(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155556
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】マスク、撮像装置、撮像システム、およびデータ生成方法
(51)【国際特許分類】
H04N 23/95 20230101AFI20241024BHJP
H04N 23/55 20230101ALI20241024BHJP
H04N 25/70 20230101ALI20241024BHJP
H04N 25/702 20230101ALI20241024BHJP
【FI】
H04N23/95
H04N23/55
H04N25/70
H04N25/702
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023070363
(22)【出願日】2023-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】316005926
【氏名又は名称】ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】植村 亮介
【テーマコード(参考)】
5C024
5C122
【Fターム(参考)】
5C024CY49
5C024EX21
5C024EX51
5C024GZ36
5C122EA12
5C122FB17
5C122FC06
5C122HB10
(57)【要約】
【課題】復号画像の画質劣化を抑制できるマスク、撮像装置、撮像システム、およびデータ生成方法を提供する。
【解決手段】実施形態に係るマスクは、予め設定される回転基準点を中心とした回転方向に対称な対称成分を有する光の振幅変調領域または位相変調領域を含む2次元パターンが設けられ、入射する光を撮像素子に導光する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め設定される回転基準点を中心とした回転方向に対称な対称成分を有する光の振幅変調領域または位相変調領域を含む2次元パターンが設けられ、入射する光を撮像素子に導光する
マスク。
【請求項2】
前記回転基準点は、
前記2次元パターンが設けられるパターン形成領域の内部に設定される
請求項1に記載のマスク。
【請求項3】
前記回転基準点は、
前記パターン形成領域の重心からの距離が、前記重心から前記パターン形成領域の周縁部までの距離の半分以下の位置に設定される
請求項2に記載のマスク。
【請求項4】
前記回転基準点は、
前記パターン形成領域の重心の位置に設定される
請求項3に記載のマスク。
【請求項5】
前記対称成分は、
前記回転基準点から前記2次元パターンが設けられるパターン形成領域の周縁部に向かうにつれて円弧状のパターンの円弧長が長くなる部分がある
請求項1に記載のマスク。
【請求項6】
前記対称成分は、
前記回転基準点から前記2次元パターンが設けられるパターン形成領域の周縁部に向かうにつれて円弧状のパターンの円弧長が長くなる
請求項5に記載のマスク。
【請求項7】
前記対称成分は、
前記回転基準点からの距離に比例して円弧状のパターンの円弧長が長くなる
請求項6に記載のマスク。
【請求項8】
並進対称性を有する光の振幅変調領域または位相変調領域を含み、繰り返し単位の面積が撮像素子における受光領域の面積よりも小さい2次元パターンが設けられ、入射する光を前記撮像素子に導光する
マスク。
【請求項9】
前記2次元パターンは、
1次元の並進対称性を有する
請求項8に記載のマスク。
【請求項10】
前記2次元パターンは、
2次元の並進対称性を有する
請求項9に記載のマスク。
【請求項11】
前記2次元パターンは、
1次元方向において同一のパターンが繰り返し出現する回数が2回以下である
請求項8に記載のマスク。
【請求項12】
前記2次元パターンは、
1次元方向において繰り返し出現する同一のパターン間に隙間が設けられる
請求項8に記載のマスク。
【請求項13】
予め設定される回転基準点を中心とした回転方向に対称な対称成分を有する光の振幅変調領域または位相変調領域と、並進対称性を有する光の振幅変調領域または位相変調領域とを含む2次元パターンが設けられ、入射する光を撮像素子に導光する
マスク。
【請求項14】
請求項1、8、13のいずれか一つに記載のマスクと、
前記マスクを介して入射する光を受光する撮像素子と
を有する撮像装置。
【請求項15】
請求項1、8、13のいずれか一つに記載のマスクと、
前記マスクを介して入射する光を受光する撮像素子と
を有する撮像装置と、
前記撮像素子によって取得された像を復元する信号処理装置と
を含む撮像システム。
【請求項16】
撮像装置が、
請求項1、8、13のいずれか一つに記載のマスクを介して入射する光を撮像素子によって受光し、前記光に対応する像の符号化画像を生成する
ことを含むデータ生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、マスク、撮像装置、撮像システム、およびデータ生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
撮像素子の光軸方向における前段に光の振幅変調領域または位相変調領域を含む既知の2次元パターンが形成された光学変調素(以下、「マスク」と記載する)を備えたレンズレスのイメージセンサがある。(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
レンジレスのイメージセンサは、マスクの特徴的な2次元パターンの効果を受けて符号化された光を撮像素子上に投射し、マスクの効果を逆演算によって複号することで被写体の復号画像を生成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、一般的なレンズレスのイメージセンサは、マスクと撮像素子との相対位置関係が予め定められる相対位置からずれていると、復号画像の画質が劣化する場合がある。
【0006】
そこで、本開示では、復号画像の画質劣化を抑制できるマスク、撮像装置、撮像システム、およびデータ生成方法を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係るマスクは、予め設定される回転基準点を中心とした回転方向に対称な対称成分を有する光の振幅変調領域または位相変調領域を含む2次元パターンが設けられ、入射する光を撮像素子に導光する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係るイメージセンサの構成および動作の概要を示す説明図である。
【
図2】第1実施形態に係る回転誤差の発生事例を示す説明図である。
【
図3】
図2に示す復号画像のSSIMを示すグラフである。
【
図4A】第1実施形態に係るマスクの生成手順を示す説明図である。
【
図4B】第1実施形態に係る位相変調マスクの一例を示す説明図である。
【
図5】第1実施形態に係るロバストマスクを採用した画像を示す説明図である。
【
図6】
図5に示す復号画像のSSIMを示すグラフである。
【
図7A】第1実施形態に係るロバストマスクにおける対称成分の説明図である。
【
図7B】第1実施形態に係るロバストマスクにおける対称成分の説明図である。
【
図7C】第1実施形態に係るロバストマスクにおける対称成分の説明図である。
【
図8】第1実施形態に係る回転基準点の説明図である。
【
図9】第1実施形態に係る回転基準点がシフトされたロバストマスクを採用した画像を示す説明図である。
【
図10】
図9に示す復号画像のSSIMを示すグラフである。
【
図11】第2実施形態に係るクロップ誤差の発生事例を示す説明図である。
【
図12】第2実施形態に係るクロップ誤差の発生事例を示す説明図である。
【
図13】第2実施形態に係るクロップ誤差の発生事例を示す説明図である。
【
図14】
図13に示す復号画像のSSIMを示すグラフである。
【
図15】第2実施形態に係るロバストマスクの説明図である。
【
図16】第2実施形態に係るロバストマスクによる効果を示す説明図である。
【
図17】第2実施形態に係るロバストマスクのパターン例を示す説明図である。
【
図18】第2実施形態に係るロバストマスクのパターン例を示す説明図である。
【
図19】第2実施形態に係るロバストマスクのパターン例を示す説明図である。
【
図20】第2実施形態に係るロバストマスクのパターン例を示す説明図である。
【
図21】イメージセンサの変形例を示す説明図である。
【
図22】イメージセンサの変形例を示す説明図である。
【
図23】イメージセンサの変形例を示す説明図である。
【
図24】イメージセンサの変形例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本開示の実施形態について図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の各実施形態において、同一の部位には同一の符号を付することにより重複する説明を省略する。
【0010】
[1.イメージセンサの構成]
図1は、実施形態に係るイメージセンサ1の構成および動作の概要を示す説明図である。
図1に示すイメージセンサ1は、撮像に被写体の1点1点から発せられた光を、センサ上で対応する1点1点に集光するレンズを必要としない、所謂レンズレスカメラである。
【0011】
図1に示すように、イメージセンサ1は、撮像装置10と、信号処理装置20とを備える。撮像装置10は、マスクMと、撮像素子Sとを備える。マスクMは、撮像素子Sの光軸方向における前段に設けられる。マスクMには、光の振幅変調領域または位相変調領域を含む既知の2次元パターンが形成されている。
【0012】
光の振幅変調は、遮光部材や透過率の異なる部材を用いて実現される。光の位相変調は、マスク面内での凹凸構造の制御や、マスクの屈折率分布、複数の屈折率の部材を波長以下のサイズオーダーで密度制御することで得られる実行屈折率の制御などで実現される。
図1に示す例は、振幅変調の例である。
【0013】
被写体Tの撮像が行われる場合、マスクMは、被写体の方向から入射する光L対して既知の2次元位相振幅パターンによる変調を与え、一定の距離を経ておかれた後段の撮像素子に導光する。これにより、撮像素子Sの受光面には、被写体Tの形状とマスクMの2次元パターンの形状とに応じた光の強度分布が投影される。
【0014】
撮像素子Sは、受光面に複数の受光素子PDが2次元行列上に配置されている。撮像素子Sは、各受光素子PDによって受光する光Lを光電変換することによって、被写体Tの像がマスクMの2次元パターンにより符号化された符号化画像DAを生成して信号処理装置20に出力する。符号化画像DAは、マスクMを介して入射する光Lが光電変換された画像であるため、肉眼では被写体Tを認識できない画像になる。
【0015】
撮像素子Sによる符号化画像DBの撮像原理は、下記式(1)によって表される。
Y=F×X+N・・・(1)
ここで、
Y:各受光素子PDの受光信号(1次元化データ)
X:シーンベクトル(撮像時にマスクMに入射する光Lの値(1次元化データ))
N:ノイズ
F:イメージング行列(マスクMの2次元パターンと、マスクと撮像素子の距離とによって規定される行列)
式(1)から解るように、各受光素子PDの受光信号Yは、撮像時のシーンベクトルXをイメージング行列Fによって変調した光にノイズNを付加した信号となる。
【0016】
信号処理装置20は、符号化画像DAに対して、所定の復号処理を行うことで、一般的なカメラと同様に被写体Tを認識できる2次元画像(以下、「復号画像DB」と記載する)を生成する。例えば、信号処理装置20は、上記した各受光素子PDの受光信号Yに、イメージング行列Fの逆行列F-1を掛け合わせてシーンベクトルXを復元することにより、復号画像DBを生成して出力する。
【0017】
一般の撮像素子の画素数が数百万画素オーダーであることを考えると、Yも同様のオーダーのベクトルサイズとなり、その撮像素子によって捉えるシーンベクトルXも同程度のサイズを持つ場合、イメージング行列Fは非常に巨大な行列となる為、複合信号処理は、一般にメモリーや演算量が課題となる。
【0018】
これを回避する様々な手法が提案されているが、最も基本的な考え方の一つが、点応答関数にシフトインバリアント性の仮定(近似)をおくものである。
【0019】
物理的な説明としては、点応答関数とは、被写体の1点の光がマスクを通して撮像面に到達した時の強度分布であり、シフトインバリアント性の仮定とは、被写体の異なる1点から発せられたものであっても、上記の強度分布が、強度分布自体は変えずにシフトするだけと近似するものである。
【0020】
式(1)との対応関係での説明としては、点応答関数はイメージング行列Fの各行を意味し、シフトインバリアント性の仮定はイメージング行列Fの各行を比べた時に、シフトのみが起きている状態を意味する。
【0021】
シフトインバリアント性の仮定をおくと、式(1)は以下のように変形することが出来、メモリーや計算量を大幅に圧縮することが出来る。
Y´=F´*X´+N´・・・(2)
Y´:各受光素子PDの受光信号(2次元化データ)
X´:シーン行列(撮像時にマスクMに入射する光Lの値(2次元化データ))
N´:ノイズ
F´:イメージング行列=点応答関数
*:畳み込み演算
【0022】
式(2)では、イメージング行列F´がY´と同様の行列サイズとなり、巨大なメモリーが不要となる、さらに畳み込み演算はFFT(高速フーリエ変換)アルゴリズムにより、高速に処理することが可能となる。
【0023】
Y´を、イメージング行列F´で逆畳み込み演算することで、シーン行列X´を復元することが可能となる。逆畳み込みにおいては、ノイズ耐性を向上させる為に、Wienerフィルター処理を行っても良いし、シーン等に対する各種の既知の仮定を組み込んだ正規化項を付加しても良い。
【0024】
シフトインバリアント性の仮定と、FFTによる逆畳み込み演算ベースの複号信号処理は、特に第2実施形態と密接に関連している。
【0025】
このとき、マスクMと撮像素子Sとの相対位置関係が予め定められる相対位置からずれている場合がある。例えば、マスクMが撮像素子Sに対して、予め定められた既知の位置から回転した状態で配置される場合、マスクMと撮像素子Sとの相対位置関係に誤差(以下、「回転誤差」と記載する)が生じる。また、マスクMと撮像素子Sとの大小関係および光Lの入射角度の増大に伴い、撮像素子Sに所望の光Lが全ては入射しないといった誤差(以下、「クロップ誤差」と記載する)が生じることもある。
【0026】
このように、撮像装置10では、マスクMと撮像素子Sとの相対位置関係、マスクMと撮像素子Sとの大小関係、光Lの入射角度の増大などの外乱による誤差が生じる場合がある。この場合、符号化画像DAにおける各受光素子PDの受光信号Yは、マスクMの2次元パターンによって規定される既知のイメージング行列Fとは異なる行列によって変調された信号になる。
【0027】
このため、信号処理装置20は、既知のイメージング行列Fとは異なる行列によって変調された受光信号Yに対して、既知のイメージング行列Fの逆行列F-1を適用しても、正しいシーンベクトルXを復元できない。その結果、復号画像は、破綻して被写体Tを認識できない状態になる。
【0028】
そこで、本実施形態に撮像装置10は、回転誤差およびクロップ誤差などの外乱の種類に応じた特徴をマスクMに備えさせることによって、復号画像の画質劣化を抑制するように構成される。
【0029】
例えば、回転誤差に対しては、予めマスクMに若干の回転対称性を備えさせることで、ロバストネスを各段に向上させることができる。また、クロップ誤差に対しては、マスクMに予め並進対称性を備えさせることで、軽い復号処理のまま、ロバストネスを各段に向上させることができる。
【0030】
これにより、撮像装置10は、復号のし易さ(逆問題の解きやすさ)に影響度与える変調パターンの自由度を残しつつ、各種ロバストネスを各段に向上させることができる。さらに、マスクMに備えさせる回転対称性および並進対称性の特徴は、組合せが可能であるため、様々な誤差要因に対して同時にロバストネスを向上させることが可能となり、製造コストの大幅な低減や経時的変化の緩和につながる。
【0031】
以下、回転誤差による問題を解決する第1実施形態と、クロップ誤差による問題を解決する第2実施形態とについて説明する。
【0032】
[2.第1実施形態]
[2-1.回転誤差の発生事例]
ここでは、撮像素子Sに対するマスクMの回転角度が0°、0.5°、および1°の場合について説明する。
図2は、第1実施形態に係る回転誤差の発生事例を示す説明図である。
図2に記載の回転角度は、マスクMにおける2次元パターンの重心を回転基準点とした場合のマスクの回転角度である。
図3は、
図2に示す復号画像のSSIM(Structural Similarity Index Measure)を示すグラフである。SSIMは、値が1に近いほど画質が良好であることを示す。評価指標はSSIM以外でもよい。
【0033】
図2および
図3に示すように、マスクMの回転角度が0°、つまり、マスクMが回転誤差なく正しい既知の位置に配置されている場合、信号処理装置20は、鮮明な復号画像DBを生成できる。これに対して、マスクMの回転角度が0.5°、1°と徐々に大きくなるほど、復号画像DBは、画質が徐々に劣化する。
【0034】
[2-2.実施形態に係るマスクの生成手順]
図4Aは、第1実施形態に係るマスクの生成手順例を示す説明図である。
図4Bは、第1実施形態に係る位相変調マスクの一例を示す説明図である。ここでは、光の振幅変調の場合を例に挙げて説明する。
図4Aに示すように、第1実施形態に係るマスク(以下、「ロバストマスクM1」と記載する)を生成する場合には、マスクMを順次、所定の回転角度ずつ回転させながら、各マスクMの画像データを取得する。
【0035】
このとき、例えば、マスクMの2次元パターンにおける重心を回転基準点としてマスクMを回転させる。
図4Aに示す例では、マスクMを0°から3°まで回転させている場合を示ししている。そして、各マスクMの画像データを積分(合成)することによって、ロバストマスクM1の2次元パターンを取得する。
【0036】
この際、画像データの積分(合成)範囲は、中心からの距離に応じて変化しても良い。また、画像データの積分(合成)値を、ある閾値で2値化して、あらたな2次元パターンのロバストマスクM1´としても良い。
【0037】
これにより、ロバストマスクM1の2次元パターンは、例えば、カメラの光軸を北極星に合わせ、長時間露光して撮像される星の画像のように、回転基準点から遠くなるほど、回転基準点を中心とした回転方向に対称な対称成分の円弧状パターンの長さが長くなる。
【0038】
そして、上記のような手順によって2次元パターンを取得した後、例えば、ガラス板等の透光性基板に、取得したロバストマスクM1の2次元パターンを既知の方法によって形成することにより、ロバストマスクM1が完成する。
【0039】
これにより、ロバストマスクM1の2次元パターンは、予め設定される回転基準点を中心とした回転方向に対称な対称成分を有する光の振幅変調領域を含む2次元パターンになる。
【0040】
マスクが光の位相変調を行う場合は、上記手順に従って作成したロバストマスクM1を、撮像面での強度パターン目標値として、マスクと撮像面との距離を考慮し、反復フーリエ位相回復法等のアルゴリズムで、マスク面での位相分布を求める手順を追加すればよい。ロバストマスクM1,M1´を元に、それぞれ位相変調マスクM1-p、M1´-pを作成した場合の例を
図4Bに示す。
【0041】
そして、上記のような手順によって新たな2次元パターンを取得した後、例えば、ガラス板等の透光性基板に、上記新たな2次元パターンを既知の方法によって形成することにより、ロバストマスクが完成する。
【0042】
これにより、ロバストマスクの2次元パターンは、予め設定される回転基準点を中心とした回転方向に対称な対称成分を有する光の位相変調領域を含む2次元パターンになる。マスクが光の位相振幅変調を行う場合も、光の位相変調を行う場合と同様の手法でロバスマスクを作成することができる。
【0043】
[2-3.ロバストマスクを採用した復号画像の評価]
ここでは、ロバストマスクM1を採用し、ロバストマスクM1を0°、0.5°、および1°回転させて被写体を撮像した場合について説明する。
図5は、第1実施形態に係るロバストマスクM1を採用した画像を示す説明図である。
図5に記載の回転角度は、ロバストマスクM1における2次元パターンの重心を回転基準点とした場合のマスクの回転角度である。
図6は、
図5に示す復号画像のSSIMを示すグラフである。
【0044】
図5に示すように、ロバストマスクM1を採用した場合、復号画像DBは、ロバストマスクM1の回転角度が大きくなるにつれて画質が若干劣化するが、被写体を認識できるだけの画質は確保される。
【0045】
また、
図6に示すように、復号画像DBのSSIMは、ロバストマスクM1の回転角度が0°、0.5°、および1°のいずれの場合も、
図3に示すマスクMを採用した場合の復号画像DBのSSIMよりも高い値になっている。これからも、ロバストマスクM1を採用したことによって、復号画像DBの画質劣化が抑制できたことが分かる。
【0046】
[2-4.ロバストマスクの2次元パターンにおける対称成分]
図7A、
図7B、および
図7Cは、第1実施形態に係るロバストマスクM1の2次元パターンにおける対称成分の説明図である。
図7A、
図7B、および
図7Cに示すグラフの縦軸は、ロバストマスクM1の回転基準点から対称成分までの距離である。横軸は、対称成分の積分角度範囲である。
【0047】
図7Aに示すように、回転基準点を中心とした回転方向に対称な対称成分は、回転基準点から遠くなるほど、積分角度範囲が大きくなる部分が少なくともあればよい。この場合、対称成分は、回転基準点から2次元パターンが設けられるパターン形成領域の周縁部に向かうにつれて円弧状のパターンの円弧長が長くなる部分があることになる。
【0048】
また、
図7Bに示すように、回転基準点を中心とした回転方向に対称な対称成分は、回転基準点から遠くなるほど、積分角度範囲が大きくなるように構成されてもよい。この場合、対称成分は、回転基準点から2次元パターンが設けられるパターン形成領域の周縁部に向かうにつれて円弧状のパターンの円弧長が長くなる。
【0049】
また、
図7Cに示すように、回転基準点を中心とした回転方向に対称な対称成分は、回転基準点からの距離を問わず、一定の積分角度範囲となるように構成されてもよい。この場合、対称成分は、回転基準点からの距離に比例して円弧状のパターンの円弧長が長くなる。
【0050】
2次元パターンの自由度の観点では、
図7Aに示す例が最も自由度が高く、
図7Cに示す例が最も自由度が低い。また、回転誤差に対するロバスト性の観点では、
図7Cに示す例が最もロバスト性が高く、
図7Aに示す例が最もロバスト性が低下する。
【0051】
ここで積分範囲に関しては、第1実施形態の説明図では、一例として3度を提示しているが、上限下限に対して制限はない。マスクアライメントに関する製造能力、ユースケース毎の所望の画質、必要な2次元パターンの自由度に応じて、ケースバイケースで設計することが可能である。
【0052】
[2-5.回転基準点]
図8は、第1実施形態に係る回転基準点の説明図である。
図8には、便宜上、X-Y直交座標系を示している。ここまでは、ロバストマスクM1を取得するためにマスクMを回転させる回転基準点が、
図8の上図に示すように、2次元パターンが形成されるパターン形成領域の重心の位置に設定される場合について説明したが、これは一例である。
【0053】
回転基準点の位置は、例えば、
図8の下図に示すように、パターン形成領域の重心の位置からシフトした位置に設定されてもよい。
図8の下図には、回転基準点がパターン形成領域の重心から20%、X軸負方向にシフトして設定された場合のロバストマスクM2を示している。回転基準点がパターン形成領域の重心から100%シフトされる場合、回転基準点は、パターン形成領域の周縁部に設定されることになる。
【0054】
なお、回転基準点は、マスクM内の任意の位置に設定されてもよいが、回転誤差に対するロバスト性の観点では、パターン形成領域の内部に設定されることが好ましく、パターン形成領域の重心から50%以内シフトされた位置に設けられることが、より好ましい。
【0055】
つまり、回転基準点は、パターン形成領域の重心からの距離が、パターン形成領域の重心からパターン形成領域の周縁部までの距離の半分以下の位置に設定されることが、より好ましい。この場合、回転基準点が設定される位置として最良位置は、パターン形成領域の重心の位置である。
【0056】
回転基準点の位置を任意に設定可能とすることによって、パターンの自由度が向上する。一方、回転基準点の位置をパターン形成領域の重心の位置に設定すると、回転誤差に対するロバスト性は向上するが、製造工程が繊細になる。
【0057】
[2-6.回転基準点がシフトされたロバストマスクを採用した復号画像の評価]
ここでは、
図8の下図に示すロバストマスクM2を採用し、ロバストマスクM2を0°、0.5°、および1°回転させて被写体を撮像した場合について説明する。
図9は、第1実施形態に係る回転基準点がシフトされたロバストマスクM2を採用した画像を示す説明図である。
図9に記載の回転角度は、ロバストマスクM2における2次元パターンの重心を回転基準点とした場合のマスクの回転角度である。
図10は、
図9に示す復号画像のSSIMを示すグラフである。
【0058】
図9に示すように、ロバストマスクM2を採用した場合、復号画像DBは、ロバストマスクM2の回転角度が大きくなるにつれて画質が若干劣化するが、被写体を認識できるだけの画質は確保される。
【0059】
また、
図10に示すように、復号画像DBのSSIMは、ロバストマスクM2の回転角度が0°、0.5°、および1°のいずれの場合も、
図3に示すマスクMを採用した場合の復号画像DBのSSIMよりも高い値になっている。これからも、ロバストマスクM2を採用したことによって、復号画像DBの画質劣化が抑制できたことが分かる。
【0060】
[3.第2実施形態]
[3-1.クロップ誤差の発生事例]
図11~
図13は、第2実施形態に係るクロップ誤差の発生事例を示す説明図である。
図13に示すクロップレートは、想定画角から到来する光が、最も見切れが発生する方向において、何%が撮像素子Sの外にでるかを示す指標である。なお、ここでの、想定画角は、撮像素子Sの入射特性によって規定される光の入射角度である。
図14は、
図13に示す復号画像のSSIMを示すグラフである。
【0061】
前述のように、複合信号処理において、メモリーや演算量の問題を回避する為に、点応答関数にシフトインバリアント性の仮定(近似)をおく考え方がある。式(2)において、Y´を、イメージング行列F´で逆畳み込み演算することで、シーン行列X´を復元することが可能となる。逆畳み込み演算は、FFT(高速フーリエ変換)アルゴリズムにより、高速に処理することが可能である。
【0062】
逆畳み込みにおいては、ノイズ耐性を向上させる為に、Wienerフィルター処理を行ってもよいし、シーン等に対する各種の既知の仮定を組み込んだ正規化項を付加してもよく、このような派生の信号処理を含める。クロップ誤差は、上記仮定を設けず、より演算コストの高い複合信号処理で回避する方法もあるが、本発明では上記仮定をベースとした複合信号処理の下で考える。
【0063】
図11に示すように、撮像素子Sの受光面積に対して十分小さなマスクM3が採用される場合、マスクM3に入射する光Lは、全て撮像素子Sによって受光される。このため、信号処理装置20は、符号化画像DAから鮮明な復号画像DBを生成できる。
【0064】
しかしながら、多くの光量を得るためには、マスクのサイズが大きい方が望ましい。ただし、例えば、
図11に示すように、撮像素子Sの受光面積と同一サイズのマスクM4が採用される場合、マスクM4の周縁部から入射する光Lは、撮像素子Sの外に出るので撮像素子Sによって受光されない。これにより、画像に見切れ(クロップ)が発生する。
【0065】
このように、入射する光Lの一部を受光できない場合、信号処理装置20は、復号画像DBの生成に必要なデータが一部欠落することになるため、シフトインバリアント性の仮定が崩れ、符号化画像DAから鮮明な復号画像DBを生成することができない。
【0066】
また、
図12に示すように、想定画角内の入射角度でマスクM5に入射される光Lは、全て撮像素子Sによって受光される。このため、信号処理装置20は、符号化画像DAから鮮明な復号画像DBを生成できる。
【0067】
しかしながら、
図12に示すように、想定画角よりも大きい入射角度で入射する光L1は、撮像素子Sの外に出るので撮像素子Sによって受光されない。これにより、画像に見切れ(クロップ)が発生する。
【0068】
このように、入射する光Lの一部を受光できない場合、信号処理装置20は、復号画像DBの生成に必要なデータが一部欠落することになるため、符号化画像DAから鮮明な復号画像DBを生成することができない。
【0069】
このため、
図13および
図14に示すように、信号処理装置20は、クロップレートが0%であれば、符号化画像DAから鮮明な復号画像DBを生成できるが、クロップレートが高くなるほど、生成する復号画像DBの画質が急激に劣化する。そこで、第2実施形態に係るロバストマスクは、クロップ誤差に対するロバスト性が向上する構成を備える。
【0070】
[3-2.第2実施形態に係るロバストマスク]
図15は、第2実施形態に係るロバストマスクの説明図である。
【0071】
図15の上段に示す図(a),図(b)には、クロップにより情報が欠落する様子を示しており、下段に示す図(c),(d)には、クロップによって欠落した情報がロバストマスクによって補われる様子を示している。
【0072】
各々の図に示す白色の四角枠XSは、撮像素子Sの大きさを示している。各々の図に示すパターンXMは、マスクによって撮像素子S上に形成される2次元強度パターン(点応答関数)を示している。図では、ロバストマスクによって撮像素子S上に形成される2次元強度パターン(点応答関数)は、図が見易いように、1方向かつ片側だけの対称性部分のみ図示している。
【0073】
図15には、ロバストマスクM6(例えば、
図16参照)自体は不図示だが、並進対称性を有する光の振幅変調領域または位相変調領域を含む2次元パターンが設けられており、基本パターンのマスク中心と、撮像素子Sの中心は一致している。
【0074】
図(a)には、並進対称性を有しないマスクを通過して、被写体の1点から出た光が紙面垂直方向(ω=0度)から入射した場合に、撮像素子S上に形成される2次元強度パターン(点応答関数)を示しており、全ての情報が撮像素子Sによって受光される。
【0075】
図(b)には、並進対称性を有しないマスクを通過して、被写体の他の1点から出た光が紙面垂直方向から、向かって下側にθ度傾いた方向(ω=θ度)から入射した場合に、撮像素子S上に形成される2次元強度パターン(点応答関数)を示しており、一部の情報が撮像素子Sによって受光されない。
【0076】
図(c)は、並進対称性を有するマスクを通過して、被写体の1点から出た光が紙面垂直方向(ω=0°)から入射した場合に、撮像素子S上に形成される2次元強度パターン(点応答関数)を示しており、全ての基本パターンの情報が撮像素子Sによって受光される。
【0077】
図(d)は、並進対称性を有するマスクを通過して、被写体の他の1点から出た光が紙面垂直方向から、向かって下側にθ度傾いた方向(ω=θ°)から入射した場合に、撮像素子S上に形成される2次元強度パターン(点応答関数)を示しており、一部の基本パターンの情報が撮像素子Sによって受光されないが、2次元強度パターン(点応答関数)が並進対称性を持つことにより、欠落した情報が撮像素子Sの反対側で補われる。
【0078】
図(b)の状態は、シフトインバリアント性の仮定が崩れている為、逆畳み込みでの複合信号処理が破綻する。破綻の影響は、複号画像の全域に渡って生じる為、複号画像全体が劣化する。
【0079】
一方、図(d)の状態は、シフトインバリアント性の仮定が崩れているように一見みえるが、FFTによる逆畳み込みの周期性から、シフトインバリアント性の仮定は崩れない。
【0080】
さらに、通常FFTによる逆畳み込みベースの処理を行う場合、FFTによる畳み込みの周期性の影響を回避するため、すなわち循環畳み込みの影響を回避するために、畳み込むカーネル(点応答関数側)の周囲に十分大きな0領域を前処理としてパッディングし、線形畳み込みの状態にする必要がある。
【0081】
この処理はメモリーや演算量の増大を招くが、本手法では循環畳み込みの性質を逆に用いるため、これらの処理が不要となりメモリーや演算量の観点からもメリットがある。複合信号処理の前処理としては、撮像素子S上に形成される2次元強度パターン(点応答関数)の基本パターンの部分をクロップする必要があるが、これは逆にさらにメモリーや演算量を減少させる方向となる。
【0082】
[3-3.第2実施形態に係るロバストマスクによる効果]
図16は、第2実施形態に係るロバストマスクによる効果を示す説明図である。例えば、
図16に示すように、信号処理装置20は、
図11に示すマスクM3が採用され、マスクM3の周縁部から入射する光Lが撮像素子Sによって受光されないと、符号化画像DAから鮮明な復号画像DBを生成することができない。
【0083】
これに対して、並進対称性を有するロバストマスクM6が採用される場合、2次元パターンにおける第1の周縁部から入射して撮像素子Sによって受光されない光の像が、符号化画像DAでは、第1の周縁部とは反対側の第2の周縁部に現れる。
【0084】
これにより、
図16に示すように、信号処理装置20は、符号化画像DAにおける第1の周縁部で欠落した部分の像を、第1の周縁部とは反対側の第2の周縁部に現れる像によって補間することにより、符号化画像DAから鮮明な復号画像DBを生成できる。
【0085】
[3-4.第2実施形態に係るロバストマスクのパターン例]
図17~
図18は、第2実施形態に係るロバストマスクのパターン例を示す説明図である。
図17には、第1パターン例、
図18には、第2パターン例、
図19には、第3パターン例、
図20には、第4パターン例を示している。
【0086】
図17~
図18には、便宜上、X-Y直交座標系を示している。また、ここでは、便宜上、X-Y直交座標系におけるX軸正方向を右、X軸負方向を左、Y軸正方向を上、Y軸負方向を下と定義して説明する。
【0087】
2次元パターンの第1パターンは、1次元の並進対称性を有する。第1パターンを形成する場合には、例えば、
図17の上図に示すように、中央の基本パターンPにおける右端部の部分パターンA1を、基本パターンPにおける左端部の外側に配置する。さらに、中央の基本パターンPにおける左端部の部分パターンA2を、基本パターンPにおける右端部の外側に配置する。
【0088】
これにより、
図17の下図に示すロバストマスクM7が形成できる。ロバストマスクM7によれば、信号処理装置20は、中央の基本パターンPにおける右端部の部分パターンA1に入射して撮像素子Sから漏れた光の像を、基本パターンPにおける左端部の外側に配置する部分パターンA1に入射光の像で補間できる。
【0089】
同様に、信号処理装置20は、中央の基本パターンPにおける左端部の部分パターンA2に入射して撮像素子Sから漏れた光の像を、基本パターンPにおける右端部の外側に配置する部分パターンA2に入射光の像で補間できる。したがって、信号処理装置20は、符号化画像DAから鮮明な復号画像DBを生成できる。
【0090】
2次元パターンの第2パターンは、2次元の並進対称性を有する。第2パターンを形成する場合、
図18の上図に示すように、中央の基本パターンPにおける右端部の部分パターンA1を、基本パターンPにおける左端部の外側に配置する。また、中央の基本パターンPにおける左端部の部分パターンA2を、基本パターンPにおける右端部の外側に配置する。
【0091】
同様に、中央の基本パターンPにおける上端部の部分パターンA3を、基本パターンPにおける下端部の外側に配置する。また、中央の基本パターンPにおける下端部の部分パターンA24、基本パターンPにおける上端部の外側に配置する。
【0092】
さらに、中央の基本パターンPにおける右上端部の部分パターンA5を、基本パターンPにおける左下端部の外側に配置し、中央の基本パターンPにおける右下端部の部分パターンA6を、基本パターンPにおける左上端部の外側に配置する。
【0093】
同様に、中央の基本パターンPにおける左上端部の部分パターンA7を、基本パターンPにおける右下端部の外側に配置し、中央の基本パターンPにおける左下端部の部分パターンA8を、基本パターンPにおける右上端部の外側に配置する。
【0094】
これにより、
図18の下図に示すロバストマスクM8が形成できる。ロバストマスクM8によれば、信号処理装置20は、同様に、中央の基本パターンPの周縁部から入射して、撮像素子Sから漏れた光の像を、基本パターンPの外側に配置される部分パターンA1~A8から入射する光の像によって補間できる。したがって、信号処理装置20は、符号化画像DAから鮮明な復号画像DBを生成できる。
【0095】
なお、基本パターンPの形成領域のアスペクト比は、1対1でなくてもよい。つまり、基本パターンPの形成領域の形状は、正方形でなくてもよい。例えば、
図19に示す第3パターンのロバストマスクM9のように、長方形であってもよい。ロバストマスクM9によっても、信号処理装置20は、符号化画像DAから鮮明な復号画像DBを生成できる。
【0096】
また、第4パターンを形成する場合、
図20の上図に示すように、中央に複数の基本パターンPを行列状に配置する。
図20に示す例では、3×3行列状に9個の基本パターンPを配置する。
【0097】
そして、第3パターンと同様に、9個の基本パターンP群の周囲における外側の各所に、部分パターンA1~A8を配置する。これにより、
図20の下図に示すロバストマスクM10が形成できる。
【0098】
ロバストマスクM10によれば、ロバストマスクM8,M9と同様に、中央の基本パターンP群の周縁部から入射して、撮像素子Sから漏れた光の像を、基本パターンP群の外側に配置される部分パターンA1~A8から入射する光の像によって補間できる。したがって、信号処理装置20は、符号化画像DAから鮮明な復号画像DBを生成できる。
【0099】
第1~第4パターンの2次元パターンは、1次元方向において同一のパターンが繰り返し出現する回数が2回以下であることが望ましい。これにより、ロバストマスクM7~M10によれば、信号処理装置20は、符号化画像DAの復号を行う場合に、不定正が抑制されるので、逆問題が解きやすくなる。
【0100】
また、第1~第4パターンの2次元パターンは、基本パターンPまたは基本パターンP群の面積が撮像素子Sの受光領域の面積よりも小さい。これにより、基本パターンPまたは基本パターンP群の周縁部から入射する光が、撮像素子Sの受光領域から漏れることを抑制することができる。
【0101】
基本パターンPまたは基本パターンP群と、基本パターンPまたは基本パターンP群の外側に配置される部分パターンA1~A8との間には、隙間が設けられてもよい。つまり、2次元パターンは、1次元方向において繰り返し出現する同一のパターン間に隙間が設けられてもよい。これにより、第1~第4パターンの2次元パターンの形成工程が容易になる。この場合、隙間を含めて基本パターンと考えれば、上述の効果の説明がそのまま当て嵌まる。
【0102】
なお、基本パターン関して、実施形態1においてはマスクMが基本パターンであり、実施形態2においては繰り返し単位が基本パターンであるが、基本パターンは、内部の2次元パターン及びその外形を含めて任意の形状を取り得る。つまり、内部の2次元パターンは、リサージュパターンを提示しているがこれはあくまで一例であり、外形も必ずしも矩形である必要すらない。
【0103】
[4.イメージセンサの変形例]
図21~
図24は、イメージセンサの変形例を示す説明図である。
図21には、第1変形例に係るイメージセンサ1Aを示している。
図22には、第2変形例に係るイメージセンサ1Bを示している。
図23には、第3変形例に係るイメージセンサ1Cを含む撮像システム100を示している。
図24には、第4変形例に係るイメージセンサ1Dを示している。
【0104】
図21に示すように、第1変形例に係るイメージセンサ1Aは、撮像装置10を備える。この場合、イメージセンサ1Aは、信号処理装置20を備えない分、チップの低背化が可能になる。かかるイメージセンサ1Aは、被写体を撮像した符号化画像DAを出力する。この場合、イメージセンサ1Aから出力される符号化画像DAは、別チップまたはクラウド上に設けられる信号処理装置によって復号される。
【0105】
また、
図22に示すように、第2変形例に係るイメージセンサ1Bは、撮像装置10と、信号処理装置20Bとを備える。撮像装置10は、被写体を撮像した符号化画像DAを信号処理装置20Bに出力する。
【0106】
信号処理装置20Bは、復号処理までは行わず、符号化画像DAに対して復号処理がし易くなるよう信号処理を行う。例えば、信号処理装置20Bは、符号化画像DAに回転誤差が含まれる場合、回転誤差を補正するようなキャリブレーション処理を行う。そして、信号処理装置20Bは、キャリブレーション処理後の符号化画像DA1を出力する。
【0107】
これにより、例えば、符号化画像DA1を復号する別チップまたはクラウド上に設けられる信号処理装置は、全ての撮像装置10に対して共通の復号処理を行うことによって鮮明な復号画像DBを生成できるので、情報処理装置のコストを低減できる。
【0108】
また、
図23に示すように、第3変形例に係るイメージセンサ1Cを含む撮像システム100は、イメージセンサ1Cと、信号処理装置20Cと、アプリケーション30とを含む。この場合、信号処理装置20Cは、別チップに設けられてもよく、クラウド上に設けられてもよい。
【0109】
イメージセンサ1Cは、撮像装置10を備える。撮像装置10は、被写体を撮像した符号化画像DAを信号処理装置20Cに出力する。信号処理装置20Cは、信号処理装置20Bと同様に、符号化画像DAに対してキャリブレーション処理を行った符号化画像DA1をアプリケーション30に出力する。アプリケーション30は、符号化画像DA1を復号処理して復号画像DBを生成して出力する。
【0110】
なお、信号処理装置20Cは、符号化画像DAから復号画像DBを生成してアプリケーション30に出力するように構成されてもよい。この場合、アプリケーション30は、信号処理装置20Cから入力される復号画像DBに対して何等かのキャリブレーション処理を行って出力する。撮像システム100によれば、キャリブレーション処理と、復号処理とが別の場所で行われるので、情報漏洩に対するセキュリティを向上させることができる。
【0111】
また、
図24に示すように、第5変形例に係るイメージセンサ1Dを含む撮像システム100Aは、イメージセンサ1Dと、信号処理装置20Dとを含む。イメージセンサ1Dは、撮像装置10を備える。撮像装置10は、本開示で説明した何れかのロバストマスクを備える。
【0112】
撮像装置10は、被写体を撮像した符号化画像DAを信号処理装置20Dに出力する。信号処理装置20Dは、符号化画像DAを復号処理して復号画像DBを出力する。撮像システム100Aによれば、符号化画像DAの生成処理と、復号処理とが別の場所で行われるので、情報漏洩に対するセキュリティを向上させることができる。
【0113】
なお、第1実施形態に係るマスクの構成と、第2実施形態に係るマスクの構成とは、組み合わせることができる。すなわち、実施形態に係るマスクは、予め設定される回転基準点を中心とした回転方向に対称な対称成分を有する光の振幅変調領域または位相変調領域と、並進対称性を有する光の振幅変調領域または位相変調領域とを含む2次元パターンが設けられ、入射する光を撮像素子に導光するように構成されてもよい。これにより、回転誤差およびクロップ誤差の双方に対するロバスト性を向上させたマスクを提供できる。
【0114】
なお、本明細書に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものでは無く、また他の効果があってもよい。
【0115】
[5.付記]
なお、本技術は以下のような構成も取ることができる。
(1)
予め設定される回転基準点を中心とした回転方向に対称な対称成分を有する集光領域と非集光領域とを含む2次元パターンが設けられ、入射する光を撮像素子に導光する
マスク。
(2)
前記回転基準点は、
前記2次元パターンが設けられるパターン形成領域の内部に設定される
前記(1)に記載のマスク。
(3)
前記回転基準点は、
前記パターン形成領域の重心からの距離が、前記重心から前記パターン形成領域の周縁部までの距離の半分以下の位置に設定される
前記(2)に記載のマスク。
(4)
前記回転基準点は、
前記パターン形成領域の重心の位置に設定される
前記(3)に記載のマスク。
(5)
前記対称成分は、
前記回転基準点から前記2次元パターンが設けられるパターン形成領域の周縁部に向かうにつれて円弧状のパターンの円弧長が長くなる部分がある
前記(1)から(4)のいずれか一つに記載のマスク。
(6)
前記対称成分は、
前記回転基準点から前記2次元パターンが設けられるパターン形成領域の周縁部に向かうにつれて円弧状のパターンの円弧長が長くなる
前記(5)に記載のマスク。
(7)
前記対称成分は、
前記回転基準点からの距離に比例して円弧状のパターンの円弧長が長くなる
前記(6)に記載のマスク。
(8)
並進対称性を有する光の振幅変調領域または位相変調領域を含み、繰り返し単位の面積が撮像素子における受光領域の面積よりも小さい2次元パターンが設けられ、入射する光を前記撮像素子に導光する
マスク。
(9)
前記2次元パターンは、
1次元の並進対称性を有する
前記(8)に記載のマスク。
(10)
前記2次元パターンは、
2次元の並進対称性を有する
前記(9)に記載のマスク。
(11)
前記2次元パターンは、
1次元方向において同一のパターンが繰り返し出現する回数が2回以下である
前記(8)に記載のマスク。
(12)
前記2次元パターンは、
1次元方向において繰り返し出現する同一のパターン間に隙間が設けられる
前記(8)から(11)のいずれか一つに記載のマスク。
(13)
予め設定される回転基準点を中心とした回転方向に対称な対称成分を有する光の振幅変調領域または位相変調領域と、並進対称性を有する光の振幅変調領域または位相変調領域とを含む2次元パターンが設けられ、入射する光を撮像素子に導光する
マスク。
(14)
前記(1)、(8)、(13)のいずれか一つに記載のマスクと、
前記マスクを介して入射する光を受光する撮像素子と
を有する撮像装置。
(15)
前記(1)、(8)、(13)のいずれか一つに記載のマスクと、
前記マスクを介して入射する光を受光する撮像素子と
を有する撮像装置と、
前記撮像素子によって取得された像を復元する信号処理装置と
を含む撮像システム。
(16)
撮像装置が、
前記(1)、(8)、(13)のいずれか一つに記載のマスクを介して入射する光を撮像素子によって受光し、前記光に対応する像の符号化画像を生成する
データ生成方法。
【符号の説明】
【0116】
1,1A,1B,1C,1D イメージセンサ
10 撮像装置
20,20B,20C,20D 信号処理装置
30 アプリケーション
100,100A 撮像システム
M1,M2,M6~M10 ロバストマスク
M,M3~M5 マスク