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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155543
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】インクジェットプリンタ
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20241024BHJP
【FI】
B41J2/01 109
B41J2/01 301
B41J2/01 401
B41J2/01 303
B41J2/01 501
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023070341
(22)【出願日】2023-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100189887
【弁理士】
【氏名又は名称】古市 昭博
(74)【代理人】
【識別番号】100218084
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊光
(72)【発明者】
【氏名】山本 真也
(72)【発明者】
【氏名】木村 昌義
(72)【発明者】
【氏名】藤田 陽
(72)【発明者】
【氏名】山本 晃太郎
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EC06
2C056EC11
2C056EC35
2C056FB07
2C056FC02
2C056HA38
(57)【要約】
【課題】立体物を回転させながら立体物に行う多層印刷において印刷効率を高める。
【解決手段】インクジェットプリンタは、立体物を回転させるロータリー装置を備える。制御装置は、立体物の曲率に応じて、第1ノズル列62N1の複数のノズル63C~63Kのうちから第1範囲R1を設定し、第2ノズル列62N2の複数の第2ノズル63W1~63G2のうちから、第1範囲R1とは副走査方向Xにずれるように第2範囲R2を設定する。プリンタは、第1範囲R1に属する第1ノズル63C~63Kから第1インクを吐出させ、第1インクが吐出されている間の少なくとも一部の時間において、第2範囲R2に属する第2ノズル63W1~63G2から第2インクを吐出させる。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ第1インクを吐出するように構成され第1方向に並んだ複数の第1ノズルからなる第1ノズル列と、
それぞれ第2インクを吐出するように構成され前記第1方向に並んだ複数の第2ノズルからなる第2ノズル列と、
前記第1ノズル列および前記第2ノズル列と対向するように立体物を保持し、前記第1方向に直交する第2方向に延びる軸線周りに前記保持した立体物を回転させる回転装置と、
制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記立体物の曲率に応じて、前記第1ノズル列の前記複数の第1ノズルのうちから、使用範囲である第1範囲を設定する第1範囲設定部と、
前記立体物の曲率に応じて、前記第2ノズル列の前記複数の第2ノズルのうちから、使用範囲である第2範囲を、前記第1範囲とは前記第1方向に少なくとも一部がずれるように設定する第2範囲設定部と、
前記回転装置を制御して、前記軸線周りに前記立体物を回転させる回転制御部と、
前記第1範囲に属する前記第1ノズルから前記第1インクを吐出させる第1吐出制御部と、
前記第1吐出制御部によって前記第1インクが吐出されている間の少なくとも一部の時間において、前記第2範囲に属する前記第2ノズルから前記第2インクを吐出させる第2吐出制御部と、を備えている、
インクジェットプリンタ。
【請求項2】
前記第1ノズル列が形成された第1インクヘッドと、
前記第2ノズル列が形成された第2インクヘッドと、
前記第1インクヘッドおよび前記第2インクヘッドを保持するキャリッジと、
前記第1インクヘッドおよび前記第2インクヘッドのうちの少なくとも一方を前記キャリッジにおいて前記第1方向に移動させるヘッド移動装置と、をさらに備え、
前記制御装置は、前記ヘッド移動装置を制御して、前記第1ノズル列と前記第2ノズル列との前記第1方向に関する重複範囲を変化させるヘッド移動制御部を備えている、
請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項3】
被印刷物を支持する支持台と、
前記キャリッジおよび前記支持台のうちの少なくとも一方を移動させることにより、前記キャリッジに対して前記支持台を前記第1方向に移動させる第1方向移動装置と、をさらに備え、
前記ヘッド移動装置は、前記第1ノズル列と前記第2ノズル列とが前記第1方向に関して重複しないか、または、前記第1ノズル列の一部と前記第2ノズル列の一部とが前記第1方向に関して重複する第1の配置で前記第1インクヘッドおよび前記第2インクヘッドを配置すること、および、前記第1ノズル列と前記第2ノズル列とが前記第1方向に関して前記第1の配置よりも重複するように前記第1インクヘッドと前記第2インクヘッドとの位置関係を変化させることが可能に構成され、
前記制御装置は、前記第1方向移動装置を駆動させて前記支持台に支持された前記被印刷物を前記第1方向に移動させながら前記被印刷物に前記第1インクおよび前記第2インクを着弾させる第1モードと、前記回転装置を駆動させて前記立体物を回転させながら前記立体物に前記第1インクおよび前記第2インクを着弾させる第2モードと、を含む複数の印刷モードから印刷モードを選択可能に構成されたモード選択部を備え、
前記ヘッド移動制御部は、前記第1モードが選択された場合には、前記第1の配置で前記第1インクヘッドおよび前記第2インクヘッドを配置し、前記第2モードが選択された場合には、前記設定された前記第1範囲および前記第2範囲に応じて、前記第1ノズル列と前記第2ノズル列とが前記第1方向に関して前記第1の配置よりも重複し、かつ、前記重複範囲が前記第1範囲および前記第2範囲を含むように前記重複範囲を設定する、
請求項2に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項4】
前記回転装置は、前記支持台に着脱可能に構成されている、
請求項3に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項5】
前記第1インクは、プロセスカラーインクであり、
前記第2インクは、特色インクであり、
前記ヘッド移動装置は、前記第2インクヘッドを前記第1方向に移動させる、
請求項2~4のいずれか一つに記載のインクジェットプリンタ。
【請求項6】
前記第2方向に延びるとともに前記キャリッジが前記第2方向に摺動可能に係合されたガイドレールと、前記キャリッジを前記ガイドレールに沿って移動させる駆動装置と、を備えた第2方向移動装置をさらに備え、
前記第1インクヘッドと前記ガイドレールとの前記第1方向の距離は、前記第2インクヘッドと前記ガイドレールとの前記第1方向の距離以下である、
請求項5に記載のインクジェットプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
円柱状の立体物の側面に印刷を行うインクジェットプリンタが従来から知られている。例えば特許文献1には、回転する軸部材によって立体物を回転させる立体物支持装置を備えたインクジェットプリンタが開示されている。特許文献1に記載のインクジェットプリンタは、円柱状の立体物の径が入力される径受付手段と、受け付けられた径に応じて使用ノズル範囲を設定する範囲設定手段と、を備えている。特許文献1によれば、立体物の側面におけるインクの着弾点とインクを吐出するノズルとの距離がインクの飛翔に適切な距離の範囲内になるように、入力された立体物の径に基づいて使用ノズル範囲を設定することができる、とされている。
【0003】
また、被印刷物に対して多層印刷を行うインクジェットプリンタが従来から知られている。例えば特許文献2には、下地画像とカラー画像とを重ねて印刷する重ね印刷を行う印刷システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-100880号公報
【特許文献2】特開2010-055238号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
立体物の側面に多層印刷を行う場合、特許文献1に記載されているようなインクジェットプリンタでは、立体物を回転させながら下層を形成した後、立体物の回転位置を元の位置に戻し、さらにその後に立体物を回転させながら上層を形成することになる。そのため、印刷効率が悪かった。
【0006】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、立体物を回転させながら立体物に多層印刷を行うインクジェットプリンタであって、多層印刷の印刷効率を高めることができるインクジェットプリンタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ここに開示するインクジェットプリンタは、それぞれ第1インクを吐出するように構成され第1方向に並んだ複数の第1ノズルからなる第1ノズル列と、それぞれ第2インクを吐出するように構成され前記第1方向に並んだ複数の第2ノズルからなる第2ノズル列と、前記第1ノズル列および前記第2ノズル列と対向するように立体物を保持し、前記第1方向に直交する第2方向に延びる軸線周りに前記保持した立体物を回転させる回転装置と、制御装置と、を備える。前記制御装置は、第1範囲設定部と、第2範囲設定部と、回転制御部と、第1吐出制御部と、第2吐出制御部と、を備えている。前記第1範囲設定部は、前記立体物の曲率に応じて、前記第1ノズル列の前記複数の第1ノズルのうちから、使用範囲である第1範囲を設定する。前記第2範囲設定部は、前記立体物の曲率に応じて、前記第2ノズル列の前記複数の第2ノズルのうちから、使用範囲である第2範囲を、前記第1範囲とは前記第1方向に少なくとも一部がずれるように設定する。前記回転制御部は、前記回転装置を制御して、前記軸線周りに前記立体物を回転させる。前記第1吐出制御部は、前記第1範囲に属する前記第1ノズルから前記第1インクを吐出させる。前記第2吐出制御部は、前記第1吐出制御部によって前記第1インクが吐出されている間の少なくとも一部の時間において、前記第2範囲に属する前記第2ノズルから前記第2インクを吐出させる。
【0008】
上記インクジェットプリンタによれば、立体物の曲率に応じて、第1ノズル列の使用範囲(第1範囲)および第2ノズル列の使用範囲(第2範囲)が設定され、第1範囲と第2範囲とは、立体物の回転軸方向と直交する方向である第1方向に関して位置がずれている。そのため、第1範囲の第1ノズルからの第1インクの吐出と、第2範囲の第2ノズルからの第2インクの吐出とを同時に行うことができる。その結果、上記インクジェットプリンタによれば、立体物を回転させて行う多層印刷において印刷効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態に係るプリンタの斜視図である。
図2】フロントカバーを開けた状態のプリンタの正面図である。
図3】キャリッジの下面の構成を模式的に示す平面図である。
図4】ロータリー装置の斜視図である。
図5】プリンタのブロック図である。
図6】平面上塗りモードによる印刷のフローチャートである。
図7】ロータリー上塗りモードによる印刷のフローチャートである。
図8】ロータリー上塗りモードにおいて第2インクヘッドが移動した後のキャリッジ下面の平面図である。
図9】平面下塗りモードによる印刷のフローチャートである。
図10】平面下塗りモードにおいて第2インクヘッドが移動した後のキャリッジ下面の平面図である。
図11】ロータリー下塗りモードによる印刷のフローチャートである。
図12】ロータリー下塗りモードにおいて第2インクヘッドが移動した後のキャリッジ下面の平面図である。
図13】他の実施形態に係るキャリッジの下面の平面図である。
図14】他の実施形態に係るキャリッジの下面の平面図であって、平面下塗りモードおよびロータリー下塗りモードにおける第1範囲および第2範囲を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら特に本発明を限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化する。
【0011】
[インクジェットプリンタの構成]
図1は、本実施形態に係るインクジェットプリンタ(以下、プリンタ)10を示す斜視図である。以下の説明では、特に断らない限り、プリンタ10を正面から見たときに、プリンタ10から遠ざかる方を前方、プリンタ10に近づく方を後方とする。左、右、上、下とは、プリンタ10を正面から見たときの左、右、上、下をそれぞれ意味するものとする。また、図面中の符号F、Rr、L、R、U、Dは、それぞれ前、後、左、右、上、下を意味するものとする。図面中の符号Yは主走査方向を示している。主走査方向Yは左右方向である。主走査方向Yは第2方向の一例である。符号Xは、副走査方向を示している。副走査方向Xは前後方向である。副走査方向Xは第1方向の一例である。符号Zは、上下方向を示している。主走査方向Y、副走査方向X、および上下方向Zは、互いに直交している。ただし、上記方向は説明の便宜上定めた方向に過ぎず、プリンタ10の設置態様を何ら限定するものではなく、本発明を何ら限定するものでもない。
【0012】
プリンタ10は、インクジェット方式のプリンタである。本実施形態において、「インクジェット方式」とは、二値偏向方式または連続偏向方式などの各種の連続方式、および、サーマル方式または圧電素子方式などの各種のオンデマンド方式を含む従来公知の各種の手法によるインクジェット式のことをいう。
【0013】
図1に示すように、プリンタ10は、箱状に形成されている。本実施形態では、プリンタ10は、ケース11と、フロントカバー12とを備えている。図2は、フロントカバー12を開けた状態のプリンタ10を示す正面図である。図2に示すように、ケース11の前部には、開口が形成されている。フロントカバー12は、ケース11の開口を開閉自在に設けられている。ここでは、フロントカバー12は、後端を軸に回転可能なように、ケース11に支持されている。フロントカバー12には、窓部12aが設けられている。窓部12aは、例えば、透明のアクリル板によって形成されている。ユーザーは、窓部12aを通じてケース11の内部空間を視認することが可能である。
【0014】
図2に示すように、プリンタ10は、フラットベッド20と、ベッド移動装置30と、キャリッジ40と、キャリッジ移動装置50と、記録ヘッド60と、光照射装置70と、ヘッド移動装置80(図3参照)と、ロータリー装置90と、制御装置100(図1参照)と、を備えている。
【0015】
フラットベッド20は、被印刷物5を支持する支持台である。本実施形態に係るプリンタ10は、いわゆる、フラットベッドタイプのプリンタである。フラットベッド20は、平板状の部材である。フラットベッド20は、主走査方向Yおよび副走査方向Xに延びている。フラットベッド20は、ケース11の内部空間において、主走査方向Yのほぼ中央に配置されている。フラットベッド20の上面には、被印刷物5が載置される。被印刷物5は特に限定されない。被印刷物5は、例えば、記録紙のようなシート状のものであってもよく、立体物であってもよい。被印刷物5の材料も特に限定されない。
【0016】
フラットベッド20の下方には、ベッド移動装置30が配置されている。ベッド移動装置30は、フラットベッド20を副走査方向Xおよび上下方向Zに移動させる。フラットベッド20は、ベッド移動装置30によって下方から支持されている。ベッド移動装置30は、副走査方向移動装置30Xと、上下方向移動装置30Zとを備えている。上下方向移動装置30Zは、フラットベッド20を支持して上下方向Zに移動させる。上下方向移動装置30Zは、副走査方向移動装置30Xによって下方から支持されている。副走査方向移動装置30Xは、上下方向移動装置30Zを支持して副走査方向Xに移動させる。ただし、ベッド移動装置30の構成は上記に限定されない。例えば、副走査方向移動装置30Xと上下方向移動装置30Zとは、上下の位置関係が逆でもよい。本実施形態では、プリンタ10は、ロータリー装置90によって回転させない被印刷物5への印刷の場合、フラットベッド20を前方に間欠的に移動させながら、被印刷物5にインクを吐出する。ただし、プリンタ10は、被印刷物5に対する印刷時、フラットベッド20を後方に移動させながら、被印刷物5にインクを吐出してもよい。
【0017】
キャリッジ40は、記録ヘッド60および光照射装置70を保持している。本実施形態では、キャリッジ40は、ヘッド移動装置80(図3参照)も搭載している。キャリッジ40は、フラットベッド20の上方に配置されている。キャリッジ40は、フラットベッド20と対向するように設けられている。キャリッジ40は、キャリッジ移動装置50によって主走査方向Yに移動される。キャリッジ移動装置50は、ここでは、ガイドレール51と、ベルト52と、図示しない左右のプーリと、キャリッジモータ53(図5参照)とを備えている。
【0018】
図2に示すように、ガイドレール51は、主走査方向Yに延びている。キャリッジ40は、主走査方向Yに摺動可能にガイドレール51に係合している。キャリッジ40には無端状のベルト52が固定されている。ベルト52は、ガイドレール51の右側および左側に設けられたプーリ(図示省略)に巻き掛けられている。一方のプーリにはキャリッジモータ53が取り付けられている。キャリッジモータ53は、キャリッジ40をガイドレール51に沿って移動させる駆動装置の一例である。キャリッジモータ53が駆動するとプーリが回転し、ベルト52が走行する。それにより、キャリッジ40がガイドレール51に沿って主走査方向Yに移動する。
【0019】
図3は、キャリッジ40の下面を示す平面図である。図3に示すように、記録ヘッド60は、キャリッジ40の下面に設けられている。記録ヘッド60は、フラットベッド20と対向している。記録ヘッド60は、フラットベッド20に支持された被印刷物5に向かってインクを吐出する。本実施形態では、記録ヘッド60は、第1インクヘッド61Pと、第2インクヘッド61Sと、を備えている。
【0020】
第1インクヘッド61Pには、それぞれプロセスカラーインクを吐出するノズルからなる複数のノズル列62C、62M、62Y、および62Kが形成されている。ただし、第1インクヘッド61Pに形成されるノズル列の数はこれに限定されない。例えば、ノズル列62C、62M、62Y、および62Kがそれぞれ形成された4つの第1インクヘッド61Pがキャリッジ40に設けられていてもよい。ノズル列62C、62M、62Y、および62Kは、プロセスカラーインクを吐出するノズルからなる第1ノズル列の一例である。以下では、ノズル列62C、62M、62Y、および62Kを総称して、第1ノズル列62N1と呼ぶことがある。
【0021】
ノズル列62Cは、それぞれシアンインクを吐出するように構成され副走査方向Xに並んだ複数のノズル63Cからなっている。ノズル列62Mは、ノズル列62Cよりも右方に配置されている。ノズル列62Mは、それぞれマゼンタインクを吐出するように構成され副走査方向Xに並んだ複数のノズル63Mからなっている。ノズル列62Yは、ノズル列62Mよりもさらに右方に配置されている。ノズル列62Yは、それぞれイエローインクを吐出するように構成され副走査方向Xに並んだ複数のノズル63Yからなっている。ノズル列62Kは、ノズル列62Yよりもさらに右方に配置されている。ノズル列62Kは、それぞれブラックインクを吐出するように構成され副走査方向Xに並んだ複数のノズル63Kからなっている。ただし、第1インクヘッド61Pから吐出されるインクはシアンインク、マゼンタインク、イエローインク、およびブラックインクには限定されない。また、インク色の並び順も特に限定されない。ここでは、複数のノズル列62C、62M、62Y、および62Kの副走査方向Xの位置は揃っている。
【0022】
第2インクヘッド61Sは、第1インクヘッド61Pよりも右方に配置されている。第2インクヘッド61Sは、第1インクヘッド61Pよりも左方に配置されていてもよい。また、第2インクヘッド61Sは、第1インクヘッド61Pよりもガイドレール51から遠くに、ここでは第1インクヘッド61Pよりも前方に配置されている。詳しくは後述するが、第2インクヘッド61Sは、キャリッジ40において副走査方向Xに移動するように構成されている。第2インクヘッド61Sの可動範囲の全てにおいて、第1インクヘッド61Pとガイドレール51との副走査方向Xの距離D1は、第2インクヘッド61Sとガイドレール51との副走査方向Xの距離D2以下である。すなわち、可動範囲の全てにおいて、第2インクヘッド61Sは、第1インクヘッド61Pよりもガイドレール51の遠くに位置するか、または、ガイドレール51からの距離が第1インクヘッド61Pと同じである。ただし、第2インクヘッド61Sは、その可動範囲の一部において第1インクヘッド61Pよりも後方に位置してもよい。
【0023】
第2インクヘッド61Sには、それぞれ特色インクを吐出するノズルからなる複数のノズル列62W1、62W2、62G1、および62G2が形成されている。特色インクは、画像に特殊な意匠的効果を付与するインクである。ただし、第2インクヘッド61Sに形成されるノズル列の数はこれに限定されない。例えば、ノズル列62W1、62W2、62G1、および62G2がそれぞれ形成された4つの第2インクヘッド61Sがキャリッジ40に設けられていてもよい。ノズル列62W1、62W2、62G1、および62G2は、特色インクを吐出するノズルからなる第2ノズル列の一例である。以下では、ノズル列62W1、62W2、62G1、および62G2を総称して、第2ノズル列62N2と呼ぶことがある。
【0024】
ノズル列62W1は、それぞれホワイトインクを吐出するように構成され副走査方向Xに並んだ複数のノズル63W1からなっている。ノズル列62W2は、ノズル列62W1よりも右方に配置されている。ノズル列62W2も、それぞれホワイトインクを吐出するように構成され副走査方向Xに並んだ複数のノズル63W2からなっている。ノズル列62G1は、ノズル列62W2よりもさらに右方に配置されている。ノズル列62G1は、それぞれグロスインク(透明インク)を吐出するように構成され副走査方向Xに並んだ複数のノズル63G1からなっている。ノズル列62G2は、ノズル列62G1よりもさらに右方に配置されている。ノズル列62G2も、それぞれグロスインクを吐出するように構成され副走査方向Xに並んだ複数のノズル63G2からなっている。ここでは、複数のノズル列62W1、62W2、62G1、および62G2の副走査方向Xの位置は揃っている。
【0025】
ホワイトインクは、主として、画像層の上層または下層に下地層を形成するのに使用される。グロスインクは、主として、画像層の上層または下層にコート層を形成するのに使用される。ただし、第2インクヘッド61Sから吐出される特色インクはホワイトインクおよびグロスインクには限定されない。第2インクヘッド61Sからは、特色インクとして、例えばメタリックインク、プライマインク等が吐出されてもよい。第2インクヘッド61Sからは、特色インクとして、シアン、マゼンタ、イエロー、およびブラックインクの二次色に相当する色のインク、例えば、レッドインク、オレンジインク等が吐出されてもよい。また、インクの並び順も特に限定されない。
【0026】
本実施形態では、記録ヘッド60から吐出されるインクは、光硬化性インクである。光硬化性インクは、ここでは、紫外線を照射されると硬化する紫外線硬化型のインクである。光硬化性インクの成分、特性等は特に限定されない。
【0027】
光照射装置70は、キャリッジ40に搭載されている。ここでは、光照射装置70は、記録ヘッド60の左方に設けられている。光照射装置70は、光硬化性インクを硬化させる光をフラットベッド20上の被印刷物5に向かって照射する。図3に示すように、光照射装置70は、光を生成する光源71と、光源71からの光を外部に向かって照射する照射口72とを備えている。光源71は、例えば、複数の紫外線照射LEDから構成されている。照射口72は、ここでは、光を通過させるカバーが設けられた開口部である。ただし、照射口72は、カバー等に覆われない単なる開口部でもよい。照射口72は、副走査方向Xに延びている。
【0028】
ヘッド移動装置80は、第2インクヘッド61Sをキャリッジ40において副走査方向Xに移動させる。ヘッド移動装置80は、ガイドレール81と、駆動モータ82(図5参照)と、を備えている。ガイドレール81は、キャリッジ40の下面に設けられ、副走査方向Xに延びている。ガイドレール81には、第2インクヘッド61Sが副走査方向Xに摺動可能に係合されている。駆動モータ82は、第2インクヘッド61Sをガイドレール81に沿って副走査方向Xに移動させる。駆動モータ82と第2インクヘッド61Sとは、例えば、ベルトおよびプーリを介して連結されていてもよい。または、駆動モータ82と第2インクヘッド61Sとは、例えば、ラックおよびピニオンを介して連結されていてもよい。ヘッド移動装置80の構成は特に限定されない。
【0029】
ヘッド移動装置80は、第1ノズル列62N1と第2ノズル列62N2とが副走査方向Xに関して重複しないか、または、第1ノズル列62N1の一部と第2ノズル列62N2の一部とが副走査方向Xに関して重複する第1の配置で第1インクヘッド61Pおよび第2インクヘッド61Sを配置することが可能に構成されている。第1の配置は、第2インクヘッド61Sが最も前方に移動された配置である。以下、第1の配置における第2インクヘッド61Sの位置を前方側エンド位置P1とも呼ぶ。本実施形態では、第1の配置では、第1ノズル列62N1と第2ノズル列62N2とは、副走査方向Xに関して重複しない。ただし、副走査方向Xに関して第1ノズル列62N1と第2ノズル列62N2の間に隙間ができないように、第1の配置において、第1ノズル列62N1と第2ノズル列62N2とは、僅かに重複していてもよい。
【0030】
また、ヘッド移動装置80は、第1ノズル列62N1と第2ノズル列62N2とが副走査方向Xに関して第1の配置よりも重複するように、第1インクヘッド61Pと第2インクヘッド61Sとの位置関係を変化させることが可能に構成されている。本実施形態では、ヘッド移動装置80は、前方側エンド位置P1よりも後方に第2インクヘッド61Sを移動させ、副走査方向Xに関して、第1ノズル列62N1と第2ノズル列62N2とをより重複させることができる。第2インクヘッド61Sの可動範囲は限定されないが、ここでは、ヘッド移動装置80は、第1ノズル列62N1と第2ノズル列62N2とが副走査方向Xに関して位置が揃うまで、第2インクヘッド61Sを移動させることが可能に構成されている。以下、第2インクヘッド61Sの最も後方位置を後方側エンド位置P2(図3において、二点鎖線で示す)とも呼ぶ。第2インクヘッド61Sが後方側エンド位置P2に位置しているとき、第1ノズル列62N1と第2ノズル列62N2とは、副走査方向Xに関して全部が重複している。
【0031】
本実施形態では、ヘッド移動装置80は、特色インクを吐出する第2インクヘッド61Sを移動させる。特色インクは基本的にベタ塗りされるため、プロセスカラーインクよりも着弾位置の精度が不要である。ヘッド移動装置80による移動によってインクヘッドの位置精度が悪くなるおそれがあるため、本実施形態では、第1インクヘッド61Pよりも位置精度が不要な第2インクヘッド61Sを移動させる。また、インクヘッドがガイドレール51に近い方がキャリッジ40の移動による振動の影響を抑制する点から有利である。そのため、プリンタ10では、第1インクヘッド61Pが第2インクヘッド61Sよりもガイドレール51の近くに配置されている。
【0032】
ロータリー装置90は、立体物6(被印刷物5のうち、立体形状を有し、ロータリー装置90によって回転されながら印刷が行われるものをいう)を保持して前後方向に回転させる。ロータリー装置90は、第1ノズル列62N1および第2ノズル列62N2と対向するように立体物6を保持し、主走査方向Yに延びる軸線Ax周りに保持した立体物6を回転させる。ロータリー装置90は、フラットベッド20上に載置されている。ロータリー装置90は、フラットベッド20に着脱可能に構成されている。本実施形態では、ロータリー装置90は、立体物6への印刷時、前方に向かって立体物6を回転させる。ただし、ロータリー装置90は、立体物6への印刷時、後方に向かって立体物6を回転させてもよい。
【0033】
図4は、ロータリー装置90の斜視図である。図4に示すように、ロータリー装置90は、第1ローラ91と、第2ローラ92と、回転モータ93と、ギアセット94と、ベルト95と、を備えている。第1ローラ91は、主走査方向Yに延び、その軸線周りに回転可能に支持されている。第1ローラ91は、ギアセット94を介して回転モータ93に接続されている。第2ローラ92は、第1ローラ91よりも前方に配置され、主走査方向Yに延びている。第2ローラ92は、その軸線周りに回転可能に支持されている。ベルト95は、第1ローラ91と第2ローラ92とに巻き掛けられている。ベルト95により、第2ローラ92は、第1ローラ91とともに回転する。回転モータ93にはロータリーエンコーダが内蔵されている。回転モータ93は、ロータリーエンコーダにより回転位置を把握できるように構成されている。ただし、ロータリー装置90の構成は、これには限定されない。ロータリー装置90は、例えば、立体物6を把持して回転する機構を備えていてもよい。
【0034】
図5は、本実施形態に係るプリンタ10のブロック図である。図5に示すように、制御装置100は、副走査方向移動装置30X、上下方向移動装置30Z、キャリッジ移動装置50のキャリッジモータ53、記録ヘッド60、光照射装置70の光源71、ヘッド移動装置80の駆動モータ82、およびロータリー装置90の回転モータ93に電気的に接続され、それらの動作を制御している。制御装置100の構成は特に限定されない。制御装置100は、例えばマイクロコンピュータである。マイクロコンピュータのハードウェア構成は特に限定されないが、例えば、ホストコンピュータ等の外部機器から印刷データ等を受信するインターフェイス(I/F)と、制御プログラムの命令を実行する中央演算処理装置(CPU:central processing unit)と、CPUが実行するプログラムを格納したROM(read only memory)と、プログラムを展開するワーキングエリアとして使用されるRAM(random access memory)と、上記プログラムや各種データを格納するメモリ等の記憶装置と、を備えている。なお、制御装置100は必ずしもプリンタ10の内部に設けられている必要はなく、例えば、プリンタ10の外部に設置され、有線または無線を介してプリンタ10と通信可能に接続されたコンピュータ等であってもよい。
【0035】
図5に示すように、制御装置100は、モード選択部101と、径入力部102と、第1範囲設定部103と、第2範囲設定部104と、ヘッド移動制御部105と、回転制御部106と、第1吐出制御部107と、第2吐出制御部108と、を備えている。制御装置100は上記した以外の処理部を備えていてもよいが、ここでは図示および説明を省略する。
【0036】
モード選択部101は、平面上塗りモードと、ロータリー上塗りモードと、平面下塗りモードと、ロータリー下塗りモードと、を含む複数の印刷モードから印刷モードを選択可能なように構成されている。平面上塗りモードおよび平面下塗りモードは、副走査方向移動装置30Xを駆動させてフラットベッド20に支持された被印刷物5を副走査方向Xに移動させながら被印刷物5にプロセスカラーインクおよび特色インクを着弾させるモードである。そのうち、平面上塗りモードでは、プロセスカラーインクによる画像層が下層に、特色インクによる特色インク層が上層に形成される。平面上塗りモードは、第1モードの一例である。平面下塗りモードでは、特色インクによる特色インク層が下層に、プロセスカラーインクによる画像層が上層に形成される。
【0037】
ロータリー上塗りモードおよびロータリー下塗りモードは、ロータリー装置90を駆動させて立体物6を回転させながら立体物6にプロセスカラーインクおよび特色インクを着弾させるモードである。そのうち、ロータリー上塗りモードでは、プロセスカラーインクによる画像層が下層に、特色インクによる特色インク層が上層に形成される。ロータリー上塗りモードは、第2モードの一例である。ロータリー下塗りモードでは、特色インクによる特色インク層が下層に、プロセスカラーインクによる画像層が上層に形成される。
【0038】
径入力部102には、立体物6の直径または半径がユーザーにより入力される。第1範囲設定部103は、各モードにおいて、第1ノズル列62N1の複数のノズル63C~63Kの使用範囲を設定する。第1ノズル列62N1の複数のノズル63C~63Kの使用範囲とは、複数のノズル63Cの副走査方向Xに関する使用範囲、複数のノズル63Mの副走査方向Xに関する使用範囲、複数のノズル63Yの副走査方向Xに関する使用範囲、および、複数のノズル63Kの副走査方向Xに関する使用範囲を意味する。各ノズル列62C~62Kの使用範囲は、同じ範囲である。第1範囲設定部103は、ロータリー上塗りモードおよびロータリー下塗りモードにおいては、入力された立体物6の曲率に応じて、第1ノズル列62N1の複数のノズル63C~63Kの使用範囲を設定する。ロータリー上塗りモードおよびロータリー下塗りモードにおける使用範囲の設定により、ノズル列62C~62Kと立体物6との上下方向の距離を、好適な画像形成が可能な範囲内とすることができる。以下、第1ノズル列62N1の複数のノズル63C~63Kの使用範囲のことを第1範囲R1(図8、10、12を参照)とも称する。
【0039】
第2範囲設定部104は、各モードにおいて、第2ノズル列62N2の複数のノズル63W1~63G2の使用範囲を設定する。第2ノズル列62N2の複数のノズル63W1~63G2の使用範囲とは、ホワイトインクを使用しグロスインクを使用しない場合には、複数のノズル63W1の副走査方向Xに関する使用範囲、および、複数のノズル63W2の副走査方向Xに関する使用範囲を意味する。第2ノズル列62N2の複数のノズル63W1~63G2の使用範囲は、グロスインクを使用しホワイトインクを使用しない場合には、複数のノズル63G1の副走査方向Xに関する使用範囲、および、複数のノズル63G2の副走査方向Xに関する使用範囲を意味する。第2ノズル列62N2の複数のノズル63W1~63G2の使用範囲は、ホワイトインクおよびグロスインクを使用する場合には、複数のノズル63W1、63W2の副走査方向Xに関する使用範囲と、複数のノズル63G1、63G2の副走査方向Xに関する使用範囲とを意味する。第2範囲設定部104は、ロータリー上塗りモードおよびロータリー下塗りモードにおいては、立体物6の曲率に応じて、第2ノズル列62N2の複数のノズル63W1~63G2の使用範囲を設定する。
【0040】
以下、第2ノズル列62N2の複数のノズル63W1~63G2の使用範囲のことを第2範囲R2(図8、10、12を参照)とも称する。第2範囲設定部104は、第2範囲R2を、第1範囲R1とは副走査方向Xにずれるように設定する。ここでは、第2範囲設定部104は、第2範囲R2を、第1範囲R1とは副走査方向Xに完全にずれる(重複部分がない)ように設定するか、または、第1範囲R1に対して副走査方向Xに概ね全部がずれる(僅かな重複部分を有する)ように設定する。平面上塗りモードおよびロータリー上塗りモードの場合には、第2範囲R2は、第1範囲R1よりも前方に設定される。平面下塗りモードおよびロータリー下塗りモードの場合には、第2範囲R2は、第1範囲R1よりも後方に設定される。
【0041】
ヘッド移動制御部105は、ヘッド移動装置80を制御して、第1ノズル列62N1と第2ノズル列62N2との副走査方向Xに関する重複範囲R3(図8、10、12を参照)を変化させる。詳しくは、ヘッド移動制御部105は、平面上塗りモードが選択された場合には、第1の配置(ここでは、第2インクヘッド61Sが前方側エンド位置P1に位置するような配置)で第1インクヘッド61Pおよび第2インクヘッド61Sを配置する。図3に示すように、本実施形態では、第1の配置では、重複範囲R3は存在しない。ヘッド移動制御部105は、平面下塗りモード、ロータリー上塗りモード、またはロータリー下塗りモードが選択された場合には、設定された第1範囲R1および第2範囲R2に応じて、重複範囲R3を設定する。詳しくは、ヘッド移動制御部105は、第1ノズル列62N1と第2ノズル列62N2とが副走査方向Xに関して第1の配置よりも重複し、かつ、重複範囲R3が第1範囲R1および第2範囲R2を含むように重複範囲R3を設定する。ここでは、ヘッド移動制御部105は、算出された第1範囲R1および第2範囲R2を実現可能な重複範囲R3を形成するように、第2インクヘッド61Sを後方に移動させる。
【0042】
回転制御部106は、ロータリー装置90を制御して、軸線Ax周りに立体物6を回転させる。第1吐出制御部107は、第1範囲R1に属するノズル63C~63Kからプロセスカラーインクを吐出させることにより画像層を形成する。第2吐出制御部108は、第1吐出制御部107によってプロセスカラーインクが吐出されている間の少なくとも一部の時間において、第2範囲R2に属するノズル63W1~63G2から特色インクを吐出させる。これにより、ホワイトインクによる下地層またはグロスインクによるトップ層が形成される。かかる制御により、ホワイトインクによる下地層またはグロスインクによるトップ層の形成と、プロセスカラーインクによる画像層の形成とが同時進行される。
【0043】
[平面上塗りモードによる印刷プロセス]
以下では、平面上塗りモードによる印刷プロセスについて説明する。平面上塗りモードでは、フラットベッド20を間欠的に副走査方向Xに前方に移動させることにより、副走査方向Xの印刷位置を移動させながら印刷を行う。典型的には、平面上塗りモードおよび平面下塗りモードでは、ロータリー装置90はフラットベッド20から取り外される。被印刷物5は、フラットベッド20上に直接載置される。ただし、ロータリー装置90はフラットベッド20から取り外されなくてもよく、被印刷物5はロータリー装置90に載置されてもよい。なお、この場合もロータリー装置90は駆動されない。
【0044】
図6は、平面上塗りモードによる印刷のフローチャートの一例である。ここでは、プロセスカラーインクにより画像層を形成し、画像層の上層にグロスインクによるコート層を重ねて形成する例について説明する。ただし、画像層の上に形成されるのは、ホワイトインクによる下地層であってもよい。図6に示すように、平面上塗りモードによる印刷のステップS01では、印刷モードとして平面上塗りモードが選択される。ステップS02では、第2インクヘッド61Sが前方側エンド位置P1に移動される。これにより、図3に示すように、第1ノズル列62N1と第2ノズル列62N2とは完全に、またはほぼ完全に副走査方向Xにずれる。ステップS03では、被印刷物5のフラットベッド20からの高さが測定され、フラットベッド20の上下位置が決定される。ステップS03の詳細は省略する。
【0045】
ステップS04では、キャリッジ40を主走査方向Yに移動させながら第1ノズル列62N1からプロセスカラーインクを吐出するとともに、第2ノズル列62N2からグロスインクを吐出する。副走査方向Xにずれた第1ノズル列62N1と第2ノズル列62N2とにより、グロスインクによるトップ層の形成と、プロセスカラーインクによる画像層の形成とが同時に行われる。このとき、光照射装置70からは紫外線が照射されている。第1ノズル列62N1と第2ノズル列62N2とが完全に、またはほぼ完全に副走査方向Xにずれていることにより、第1ノズル列62N1および第2ノズル列62N2をともに最大限使用できる。図3に示すように、平面上塗りモードでは、第1範囲R1は、第1ノズル列62N1の全部である。第2範囲R2は、第2ノズル列62N2の全部である。そのため、平面上塗りモードでは、効率よく印刷を行うことができる。
【0046】
1つの副走査方向Xの位置での印刷が終わると、ステップS05において、フラットベッド20が前方に移動され、印刷位置が移動される。以下、ステップS04およびS05が繰り返されるが、図示および説明は省略する。
【0047】
[ロータリー上塗りモードによる印刷プロセス]
次に、ロータリー上塗りモードによる印刷プロセスについて説明する。ロータリー上塗りモードでは、ロータリー装置90によって立体物6を間欠的に回転させることにより、立体物6の周方向の印刷位置を移動させながら印刷を行う。ここでは、平面上塗りモードと同様、プロセスカラーインクにより画像層を形成し、画像層の上層にグロスインクによるコート層を重ねて形成する例について説明する。図7は、ロータリー上塗りモードによる印刷のフローチャートの一例である。図7に示すように、ロータリー上塗りモードによる印刷のステップS11では、印刷モードとしてロータリー上塗りモードが選択される。ステップS12では、立体物6の直径または半径が入力される。なお、立体物6の直径または半径として入力される値は、例えば、完全に円柱状ではない立体物6(例えば、突起または凹部が形成されている立体物)の場合、ユーザーが直径または半径と見なした値であってもよい。ステップS13では、立体物6の曲率に応じて、第1範囲R1および第2範囲R2が設定される。例えば、立体物6の曲率から、第1ノズル列62N1および第2ノズル列62N2の使用範囲(第1ノズル列62N1および第2ノズル列62N2と立体物6との上下方向の距離が好適な距離内に収まるような範囲)が、第1ノズル列62N1(または第2ノズル列62N2)の副走査方向Xの長さの20%と算出されたとする。この場合、第1ノズル列62N1の使用範囲である第1範囲R1は、副走査方向Xの中央付近の10%分に設定される。第2ノズル列62N2の使用範囲である第2範囲R2は、副走査方向Xの中央付近の10%分に設定される。第1範囲R1および第2範囲R2がそれぞれ第1ノズル列62N1および第2ノズル列62N2の副走査方向Xの中央付近に設定されるのは、中央付近の方が端部付近よりもノズルの吐出精度が高い傾向があることによる。ただし、第1範囲R1および第2範囲R2は、それぞれ、第1ノズル列62N1および第2ノズル列62N2の副走査方向Xの中央付近以外の場所に設定されてもよい。
【0048】
ステップS14では、設定された第1範囲R1および第2範囲R2に応じて、第1ノズル列62N1と第2ノズル列62N2との重複範囲R3が設定される。すなわち、第2インクヘッド61Sの位置が設定される。ステップS15では、第2インクヘッド61SがステップS14で設定された位置に移動される。図8は、第2インクヘッド61Sが移動した後のキャリッジ40の下面の平面図である。図8に示すように、例えば、第2インクヘッド61Sは、後方側エンド位置P2に移動される。ただし、第2インクヘッド61Sが移動される位置は、後方側エンド位置P2に限定されるわけではない。図8に示すように、第2範囲R2は、第1範囲R1よりも前方に設定される。ここでは、第2範囲R2は、その後端が第1範囲R1の前端と揃うか、または、第1範囲R1の前端よりも僅かに後方に位置するような範囲に設定される。
【0049】
ステップS16では、立体物6の高さが測定され、フラットベッド20の上下位置が決定される。ステップS17では、キャリッジ40を主走査方向Yに移動させながら第1ノズル列62N1の第1範囲R1からプロセスカラーインクを吐出するとともに、第2ノズル列62N2の第2範囲R2からグロスインクを吐出する。第1範囲R1と第2範囲R2とが副走査方向Xにずれていることにより、グロスインクによるトップ層の形成と、プロセスカラーインクによる画像層の形成とを同時に行うことができる。このとき、光照射装置70からは紫外線が照射されている。
【0050】
1つの副走査方向Xの位置での印刷が終わると、ステップS18において、ロータリー装置90により立体物6が前方に回転され、印刷位置が移動される。以下、ステップS17およびS18が繰り返されるが、図示および説明は省略する。
【0051】
[平面下塗りモードによる印刷プロセス]
次に、平面下塗りモードによる印刷プロセスについて説明する。図9は、平面下塗りモードによる印刷のフローチャートの一例である。ここでは、ホワイトインクにより下地層を形成し、下地層の上層にプロセスカラーインクによる画像層を重ねて形成する例について説明する。図9に示すように、平面下塗りモードによる印刷のステップS21では、印刷モードとして平面下塗りモードが選択される。本実施形態では、平面下塗りモードにおいて、第1ノズル列62N1の使用範囲である第1範囲R1は、前方側の50%に設定される。第2ノズル列62N2の使用範囲である第2範囲R2は、後方側の50%に設定される。第2インクヘッド61Sは、後方側エンド位置P2に位置付けられる。ただし、第1範囲R1および第2範囲R2は上記した範囲に限定されるわけではなく、第2インクヘッド61Sの位置も後方側エンド位置P2に限定されるわけではない。図9に示すように、ステップS22では、第1範囲R1および第2範囲R2が上記したように設定される。続くステップS23では、第2インクヘッド61Sが後方側エンド位置P2に移動される。図10は、第2インクヘッド61Sが後方側エンド位置P2に移動した後のキャリッジ40の下面の平面図である。
【0052】
ステップS24では、被印刷物5の高さが測定され、フラットベッド20の上下位置が決定される。ステップS25では、キャリッジ40を主走査方向Yに移動させながら第1ノズル列62N1の第1範囲R1からプロセスカラーインクを吐出するとともに、第2ノズル列62N2の第2範囲R2からホワイトインクを吐出する。第1範囲R1と第2範囲R2とが副走査方向Xにずれていることにより、ホワイトインクによる下地層の形成と、プロセスカラーインクによる画像層の形成とを同時に行うことができる。1つの副走査方向Xの位置での印刷が終わると、ステップS26において、フラットベッド20が前方に移動され、印刷位置が移動される。
【0053】
[ロータリー下塗りモードによる印刷プロセス]
次に、ロータリー下塗りモードによる印刷プロセスについて説明する。図11は、ロータリー下塗りモードによる印刷のフローチャートの一例である。ここでは、平面下塗りモードと同様に、ホワイトインクにより下地層を形成し、下地層の上層にプロセスカラーインクによる画像層を重ねて形成する例について説明する。図11に示すように、ロータリー下塗りモードによる印刷のステップS31では、印刷モードとしてロータリー下塗りモードが選択される。ステップS32では、立体物6の直径または半径が入力される。ステップS33では、立体物6の曲率に応じて、第1範囲R1および第2範囲R2が設定される。ロータリー下塗りモードでは、第2範囲R2は、第1範囲R1よりも後方に設定される。
【0054】
ステップS34では、設定された第1範囲R1および第2範囲R2に応じて、第1ノズル列62N1と第2ノズル列62N2との重複範囲R3が設定される。すなわち、第2インクヘッド61Sの位置が設定される。ステップS35では、第2インクヘッド61SがステップS34で設定された位置に移動される。図12は、第2インクヘッド61Sが移動した後のキャリッジ40の下面の平面図である。図12に示すように、ここでは、第2インクヘッド61Sは、後方側エンド位置P2に移動される。ただし、第2インクヘッド61Sが移動される位置は、後方側エンド位置P2に限定されるわけではない。
【0055】
ステップS36では、立体物6の高さが測定され、フラットベッド20の上下位置が決定される。ステップS37では、キャリッジ40を主走査方向Yに移動させながら第1ノズル列62N1の第1範囲R1からプロセスカラーインクを吐出するとともに、第2ノズル列62N2の第2範囲R2からホワイトインクを吐出する。第1範囲R1と第2範囲R2とが副走査方向Xにずれていることにより、ホワイトインクによる下地層の形成と、プロセスカラーインクによる画像層の形成とを同時に行うことができる。1つの副走査方向Xの位置での印刷が終わると、ステップS38において、ロータリー装置90により立体物6が前方に回転され、印刷位置が移動される。
【0056】
[他のプロセス例]
プリンタ10は、下地層、画像層、およびトップ層を形成する3層印刷、または、4層以上の印刷を行えるように構成されていてもよい。例えば3層印刷の場合には、第2範囲R2は、第1範囲R1よりも前方と後方とに設定されてもよい。第1範囲R1よりも前方の第2範囲R2からは、典型的にはグロスインクが吐出される。第1範囲R1よりも後方の第2範囲R2からは、典型的にはホワイトインクが吐出される。ただし、3層以上の層の構成は、上記には限定されない。
【0057】
また、被印刷物5への印刷は、被印刷物5が後方に間欠的に移動されるか、または、後方に間欠的に回転されながら行われてもよい。この場合、第2インクヘッド61Sは、平面下塗りモードにおいて前方側エンド位置P1に移動され、平面上塗りモード、ロータリー下塗りモード、またはロータリー上塗りモードにおいて、例えば、後方側エンド位置P2、または、第1ノズル列62N1と第2ノズル列62N2とが副走査方向Xに関して少なくとも一部重複する他の位置に移動されてもよい。平面上塗りモードおよびロータリー上塗りモードにおいて、第2範囲R2は、第1範囲R1よりも後方に設定される。ロータリー下塗りモードにおいて、第2範囲R2は、第1範囲R1よりも前方に設定される。この場合には、平面下塗りモードが第1モードの一例であり、ロータリー下塗りモードが第2モードの一例である。
【0058】
[本実施形態の作用効果]
以下では、本実施形態に係るプリンタ10によって奏することのできる作用効果について説明する。
【0059】
本実施形態に係るプリンタ10は、第1ノズル列62N1および第2ノズル列62N2と対向するように立体物6を保持し、保持した立体物6を主走査方向Yに延びる軸線Ax周りに回転させるロータリー装置90を備えている。制御装置100は、第1範囲設定部103と、第2範囲設定部104と、回転制御部106と、第1吐出制御部107と、第2吐出制御部108と、を備えている。第1範囲設定部103は、立体物6の曲率に応じて、第1ノズル列62N1の複数のノズル63C~63Kのうちから、使用範囲である第1範囲R1を設定する。第2範囲設定部104は、立体物6の曲率に応じて、第2ノズル列62N2の複数の第2ノズル63W1~63G2のうちから、使用範囲である第2範囲R2を設定する。第2範囲設定部104は、第1範囲R1とは副走査方向Xに少なくとも一部がずれるように第2範囲R2を設定する。回転制御部106は、ロータリー装置90を制御して、軸線Ax周りに立体物6を回転させる。第1吐出制御部107は、第1範囲R1に属するノズル63C~63Kからプロセスカラーインクを吐出させる。第2吐出制御部108は、第1吐出制御部107によってプロセスカラーインクが吐出されている間の少なくとも一部の時間において、第2範囲R2に属するノズル63W1、63W2(場合により、ノズル63G1および63G2、または、ノズル63W1~63G2)から特色インクを吐出させる。
【0060】
かかるプリンタ10によれば、立体物6の曲率に応じて、第1範囲R1および第2範囲R2が設定され、第1範囲R1と第2範囲R2とは、立体物6の回転軸方向と直交する方向である副走査方向Xに関して位置がずれている。そのため、第1範囲R1のノズル63C~63Kからのプロセスカラーインクの吐出と、第2範囲R2のノズル(63G1および63G2、または、63W1および63W2)からの特色インクの吐出とを同時に行うことができる。その結果、立体物6を回転させて行う多層印刷において印刷効率を高めることができる。
【0061】
本実施形態に係るプリンタ10は、キャリッジ40において第2インクヘッド61Sを副走査方向Xに移動させるヘッド移動装置80を備えている。制御装置100は、ヘッド移動装置80を制御して、第1ノズル列62N1と第2ノズル列62N2との副走査方向Xに関する重複範囲R3を変化させるヘッド移動制御部105を備えている。かかるプリンタ10によれば、第1ノズル列62N1と第2ノズル列62N2との重複範囲R3を調整できるため、立体物6の形状に合わせた第1ノズル列62N1および第2ノズル列62N2の使用範囲(第1範囲R1および第2範囲R2)を設定しやすい。
【0062】
なお、ヘッド移動装置80は、第1インクヘッド61Pおよび第2インクヘッド61Sのうちの少なくとも一方をキャリッジ40において副走査方向Xに移動させるように構成されていればよい。ヘッド移動装置80が移動させるのは、第1インクヘッド61Pでもよく、第1インクヘッド61Pおよび第2インクヘッド61Sの両方であってもよい。
【0063】
本実施形態では、ヘッド移動装置80は、第1ノズル列62N1と第2ノズル列62N2とが副走査方向Xに関して重複しないか、または、第1ノズル列62N1の一部と第2ノズル列62N2の一部とが副走査方向Xに関して重複する第1の配置で第1インクヘッド61Pおよび第2インクヘッド61Sを配置することが可能に構成されている。また、ヘッド移動装置80は、第1ノズル列62N1と第2ノズル列62N2とが副走査方向Xに関して第1の配置よりも重複するように第1インクヘッド61Pと第2インクヘッド61Sとの位置関係を変化させることが可能に構成されている。
【0064】
本実施形態では、制御装置100は、副走査方向移動装置30Xを駆動させてフラットベッド20に支持された被印刷物5を副走査方向Xに移動させながら被印刷物5にプロセスカラーインクおよび特色インクを着弾させる平面上塗りモード(フラットベッド20の移動方向が逆の場合には、平面下塗りモード)と、ロータリー装置90を駆動させて立体物6を回転させながら立体物6にプロセスカラーインクおよび特色インクを着弾させるロータリー上塗りモード(ロータリー装置90の回転方向が逆の場合には、ロータリー下塗りモード)と、を含む複数の印刷モードから印刷モードを選択可能に構成されたモード選択部101を備えている。ヘッド移動制御部105は、平面上塗りモードが選択された場合には、第1の配置で第1インクヘッド61Pおよび第2インクヘッド61Sを配置する。ヘッド移動制御部105は、ロータリー上塗りモードが選択された場合には、設定された第1範囲R1および第2範囲R2に応じて、第1ノズル列62N1と第2ノズル列62N2とが副走査方向Xに関して第1の配置よりも重複し、かつ、重複範囲R3が第1範囲R1および第2範囲R2を含むように重複範囲R3を設定する。
【0065】
かかる構成によれば、平面上塗りモードでは第1ノズル列62N1と第2ノズル列62N2とを最大限使用でき、印刷効率を高めることができる。かつ、ロータリー上塗りモードでも、第1範囲R1のノズル63C~63Kからのプロセスカラーインクの吐出と、第2範囲R2のノズル(例えば、63G1、63G2)からの特色インクの吐出とを同時に行うことができる。そのため、ロータリー上塗りモードでも印刷効率を高めることができる。
【0066】
本実施形態では、ロータリー装置90は、フラットベッド20に着脱可能に構成されている。かかる構成によれば、ロータリー上塗りモードまたはロータリー下塗りモードで印刷を行うときにロータリー装置90をフラットベッド20に装着し、平面上塗りモードまたは平面下塗りモードで印刷を行うときには、フラットベッド20からロータリー装置90を取り外すことができる。そのため、印刷可能な被印刷物5の最大サイズを大きくすることができる。また、フラットベッド20に載置可能である以上の制限をロータリー装置90のサイズが受けないため、印刷可能な立体物6の最大サイズも大きくすることができる。
【0067】
本実施形態では、ヘッド移動装置80は、特色インクを吐出する第2インクヘッド61Sを副走査方向Xに移動させる。前述したように、特色インクを吐出する第2インクヘッド61Sは、プロセスカラーインクを吐出する第1インクヘッド61Pよりも位置精度が求められない。よって、第2インクヘッド61Sを移動させ、第1インクヘッド61Pをキャリッジ40に対して不動とすることにより、印刷品質の低下を防止することができる。
【0068】
本実施形態に係るプリンタ10は、主走査方向Yに延びるとともにキャリッジ40が主走査方向Yに摺動可能に係合されたガイドレール51と、キャリッジ40をガイドレール51に沿って移動させるキャリッジモータ53と、を備えたキャリッジ移動装置50をさらに備えている。第1インクヘッド61Pとガイドレール51との副走査方向Xの距離D1は、第2インクヘッド61Sとガイドレール51との副走査方向Xの距離D2以下である。かかる構成によれば、第1インクヘッド61Pの方が第2インクヘッド61Sよりも、キャリッジ40の移動による振動の影響を受けにくい。第1インクヘッド61Pはプロセスカラーインクを吐出して画像層を形成するインクヘッドであり、振動の影響がより少ないことが好ましい。よって、かかる第1インクヘッド61Pと第2インクヘッド61Sとの配置により、印刷品質を向上させることができる。
【0069】
[他の実施形態]
以上、好適な一実施形態について説明した。しかし、上記した実施形態は例示に過ぎず、ここに開示する技術は他の種々の形態で実施することができる。例えば、上記した実施形態では、プリンタ10は、第1インクヘッド61Pおよび第2インクヘッド61Sのうちの少なくとも一方をキャリッジ40において副走査方向Xに移動させるヘッド移動装置80を備えていた。しかし、プリンタ10はヘッド移動装置80を備えていなくてもよい。第1インクヘッド61Pおよび第2インクヘッド61Sは、いずれもキャリッジ40に移動不能に固定されていてもよい。
【0070】
図13は、他の実施形態に係るキャリッジ40の下面の平面図である。なお、以下の他の実施形態の説明でも、上記した実施形態と同じ機能を奏する部材には、同じ符号を使用する。図13に示すように、この実施形態では、第1インクヘッド61Pと第2インクヘッド61Sとは、副走査方向Xに関して一部が重複している。図13に、ロータリー上塗りモードにおける第1範囲R1および第2範囲R2と、平面上塗りモードにおける第1ノズル列62N1の使用範囲R4および第2ノズル列62N2の使用範囲R5の一例を示す。図13に示す実施形態でも、ロータリー上塗りモードにおける第1範囲R1および第2範囲R2は、第1ノズル列62N1と第2ノズル列62N2との重複範囲のうちのどこか、例えば中央部に設定される。図13に示す実施形態では、平面上塗りモードにおける第1ノズル列62N1の使用範囲R4は、第1ノズル列62N1の存在範囲と第2ノズル列62N2の存在範囲とを合わせた範囲R6の後方側半分である。平面上塗りモードにおける第2ノズル列62N2の使用範囲R5は、範囲R6の前方側半分である。
【0071】
図14は、図13と同じ構成のキャリッジ40の下面の平面図であって、平面下塗りモードおよびロータリー下塗りモードにおける第1範囲R1および第2範囲R2の一例を示す平面図である。図14に示すように、平面下塗りモードおよびロータリー下塗りモードにおける第2範囲R2は、第1範囲R1よりも後方に設定される。図14では、平面下塗りモードにおける第1範囲R1および第2範囲R2と、ロータリー下塗りモードにおける第1範囲R1および第2範囲R2とは同じとしているが、ロータリー下塗りモードにおける第1範囲R1および第2範囲R2は、平面下塗りモードにおける第1範囲R1および第2範囲R2よりも狭くてもよい。
【0072】
かかる実施形態によっても、立体物6の曲率に応じて、第1ノズル列62N1の使用範囲(第1範囲R1)と第2ノズル列62N2の使用範囲(第2範囲R2)との副走査方向Xに関する位置をずらして設定することができる。そのため、第1範囲R1のノズル63C~63Kからのプロセスカラーインクの吐出と、第2範囲R2のノズル63W1~63G2からの特色インクの吐出とを同時に行うことができ、印刷効率を高めることができる。
【0073】
その他、プリンタの構成については、特に言及がない限りにおいて限定されない。例えば、第1ノズル列62N1と第2ノズル列62N2とは、副走査方向Xの位置が揃っていてもよい。また、ヘッド移動装置80やロータリー装置90等の構成は上記したものには限定されない。
【符号の説明】
【0074】
5 被印刷物
6 立体物
10 インクジェットプリンタ
20 フラットベッド(支持台)
30X 副走査方向移動装置(第1方向移動装置)
40 キャリッジ
50 キャリッジ移動装置(第2方向移動装置)
51 ガイドレール
53 キャリッジモータ(駆動装置)
61P 第1インクヘッド
61S 第2インクヘッド
62N1 第1ノズル列
62N2 第2ノズル列
63C、63M、63Y、63K 第1ノズル
63G1、63G2、63G1、63G2 第2ノズル
80 ヘッド移動装置
90 ロータリー装置(回転装置)
100 制御装置
101 モード選択部
102 径入力部
103 第1範囲設定部
104 第2範囲設定部
105 ヘッド移動制御部
106 回転制御部
107 第1吐出制御部
108 第2吐出制御部
R1 第1範囲
R2 第2範囲
R3 重複範囲
図1
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