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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155536
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】自転車用ライト
(51)【国際特許分類】
   H05B 47/11 20200101AFI20241024BHJP
   H05B 47/165 20200101ALI20241024BHJP
【FI】
H05B47/11
H05B47/165
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023070328
(22)【出願日】2023-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】000179373
【氏名又は名称】山田電器工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三原 和博
(72)【発明者】
【氏名】三木 敏夫
(72)【発明者】
【氏名】武元 亮
(72)【発明者】
【氏名】大田 益夫
【テーマコード(参考)】
3K273
【Fターム(参考)】
3K273PA07
3K273QA21
3K273QA27
3K273QA28
3K273RA13
3K273SA04
3K273SA05
3K273SA37
3K273SA60
3K273TA15
3K273TA41
3K273TA76
3K273TA78
3K273UA02
3K273VA01
3K273VA02
(57)【要約】
【課題】自転車用ライトに関して、点灯制御を適切に行うための取付姿勢の自由度を高くする。
【解決手段】自転車用ライトLTは、発光部2と、発光部2が光を照らす照射方向及び該照射方向の反対側を除く、いずれかの方向である第1方向における明るさを検知する第1照度センサ3と、発光部2が光を照らす照射方向及び該照射方向の反対側を除く、いずれかの方向である第2方向であって、第1方向とは反対側である第2方向における明るさを検知する第2照度センサ4と、第1方向及び第2方向のいずれか一方の明るさ又は両方の明るさに基づき、発光部2による点灯を制御する制御部5とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光部と、
前記発光部が光を照らす照射方向及び該照射方向の反対側を除く、いずれかの方向である第1方向における明るさを検知する第1照度センサと、
前記発光部が光を照らす照射方向及び該照射方向の反対側を除く、いずれかの方向である第2方向であって、前記第1方向とは反対側である第2方向における明るさを検知する第2照度センサと、
前記第1方向及び前記第2方向のいずれか一方の明るさ又は両方の明るさに基づき、前記発光部の点灯を制御する制御部と
を備える、自転車用ライト。
【請求項2】
請求項1に記載の自転車用ライトにおいて、
前記制御部は、検知された前記第1方向の明るさ及び前記第2方向の明るさのうちいずれがより明るいかを判定し、前記第1方向の明るさ及び前記第2方向のより明るい方又はより暗い方に基づき、前記発光部の点灯を制御する、自転車用ライト。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の自転車用ライトおいて、
検知された前記第1方向の明るさ及び前記第2方向の明るさの差によって、前記発光部が点灯する条件が異なる、自転車用ライト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自転車用ライトに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、周囲の光量を検出する光量検出手段(照度センサ)と、所定の移動状態を検出する移動状態検出手段と、所定範囲を照明する主照明手段(発光部)と、該主照明手段を点消灯駆動する主点消灯駆動手段と、前記光量検出手段の検出値が所定光量以下であるときに前記主照明手段を点灯させるように前記主点消灯駆動手段を制御し、上記以外のときに前記主照明手段を消灯させるように前記主点消灯駆動手段を制御する点消灯制御手段(制御部)とを備える、自動点消灯(ライト)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3573946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されたライトのように、照度センサを備えるライトは、ライトの姿勢によって照度センサの向きや位置が変わる。照度センサが、上方(空側)を向いているか、又は下方(地面側)を向いているかなどにより、照度センサが検知する明るさは大きく異なるはずであり、そのため点灯制御の判定基準である前記所定光量は、ライトが想定された正しい姿勢でなければ適切でないと考えられる。点灯制御の判定基準が適切でないと、発光部の正しい制御ができなくなり、例えば点灯が不要なほど周囲が明るいときであるにもかかわらず、発光部を点灯させて無駄なエネルギーを消費してしまうなどといった問題が起こる。
【0005】
特に、自転車用ライトについては、近年、自転車のデザインが多種多様であり、ユーザが自転車のデザインに応じて独自の取り付け方をしてしまう場合が多い。そのため、自転車用ライトが適切でない取付姿勢となってしまい、適切な点灯制御ができなくなるといった前記の問題が顕著である。このような問題が生じないように、自転車用ライトは、発光部の点灯制御を適切に行えるように、様々な取付姿勢に対応できるようにしたい。
【0006】
本発明は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、自転車用ライトに関して、点灯制御を適切に行うための取付姿勢の自由度を高くすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、発光部と、前記発光部が光を照らす照射方向及び該照射方向の反対側を除く、いずれかの方向である第1方向における明るさを検知する第1照度センサと、前記発光部が光を照らす照射方向及び該照射方向の反対側を除く、いずれかの方向である第2方向であって、前記第1方向とは反対側である第2方向における明るさを検知する第2照度センサと、前記第1方向及び前記第2方向のいずれか一方の明るさ又は両方の明るさに基づき、前記発光部の点灯を制御する制御部とを備える、自転車用ライトに関する。
【0008】
この第1の発明によれば、ライトは、互いに反対方向の明るさを検知する第1照度センサ及び第2照度センサを備えるので、例えば自転車の上方(又は下方)の明るさに基づいて発光部の点灯を制御する場合には、第1照度センサ及び第2照度センサのいずれを上方(又は下方)に向けてもよい。すなわち、点灯制御を適切に行うための取付姿勢の自由度が高くなる。
【0009】
ところで、一般に、自転車は屋外を走行することが多いため、昼間や日没前後は自転車の上方(空側)は明るく、下方(地面側)にいくに従い暗くなる。
【0010】
ここで、第2の発明は、第1の発明において、前記制御部は、検知された前記第1方向の明るさ及び前記第2方向の明るさのうちいずれがより明るいかを判定し、前記第1方向の明るさ及び前記第2方向のより明るい方又はより暗い方に基づき、点灯を制御する。
【0011】
すなわち、この第2の発明では、自転車用ライトの取付姿勢によって、第1照度センサ及び第2照度センサのうちいずれが上方に近い方向(又は下方に近い方向)の明るさを検知するかにかかわらず、より明るい方又はより暗い方に基づき点灯を制御するので、ライトの取付姿勢によらない適切な判定基準を設定しやすい。その結果、ライトの取付姿勢によらない、適切な点灯制御を行うことができる。
【0012】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、検知された前記第1方向の明るさ及び前記第2方向の明るさの差によって、前記発光部が点灯する条件が異なる。
【0013】
第3の発明によれば、第1方向の明るさと第2方向の明るさとの差が比較的大きいと判定された場合には、上下方向の明るさに対応した点灯の制御を行うことができ、第1方向の明るさと第2方向の明るさとの差が比較的小さいと判定された場合には、左右方向の明るさに対応した点灯の制御を行うことができるので、ライトの取付姿勢によらない、適切な点灯制御を行うことができる。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明によると、点灯制御を適切に行うための取付姿勢の自由度が高くなる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態に係る自転車用ライトの概略断面図である。
図2】制御部による制御のフローチャートである。
図3図2における制御ステップのフローチャートである。
図4図3における制御ステップを、座標平面を用いて説明する図である。
図5図3における制御ステップを、座標平面を用いて具体的に説明する図である。
図6】第2実施形態に係る図4相当図である。
図7】第2実施形態に係る図3相当図である。
図8】その他の実施形態に係る図4相当図である。
図9図8とは異なるその他の実施形態に係る、図4相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物又はその用途を制限することを意図しない。
【0017】
なお、以下の説明及び図面における、「前」、「後」、「左」、「右」、「上」及び「下」とは、それぞれ、自転車の前方、後方、左方、右方、上方及び下方を意味する。
【0018】
(第1実施形態)
―自転車用ライトの構成―
図1は、第1実施形態に係る自転車用ライトLT(以下「ライト」という。)を、前後方向及び上下方向に沿って切断した概略断面図である。本実施形態に係るライトLTは、自転車のハンドル(図示しない)に取り付けられ、自転車の進行方向(前方)を照らすためのものである。
【0019】
ライトLTは、電源部1と、電源部1からの電力により点灯する発光部2とを備える。発光部2は、例えばLEDにより構成されている。ライトLTは、下方(第1方向)の明るさを検知する第1照度センサ3と、上方(第2方向)の明るさを検知する第2照度センサ4とを備える。第1照度センサ3及び第2照度センサ4は、それぞれ、検知した明るさに応じたアナログ信号(電圧)を出力する。
【0020】
ライトLTは、第1方向の明るさ及び第2方向の明るさに基づき、発光部2の点灯/消灯を制御する制御部5と、スイッチ6とを更に備える。制御部5は、スイッチ6のオン/オフを検出し、オン状態において第1照度センサ3及び第2照度センサ4から出力されたアナログ信号を検出する。制御部5は、照度センサ3,4から出力された各アナログ信号を、比較及び演算が可能なデジタル値に変換(AD変換)する。制御部5は、前記AD変換により得た各デジタル値の比較演算結果に基づき、発光部2の点灯を制御する。なお、スイッチ6がオン状態のときには、電源部1により発光部2及び制御部5に電力が供給される一方、スイッチ6がオフ状態のときには、発光部2及び制御部5には電力は供給されないので、発光部2は周囲の明るさにかかわらず消灯したままである。
【0021】
ライトLTは、電源部1、発光部2、第1照度センサ3及び第2照度センサ4を収容する筐体7と、筐体7の前部に嵌め込まれ、中央に発光部2が固定された反射鏡8と、反射鏡8の前方で発光部2の光が透過するレンズ9とを更に備える。筐体7の第1照度センサ3及び第2照度センサ4が設けられた部位には、第1照度センサ3及び第2照度センサ4が周囲の明るさを検知できるように、それぞれ開口部7a,7bが設けられている。
【0022】
ライトLTは、ハンドルに取り付けられるための固定ベルト部10を更に備える。
【0023】
―制御方法―
以下、図2~4を参照して、制御部5による制御方法20の流れを説明する。図2に示すように、まず、第1照度センサ3により下方の明るさが検知され、下方の明るさに応じたアナログ信号が、第1照度センサ3から制御部5に送られる(第1検知ステップ21)。
【0024】
続いて、第2照度センサ4により上方の明るさが検知され、上方の明るさに応じたアナログ信号が、第2照度センサ4から制御部5に送られる(第2検知ステップ22)。
【0025】
続いて、制御部5により発光部2の点灯が制御される(制御ステップ23)。制御ステップ23では、第1照度センサ3及び第2照度センサ4から送られた各アナログ信号がAD変換され、対応する各デジタル値が取得される。以下では、第1照度センサ3に対応するデジタル値をデジタル値SL1といい、第2照度センサ4に対応するデジタル値をデジタル値SL2という。
【0026】
なお、第1検知ステップ21及び第2検知ステップ22は、いずれが先に行われてもよく、また同時に行われてもよい。また、第1検知ステップ21及び第2検知ステップ22は、例えば数秒ごとに連続して行われる。第1検知ステップ21又は第2検知ステップ22により、アナログ信号が制御部5に送られた場合に、制御ステップ23が行われる。数秒ごとに連続して取得された複数のアナログ信号(又はこれをAD変換して得たデジタル値SL1,SL2)は、平均化されてもよく、また明らかに妥当でない極端に大きい又は小さい値は排除されてもよい。
【0027】
制御ステップ23は、詳細には図3に示すように、まず、デジタル値SL1とデジタル値SL2とを比較し、いずれが大きいかを判定する(第1判定ステップ24)。デジタル値SL1がデジタル値SL2以上である場合には、デジタル値SL1が閾値TH1よりも大きいか否かを判定し(第2判定ステップ25)、デジタル値SL1が閾値TH1以下である場合にのみ発光部2を点灯させる。デジタル値SL1がデジタル値SL2よりも小さい場合には、デジタル値SL2が閾値TH1よりも大きいか否かを判定し(第3判定ステップ26)、デジタル値SL2が閾値TH1以下である場合にのみ発光部2を点灯させる。なお、閾値TH1は、予め設定された値である。
【0028】
以上のように、制御ステップ23では、第1方向及び第2方向のうち、デジタル値が大きい方、すなわち、より明るい方に基づき、発光部2の点灯制御を行う。
【0029】
図4は、第1照度センサ3のデジタル値SL1をX軸とし、第2照度センサ4のデジタル値SL2をY軸とした座標平面である。図4のドットハッチング領域(以下「点灯領域」という。)は、0≦X≦TH1及び0≦Y≦TH1を満たす領域であり、制御ステップ23において発光部2を点灯させるデジタル値SL1,SL2の範囲を意味する。すなわち、制御部5は、デジタル値SL1,SL2が、この点灯領域に属するか否かを判定し、デジタル値SL1,SL2が点灯領域に属する場合にのみ発光部2を点灯させる。
【0030】
―第1実施形態の作用・効果―
本実施形態によれば、ライトLTは、図1に示すように第1照度センサ3を下向きにしかつ第2照度センサ4を上向きにしてハンドルに取り付けた場合、及び第1照度センサ3を上向きにしかつ第2照度センサ4を下向きにしてハンドルに取り付けた場合のいずれであっても、デジタル値がより大きい方(より明るい方)に基づき、点灯を制御する。このように、本実施形態では、第1照度センサ3及び第2照度センサ4のいずれが上向き(下向き)であるかにかかわらず、発光部2の点灯を同様に制御できるので、点灯制御を適切に行うための取付姿勢の自由度が高くなる。
【0031】
また、本実施形態によれば、制御部5は、検知された第1方向及び第2方向のうち、いずれがより明るいかを判定した上で、より明るい方に基づき点灯を制御するので、適切な閾値TH1を設定しやすい。すなわち、昼間や日没前後は、自転車の上方(空側)は下方(地面側)に比べて明るい傾向にあるので、上方の明るさに合わせて、点灯させる閾値TH1を比較的大きな値にしておけば、適切なタイミングで点灯させることができる。その結果、適切な点灯制御を行うことができる。
【0032】
(第1実施形態の第1変形例)
前記第1実施形態では、第1照度センサ3及び第2照度センサ4により検出された明るさのうち、より明るい方に基づき点灯を制御するが、これに代えて、第1照度センサ3及び第2照度センサ4により検出された明るさのうち、より暗い方に基づき点灯を制御してもよい。
【0033】
本願発明者らの検討の結果、第1方向及び第2方向で明るさに違いがある場合、暗い方に基づく方が、点灯の制御がより正確になる場合があることが分かった。その理由は、第1方向及び第2方向のうち、より暗い方が、日没前か日没後かなどの時間帯に応じた明るさを、より安定して反映しやすいためである。具体的には、第1方向及び第2方向のうちより明るい方は、日没前であれば日光により明るくなっているものの、ライトLTを取り付けた自転車が建物の影に隠れるなどして一時的に急激に暗くなる場合がある。また、第1方向及び第2方向のうちより明るい方は、日没後であれば街灯などの影響で一時的に明るくなっているに過ぎない場合がある。このように、第1方向及び第2方向のうち明るい方は、明るさの変化が比較的激しく不安定である。本変形例では、第1方向及び第2方向のうち、より暗い方に基づき点灯を制御するので、安定した点灯制御を行うことができる。
【0034】
(第1実施形態の第2変形例)
前記第1実施形態では、図4に示す発光部2を点灯させるSL1及びSL2の範囲を示す点灯領域が正方形であるが、この点灯領域は正方形以外であってもよい。その場合、Y=Xの直線に対して線対称になるよう点灯領域を設定することが好ましい。点灯領域がY=Xの直線に対して線対称である場合、第1照度センサ3及び第2照度センサ4のいずれが上方を向いても、発光部2を点灯させるタイミングが変わらないからである。
【0035】
(第1実施形態の第3変形例)
前記第1実施形態及び前記各変形例では、第1方向が下方であり第2方向が上方であるようにライトLTがハンドルに取り付けられるが、本発明はこれに限られない。ライトLTは、第1方向が上方であり第2方向が下方であるようにハンドルに取り付けてもよく、第1方向が左方(右方)であり第2方向が右方(左方)であるようにハンドルに取り付けてもよく、又は第1方向及び第2方向が互いに反対方向である斜方向(左上方、右上方、左下方、右下方など)であるようにハンドルに取り付けてもよい。
【0036】
なお、本発明において、第2方向が「第1方向とは反対側である」とは、第2方向が第1方向から必ずしも180°の方向である必要はなく、135°以上180°以下の方向であってもよく、150°以上180°以下の方向であればより好ましく、170°以上180°以下の方向であれば更により好ましい。
【0037】
(第2実施形態)
以下、第2実施形態について、前記第1実施形態及びその変形例とは異なる構成を説明する。なお、本実施形態の説明では、第1実施形態で用いた符号を共通して用いる。
【0038】
ところで、自転車のハンドルは、例えば、水平方向にほぼ真っすぐなフラットハンドルと呼ばれるハンドル、いわゆるカマキリハンドルとして知られている、ステム部分から大きく上方に(略鉛直方向に)伸びたアップハンドルと呼ばれるハンドルなど様々なデザインがある。ユーザが、これらのハンドルのデザインに応じて、ライトLTを、本来はハンドルの水平部分に取り付けるべきところを鉛直部分に取り付けてしまうケースや、又はその逆のケースが想定される。すなわち、第1照度センサ3及び第2照度センサ4が上方又は下方を向くように取り付けることが想定されている場合に、第1照度センサ3及び第2照度センサ4が左右方向を向いてしまうことも想定される。
【0039】
これによって起こり得ることを、図5を用いて具体的に説明する。図5は、図4に示す座標平面において、日没前から日没後への経過とともに、第1方向の明るさを示すデジタル値SL1及び第2方向の明るさを示すデジタル値SL2の時間変化の軌跡を、曲線矢印により模式的に表したものである。図5の実線の曲線矢印CV1は、第1方向が下方でかつ第2方向が上方となるようにライトLTをハンドルに取り付けた場合におけるデジタル値SL1,SL2の軌跡を示している。言い換えると、実線の曲線矢印CV1は、図1に示されるライトLTがハンドルの水平部分に取り付けられた場合の各デジタル値SL1,SL2の軌跡である。この場合、第1照度センサ3は地面側の明るさを検知し、第2照度センサ4は空側の明るさを検知する。そして、前記のとおり日没前後においては空側(第2方向)が、地面側(第1方向)よりも明るくなりやすい。このため、図5における実線の曲線矢印CV1の変化は、デジタル値SL2がデジタル値SL1よりも大きい領域、すなわちY=Xを示す直線の上側(Y軸側)を通って原点O近づく傾向がある。
【0040】
他方、図5の破線の曲線矢印CV2は、第1方向が右方(又は左方)でかつ第2方向が左方(又は右方)となるようにライトLTをハンドルに取り付けた場合におけるデジタル値SL1,SL2の軌跡を示している。言い換えると、破線の曲線矢印CV2は、図1に示されるライトLTがハンドルの鉛直部分に取り付けられた場合のデジタル値SL1,SL2の軌跡である。この場合、第1照度センサ3は自転車右方(又は左方)の明るさを検知し、第2照度センサ4は自転車左方(又は右方)の明るさを検知する。そして、左方(右方)と右方(左方)とでは、明るさの差が実質的にない、又は明るさの差が比較的小さい傾向にある。このため、破線の曲線矢印CV2の変化は、デジタル値SL2とデジタル値SL1とがほぼ同じである領域、すなわちY=Xを示す直線上又はその比較的近くを通って原点Oに近づく傾向がある。
【0041】
すると、2つの曲線矢印CV1,CV2のうち、破線の曲線矢印CV2の方が、発光部2を点灯させるタイミング、すわなち、図5の点灯領域(ドットハッチング領域)に入るタイミングが、早くなる。なお、図5における点PT1及び点PT2は、曲線矢印CV1,CV2における、それぞれの日没時刻のデジタル値SL1,SL2の値に相当する。すなわち、破線の曲線矢印CV2に相当する取付姿勢の方が、実線の曲線矢印CV1に相当する取付姿勢よりも、早いタイミングで発光部2を点灯させてしまう。その結果、破線の曲線矢印CV2に相当する取付姿勢では、ライトLTの点灯を必要としていない明るい時間帯であっても、発光部2が点灯し、結果として、電池の消耗が早くなるという問題がある。
【0042】
以上の点に鑑みて、本実施形態では、第1照度センサ3により検知された第1方向の明るさ及び第2照度センサ4により検知された第2方向の明るさの差によって、発光部2が点灯する条件が異なる。具体的には、デジタル値SL1とデジタル値SL2との差の絶対値が、予め設定された所定値Cよりも大きいか又は所定値C以下かによって、発光部2が点灯する条件が異なる。
【0043】
まず、|SL1-SL2|>Cの場合には、前記第1実施形態で説明した、図3に示す第1判定ステップ24、第2判定ステップ25及び第3判定ステップ26により、発光部2を点灯させるか否かの判定を行う。ここで、記号||は絶対値を意味する。なお、以下の説明では、第2判定ステップ25及び第3判定ステップ26で用いる閾値をTH1aとする。
【0044】
次に、|SL1-SL2|≦Cの場合には、F(SL1,SL2)≦0という条件を満たすか否かを判定する。Fは、F(X,Y)=X+Y-2TH1bにより定義される関数であり、F(SL1,SL2)≦0は、SL2≧-SL1+2TH1bと同じ意味である。
【0045】
以上の条件が満たされる場合にのみ、発光部2を点灯させる。以上説明した、発光部2の点灯条件を、図4と同様に点灯領域(ドットハッチング領域)により表すと、図6のようになる。なお、所定値Cと、閾値TH1a,TH1bとは、C=2TH1a-2TH1bの関係がある。
【0046】
また、発光部2の点灯条件は、図7に示す処理のように言い換えることもできる。すなわち、デジタル値SL1が閾値TH1aよりも小さく、デジタル値SL2が閾値TH1aよりも小さく、かつF(SL1,SL2)≦0という条件を満たすか否かを判定し(第4判定ステップ27)、この判定条件が満たされる場合にのみ、発光部2を点灯させる。
【0047】
本実施形態によれば、デジタル値SL1とデジタル値SL2との差の絶対値が所定値C以下の場合(|SL1-SL2|≦0)には、仮にデジタル値SL1,SL2がいずれも閾値TH1a以下(すなわち、図6におけるTH1a×TH1aの正方形領域内)であったとしても、F(SL1,SL2)>0(すなわち、図6における直線F(X,Y)=0の右上側)であれば、発光部2は点灯しない。このため、図5の破線の矢印曲線CV2で表されるような、点灯のタイミングが日没時刻PT2よりも早すぎてしまうという事態を避けることができる。
【0048】
以上のように、第1方向の明るさと第2方向の明るさとの差が比較的大きいと判定された場合には、前記第1実施形態と同様に、自転車の上下方向の明るさに対応した点灯の制御を行う一方、検知された第1方向の明るさと第2方向の明るさとの差が比較的小さいと判定された場合には、自転車の左右方向の明るさに対応した点灯の制御を行うことができるので、極めて正確な点灯制御を行うことができる。
【0049】
(その他の実施形態)
第2実施形態における、発光部2を点灯させる条件は、図7に示される点灯領域により表されるが、本発明はこれに限られない。そのほかの点灯領域としては、図8に示すものや、図9に示すものが挙げられる。図8の点灯領域は、X≧0、Y≧0かつX+Y≦TH1を満たす領域である。図9の点灯領域は、0≦X≦TH1かつ0≦Y≦TH1の領域のうち、TH1c<X≦TH1かつTH1c<Y≦TH1を除く領域である。図8及び図9で示されるような条件によっても、第2実施形態と同様に、図5の破線の矢印曲線CV2で表されるような、点灯のタイミングが日没時刻PT2よりも早すぎてしまうという事態を避けることができる。
【0050】
また、前記第1実施形態では、点灯制御の判定のために、デジタル値SL1及びデジタル値SL2を比較する閾値TH1は同じであるが、これに代えて、デジタル値SL1を比較する閾値TH1を、デジタル値SL1を比較する閾値TH2と、異ならせてもよい(TH1≠TH2)。
【0051】
また、前記各実施形態に係るライトLTは、自転車のハンドルに取り付けられ、自転車の進行方向を照らすためのものであるが、本発明はこれに限定されない。すなわち、本発明に係るライトLTは、自転車のハンドル以外の部分に取り付けられてもよく、更に自転車の進行方向以外(例えば後方)を照らすためのものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、自転車用ライトとして有用である。
【符号の説明】
【0053】
1 電源部
2 発光部
3 第1照度センサ
4 第2照度センサ
5 制御部
6 スイッチ
7 筐体
8 反射鏡
9 レンズ
10 固定ベルト部
20 制御方法
21 第1検知ステップ
22 第2検知ステップ
23 制御ステップ
24 第1判定ステップ
25 第2判定ステップ
26 第3判定ステップ
27 第4判定ステップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9