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特開2024-155530成形品、金型装置、及び成形品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155530
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】成形品、金型装置、及び成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/42 20060101AFI20241024BHJP
   B29C 45/14 20060101ALI20241024BHJP
   B29C 45/37 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
B29C33/42
B29C45/14
B29C45/37
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023070316
(22)【出願日】2023-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】506027790
【氏名又は名称】厚木化成株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】591007295
【氏名又は名称】株式会社アプリス
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】新國 崇之
(72)【発明者】
【氏名】調所 義之
(72)【発明者】
【氏名】小野 博昭
(72)【発明者】
【氏名】水口 友孝
【テーマコード(参考)】
4F202
4F206
【Fターム(参考)】
4F202AD05
4F202AD06
4F202AD08
4F202AG07
4F202AH55
4F202AR13
4F202CA11
4F202CB01
4F202CB12
4F202CK12
4F202CQ01
4F206AD05
4F206AD06
4F206AD08
4F206AG07
4F206AH55
4F206AR13
4F206JA07
4F206JB12
4F206JB20
4F206JL02
4F206JQ81
(57)【要約】
【課題】第1シートと樹脂の接着強度を向上する、技術を提供する。
【解決手段】成形品は、天井面又は底面が開口する空間を内部に形成する。成形品は、前記空間の底面又は天井面の少なくとも一部を形成する平面部と、前記平面部の周縁において前記平面部から突出して前記空間の側面の一部を形成する突出部と、を有する第1シートと、前記第1シートに対して一体化される樹脂部と、を備える。前記樹脂部は、前記空間の側面に段差を形成して前記突出部の先端を押さえる第1押さえ部と、前記突出部の側面を押さえる第2押さえ部と、前記平面部の周縁を前記第1押さえ部とは反対側から押さえる第3押さえ部と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井面又は底面が開口する空間を内部に形成する成形品であって、
前記空間の底面又は天井面の少なくとも一部を形成する平面部と、前記平面部の周縁において前記平面部から突出して前記空間の側面の一部を形成する突出部と、を有する第1シートと、
前記第1シートに対して一体化される樹脂部と、
を備え、
前記樹脂部は、前記空間の側面に段差を形成して前記突出部の先端を押さえる第1押さえ部と、前記突出部の側面を押さえる第2押さえ部と、前記平面部の周縁を前記第1押さえ部とは反対側から押さえる第3押さえ部と、を有する、成形品。
【請求項2】
前記第1シートに対して分離された第2シートを備え、
前記第2押さえ部は、前記第1シートの前記突出部と前記第2シートの間に充填される、請求項1に記載の成形品。
【請求項3】
前記樹脂部は、前記第2シートを筒状に固定する第1枠部と、前記第2シートを筒状に固定する第2枠部と、前記第1枠部と前記第2枠部を連結するピラー部と、を備え、
前記第1枠部が、前記第1押さえ部と前記第2押さえ部と前記第3押さえ部とを含む、請求項2に記載の成形品。
【請求項4】
前記第2押さえ部は、前記第1シートの前記突出部と金型装置の壁面の間に充填される、請求項1に記載の成形品。
【請求項5】
前記樹脂部は、前記第1押さえ部から前記第2押さえ部とは反対側に続く延長部を有しないか、又は前記延長部を有する場合には前記延長部の厚みが前記第1シートの厚みよりも薄い、請求項1~4のいずれか1項に記載の成形品。
【請求項6】
前記第1シートは、紙を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の成形品。
【請求項7】
天井面又は底面が開口する空間を内部に形成する成形品の成形に使用される金型装置であって、
前記成形品は、前記空間の底面又は天井面の少なくとも一部を形成する第1シートと、前記第1シートに対して一体化される樹脂部と、を備え、
前記金型装置は、前記空間の底面又は天井面を形成する第1壁面と、前記空間の側面を形成する第2壁面と、前記第1壁面と前記第2壁面の境界に形成される凹部と、を有し、
前記第1壁面に対して垂直な断面において、前記第1シートの前記第1壁面からはみ出した部分の寸法に比べて、前記凹部の前記第2壁面に沿う方向の寸法が長い、金型装置。
【請求項8】
請求項7に記載の金型装置の内部に前記第1シートを挿入するインサート工程と、
前記インサート工程の後に前記金型装置の内部に樹脂を充填する充填工程と、
を有する、成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形品、金型装置、及び成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の容器は、ブランクと、ブランクに対して射出された樹脂からなるピラー枠体と、を備える。ピラー枠体は、ブランクを保持する。容器は、ブランクを金型内に挿入した状態で、金型内に溶融した樹脂を充填し固化することにより作製される。ブランクは、扇形の側部ブランクと、円形の底部ブランクと、連結ブランクと、を含む。連結ブランクは、側部ブランクと底部ブランクを連結する。ブランクは、筒状に組み立てられ、金型内に挿入される。ブランクは、プラスチックフィルムである。
【0003】
特許文献2に記載の容器は、側面用ラベルと底面用ラベルを金型内に挿入した状態で、金型内に溶融した樹脂を充填し固化することにより作製される。側面用ラベルは、容器の側壁及び糸底の外周面にインモールドされるものである。底面用ラベルは、容器の底部の内面又は外面にインモールドされるものである。底面用ラベルは、容器の底部の内面又は外面よりも大きく形成され、樹脂の充填圧によって折り曲げられる。底面用ラベルが折り曲げられることで、樹脂の通路が確保される。側面用ラベルと底面用ラベルは、プラスチックフィルムである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-126563号公報
【特許文献2】特開平9-174595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、扇形の側部ブランクと円形の底部ブランクとが分離されていないので、ブランクの輪郭線の形状が複雑である。ブランクの輪郭線は、ブランクをシートから切り取る切り取り線で規定される。ブランクの切り取り線が複雑である場合、切り取り加工が煩雑になってしまう。また、切り取り線が複雑である場合、切り取り後に生じるゴミの量が多く、資源の無駄が多くなってしまう。
【0006】
特許文献2では、側面用ラベルと底面用ラベルとが分離されており、別々に切り取られる。側面用ラベルの切り取り線と、底面用ラベルの切り取り線が別々に設定される。それゆえ、個々の切り取り線の形状が単純であり、切り取り加工が容易である。また、側面用ラベルの切り取り線と、底面用ラベルの切り取り線の配置(位置及び向きなど)を、自由に変更することができる。それゆえ、切り取り後に生じるゴミの量が少なく、資源の無駄が少なくなる。
【0007】
従来から、第1シートを金型内に挿入した状態で、金型内に樹脂を充填し、成形品を作製することが行われていたが、第1シートと樹脂の接着強度の観点で改善の余地があった。例えば、容器の側壁における樹脂の厚みが容器の底壁を構成する第1シートの厚みよりも薄い場合、第1シートが樹脂の圧力で折れ曲がると、第1シートが樹脂で十分に支えられず、第1シートと樹脂の接着強度が弱くなってしまう。
【0008】
本発明の一態様は、第1シートと樹脂の接着強度を向上する、技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係る成形品は、天井面又は底面が開口する空間を内部に形成する。成形品は、前記空間の底面又は天井面の少なくとも一部を形成する平面部と、前記平面部の周縁において前記平面部から突出して前記空間の側面の一部を形成する突出部と、を有する第1シートと、前記第1シートに対して一体化される樹脂部と、を備える。前記樹脂部は、前記空間の側面に段差を形成して前記突出部の先端を押さえる第1押さえ部と、前記突出部の側面を押さえる第2押さえ部と、前記平面部の周縁を前記第1押さえ部とは反対側から押さえる第3押さえ部と、を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、第1押さえ部と第2押さえ部と第3押さえ部とで第1シートの周縁を3方から押さえることで、第1シートと樹脂の接着強度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1(A)は一実施形態に係る成形品の上面図であり、図1(B)は図1(A)のB-B線に沿った成形品の断面図であり、図1(C)は図1(A)のC-C線に沿った成形品の断面図である。
図2図2は、図1に示す樹脂部の斜視図である。
図3図3は、図1に示す第2シートの斜視図である。
図4図4は、一実施形態に係る金型装置の型閉開始直前の状態を示す断面図である。
図5図5は、図4に続いて、金型装置の型締時の状態を示す断面図である。
図6図6は、図5に続いて、金型装置の射出時の状態を示す断面図である。
図7図7は、図6に続いて、金型装置の型開完了時の状態を示す断面図である。
図8図8は、図7に続いて、金型装置の突き出し時の状態を示す断面図である。
図9図9(A)は一実施形態に係る成形品の上面図であり、図9(B)は図9(A)のB-B線に沿った成形品の断面図であり、図9(C)は図9(A)のC-C線に沿った成形品の断面図である。
図10図10は、一実施形態に係る金型装置の型閉開始直前の状態を示す断面図である。
図11図11は、図10に続いて、金型装置の型締時の状態を示す断面図である。
図12図12は、図11に続いて、金型装置の射出時の状態を示す断面図である。
図13図13は、図12に続いて、金型装置の型開完了時の状態を示す断面図である。
図14図14は、図13に続いて、金型装置の突き出し時の状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、各図面において同一の構成には同一の符号を付し、説明を省略することがある。本明細書において、X軸方向、Y軸方向およびZ軸方向は互いに垂直な方向である。
【0013】
図1図3を参照して、一実施形態に係る成形品10について説明する。成形品10は、図1に示すように、例えば容器であって、天井面14が開口する空間11を内部に形成す空間11は、底面12から天井面14に向けて先太り状であってもよく、テーパーを有してもよい。なお、成形品10は、容器には限定されず、蓋であってもよい。容器を上下反転すれば、蓋として使用することが可能である。成形品10が蓋である場合、図示しないが、成形品10は底面12が開口する空間11を内部に形成する。
【0014】
成形品10は、第1シート20と、第1シート20に対して分離された第2シート30と、第1シート20及び第2シート30に対して一体化される樹脂部40と、を備える。成形品10は、図4図8に示すように、射出成形用の金型装置60の内部に第1シート20と第2シート30を挿入した状態で、金型装置60の内部に溶融した樹脂を充填し固化することにより作製される。
【0015】
第1シート20と第2シート30は、例えば紙を含む。成形品10の一部が紙であれば、樹脂の使用量を低減できる。なお、第1シート20と第2シート30は、紙の代わりにプラスチックフィルムを含んでもよいし、紙とプラスチックフィルムの複合シートであってもよい。第1シート20と第2シート30は、単層構造でもよいし、複数層構造でもよい。第1シート20と第2シート30には、印刷が施されてもよい。
【0016】
第1シート20は、例えば平面視で円形であるが、多角形であってもよい。多角形は、四角形、五角形、又は六角形などである。第1シート20の形状は特に限定されない。成形品10が容器である場合、第1シート20は容器の底壁の少なくとも一部を構成する。なお、成形品10が蓋である場合、第1シート20は蓋の天井壁の少なくとも一部を構成する。第1シート20の厚みは、例えば0.2mm~0.6mである。
【0017】
第2シート30は、例えば扇形であり、図3に示すように円筒状に丸めて金型装置60内に挿入される。成形品10が容器である場合、第2シート30は容器の側壁の少なくとも一部を構成する。なお、成形品10が蓋である場合、第2シート30は蓋の側壁の少なくとも一部を構成する。第2シート30の厚みは、例えば0.2mm~0.6mmである。
【0018】
第2シート30は、一対の側辺31、32が間隔をおいて向かい合うように円筒状に丸められる。なお、第2シート30は、角筒状に折り曲げて金型装置60内に挿入されてもよい。角筒は、四角筒、五角筒、又は六角筒などである。第2シート30の数は、本実施形態では1つであるが、第1シート20の周縁に沿って複数に分割されていてもよい。
【0019】
第1シート20と第2シート30は、分離されており、別々に切り取られる。第1シート20の切り取り線と、第2シート30の切り取り線が別々に設定される。それゆえ、個々の切り取り線の形状が単純であり、切り取り加工が容易である。また、第1シート20の切り取り線と、第2シート30の切り取り線の配置(位置及び向きなど)を、自由に変更することができる。それゆえ、切り取り後に生じるゴミの量が少なく、資源の無駄が少なくなる。
【0020】
第1シート20は、図1に示すように、平面部21を有する。成形品10が容器である場合、平面部21は空間11の底面12の少なくとも一部を形成する。平面部21は、空間11の底面12において露出しており、空間11に接している。平面部21は、本実施形態では円形であるが、多角形であってもよい。なお、成形品10が蓋である場合、平面部21は空間11の天井面14の少なくとも一部を形成する。
【0021】
また、第1シート20は、突出部22を有する。突出部22は、平面部21の周縁において平面部21から突出して空間11の側面13の一部を形成する。突出部22は、空間11の側面13の一部において露出しており、空間11に接している。なお、成形品10が容器ではなく蓋である場合も、突出部22は空間11の側面13の一部を形成する。
【0022】
突出部22は、金型装置60の内部に充填した樹脂の圧力で、平面部21に対して折り曲げられる部位である。一方、平面部21は、樹脂の圧力で折り曲げられない部位である。突出部22は、本実施形態では平面部21の周縁の全体にわたって設けられるが、平面部21の周縁の一部のみに設けられてもよい。突出部22は、平面部21の周縁に沿って間隔をおいて複数設けられてもよい。
【0023】
樹脂部40は、図1に示すように、第1押さえ部41と、第2押さえ部42と、第3押さえ部43と、を有する。第1押さえ部41は、空間11の側面13に段差13aを形成して突出部22の先端を押さえる。段差13aは、第1押さえ部41のうち底面12から遠い側で側面13から内側に突出して段のようになっている箇所のことである。第2押さえ部42は、突出部22の側面を押さえる。第3押さえ部43は、平面部21の周縁を第1押さえ部41とは反対側から押さえる。
【0024】
空間11の側面13に段差13aが形成される場合、側面13の段差13aと底面12の距離が短いと、樹脂の圧力で第1シート20が折り曲げられることで、突出部22の先端が側面13の段差13aに届いてしまう。その結果、第1押さえ部41が無くなってしまう。そうすると、第1シート20の平面部21が空間11とは反対側から押されると、第1シート20が樹脂部40から脱離してしまう。
【0025】
本実施形態では、側面13の段差13aと底面12との距離が十分に長く、樹脂の圧力で第1シート20が折り曲げられても、突出部22の先端が側面13の段差13aまで届くことはない。それゆえ、第1押さえ部41が形成され、第1押さえ部41と第2押さえ部42と第3押さえ部43とが第1シート20の周縁を三方から押さえる。これにより、第1シート20と樹脂部40の接着強度を向上できる。
【0026】
第2押さえ部42は、第1シート20の突出部22と第2シート30の間に充填される。樹脂の圧力で第1シート20が折り曲げられることで、第1シート20の突出部22と第2シート30の間に隙間が形成される。その隙間は、樹脂の流路として利用される。その隙間に樹脂が充填されることで、第2押さえ部42が形成される。
【0027】
樹脂部40は、第1押さえ部41から第2押さえ部42とは反対側に続くピラー部48を有してもよい。ピラー部48は、延長部の一例である。後述する筒状部51(図9参照)は、延長部の別の一例である。延長部は、側面13の周方向一部のみに設けられてもよいし、側面の周方向全体に設けられてもよい。
【0028】
樹脂部40が延長部を有する場合、延長部の厚みT2が第1シート20の厚みT1よりも薄い(図1及び図9参照)。なお、T2はゼロであってもよく、樹脂部40は延長部を有しなくてもよい。
【0029】
特許文献2では、容器の側壁における樹脂(本願の延長部に相当する。)の厚みが、底面用ラベル(本願の第1シートに相当する)の厚みに比べて十分に大きい。特許文献2のようにT2がT1以上である場合、側面13に段差13aがなくても、突出部22の先端を押さえることが可能であり、接着強度に関する課題が生じない。
【0030】
本実施形態のようにT2がT1よりも小さい場合(T2がゼロである場合を含む。)には、側面13に段差13aがあることで、第1押さえ部41の形成が可能になり、接着強度に関する課題を解決することができる。
【0031】
第1押さえ部41と第2押さえ部42は、本実施形態では平面部21の周縁の全体にわたって設けられるが、平面部21の周縁の一部のみに設けられてもよい。第1押さえ部41と第2押さえ部42は、平面部21の周縁に沿って間隔をおいて複数設けられてもよい。第1押さえ部41と第2押さえ部42は、少なくとも突出部22が形成された位置に設けられる。なお、平面部21の周縁の任意の点(全ての点)において、第1押さえ部41と第2押さえ部42の少なくとも1つは設けられる。
【0032】
成形品10が容器である場合、第1押さえ部41と第2押さえ部42は平面部21の周縁の全体にわたって設けられることが好ましい。第1押さえ部41と第2押さえ部42が平面部21の周縁に沿って間隔をおいて複数設けられる場合、容器の内容物を取り出す器具が第1押さえ部41又は第2押さえ部42に引っ掛かってしまう。例えば、容器の内容物は食品であり、器具はカトラリーである。カトラリーは、スプーン、フォーク、ナイフ又は箸を含む。
【0033】
第3押さえ部43は、例えば容器の底面から突き出す脚である。第3押さえ部43は、容器の安定性の観点から、平面部21の周縁の全体にわたって設けられることが好ましい。なお、第3押さえ部43は、平面部21の周縁の一部のみに設けられてもよい。第3押さえ部43は、平面部21の周縁に沿って間隔をおいて複数設けられてもよい。第3押さえ部43は、突出部22が形成された位置に設けられてもよいし、突出部22が形成されない位置に設けられてもよい。
【0034】
樹脂部40は、図1及び図2に示すように、第3押さえ部43に架け渡される直線部44を備えてもよい。直線部44の中央には、溶融した樹脂が最初に流れ込む入口部45が設けられる。入口部45の平面視形状は、本実施形態では円形であるが、多角形であってもよく、特に限定されない。溶融した樹脂は、入口部45に相当する空間に流れ込んだ後、直線部44に相当する空間を通り、第3押さえ部43に相当する空間に流れ込む。
【0035】
直線部44の数は、図2では1つであるが、複数であってもよい。複数の直線部44が入口部45で交差してもよい。直線部44の数が多いほど、樹脂の通路の数が多く、大量の樹脂を流すことができる。一方、直線部44の数が少ないほど、樹脂の使用量を低減できる。第1シート20の厚みは厚いので、直線部44の数が1つであっても、容器の底面の剛性を十分に確保できる。
【0036】
図示しないが、直線部44の一端又は両端において、第1シート20の周縁に切り欠きが設けられてもよい。溶融した樹脂が第3押さえ部43に相当する空間に流れ込み始めるのとほぼ同時に、溶融した樹脂が第1押さえ部41に相当する空間に流れ込み始める。よって、金型装置60内に樹脂を短時間で充填できる。溶融した樹脂は、時間の経過とともに冷却され、固化される。金型装置60内に樹脂を短時間で充填できれば、樹脂を隅々まで充填できる。
【0037】
樹脂部40は、図1及び図2に示すように、第2シート30を筒状に固定する第1枠部46と、第2シート30を筒状に固定する第2枠部47と、第1枠部46と第2枠部47を連結するピラー部48と、を備える。第1枠部46が、第1押さえ部41と第2押さえ部42と第3押さえ部43とを含む。第1枠部46と第2枠部47は、筒状の第2シート30を内側から保持する。第1枠部46と第2枠部47は、本実施形態では円環状であるが、環状であればよく、角環状であってもよい。
【0038】
ピラー部48は、第1枠部46と、第2枠部47を連結する。溶融した樹脂は、第1枠部46に相当する空間と、ピラー部48に相当する空間を通り、第2枠部47に相当する空間に流れ込む。ピラー部48は、図3に示す第2シート30の一対の側辺31、32の間に配置され、第2シート30の一対の側辺31、32を固定する。なお、ピラー部48の数は、図2では1つであるが、2つ以上であってもよい。ピラー部48の数が多いほど、第2シート30を所望の形状に維持しやすい。
【0039】
樹脂部40が第1枠部46と第2枠部47とピラー部48とを備えることで、第1シート20と第2シート30を所望の形状に維持できる。なお、図示しないが、樹脂部40は、第1枠部46と第2枠部47とピラー部48で囲まれる領域に、ピラー部48よりも薄い膜部を備えてもよい。膜部は、第2シート30の内側の表面を覆っていてもよい。
【0040】
樹脂部40は、図1及び図2に示すように、第2枠部47から第2シート30の外側に張り出すフランジ部49を備えてもよい。フランジ部49は、図2では円環状であるが、環状であればよく、角環状であってもよい。成形品10が容器である場合、フランジ部49には蓋が貼り付けられ、容器内が密閉される。
【0041】
次に、図4図8を参照して、図1に示す成形品10の製造に用いられる金型装置60の一例について説明する。金型装置60は、例えば、第1金型61と、第2金型62と、を備える。例えば、第1金型61は可動金型であり、第2金型62は固定金型である。第1金型61をZ軸負方向に移動させることで、金型装置60の型閉、及び型締が行われる。また、第1金型61をZ軸正方向に移動させることで、金型装置60の型開が行われる。
【0042】
例えば、第1金型61は雄型であり、第2金型62は雌型である。第1金型61は、コア型63を有する。一方、第2金型62は、キャビティ型68を有する。コア型63は、型閉方向(図4図8において右方向)に向けて先細り状であって円錐台状である。キャビティ型68は、コア型63が差し込まれる空間を形成する。その空間は、型開方向(図4図8において左方向)に向けて先太り状であって円錐台状である。
【0043】
コア型63は、第1壁面64と、第2壁面65と、を有する。成形品10が容器である場合、第1壁面64は空間11の底面12を形成する。なお、成形品10が蓋である場合、第1壁面64は空間11の天井面14を形成する。第2壁面65は、空間11の側面13を形成する。
【0044】
コア型63は、第1壁面64と第2壁面65の境界に凹部66を有する。凹部66は、本実施形態では第1壁面64の周方向全体に亘ってリング状に形成されるが、第1壁面64の周方向に間隔をおいて複数形成されてもよい。樹脂の圧力で第1シート20が折れ曲がると、突出部22が凹部66に入り込む。
【0045】
図4に示すように、型閉開始前に、第1金型61が第1シート20を第1壁面64に吸着保持する。第1壁面64に対して垂直な断面において、第1シート20の第1壁面64からはみ出した部分の寸法Bに比べて、凹部66の第2壁面65に沿う方向の寸法Aが長い。第1金型61が第1シート20を吸着保持した状態で型閉が行われ、第1シート20が金型装置60の内部に挿入される。第2シート30は、型閉開始前に、第2金型62に吸着保持される。型閉に続いて型締が行われる。
【0046】
図5に示すように、型締時に、第1金型61と第2金型62の間に、キャビティ空間69が形成される。キャビティ空間69の一部には、第1シート20と第2シート30が配置されている。第1シート20の周縁は、第2シート30に当接されている。第1シート20の位置ずれが抑制されるので、第1金型61は第1シート20の吸着保持を解除してもよい。
【0047】
図6に示すように、金型装置60が型締された状態で、樹脂の射出が行われる。第2金型62には射出装置のノズル71がタッチされており、ノズル71が溶融した樹脂を射出する。溶融した樹脂が、キャビティ空間69に充填され、固化される。これにより、第1シート20と第2シート30と樹脂部40で構成される成形品10が得られる。
【0048】
第1壁面64に対して垂直な断面において、寸法Bに比べて寸法Aが長い。それゆえ、樹脂の圧力で第1シート20が折り曲げられても、突出部22の先端が側面13の段差13aまで届くことはなく、第1押さえ部41が形成される。第1押さえ部41と第2押さえ部42と第3押さえ部43とが第1シート20の周縁を三方から押さえる。これにより、第1シート20と樹脂部40の接着強度を向上できる。
【0049】
なお、 第1壁面64に対して垂直な断面において寸法Aが寸法Bよりも長ければよく、樹脂の圧力で第1シート20が折り曲げられなくてもよい。その場合、図示しないが、凹部66の内部には樹脂のみが充填される。樹脂のみからなる第4押さえ部が、凹部66の内部に形成される。第4押さえ部と第3押さえ部43とが第1シート20を挟んで押さえる。これにより、第1シート20と樹脂部40の接着強度を向上できる。
【0050】
図7に示すように、型開時に、成形品10は、第1金型61と共にZ軸正方向に移動させられ、第2金型62から抜き取られる。成形品10は、樹脂の固化によって収縮し、第1金型61に抱き付いた状態で、第2金型62から抜き取られる。その後、成形品10は、図8に示すように第1金型61から突き出され、金型装置60の外部に取り出される。
【0051】
第1金型61は、例えば、コア型63に対して進退自在なセパレータ67を有する。セパレータ67は、例えばコア型63を取り囲むようにリング状に形成され、成形品10のフランジ部49に接する。型開後にセパレータ67を型閉方向に移動させると、成形品10が第1金型61から離型される。成形品10の取り出し後、次の型閉前に、セパレータ67は元の位置まで後退させられる。
【0052】
成形品10の製造方法は、金型装置60の内部に第1シート20と第2シート30を挿入するインサート工程と、インサート工程の後に金型装置60の内部に樹脂を充填する充填工程と、を有する。金型装置60の内部に充填した樹脂を冷却して固化することにより、成形品10が得られる。
【0053】
図9を参照して、変形例に係る成形品10について説明する。以下、主に相違点について説明する。本変形例の成形品10は、図1に示す第2シート30を有しない。成形品10は、第1シート20と樹脂部40を有すればよい。この場合、成形品10は、図10図14に示すように、射出成形用の金型装置60の内部に第1シート20を挿入した状態で、金型装置60の内部に溶融した樹脂を充填し固化することにより作製される。
【0054】
第1シート20は、図9に示すように、平面部21と、突出部22と、を有する。樹脂部40は、図9に示すように、第1押さえ部41と、第2押さえ部42と、第3押さえ部43と、を有する。第1押さえ部41は、空間11の側面13に段差13aを形成して突出部22の先端を押さえる。第2押さえ部42は、突出部22の側面を押さえる。第3押さえ部43は、平面部21の周縁を第1押さえ部41とは反対側から押さえる。
【0055】
第2押さえ部42は、第1シート20の突出部22と金型装置60の壁面の間に充填される(図12参照)。樹脂の圧力で第1シート20が折り曲げられることで、第1シート20の突出部22と金型装置60の壁面の間に隙間が形成される。その隙間は、樹脂の流路として利用される。その隙間に樹脂が充填されることで、第2押さえ部42が形成される。
【0056】
樹脂部40は、図9に示すように、第1枠部46と、筒状部51と、を備える。第1枠部46が、第1押さえ部41と第2押さえ部42と第3押さえ部43とを含む。筒状部51は、第1押さえ部41から第3押さえ部43とは反対側に突出し、第2シート30の代わりに、空間11の側面13を形成する。筒状部51は、底面12から天井面14に向けて先太り状であってもよく、テーパーを有してもよい。樹脂部40は、図9に示すように、筒状部51の先端から外側に張り出すフランジ部49を備えてもよい。
【0057】
次に、図10図14を参照して、図9に示す成形品10の製造に用いられる金型装置60の一例について説明する。金型装置60は、例えば、第1金型61と、第2金型62と、を備える。例えば、第1金型61は雄型であり、第2金型62は雌型である。第1金型61は、コア型63を有する。一方、第2金型62は、キャビティ型68を有する。コア型63は、型閉方向(図10図14において右方向)に向けて先細り状であって円錐台状である。コア型63は、第1壁面64と、第2壁面65と、凹部66と、を有する
図10に示すように、型閉開始前に、第1金型61が第1シート20を第1壁面64に吸着保持する。第1壁面64に対して垂直な断面において、第1シート20の第1壁面64からはみ出した部分の寸法Bに比べて、凹部66の第2壁面65に沿う方向の寸法Aが長い。第1金型61が第1シート20を吸着保持した状態で型閉が行われ、第1シート20が金型装置60の内部に挿入される。型閉に続いて型締が行われる。
【0058】
図11に示すように、型締時に、第1金型61と第2金型62の間に、キャビティ空間69が形成される。キャビティ空間69の一部には、第1シート20が配置されている。第1シート20の周縁は、金型装置60の壁面に当接されている。第1シート20の位置ずれが抑制されるので、第1金型61は第1シート20の吸着保持を解除してもよい。
【0059】
図12に示すように、金型装置60が型締された状態で、樹脂の射出が行われる。第2金型62には射出装置のノズル71がタッチされており、ノズル71が溶融した樹脂を射出する。溶融した樹脂が、キャビティ空間69に充填され、固化される。これにより、第1シート20と樹脂部40で構成される成形品10が得られる。
【0060】
第1壁面64に対して垂直な断面において、寸法Bに比べて寸法Aが長い。それゆえ、樹脂の圧力で第1シート20が折り曲げられても、突出部22の先端が側面13の段差13aまで届くことはなく、第1押さえ部41が形成される。第1押さえ部41と第2押さえ部42と第3押さえ部43とが第1シート20の周縁を三方から押さえる。これにより、第1シート20と樹脂部40の接着強度を向上できる。なお、樹脂の圧力で第1シート20が折り曲げられなくてもよい。
【0061】
図13に示すように、型開時に、成形品10は、第1金型61と共にZ軸正方向に移動させられ、第2金型62から抜き取られる。成形品10は、樹脂の固化によって収縮し、第1金型61に抱き付いた状態で、第2金型62から抜き取られる。その後、成形品10は、図14に示すように第1金型61から突き出され、金型装置60の外部に取り出される。
【0062】
成形品10の製造方法は、金型装置60の内部に第1シート20を挿入するインサート工程と、インサート工程の後に金型装置60の内部に樹脂を充填する充填工程と、を有する。金型装置60の内部に充填した樹脂を冷却して固化することにより、成形品10が得られる。
【0063】
以上、本発明に係る成形品、金型装置、及び成形品の製造方法の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態などに限定されない。特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更、修正、置換、付加、削除、及び組み合わせが可能である。それらについても当然に本発明の技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0064】
10 成形品
11 空間
12 底面
13 側面
20 第1シート
21 平面部
22 突出部
40 樹脂部
41 第1押さえ部
42 第2押さえ部
43 第3押さえ部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14