(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155524
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】車両用空調システム
(51)【国際特許分類】
B60H 1/00 20060101AFI20241024BHJP
B60H 1/22 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
B60H1/00 101Z
B60H1/22 651C
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023070309
(22)【出願日】2023-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】000001845
【氏名又は名称】サンデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】弁理士法人エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大庭 健三
(72)【発明者】
【氏名】高沢 修
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 渉
(72)【発明者】
【氏名】蓼沼 厚博
【テーマコード(参考)】
3L211
【Fターム(参考)】
3L211AA10
3L211AA11
3L211BA01
3L211CA19
3L211EA80
3L211FA03
(57)【要約】
【課題】車両のユーザの乗車時刻を正確に予測することで、予測した乗車時刻に応じて、乗車時の快適性を維持すると共に車載機器の性能を確保した最適なプレ温調を実行する。
【解決手段】車両に搭載され、冷媒回路と冷媒回路の冷媒と熱交換可能な熱媒体が循環する熱媒体回路とを有し、車両のユーザの乗車前に予め車室内の空調及び車載機器の温調の何れか一方又は両方を行うプレ温調を実行可能な車両用空調装置と、ユーザの行動を示す行動情報を取得し、行動情報が予め定められたトリガ情報である場合に、ユーザの乗車時刻を予測し、乗車時刻に応じてプレ温調の開始時刻を決定し、開始時刻にプレ温調を開始するように車両用空調装置に指示を行う制御装置と、を備えた車両用空調システムを提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、冷媒回路と前記冷媒回路の冷媒と熱交換可能な熱媒体が循環する熱媒体回路とを有する車両用空調装置と、
前記車両用空調装置を制御する制御装置と、を備えた車両用空調システムであって、
前記車両用空調装置は、
前記車両のユーザの乗車前に予め車室内の空調及び車載機器の温調の何れか一方又は両方を行うプレ温調を実行可能であり、
前記制御装置は、
ユーザの行動を示す行動情報を取得する行動情報取得部と、
前記行動情報が、予め定められたトリガ情報である場合に、ユーザの乗車時刻を予測する乗車予測部と、
前記乗車時刻に応じてプレ温調の開始時刻を決定し、前記開始時刻にプレ温調を開始するように前記車両用空調装置に指示を行うプレ温調指示部と、
を備えた車両用空調システム。
【請求項2】
前記トリガ情報は、ユーザが前記車両の乗車前に必ず行う必須行動を示す行動情報のうち、予め定めた特定の行動情報である、請求項1記載の車両用空調システム。
【請求項3】
前記乗車予測部は、前記車両のユーザの行動ルーチンを参照し、前記行動情報が前記行動ルーチンに含まれる前記トリガ情報である場合に、前記行動ルーチンに基づいて、ユーザの乗車時刻を予測する請求項1記載の車両用空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空調システムに関し、特に、車両のユーザの乗車前に予め車室内の空調や車載機器の温調を行うプレ温調機能を有する車両用空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載された車両用空調システムにおいて、車両のユーザによる操作やタイマ設定等により、ユーザの乗車前に、車室内を予め空調するプレ空調を行う技術が提案されている(例えば、特許文献1)。プレ空調は、ユーザの乗車時における快適性を向上させるものであることから、ユーザの乗車時刻(乗車のタイミング)に合わせて、車室内が目標温度ないしはこれに近い温度となるように実行されることが望ましい。
【0003】
また、バッテリから供給される電力によって走行するハイブリッド自動車(HV:Hybrid Vehicles、PHV:Plug-in Hybrid Vehicles)や電気自動車(EV:Electric Vehicles)等の車両では、バッテリの性能を確保して劣化を抑制するために、車両の走行前に、バッテリが所望の温度となるように予め温調することが望ましい。
【0004】
前述のようなバッテリを搭載した車両に適用される車両用空調システムとして、冷媒回路と熱媒体回路とを備えたものが提案されている(例えば、特許文献2)。このような車両用空調システムでは、冷媒回路を駆動することで得られる放熱と吸熱やバッテリを含む車載機器の廃熱などを、熱媒体回路によって各所に移動させることで、バッテリを含む車載機器の温調、前述のプレ空調及び走行中の車室内の空調を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5399333号公報
【特許文献2】特開2022-180136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
車両用空調システムが、前述のような冷媒回路の熱を熱媒体回路の熱媒体を介して車室内の空調及び車載機器の温調に用いるシステムである場合には、熱媒体を介さずに冷媒回路の熱をそのまま車室内の空調や車載機器の温調に用いる場合に比して、即暖及び即冷に課題がある。すなわち、冷媒回路と熱媒体回路とを併用する車両用空調システムでは、冷媒回路のみを用いた車両用空調システムに比して、プレ空調や走行前のバッテリ温調(以下、プレ空調と走行前のバッテリ等車載機器の温調とを合わせて「プレ温調」という)の実行時間が長期化し、その分、プレ温調に要する消費電力量が大きくなってしまうという問題がある。
【0007】
このため、冷媒回路と熱媒体回路とを併用する車両用空調システムにおいて、プレ温調を行う場合には、ユーザの予定した乗車時刻に合わせてプレ温調を開始させるなど、プレ温調の実行のタイミング(実行開始時刻)や実行時間等を最適化することが求められる。
これに対して、ユーザの乗車時刻を固定化し、乗車時刻から逆算した時刻に手動で又はタイマ設定等によりプレ温調を開始させることもできるが、乗車時刻を固定化すると、ユーザにとっては乗車前の行動が制限されてストレスを感じてしまうことがある。また、ユーザによる手動での設定の場合には、設定に手間を要してしまうことに加え、設定をし忘れてしまう場合もある。さらに、タイマ設定等による自動設定の場合には、乗車しない場合にプレ温調の実行が無駄になってしまう。
【0008】
本発明は、このような問題に対処することを課題としている。すなわち、車両用空調システムにおいて、車両のユーザの乗車時刻を正確に予測することで、予測した乗車時刻に応じて、乗車時の快適性を維持すると共に車載機器の性能を確保した最適なプレ温調を実行すること、などが本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような課題を解決するために、本発明の一態様は、以下の構成を具備する。
すなわち、本発明の一態様に係る車両用空調システムは、車両に搭載され、冷媒回路と前記冷媒回路の冷媒と熱交換可能な熱媒体が循環する熱媒体回路とを有する車両用空調装置と、前記車両用空調装置を制御する制御装置と、を備えた車両用空調システムであって、前記車両用空調装置は、前記車両のユーザの乗車前に予め車室内の空調及び車載機器の温調の何れか一方又は両方を行うプレ温調を実行可能であり、前記制御装置は、ユーザの行動を示す行動情報を取得する行動情報取得部と、前記行動情報が、予め定められたトリガ情報である場合に、ユーザの乗車時刻を予測する乗車予測部と、前記乗車時刻に応じてプレ温調の開始時刻を決定し、前記開始時刻にプレ温調を開始するように前記車両用空調装置に指示するプレ温調指示部と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
このような特徴を備えた本発明の車両用空調システムでは、車両のユーザの乗車時刻を正確に予測することで、予測した乗車時刻に応じて、乗車時の快適性を維持すると共に車載機器の性能を確保した最適なプレ温調を実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係る車両用空調システムの概略構成を示す参考図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る車両用空調システムにおける車両用空調装置を搭載した車両の概略構成を示す参考図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る車両用空調システムにおける制御装置の概略構成を示す参考図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る車両用空調システムにおいて、制御装置において生成される行動情報を複数グループに分類して生成されたデータテーブルの例である。
【
図5】本発明の実施形態に係る車両用空調システムにおいて、制御装置において生成される行動ルーチン(タイムチャート)の例である。
【
図6】本発明の実施形態に係る車両用空調システムにおいて、制御装置における行動ルーチンを生成に係る処理を示すフローチャートである。
【
図7】本発明の実施形態に係る車両用空調システムにおいて、制御装置における車両用空調装置への制御(プレ温調の開始指示)に係る処理を示すフローチャートである。
【
図8】本発明の実施形態の変形例に係る車両用空調システムにおける制御装置の概略構成を示す参考図である。
【
図9】本発明の実施形態の変形例に係る車両用空調システムにおいて、制御装置における車両用空調装置への制御(プレ温調の開始指示)に係る処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の説明において、同一の符号は同一の機能の部位を示しており、各図における重複説明は適宜省略する。
【0013】
図1は、本実施形態に係る車両用空調システム100の一例を示す参考図である。本実施形態に係る車両用空調システム100は、バッテリから供給される電力によって走行する車両1と、車両1とネットワークNWを介して相互に通信を行うことにより車両1に搭載された車両用空調装置5を制御する制御装置2とを備えている。
【0014】
本実施形態に係る車両用空調システム100では、一例として、車両1の運転者(以下、ユーザ)の自宅3に設けられた複数のスイッチやセンサにおける検知結果やユーザの所持する電子機器の使用状態や使用履歴等がユーザの行動を示す行動情報としてネットワークNWを介して制御装置2に出力される。制御装置2では、ネットワークNWを介して受信した行動情報に基づいて車両用空調装置5による車両1のプレ温調の要否を判断すると共に、車両用空調装置5に対してプレ温調を行う場合の開始指示を行う。
【0015】
(車両1について)
図2に示すように、車両1は、車室内の空調及び車載機器の温調を行う車両用空調装置5を搭載している。
図2に示す例では、車両用空調装置5は、熱源としての冷媒回路10と、バッテリBの温調を行う第1熱媒体回路20と、車室内の空調を行う第2熱媒体回路30と、車室内に導入される空気の流通路を有する空調ユニット7と、これらの冷媒回路10、第1熱媒体回路20、第2熱媒体回路30及び空調ユニット7を制御する空調制御部40を含んで構成されている。
【0016】
冷媒回路10は、冷媒が循環する回路であり、圧縮機11、第1熱交換器12、膨張弁13、第2熱交換器14、四方弁15、及び、アキュムレータ(図示せず)が冷媒配管で接続された閉回路である。この他、冷媒回路10は、例えば、第1熱交換器12の下流にレシーバを備えるような回路であってもよい。
【0017】
なお、車両1において車室内の暖房を行う場合には、圧縮機11から吐出された冷媒は、四方弁15、第1熱交換器12、膨張弁13、第2熱交換器14の順に流れ、第1熱交換器12が凝縮器、第2熱交換器14が蒸発器として機能する。また、車両1において車室内の冷房を行う場合には、圧縮機11から吐出された冷媒は、四方弁15、第2熱交換器14、膨張弁13、第1熱交換器12の順に流れ、第2熱交換器14が凝縮器、第1熱交換器12が蒸発器として機能する。
【0018】
第1熱媒体回路20は、冷媒回路10における第2熱交換器14と一体になって熱媒体と冷媒との熱交換を行う第3熱交換器21と、熱媒体に蓄えられた熱を放熱させる第1ラジエータ22を備えている。第1熱媒体回路20では、第1ポンプP1によって圧送された熱媒体が、第3熱交換器21を通過する間に第2熱交換器14における冷媒により温調されて循環し、バッテリBの温度調整を行う。また、第1熱媒体回路20では、第1ラジエータ22において放熱した熱媒体が第1ポンプP1によって圧送されて循環し、バッテリBを冷却する。なお、第1熱媒体回路20における熱媒体の流路は、流路流路切替部V1~V4によって切り替えられる。
【0019】
第2熱媒体回路30は、冷媒回路10における第1熱交換器12と一体になって熱媒体と冷媒との熱交換を行う第4熱交換器31と、熱媒体に蓄えられた熱を放熱させる第2ラジエータ33を備えている。第2熱媒体回路30では、第2ポンプP2によって圧送された熱媒体が、第4熱交換器31を通過する間に第1熱交換器12における冷媒により温調されて循環し、車室内の空調を行う。また、第2熱媒体回路30では、第2ラジエータ33において放熱した熱媒体が第2ポンプP2によって圧送されて循環する。なお、第2熱媒体回路30における熱媒体の流路は、流路流路切替部V5~V8によって切り替えられる。
【0020】
第2熱媒体回路30では、第4熱交換器31において第1熱交換器12を通過する冷媒によって温調された熱媒体を室内熱交換器32に流通させ、熱媒体の熱により室内熱交換器32を通過する空気の温度調整を行う。室内熱交換器32は、車両1に設けられる空調ユニット7に配備され、ダンパ35の開閉によって外気または内気を選択的に取り込み、ブロワ34によって送風された空気を温度調整して車室内に供給することで、車室内の空調を行う。
【0021】
空調制御部40は、車両用空調装置5が搭載される車両1を制御する車両用制御システムの一部として機能する。車両用制御システム(不図示)は、車両1の走行に必要な種々のセンサや車載機器類とこれらを制御する複数の車載ECU(Electronic Control Unit)を含み、各車載ECUが、CAN(Controller Area Network)やLIN(Local Interconnect Network)等の車載ネットワークにより相互に通信可能に接続され、情報の送受信を行う。
【0022】
空調制御部40及び各車載ECUは、例えば、CPU(Central Processing Unit)又はMPU(Micro Processing Unit)等のプロセッサや電気回路、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等の記憶素子を備えて構成されている。そして、CPUがROMに格納されたプログラムに基づいて種々の処理を実行することで、空調制御部40及び各車載ECUの機能を実行する。
【0023】
したがって、空調制御部40も各種車載ECUやセンサや車載機器類と車載ネットワークを介して接続され、各種車載ECU等と連携して冷媒回路10、第1熱媒体回路20、第2熱媒体回路30、及び空調ユニット7を制御して、ユーザによる設定に従って車両1の車室内の空調及び車載機器の温調を行う。
【0024】
また、空調制御部40は、車両1の外部と通信を行う車載ECU(不図示)を介して、制御装置2からのプレ温調の開始に係る指示を受け取った場合に、当該指示に従って、冷媒回路10、第1熱媒体回路20、第2熱媒体回路30及び空調ユニット7を制御して、ユーザの車両1への乗車前に予め車室内の空調及び車載機器の温調の何れか一方又は両方を行う。
【0025】
空調制御部40は、車両用空調装置5に、互いに異なる態様でプレ温調を行う複数の運転モードを実行させることが可能であり、以下の運転モードの何れか一つを実行するか、又は複数の運転モードを段階的に又は組み合わせて実行することによってプレ温調を行うことができる。
【0026】
(1)外気導入モード
ダンパ35によって外気導入口を開状態として、車室内に外気を導入することにより車室内の温調を行うモードであり、ダンパ35とブロワ34の駆動に電力を消費するのみであり消費電力量が小さい運転モードである。また、外気導入モードにおいては、ダンパ35とブロワ34の制御と共に、又は、ダンパ35とブロワ34の制御に代えて、車両1の窓を開閉制御することにより車室内に外気を導入することもできる。
【0027】
(2)熱媒体循環モード
第1熱媒体回路20及び第2熱媒体回路30の一方又は両方において熱媒体に蓄えられた熱を利用する運転モードである。熱媒体循環モードでは、車載機器の温調を行う場合には第1ポンプP1を駆動して第1熱媒体回路20の熱媒体を循環させる。特に、車載機器を冷却する場合には、第1熱媒体回路20において、熱媒体を第1ラジエータ22側に循環させ、車載機器から放出される熱を回収した熱媒体を第1ラジエータ22において放熱させる。車室内の空調を行う場合には第2ポンプP2を駆動して第2熱媒体回路30の熱媒体を循環させる。
【0028】
(3)車載機器の廃熱利用モード
第1熱媒体回路20において熱媒体を循環させ、バッテリBに蓄えられた熱を熱媒体によって回収させて利用する運転モードである。廃熱利用モードでは、第1ポンプP1を駆動して第1熱媒体回路20の熱媒体を循環させ、これによってバッテリBの廃熱を回収させる。なお、バッテリBの他に、モータやインバータ等の車載機器から放出される熱を熱媒体によって回収させて利用するようにしてもよい。
【0029】
(4)圧縮機駆動モード
冷媒回路10において、圧縮機11を、プレ温調の目標温度に応じた回転数にて駆動する運転モードである。
【0030】
車両用空調装置5では、後述する制御装置2によるプレ温調の開始に係る指示に従って、上記の運転モードの一つを選択的に実行するか、複数の運転モードを段階的に又は適宜組み合わせて実行することによりプレ温調を行う。
【0031】
(制御装置2について)
制御装置2は、車両1に搭載された車両用空調装置5を制御する。制御装置2は、特に、車両用空調装置5にプレ温調の開始指示を行う。具体的には、
図3に示すように、制御装置2は、ユーザの自宅3に備えられた各種センサと相互に通信を行うことにより、車両1のユーザの行動を検知した検知結果を受信し、受信した検知結果に基づいてプレ温調を行う、及び、プレ温調の開始時刻を決定する。制御装置2では、車両1においてプレ温調を行うと決定した場合に、車両用空調装置5にプレ温調の開始時刻と共に開始指示を出力する。
【0032】
制御装置2は、例えば、CPU(Central Processing Unit)又はMPU(Micro Processing Unit)等のプロセッサや電気回路、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等の記憶素子を備えた専用又は汎用のコンピュータによって構成することができる。また、制御装置2が実行する動作の一部または全部を、ASIC(application specific integrated circuit)、FPGA(field-programmable gate array)やGPU(Graphics Processing Unit)などのハードウェアにより実現することもできる。
【0033】
図3に示すように、本実施形態においては、制御装置2は、CPU(Central Processing Unit)25、ROM26、RAM27、及び記憶部28を備え、CPU25がROM26に格納されたプログラムに基づいて種々の処理を実行する。つまり、制御装置2では、CPU25が、以下の行動ルーチン生成部250、行動情報取得部251、乗車予測部252、乗車時刻補正部253、環境情報取得部254、及び、プレ温調指示部255の動作を実行することにより、車両用空調装置5にプレ温調の開始に係る指示を行う。
【0034】
図3に、制御装置2が有する機能を示すブロック図を示す。
行動ルーチン生成部250は、後述する行動情報取得部251において取得され、記憶部28に蓄積されたユーザの行動を示す行動情報に基づいて、車両1への乗車前一定時間における行動ルーチンをユーザ毎に生成する。行動情報は、例えば、ユーザの自宅3に設けられた複数のスイッチやセンサにおける検知結果やユーザの所持する電子機器の使用状態や使用履歴等によって把握可能なユーザの行動を示す情報であり、具体的には、以下のような情報を行動情報とすることができる。
【0035】
ユーザの自宅3には、例えば、自宅3内の洗面所、浴室、トイレ、各部屋等に設置された照明器具、テレビ等のAV機器、冷暖房装置及び調理家電等の電化製品スイッチ、照明器具や電化製品の消費電力量又は使用時間を検知するセンサ、車両1や自宅3の鍵の位置や施錠の有無を検知するセンサ、タンスやクローゼットの開閉を検知するセンサ、時計アラームの鳴動時刻を検知するセンサ、自宅3の玄関扉の開閉を検知するセンサ等の様々なスイッチやセンサを設けることができ、これらのスイッチやセンサにおける検知結果から把握可能なユーザの行動を示す情報を行動情報とすることができる。
【0036】
また、ユーザが、例えば、スマートフォン、タブレット装置、及び、パソコン等の電子機器の他、これらの電子機器と連動可能なスマート家電、スマートウォッチやスマートリング等のウエアラブル機器(以下、「電子機器類」という)を所持している場合には、電子機器類の使用履歴及び使用状態を含む使用情報、電子機器類に内蔵されたセンサやスイッチによる検知結果から把握可能なユーザの行動を示す情報を行動情報とすることができる。なお、各行動情報には、行動情報に係る行動が行われた時刻を示す時刻情報が含まれている。
【0037】
行動ルーチン生成部250は、所定期間に亘って蓄積されたこのような行動情報から所定期間(例えば5日間)に亘るユーザの出勤前の行動を示す行動情報を抽出し、抽出された行動情報を、各行動情報によって示される行動が行われた頻度に応じて複数のグループに分類する。例えば、3つのグループに分類する場合には、頻度の最も高い行動を示す行動情報を分類した必須行動グループ、次に頻度の高い行動を示す行動情報を分類した準必須行動グループ、頻度が低い行動を示す行動情報を分類したグループを任意行動グループとする。
【0038】
行動ルーチン生成部250は、抽出した行動情報を上記3つのグループに分類したデータテーブルを生成する(
図4参照)。
図4に示すように、必須行動グループに属する行動情報によって示される行動は、行動情報を抽出した期間においてユーザが車両1への乗車前に必ず行った必須行動である。また、準必須行動グループに属する行動情報によって示される行動は、必須行動より頻度は低いものの車両1への乗車前に高い頻度で行われる、必須行動に準ずる行動である。さらに、任意行動グループに属する行動情報によって示される行動は、所定期間において乗車前にユーザが行った行動のうち、実行頻度の低い行動である。
【0039】
そこで、行動ルーチン生成部250は、少なくとも必須行動グループに属する行動情報によって示される必須行動を組み合わせて行動ルーチンを生成する。行動ルーチン生成部250によって生成される行動ルーチンは、ユーザの行動と当該行動が時間の経過に伴って進行する過程を示し、同一の行動情報に係る行動が行われた時刻を平均化して得られた時刻と行動とを対応付けたタイムチャートを採用することができる(
図5参照)。
図5に示すタイムチャートは、
図4に示すデータテーブルにおいて、必須行動と、準必須行動のうち頻度の高いものを、実行する順に番号を付し(
図4の実行順序欄参照)、これを時間の経過に沿って並べて生成されている。
【0040】
行動ルーチン生成部250は、行動ルーチンの生成に際して、必須行動を組み合わせるだけでなく、例えば、必須行動と準必須行動を組み合わせて生成する等、様々な態様の行動ルーチンを生成することができる。また、ユーザの通勤時の行動ルーチン、休日の行動ルーチン等、ユーザの生活態様や車両1の使用パターンに応じて様々な行動ルーチンを生成することができる。これら様々な行動ルーチンには、車両1に乗車する場合の行動ルーチンだけでなく、乗車しない場合の行動ルーチンも含まれており、後述するように、ユーザの行動がこれらのいずれの行動ルーチンに相当するか等を把握することで、ユーザが車両1に乗車するか否かをより正確に判断することができる。行動ルーチン生成部250は、生成した行動ルーチンを記憶部28に記憶すると共に、制御装置2が車両用空調装置5の制御を行う際に取得して蓄積された行動情報を用いて、記憶部28に記憶した行動ルーチンを所定の周期で更新することができる。
【0041】
また、行動ルーチン生成部250は、生成された行動ルーチンに含まれる必須行動を示す行動情報の何れか1つまたは複数を、乗車時刻の予測及びプレ温調を行う際のトリガとなるトリガ情報として定めておくことができる。例えば、複数の必須行動のうち、所定期間における時刻の変動幅が小さい行動を示す行動情報や、実行順が早い行動を示す行動情報等予め定めた条件を満たす行動情報の1又は複数をトリガ情報として定めておくことができる。
図5に示す行動ルーチンにおいては、一例として、[1]の起床を示す行動情報(アラームの鳴動についての検知情報)をトリガ情報として定めている。
【0042】
行動情報取得部251は、ユーザの自宅3に設置されたセンサやスイッチの検知結果、及び、電子機器類の使用情報等から把握されるユーザの行動を示す情報を行動情報として取得すると共に、記憶部28に記憶された行動ルーチンを取得する。なお、行動情報取得部251は、取得した行動情報を記憶部28に記憶する。
【0043】
乗車予測部252は、行動情報取得部251が取得した行動情報に基づいてユーザの車両1への乗車時刻を予測する。より具体的には、乗車予測部252は、ユーザの行動ルーチンを参照し、取得した行動情報が行動ルーチンに含まれる行動情報であって、予め定められたトリガ情報であるか否かを判定する。そして、乗車予測部252は、取得した行動情報が、行動ルーチンにおいて定められたトリガ情報である場合に、行動ルーチンに基づいてユーザの乗車時刻を予測する。ここで、トリガ情報は、ユーザが車両1の乗車前に必ず行う必須行動を示す複数の行動情報のうち、予め定めておいた特定の行動情報である。
【0044】
つまり、乗車予測部252は、行動ルーチンを参照しつつ、トリガ情報である行動情報及びその後に取得した行動情報と、トリガ情報を取得した時刻からその後に行動情報を取得した時刻までの経過時間等に基づいてユーザの車両1への乗車時刻を予測する。
【0045】
図5の例では、乗車予測部252では、トリガ情報であるアラームの鳴動が通勤時の行動ルーチンに示される起床時刻よりも遅いものの、その後に取得した行動情報に示される行動が、通勤時の行動ルーチンに含まれており、且つ、通勤時の行動ルーチンに示される行動及びその時刻に対応するような場合には、ユーザの行動は総じて行動ルーチンに則っていると判断することができる。このような場合には、ユーザの乗車時刻を、通勤時の行動ルーチンに沿って予測することができる。
【0046】
乗車時刻補正部253は、乗車予測部252によって乗車時刻が予測された後に、行動情報取得部251が取得した行動情報が、参照した行動ルーチンに則っていない場合に、乗車時刻を補正する。乗車予測部252による乗車時刻の予測の後に、行動情報取得部251が、例えば、行動ルーチンに沿った順番とは異なる順番で行われた行動に関する行動情報を取得したり、行動ルーチンに沿った時刻の行動でない行動情報を取得したりする場合等も考えられる。
【0047】
このような場合には、行動情報取得部251が取得した行動情報が参照した行動ルーチンに則っていないと判断することができ、ユーザの車両1への乗車時刻が変動し得るので、乗車時刻補正部253において乗車時刻を補正する。乗車時刻の補正に際して、乗車時刻補正部253は、記憶部28に記憶されたデータテーブルを参照して、例えば、データテーブルに示されている必須行動、準必須行動又は任意行動のいずれを行うか、また、どのような順で行うかなど、乗車時刻を予測した後に行動情報取得部251が取得した行動情報より後のユーザの行動を予測してもよい。
【0048】
環境情報取得部254は、車両1の車室内の温度及びバッテリBを含む車載機器の何れか一方又は両方の温度を示す温度情報と、車両1の外気の温度、外気の湿度、及び、日射量の少なくとも何れか1つを含む外部環境を示す環境情報とを取得する。車室内又は車載機器の現在の温度とプレ温調の目標温度との差や、外気温などの外部環境によって、プレ温調に要する時間が変動する。このため、環境情報取得部254によって温度情報と環境情報とを取得することで、後述するプレ温調指示部255において、より正確にプレ温調に要する時間を算出して、最適なプレ温調の開始時刻を決定することができる。
【0049】
プレ温調指示部255は、予測された乗車時刻に応じて車両用空調装置5におけるプレ温調の開始時刻を決定し、開始時刻にプレ温調を開始するように車両用空調装置5に指示を行う。つまり、プレ温調指示部255は、予測された乗車時刻から逆算して、ユーザの乗車時刻に、車室内及び車載機器がプレ温調の目標温度もしくは目標温度に近い温度となるようにプレ温調を開始させるようにプレ温調の開始時刻を決定する。
【0050】
プレ温調指示部255は、乗車予測部252によって予測された乗車時刻が、乗車時刻補正部253によって補正されている場合には、補正された乗車時刻に応じてプレ温調の開始時刻を決定する。また、プレ温調指示部255は、環境情報取得部254によって温度情報と環境情報が取得されている場合には、乗車時刻、温度情報及び環境情報に基づいて、プレ温調の開始時刻を決定する。
【0051】
これは、車両1の環境によって、プレ温調に要する時間が変動した場合でも、プレ温調の完了時刻とユーザの車両1への乗車時刻とのずれを可能な限りなくすためである。プレ温調指示部255は、このようにして決定されたプレ温調の開始時刻にプレ温調を開始するように車両用空調装置5に指示を行う。これにより、プレ温調の完了時刻とユーザの車両1への乗車時刻とのずれを可能な限りなくして、無駄のないプレ温調を実行することができる。
【0052】
また、プレ温調指示部255は、プレ温調の開始時刻と共に、車両用空調装置5において、プレ温調をどのような運転モードで実行するかを決定し、決定した運転モードに関する実行指示を必要に応じて行ってもよい。このとき、プレ温調指示部255では、現在時刻から乗車時刻までの時間や車室内の温度や車載機器の温度とプレ温調に設定される目標温度との差異の程度などに応じて、車両用空調装置5が実行可能な複数の運転モードから一つを選択して実行する指示や、複数の運転モードを適宜組み合わせて又は段階的に実行するような指示を行うことができる。
【0053】
例えば、上述した外気導入モード、熱媒体循環モード、車載機器の廃熱利用モード、及び、圧縮機駆動モード等の複数の運転モードのうち、車載機器の温調を優先させる運転モードを実行した後に、車室内の快適性を優先させる運転モードを実行するような指示や、複数の運転モードのうち、単位時間当たりの消費電力量が小さい運転モードから順に段階的に実行することでプレ温調を行うように指示等を行うことができる。このようにすることで、消費電力を最小限に抑制させるようなプレ温調や、快適性を優先させるプレ温調、車載機器の温調を優先させるプレ温調など、ユーザの要求や車両1の状況に応じたプレ温調を実行することができる。
【0054】
以下、このように構成された制御装置2における行動ルーチンの生成に係る処理について、
図6のフローチャートを用いて説明する。
制御装置2において、行動ルーチン生成部250は、記憶部28に記憶された行動情報から予め定めた所定期間に亘って蓄積された行動情報を抽出する(ステップS11)。続いて、行動ルーチン生成部250は、抽出した行動情報を、各行動情報によって示される行動が行われた頻度に応じて、必須行動グループ、準必須行動グループ、及び、任意行動グループの何れかのグループに分類し、データテーブル(
図4参照)を生成する(ステップS12)。
【0055】
その後、生成したデータテーブルから、少なくとも必須行動グループに属する行動情報を抜き出し、必須行動を時間の経過に沿って並び替えて行動ルーチンとしてのタイムチャートを生成する(ステップS13)。行動ルーチン生成部250は、行動ルーチンとしてのタイムチャートに含まれる必須行動のうち、何れかをトリガ情報として決定する(ステップS14)。行動ルーチン生成部250は、生成されたデータテーブル及び行動ルーチンを記憶部28に記憶する(ステップS15)。
【0056】
行動ルーチン生成部250は、予め定めた周期に従って行動ルーチンの更新を行ことができ、この場合には、行動ルーチンの更新を行うか否か、予め定めた周期に従って監視し(ステップS16)、更新を行う場合(ステップS16のYES)には、ステップS11に戻り上記処理を繰り返す。行動ルーチンの更新を行わない場合(ステップS16のNO)には、本処理を終了する。
【0057】
続いて、このように構成された制御装置2における車両用空調装置5への制御(プレ温調の開始指示)に係る処理について
図7のフローチャートを用いて説明する。
制御装置2では、行動情報取得部251が、ユーザの自宅3に設置されたセンサやスイッチの検知結果、及び、電子機器類の使用情報等から把握されるユーザの行動を示す情報を行動情報として取得する(ステップS21)と共に、記憶部28に記憶された行動ルーチンを読み出す(ステップS22)。
【0058】
続いて、乗車予測部252において、行動情報と行動ルーチンとに基づいてユーザが車両1に乗車する可能性が高いか、つまり、ステップS21で取得した行動情報が行動ルーチンにおいて予め定められたトリガ情報であるかを判定する(ステップS23)。ステップS21で取得した行動情報が行動ルーチンにおいて予め定められたトリガ情報でない場合(ステップS23のNO)には、ユーザが車両1に乗車する可能性が低いとして、本処理を終了する。
【0059】
ステップS21で取得した行動情報が行動ルーチンにおいて予め定められたトリガ情報である場合(ステップS23のYES)には、ユーザが車両1に乗車する可能性が高いと判断し、行動ルーチンに沿って、ユーザの乗車時刻を予測する(ステップS24)。併せて、環境情報取得部254において、車両1の車室内の温度及びバッテリBを含む車載機器の何れか一方又は両方の温度を示す温度情報と、車両1の外気の温度、外気の湿度、及び、日射量の少なくとも何れか1つを含む外部環境を示す環境情報とを取得し、取得した温度情報及び環境情報を、プレ温調指示部255に出力する(ステップS25)。
【0060】
また、乗車時刻補正部253は、乗車予測部252において乗車時刻を予測した後に、行動情報取得部251によって新たに取得された行動情報に示される行動が、行動ルーチンに則っているか否かを監視する(ステップS26)。行動情報取得部251が順次取得する行動情報によって示される行動が行動ルーチン外の行動、すなわち行動ルーチンに則っていない行動である場合(ステップS26のYES)には、以降のユーザの行動を予測し(ステップS27)、予測した行動に基づいて乗車予測部252によって予測された乗車時刻を補正する(ステップS28)。一方、行動情報取得部251が順次取得する行動情報によって示される行動が行動ルーチンに則っている場合(ステップS26のNO)には、ステップS29に進む。
【0061】
ステップS29では、プレ温調指示部255が、ステップS24において予測された乗車時刻、又は、乗車時刻補正部253によって乗車時刻が補正されている場合には、補正された乗車時刻に応じて車両用空調装置5におけるプレ温調の開始時刻を決定する。このとき、環境情報取得部254によって、温度情報及び環境情報を取得している場合には、これらの情報も鑑みてプレ温調の開始時刻を決定する。プレ温調指示部255では、決定されたプレ温調の開始時刻にプレ温調を開始するように車両用空調装置5に指示を行う(ステップS30)。
【0062】
このように本実施形態に係る車両用空調システムでは、所定期間に亘るユーザの行動履歴に基づいてユーザの行動ルーチンを生成し、この行動ルーチンと取得した行動情報とに基づいてユーザの乗車の可能性と乗車時刻を予測する。そして、予測された乗車時刻から逆算し、プレ温調の完了時刻とユーザの乗車時刻とのずれが生じないように、プレ温調の内容(運転モード、実行時間、及び、開始時刻等を含む)を決定し、これを車両用空調装置5に指示する。このようにすることで、ユーザの乗車時の快適性を維持すると共に車載機器の性能を確保しながら最適なプレ温調を実行することができる。
【0063】
特に、ユーザが車両1への乗車前に必ず行う行動のうちの少なくとも1つを示す行動情報を、予めトリガ情報として定めておき、トリガ情報を取得した場合にユーザの乗車時刻を予測すし、予測した乗車時刻から逆算してプレ温調の開始時刻を決定するので、より確実に、プレ温調の完了時刻とユーザの乗車時刻とのずれが生じないようにプレ温調を実行させることができる。
【0064】
(変形例)
なお、上述した実施形態では、行動ルーチン生成部250により行動ルーチンを生成し、この行動ルーチンを乗車予測部252において乗車時刻を予測する際に参照している。すなわち、乗車予測部252では、取得した行動情報が、行動ルーチン上で定められたトリガ情報であるかを確認して乗車時刻の予測を行っているが、行動ルーチンを参照せずにトリガ情報の確認及び乗車時刻の予測を行ってもよい。また、予め生成された行動ルーチンを、例えば、記憶部28に記憶しておけばよく、行動ルーチン生成部250を必ずしも備えなくてもよい。
【0065】
さらに、乗車時刻補正部253や環境情報取得部254を備えることで、より確実に、プレ温調の完了時刻とユーザの乗車時刻とのずれが生じないようにプレ温調を実行させることができるが、乗車時刻補正部253及び環境情報取得部254を必ずしも備えていなくてもよい。乗車時刻補正部253及び環境情報取得部254の何れか一方又は両方を備えていない場合でも、取得した行動情報がトリガ情報である場合にユーザの乗車時刻を予測することで、プレ温調の完了時刻とユーザの乗車時刻とのずれが生じないように、プレ温調の内容を最適化する。
【0066】
つまり、適正なタイミングでプレ温調を開始することで、プレ温調時間の実行時間の増加を抑制するようにプレ温調を最適化することができる。また、実行時間の増加の抑制だけでなく、例えば、消費電力の小さい運転モードを優先的に選択することで消費電力の増加を抑制するようにプレ温調を最適化することもできる。これにより、ユーザの乗車時の快適性を維持すると共に車載機器の性能を確保した最適なプレ温調を行うことができる。
【0067】
この場合、制御装置2において、CPU25が、行動ルーチン生成部250、乗車時刻補正部253及び環境情報取得部254の機能を実行せずに、例えば、
図8に示すように行動情報取得部251、乗車予測部252、及び、プレ温調指示部255の動作を実行することにより、車両用空調装置5にプレ温調の開始に係る指示を行う。
【0068】
前述の通り、本変形例においては、乗車予測部252は、行動ルーチンを参照せずに、取得した行動情報が予めトリガとして定められたトリガ情報であるかを判定してもよい。この場合は、乗車予測部252がトリガ情報を予め定めておき、例えば、記憶部28にトリガ情報に関するデータを記憶させておく。そして、乗車予測部252は、取得した行動情報が予め定めたトリガ情報である場合に、ユーザは車両1に乗車する可能性が高いと判断し、ユーザの乗車時刻を予測する。
【0069】
図8に示す制御装置2における車両用空調装置5への制御(プレ温調の開始指示)に係る動作について
図9のフローチャートを用いて説明する。
制御装置2では、行動情報取得部251が、ユーザの自宅3に設置されたセンサやスイッチの検知結果、及び、電子機器類の使用情報等から把握されるユーザの行動を示す情報を行動情報として取得する(ステップS31)。
【0070】
続いて、ユーザが車両1に乗車する可能性が高いか、つまり、ステップS31で取得した行動情報が予め定められたトリガ情報であるかを判定する(ステップS32)。ステップS31で取得した行動情報が予め定められたトリガ情報でない場合(ステップS32のNO)には、ユーザが車両1に乗車する可能性が低いとして、本処理を終了する。
【0071】
ステップS21で取得した行動情報が予め定められたトリガ情報である場合(ステップS32のYES)には、ユーザが車両1に乗車する可能性が高いと判断し、ユーザの乗車時刻を予測する(ステップS33)続いて、プレ温調指示部255は、ステップS33で予測された乗車時刻に応じて車両用空調装置5におけるプレ温調の開始時刻を決定し(ステップS34)、決定されたプレ温調の開始時刻にプレ温調を開始するように車両用空調装置5に指示を行う(ステップS35)。
【0072】
このように本実施形態に係る車両用空調システムでは、取得した行動情報が予め定めたトリガ情報である場合にユーザの乗車の可能性があると判断して乗車時刻を予測するので、ユーザの将来の乗車の可能性と乗車時刻を精度よく予測することができる。そして、予測された乗車時刻から逆算し、プレ温調の完了時刻とユーザの乗車時刻とのずれが生じないように、プレ温調の内容(運転モード、実行時間、及び、開始時刻等を含む)を決定し、これを車両用空調装置5に指示する。このようにすることで、ユーザの乗車時の快適性を維持すると共に車載機器の性能を確保した最適なプレ温調を実行することができる。
【0073】
上記した実施形態及びその変形例においては、制御装置2によってユーザの乗車時刻の予測やプレ温調の開始時刻等を決定する処理を行う例について説明したが、制御装置2に代えて、これらの処理を車両用空調装置5に備えられた空調制御部40が行ってもよい。この場合、空調制御部40が、ユーザの行動情報を直接またはネットワークNWを介して取得する。
【0074】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。また、上述の各実施の形態は、その目的及び構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0075】
1:車両、2:制御装置、3:自宅、5:車両用空調装置、7:空調ユニット
10:冷媒回路、11:圧縮機、12:第1熱交換器、13:膨張弁、14:第2熱交換器
15:四方弁、20:第1熱媒体回路、21:第3熱交換器、22:第1ラジエータ
25:CPU、26:ROM、27:RAM、28:記憶部
30:第2熱媒体回路、31:第4熱交換器、33:第2ラジエータ、32:室内熱交換器
34:ブロワ、35:ダンパ、40:空調制御部
100:車両用空調システム、250:行動ルーチン生成部、251:行動情報取得部
252:乗車予測部、253:乗車時刻補正部、254:環境情報取得部
255:プレ温調指示部、B:バッテリ