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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155545
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】光断層画像撮影装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/17 20060101AFI20241024BHJP
   A61B 3/10 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
G01N21/17 630
A61B3/10 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023070343
(22)【出願日】2023-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】501299406
【氏名又は名称】株式会社トーメーコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】一瀬 才甫
(72)【発明者】
【氏名】スチャンドラ バナジー
(72)【発明者】
【氏名】杉山 聡
【テーマコード(参考)】
2G059
4C316
【Fターム(参考)】
2G059AA05
2G059BB08
2G059BB12
2G059EE02
2G059EE05
2G059EE09
2G059FF02
2G059GG01
2G059GG09
2G059JJ17
2G059JJ19
2G059JJ22
2G059MM14
4C316AB04
4C316AB08
4C316FA14
4C316FB29
4C316FY02
4C316FY04
4C316FY10
4C316FZ01
4C316FZ02
(57)【要約】
【課題】較正処理を正常に実行するための技術を提供する。
【解決手段】光断層画像撮影装置は、光源と、光源からの光を対象物に照射して反射光を生成する測定光生成部と、光源から参照光を生成する参照光生成部と、光源から較正光を生成する較正光生成部と、測定光生成部で生成された反射光と参照光とを合波して測定用干渉光を生成すると共に、較正光と参照光とを合波して較正用干渉光を生成する干渉光生成部と、測定用干渉光から測定用干渉信号を出力すると共に、較正用干渉光から較正用干渉信号を出力する干渉光検出部と、測定用干渉信号から対象物の断層画像を生成する演算部と、を備える。演算部は、較正用干渉信号の位置が予め設定された位置からずれているか否かを判定するずれ判定処理と、ずれ判定処理で較正用干渉信号の位置がずれていると判定されたときに、較正用干渉信号の位置を補正する補正処理と、を実行可能に構成されている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
前記光源からの光を対象物に照射すると共に、前記対象物からの反射光を生成する測定光生成部と、
前記光源からの光を導いて参照光を生成する参照光生成部と、
前記光源からの光を導いて較正光を生成する較正光生成部と、
前記測定光生成部で生成された前記反射光と前記参照光生成部で生成された前記参照光とを合波して測定用干渉光を生成すると共に、前記較正光生成部で生成された前記較正光と前記参照光生成部で生成された前記参照光とを合波して較正用干渉光を生成する干渉光生成部と、
前記干渉光生成部で生成された前記測定用干渉光から測定用干渉信号を出力すると共に、前記干渉光生成部で生成された前記較正用干渉光から較正用干渉信号を出力する干渉光検出部と、
前記干渉光検出部から出力された前記測定用干渉信号から前記対象物の断層画像を生成する演算部と、を備え、
前記演算部は、
前記干渉光検出部から出力された前記較正用干渉信号の位置が予め設定された位置からずれているか否かを判定するずれ判定処理と、
前記ずれ判定処理で前記較正用干渉信号の位置がずれていると判定されたときに、前記較正用干渉信号の位置を補正する補正処理と、を実行可能に構成されている、光断層画像撮影装置。
【請求項2】
前記較正用干渉信号は、サンプル信号と、前記サンプル信号が折り返すことによって生じる折り返し信号とを含んでおり、
前記演算部は、所定範囲内に検出された信号が、前記サンプル信号と前記折り返し信号とのいずれであるのかを判別する信号判別処理をさらに実行可能に構成されており、
前記演算部は、前記補正処理において、前記信号判別処理で判別した信号が前記サンプル信号と前記折り返し信号とのいずれであるのかに応じて、前記サンプル信号の位置を補正する、請求項1に記載の光断層画像撮影装置。
【請求項3】
前記較正光学系は、前記光源からの光を反射する較正部材と、前記較正部材を光軸方向に移動させる駆動部と、を備えており、
前記信号判別処理では、前記演算部は、前記サンプル信号を所定の深さ方向である第1方向に移動するように前記駆動部により前記較正部材を移動させたときに、前記所定範囲内に検出された信号が前記第1方向に移動した場合、前記所定範囲内に検出された信号がサンプル信号であると判別し、前記所定範囲内に検出された信号が前記第1方向とは反対の第2方向に移動した場合、前記所定範囲内に検出された信号が折り返し信号であると判別する、請求項2に記載の光断層画像撮影装置。
【請求項4】
前記演算部は、
前記判別処理において、前記所定範囲内に検出された信号がサンプル信号であると判別したとき、前記補正処理において、前記判別処理で判別された前記サンプル信号の位置を補正し、
前記判別処理において、前記所定範囲内に検出された信号が折り返し信号であると判別したとき、前記補正処理において、サンプル信号を検出して、検出したサンプル信号の位置を補正する、請求項3に記載の光断層画像撮影装置。
【請求項5】
前記折り返し信号は、エイリアシング信号である、請求項2に記載の光断層画像撮影装置。
【請求項6】
前記折り返し信号は、ミラー信号である、請求項2に記載の光断層画像撮影装置。
【請求項7】
前記演算部は、前記補正処理で補正した前記較正用干渉信号の位置に基づいて、前記測定用干渉信号に対する較正処理をさらに実行可能に構成されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の光断層画像撮影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示する技術は、光断層画像撮影装置に関する。詳細には、光干渉を用いて被検眼を測定する光断層画像撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被検眼の内部の断層画像を撮影する光断層画像撮影装置が開発されている。例えば、特許文献1に記載の光断層画像撮影装置は、光源からの光を被検眼の内部に照射すると共にその反射光を生成する測定光生成部と、光源からの光を参照面に照射して、その反射光から参照光を生成する参照光生成部を備えている。測定の際には、測定光生成部で生成された反射光(測定光)と参照光生成部で生成された参照光とを合波した干渉光を干渉信号に変換し、干渉信号を用いて被検眼の断層画像を生成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-41218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のような光断層画像撮影装置では、測定光生成部により導かれる測定光の他に、較正光を生成することがある。較正光から変換される較正用干渉信号は、測定用干渉信号から断層画像を生成する解析処理の際に較正用に用いられる。較正用干渉信号は、測定用干渉信号と区別するために、測定用干渉信号とは異なる所定の位置に検出されるように設定される。しかしながら、光断層画像撮影装置内に環境変化(例えば、温度変化等)があると、較正用干渉信号の検出位置が所定の位置からずれることがある。較正用干渉信号の検出位置がずれると、解析処理を正常に実行できないという問題があった。
【0005】
本明細書は、較正処理を正常に実行するための技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書に開示する技術の第1の態様では、光断層画像撮影装置は、光源と、光源からの光を対象物に照射すると共に、対象物からの反射光を生成する測定光生成部と、光源からの光を導いて参照光を生成する参照光生成部と、光源からの光を導いて較正光を生成する較正光生成部と、測定光生成部で生成された反射光と参照光生成部で生成された参照光とを合波して測定用干渉光を生成すると共に、較正光生成部で生成された較正光と参照光生成部で生成された参照光とを合波して較正用干渉光を生成する干渉光生成部と、干渉光生成部で生成された測定用干渉光から測定用干渉信号を出力すると共に、干渉光生成部で生成された較正用干渉光から較正用干渉信号を出力する干渉光検出部と、干渉光検出部から出力された測定用干渉信号から対象物の断層画像を生成する演算部と、を備える。演算部は、干渉光検出部から出力された較正用干渉信号の位置が予め設定された位置からずれているか否かを判定するずれ判定処理と、ずれ判定処理で較正用干渉信号の位置がずれていると判定されたときに、較正用干渉信号の位置を補正する補正処理と、を実行可能に構成されている。
【0007】
上記の光断層画像撮影装置では、演算部が、較正用干渉信号の位置が予め設定された位置からずれているか否かを判定し、較正用干渉信号の位置が予め設定された位置からずれている場合には、較正用干渉信号の位置を補正する。このため、較正用干渉信号の位置ずれを自動で補正することができ、断層画像を生成するための処理を正常に実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例に係る光断層画像撮影装置の光学系の概略構成を示す図。
図2図1の要部IIの拡大図。
図3】実施例に係る光断層画像撮影装置の制御系を示すブロック図。
図4】サンプリングトリガー/クロック発生器の構成を示すブロック図。
図5】較正用干渉信号の検出位置を補正する処理の一例を示すフローチャート。
図6】所定範囲に信号が検出された状態を示す図。
図7】所定範囲に検出された信号がエイリアシング信号である場合を示す図であり、(a)は所定範囲にエイリアシング信号が検出された状態を示し、(b)は所定範囲より大きい位置に位置していたサンプル信号を、較正可能範囲より小さい所定範囲内に移動させた状態を示す。
図8】所定範囲に検出された信号がエイリアシング信号であり、第1~第4干渉信号がずれている状態を示す図。
図9】第1~第4干渉信号がずれている状態を示す図であり、(a)は2つの較正光による第1~第4干渉信号である8つの信号全てが較正可能範囲内に位置している状態を示し、(b)は8つの信号の一部が較正可能範囲外に位置している状態を示す。
図10】較正用干渉信号の検出位置を補正する処理の他の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に説明する実施例の主要な特徴を列記しておく。なお、以下に記載する技術要素は、それぞれ独立した技術要素であって、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。
【0010】
本明細書に開示する技術の第2の態様では、上記の第1の態様において、較正用干渉信号は、サンプル信号と、サンプル信号が折り返すことによって生じる折り返し信号とを含んでいてもよい。演算部は、所定範囲内に検出された信号が、サンプル信号と折り返し信号とのいずれであるのかを判別する信号判別処理をさらに実行可能に構成されていてもよい。演算部は、補正処理において、信号判別処理で判別した信号がサンプル信号と折り返し信号とのいずれであるのかに応じて、サンプル信号の位置を補正してもよい。較正用干渉信号が位置すべき位置とその近傍を含む所定範囲内には、較正用干渉信号のサンプル信号と折り返し信号(例えば、ミラー信号やエイリアシング信号等)が発生することがある。サンプル信号と折り返し信号は一見して判別できないことがある。折り返し信号をサンプル信号と誤認して補正処理を実行すると、較正用干渉信号の位置を正常に補正できない。演算部が信号判別処置を実行することによって、所定範囲内に位置する信号がサンプル信号と折り返し信号のどちらであるのかを判別することができ、較正用干渉信号の位置を正常に補正することができる。
【0011】
本明細書に開示する技術の第3の態様では、上記の第2の態様において、較正光学系は、光源からの光を反射する較正部材と、較正部材を光軸方向に移動させる駆動部と、を備えていてもよい。信号判別処理では、演算部は、サンプル信号を所定の深さ方向である第1方向に移動するように駆動部により較正部材を移動させたときに、所定範囲内に検出された信号が第1方向に移動した場合、所定範囲内に検出された信号がサンプル信号であると判別し、所定範囲内に検出された信号が第1方向とは反対の第2方向に移動した場合、所定範囲内に検出された信号が折り返し信号であると判別してもよい。サンプル信号を移動させると、折り返し信号は、サンプル信号とは反対方向に移動する。このため、サンプル信号を第1方向に移動させたときに、所定範囲内に検出されている信号が第1方向と第2方向のどちらに移動するのかによって、所定範囲内に検出されている信号がサンプル信号と折り返し信号のどちらであるのかを好適に判別することができる。
【0012】
本明細書に開示する技術の第4の態様では、上記の第3の態様において、演算部は、判別処理において、所定範囲内に検出された信号がサンプル信号であると判別したとき、補正処理において、判別処理で判別されたサンプル信号の位置を補正し、判別処理において、所定範囲内に検出された信号が折り返し信号であると判別したとき、補正処理において、サンプル信号を検出して、検出したサンプル信号の位置を補正してもよい。このような構成によると、所定範囲内に検出された信号がサンプル信号と折り返し信号のどちらであったかに応じて、サンプル信号の位置を好適に補正することができる。
【0013】
本明細書に開示する技術の第5の態様では、上記の第2~第4の態様のいずれか1つにおいて、折り返し信号は、エイリアシング信号であってもよい。
【0014】
本明細書に開示する技術の第6の態様では、上記の第2~第4の態様のいずれか1つにおいて、折り返し信号は、ミラー信号であってもよい。
【0015】
本明細書に開示する技術の第7の態様では、上記の第1~第6の態様のいずれか1つにおいて、演算部は、補正処理で補正した較正用干渉信号の位置に基づいて、前記測定用干渉信号に対する較正処理をさらに実行可能に構成されていてもよい。このような構成によると、断層画像を精度よく生成することができる。
【実施例0016】
図面を参照して、実施例に係る光断層画像撮影装置について説明する。本実施例の光断層画像撮影装置は、波長掃引型の光源を用いた波長掃引型のフーリエドメイン方式(swept-source optical coherence tomography:SS-OCT)で、被検物の偏光特性を捉えることが可能な偏光感受型OCT(polarization-sensitive OCT:PS-OCT)の装置である。
【0017】
図1に示すように、本実施例の光断層画像撮影装置は、光源11と、光源11の光から測定光を生成する測定光生成部(21~29、31、32)と、光源11の光から較正光を生成する較正光生成部(401~405)と、光源11の光から参照光を生成する参照光生成部(41~46、51)と、測定光生成部で生成される被検物500からの反射光と参照光生成部で生成される参照光とを合波して干渉光(測定用干渉光)を生成すると共に、較正光生成部で生成される較正光と参照光生成部で生成される参照光とを合波して干渉光(較正用干渉光)を生成する干渉光生成部60、70と、干渉光生成部60、70で生成された干渉光(測定用干渉光、較正用干渉光)を検出する干渉光検出部80、90と、を備えている。
【0018】
(光源)
光源11は、波長掃引型の光源であり、出射される光の波長(波数)が所定の周期で変化する。被検物500に照射される光の波長が変化(掃引)するため、被検物500からの反射光と参照光との干渉光から得られる信号をフーリエ解析することで、被検物500の深さ方向の各部位から反射される光の強度分布を得ることができる。
【0019】
なお、光源11には、偏光制御装置12及びファイバカプラ13が接続され、ファイバカプラ13にはPMFC(偏波保持ファイバカプラ)14及びサンプリングトリガー/クロック発生器100が接続されている。したがって、光源11から出力される光は、偏光制御装置12及びファイバカプラ13を介して、PMFC14及びサンプルトリガー/クロック発生器100のそれぞれに入力される。サンプリングトリガー/クロック発生器100は、光源11の光を用いて、後述する信号処理器83、93それぞれのサンプリングトリガー及びサンプリングクロックを生成する。
【0020】
(測定光生成部)
測定光生成部(21~29、31、32)は、PMFC14に接続されたPMFC21と、PMFC21から分岐する2つの測定光路S1、S2と、2つの測定光路S1、S2を接続する偏光ビームコンバイナ/スプリッタ25と、偏光ビームコンバイナ/スプリッタ25に接続されるSMFC(シングルモードファイバカプラ)26と、SMFC26から分岐する測定光路S3と、測定光路S3に接続されるレンズ27、ガルバノミラー28,29及びレンズ30と、を備えている。測定光路S1には、光路長差生成部22とサーキュレータ23が配置されている。測定光路S2には、サーキュレータ24のみが配置されている。したがって、測定光路S1と測定光路S2との光路長差ΔLは、光路長差生成部22によって生成される。光路長差ΔLは、被検物500の深さ方向の測定範囲よりも長く設定してもよい。これにより、光路長差の異なる干渉光が重なることを防止できる。光路長差生成部22には、例えば、光ファイバが用いられてもよいし、ミラーやプリズム等の光学系が用いられてもよい。本実施例では、光路長差生成部22に、1mのPMファイバを用いている。また、測定光生成部は、PMFC31、32をさらに備えている。PMFC31は、サーキュレータ23に接続されている。PMFC32は、サーキュレータ24に接続されている。
【0021】
上記の測定光生成部(21~29、31、32)には、PMFC14で分岐された一方の光(すなわち、測定光)が入力される。PMFC21は、PMFC14から入力する測定光を、第1測定光と第2測定光に分割する。PMFC21で分割された第1測定光は測定光路S1に導かれ、第2測定光は測定光路S2に導かれる。測定光路S1に導かれた第1測定光は、光路長差生成部22及びサーキュレータ23を通って偏光ビームコンバイナ/スプリッタ25に入力される。測定光路S2に導かれた第2測定光は、サーキュレータ24を通って偏光ビームコンバイナ/スプリッタ25に入力される。PMファイバ304は、偏光ビームコンバイナ/スプリッタ25に、PMファイバ302に対して円周方向に90度回転した状態で接続される。これにより、偏光ビームコンバイナ/スプリッタ25に入力される第2測定光は、第1測定光に対して直交する偏光成分を持った光となる。測定光路S1に光路長差生成部22が設けられているため、第1測定光は第2測定光に対して光路長差生成部22の距離だけ遅延している(すなわち、光路長差ΔLが生じている)。偏光ビームコンバイナ/スプリッタ25は、入力される第1測定光と第2測定光を重畳する。
【0022】
偏光ビームコンバイナ/スプリッタ25から出力される光(第1測定光と第2測定光が重畳された光)はSMFC26に入力され、SMFC26は、入力された光を第3測定光と第4測定光に分割する。SMFC26で分割された第3測定光は測定光路S3に導かれ、第4測定光は測定光路S4に導かれる。測定光路S3に導かれた第3測定光は、レンズ27、ガルバノミラー28、29及びレンズ30を介して被検物500に照射される。被検物500に照射される光は、ガルバノミラー28、29によってx-y方向に走査される。被検物500に照射された光は、被検物500の表面や内部で反射する。被検物500からの反射光は、入射経路とは逆に、レンズ30、ガルバノミラー29、28及びレンズ27を通って、SMFC26に入力され、偏光ビームコンバイナ/スプリッタ25に入力される。
【0023】
偏光ビームコンバイナ/スプリッタ25に入力された被検物500の反射光及びミラー403の反射光は、偏光ビームコンバイナ/スプリッタ25で互いに直交する2つの偏光成分に分割される。ここでは便宜上それらを水平偏光反射光(水平偏光成分)と垂直偏光反射光(垂直偏光成分)と呼ぶ。そして、水平偏光反射光は測定光路S1に導かれ、垂直偏光反射光は測定光路S2に導かれる。水平偏光反射光は、サーキュレータ23により光路が変更され、PMFC31に入力される。PMFC31は、入力される水平偏光反射光を分岐して、PMFC61,71のそれぞれに入力する。したがって、PMFC61,71に入力される水平偏光反射光には、第1測定光による反射光成分と、第2測定光による反射光成分が含まれている。垂直偏光反射光は、サーキュレータ24により光路が変更され、PMFC32に入力される。PMFC32は、入力される垂直偏光反射光を分岐して、PMFC62,72に入力する。したがって、PMFC62,72に入力される垂直偏光反射光には、第1測定光による反射光成分と、第2測定光による反射光成分が含まれている。
【0024】
(較正光生成部)
図2に示すように、較正光生成部(401~405)は、SMFC26から分岐する測定光路S4と、測定光路S4に接続されるレンズ401、402、ミラー403及びガラスブロック404と、駆動装置405(図2参照)を備えている。測定光路S4に導かれた光(以下、較正光ともいう)は、レンズ401に照射される。レンズ401、402の間には、ガラスブロック404が配置されている。ガラスブロック404は、レンズ401から照射される較正光の一部が通過するように配置されている。例えば、図2では、ガラスブロック404は、レンズ401から照射される較正光のうち、下方の略半分の光が通過すると共に上方の略半分の光が通過しないように配置される。これにより、レンズ401から照射される較正光の一部(図2では下方を通る光)は、ガラスブロック404を通過し、レンズ402を介してミラー403に照射される。一方、レンズ401から照射される較正光の他の部分(図2では上方を通る光)は、ガラスブロック404を通過することなく、レンズ402を介してミラー403に照射される。ミラー403からの反射光は、レンズ402を通過し、その一部がガラスブロック404を通過してレンズ401に照射され、他の部分がガラスブロック404を通過することなくレンズ401に照射される。そして、レンズ401を通過して、SMFC26に入力される。したがって、SMFC26には、ガラスブロック404を通過した光と、ガラスブロック404を通過しない光が入力される。なお、ガラスブロック404を通過した光は、ガラスブロック404を1回通過した光(すなわち、レンズ401,402の間を往復する際に往路と復路のどちらか一方のみがガラスブロック404を通過した光)であってもよいし、ガラスブロック404を2回通過した光(すなわち、レンズ401、402の間を往復する際に往路と復路の両方でガラスブロック404を通過した光)であってもよいし、それら両方であってもよい。ミラー403及びガラスブロック404は、測定光路S4を通った較正光が、計測レンジのナイキスト周波数近傍に測定されるように配置される。
【0025】
測定光路S4を通り、ミラー403で反射された較正光は、被検物500の断層画像を生成する際の較正用に用いられる。レンズ402及びミラー403は、駆動装置405によって光軸方向(図2の矢印の方向)に駆動するように構成されている。駆動装置405は、レンズ402及びミラー403との間の位置関係を維持したまま、レンズ402及びミラー403を光軸方向に駆動する。駆動装置405によってレンズ402及びミラー403を光軸方向に移動させることによって、較正光の光路長が変更される。較正光の光路長が変更されることによって、較正光から変換される干渉信号(後述)の検出位置が移動(補正)する。SMFC26に入力された光は、偏光ビームコンバイナ/スプリッタ25に入力される。
【0026】
(参照光生成部)
参照光生成部(41~46、51)は、PMFC14に接続されたサーキュレータ41と、サーキュレータ41に接続された参照遅延ライン(42、43)と、サーキュレータ41に接続されたPMFC44と、PMFC44から分岐する2つの参照光路R1、R2と、参照光路R1に接続されるPMFC46と、参照光路R2に接続されるPMFC51を備えている。参照光路R1には、光路長差生成部45が配置されている。参照光路R2には、光路長差生成部は設けられていない。したがって、参照光路R1と参照光路R2との光路長差ΔL’は、光路長差生成部45によって生成される。光路長差生成部45には、例えば、光ファイバが用いられる。光路長差生成部45の光路長ΔL’は、光路長差生成部22の光路長ΔLと同一としてもよい。光路長差ΔLとΔL’を同一にすることで、後述する複数の干渉光の被検物500に対する深さ位置が同一となる。すなわち、取得される複数の断層像の位置合わせが不要となる。
【0027】
上記の参照光生成部(41~46、51)には、PMFC14で分岐された他方の光(すなわち、参照光)が入力される。PMFC14から入力される参照光は、サーキュレータ41を通って参照遅延ライン(42、43)に入力される。参照遅延ライン(42、43)は、コリメータレンズ42と参照ミラー43によって構成されている。参照遅延ライン(42、43)に入力された参照光は、コリメータレンズ42を介して参照ミラー43に照射される。参照ミラー43で反射された参照光は、コリメータレンズ42を介してサーキュレータ41に入力される。ここで、参照ミラー43は、コリメータレンズ42に対して近接又は離間する方向に移動可能となっている。本実施例では、測定を開始する前に、被検物500からの信号がOCTの深さ方向の測定範囲内に収まるように、参照ミラー43の位置を調整している。
【0028】
参照ミラー43で反射された参照光は、サーキュレータ41により光路が変更され、PMFC44に入力される。PMFC44は、入力する参照光を、第1参照光と第2参照光に分岐する。第1参照光は参照光路R1に導かれ、第2参照光は参照光路R2に導かれる。第1参照光は、光路長差生成部45を通ってPMFC46に入力される。PMFC46に入力された参照光は、第1分岐参照光と第2分岐参照光に分岐される。第1分岐参照光は、コリメータレンズ47、レンズ48を通ってPMFC61に入力される。第2分岐参照光は、コリメータレンズ49、レンズ50を通って、PMFC62に入力される。第2参照光は、PMFC51に入力され、第3分岐参照光と第4分岐参照光に分割される。第3分岐参照光は、コリメータレンズ52、レンズ53を通って、PMFC71に入力される。第4分岐参照光は、コリメータレンズ54、レンズ55を通って、PMFC72に入力される。
【0029】
(干渉光生成部)
干渉光生成部60、70は、第1干渉光生成部60と、第2干渉光生成部70を備えている。第1干渉光生成部60は、PMFC61、62を有している。上述したように、PMFC61には、測定光生成部及び較正光生成部より水平偏光反射光が入力され、参照光生成部より第1分岐参照光(光路長差ΔLを有する光)が入力される。ここで、水平偏光反射光には、第1測定光による反射光成分(光路長差ΔLを有する光)と、第2測定光による反射光成分(光路長差ΔLを有しない光)が含まれている。したがって、PMFC61では、水平偏光反射光のうち第1測定光による反射光成分(光路長差ΔLを有する光)と、第1分岐参照光とが合波されて第1干渉光(水平偏光成分)が生成される。
【0030】
また、PMFC62には、測定光生成部及び較正光生成部より垂直偏光反射光が入力され、参照光生成部より第2分岐参照光(光路長差ΔLを有する光)が入力される。ここで、垂直偏光反射光には、第1測定光による反射光成分(光路長差ΔLを有する光)と、第2測定光による反射光成分(光路長差ΔLを有しない光)が含まれている。したがって、PMFC62では、垂直偏光反射光のうち第1測定光による反射光成分(光路長差ΔLを有する光)と、第2分岐参照光とが合波されて第2干渉光(垂直偏光成分)が生成される。
【0031】
第2干渉光生成部70は、PMFC71、72を有している。上述したように、PMFC71には、測定光生成部及び較正光生成部より水平偏光反射光が入力され、参照光生成部より第3分岐参照光(光路長差ΔLを有しない光)が入力される。したがって、PMFC71では、水平偏光反射光のうち第2測定光による反射光成分(光路長差ΔLを有しない光)と、第3分岐参照光とが合波されて第3干渉光(水平偏光成分)が生成される。
【0032】
また、PMFC72には、測定光生成部及び較正光生成部より垂直偏光反射光が入力され、参照光生成部より第4分岐参照光(光路長差ΔLを有しない光)が入力される。したがって、PMFC72では、垂直偏光反射光のうち第2測定光による反射光成分(光路長差ΔLを有しない光)と、第4分岐参照光とが合波されて第4干渉光(垂直偏光成分)が生成される。第1干渉光と第2干渉光は測定光路S1を経由した測定光に対応しており、第3干渉光と第4干渉光は測定光路S2を経由した測定光に対応している。
【0033】
(干渉光検出部)
干渉光検出部80、90は、第1干渉光生成部60で生成された干渉光(第1干渉光及び第2干渉光)を検出する第1干渉光検出部80と、第2干渉光生成部70で生成された干渉光(第3干渉光及び第4干渉光)を検出する第2干渉光検出部90を備えている。
【0034】
第1干渉光検出部80は、バランス型光検出器81、82(以下、単に「検出器81,82」ともいう)と、検出器81、82に接続された信号処理器83を備えている。検出器81にはPMFC61が接続されており、検出器81の出力端子には信号処理器83が接続されている。PMFC61は、第1干渉光を、位相が180度異なる2つの干渉光に分岐して、検出器81に入力する。検出器81は、PMFC61から入力する位相が180度異なる2つの干渉光に対して、差動増幅及びノイズ低減処理を実施し、電気信号(第1干渉信号)に変換し、第1干渉信号を信号処理器83に出力する。すなわち、第1干渉信号は、水平偏光測定光による被検物500及びミラー403からの水平偏光反射光と参照光の干渉信号HHである。同様に、検出器82にはPMFC62が接続されており、検出器82の出力端子には信号処理器83が接続されている。PMFC62は、第2干渉光を、位相が180度異なる2つの干渉光に分岐して、検出器82に入力する。検出器82は、位相が180度異なる2つの干渉光に対して、差動増幅及びノイズ低減処理を実施し、電気信号(第2干渉信号)に変換し、第2干渉信号を信号処理器83に出力する。すなわち、第2干渉信号は、水平偏光測定光による被検物500及びミラー403からの垂直偏光反射光と参照光の干渉信号HVである。
【0035】
信号処理器83は、第1干渉信号が入力される第1信号処理部84と、第2干渉信号が入力される第2信号処理部85を備えている。第1信号処理部84は、サンプリングトリガー/クロック発生器100から信号処理器83に入力されるサンプリングトリガー及びサンプリングクロックに基づいて、第1干渉信号をサンプリングする。また、第2信号処理部85は、サンプリングトリガー/クロック発生器100から信号処理器83に入力されるサンプリングトリガー及びサンプリングクロックに基づいて、第2干渉信号をサンプリングする。第1信号処理部84及び第2信号処理部85でサンプリングされた第1干渉信号と第2干渉信号は、後述する演算部202に入力される。信号処理器83には、公知のデータ収集装置(いわゆる、DAQ)を用いることができる。
【0036】
第2干渉光検出部90は、第1干渉光検出部80と同様に、バランス型光検出器91、92(以下、単に「検出器91、92」ともいう)と、検出器91,92に接続された信号処理器93を備えている。検出器91にはPMFC71が接続されており、検出器91の出力端子には信号処理器93が接続されている。PMFC71は、第3干渉光を、位相が180度異なる2つの干渉光に分岐して、検出器91に入力する。検出器91は、位相が180度異なる2つの干渉光に対して、差動増幅及びノイズ低減処理を実施し、電気信号(第3干渉信号)に変換し、第3干渉信号を信号処理器93に出力する。すなわち、第3干渉信号は、垂直偏光測定光による被検物500及びミラー403からの水平偏光反射光と参照光の干渉信号VHである。同様に、検出器92にはPMFC72が接続されており、検出器92の出力端子には信号処理器93が接続されている。PMFC72は、第4干渉光を、位相が180度異なる2つの干渉光に分岐して、検出器92に入力する。検出器92は、位相が180度異なる2つの干渉光に対して、差動増幅及びノイズ低減処理を実施し、電気信号(第4干渉信号)に変換し、第4干渉信号を信号処理器93に出力する。すなわち、第4干渉信号は、垂直偏光測定光からによる被検物500及びミラー403の垂直偏光反射光と参照光の干渉信号VVである。
【0037】
信号処理器93は、第3干渉信号が入力される第3信号処理部94と、第4干渉信号が入力される第4信号処理部95を備えている。第3信号処理部94は、サンプリングトリガー/クロック発生器100から信号処理器93に入力されるサンプリングトリガー及びサンプリングクロックに基づいて、第3干渉信号をサンプリングする。また、第4信号処理部95は、サンプリングトリガー/クロック発生器100から信号処理器93に入力されるサンプリングトリガー及びサンプリングクロックに基づいて、第4干渉信号をサンプリングする。第3信号処理部94及び第4信号処理部95でサンプリングされた第3干渉信号と第4干渉信号とは、後述する演算部202に入力される。信号処理器93にも、公知のデータ収集装置(いわゆる、DAQ)を用いることができる。このような構成によると、被検物500の4つの偏光特性を表す干渉信号を取得することができる。なお、本実施例では、2つの信号処理部を備える信号処理器83,93用いているが、このような構成に限定されない。例えば、4つの信号処理部を備える1つの信号処理器を用いてもよいし、1つの信号処理部を備える信号処理器を4つ用いてもよい。
【0038】
次に、本実施例に係る光断層画像撮影装置の制御系の構成を説明する。図3に示すように、光断層画像撮影装置は演算装置200によって制御される。演算装置200は、演算部202と、第1干渉光検出部80と、第2干渉光検出部90によって構成されている。第1干渉光検出部80と、第2干渉光検出部90と、演算部202は、測定部10に接続されている。演算部202は、測定部10に制御信号を出力し、ガルバノミラー28及び29を駆動することで測定光の被検物500への入射位置を走査する。また、演算部202は、駆動装置405を駆動することでレンズ402及びミラー403を光軸方向に移動させる。第1干渉光検出部80は、測定部10から入力される干渉信号(干渉信号HHと干渉信号HV)に対して、サンプリングトリガー1をトリガーにして、測定部10から入力されるサンプリングクロック1に基づいて、第1サンプリングデータを取得し、演算部202に第1サンプリングデータを出力する。演算部202は、第1サンプリングデータにフーリエ変換処理等の演算処理を行い、HH断層画像とHV断層画像を生成する。第2干渉光検出部90は、サンプリングトリガー2をトリガーにして、測定部10から入力される干渉信号(干渉信号VHと干渉信号VV)に対して、測定部10から入力されるサンプリングクロック2に基づいて、第2サンプリングデータを取得し、演算部202に第2サンプリングデータを出力する。演算部202は、第2サンプリングデータにフーリエ変換処理等の演算処理を行い、VH断層画像とVV断層画像を生成する。ここで、HH断層画像と、VH断層画像と、HV断層画像と、VV断層画像とは、同一位置の断層画像である。このため、演算部202は、被検物500のジョーンズ行列を表す4つの偏光特性(HH、HV,VH,VV)の断層画像を生成することができる。
【0039】
図4に示すように、サンプリングトリガー/クロック発生器100は、ファイバカプラ102と、サンプリングトリガー発生器(140~152)と、サンプリングクロック発生器(160~172)を備えている。光源11からの光は、ファイバカプラ13とファイバカプラ102を介して、サンプリングトリガー発生器140及びサンプリングクロック発生器160にそれぞれ入力される。
【0040】
(サンプリングトリガー発生器)
サンプリングトリガー発生器140は、例えば、FBG(Fiber Bragg Grating)144を用いて、サンプリングトリガーを生成してもよい。図4に示すように、FBG144は、光源11から入射される光の特定の波長のみを反射して、サンプリングトリガーを生成する。生成されたサンプリングトリガーは、分配器150に入力される。分配器150は、サンプリングトリガーを、サンプリングトリガー1とサンプリングトリガー2に分配する。サンプリングトリガー1は、信号遅延回路152を介して、演算部202に入力される。サンプリングトリガー2は、そのまま演算部202に入力される。サンプリングトリガー1は、第1干渉光検出部80から演算部202に入力される干渉信号(第1干渉信号と第2干渉信号)のトリガー信号となる。サンプリングトリガー2は、第2干渉光検出部90から演算部202に入力される干渉信号(第3干渉信号と第4干渉信号)のトリガー信号となる。信号遅延回路152は、サンプリングトリガー1がサンプリングトリガー2に対して、光路長差生成部22の光路長差ΔLの分だけ時間が遅延するように設計されている。これにより、第1干渉光検出部80から入力される干渉信号のサンプリングを開始する周波数と、第2干渉光検出部90から入力される干渉信号のサンプリングを開始する周波数を同じにすることができる。ここで、サンプリングトリガー1だけを生成してもよい。光路長差ΔLが既知であるので、第2干渉光検出部90から入力される干渉をサンプリングする際、サンプリングトリガー1から光路長差ΔLの分だけ時間を遅延するようにサンプリングを開始すればよい。
【0041】
(サンプリングクロック発生器)
サンプリングクロック発生器は、例えば、マッハツェンダー干渉計で構成されていてもよい。図4に示すように、サンプリングクロック発生器は、マッハツェンダー干渉計を用いて、等周波数のサンプリングクロックを生成する。マッハツェンダー干渉計で生成されたサンプリングクロックは、分配器172に入力される。分配器172は、サンプリングクロックを、サンプリングクロック1とサンプリングクロック2に分配する。サンプリングクロック1は、信号遅延回路174を通って、第1干渉光検出部80に入力される。サンプリングクロック2は、そのまま第2干渉光検出部90に入力される。信号遅延回路174は、光路長差生成部22の光路長差ΔLの分だけ時間が遅延するように設計されている。これにより、光路長差生成部22の分だけ遅延している干渉光に対しても、同じタイミングでサンプリングすることができる。これにより、取得する複数の断層画像の位置ずれが防止できる。本実施例では、サンプリングクロックを生成するのに、マッハツェンダー干渉計を用いている。しかしながら、サンプリングクロックを生成するのに、マイケルソン干渉計を用いてもよいし、電気回路を用いてもよい。また、光源に、サンプリングクロック発生器を備えた光源を用いて、サンプリングクロックを生成してもよい。
【0042】
次に、較正光から変換される干渉信号(以下、較正用干渉信号ともいう)の検出位置を補正する処理について説明する。較正光は、4つの信号処理部84、85、94、95の間で生じるサンプリングタイミングのずれを補正するために用いられる。上述したように、干渉光検出部80、90には、4つの信号処理部84、85、94、95が同期してサンプリングを開始するようにトリガー信号が入力される。しかしながら、サンプリングトリガー/クロック発生器100の誤差等によって、4つの信号処理部84、85、94、95のそれぞれにトリガー信号が到達するタイミングがずれることがある。また、干渉光検出部80、90に入力される4つの干渉光はそれぞれ別個の干渉計によって生成されるため、それぞれの干渉計の光路長に製造上の誤差が生じる。このため、4つの信号処理部84、85、94、95のサンプリングタイミングにずれが生じる。演算部202は、較正光を用いてこのようなサンプリングタイミングのずれを補正する処理(以下、較正処理ともいう)を実行する。なお、較正光を用いて4つの信号処理部84、85、94、95の間で生じるサンプリングタイミングのずれを補正する処理(較正処理)については、例えば、特開2019-113398号公報に開示される公知の方法を用いることができるため、詳細な説明については省略する。
【0043】
較正用干渉信号は、測定光路S4の光路長に基づいて、所定の深さ方向の位置に検出される。上述したように、本実施例では、較正用干渉信号は、計測レンジのナイキスト周波数近傍に検出される。しかしながら、光断層画像撮影装置内の環境変化(例えば、温度変化等)により、較正用干渉信号の検出位置は、所定の位置からずれることがある。較正用干渉信号の検出位置がずれると、演算部202は、上記の較正処理を正確に実行することができなくなる。そこで、本実施例では、上記の較正処理を正確に実行できるように、較正用干渉信号の検出位置を補正する。
【0044】
図5に示すように、まず、演算部202は、所定範囲内に信号が検出されているか否かを判断する(S12)。上述したように、較正用干渉信号の検出位置がずれている可能性がある。このため、較正用干渉信号の検出位置がずれている場合を想定して、所定範囲は、較正処理を正確に実行可能な範囲より広く設定される。2つの較正用干渉信号の検出位置がずれたとしても、2つの較正用干渉信号が設定された検出位置の近傍の一定範囲内に位置すれば、較正処理を正確に実行することができる。以下では、較正処理を実行可能な範囲を「較正可能範囲」と称する。所定範囲は、較正可能範囲より広く設定される(図6参照)。なお、較正可能範囲及び所定範囲については、較正用干渉信号の設定位置に応じて適宜設定することができ、具体的な数値については限定されない。
【0045】
所定範囲内に信号が検出されない場合(ステップS12でNO)、較正用干渉信号が、所定範囲から外れた位置まで大幅にずれてしまっていると言える。このような場合、本実施例の光断層画像撮影装置は、被検物500を正確に撮影することが難しい状態になっている可能性がある。このため、演算部202は、モニタ120にエラーである旨を表示し(S24)、較正用干渉信号の検出位置を補正する処理を終了する。
【0046】
所定範囲内に信号が検出された場合(ステップS12でYES)、演算部202は、較正用干渉信号を一方の深さ方向に移動させる(S14)。以下、ここで移動させる一方の深さ方向を第1方向と称し、第1方向とは反対方向を第2方向と称する。具体的には、駆動装置405によってレンズ402及びミラー403を光軸に沿って移動させる(図2参照)。例えば、レンズ402及びミラー403を光源11側(図2では、左側)に移動させる。これにより、較正光の光路長が短くなり、較正用干渉信号は、マイナス方向に移動する(図6参照)。以下では、第1方向がマイナス方向であり、第2方向がプラス方向である場合を例にして説明するが、第1方向がプラス方向であり、第2方向がマイナス方向であってもよい。
【0047】
次いで、演算部202は、ステップS12で検出された信号が第1方向(例えば、マイナス方向)に移動したか否かを判断する(S16)。本実施例では、較正用干渉信号は、計測レンジのナイキスト周波数fn近傍に検出される。このため、較正用干渉信号のエイリアシング信号が生じる。エイリアシング信号は、フーリエドメイン方式(Fourier dоmain OCT:FD-OCT)において、較正用干渉信号の周波数がナイキスト周波数fnを越えた際に折り返して生じる信号である。以下では、エイリアシング信号と区別するため、較正用干渉信号をサンプル信号と称することがある。ステップS12で検出された信号が、サンプル信号とエイリアシング信号のどちらであるのかは、一見して判別することが難しい。そこで、較正用干渉信号を移動させたときに、検出された信号がどちらに移動するのかによって、検出された信号がサンプル信号とエイリアシング信号のどちらであるのかを判別する。サンプル信号は、較正用干渉信号そのものであるため、較正用干渉信号を移動させた方向と同じ方向(例えば、レンズ402及びミラー403を光源11側に移動させたときには、マイナス方向)に移動する。一方、エイリアシング信号は折り返し信号であるため、較正用干渉信号を移動させた方向とは反対方向((例えば、レンズ402及びミラー403を光源11側に移動させたときには、プラス方向)に移動する。
【0048】
ステップS12で検出された信号が第1方向(例えば、マイナス方向)に移動した場合(ステップS16でYES)、演算部202は、検出された信号がサンプル信号であると判断する。そして、ステップS20に進む。
【0049】
一方、ステップS12で検出された信号が第2方向(例えば、プラス方向)に移動した場合(ステップS16でNO)、演算部202は、検出された信号がエイリアシング信号であると判断する。そして、演算部202は、サンプル信号を較正可能範囲外かつ所定範囲内まで移動させる(S18)。図7(a)に示すように、所定範囲内に検出された信号がエイリアシング信号である場合、サンプル信号は、エイリアシング信号より大きい所定範囲外の位置(図7(a)では、所定範囲の右側)に位置している。較正用干渉信号をさらにマイナス方向に移動させると、サンプル信号はマイナス方向に移動する一方で、ステップS12で検出された信号(エイリアシング信号)はさらにプラス方向に移動する。このため、較正用干渉信号をマイナス方向に移動させることによって、サンプル信号を検出することができる。演算部202は、較正用干渉信号をマイナス方向に移動させて、所定範囲より大きい位置に位置するサンプル信号を、較正可能範囲を通過して所定範囲内となる位置(図7(b)参照)まで移動させる。
【0050】
ここで、ステップS12で検出された信号がエイリアシング信号である場合に、演算部202が、所定範囲より大きい位置に位置するサンプル信号を、較正可能範囲より小さい所定範囲内の位置まで移動させる理由について説明する。上述したように、干渉信号は、第1~第4干渉信号によって構成される。このため、較正用干渉信号(サンプル信号)も第1~第4干渉信号として検出される。また、較正光は2つ生成されるため、合計8つの信号が生成される。しかしながら、第1~第4干渉信号がずれることがあるため、2つの較正光から生成される合計8つの信号がバラバラに検出されることがある。図8に示すように、第1~第4干渉信号がずれている場合であっても、エイリアシング信号を示す8つの信号の位置とサンプル信号を示す8つの信号の位置がずれていれば、サンプル信号の位置を把握することができる。一方で、エイリアシング信号を示す8つの信号の一部とサンプル信号を示す8つの信号の一部が重複していると(図示は省略)、重複部分ではサンプル信号とエイリアシング信号を区別することが難しい。このようにサンプル信号の一部とエイリアシング信号の一部が重複する場合であっても、サンプル信号を示す8つの信号のうち最大のもの(すなわち、エイリアシング信号から最も離れているもの)については、サンプル信号であると把握できる。また、第1~第4干渉信号がずれれている場合に、エイリアシング信号の信号幅は、サンプル信号の信号幅と異なることがある。このため、エイリアシング信号の位置に基づいてサンプル信号の移動量を算出すると、サンプル信号を正確に移動できないことがある。そこで、演算部202は。サンプル信号を示す8つの信号のうち最大のものが較正可能範囲の最小位置に位置するようにサンプル信号を移動させる。すると、8つのサンプル信号全てが較正可能範囲より小さい位置に移動すると共に、エイリアシング信号はナイキスト周波数fnを折り返して較正可能範囲より大きい位置に大きく移動する。このように、8つのサンプル信号全てが較正可能範囲より小さくなるようにサンプル信号を移動することによって、サンプル信号とエイリアシング信号を分離することができる。また、エイリアシング信号に位置ではなくサンプル信号の位置に基づいてサンプル信号の移動量を算出するため、サンプル信号を正確に移動させることができる。
【0051】
次いで、演算部202は、サンプル信号のうち位置が最も大きい信号が2つの較正用干渉信号のうち大きいものの設定位置に位置するように、サンプル信号を移動させる(S20)。上述したように、干渉信号は第1~第4干渉信号によって構成され、較正光は2つ生成される。このため、サンプル信号として8つの信号が生成される。演算部202は、2つの較正光による第1~第4干渉信号である8つの信号のうち位置が最も大きい信号を、2つの較正用干渉信号のうち大きいものの設定位置に移動させる。
【0052】
次いで、演算部202は、サンプル信号の第1~第4干渉信号全てが、較正可能範囲内に位置しているか否かを判断する(S22)。具体的には、演算部202は、2つの較正光による第1~第4干渉信号である8つの信号全てが、較正可能範囲内に位置しているか否かを判断する。上述したように、較正用干渉信号(サンプル信号)が較正可能範囲にあれば、較正処理を正確に実行できる。したがって、図9(a)に示すように、2つの較正光による第1~第4干渉信号である8つの信号全てが較正可能範囲内に収まっていれば、較正処理を正確に実行できる。一方、図9(b)に示すように、サンプル信号の第1~第4干渉信号間のずれ量が大きいと、第1~第4干渉信号全てが較正可能範囲に収まらない場合がある。この場合には、サンプル信号(具体的には、サンプル信号の一部)が較正可能範囲内に位置していないため、較正処理を正確に実行できない。
【0053】
サンプル信号の第1~第4干渉信号全てが較正可能範囲内に位置している場合(ステップS22でYES)、サンプル信号を用いて較正処理を正確に実行できる。このため、較正用干渉信号の位置を補正する処理を終了する。
【0054】
一方、サンプル信号の第1~第4干渉信号のうち、較正可能範囲内に位置していないものがある場合(ステップS22でNO)、2つの較正光による第1~第4干渉信号である8つの信号全てを所定範囲内に収めることができない。このような場合、本実施例の光断層画像撮影装置は、被検体を正確に撮影することが難しい状態になっている可能性がある。このため、演算部202は、モニタ120にエラーである旨を表示し(S24)、較正用干渉信号の検出位置を補正する処理を終了する。
【0055】
なお、本実施例では、較正用干渉信号は、計測レンジのナイキスト周波数fn近傍に検出されたため、較正用干渉信号のサンプル信号とエイリアシング信号が発生した。このため、サンプル信号とエイリアシング信号とを判別する処理(図5のステップS14及びステップS16の処理)を実行したが、このような構成に限定されない。例えば、サンプル信号の折り返し信号として、ミラー信号が発生する場合には、サンプル信号とエイリアシング信号とを判別する処理の代わりに、サンプル信号とミラー信号とを判別する処理を実行してもよい。ミラー信号は、FD-OCTの光断層画像撮影装置において発生する複素共役信号である。典型的なFD-OCTでは、計測深さレンジを正周波数に限定する。このとき、サンプル信号が、正周波数から直流(Direct Current:DC)を超えて負周波数へ移動した場合に、サンプル信号のミラー信号が負周波数からDCを超えて正周波数へ移動するため、サンプル信号がDCで折り返したミラー信号が発生する。例えば、較正用干渉信号が0px付近に発生するように設定すると、エイリアシング信号は発生しない一方で、ミラー信号が発生する。ミラー信号は、エイリアシング信号と同様に、サンプル信号と反対方向に移動する。このため、ミラー信号が発生する場合にも、エイリアシング信号をミラー信号に置き換えて、本実施例の較正用干渉信号の検出位置を補正する処理を適用することができる。
【0056】
また、本実施例では、較正光を用いて、4つの信号処理部84、85、94、95の間で生じるサンプリングタイミングのずれを補正する処理を実行したが、このような構成に限定されない。較正光を用いて実行する較正処理の種類は特に限定されるものではなく、較正光を用いて、上述のサンプリングタイミングのずれを補正する処理以外の較正処理を実行する場合であっても、本実施例の較正用干渉信号の検出位置を補正する処理を適用することができる。
【0057】
また、本実施例では、偏光感受型の光断層画像撮影装置が用いられていたが、このような構成に限定されない。例えば、偏光感受型でないFD-OCTの光断層画像撮影装置においても、本実施例の較正用干渉信号の検出位置を補正する処理を適用することができる。FD-OCTの光断層画像撮影装置では、較正用干渉信号の設定位置に応じて、サンプル信号の折り返し信号であるエイリアシング信号やミラー信号が発生する。このため、FD-OCTの光断層画像撮影装置であれば、上述した補正処理を用いて、較正用干渉信号の検出位置を補正することができる。
【0058】
また、FD-OCT以外(例えば、タイムドメイン方式等)の光断層画像撮影装置についても、本実施例の較正用干渉信号の検出位置を補正する処理を変形して実行することができる。FD-OCT以外の光断層画像撮影装置では、折り返し信号(エイリアシング信号やミラー信号)は発生しない。このため、所定範囲内に検出された信号がサンプル信号と折り返し信号のいずれであるのかを判別する処理を実行する必要がない。このため、本実施例の較正用干渉信号の検出位置を補正する処理からサンプル信号と折り返し信号のいずれであるのかを判別する処理を省略することによって、較正用干渉信号の検出位置を自動で補正することができる。
【0059】
例えば、図10に示すように、FD-OCT以外の光断層画像撮影装置の演算部は、まず、較正用干渉信号が所定範囲内に検出されているか否かを判断する(S100)。所定範囲は、較正可能範囲より広い範囲に設定される。較正用干渉信号が所定範囲内に検出されない場合(S100でNO)、較正用干渉信号が、所定範囲から外れた位置まで大幅にずれてしまっているため、演算部は、モニタ等の表示装置にエラーである旨を表示し(S110)、較正用干渉信号の検出位置を補正する処理を終了する。
【0060】
較正用干渉信号が所定範囲内に検出された場合(S100でYES)、演算部は、較正用干渉信号が較正可能範囲内に位置しているか否かを判断する(S120)。較正用干渉信号が較正可能範囲内に位置している場合(ステップS120でYES)、較正用干渉信号が予め設定された位置からずれていたとしても、較正用干渉信号を用いて較正処理を実行することができる。このため、較正用干渉信号の位置を補正する処理を終了する。一方、較正用干渉信号が較正可能範囲内に位置していない場合(ステップS120でNO)、演算部は、較正用干渉信号を予め設定された位置に移動させる(S130)。このように、FD-OCT以外の光断層画像撮影装置についても、較正用干渉信号の検出位置を自動で補正することができる。
【0061】
以上、本明細書に開示の技術の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0062】
10:測定部
11:光源
43:参照ミラー
60、70:干渉光生成部
80、90:干渉光検出部
81、82、91、92:バランス型光検出器
83、93:信号処理器
84、85、94、95:信号処理部
100:サンプリングトリガー/クロック発生器
140:サンプリングトリガー発生器
160:サンプリングクロック発生器
200:演算装置
202:演算部
403:ミラー
404:ガラスブロック
405:駆動装置
500:被検物
S1、S2、S3、S4:測定光路
R1、R2:参照光路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10