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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155526
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】空調制御システム及び空調制御方法
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/00 20060101AFI20241024BHJP
【FI】
B60H1/00 101E
B60H1/00 101F
B60H1/00 101H
B60H1/00 101T
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023070311
(22)【出願日】2023-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】000001845
【氏名又は名称】サンデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】弁理士法人エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】蓼沼 厚博
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 渉
(72)【発明者】
【氏名】高沢 修
(72)【発明者】
【氏名】大庭 健三
【テーマコード(参考)】
3L211
【Fターム(参考)】
3L211BA01
3L211BA07
3L211EA01
3L211EA04
3L211EA12
3L211EA56
3L211EA66
3L211EA67
3L211EA79
3L211FB08
(57)【要約】
【課題】急激に車室外環境が変化する場合であっても、乗員に不快感を与えることなく空調制御を行うことが可能な空調制御システム及び空調制御方法を提供する。
【解決手段】車室内の空調を行う車両用空調装置を制御する空調制御システムであって、少なくとも車両の経路情報及び車室内外の環境情報から、所定時間後の車室外環境を予測する車室外環境予測部と、車室外環境の予測結果に基づいて、空調装置における所定時間後の空調内容を予測する空調予測部と、予測した車室外環境の変化に応じ、車両用空調装置の空調内容を、現在の空調内容から予測した所定時間後の空調内容に変化させる遷移モードを実行する遷移モード実行部と、を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内の空調を行う車両用空調装置を制御する空調制御システムであって、
少なくとも車両の経路情報及び車室内外の環境情報から、所定時間後の車室外環境を予測する車室外環境予測部と、
前記車室外環境の予測結果に基づいて、前記車両用空調装置における前記所定時間後の空調内容を予測する空調予測部と、
予測した前記車室外環境の変化に応じ、前記車両用空調装置の空調内容を、現在の空調内容から予測した前記所定時間後の空調内容に変化させる遷移モードを実行する遷移モード実行部と、
を備えることを特徴とする空調制御システム。
【請求項2】
乗員の現在の体感温度を検知する体感温度検知部と、
乗員の所定時間後の体感温度を予測する体感温度予測部と、を備え、
前記遷移モード実行部は、前記体感温度検知部により検知された現在の体感温度と前記体感温度予測部により予測した前記所定時間後の体感温度との差を考慮し、現在から所定時間後までの体感温度の変化量の絶対値が所定値以下になるように、前記車両用空調装置の空調内容を、現在の空調内容から前記所定時間後の空調内容にまで段階的に変化させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の空調制御システム。
【請求項3】
車室内の空調を行う車両用空調装置を制御する空調制御方法であって、
少なくとも車両の経路情報及び車室内外の環境情報から、所定時間後の車室外環境を予測する車室外環境予測工程と、
前記車室外環境の予測結果に基づいて、前記車両用空調装置における前記所定時間後の空調内容を予測する空調予測工程と、
予測した前記車室外環境の変化に応じ、前記車両用空調装置の空調内容を、現在の空調内容から予測した前記所定時間後の空調内容に変化させる遷移モードを実行する遷移モード実行工程と、
を有することを特徴とする空調制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室内の空調を行う車両用空調装置を制御する空調制御システム及び空調制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両には、車室内の空調を行う空調装置(車両用空調装置)が搭載されている。この空調装置を制御するシステムとして、例えば特許文献1には、車室内外の環境情報に基づいて、所定時間後の乗員の体感温度を予測し、予測した乗員の体感温度と乗員の快適体感温度に基づいて空調装置を制御するものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-75244号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のシステムは、車室外環境が変化した後でないと乗員の体感温度が予測できず、変化する外部環境に対しては、これに追従して空調制御を行うことしかできなかった。そのため、急激に外部環境が変化した場合には、その空調制御が間に合わず、乗員に不快感を与えてしまっていた。
【0005】
本発明は、このような事情に対処することを課題としている。すなわち、急激に車室外環境が変化する場合であっても、乗員に不快感を与えることなく空調制御を行うことが可能な空調制御システム及び空調制御方法を提供すること、が本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような課題を解決するために、本発明は、以下の構成を備えた車両制御システを提供するものである。
車室内の空調を行う車両用空調装置を制御する空調制御システムであって、少なくとも車両の経路情報及び車室内外の環境情報から、所定時間後の車室外環境を予測する車室外環境予測部と、前記車室外環境の予測結果に基づいて、前記車両用空調装置における前記所定時間後の空調内容を予測する空調予測部と、予測した前記車室外環境の変化に応じ、前記車両用空調装置の空調内容を、現在の空調内容から予測した前記所定時間後の空調内容に変化させる遷移モードを実行する遷移モード実行部と、を備えることを特徴とする空調制御システム。
また、本発明は、このような本発明の空調制御システムが行う空調制御方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
このような特徴を有する本発明によると、急激に車室外環境が変化する場合であっても、乗員に不快感を与えることなく空調制御を行うことが可能な空調制御システム及び空調制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係る空調制御システムの概略図である。
図2】本実施形態における車両のハードウェアの概略構成を示すブロック図である。
図3】本実施形態におけるサーバのハードウェアの概略構成を示すブロック図である。
図4】本実施形態における空調制御システムの動作を説明するためのフロー図である。
図5】本実施形態において空調制御システムの動作を適用する具体例について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための実施形態(本実施形態)について、図面を参照しながら詳細に説明する。以下の説明において、同一の符号は、同一の機能の部位を示しており、各図における重複説明は適宜省略する。
【0010】
図1に示すように、本実施形態の空調制御システム1は、車両2とサーバ3とが、ネットワーク4を介して接続されており、ネットワーク4を介して双方向に通信を行うものである。本実施形態の空調制御システム1では、サーバ3において、車両2における所定時間後の車室外環境を予測する。そして、所定時間後の車室外環境が現在の車室外環境よりも大きく変化するとの予測結果である場合、車両2において、空調装置21(車両用空調装置)(図2)の空調内容をその予測した所定時間後の空調内容に変化させる遷移モードを実行する。
【0011】
車両2は、何れの種類の車両であってもよく、例えばエンジン(内燃機関)を搭載した自動車、エンジンを搭載しない電気自動車(EV)、エンジンと走行用の電動モータとを供用する所謂ハイブリッド自動車等の何れであってもよい。
【0012】
図2に示すように、車両2は、空調装置21及びこれを制御する空調ECU(Electronic Control Unit)22と、後述の各種センサを備えたセンサ部23と、ナビゲーション装置24及びこれを制御するナビECU25とを備える。また、車両2は、CGW(Central Gateway)26と、TCU(Telematics Control Unit)27とを備える。
【0013】
空調ECU22は、空調装置21に接続されている。この空調ECU22は、CPU(Central Processing Unit)221と、各種プログラム等を格納するROM(Read Only Memory)222と、作業領域としてのRAM(Random Access Memory)223と、各種プログラム、各種データ等を記憶する記憶部224と、接続部225と、入出力インタフェース(I/F)226とが、バス227を介して互いに通信可能に接続されている。
【0014】
CPU221は、ROM222又は記憶部224に記憶されているプログラムを読み出し、RAM223上でこのプログラムを実行する。そして、CPU221は、このプログラムに従い、各種構成の制御及び各種演算処理を行う。
【0015】
記憶部224は、HDD(Hard Disk Drive)等により構成され、空調装置21を制御するためのプログラムや、例えば後述の運転履歴情報に係るデータが記憶される。ここで、車両2の「運転履歴情報」は、車両2が運転開始位置からナビゲーション装置24において指定された行先までの経路(ルート)における、過去の車両2の運転内容に関する情報であり、例えば過去に何れの経路(ルート)を経由したかの情報、過去の走行時における車速変化等を示す情報等が挙げられる。また、記憶部224には、例えば後述のセンサ部23によって検知された情報に係るデータ等が記憶される。
【0016】
接続部225は、バス28を介して空調ECU22をCGW26に通信可能に接続するための構成部(アダプタ等)である。
【0017】
入出力I/F226は、センサ部23と接続されてセンサ部23が備える各種センサとの間でデータの入出力を行う。センサ部23は、例えば、車両2の車室外の温度を検知する外気温度センサ231、車両2の車室内の温度を検知する内気温度センサ232、車両2の車室内の湿度を検知する湿度センサ233、単位時間且つ単位面積あたりの太陽から放射されるエネルギー量(日射量)を検知する日射センサ234等を備える。
【0018】
またセンサ部23は、車両2の乗員(特に運転者)の生体情報を検知するセンサとして、例えば、車両2の乗員(特に運転者)の体感温度を検知する赤外線センサ235を備えてもよい。更にセンサ部23は、このような生体情報を検知するセンサとして、例えば、車両2の車室内を撮像して乗員(特に運転者)の表情、瞬き等の顔情報を検知するカメラセンサ(図示せず)、車室内にいる乗員(特に運転者)の脈拍数、呼吸数等のバイタル情報を検知するバイタル検知センサ(図示せず)等を備えてもよい。
【0019】
ナビゲーション装置24は、いわゆるカーナビであり、車両2の運転者に対し、例えば車両2の現在の位置情報、車両2の現在位置から行先(目的地)までの経路(ルート)を示す経路情報、現在位置の車両2の周囲内の地図情報等を提供するものである。なお、「車両2の周囲内」は、例えば車両2を中心とする半径1km以内の領域であってよい。また、ナビECU25は、ナビゲーション装置24に接続されると共に、バス29を介してCGW26に通信可能に接続され、このナビゲーション装置24を制御する。
【0020】
ナビゲーション装置24は、GPS(Global Positioning System)からの情報等に基づいて、車両2の現在の位置情報を取得し、その位置情報に係るデータを内部メモリ(図示せず)に記憶する。また、ナビゲーション装置24は、車両2の現在の位置情報と車両2の乗員によって指定された行先情報とに基づいて経路情報を決定し、その経路情報に係るデータを内部メモリに記憶する。また、ナビゲーション装置24は、ナビECU25の制御に基づいて、車両2の現在位置の周囲内の地図情報に係るデータ等を内部メモリから読み出すか無線通信によって外部から取得する。
【0021】
CGW(Central Gateway)26は、バス28、29と接続されて空調ECU22、ナビECU25のそれぞれとの間で通信を行い、空調ECU22、ナビECU25からのデータを統括して管理するものである。また、CGW26は、TCU(Telematics Control Unit)27に通信可能に接続されてTCU27との間で通信を行う。
【0022】
TCU27は、車両2と外部との間で双方向の通信を行うためのユニットである。すなわち、TCU27は、図1に示すネットワーク4を介してサーバ3との間で双方向の通信を行うことから、CGW26より供給された空調ECU22、ナビECU25からのデータを、ネットワーク4を介してサーバ3に送信したり、ネットワーク4を介してサーバ3から受信したデータをCGW26に供給したりする。
【0023】
例えばサーバ3が車両2に対し、車両2の現在の位置情報、経路情報、車両2の現在位置の周囲内の地図情報等の取得要求を行うと、車両2は、ナビECU25により、これらの情報に係るデータをナビゲーション装置24から読み出し、バス29を介してCGW26に供給する。そして、車両2は、CGW26からTCU27に供給したこれらの情報に係るデータを、ネットワーク4を介してサーバ3に送信する。
【0024】
また例えば、サーバ3が車両2に対し、車両2の空調ECU22における記憶部224に記憶されたデータの取得要求を行うと、車両2は、空調ECU22のCPU221により、そのデータを記憶部224から読み出し、バス227、接続部225、バス28を介してCGW26に供給する。そして、車両2は、CGW26からTCU27に供給したデータを、ネットワーク4を介してサーバ3に送信する。
【0025】
図3に示すように、サーバ3は、サーバCPU(Central Processing Unit)31と、各種プログラム等を格納するサーバROM(Read Only Memory)32と、作業領域としてのサーバRAM(Random Access Memory)33と、各種プログラム、各種データ等を記憶するサーバ記憶部34と、サーバ通信インタフェース(I/F)35とが、バス36を介して互いに通信可能に接続されている。
【0026】
サーバCPU31、サーバROM32、サーバRAM33、サーバ記憶部34のハードウェア構成は、上述のCPU221、ROM222、RAM223、記憶部224のハードウェア構成と略同一である。サーバ通信I/F35は、ネットワーク4を介して車両2のTCU27との間で双方向の通信を行うインタフェースである。
【0027】
例えば、サーバ3は、サーバ通信I/F35により、ネットワーク4を介して車両2から、車両2の空調ECU22における記憶部224に記憶されたデータとして、例えば車室内の環境情報のデータ、車両2の運転履歴情報のデータ等を取得する。この際、車両2は、空調ECU22のCPU221により、記憶部224からデータを読み出し、バス227、接続部225、バス28を介してCGW26に供給する。そして、車両2は、CGW26からTCU27に供給したデータを、ネットワーク4を介してサーバ3に送信する。
【0028】
車室内の環境情報としては、例えば内気温度センサ232によって検知される車室内の温度の情報、湿度センサ233によって検知される車室内の湿度の情報等が挙げられる。
【0029】
更に、この車室内の環境情報には、例えば車室内の乗員(特に運転者)の生体情報である、例えば赤外線センサ235によって検知される車室内の乗員の体感温度の情報、カメラセンサ(図示せず)によって検知される車室内の乗員(特に運転者)の表情、瞬き等の顔情報、バイタル検知センサ(図示せず)によって検知される車室内の乗員(特に運転者)の脈拍数、呼吸数等のバイタル情報等を含んでもよい。
【0030】
また例えば、サーバ3は、サーバ通信I/F35により、ネットワーク4を介し、車両2や気象情報提供システム(図示せず)等から、車両2の車室外の環境情報を取得する。この車室外の環境情報は、例えば、外気温度センサ231によって検知される車室外の温度の情報、日射センサ234によって検知される日射量の情報等の他、車両2が備えるナビゲーション装置24によって取得される車両2の現在位置の周囲内の地図情報、気象情報提供システムにより提供される気象情報等であってよい。この場合、車両2では、CPU221により、記憶部224から読み出した車室外の温度の情報に係るデータ、日射量の情報に係るデータ等を、バス28等を介してCGW26に供給すると共に、ナビECU25により、車両2の現在位置の周囲内の地図情報に係るデータを、バス29を介してCGW26に供給する。そして車両2では、CGW26からTCU27にそれらのデータを供給した後、ネットワーク4を介してサーバ3に送信する。またこの場合、気象情報提供システムにより提供される気象情報の内、現在位置の車両2の周囲内の気象情報(例えば、気温、天気内容(晴れ、曇り、雨、雪等)の他、太陽の位置(方位、高さ)、雨雲の位置、落雷の発生位置等)のデータが、ネットワーク4を介してサーバ3に送信される。
【0031】
サーバCPU31は、車両2からネットワーク4を介してサーバ通信I/F35により受信したデータを、バス36を介してサーバ記憶部34に記憶する。また、サーバCPU31により必要に応じてサーバ記憶部34から読み出されたデータは、バス36を介してサーバ通信I/F35に供給され、サーバ通信I/F35によりネットワーク4を介して車両2に送信される。
【0032】
ここで、本実施形態における空調制御システム1の動作(空調制御方法)について、図4を用いて説明する。図4に示すように、ステップS1において、空調制御システム1は、サーバ3により車両2の経路情報を取得する。この際、サーバCPU31は、サーバ通信I/F35、ネットワーク4を介して車両2に対し、車両2の現在の位置情報を含む車両2の経路情報の取得要求に係るデータを送信する。すると、車両2のナビECU25は、ナビゲーション装置24の内部メモリから読み出した車両2の現在の位置情報を含む車両2の経路情報をCGW26、TCU27、ネットワーク4を介してサーバ3に送信する。
【0033】
ステップS2において、空調制御システム1は、サーバ3により車両2の車室内外の環境情報を取得する。このステップS2において、サーバCPU31は、サーバ通信I/F35、ネットワーク4を介して車両2に対し、車両2の車室内の環境情報及の取得要求に係るデータを送信する。すると、車両2は、空調ECU22のCPU221により、記憶部224から読み出した車室内の環境情報(車室内の温度、車室内の湿度、乗員の生体情報等)に係るデータを、バス227、接続部225、バス28を介してCGW26に供給する。CGW26は、供給された車室内の環境情報に係るデータをTCU27、ネットワーク4を介してサーバ3に送信する。
【0034】
また、このステップS2において、サーバCPU31は、サーバ通信I/F35、ネットワーク4を介して車両2に対し、車両2の車室外の環境情報の取得要求に係るデータを送信する。すると、車両2は、CPU221により記憶部224から読み出した、例えば車室外の温度の情報に係るデータ、日射量の情報に係るデータ等や、ナビECU25によりナビゲーション装置24の内部メモリから読み出した地図情報に係るデータ等を、バス29を介してCGW26に供給する。CGW26は、供給されたデータをTCU27、ネットワーク4を介してサーバ3に送信する。また、サーバCPU31は、サーバ通信I/F35、ネットワーク4を介し、車両2の車室外の環境情報として、例えば気象情報提供システムから提供される気象情報に係るデータを受信する。
【0035】
ステップS3において、空調制御システム1は、サーバ3により、車両2の運転履歴情報を取得する。このステップS3において、サーバCPU31は、サーバ通信I/F35、ネットワーク4を介して車両2に対し、運転履歴情報の取得要求に係るデータを送信する。すると、車両2は、空調ECU22のCPU221により、記憶部224から読み出した運転履歴情報に係るデータを、バス227、接続部225、バス28を介してCGW26に供給する。CGW26は、供給された運転履歴情報に係るデータをTCU27、ネットワーク4を介してサーバ3に送信する。
【0036】
ステップS4において、空調制御システム1は、サーバ3により、ステップS1で取得した車両2の経路情報、ステップS2で取得した地図情報、ステップS3で取得した運転履歴情報等に基づいて、車両2の所定時間後の位置を予測する。このステップS4において、サーバCPU31は、車両2の所定時間後の位置を予測すると、その予測した所定時間後の車両2の位置の情報に係るデータを、バス36を介してサーバ記憶部34に記憶させる。
【0037】
なお、このステップS4において、サーバCPU31は、ステップS2で取得した車両2の車室内の環境情報(例えば乗員(特に運転者)の生体情報等)、ステップS2で取得した地図情報、ステップS3で取得した車両2の運転履歴情報等に基づいて、ステップS1で取得した車両2の経路情報が示す現時点から行先までの経路(ルート)を変更する処理を行い、その上で車両2の所定時間後の位置を予測するようにしてもよい。
【0038】
例えば、サーバCPU31は、車室内の温度、湿度等の情報から、車室内の環境を改善するために、車両2が行先を変更する可能性があることを推測することができる(例えば車室内が暑く湿度が高いときには、より涼しそうな山道に入る可能性がある等)。また、サーバCPU31は、上述の乗員の生体情報から、車両2の乗員(特に運転者)のイライラ、焦り等の程度を確認することができる。例えば渋滞の発生時には、運転者のイライラ、焦り等の程度が大きくなることから、混雑の少ない脇道に入る可能性がある。また、サーバCPU31は、上述の運転履歴情報から、車両2の運転者の運転癖(例えば渋滞が発生すると特定の脇道に入る等)を確認することができる。ステップS4において、サーバCPU31は、このような情報に基づいて、現在位置から行先までの経路を変更することができる。
【0039】
ステップS5において、空調制御システム1は、サーバ3により、ステップS4で予測した所定時間後の車両2の位置での車室外環境を予測する。具体的に、サーバCPU31は、ネットワーク4を介して気象情報提供システムから所定時間後を含む時間帯の気象予報情報を取得し、この気象予報情報と、ステップS2で取得した車室内外の環境情報等に基づいて、ステップS4で予測した所定時間後の車両2の位置の周囲内における環境(車室外環境)を予測し、その予測結果の情報を生成する。サーバCPU31は、この予測結果の情報に係るデータを、バス36を介してサーバ記憶部34に記憶させる。
【0040】
予測される車室外環境としては、例えばステップS2で取得した車室内外の環境情報を考慮しつつ、地図情報において予測された所定時間後の車両2の位置の周囲内における、気温、天気内容、太陽の位置、雨雲、落雷等の気象予報内容が挙げられる。
【0041】
また、予測される車室外環境情報の別の例としては、例えばステップS2で取得した車室内外の環境情報を考慮しつつ、地図情報において予測された所定時間後の車両2の位置の周囲内における、気温、天気内容、太陽の位置、雨雲、落雷等の気象予報内容と、その予測された所定時間後の車両2の位置の周囲内における、車室外の環境変化の一因となる対象物(例えば、道路沿いの高層ビル、トンネル、海岸沿い道路等)とに基づいて予測される車室外環境が挙げられる。このような予測される車室外環境としては、例えば高層ビルの日陰から抜け出して直射日光が当たる環境、トンネル内に入り外気温が低下する環境、海岸沿い道路上となり直射日光が強いことで外気温が上昇する環境等、急激に車室内の温度が変化する可能性のある環境が挙げられる。
【0042】
ステップS6において、空調制御システム1は、サーバ3により、ステップS5で生成した車室外環境の予測結果の情報が示す所定時間後の車両2の位置の周囲内の環境の変化(例えば日射量の変化量の絶対値)が、任意の許容範囲(例えば日射量の変化量の閾値)を超えるか否かを判断することによって、その環境変化が大きいか否かを判断する。サーバPCU31は、その環境変化が大きい(任意の許容範囲を超える)と判断した場合には(ステップS6でYES)、ステップS7に進み、その環境変化が大きくない(任意の許容範囲以内である)と判断した場合には(ステップS6でNO)、図4の一連の処理を終了する。
【0043】
ステップS7において、空調制御システム1は、サーバ3により、ステップS5で予測した車室外環境の予測結果の情報を車両2に送信する。具体的に、サーバCPU31は、ステップS5で生成した車室外環境の予測結果の情報に係るデータをサーバ記憶部34から読み出し、サーバ通信I/F35、ネットワーク4を介して車両2に送信する。車両2において、TCU27により受信されたこの車室外環境の予測結果の情報に係るデータは、CGW26により、バス28を介して空調ECU22の接続部225からCPU221に供給される。CPU221は、供給された車室外環境の予測結果の情報に係るデータを、バス227を介して記憶部224に記憶させる。
【0044】
ステップS8において、空調制御システム1は、車両2により、空調装置21における所定時間後の空調内容を予測する。具体的に、車両ECU22のCPU221は、ステップS7で供給されて記憶部224に記憶されている車室外環境の予測結果の情報に基づいて、現在の車室外環境から所定時間後の車室外環境への変化に応じ、空調装置21による所定時間後の車室内の空調内容を、その車室外環境の変化に適合した空調内容とする予測(目標温度の予測計算等)を行う。
【0045】
ステップS9において、空調制御システム1は、車両2のCPU221により、ステップS5で予測した所定時間後の車室外環境までの環境変化に応じ、空調装置21の空調内容を、現在の空調内容からステップS8で予測した所定時間後の空調内容に変化させる遷移モードを実行する。これにより、空調装置21では、この遷移モードでの空調が行われる。このような空調制御システム1によれば、急激に車室外環境が変化する場合であっても、乗員に不快感を与えることなく空調制御を行うことがきる。
【0046】
ここで、図5を用いて、空調制御システム1の動作を適用する具体例について説明する。例えば、車両2は、現在、矢印Y1の方向に直進しており、太陽の位置と道路沿いに建つ多数の高層ビル群101の位置との関係において、高層ビル群101の日陰102に位置しており直射日光が当たっていない。そのため、現在、空調装置21は、比較的高い目標温度で冷房運転を行っている。そして、所定時間後(現時点から矢印Y1の方向の約100m先で)、車両2は、矢印Y2に示すように四つ角交差点を左折して矢印Y3の方向へと走行すると予測されるとする。この場合、車両2は、日陰102から抜け出し、太陽の位置が正面となるため、直射日光が正面に当たるようになる。そのため、車両2は、四つ角交差点を左折する所定時間後以降、直射日光が正面に当たることで、車室内の温度が急上昇する可能性がある。
【0047】
この具体例では、上述のステップS1において、サーバCPU31は、取得した車両2の行先までの経路情報において、現在車両2は矢印Y1の方向に直進しているが、所定時間後に(例えば現時点から矢印Y1の方向の約100m先で)四つ角交差点を左折する経路がナビゲーション装置24により提示されていることを確認する。
【0048】
またこの具体例では、上述のステップS2において、サーバCPU31は、車両2から、その車室内の環境情報として、例えば内気温度センサ232によって検知される車室内の温度の情報、湿度センサ233によって検知される車室内の湿度の情報等を取得する。また、このステップS2において、サーバCPU31は、その車室外の環境情報として、車両2から、例えばその現在位置の周囲内の地図情報を取得すると共に、外気温度センサ231によって検知される車室外の温度の情報や、日射センサ234によって検知される日射量の情報等を取得し、更に気象情報提供システムにより提供される気象情報(天気内容、太陽の位置(方位、高さ))等を取得する。
【0049】
またこの具体例では、上述のステップS4において、サーバCPU31は、ステップS1において取得した経路情報、ステップS2で取得した地図情報、ステップS3で取得した車両2の運転履歴情報等から、所定時間後の車両2の位置を、四つ角交差点を左折して矢印Y3の方向への走行を開始する地点と予測する。
【0050】
またこの具体例では、上述のステップS5において、サーバCPU31は、ステップS2で取得した車室内外の温度の情報、車室内の湿度の情報、日射量の情報等や、地図情報、気象情報提供システムから取得した所定時間後を含む時間帯の気象予報情報等に基づいて、所定時間後における四つ角交差点を左折する位置を含む車両2の周囲内の車室外環境情報として、例えば車室外の日射量を予測する。
【0051】
またこの具体例では、現在日陰に位置する車両2が所定時間後には直射日光が正面に当たると予測される。そのため、上述のステップS6において、サーバCPU31は、ステップS2で取得した現在の日射量に比べて所定時間後における車両2の車室外の日射量が大きく増加する(すなわち環境変化が大きい)と判断し(ステップS6でYES)、ステップS7において、ステップS5で予測した車室外環境(日射量)の予測結果の情報を車両2に送信する。
【0052】
またこの具体例では、上述のステップS8において、空調ECU22のCPU221は、ステップS7で得られた車室外環境(日射量)の予測結果に対応するように、所定時間後の車両2における冷房目標温度を予測計算する(空調内容の予測)。
【0053】
またこの具体例では、上述のステップS9において、CPU221は、空調装置21の空調内容を、現在の冷房目標温度からステップS8で予測計算された冷房目標温度にまで段階的にその冷房目標温度を変化させる遷移モードを実行する。空調装置21は、このような遷移モードでの空調を行うことで、所定時間後に急速に車室内が急激に温度上昇することを防止することができる。すなわち、空調制御システム1は、このような具体例において、車両2の乗員に不快感を与えることを防止することができる。
【0054】
本実施形態の空調制御システム1において、少なくともステップS5の処理を行うサーバCPU31は、特許請求の範囲に記載の空調制御システムが備える「車室外環境予測部」の一例を構成し、少なくともステップS5の工程は、特許請求の範囲に記載の空調制御方法の「車室外環境予測工程」の一例を構成する。また、少なくともステップS8の処理を行うCPU221は、特許請求の範囲に記載の空調制御システムが備える「空調予測部」を構成し、少なくともステップS8の工程は、特許請求の範囲に記載の空調制御方法の「空調予測工程」の一例を構成する。
【0055】
また、ステップS9の処理を行う車両2の空調ECU22のCPU221は、特許請求の範囲に記載の空調制御システムが備える「遷移モード実行部」一例を構成し、少なくともステップS9の工程は、特許請求の範囲に記載の空調制御方法の「遷移モード実行工程」の一例を構成する。
【0056】
以上、本実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成は上述の例に限られるものではなく、以下の変形例のように本明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【0057】
例えば空調制御システム1は、変形例として、次のような処理を行うようにしてもよい。例えば、空調制御システム1は、図4のステップS7の後であってステップS8の前の処理として次のステップS71、ステップS72の処理を行うようにしてもよい。ステップS71では、車両2の赤外線センサ235が、車室内の乗員(特に運転者)の体感温度を検知する。その後のステップS72では、車両2の空調ECU22のCPU221が、その検知した体感温度と、上述のステップS7でサーバ3から送信された所定時間後の車室外環境情報とに基づいて、所定時間後の乗員の体感温度を予測し、その予測した各体感温度のデータを記憶部224に記憶させる。
【0058】
その後、CPU221が、ステップS8で所定時間後の空調内容を予測した後、ステップS9で遷移モードを実行する際、ステップS71で検知した現在の体感温度(例えば23℃)とステップS72で予測した所定時間後の体感温度(例えば25℃)との差を考慮し、現在から所定時間後までの体感温度の変化量の絶対値が所定値以下(例えば0.5℃以下)になるように、空調装置21の空調内容を、現在の空調内容からステップS8で予測した所定時間後の空調内容にまで段階的に変化させる。或いは、CPU221は、空調内容を段階的でなく、略直線的(リニア)に変化させてもよい。ここで述べた、現在から所定時間後までの体感温度の変化量の絶対値は、例えば、現在の体感温度と予測した所定時間後の体感温度との差に比べて大幅に小さい値であってよい。
【0059】
このような変形例によれば、車両2の乗員の体感温度が急激に変化して乗員に違和感等の不快感を与えることを防止することができ、車両2の車室内の空調環境をより快適なものとすることができる。
【0060】
なお、ステップS71の処理を行う車両2の空調ECU22のCPU221は、特許請求の範囲に記載の空調制御システムが備える「体感温度検知部」の一例を構成する。また、ステップS72の処理を行う車両2の空調ECU22のCPU221は、特許請求の範囲に記載の空調制御システムが備える「体感温度予測部」の一例を構成する。
【0061】
また、上述の実施形態では、図4のステップS1~ステップS7の処理をサーバ3により行い、ステップS8、ステップS9の処理を車両2により行うようにしたが、これに限定されない。変形例として、例えば図4のステップS1~ステップS9までの処理を車両2により行うようにしてもよい。
【0062】
この場合、ステップS1では、車両2における空調ECU22のCPU221が、ナビECU25によりナビゲーション装置24の内部メモリから読み出された車両2の現在の位置情報を含む車両2の経路情報を取得し、この経路情報に係るデータを記憶部224に記憶させる。
【0063】
その後のステップS2では、CPU221が、車室外環境情報として、ナビECU25によりナビゲーション装置24の内部メモリから読み出された地図情報を取得し、その地図情報に係るデータを、記憶部224に記憶させる。また、CPU221が、車室外の環境情報として、ネットワーク4を介して気象情報提供システムから提供される気象情報を取得し、その気象情報に係るデータを記憶部224に記憶させる。また、CPU221は、このステップS2において、上述のようにセンサ部23から車室内外の環境情報に係るデータを取得して記憶部224に記憶させる。
【0064】
その後のステップS3では、CPU221は、上述のように運転履歴情報に係るデータを取得して記憶部224に記憶させる。
【0065】
その後のステップS4では、CPU221が、ステップS1で取得した車両2の経路情報、ステップS2で取得した地図情報、ステップS3で取得した運転履歴情報等に基づいて、車両2の所定時間後の位置を予測する。
【0066】
その後のステップS5では、CPU221が、ステップS2で取得した車室内外の環境情報や、気象情報提供システムから取得した所定時間後を含む時間帯の気象予報情報等に基づいて、ステップS4で予測した所定時間後の車両2の位置の周囲内における環境(車室外環境)を予測し、その予測結果の情報を生成する。CPU221は、この予測結果の情報に係るデータを、記憶部224に記憶させる。或いは、このステップS5では、CPU221が、ネットワーク4を介して車両2の周囲の車両や信号等と通信を行い、ステップS2で取得した車室内外の環境情報等や、この周囲の車両や信号等から得られる情報等に基づいて、所定時間後の車室外環境を予測してもよい。
【0067】
その後のステップS6では、CPU221が、ステップS5で記憶された車室外環境の予測結果の情報が示す所定時間後の車両2の位置の周囲内の環境の変化が大きいか否かを判断する。なお、この変形例では、その後のステップS7の処理は、省略される。
【0068】
その後のステップS8において、CPU221は、ステップS5で記憶部224に記憶された車室外環境の予測結果の情報に基づいて、現在の車室外環境から所定時間後の車室外環境への変化に応じ、空調装置21による所定時間後の車室内の空調内容を、その車室外環境の変化に適合した空調内容とする予測を行う。このようにステップS1~ステップS9までの処理を車両2により行う場合においても、上述の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0069】
1:空調制御システム、2:車両、3:サーバ、4:ネットワーク、21:空調装置、22:空調ECU、23:センサ部、24:ナビゲーション装置、25:ナビECU、26:CGW、27:TCU、28,29,36,227:バス、31:サーバCPU、32:サーバROM、33:サーバRAM、34:サーバ記憶部、35:サーバ通信インタフェース(I/F)、101:高層ビル群、102:日陰、221:CPU、222:ROM、223:RAM、224:記憶部、225:接続部、226:入出力インタフェース(I/F)、231:外気温度センサ、232:内気温度センサ、233:湿度センサ、234:日射センサ、235:赤外線センサ
図1
図2
図3
図4
図5