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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155527
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】車両用空調制御システム
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/00 20060101AFI20241024BHJP
【FI】
B60H1/00 101E
B60H1/00 101T
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023070312
(22)【出願日】2023-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】000001845
【氏名又は名称】サンデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】弁理士法人エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 渉
(72)【発明者】
【氏名】高沢 修
(72)【発明者】
【氏名】蓼沼 厚博
(72)【発明者】
【氏名】大庭 健三
【テーマコード(参考)】
3L211
【Fターム(参考)】
3L211BA01
3L211BA07
3L211EA56
3L211EA66
3L211EA67
3L211EA79
3L211FB08
(57)【要約】
【課題】複数の他車両から取得した環境情報を用いることで、車両の走行予定経路における環境情報を精密に推定し、推定した環境情報に基づいた空調制御を実行することで、環境の急激な変化によって車室内の環境を維持する空調制御が間に合わない事態を抑制し、快適性を維持することを可能とする。
【解決手段】車室内の空調を行う空調装置と、空調装置に空調を指示する空調制御部と、走行予定経路を決定する経路決定部と、通信範囲内の他車両と通信を行う通信部と、を備え、通信部は、複数の他車両が記憶する走行経路情報と環境情報とを含む経路情報を取得し、空調制御部は、取得した複数の経路情報において走行予定経路に関する走行経路情報における環境情報を取得し、取得した環境情報の平均値または中央値を走行予定経路における環境情報と推定し、推定した環境情報に基づいて空調装置に空調を指示することを特徴とする車両用空調制御システムを提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内の空調を行う空調装置と、
前記空調装置に空調を指示する空調制御部と、
目的地までの走行予定経路を決定する経路決定部と、
通信範囲内の他車両と通信を行う通信部と、を備えた車両における空調制御システムであって、
前記通信部は、
複数の前記他車両が記憶する走行経路情報と環境情報とを含む経路情報を取得し、
前記空調制御部は、
取得した複数の前記経路情報において前記走行予定経路に関する前記走行経路情報における前記環境情報を取得し、
取得した前記環境情報の平均値または中央値を前記走行予定経路における環境情報と推定し、
推定した前記環境情報に基づいて空調装置に空調を指示することを特徴とする車両用空調制御システム。
【請求項2】
前記空調制御部は、
取得した前記走行予定経路に関する前記走行経路情報における前記環境情報について異常値を検知した時は、当該異常値を検知した前記環境情報は前記空調装置を制御する情報に用いないことを特徴とする請求項1に記載の車両用空調制御システム。
【請求項3】
前記車両は、
車室外の環境情報を検知するセンサ部を備え、
取得した前記走行予定経路に関する前記走行経路情報における前記環境情報の平均値と前記センサ部が検知した環境情報とが所定値以上乖離している場合は、前記センサ部に異常があると判断することを特徴とする請求項1に記載の車両用空調制御システム。
【請求項4】
前記通信部で通信を行う前記他車両は、
自車両の対向車線を走行している車両であることを特徴とする請求項1に記載の車両用空調制御システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用の空調制御システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、情報サーバや、周辺車両から車両の走行予定経路における気象情報を取得し、取得した情報に基づいて空調を実行する空調制御装置が知られている(下記特許文献1参照)。
【0003】
この従来技術では、取得した気象情報を用いて、車両への熱負荷を予測して空調パターンを決定し空調運転を実行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-66301号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
車両用空調装置では、ユーザーが設定した空調の目標温度を保つために、車両に備えられる外気温センサ等を検出する各種環境センサと空調装置が連動して空調運転を実行している。すなわち、例えば外気温センサが外気温の変化を検知した際は、それに伴い空調装置の制御を調整して車室内の目標温度を保たせている。
【0006】
しかし、環境情報が急激に変化した場合は、車両に備えられる各種環境センサがその情報を検知してから空調装置を制御することとなり、車室内の目標温度を維持するための空調制御が間に合わず、車室内の環境が悪化することでユーザーの快適性を損ねるおそれがある。
【0007】
本発明は、このような事情に対処するために提案されたものである。すなわち、複数の他車両から取得した環境情報を用いて、車両の走行予定経路における環境情報を推定し、推定した環境情報に対応した空調制御を実行することで、環境の急激な変化によって目標温度を維持する空調制御が間に合わない事態を抑制し、ユーザーの快適性を維持することを目的とする。また、複数の他車両から取得した環境情報を用いることで環境情報の推定の精度を向上させ、より精密な空調制御を実行することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような課題を解決するために、本発明に係る車両用空調制御システムは、車室内の空調を行う空調装置と、前記空調装置に空調を指示する空調制御部と、目的地までの走行予定経路を決定する経路決定部と、通信範囲内の他車両と通信を行う通信部と、を備えた車両における空調制御システムであって、前記通信部は、複数の前記他車両が記憶する走行経路情報と環境情報とを含む経路情報を取得し、前記空調制御部は、取得した複数の前記経路情報において前記走行予定経路に関する前記走行経路情報における前記環境情報を取得し、取得した前記環境情報の平均値または中央値を前記走行予定経路における環境情報と推定し、推定した前記環境情報に基づいて空調装置に空調を指示することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
このような特徴によると、本発明は、複数の他車両から取得した環境情報を用いて、車両の走行予定経路における環境情報を推定し、推定した環境情報に対応した空調制御を実行することで、環境の急激な変化によって目標温度を維持する空調制御が間に合わない事態を抑制し、ユーザーの快適性を維持することが可能となる。また、複数の他車両から取得した環境情報を用いることで環境情報の推定の精度を向上させ、より精密な空調制御を実行することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る空調制御システムの構成を示す説明図。
図2】本発明の実施形態に係る自車両の走行予定経路と他車両の走行経路を示した図。
図3】本発明の実施形態に係る図2の状態における他車両の経路情報を示した図。
図4】本発明の実施形態に係る図2から10分が経過した自車両の走行予定経路と他車両の走行経路を示した図。
図5】本発明の実施形態に係る図4の状態における他車両の経路情報を示した図。
図6】本発明の実施形態に係る空調制御システムにおける制御フロー。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の説明において、同一の符号は同一の機能の部位を示しており、各図における重複説明は適宜省略する。
【0012】
本発明における車両用空調制御システム1は、自車両αに搭載される複数の車載ECUによって構成されている。
【0013】
図1に示すように、自車両αには、複数の車載ECUが搭載されている。車載ECUは、複数のECU(Electronic Control Unit)と、これらECU間の通信や車両外部との通信を中継する中継装置であるセントラルゲートウェイ(CGW)50が車載ネットワークによって相互に通信可能に接続されて構成されている。各車載ECUは、例えば、CPU(Central Processing Unit)又はMPU(Micro Processing Unit)等のプロセッサや電気回路、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等の記憶素子を備えて構成することができる。また、車載ECUが実行する動作の一部又は全部を、ASIC(application specific integrated circuit)、FPGA(field-programmable gate array)やGPU(Graphics Processing Unit)などのハードウェアにより実現することもできる。
【0014】
車両用空調制御システム1は、複数の他車両から取得した情報に基づいて、目的地までの走行予定経路上の環境を推定して空調計画を構築し、構築した空調計画に基づいた空調制御を実行する。
【0015】
自車両αには、外部と通信を行うための通信部21と、通信部21を制御するための通信ECU20が備えられており、通信部21には、少なくとも車両間通信部211と、現在位置情報取得部212が設けられている。
【0016】
車両間通信部211は、自車両αから一定範囲内における他車両βから経路情報を取得するために設けられ、例えば対向車線を走行している車両から経路情報を取得する。経路情報とは、例えば、車両が現在位置までどのような走行経路で走行してきたかについての走行経路情報と、走行経路の走行地点毎における走行時刻についての走行時刻情報と、センサ部で検知した走行経路の走行地点毎における外気温や日射量等の車室外についての情報であって空調運転に影響を及ぼす環境情報が含まれる情報である。車両間通信部211で取得した経路情報は、空調ECU10の空調計画部110に送信される。
【0017】
現在位置情報取得部212は、所定時間ごとに人工衛星からの電波を受信することで現在位置を特定するGNSS(Global Navigation Satellite System)(例えば、GPS(Global Positioning System))によって自車両αの現在位置情報を取得する。現在位置情報取得部212で取得した現在位置情報は、ナビゲーション装置31に送信される。
【0018】
自車両αには、目的地までの運航指示を実行するナビゲーション装置31と、ナビゲーション装置31を制御するナビゲーションECU30が備えられている。ナビゲーション装置31は、少なくとも、目的地入力部311と、経路決定部312とを備え、HDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリなどの地図情報記憶部313に地図情報を保持している。
【0019】
目的地入力部311は、ユーザーが目的地情報を入力するために備えられるものであり、目的地入力部311は、例えば、ユーザーの操作によって入力を行うタッチパネルや、音声を認識して情報を入力するマイクなどが想定される。
【0020】
経路決定部312は、例えば、現在位置情報取得部212により取得した自車両αの現在位置(或いは入力された任意の位置)から、目的地入力部311でユーザーにより入力された目的地までの走行予定経路を、地図情報記憶部313に記憶される地図情報を参照して決定する。決定した走行予定経路の情報は空調ECU10の空調計画部110に送信される。なお、ナビゲーション装置31は、例えば、ユーザーが所有する、自車両αと通信可能なスマートフォンやタブレット端末等の端末装置の機能によって実現されてもよい。
【0021】
自車両αには、車室内外の情報を検知するためのセンサ部41と、センサ部41を制御するためのセンサECU40が備えられており、センサ部41は少なくとも、外気温センサ411と内気温センサ412と日射量センサ413とが備えられている。外気温センサ411は、例えば、エンジン、車体、路面の熱の影響を受けにくい箇所(例えば、フロントバンパー付近)に設置され外気温を検出し、内気温センサ412は、例えば、インストルメントパネルの下部内側に装着され内気温を検出する。外気温センサ411と内気温センサ412は、例えば、温度変化を抵抗変化として感知するサーミスターなどであってよい。日射量センサ413は、例えば、自車両αのフロントウインドシールド等に設置され日射量を検出する。
【0022】
自車両αには、車室内の空調運転を行う空調装置60と、空調装置60を制御する空調ECU10が備えられている。空調ECU10は、CPU11、ROM12、RAM13及び、記憶部14を備えており、CPU11は、ROM12に格納されたプログラムに基づいて種々の処理を実行する。本実施形態では、CPU11は、ROM12に格納されたプログラムを、例えばRAM13等のメモリに読み込んで処理を実行する。
【0023】
空調ECU10のCPU11には、他車両βから取得した情報に基づいて空調計画を構築する空調計画部110が備えられており、空調計画部110は走行経路情報処理部111と、環境情報処理部112と、空調計画構築部113を備えている。また、空調ECU10のCPU11は空調情報処理部114を備えている。空調情報処理部114は、車両用空調制御システム1において、ユーザーが設定した空調運転モードや目標温度と、空調計画部110から取得した情報に基づいて空調装置60に空調運転を実行させる。通常は、ユーザーが設定した空調運転モードや目標温度に基づいて空調装置60に空調運転を実行させる。
【0024】
空調計画部110についての説明は、図1~5を用いて説明する。図2は、自車両αと他車両βの現在位置と、自車両αの走行予定経路と他車両βの走行経路を示す例であり、図3は、自車両αが取得した、他車両βの走行経路情報における走行地点毎の時刻と外気温の情報について走行経路情報処理部111で識別処理を行った結果の例を示したものである。図2に示すように、自車両αは、図示のI9地点からA1地点までの走行を予定しており、経路決定部312によって決定した走行予定経路は、自車両αと目的地(GOAL)とを結ぶ線で示している。他車両βについては現在位置を斜線で塗りつぶした四角で示しており、他車両β毎の走行経路は他車両βから延びる線で示している。また、自車両αを中心に太線で囲われている範囲は、自車両αの車両間通信部211の通信範囲を示している。
【0025】
走行経路情報処理部111は、車両間通信部211で取得した、他車両βの経路情報に含まれる走行経路情報についての識別処理を行う。走行経路情報処理部111は、ナビゲーション装置31の経路決定部312で決定した自車両αの走行予定経路と、車両間通信部211で取得した他車両βの走行経路情報とを照合し、自車両αの走行予定経路に関する走行経路情報と、走行予定経路に関しない走行経路情報とに識別する。自車両αの走行予定経路に関しないと識別した他車両βの走行経路情報については空調計画の構築に用いない。自車両αの走行予定経路に関する走行経路情報とは、自車両αの走行予定経路またはその対向車線を走行した経路情報が想定される。また、同一の走行経路でなくとも、自車両αの走行予定経路付近を走行した経路情報を含むものであってもよい。図2,4では、仮に同一の走行経路であっても区別できるように走行経路を示す線をずらして示している。
【0026】
例えば、図2に示すように、自車両αの他に複数の他車両βがいるが、図示の状態において、自車両αの車両間通信部211で通信可能な範囲内の他車両βは、他車両β1,β2,β3,β4であり、走行経路情報処理部111は、これら4台の他車両βから取得した走行経路情報の識別を行う。
【0027】
具体的には、図2に図示するように、他車両β1の走行経路は、D1~D8地点、D8~I8地点を走行して現在I9地点にいる状態である。そして、走行経路情報処理部111は、図3に示すように、取得した他車両β1の走行経路情報と自車両αの走行予定経路とを照合し、他車両β1のD2~D6地点の走行経路情報と、I8地点の走行経路情報について自車両αの走行予定経路に関する走行経路情報であると識別する。I9地点は自車両αの現在位置であり、I9地点では自車両αに備えられるセンサ部41で検知した情報を用いて空調制御を行うため、走行予定経路に関する走行経路情報には含まれない。図3では、走行予定経路に関する走行経路情報であると識別された情報を太線で囲んで示している。また、図3に示す表のPは車両の走行地点、Teは外気温、Tは走行時刻を表している。ただし、自車両α列の右下がり斜線で塗りつぶされる部分については、Pは走行予定経路(地点)を表し、Tは走行予定時刻を表している。
【0028】
同じように、他車両β2の走行経路情報と自車両αの走行予定経路を照合すると、D5~D6地点、D6~I6地点、I6~I8地点の走行経路情報について走行予定経路に関する走行経路情報と識別し、他車両β3の走行経路情報と自車両αの走行予定経路を照合すると、A2~D2地点、F6~H6地点の走行経路情報について走行予定経路に関する走行経路情報と識別し、他車両β4の走行経路情報と自車両αの走行予定経路を照合すると、D6地点の走行経路情報について走行予定経路に関する走行経路情報と識別する。他車両βの走行経路情報について識別処理をした経路情報は環境情報処理部112に送信される。
【0029】
環境情報処理部112は、走行経路情報処理部111で識別された自車両αの走行予定経路に関する複数の他車両βの走行経路情報における、走行経路上の環境情報を記憶する。そして、記憶した複数の環境情報をそれぞれ比較し、環境情報に異常値が含まれていた場合は、異常値を示した環境情報を、記憶した環境情報から除外する除外処理を行う。
【0030】
異常値とは、例えば、取得した別の他車両βの環境情報の平均値と所定値(例えば、3℃)以上乖離している場合や、他車両βが走行経路で環境情報を検知した地点における時刻と、自車両αが当該地点を走行する走行予定時刻とで、所定時間(例えば1時間)以上時間が空いている場合などが想定される。所定時間以上時間が空いている場合、他車両βが検知した環境情報と自車両αが走行する時の環境情報とで情報に乖離が生じている可能性が高いため、このような環境情報は、環境情報の推定の精度を下げる可能性が高い。そのため、ある地点において、他車両βによる環境情報の検知時刻と、自車両αの走行予定時刻とで所定時間以上時間が空いている場合は、当該環境情報は空調計画の構築に用いない。ここでいう所定値や所定時間とは、車両用空調制御システム1で定められているものでもよいし、ユーザーがそれぞれ設定できるものであってもよい。
【0031】
また、車両間通信部211による経路情報の取得時は、ある地点における他車両βの環境情報の検知時刻と自車両αの走行予定時刻までが所定時間内であった場合において、例えば、渋滞や寄り道等の理由によって時間が経過し、当該地点における他車両βの環境情報の検知時刻と自車両αの走行予定時刻とで所定時間以上時間が空いてしまうことが予見された時は、当該環境情報を、空調計画を構築する情報から除外して、再度、空調計画を構築するとしてもよい。
【0032】
図示の例では、図3に示すように他車両β1,β2,β3,β4の走行経路情報を識別し、自車両αの走行予定経路に関する走行経路情報と識別された走行経路情報において、他車両βが検知した外気温情報を記憶し、異常値を示した外気温情報について除外処理を実行する。図3では、除外処理の対象となった情報は右上がり斜線で塗りつぶして示している。
【0033】
具体的には、例えば、他車両β1がD2地点、D3地点で外気温を検知した時刻はそれぞれ11時18分、11時20分であるが、自車両αがD2地点、D3地点を走行する予定時刻は14時32分、14時30分となっている。この場合、他車両β1がD2地点、D3地点で外気温を検知した時刻と、自車両αがD2地点、D3地点を走行する走行予定時刻は、所定時間(例えば1時間)以上時間が空いていることとなるため、他車両β1がD2地点、D3地点で検知した外気温情報は除外処理の対象となり記憶した環境情報から除外される。
【0034】
また、他車両β4がD6地点で検知した外気温情報(25.5℃)については、例えば、他車両β1,β2がD6地点で検知した外気温情報(それぞれ30.7℃,30.5℃)の平均値(30.6℃)と比べて所定値(例えば3℃)以上乖離しているため、他車両β4がD6地点で検知した外気温情報は除外処理の対象となり、記憶した環境情報から除外される。環境情報について除外処理をした経路情報は空調計画構築部113に送信される。
【0035】
空調計画構築部113は、走行経路情報処理部111で識別処理を行い、環境情報処理部112で除外処理を行った経路情報に基づいて空調計画を構築する。自車両αの走行予定経路の各地点の環境情報について複数の環境情報がある場合には、複数の環境情報の平均値を自車両αが当該地点を走行する時の環境情報として推定する。
【0036】
具体的には、例えば、自車両αの走行予定経路におけるG6地点の外気温について、他車両β2がG6地点で検知した35.8℃と、他車両β3がG6地点で検知した35.9℃の平均値である35.85℃であると推定する平均処理を行う。また、例えば、自車両αの走行予定経路におけるH6地点の外気温について、他車両β2がH6地点で検知した30.7℃と、他車両β3がH6地点で検知した30.8℃の平均値である30.75℃であると推定する平均処理を行う。
【0037】
平均処理を行うと、空調計画構築部113は、推定された外気温に対応した空調計画を構築し、随時、空調情報処理部114に空調情報を送信する。空調情報処理部114は、空調計画構築部113から受信した情報と、ユーザーが設定した目標温度等の情報に基づいて、車室内の環境の維持が可能となるように空調装置60を制御する。
【0038】
例えば、自車両αの走行予定経路では、H6地点からG6地点を通過する経路があり、H6地点の推定される外気温は30.75℃であり、G6地点の推定される外気温は35.85℃であり、その差は5.1℃である。空調情報処理部114は、自車両αがH6地点からG6地点を通過するときに、外気温が5.1℃上昇することを予測し、先回りして外気温が5.1℃上昇しても車室内の環境を維持可能な空調運転を実行する。
【0039】
これにより、環境の変化によって空調装置60の反応が遅れることによる車室内の環境の悪化を抑制できる。例えば、図示の例では、G6地点は他地点と比べて特に外気温が高い地点(例えば、熱が籠りやすいトンネル)であり、外気温が急激に上昇すると空調装置60の熱交換器が所望の能力を発揮できないことがあるが、あらかじめ外気温の上昇を予測し、外気温の上昇に対応した空調を実行可能な状態にしておくことで、こういった問題に対応し、車室内の環境を維持可能な空調運転を実行し、ユーザーの快適性を損ねることを抑制することが可能となる。
【0040】
車両間通信部211による経路情報の取得は随時行われており、その都度、取得した経路情報を空調計画の構築に反映させる。例えば、図4に示す状態は、図2に示した状態から10分が経過し、自車両αが走行予定経路に従ってF6地点にいる状態である。図4の状態では、自車両αの車両間通信部211で通信可能な範囲内に他車両β5がいるため他車両β5の経路情報を取得する。
【0041】
図5に、他車両β5を含めた他車両βの走行地点における時刻と外気温の情報を走行経路情報処理部111で識別処理を行った結果の例を示す。図示される記号や斜線の意味については図3と同一であるため説明は省略する。図5の例では、他車両β5の走行経路情報について識別処理を行った結果、B2~D2地点、D2~D3地点の走行経路情報について自車両αの走行予定経路に関する走行経路情報であると識別する。そして、異常値について除外処理を行い(他車両β5の外気温情報に異常値は無い)、他車両β5の環境情報を含めた他車両βの環境情報の平均値を、自車両αが当該地点を走行する時の環境情報の推定値として更新する。
【0042】
具体的には、例えば、図2の状態ではB2地点における外気温は他車両β3の情報に基づき30.3℃と推定していたが、図4の状態では他車両β3,β5の情報に基づきB2地点の外気温の推定値を平均値である30.55℃に更新する。図3,5の例では環境情報に外気温情報を用いたが、環境情報は外気温情報に限られず、空調運転や車室内環境に影響を及ぼす環境情報であればよい。
【0043】
次に、図6を用いて車両用空調制御システム1における空調計画構築の制御フローについて説明する。
【0044】
まず、車両用空調制御システム1は、自車両αが空調運転の実行中であるかを確認する(ステップS1)。空調運転の実行中でない場合は(ステップS1―NO)、制御処理を終了する。空調運転の実行中であった場合は(ステップS1―YES)、経路決定部312によって走行予定経路が決定済みであるかを確認する(ステップS2)。走行予定経路が決定済みでない場合は制御処理を終了する(ステップS2―NO)。走行予定経路が決定済みである場合は(ステップS2―YES)、車両間通信部211を用いて、他車両βから経路情報の取得を行う(ステップS3)。
【0045】
前述したように、車両間通信部211で取得する経路情報には、他車両βが走行した走行経路情報と走行地点毎における走行時刻の情報と外気温や日射量等の環境情報が含まれている。他車両βから経路情報を取得すると、車両用空調制御システム1は、空調ECU10の走行経路情報処理部111で、取得した他車両βの走行経路情報の識別処理を行う(ステップS4)。他車両βの走行経路情報の識別処理は、空調計画の構築に用いる情報と用いない情報とを識別するために行われる。経路決定部312で決定された自車両αの走行予定経路と、車両間通信部211で取得した他車両βの走行経路情報とを照合し、自車両αの走行予定経路に関しないと識別された走行経路情報は空調計画の構築に用いない。
【0046】
走行経路情報の識別が終了したら、環境情報処理部112は、走行経路情報処理部111で識別された自車両αの走行予定経路に関する他車両βの走行経路情報について、当該走行経路上の環境情報を記憶する(ステップS5)。そして、記憶した複数の環境情報をそれぞれ比較し、環境情報に異常値が含まれていた場合は、異常値を示した環境情報を、記憶した情報から除外する除外処理を行う(ステップS6)。
【0047】
除外処理が終了すると、空調計画構築部113は、環境情報処理部112で除外処理を行った経路情報について平均処理を行う(ステップS7)。平均処理とは前述したように、自車両αの走行予定経路において、他車両βで検知した地点毎の環境情報の平均値を自車両αが当該地点を走行する時の環境情報として推定する処理である。平均処理が終了すると平均処理をした情報に基づいて空調計画を構築(更新)する(ステップS8)。
【0048】
空調計画を構築(更新)が終了すると、空調計画構築部113は空調計画に基づいた空調情報を空調情報処理部114に送信し、空調情報処理部114は受信した空調情報に基づいて空調装置60を制御し空調運転を実行する(ステップS9)。空調計画に基づく空調制御は自車両αが目的地に到着するまで実行する(ステップS10―NO)。目的地に到着すると空調制御は終了する(ステップS10―YES)。
【0049】
このように、本発明における車両用空調制御システム1は、自車両αの走行予定経路上の環境情報を推定して、環境に対応した空調運転を先回りして実行することで、環境が変化した際に空調装置60の反応が遅れることがなく、ユーザーの快適性を維持することが可能となる。
【0050】
特に、対向車線を走行してくる他車両βから取得する経路情報は、自車両αの走行予定経路に関する走行経路情報を有している可能性が高い。よって、経路情報の取得対象車両を、対向車線を走行する他車両βとすることで、環境情報の推定に不要な取得情報を低減化することができ、正確性の高い経路情報を用いた環境情報の推定が可能となる。
【0051】
ここまでの説明では、車両間通信部211で取得した経路情報を、走行経路情報処理部111や環境情報処理部112で処理することで空調計画の構築に用いる情報を取得したが、例えば、他車両βに自車両αの走行予定経路の情報を送信して、他車両βで前述の情報の処理を行い、処理された情報を自車両αで取得して空調計画を構築してもよい。
【0052】
また、自車両αの現在位置では、自車両αのセンサ部41で検知した情報を用いて空調を行うとしたが、自車両αのセンサ部41で検知した環境情報と、他車両βから取得した環境情報の平均値とを比較して、自車両αのセンサ部41で検知した環境情報が異常値であると判断される場合は、自車両αのセンサ部41が故障していると判断し、現在位置においても他車両βから取得した環境情報の平均値を環境情報と推定して空調制御を行うとしてもよい。
【0053】
また、実施例では他車両βから取得した環境情報の平均値を自車両αが当該地点を走行する時の環境情報の推定値としたが、平均値でなく例えば中央値を環境情報の推定値としてもよい。
【0054】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成は説明した実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0055】
α:自車両、β:他車両、
1:空調制御システム、
10:空調ECU、11:CPU、12:ROM、13:RAM、14:記憶部、
20:通信ECU、21:通信部、
30:ナビゲーションECU、31:ナビゲーション装置、
40:センサECU、41:センサ部、
50:CGW、60:空調装置、
110:空調計画部、111:走行経路情報処理部、
112:環境情報処理部、113:空調計画構築部、114:空調情報処理部、
211:車両間通信部、212:現在位置情報取得部、
311:目的地入力部、312:経路決定部、313:地図情報記憶部、
411:外気温センサ、412:内気温センサ、413:日射量センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6