向へのレバー操作量に応じた速度とは異なる速度で上昇してもよい。
【0102】
或いは、自律制御部30Cは、上部旋回体3の旋回速度、及び、ブーム4の上昇速度の双方を半自動的に制御してもよい。この場合、上部旋回体3は左操作レバー26Lの右旋回方向へのレバー操作量に応じた速度とは異なる速度で旋回してもよい。同様に、ブーム4は右操作レバー26Rのブーム上げ方向へのレバー操作量に応じた速度とは異なる速度で上昇してもよい。
【0103】
また、自律制御部30Cは、ショベル100が排土動作中に、バケット角度β)に応じて、バケット6の開き速度が遅くなるように、バケット6の動作を制御する。
【0104】
次に、図5を参照して、コントローラ30がアタッチメントの動きを自律的に制御する機能(以下、「自律制御機能」とする。)の一例について説明する。図5は、自律制御機能の構成例を示すブロック図である。
【0105】
図5の例では、コントローラ30は、自律制御の実行に関する機能要素Fa~Ff及びF1~F6を有する。機能要素は、ソフトウェアで構成されていてもよく、ハードウェアで構成されていてもよく、ソフトウェアとハードウェアの組み合わせで構成されていてもよい。また、図5では、ショベル100が積み込み作業における排土動作を行う際の自律制御機能について示す。
【0106】
機能要素Faは、排土開始位置を算出するように構成されている。本実施形態では、機能要素Faは、物体検知装置70が出力する物体データに基づき、排土動作が実際に開始される前に、排土動作を開始させるときのバケット6の位置を排土開始位置として算出する。なお、排土開始位置は、基本的には、土砂が排土されるダンプトラックの荷台の上にある空間内にある位置として算出される
【0107】
具体的には、機能要素Faは、物体検知装置70が出力する物体データに基づき、ダンプトラックの荷台に既に積み込まれている土砂の状態を検出する。機能要素Faは、撮像装置80が撮像した画像に基づき、ダンプトラックの荷台に既に積み込まれている土砂の状態を検出してもよい。土砂の状態は、例えば、ダンプトラックの荷台のどの部分に土砂がどの程度積み込まれているか等である。そして、機能要素Faは、検出した土砂の状態に基づいて排土開始位置を算出する。但し、機能要素Faは、過去の排土動作が行われたときに姿勢記録部30Aが記録したショベル100の姿勢(姿勢検出装置の検出値)に基づいて排土開始位置を算出してもよい。
【0108】
機能要素Faは、ブーム上げ旋回動作の際に、ダンプトラックの荷台に既に積載されている土砂の状態、又は、ダンプトラックの状態等に基づき、算出した排土開始位置を補正するように構成されていてもよい。例えば、物体検知装置70及び撮像装置80の少なくとも一方の出力に基づいてダンプトラックの荷台の縁から土砂がこぼれ落ちたことを検知した場合、機能要素Faは、排土開始位置を荷台の縁から離れる方向に所定距離だけ移動させてもよい。その後の排土動作の際にダンプトラックの荷台の縁から土砂がこぼれ落ちるのを防止するためである。
【0109】
或いは、物体検知装置70及び撮像装置80の少なくとも一方の出力に基づき、誤操作等に起因してダンプトラックが僅かに(許容可能な所定距離未満の距離だけ)移動したことを検知した場合、機能要素Faは、ダンプトラックの移動方向及び移動量に応じて排土開始位置を補正してもよい。ダンプトラックの移動による排土開始位置のズレを相殺するためである。この構成により、ショベル100は、ダンプトラックが移動しなかった場合と同じ荷台上の位置に土砂を排土させることができる。この場合、後述の機能要素F1は、補正後の排土開始位置に応じて目標軌道を算出し直すように構成される。
【0110】
機能要素Fbは、ダンプトラックの状態及びダンプトラックを構成する各部の位置を算出するように構成されている。本実施形態では、機能要素Fbは、物体検知装置70が出力する物体データに基づき、ダンプトラックの荷台を構成する各部の位置を算出する。また、機能要素Fbは、物体検知装置70が出力する物体データに基づき、ダンプトラックの傾斜角等をダンプトラックの状態として算出する。
【0111】
機能要素Fcは、掘削終了位置を算出するように構成されている。本実施形態では、機能要素Fcは、直近の掘削動作を終了させたときのバケット6の爪先位置に基づき、掘削動作を終了させたときのバケット6の位置を掘削終了位置として算出する。具体的には、機能要素Fcは、後述の機能要素F2によって算出される現在のバケット6の爪先位置に基づいて掘削終了位置を算出する。なお、機能要素Fcは、姿勢検出装置、物体検知装置70、及び撮像装置80の少なくとも1つの出力に基づいて掘削終了位置を算出するように構成されていてもよい。
【0112】
機能要素Fdは、所定動作の開始を判定するように構成されている。本実施形態では、機能要素Fdは、操作圧センサ29が出力する操作データと、後述の機能要素F2によって算出される現在のバケット6の爪先位置とに基づき、ブーム上げ旋回動作を開始させることができるか否かを判定する。具体的には、機能要素Fdは、現在の爪先位置に基づき、ブーム4が上昇しているか否か、及び、バケット6が地表面(例えば、ショベル100の接地面を含む仮想水平面)よりも所定の鉛直距離だけ上方に位置するか否か等を判定する。そして、機能要素Fdは、ブーム4が上昇しており、且つ、バケット6が地表面よりも所定の鉛直距離だけ上方に位置すると判定した場合、ブーム上げ旋回動作を開始させることができると判定する。そして、機能要素Fdは、ブーム上げ旋回動作を開始させることができると判定した場合、操作圧センサ29が出力する操作データが後述の機能要素F3に入力されるようにする。
【0113】
機能要素Feは、排土動作の開始時における被積載物の重量を算出するように構成されている。本実施形態では、機能要素Feは、シリンダ圧センサ27の出力と、後述の機能要素F2によって算出される掘削アタッチメントATの現在の姿勢とに基づき、バケット6内に取り込まれた土砂等の重量を被積載物の重量として算出する。シリンダ圧センサ27は、例えば、ブームシリンダ7のボトム側油室における作動油の圧力を検出するセンサを含む。そして、機能要素Feは、算出した被積載物の重量を後述の機能要素F4に対して出力する。
【0114】
また、機能要素Feは、排土動作が開始されると、排土動作中におけるバケット6内の被積載物の重量の変化を予測する。より具体的には、機能要素Feは、目標軌道上の爪先の位置毎に、バケット6内の土砂の重量を予測した予測値を算出し、機能要素F4に対して出力する。被積載物の重量を予測の詳細は後述する。
【0115】
機能要素Ffは、各種の異常の有無を判定するように構成されている。本実施形態では、機能要素Ffは、物体検知装置70の出力に基づいて物体検知装置70の異常の有無を判定するように構成されている。また、機能要素Ffは、機能要素Fbの出力に基づいてダンプトラックの異常の有無を判定するように構成されている。具体的には、機能要素Ffは、例えば、誤操作等に起因してダンプトラックが許容可能な所定距離を超えて移動した場合に、ダンプトラックの状態が異常であると判定する。そして、機能要素Ffは、物体検知装置70の状態が異常であると判定した場合、又は、ダンプトラックの状態が異常であると判定した場合、後述の機能要素F4に対して指令を出力し、ショベル100の動きを減速させ或いは停止させる。
【0116】
機能要素F1は、目標軌道を生成するように構成されている。本実施形態では、機能要素F1は、物体検知装置70が出力する物体データと、機能要素Fcが算出した掘削終了位置とに基づいてバケット6の爪先が辿るべき軌道を目標軌道として生成する。物体データは、例えば、ダンプトラックの位置及び形状等、ショベル100の周囲に存在する物体に関する情報である。具体的には、機能要素F1は、機能要素Faが算出した排土開始位置と、機能要素Fbが算出したダンプトラック位置と、機能要素Fcが算出した掘削終了位置とに基づいて目標軌道を算出する。機能要素F1は、典型的には、ブーム上げ掘削動作が開始される度に、目標軌道を算出するように構成されている。すなわち、目標軌道は、典型的には、ブーム上げ掘削動作が開始される度に更新される。掘削終了位置及び排土開始位置も同様に、ブーム上げ掘削動作が開始される度に更新される。
【0117】
機能要素F2は、現在の爪先位置を算出するように構成されている。本実施形態では、機能要素F2は、ブーム角度センサS1が検出したブーム角度βと、アーム角度センサS2が検出したアーム角度βと、バケット角度センサS3が検出したバケット角度βと、旋回角速度センサS5が検出した旋回角度αとに基づき、バケット6の爪先の座標点を現在の爪先位置として算出する。機能要素F2は、現在の爪先位置を算出する際に、機体傾斜センサS4の出力を利用してもよい。
【0118】
機能要素F3は、次の爪先位置を算出するように構成されている。本実施形態では、機能要素F3は、操作圧センサ29が出力する操作データと、機能要素F1が生成した目標軌道と、機能要素F2が算出した現在の爪先位置とに基づき、所定時間後の爪先位置を目標爪先位置として算出する。
【0119】
機能要素F3は、現在の爪先位置と目標軌道との間の乖離が許容範囲内に収まっているか否かを判定してもよい。本実施形態では、機能要素F3は、現在の爪先位置と目標軌道との間の距離が所定値以下であるか否かを判定する。そして、機能要素F3は、その距離が所定値以下である場合、乖離が許容範囲内に収まっていると判定し、目標爪先位置を算出する。一方で、機能要素F3は、その距離が所定値を上回っている場合、乖離が許容範囲内に収まっていないと判定し、レバー操作量とは無関係に、アクチュエータの動きを減速させ或いは停止させる。
【0120】
機能要素F4は、爪先の速度に関する指令値を生成するように構成されている。本実施形態では、機能要素F4には、機能要素F2が算出した現在の爪先位置と、機能要素F3が算出した次の爪先位置と、機能要素Feからの出力と、が入力され、所定時間で現在の爪先位置を次の爪先位置に移動させるために必要な爪先の速度を爪先の速度に関する指令値(速度指令値)として算出する。
【0121】
このとき、本実施形態の機能要素F4は、バケット6に対する負荷の変化がバケット6の動作に反映されるように、バケット6の爪先の速度指令値を生成する。
【0122】
また、本実施形態の機能要素F4は、現在のバケット角度β(開き角度)に応じて、爪先の速度指令値を算出してよい。
【0123】
具体的には、機能要素F4は、機能要素Feから出力される、排土動作中の被積載物の重量の予測値を用いずに、爪先の速度指令値を算出してもよいし、機能要素Feから出力される、排土動作中の被積載物の重量の予測値を用いて爪先の速度指令値を算出してもよい。
【0124】
以下の説明では、排土動作中の被積載物の重量の予測値を用いずに、爪先の速度指令値を算出する方法を第1の方法とし、排土動作中の被積載物の重量の予測値を用いて爪先の速度指令値を算出する方法を第2の方法と呼ぶ。第1の方法と第2の方法のそれぞれの詳細は後述する。
【0125】
機能要素F5は、アクチュエータを動作させるための指令値を算出するように構成されている。本実施形態では、機能要素F5は、現在の爪先位置を目標爪先位置に移動させるために、機能要素F3が算出した目標爪先位置と、機能要素F4が算出した速度指令値とに基づき、ブーム角度βに関する指令値β1r、アーム角度βに関する指令値β2r、バケット角度βに関する指令値β3r、及び旋回角度αに関する指令値α1rを算出する。
機能要素F5は、ブーム4が操作されていないときであっても、必要に応じて指令値β1rを算出する。これは、ブーム4を自動的に動作させるためである。アーム5、バケット6、及び旋回機構2についても同様である。
【0126】
次に、図6を参照して、コントローラ30によるバケット6の動作の制御について説明する。図6は、バケット6の動作の制御について説明する図である。
【0127】
図6(A)~(C)は、バケット6に搭載された土砂Dをダンプトラックの荷台60に排土する排土動作におけるショベル100の状態を示す。具体的には、図6(A)は、排土動作を開始するときのショベル100の状態を示し、図6(B)は、排土動作中のショベル100の状態を示し、図6(C)は、排土動作が完了したショベル100の状態を示す。
【0128】
はじめに、第1の方法について説明する。第1の方法では、コントローラ30は、バケット角度βが所定の角度となると、バケット6の開き速度が、それまでの開き速度よりも遅くなるように、爪先の速度指令値を生成する。
【0129】
本実施形態のコントローラ30では、例えば、現在のバケット角度βが所定の角度θ1以上であった場合に、バケット6の開き速度が、それまでの開き速度よりも遅くなるように、爪先の速度指令値を生成してよい。この場合、機能要素F5は、バケット6の開き速度が、それまでの開き速度よりも遅くなるように、バケット角度βに関する指令値β3rを生成する。
【0130】
より具体的には、機能要素F5は、バケットシリンダ9に供給される作動油の流量が、それまでバケットシリンダ9に供給されていた作動油の流量よりも少なくなるように、バケット角度βに関する指令値β3rを生成する。ここで、バケットシリンダ9に供給される作動油の流量とは、単位時間当たりの右メインポンプ14Rの吐出量である。
【0131】
所定の角度θ1は、予め決められた角度であってよい。所定の角度θ1は、例えば、安息角であってもよい。安息角とは、バケット6に積載された土砂Dが滑り出さない限界の角度である。
【0132】
また、コントローラ30は、例えば、バケット角度βが所定の角度θ1以上となった後は、排土動作が完了するまでの間に、段階的にバケット6の開き速度が遅くなるように、バケット角度βに関する指令値β3rを生成してよい。
【0133】
具体的には、コントローラ30は、バケット角度βに対し、排土動作が完了したときのバケット角度βである角度θ2となるまでの間に、複数の閾値を設け、バケット角度βが各閾値以上となる度に、バケット6の開き速度が遅くなるように、バケット角度βに関する指令値β3rを生成してよい。
【0134】
本実施形態では、このように、バケット6の開き速度を制御することで、バケット6の爪先にダンプトラックの荷台60に近づく速度が遅くなるため、バケット6とダンプトラックの荷台60との接触を回避できる可能性が高まり、安全性を向上させることができる。
【0135】
次に、第2の方法について説明する。第2の方法では、コントローラ30は、被積載物の重量の予測値を用いて爪先の速度指令値を算出する方法について説明する図である。
【0136】
バケット6に積載された土砂Dは、図6(A)~(C)に示すように、排土動作が開始されると、重量が徐々に減少していく。そこで、第2の方法では、機能要素F4において、バケット6の内に残存している土砂Dの重量を予測し、予測した土砂Dの重量を用いて、爪先の速度指令値を算出する。
【0137】
言い換えれば、第2の方法では、バケット角度βに応じたバケット6に対する負荷の予測値を算出し、予測値を用いてバケット6の開き速度を制御する。このように、バケット6の開き速度を制御することで、排土動作中におけるバケット6に対する負荷の変化が反映された開き速度でバケット6を開くことができる。
【0138】
以下に、図7を参照して、バケット6内に残存している土砂Dの重量の予測について説明する。本実施形態では、土砂Dの重量の予測に、バケット6の形状と、安息角θsを用いる。図7は、バケット内に残存している土砂の重量の予測について説明する図である。
【0139】
図7(A)は、バケット6の形状を説明する図である。図6(A)に示すように、本実施形態では、バケット6の形状を、極座標形式l=f(θ)と表現する。lは、バケット6の爪先からバケットリンク機構6aまでの直線距離である。θは、水平面とバケット6の背面との角度であり、バケット角度βから導出される。
【0140】
このとき、バケット6内の土砂Dが安息角θsで安定すると仮定すると、バケット6内の土砂Dの体積は、以下の式1で算出される。なお、式1において、角度θgは、安息角θsと、角度θとが求められる。
【0141】
【数1】
本実施形態では、コントローラ30は、機能要素Feにより、現在のバケット角度βと安息角θsとから角度θgを求め、式1により算出される土砂の体積に密度を掛けた値を、バケット6内に残存している土砂Dの重量の予測値とする。
【0142】
本実施形態では、このように、バケット6の形状と、排土動作中におけるバケット6のバケット角度βと、を用いてバケット6に対する負荷の予測値を算出する。言い換えれば、本実施形態の第2の方法では、エンドアタッチメントの形状と、エンドアタッチメントの開き角度とに基づき、エンドアタッチメントに対する負荷の予測値を求める。
【0143】
また、第2の方法では、コントローラ30は、機能要素Feにより算出されたバケット6内の土砂Dの重量の予測値を機能要素F4へ入力し、機能要素F4において、予測値と目標軌道とに基づき、爪先の速度指令値を求める。
【0144】
土砂Dの体積は、図6(B)、(C)に示すように、バケット6が開くにつれて、減少していく。したがって、土砂Dの重量(バケット6に対する負荷)の予測値は、バケット6が開くにつれて、減少していく。このため、本実施形態では、バケット6に対する負荷の予測値を用いて爪先の速度指令値を求めることで、排土動作のバケット6に対する負荷の減少が反映された速度指令値を生成できる。
【0145】
なお、本実施形態の機能要素F4は、ショベル100の質量、慣性モーメント、運動方程式に関するパラメータを有するモデルにより実現されてもよい。モデルは、目標軌道と、バケット6内の土砂Dの重量の予測値とを入力とし、爪先の速度指令値を出力とするモデルであってよい。
【0146】
本実施形態のコントローラ30は、機能要素F5により、モデルから出力される爪先の速度指令値にしたがって、バケット角度βに関する指令値β3rを生成する。
【0147】
言い換えれば、コントローラ30は、モデルから出力された爪先の速度指令値にしたがって、バケットシリンダ9に供給される作動油の流量を制御する。
【0148】
本実施形態では、このように、バケット6の動作を制御することで、排土動作中の被積載物の重量の変化をバケット6のバケット角度βに関する指令値β3rに反映させることができ、バケット6が過度に開きすぎることを抑止できる。さらに、本実施形態によればバケット6の開きすぎにより、バケット6がダンプトラックの荷台60に接触するリスクを低減させることができ、バケット6の動作を適切に制御することができる。したがって、本実施形態によれば、作業の安全性を向上させることができる。
【0149】
なお、本実施形態では、排土動作において、バケット6の動作を制御する形態を説明したが、本実施形態は、排土動作以外において適用されてもよい。特に、上述した第1の方法は、バケット6内の被積載物の有無に関わらず、バケット6の開き動作を行う場合に適用されてよい。
【0150】
また、上本実施形態のコントローラ30は、例えば、ショベル100の外部の装置に設けられた制御部であってもよい。
【0151】
具体的には、コントローラ30は、ショベル100を遠隔制御するための支援装置や、ショベル100を管理する管理装置の制御部によって実現されてもよい。
【0152】
その場合、ショベル100は、例えば、無線通信ネットワーク等の通信ネットワークを通じ、コントローラ30を有する管理装置に接続されてよい。
【0153】
また、本実施形態では、ショベル100を作業機械の一例としたが、作業機械はショベル100に限定されない。本実施形態は、排土動作を行う作業機械であれば、どのような作業機械にも適用することができる。
【0154】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳説した。しかしながら、本発明は、上述した実施形態に制限されることはない。上述した実施形態は、本発明の範囲を逸脱することなしに、種々の変形、置換等が適用され得る。また、別々に説明された特徴は、技術的な矛盾が生じない限り、組み合わせが可能である。
【符号の説明】
【0155】
1 下部走行体
2 旋回機構
3 上部旋回体
4 ブーム
5 アーム
6 バケット
30 コントローラ
100 ショベル
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5
図6
図7