(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155513
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】レーザ切断加工方法及びレーザ切断加工装置
(51)【国際特許分類】
B23K 26/38 20140101AFI20241024BHJP
B23K 26/082 20140101ALI20241024BHJP
B23K 26/402 20140101ALI20241024BHJP
B23K 26/142 20140101ALI20241024BHJP
【FI】
B23K26/38 Z
B23K26/082
B23K26/402
B23K26/142
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023070290
(22)【出願日】2023-04-21
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】523152662
【氏名又は名称】株式会社EX-Fusion
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 治子
(74)【代理人】
【識別番号】100227673
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 光起
(72)【発明者】
【氏名】高橋 謙次郎
(72)【発明者】
【氏名】沓名 宗春
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168AD07
4E168CB04
4E168DA02
4E168DA28
4E168DA32
4E168EA15
4E168EA17
4E168FB01
4E168FB05
4E168JA02
4E168JA16
4E168JA17
4E168JA18
4E168JA23
4E168JA25
(57)【要約】
【課題】レーザ切断方法において、加工時間の短縮と、加工品質の向上とを両立させる。
【解決手段】母材B上でレーザビームLBをワブリング走査して、母材Bを切断する切断ステップと、切断ステップでレーザビームLBが照射されて生じる母材Bの切断面XにレーザビームLBを走査して、切断面Xから切断幅方向に所定量だけ母材Bを除去する除去ステップとを備え、除去ステップで母材Bに照射されるレーザビームLBのパワー密度が、切断ステップで母材Bに照射されるレーザビームLBのパワー密度よりも小さくなるようにした。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザビームを、ワブリングパターンを描かせながら所望の切断方向に走査して母材を切断する切断ステップと、前記母材の切断面にレーザビームをワブリングパターンを描かせながら照射して、前記切断面から切断幅方向に所定量だけ該母材を除去する除去ステップとを有し、前記除去ステップにおいて前記母材に照射されるレーザビームのパワー密度が、前記切断ステップにおいて前記母材に照射されるレーザビームのパワー密度よりも低いことを特徴とするレーザ切断加工方法。
【請求項2】
前記切断ステップにおけるレーザビームのワブリングパターン径よりも、前記除去ステップにおけるレーザビームのワブリングパターン径が大きく設定されている請求項1記載のレーザ切断加工方法。
【請求項3】
前記母材がCFRPである請求項1記載のレーザ切断加工方法。
【請求項4】
レーザビームの照射とともに、レーザビームの焦点に向かってアシストガスを噴射するアシストガス噴射ステップを更に有している請求項1記載のレーザ切断加工方法。
【請求項5】
レーザビームを発振するレーザ発振器を備え、
前記レーザ発振器が発振したレーザビームを、ワブリングパターンを描かせながら所望の切断方向に走査して母材を切断する切断ステップと、前記母材の切断面にワブリングパターンを描かせながらレーザビームを照射して、前記切断面から切断幅方向に所定量だけ該母材を除去する除去ステップとを実行し、
前記除去ステップにおいて前記母材に照射されるレーザビームのパワー密度が、前記切断ステップにおいて前記母材に照射されるレーザビームのパワー密度よりも低いことを特徴とするレーザ切断加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザビームによって母材を切断するレーザ切断加工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に示すように、CFRP材料等の繊維強化複合材料にレーザビームを照射して切断するレーザ切断加工方法が知られている。
【0003】
この種のレーザ切断加工方法において、加工時間を短くすべくレーザビームの母材照射面におけるパワー密度(照射面での単位時間、単位面積当たりのレーザビームの熱量または光量)を高くすると、母材の切断面に生じる熱影響部(以下、HAZという。)が大きくなる、すなわち加工品質が低下するという不具合が生じる。一方、HAZを低減すべくパワー密度を小さくすると、加工時間が長くなるという不具合が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明は、上述した課題を解決すべくなされたものであり、加工時間の短縮と、加工品質の担保とを両立させることをその主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1) レーザビームを、ワブリングパターンを描かせながら所望の切断方向に走査して母材を切断する切断ステップと、前記母材の切断面にレーザビームを照射して、前記切断面から切断幅方向に所定量だけ該母材を除去する除去ステップとを有し、前記除去ステップにおいて前記母材に照射されるレーザビームのパワー密度が、前記切断ステップにおいて前記母材に照射されるレーザビームのパワー密度よりも低いことを特徴とするレーザ切断加工方法。
【0007】
このような切断加工方法によれば、切断ステップにおいて、レーザビームがワブリングパターンを描いているので、CFRPなどの繊維が複数方向に延びている母材であっても無理なく切断できる。
【0008】
また、切断ステップにおいて、ワブリングパターンでレーザビームを照射するので、例えば直線状にレーザビームを照射する場合と比べ、切断面へのビーム照射時間を短くできるうえ、ビーム照射領域へ効率的にアシストガスを噴射供給できるため、ビーム照射時に母材から発生するプルーム等を速やかに除去でき、HAZの生成を可及的に抑制することができる。
【0009】
さらに、切断時間の短縮を促進すべく、切断ステップにおけるレーザビームのパワー密度を高くしても、前述したように、そもそも大きなHAZ領域が生成されないので、レーザビームのパワー密度を小さくした次の除去ステップでそのHAZを短時間で除去でき、加工品質を向上できるうえ、切断ステップと除去ステップとを合わせた切断加工のトータル時間が増大することもない。
【0010】
すなわち、本発明によれば、切断ステップと除去ステップとを合わせたトータルの切断加工時間を短く担保でき、かつ、切断面でのHAZが非常に少ない、高い加工品質をも担保できる。
(2) 前記除去ステップにおいて、レーザビームをワブリングパターンを描かせながら母材に照射する(1)記載のレーザ切断加工方法。
【0011】
このようなものであれば、切断ステップと除去ステップとで、装置や制御態様の共通化が可能となり、構成の簡単化を図れるとともに、各ステップ間での段取り替え時間を短縮できる。
【0012】
(3) 前記切断ステップにおけるレーザビームのワブリングパターン径よりも、前記除去ステップにおけるレーザビームのワブリングパターン径が大きく設定されている(1)または(2)記載のレーザ切断加工方法。
これならば、除去ステップを実行する際のレーザビームの走査条件の設定が簡便になる。
(4) 前記母材がCFRPである(1)ないし(3)いずれか記載のレーザ切断加工方法。
【0013】
これならば、前述したように、複数方向に延びている繊維を無理なく切断でき、他の従来の切断加工方法と比較して、短時間、高品質という本発明の効果がより顕著なものとなる。
【0014】
(5) レーザビームの照射とともに、レーザビームの焦点に向かってアシストガスを噴射するアシストガス噴射ステップを更に有している(1)ないし(4)いずれか記載のレーザ切断加工方法。
【0015】
これならば、ワブリングパターンによるレーザビーム照射が行われるので、例えば直線状にレーザビームが照射される場合と比べ、レーザビームの焦点付近にアシストガスを効率的に供給することができる。したがって、熱ダレを大きく低減させることができ、プルーム等の除去能も大幅に向上する。その結果、切断加工の高速化と高品質化をさらに推し進めることができる。
【発明の効果】
【0016】
このように構成した本発明によれば、母材に対する切断加工時間の短縮と、切断加工品質の向上とを両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】一実施形態におけるレーザ切断装置の全体構成を示す模式図。
【
図2】同実施形態のレーザビームのガルバノヘッドによる照射軌跡を示す照射軌跡図。
【
図3】同実施形態の切断ステップにおいて、レーザビームの照射によって生成された母材の切断溝とワブリングパターンを示す平面図。
【
図4】同実施形態の切断ステップにおいて、レーザビームの照射によって生成された母材の切断溝とHAZを示す断面図。
【
図5】同実施形態の切断ステップにおいて、レーザビームの照射によって生成された母材の切断溝とHAZを示す平面図。
【
図6】同実施形態の除去ステップにおいて、除去されたHAZを示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係るレーザ切断装置100の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0019】
<装置構成>
本実施形態のレーザ切断装置100は、
図1に示すように、レーザビームLBによって、CFRP等の母材Bを切断するために用いられるものであり、レーザ発振器1と、レーザ発振器1から射出されるレーザビームLBを集光して母材Bに照射する光学機構2と、レーザビームBの照射領域にアシストガスを噴射するガス噴射機構3と、母材Bを支持する母材支持機構4と、制御装置(図示しない)とを備えている。
なお、母材としては、CFRPに限られず、鉄鋼などの金属材料や、木材、アクリルなどの非金属材料、あるいは複合材料等であっても構わない。
次に各部を説明する。
【0020】
(1)レーザ発振器
前記レーザ発振器1は、連続波発振動作をするものであり、ここでは、ファイバーレーザ発振器である。なお、レーザ発振器1としては、他の種々のものを用いて構わない。
【0021】
(2)光学機構
前記光学機構2は、レーザ発振器1で発生したレーザビームLBを伝送する伝送光学ユニット21と、伝送光学機構21によって伝送されるレーザビームLBを母材Bに集光するように照射する光射出ユニット22とを備える。
前記伝送光学ユニット21は、ここでは、光ファイバーで構成されているが、反射ミラーなどによって構成されてもよい。
【0022】
前記光射出ユニット22は、ガルバノスキャナを搭載するガルバノヘッドと称され、レーザビームLBを任意の方向に向かって照射できるものであるが、その他の方式のものでもかまわない。
【0023】
(3)ガス噴射機構
前記ガス噴射機構3は、N2や圧縮空気などのアシストガスを高速で噴射するノズル31と、このノズル31の位置および姿勢を可変に保持するノズル保持体32とを備えたものである。ここでのノズル31は、指向性の高いラバールノズルを用いているが、これに限られるものではない。
【0024】
(4)母材支持機構
前記母材支持機構4は、ステージ41と、このステージ41を移動させる駆動装置(図示しない)を備える。ステージ41の上面には母材Bが固定される。駆動装置は、ステージ41を支持するとともに、所定方向に水平駆動するものである。
【0025】
(5)制御装置
前記制御装置は、CPU、メモリ、I/Oインタフェースなどを備えた所謂コンピュータやPLDなどと称されるものである。そして、前記メモリに記憶された所定のプログラムに従ってCPUおよびその周辺機器が協動することにより、前記レーザ発振器1、光学機構2、ガス噴射機構3および母材支持機構4にそれぞれ制御信号を出力してこれらを協調動作させる。
【0026】
<動作>
次に、上述した構成のレーザ切断装置100の使用方法および動作について説明する。
【0027】
(1)初期設定
このレーザ切断装置100を使用するにあたって、ユーザは、まず前記ステージ41上に母材B(ここでは等厚平板状のCFRP)をセットするとともに、前記制御装置に対し、切断開始位置、切断終了位置、切断深度、切断方向等の切断加工パラメータを設定する。
【0028】
そして、ユーザが、レーザ切断装置100の動作を開始させると、このレーザ切断装置100は、切断ステップおよび除去ステップを行って、母材Bを切断加工する。
次に、各ステップについて詳述する。なお、特に記載がない場合は、以下の動作は前記制御装置からの制御信号により自動的に行われる。
【0029】
(2)切断ステップ
まず、ガルバノヘッド22が移動して、レーザビームLBの焦点が、平面視、母材Bの切断開始位置であって、その表面から所定深さとなるように設定される。この深さが1回の走査あたりの切断深度、すなわち単位切断深度である。
【0030】
次に、
図2に示すように、レーザビームLBが、その焦点が所定半径の円を描くようにガルバノヘッド22から射出される。これとともに、ステージ41が、切断方向と逆向きに定速で移動する。なお、前記所定半径、円を描く周波数(ワブリング周波数)、ステージ速度、レーザ出力などは予め設定されているし、ユーザがこれを変更可能にも構成されている。
【0031】
このことにより、
図3に示すように、母材B上でレーザビームLBがワブリングパターンを描きながら切断方向に走査され、当該母材Bの表面における切断開始位置から切断終了位置に亘って、前記所定深さで前記所定半径の倍の幅の切断溝が形成される。なお、この切断溝において、レーザビームLBの走査経路を挟んで対向して形成される2つの面を切断面Xといい、この2つの切断面Xの距離を切断幅とする。
【0032】
このとき、ノズル31からアシストガスが、平面視、切断方向に沿っており、側面から視て、ノズル31の斜め後ろや斜め前から噴射され、レーザビームLBの照射によって加熱され融解又は蒸発又はプラズマ化した母材Bが吹き飛ばされて除去される。なお、アシストガスの噴射方向は、前述に限られず、例えば、平面視、切断方向とは異なる方向であってノズル31の横方向や斜め方向であってもよい。
【0033】
このようにして、レーザビームLBが切断終了位置に到達すると、レーザビームLBの焦点が溝底から前記所定深さとなるように変更され、今度は、ステージ41が逆方向に移動して、レーザビームLBが切断終了位置から切断開始位置に向かってワブリングパターンを描きながら走査される。このことにより、溝深さが前記単位切断深度だけ深くなる。
そして、溝深さが最初に設定された切断深度となるまで、前述した動作が繰り返される(マルチパス加工)。
【0034】
なお、前記切断深度を母材Bの厚み以上とすれば、切断溝が母材Bを貫通するし、厚み未満であれば、有底溝となる。なお、本書では、母材Bを貫通するしないにかかわらず、いずれも「切断」として定義される。
この切断ステップによって、
図3~
図5に示すように、切断面X周辺の母材Bに加熱によって発生したHAZ(熱影響部)が発生する。
【0035】
このとき生じるHAZの大きさは、パワー密度が大きいほど、大きくなる。ここでパワー密度とは、レーザビームLBから母材B表面の単位面積に単位時間あたりに流入する熱量(W/m2)であり、このパワー密度は、例えばレーザビームLBの出力に比例する。
【0036】
(3)除去ステップ
前記切断ステップが終了すると、前記HAZを除去するための除去ステップが行われる。
この除去ステップでは、レーザビームLBのワブリング幅、すなわち前記円の半径が、
図5に示す切断ステップでのワブリング幅よりも所定量だけ大きい第2所定半径となるように設定される。具体的には、
図6に示すように、平面視、切断ステップで母材Bの切断面から幅方向に生じるHAZの領域分は、最低限、半径が大きくなるように設定される。
【0037】
また、母材Bに照射されるレーザビームBのパワー密度が、前記切断ステップよりも小さくなるように、ステージ41の移動速度、ワブリング周波数およびレーザ出力のいずれか1以上が調整される。
【0038】
さらに、レーザビームLBの焦点が、平面視、母材Bの切断開始位置であって、その表面から所定深さとなるように設定される。この深さが、1回の走査あたりの母材除去深度、すなわち単位除去深度である。この単位除去深度は、単位切断深度と等しく設定してもよいし、異ならせてもよい。なお、加工品質の観点から、ここでは単位除去深度が単位切断深度よりも小さくなるように設定されている。
【0039】
そして、レーザビームLBが、その焦点が第2所定半径の円を描くようにガルバノヘッド22から射出されるとともに、ステージ41が、切断方向と逆向きに定速で移動する。このことにより、平面視、切断面から幅方向に一定距離分の母材Bが、深さ方向には、単位除去深度分だけ除去される。
【0040】
レーザビームLBが切断終了位置に到達すると、レーザビームLBの焦点が単位除去深度分だけさらに深くなるように変更され、今度は、ステージ41が逆方向に移動して、レーザビームLBが切断終了位置から切断開始位置に向かってワブリングパターンを描きながら走査される。このことにより、除去深さが前記単位除去深度だけ深くなる。
そして、除去深度が最初に設定された切断深度となるまで、前述した動作が繰り返される。
【0041】
(4)試験例
本実施形態に係るレーザ切断装置100を用いて効果確認試験を行った際の試験条件と試験結果とを以下に示す。
[試験条件]
・母材
種類:CFRP
厚み:3.0(mm)
・レーザ発振器
種類:ファイバーレーザ発振器
ビームモード:シングルモード
出力:2.8kW(MAX:3kW)
波長:基本波(1μm)
スポット径:φ60μm
・ガルバノスキャナ
種類:3Dガルバノスキャナ
ワークとの距離:~250mm
スキャン範囲:150×130
・アシストガス
種類:
ガス圧力:0.8MPa
ガス流量:1000L/分
【0042】
【0043】
【0044】
切断除去に係るトータルの加工速度は、3mm厚のCFRPにおいて十分な速度である0.714m/分であり、HAZも、切断ステップ単独での150~200から、50μm程度という極めて小さな大きさにまで抑えることができた。
【0045】
<効果>
切断ステップにおいて、レーザビームLBがワブリングパターンを描いているので、CFRPなどの繊維が複数方向に延びている母材Bであっても無理なく切断できる。
【0046】
また、切断ステップにおいて、ワブリングパターンでレーザビームLBを照射するので、例えば直線状にレーザビームを照射する場合と比べ、切断面へのビーム照射時間を短くできるうえ、ビーム照射領域へ効率的にアシストガスを噴射供給できるため、ビーム照射時に母材から発生するプルーム等を速やかに除去でき、HAZの生成を可及的に抑制することができる。
【0047】
さらに、切断時間の短縮を促進すべく、切断ステップにおけるレーザビームLBのパワー密度を高くしても、前述したように、そもそも大きなHAZ領域が生成されないので、レーザビームLBのパワー密度を小さくした次の除去ステップでそのHAZを短時間で除去でき、かつ、
図6の除去結果に示すように、除去ステップで再生成されるHAZを非常に小さなものにできる。
したがって、加工品質を向上できるうえ、切断ステップと除去ステップとを合わせた切断加工のトータル時間が増大することもない。
【0048】
また、前記除去ステップにおいて、レーザビームLBを、ワブリングパターンを描かせながら母材に照射しているので、切断ステップと除去ステップとで、装置や制御態様の共通化が可能となり、構成の簡単化を図れるとともに、各ステップ間での段取り替え時間を短縮できる。
【0049】
<他の実施形態>
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
前記実施形態は、切断ステップS1及び除去ステップS2において、ガルバノヘッド22からレーザビームLBを円形にワブリング走査するものであったが、円形以外の形でワブリング走査しても良い。例えば、レーザビームの焦点を母材上で、楕円形状に走査してもよい。
【0050】
前記実施形態は、切断ステップ及び除去ステップにおいて、一定のワブリング幅及び一定の周波数でワブリング走査を行うものであったが、各ステップの走査中にこれらを変化させても良い。
【0051】
前記実施形態では、除去ステップにおいても、レーザビームをワブリング走査していたが、ワブリング走査せずに、例えば直線状にレーザビームを照射し、切断面から切断幅方向に所定量だけ母材Bを除去するように構成してもよい。
【0052】
前記実施形態においては、アシストガスの噴射態様について言及しなかったが、切断ステップS1において、レーザビームLBの照射とともに、ガス噴射機構3からレーザビームLBの焦点から10mm以内の近距離から前記焦点にアシストガスを噴射するのがよい。
【0053】
これならば、レーザビームLBの焦点付近に生じる熱ダレやプルームなどの蒸発除去を阻害するものを勢いよく除去することができるので、加工速度が向上し、加工時間が短くなることでレーザビームLBを照射する時間も短くなり結果として生じるHAZを低減することもできる。
前記実施形態のレーザ発振器1は、連続波発振動作をするものであったが、パルス発振動作をするものであっても良い。
前記実施形態では、マルチパス加工を行っていたが、いずれかまたは両方のステップにおいて、シングルパス加工を行うようにしても良い。
【0054】
前記実施形態では、直線状に切断していたが、曲線状に切断してもよい。また、前記レーザ切断装置を、穴あけや、スクライビング、トリミング等に用いてもよい。レーザビームを利用した除去加工全般において、加工面のHAZを低減しつつ、加工速度を向上させるために利用できる。例えば、母材の外縁部レーザビームで除去して、外縁の成型などに用いても良い。
【0055】
前記実施形態では、母材を移動させて走査していたが、固定された母材に対し、駆動装置にて駆動させずに、加工ヘッド側を駆動してもよい。要するに、母材とレーザビームとの相対的な移動により走査されるように構成されていればよい。
前記実施形態では、切断ステップの後に、除去ステップを実行していたが、切断ステップと除去ステップとを交互に行うなどしてもよい。
【符号の説明】
【0056】
100・・・レーザ切断装置
B ・・・母材
X ・・・切断面
LB ・・・レーザビーム
1 ・・・レーザ発振器
2 ・・・光学機構
21 ・・・伝送光学機構
22 ・・・ガルバノヘッド
3 ・・・ガス噴射機構
4 ・・・母材支持機構