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特開2024-155525車両空調用制御仕様変更システム及び車両用空調制御装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155525
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】車両空調用制御仕様変更システム及び車両用空調制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/00 20060101AFI20241024BHJP
【FI】
B60H1/00 101Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023070310
(22)【出願日】2023-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】000001845
【氏名又は名称】サンデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】弁理士法人エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】蓼沼 厚博
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 渉
(72)【発明者】
【氏名】高沢 修
(72)【発明者】
【氏名】大庭 健三
【テーマコード(参考)】
3L211
【Fターム(参考)】
3L211BA01
3L211BA60
3L211EA03
3L211EA66
3L211FB02
3L211GA99
(57)【要約】
【課題】使用環境条件が変化した場合であっても快適な空調制御を実現できるようにする。
【解決手段】車両用空調制御装置の制御仕様変更システムは、車両が備える空調装置を制御する車両用空調制御装置と該車両用空調制御装置と情報交換可能なサーバーを備え、空調装置の使用環境情報を取得する使用環境情報取得部と、使用環境情報取得部が取得した使用環境情報の変化を判定する使用環境変化判定部と、使用環境変化判定部が判定した使用環境変化に応じた制御仕様を選択する変更制御仕様選択部と、変更制御仕様選択部が選択した変更制御仕様を仮設定して車両用空調制御装置の動作をシミュレーションするシミュレーション実行部と、シミュレーション実行部のシミュレーション結果を判定する判定部とを備え、判定部の判定が適応していると判断した場合に、選択した前記変更制御仕様を制御仕様として確定する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が備える空調装置を制御する車両用空調制御装置と、該車両用空調制御装置と情報交換可能なサーバーを備え、前記車両用空調制御装置の制御仕様を変更するシステムであって、
前記空調装置の使用環境情報を取得する使用環境情報取得部と、
前記使用環境情報取得部が取得した使用環境情報の変化を判定する使用環境変化判定部と、
前記使用環境変化判定部が判定した使用環境変化に応じた制御仕様を選択する変更制御仕様選択部と、
前記変更制御仕様選択部が選択した変更制御仕様を仮設定して前記車両用空調制御装置の動作をシミュレーションするシミュレーション実行部と、
前記シミュレーション実行部のシミュレーション結果を判定する判定部とを備え、
前記判定部の判定が適応していると判断した場合に、選択した前記変更制御仕様を制御仕様として確定することを特徴とする車両空調用制御仕様変更システム。
【請求項2】
前記変更制御仕様選択部は、前記車両用空調制御装置の制御仕様をデータベース化した制御仕様データベースから変更制御仕様を選択することを特徴とする請求項1に記載された車両空調用制御仕様変更システム。
【請求項3】
前記判定部の判定が適応しないと判断した場合に、
前記空調装置における採用部品の交換を提案する部品交換提案部を備えることを特徴とする請求項1に記載された車両空調用制御仕様変更システム。
【請求項4】
前記部品交換提案部は、前記空調装置における交換対象の構成要素を特定して、使用条件を決定し、複数の部品群と各部品の仕様パラメータをデータベース化した交換部品データベースから交換部品メニューを提案することを特徴とする請求項3に記載された車両空調用制御仕様変更システム。
【請求項5】
車両が備える空調装置を制御する車両用空調制御装置であって、
前記空調装置の使用環境情報を取得する使用環境情報取得部と、
前記使用環境情報取得部が取得した使用環境情報の変化を判定する使用環境変化判定部と、
前記使用環境変化判定部が判定した使用環境変化に応じた制御仕様を選択する変更制御仕様選択部と、
前記変更制御仕様選択部が選択した変更制御仕様を仮設定して前記車両用空調制御装置の動作をシミュレーションするシミュレーション実行部と、
前記シミュレーション実行部のシミュレーション結果を判定する判定部とを備え、
前記判定部の判定が適応していると判断した場合に、選択した前記変更制御仕様を制御仕様として確定することを特徴とする車両用空調制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両空調用制御仕様変更システム及び車両用空調制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両用空調装置は、HVAC(Heating, Ventilation, and Air Conditioning)と称される空調ユニットを備えており、空調ユニット内に設けたブロワを駆動して、外気導入した空気又は車室内を循環する空気を、空調ユニット内に導きフィルタを通過させることで清浄化し、暖房又は冷房要求に応じて加熱又は冷却して、車室内に吹き出す。
【0003】
車両用空調装置の空調制御は、目標吹き出し温度及び目標吹き出し風量で空調を行うために、車室内温度設定値と車室内温度の検出値との差、日射量、外気温度及び前述の設定値に、環境条件に適した制御定数を乗じて制御指令値を算出し、空調ユニットの制御量(エアミックスドア開度やブロア駆動電圧など)を求めている。この際、どのような環境条件下であって応答性と安定性を満足する制御定数を定めることは困難であるが、従来技術によると、車室内温度と乗員の皮膚温度の時間的に推移させるべき目標値を発生させ、制御対象に同定した制御対象の数式化モデルにより乗員の皮膚温度を推定し、車室内温度検出値と皮膚温度推定値がそれぞれ目標値に一致するように、空調風の温度と風量を調節している(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3333218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した従来技術によると、様々な使用環境条件に対応する制御を行うために、煩雑な制御態様を採用している。しかしながら、使用環境条件が大きく変化すると、従来技術のような制御態様では、変化した使用環境条件に適応した制御を行うことができない場合がある。これに対しては、大きく変化した使用環境条件に適した制御定数などの制御仕様を、使用環境条件の変化に応じて変更することが好ましいが、このような制御仕様の変更を人的に行おうとすると、煩わしい変更操作が必要になる。
【0006】
また、人的に制御仕様を変更した場合、変更した制御仕様が使用環境条件の変化に適応しているかの判断が難しく、変化に適応できていない状態で使用すると、所望の制御性能を得ることができなくなる。そして、使用環境条件の変化が更に大きい場合、制御仕様の変更だけでは対応することができない場合があり、部品交換等を余儀なくされる場合がある。このような場合に、部品交換の必要性を適切に判断することができず、適応していない制御仕様で制御を継続してしまい、所望の制御性能を得ることができず、快適な空調制御を実現できない問題があった。
【0007】
本発明は、このような問題に対処することを課題としている。すなわち、煩わしい変更操作を行うことなく、使用環境条件の変化に適応した制御仕様の変更を行うことができること、制御仕様の変更だけでは対応できない場合であっても、部品交換等の必要性を適切に判断できるようにすること、これらにより、使用環境条件が変化した場合であっても快適な空調制御を実現できるようにすること、などが本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような課題を解決するために、本発明は、以下の構成を具備するものである。
車両が備える空調装置を制御する車両用空調制御装置と、該車両用空調制御装置と情報交換可能なサーバーを備え、前記車両用空調制御装置の制御仕様を変更するシステムであって、前記空調装置の使用環境情報を取得する使用環境情報取得部と、前記使用環境情報取得部が取得した使用環境情報の変化を判定する使用環境変化判定部と、前記使用環境変化判定部が判定した使用環境変化に応じた制御仕様を選択する変更制御仕様選択部と、前記変更制御仕様選択部が選択した変更制御仕様を仮設定して前記車両用空調制御装置の動作をシミュレーションするシミュレーション実行部と、前記シミュレーション実行部のシミュレーション結果を判定する判定部とを備え、前記判定部の判定が適応していると判断した場合に、選択した前記変更制御仕様を制御仕様として確定することを特徴とする車両用空調制御装置の制御仕様変更システム。
【0009】
また、本発明は、以下の構成を備える。
車両が備える空調装置を制御する車両用空調制御装置であって、前記空調装置の使用環境情報を取得する使用環境情報取得部と、前記使用環境情報取得部が取得した使用環境情報の変化を判定する使用環境変化判定部と、前記使用環境変化判定部が判定した使用環境変化に応じた制御仕様を選択する変更制御仕様選択部と、前記変更制御仕様選択部が選択した変更制御仕様を仮設定して前記車両用空調制御装置の動作をシミュレーションするシミュレーション実行部と、前記シミュレーション実行部のシミュレーション結果を判定する判定部とを備え、前記判定部の判定が適応していると判断した場合に、選択した前記変更制御仕様を制御仕様として確定することを特徴とする車両用空調制御装置。
【発明の効果】
【0010】
このような特徴を備える本発明は、煩わしい変更操作を行うことなく、使用環境条件の変化に適応した制御仕様の変更を行うことができ、制御仕様の変更だけでは対応できない場合があっても、部品交換等の必要性を適切に判断できるようになり、これらにより、使用環境条件が変化した場合であっても快適な空調制御を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る車両空調用制御仕様変更システムの構成例を示した説明図。
図2】本発明の実施形態に係る車両用空調制御装置のハードウェア構成の一例を示した説明図。
図3】本発明の実施形態におけるサーバーのハードウェア構成の一例を示した説明図。
図4】本発明の実施形態における車両用空調制御装置の制御仕様変更システムの機能(ソフトウェア構成)を示した説明図。
図5】車両空調用制御仕様変更システムの動作例を示した説明図。
図6】車両空調用制御仕様変更システムの動作例を示した説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の説明で、異なる図における同一符号は同一機能の部位を示しており、各図における重複説明は適宜省略する。
【0013】
図1に、車両空調用制御仕様変更システム(以下、システム)1の構成例を示す。図示の例では、システム1は、車両Vに搭載された制御装置(車両用空調制御装置)100と、ネットワークNWを介して制御装置100と情報交換可能なサーバー2を備える。ここでは、サーバー2を備える例を示しているが、サーバー2の機能を制御装置100が備えることで、車両Vに搭載された制御装置100単体でシステム1を構成することができる。
【0014】
車両Vに搭載された制御装置100は、一例として、GPSなどの衛星測位システム(GNSS;Global Navigation Satellite System)を活用して、車両Vの現在位置を検知するために、GNSS衛星ASから発信される電波信号を受信するGNSSセンサ106A(図2参照)を備えている。
【0015】
制御装置100の構成例を図2に示す。制御装置100は、CAN(Controller Area Network)やLIN(Local Interconnect Network)などの車載ネットワーク101を介して複数の車載ECU(Electronic Control Unit)が相互に情報通信可能に接続されることで構成されている。複数の車載ECUは、その一つが、車載ネットワーク101における複数系統のバスライン間の中継機能を有する中継用ECU102(CGWECU:Central Gateway ECU)であり、他の一つが、車両と外部との情報通信を双方向で行うための通信用ECU103(TCU:Telematics Control Unit)であり、他の一つが、車両の空調制御を行う空調制御ECU104である。
【0016】
前述した各車載ECUは、例えば、CPU(Central Processing Unit)又はMPU(Micro Processing Unit)などのプロセッサや電気回路、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)などの記憶素子により構成することができる。また、車載ECUが実行する動作の一部又は全部を、ASIC(application specific integrated circuit)、FPGA(field-programmable gate array)やGPU(Graphics Processing Unit)などのハードウェアにより実現することもできる。
【0017】
図示の例では、空調制御ECU104は、CPU110、ROM111、RAM112、および外部I/F(Interface)113を備え、これらの各ハードウェアが、バスライン114を介して相互に接続され、バスライン114がゲートウェイ115を介して車載ネットワーク101に接続されている。ここで、CPU110は、ROM111に記憶されている各種プログラムを実行することにより、空調制御ECU104の動作を制御する。ROM111は、不揮発性メモリであり、例えば、CPU110により実行されるプログラム、CPU110がプログラムを実行するために必要なデータなどを記憶する。RAM112は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)やSRAM(Static Random Access Memory)などの主記憶装置であり、例えば、CPU110がプログラムを実行する際に利用する作業領域として機能する。外部I/F113は、外部に対する信号の送受信を制御するものであり、例えば、複数のセンサからなるセンサ部120から制御に必要な検知情報を受信し、制御対象の動作を実行するアクチュエータに制御信号を送信する。なお、全ての車載ECUは、図示した空調制御ECU104と同様のハードウェア構成を採用することができる。
【0018】
そして、空調制御ECU104の外部I/F113には、空調制御を行う上で必要となる情報を検知するためのセンサ部120が接続されている。センサ部120は、各所に設置される複数の各種センサの群(センサ群)である。センサ部120は、例えば、外気温度センサ120A、室内温度センサ120B、圧縮機回転数センサ120C、冷媒圧力センサ120D、冷媒温度センサ120E、熱媒体温度センサ120F、熱媒体流速センサ120G、吹出温度センサ120H、などを備えている。
【0019】
また、空調制御ECU104の外部I/F113には、空調制御ECU104の制御対象である、空調ユニット(HVAC:Heating, Ventilation, and Air Conditioning)131、冷媒回路132、熱媒体回路133などを備える空調装置130が接続されており、空調制御ECU104は、この制御対象に制御信号を送信する。空調ユニット131は、外気導入又は内気循環する空気を取り込んで、取り込んだ空気をフィルタで浄化しながら車室内に冷暖房の空調風を送風する。冷媒回路132は、車両Vの熱源となるものであり、圧縮機で加圧した気体冷媒を凝縮・減圧・気化させる冷凍サイクルを実行して冷媒の吸放熱を行う。熱媒体回路133は、冷媒回路132の冷媒と熱交換する熱媒体を循環させて車両各所の熱管理等を行う。
【0020】
車載ネットワーク101には、前述した車載ECUに加えて、車両Vの各種制御を行うために、多数の車載ECUが接続されている。図2には、その一例を示している。駆動系ECU105は、センサ部として車速センサなどを有し、駆動用モーターなどを制御する。ナビECU106は、前述したGNSSセンサ106Aなどをセンサ部に備え、車両Vの走行経路をナビゲートするシステムを制御する。シートECU107は、センサ部として、乗員の着座やシートベルトの装着を検知するシートセンサ107Aなどを有し、座席シートの調整移動やシートヒータのオンオフなどを制御する。カメラECU108は、センサ部として、室内カメラ108Aや車外カメラ(図示省略)を有し、取得画像の画像処理などを行う。
【0021】
また、制御装置100における車載ネットワーク101には、記憶装置109が接続されている。記憶装置109は、後述するシステム1の制御を実行する上での情報が蓄積される。
【0022】
図3には、サーバー2の構成例を示している。サーバー2は、ネットワークNWに接続されたコンピューターであり、前述した制御装置100と同様に、CPU20、ROM21、RAM22、記憶装置23を備え、これらがバスライン24を介して、ネットワークNWと接続するための通信部25に接続されている。サーバー2の記憶装置23には、後述するシステム1の制御を行う上でのデータベースが構築される。
【0023】
図4にて、システム1が行う制御仕様変更制御の機能例(ソフトウェア構成例)を説明する。
【0024】
システム1が行う制御仕様変更制御は、車両Vに搭載された制御装置100の使用環境(車両Vの使用環境と一致)が大きく変化した場合に有効に実行される。この際に対象となる使用環境変化は、車両Vの日常的な使用地域が温暖な地域から寒冷地に変化する場合や、車両Vに日常的に乗車する乗員の数が、単数(或いは2人)から複数(例えば4~6人)になる場合などがある。また、車両Vが遠距離走行を行ったり、日ごとの気象変動により短期間に外気温度が変わったりした場合や、普段は車両Vを乗員一人で運転しているが、休日等に、多数の乗員で一日の運転を行う場合なども、ここでの使用環境変化に該当する。
【0025】
制御装置100は、CPU110などが実行するプログラムとして、使用環境情報取得部100A、使用環境変化判定部100B、使用環境変化送信部100C、制御仕様変更部100D、シミュレーション実行部100E、判定部100F、部品交換提案部100Gなどを備える。また、サーバー2は、CPU20などが実行するプログラムとして、変更制御仕様選択部2A、変更制御仕様送信部2Bなどを備え、データベースとして、変更に必要な制御仕様をデータベース化した制御仕様データベース2Cと、部品交換に必要な複数の部品群と各部品の仕様パラメータをデータペース化した交換部品データベース2Dを備える。なお、ここで制御装置100とサーバー2に振り分けた各機能(プログラム)は、一方に統合するか、或いは、更に異なる振り分けで、後述する制御を実行するようにしてもよい。
【0026】
制御装置100の使用環境情報取得部100Aは、センサ部120などが検知した情報を取得することで、制御装置100の使用環境(車両Vの使用環境)を把握する。この際、使用環境は、数日又は数か月の間に取得される情報によって把握されるべきであるから、センサ部120などが検知した情報は、適宜、記憶装置109などに時系列情報として記憶される。使用環境情報取得部100Aが取得する情報は、例えば、GNSSセンサ106Aが検知する車両Vの位置情報、外気温度センサ120Aが検知する外気温情報、シートセンサ107Aや室内カメラ108Aが検知する乗員数情報などである。
【0027】
制御装置100の使用環境変化判定部100Bは、使用環境情報取得部100Aが取得した情報に基づいて、制御仕様を変更するに値する使用環境変化が生じたか否かを判定する。例えば、温暖地から寒冷地に使用環境が変わる場合は、使用環境変化判定部100Bは、数日又は数か月の間に取得した車両Vの位置情報から求められる行動範囲が以前の地域範囲から離れた地域範囲に移動したことを確認し、更に、数日又は数か月の間に取得した外気温度の平均値が以前の期間より設定温度(例えば、5℃程度)以上変化したことを確認して、使用環境変化が有ると判定する。
【0028】
また、使用環境変化として、乗員人数が変わる場合には、使用環境変化判定部100Bは、使用環境情報取得部100Aが取得した乗員数情報から、所定期間の乗員数の平均値がそれ以前の期間の乗員数の平均値より変化した(増加した又は減少した)ことを確認して、使用環境変化が有ると判定する。
【0029】
制御装置100の使用環境変化送信部100Cは、使用環境変化判定部100Bが使用環境変化有りと判定した場合に、変化した使用環境情報を、通信用ECU103を介してサーバー2の通信部25に送信する。通信部25が変化した使用環境情報を受信すると、サーバー2の変更制御仕様選択部2Aは、制御仕様データベース2Cにアクセスして、変化した使用環境情報に適応すると判断される変更制御仕様を抽出し、変更制御仕様送信部2Bが抽出された変更制御仕様を制御装置100に送信する。
【0030】
ここでの変更制御仕様とは、空調制御の制御態様を変化させる制御定数や制御範囲の上下限など、デフォルトの制御仕様の変更を指す。例えば、温暖地から寒冷地に使用環境が変わる場合は、暖房の即応性を高めるように制御定数の切り替えを行ったり、暖房時の室温範囲の上限を高めたりする制御仕様の変更を行い、逆に、寒冷地から温暖地に使用環境が変わる場合は、冷房の即応性を高めるように制御定数の切り替えを行ったり、冷房時の室温範囲の下限を低くしたりする制御仕様の変更を行う。
【0031】
また、乗員数が運転者のみの1人から助手席や後部座席を利用する複数人に増加する場合の変更制御仕様は、例えば、運転席のみの個別最適空調の制御(運転席側の噴出し温度を主とした空調制御など)から、助手席や後部座席の個別最適空調を追加した制御(車室温度を主とした空調制御や、個別空調を追加することによるブロア回転数の増加など)に移行するような制御仕様の変更である。
【0032】
制御装置100の制御仕様変更部100Dは、サーバー2の変更制御仕様送信部2Bから送信された変更制御仕様を受信し、制御装置100にて仮設定する。そして、制御装置100のシミュレーション実行部100Eにて、変更制御仕様を仮設定した制御装置100において、制御動作のシミュレーションを行う。ここでのシミュレーションは、使用環境変化に応じた負荷情報を入力して仮想の制御動作を行い、仮想の制御動作における制御性能を出力する。
【0033】
制御装置100の判定部100Fは、シミュレーション実行部100Eが行ったシミュレーションの結果から仮設定した変更制御仕様が使用環境変化に対応しているか否かを判定する。この際の判定は、シミュレーション結果において、所望の制御性能が発揮できているか否かで判断する。判定の結果、適応していると判定した場合は、仮設定している変更制御仕様を正規の制御仕様として確定させる。また、判定の結果、適応していないと判定した場合は、部品交換提案部100Gにて、空調装置130における採用部品の交換を提案する。
【0034】
制御装置100の部品交換提案部100Gは、制御仕様の変更では使用環境変化に適応できない場合に、使用環境変化に適応できる空調装置130の部品を選択するものであり、例えば、乗員数の増加に対応して、制御仕様を変更して暖房中の噴出し箇所を増やした結果、ブロアの送風能力が不足したシミュレーション結果が出た場合は、出力の高いブロワモータへの交換を提案する。部品交換提案部100Dは、判定部100Fの判定結果をサーバー2に送信し、サーバー2における交換部品データベース2Dにアクセスして交換部品メニューを作成する。
【0035】
図5は、前述した制御装置100及びサーバー2の各機能による制御仕様変更プログラムの処理フロー(制御方法)を示している。処理が開始されると、使用環境情報取得部100Aが使用環境情報を取得し(ステップS01)、取得した使用環境情報に基づいて使用環境変化判定部100Bが使用環境変化の有無を判定する(ステップS02)。その判定により、使用環境変化が無いと判断された場合は(ステップS02:変化無)、引き続き使用環境情報取得部100Aによる情報取得が継続される。
【0036】
使用環境変化判定部100Bが使用環境変化有と判定した場合(ステップS02:変化有)、その使用環境変化が使用環境変化送信部100Cによりサーバー2に送信され(ステップS03)、サーバー2の変更制御仕様選択部2Aが、仕様環境変化に応じた変更制御仕様を制御仕様データベース2Cから抽出することで選択する(ステップS04)。選択された変更制御仕様は、変更制御仕様送信部2Bにて制御装置100に送信され、制御仕様変更部100Dにて制御装置100に対して変更制御仕様の仮設定が行われる(ステップS05)。
【0037】
そして、シミュレーション実行部100Eは、仮設定された変更制御仕様で制御装置100のシミュレーション制御を行い(ステップS06)、シミュレーションの結果に対して、判定部100Fが使用環境変化に適応しているか否かの判定を行う。この判定で適応と判定された場合は(ステップS07:適応)、制御仕様の変更を確定して(ステップS09)、処理を終了する。この判定で不適応と判定された場合は(ステップS07:不適応)、別仕様の有無を確認して(ステップS08)、別仕様が有る場合は(ステップS08:有)、再び、変更制御仕様選択部2Aによる変更制御仕様の選択が行われる(ステップS04)。ステップS08にて別仕様が無い場合は(ステップS08:無)、以下の部品交換提案プログラムに移行する(ステップS10)。
【0038】
部品交換提案プログラムでは、図6に示すように、空調装置130における交換対象構成要素を特定し(ステップS20)、特定した対象構成要素の使用条件を決定し(ステップS21)、交換部品データベース2Dにアクセスして、決定した使用条件に応じた部品交換メニューを作成することで部品交換を提案する(ステップS22)。そして、部品交換メニューの内容の適応判定を行い(ステップS23)、不適応の場合は(ステップS23:不適応)、異なるメニューでの提案を行い(ステップS22)、適応の場合は(ステップS23:適応)、部品交換メニューを確定する(ステップS24)。そして、部品交換すべき構成要素の変更が無い場合(ステップS25:無)、処理を終了し、部品交換すべき構成要素が更に存在する場合(ステップS25:有)、ステップS20に戻って、引き続き処理を進行させる。
【0039】
このように、本発明の実施形態に係るシステム1によると、車両Vに搭載された制御装置100の使用環境が変化した場合には、取得した使用環境情報に基づいて自動で制御仕様が変更されるので、人的に仕様変更操作を行う煩わしさは解消され、更に、変化した使用環境に適応する制御仕様が自動で選択されて設定されるので、使用環境変化への適応性を心配する必要が無い。また、使用環境変化が制御仕様の変更だけでは対応できない場合には、使用環境変化に応じた部品交換の提案が行われるので、部品交換の必要性を適切に判断することができる。これらにより、本発明の実施形態に係るシステム1を採用すると、車両Vに搭載された制御装置100の使用環境条件が変化した場合であっても、変化した使用環境に応じて快適な空調制御を実現することができる。
【0040】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。また、上述の各実施の形態は、その目的及び構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0041】
1:制御仕様変更システム(システム),
100:制御装置,
100A:使用環境情報取得部,100B:使用環境変化判定部,
100C:使用環境変化送信部,100D:制御仕様変更部,
100E:シミュレーション実行部,100F:判定部,
100G:部品交換提案部,
101:車載ネットワーク,102:中継用ECU,103:通信用ECU,
104:空調制御ECU,
105:駆動系ECU,106:ナビECU,106A:GNSSセンサ,
107:シートECU,107A:シートセンサ,
108:カメラECU,108A:室内カメラ,
113:外部I/F,115:ゲートウェイ,
120:センサ部,120A:外気温度センサ,120B:室内温度センサ,
120C:圧縮機回転数センサ,120D:冷媒圧力センサ,
120E:冷媒温度センサ,120F:熱媒体温度センサ,
120G:熱媒体流速センサ,120H:吹出温度センサ,
130:空調装置,131:空調ユニット,132:冷媒回路,
133:熱媒体回路,
2:サーバー,2A:変更制御仕様選択部,2B:変更制御仕様送信部,
2C:制御仕様データベース,2D:交換部品データベース,
20,110:CPU,21,111:ROM,22,112:RAM,
23,109:記憶装置,24,114:バスライン,25:通信部,
V:車両,NW:ネットワーク,AS:GNSS衛星
図1
図2
図3
図4
図5
図6